ナフサ価格推移2026完全まとめ|国産ナフサ価格・スポット・通関CIFの最新チャート
「ナフサが2.5倍になった」と「ナフサは6月に衝突前を下回った」は、どちらも事実です。見ている系列が違うためです。アジアスポット・輸入CIF・国産基準価格の3つの系列は、いずれもピークを越えました。本記事は価格推移と時系列・一覧を短くまとめ、8月〜9月の動きを足したうえで、詳しい内容は個別記事66本へご案内します。
- ナフサ価格には3つの系列があります。アジアスポット市況、輸入CIF(通関統計にもとづく、運賃・保険料込みの価格)、四半期ごとの国産ナフサ基準価格です。報道で見る数字はこのどれかを指していて、系列が違えば水準もピークの時期も違います。
- アジアスポットは2026年3月末に1トン1,200ドル超のピークをつけました。これは5月前半に日本へ着く分の価格で、通関CIFのピークは約2ヶ月遅れて5月16日の1,043ドルでした。
- 国産ナフサ基準価格は2026年4〜6月期に118,900円/kLで確定し、水準・上げ幅とも過去最高でした。樹脂メーカーの値決めはこの系列に連動するため、社内資料に使うならこの系列です。
- 基準価格は7〜9月期104,800円、10〜12月期95,900円と2期続けて下がる見込みで、ピークからは23,000円、率にして19.34%の下落です(当社計算)。ただし、どちらも確定値ではありません。
- 8月〜9月は、エチレンの稼働率が8月に73.5%まで戻り、9月26日の輸入ナフサの指標は円安で円建てが上がりました(第3章)。系列ごとの詳しい内容は、下の「このまとめの記事を探す」から個別記事で読めます。
こんな方へ ── まず読むところ
- 樹脂や包材の値上げ・値下げの時期を知りたい方:国産ナフサ基準価格の見込みは第5章「ナフサ価格推移の全記録」の系列③へ
- いちばん新しい相場を知りたい方:第3章「2026年8月〜9月の動き」と第1章「いまの位置」へ
- パレット・ストレッチフィルム・PPバンドなど物流資材の調達担当の方:どの系列を見ればよいかは第7章「立場別:どの価格を見ればよいか」へ
- 原油の調達や中東情勢から知りたい方:第8章「9つの分野の要点と詳しい記事」と、イラン情勢のまとめへ
- ナフサの話がはじめての方:第4章「3つの系列、何がどう違うのか」と用語集へ
いまの位置:3つの価格はどこにあるのか
当社は2026年のナフサ価格について66本の記事を公開してきました。記事を横断して読むと、同じ「ナフサ価格」という言葉が、違う系列の数字を指している箇所があります。このまとめの出発点はここにあります。
2026年9月12日時点の3系列
2026年の3系列は、いずれもピークを越えました。ピークの時期はそれぞれ違い、下流の系列ほど遅れて訪れています。9月12日より後の数字は第3章にまとめました。
単位は、①がドル/トン、②が千円/kL(石化用)、③が円/kL です。年はいずれも2026年で、②と③の変化率は当社の計算です。
| 系列 | ピーク | 直近 | 変化 |
|---|---|---|---|
| ① スポット | 3月末 1,200超 | 855.28 9月11日 | 9月に 反転 |
| ② 輸入CIF | 5月 123.91 | 104.33 7月 | −15.80% |
| ③ 国産基準 | 4〜6月期 118,900 | 95,900 10〜12月期 | −19.34% 見込み |
①の直近はTrading Economics(2026年9月12日に当社が参照)、②は新電力ネット(原データは財務省貿易統計、2026年9月4日更新)、③は三協化学(2026年9月1日更新)によります。①のピーク1,200ドル超は化学工業日報(2026年4月30日)です。②の月次と①の日次は単位も集計方法も違うため、水準をそのまま並べて比べることはできません。①は8月に底を打ったあと9月に反転しており、月間では15%以上の上昇にあたります。
国産ナフサ基準価格は、四半期の通関実績が出そろってから確定します。4〜6月期が確定したのは2026年7月31日で、7〜9月期の確定は10月下旬の公表が見込まれます。104,800円/kLと95,900円/kLは、どちらも見込みとして扱います。三協化学の掲載値が確定・想定のどちらにあたるかを判別できなかった理由は、第5章の系列③の注記に書きました。
3つの数字は、どれも正しい
2026年のナフサについて、次の3つの記述はいずれも一次資料にもとづいています。
| 記述 | 系列 | 実務での使いどころ | 出典 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月末に1トン1,200ドル超に達した | アジアスポット市況 | 相場の方向を最も早くつかめます。日次で動きます | 化学工業日報/2026年4月30日 |
| 2026年5月16日に1トン1,043ドルのピークをつけた | 輸入CIF(通関統計) | 実際に日本へ入った価格です。スポットの約2ヶ月後に動きます | 大景化学 ナフサ価格推移表 |
| 2026年第1四半期は65,700円/kLでほぼ横ばいだった | 国産ナフサ基準価格 | 樹脂の値決めはこれに連動します。社内資料に使うならこの系列です | 化学工業日報/2026年4月30日 |
| 2026年第2四半期は118,900円/kLで確定した(前四半期比+53,200円) | 国産ナフサ基準価格 | 2026年後半の値決めの基準です。9月28日時点で確定している最新の値です | 化学工業日報/2026年7月31日 |
矛盾しているように見えますが、どれも違う系列の数字です。アジアスポットは市場で日々取引される価格、輸入CIF(運賃と保険料を含む、日本に着いた時点の価格)は実際に日本へ着いて通関した価格、国産ナフサ基準価格は樹脂メーカーの値決めに使われる四半期ごとの指標です。
7月の再閉鎖で、ふたたび上がりました
2026年7月12日、イラン革命防衛隊がホルムズ海峡を再び閉鎖しました。7月12日に通航が確認された船は6隻で、過去5週間で最も少ない数でした。輸入CIFは6月25日の627ドルから7月15日808ドル、7月16日842ドルへと戻し、7月24日には982ドルに達しました。6月25日比で57%の上昇です。為替も7月16日の1ドル162.28円から7月24日は163.32円へ円安が進み、国産ナフサ価格指標は7月16日の96,965円/キロリットルから7月24日には113,464円/キロリットルへ、8日間で約17%上がりました(大景化学 ナフサ価格推移表)。
2月末から7月までの出来事(時系列)
2026年2月末のホルムズ海峡封鎖から、7月の再閉鎖と第2四半期の確定までの主な動きを時系列で並べました。系列が違う数字には、出典と種類を添えています。8月以降は第3章にまとめました。
2026年8月〜9月の動き
7月末から9月28日までの動きを、当社が2026年9月29日までに実際に開いて確認できた資料だけでまとめました。月平均・日々の値・統計の数字は種類が違うため、表を分けています。見つからなかったことは「確認できていない」と書いています。
輸入ナフサの指標:9月26日は円安で円建てが上がりました
大景化学のナフサ価格推移表(原データは財務省貿易統計)では、2026年9月26日現在の指標は次のとおりでした。第5章の系列②の表にある9月10日の行と並べています。
| 時点 | ドル/トン | 国産ナフサ価格指標 | 為替 |
|---|---|---|---|
| 2026年9月10日 | 900ドル | 97,783円/kL | 153.13円/ドル |
| 2026年9月26日 | 914ドル | 101,884円/kL | 157.24円/ドル |
| 変化(当社計算) | +1.56% | +4.19% | 円安 |
ドル建ての上げ幅は1.56%なのに、円建ては4.19%上がりました(いずれも当社計算)。7月16日〜9月10日は円高が上昇を打ち消しましたが(第5章)、9月後半は153.13円から157.24円への円安が、逆に上げ幅を大きくした形です。なお、財務省の通関統計にもとづく8月の月次の値は、大景化学(9月26日時点)・新電力ネット(9月4日更新)とも7月分までの掲載で、8月分は確認できていません。
国産ナフサ基準価格:7〜9月期の確定はまだです
三協化学の国産ナフサ価格の更新は、9月28日までに当社が見た範囲では9月1日更新分が最新で、7〜9月期104,800円/kL・10〜12月期95,900円/kLという見込みは変わっていません。7〜9月期の確定値は、4〜6月期と同じ流れなら10月下旬に公表される見込みで、9月28日時点では確認できていません。
アジアのスポット:9月25日は811.83ドル
Trading Economicsのナフサは、2026年9月25日に811.83ドル/トン(前日の838.56ドルから3.19%安)でした。同社の表示では月間+9.05%です。第1章の9月11日の855.28ドルより低い水準ですが、同社の価格はOTC・CFD(取引所を通さない取引や差金決済の商品)にもとづく参考値で、MOPJや化学工業日報の市況とは仕組みが違います。水準の目安としてご覧ください。
原油:8月は月平均91ドル前後でした
世界銀行のPink Sheet(2026年9月号)では、8月のブレント原油の月平均は90.9ドル/バレルでした。米国エネルギー情報局(EIA)の9月9日の短期見通しも、8月の世界の原油価格は平均91ドルで7月より7ドル高く、世界の石油在庫は年初から約4億バレル減ったと推計しています。EIAの現物価格の月平均は次のとおりです(ドル/バレル)。
| 月 | ブレント(現物) | WTI(現物) |
|---|---|---|
| 2026年7月 | 83.76ドル | 80.46ドル |
| 2026年8月 | 91.08ドル | 83.90ドル |
9月の原油の日々の動きは、当社が確認できた資料では集計元ごとに値の差が大きく、ここでは載せていません。報道では、9月上旬に米国とイランの攻撃の応酬がホルムズ海峡で激しくなり、直近10日間の商船の通航が1日平均10隻にとどまったと伝えられています(Al Jazeera、9月7日)。9月28日には、トランプ米大統領が、ホルムズ海峡の再開と引き換えに制裁解除などを求めるイランの提案を受け入れられないと表明し、ブレント先物(11月限)は107.35ドルで取引されました。9月21〜27日の海峡の通航は132回で、戦争前の1日およそ130回には遠く及びません(Al Jazeera、9月28日)。
第5章にある9月11日のブレント104.42ドル(Trading Economics)と上のブレント先物107.35ドルは先物ベースの値で、世界銀行やEIAの現物の月平均とは種類が違います。同じ線で比べないようご注意ください。
日本の輸入額にも表れています。8月の原粗油の輸入額は1兆1,905億円で前年同月比58.7%増、数量は1,159万キロリットルで3.6%増でした(財務省貿易統計の速報、ジェトロ9月18日)。数量の伸び(3.6%)に比べて、金額の伸び(58.7%)がずっと大きくなっています。
エチレンの稼働率:8月は73.5%に戻りました
石油化学工業協会の2026年8月実績概要(9月17日公表)では、稼働しているエチレン設備の実質稼働率(試算)は7月69.8%から8月73.5%に上がりました。4月の67.3%(第2章)と同じ指標で、4月より高い一方、前年同月の80.2%には届いていません。8月のエチレン生産量は389,400トンで、前年同月比6.9%減でした。
樹脂メーカーと国の発表
- 樹脂メーカー:ポリエチレン・ポリプロピレンをつくるプライムポリマーの2026年のニュース一覧では、価格改定の発表は4月21日が最後で、9月28日までに新しい改定の発表はありませんでした。ほかの樹脂メーカーの8〜9月の改定は、当社では確認できていません。
- 国:資源エネルギー庁の中東情勢への対応ページは、4月24日(国家備蓄原油の第2弾の放出)のあと、新しい掲載は確認できませんでした(9月29日に当社が閲覧)。
輸入ナフサの指標は、9月後半に円安で円建てが上がりました。一方、国産ナフサ基準価格の見込み(7〜9月期104,800円、10〜12月期95,900円)は、2〜4ヶ月前の市況をもとにしたもので、10〜12月期の見込みはMOPJが底をつけた8月を入口とする期間を映しています(第5章)。上流の数字と見込み値の向きが食い違う状態は、9月後半も続いています。このまとめでは予測は加えず、10月下旬の7〜9月期の確定値の公表を待って更新する予定です。
ナフサ価格の3つの系列、何がどう違うのか
「ナフサが2.5倍になった」と「ナフサは6月に衝突前を下回った」は、どちらも正しい記述です。前者はスポットの系列、後者は通関の系列の話です。3つの系列がそれぞれ何を測っているのかを整理します。
| 系列 | 何を測るか | 更新頻度 | 上流からの時差 | 主な参照先 |
|---|---|---|---|---|
| ① アジアスポット市況 (MOPJ等) |
市場で日々取引される価格。単位はドル/トン | 日次 | なし(最も速い) | 化学工業日報、日本経済新聞、業界紙 |
| ② 輸入CIF価格 (通関統計) |
日本に到着し通関した価格。運賃・保険料・為替を含む | 月次(速報・確定) | 約2ヶ月 | 財務省貿易統計、大景化学 ナフサ価格推移表 |
| ③ 国産ナフサ基準価格 | 樹脂メーカーの値決めに使われる指標。単位は円/kL | 四半期 | 約4ヶ月 | 化学工業日報、三協化学 国産ナフサ価格推移表 |
なぜ2ヶ月ずれるのか
化学工業日報は2026年4月30日の記事で、3月末に1トン1,200ドル超をつけた市況を「5月前半到着分」と明記しています。値段が決まってから、船積み・航海・入港・通関を経て日本に届くまでに約2ヶ月かかるためです。国産ナフサ基準価格はさらに遅く、第1四半期は2025年11月後半から2026年2月前半の市況が、入着時の為替で円に換算されて決まります。上流の市況から確定まで4ヶ月前後かかる計算です。
樹脂メーカーの価格改定は、多くの場合③の国産ナフサ基準価格に連動します。そのため①のスポットが下がっても、製品価格の改定は数ヶ月後まで続きます。2026年6月25日にスポットが衝突前の水準を下回ったあとも、7月1日発効の建材各社の改定が予定どおり実施されたのはこのためです。
換算の目安
1トンは約1.41キロリットルにあたります。1トンあたりのドル価格を1.41で割り、為替を掛けると、キロリットルあたりの円価格の目安になります。ただし通関CIFには運賃・保険料が含まれるため、スポット価格から換算した値とは一致しません。
為替の影響も大きく働きます。化学工業日報は、2026年第1四半期の基準価格がほぼ横ばいだった理由を、原油・ナフサ安を円安によるコスト高が打ち消したためと説明しています。日本銀行の輸入物価指数では、2026年6月の前年同月比が契約通貨ベースで17.8%高、円ベースで29.7%高で、差は11.9ポイントでした(円安はナフサ高を上乗せし、ナフサ安を打ち消す、日銀の輸入物価指数が示す2026年の二重負担)。系列の時差がいつ届くかの話であるのに対し、為替は届いたときにいくらになっているかの話です。
ナフサ価格推移の全記録(系列ごとの表)
2026年のナフサ価格を、系列ごとに分けて記録します。ほかのカテゴリまとめから参照される基準データとして整理しました。8月〜9月の新しい数字は第3章に分けています。
系列① アジアスポット市況
市場で日々取引される価格で、単位はドル/トンです。報道で「ナフサ価格」として最も多く登場する系列にあたります。
| 時点 | 水準 | 出典 |
|---|---|---|
| 2025年11月後半〜2026年2月前半 | 565〜590ドル | 化学工業日報/2026年4月30日 |
| 2026年2月末 | 600ドル未満 | 化学工業日報/2026年4月30日 |
| 2026年3月6日 | 776ドル | 米国化学会C&EN/2026年3月17日(石油化学アナリスト川上正則氏) |
| 2026年3月中旬 | 1,100ドル前後(2月末の600ドル台後半から約2週間余りで到達) | 化学工業日報/2026年3月18日 |
| 2026年3月末 | 1,200ドル超(5月前半到着分) | 化学工業日報/2026年4月30日 |
| 2026年6月前半到着分 | 1,000ドル前後 | 化学工業日報/2026年4月30日 |
| 2026年9月10日 | 871.17ドル | Trading Economics |
| 2026年9月11日 | 855.28ドル(前日比 −1.82%/月間 +15%以上) | Trading Economics |
2026年9月の2行はTrading Economicsによるもので、化学工業日報が報じる市況とは価格評価の仕組みが違います。水準の目安として並べており、上の各行と直接つなげて増減を読むことはできません。同社のページは上部の表示と本文の記述で月間・年間の変化率が食い違っており(月間15.08%と16.91%、年間51.51%と52.42%)、このまとめでは「15%以上」と幅で書きました。なお同社は、掲載する原油価格について「公式のベンチマークを示すものではない」と明記しており、CFD・OTCベースの価格です。公式の決済価格が必要な場合は、EIA・CME/NYMEX・ICEの公表値をご覧ください。
このまとめで確認できる範囲では、2026年3月末の1,200ドル超がスポット系列の最高値で、「5月前半到着分」の価格として報じられています。
系列② 輸入ナフサ価格(通関ベース)
実際に日本へ着いて通関した価格です。大景化学のナフサ価格推移表は財務省貿易統計を出典としており、運賃・保険料・為替を含みます。国産ナフサ価格指標は円/キロリットルで示されます。
| 時点 | ドル/トン | 国産ナフサ価格指標 | 為替 |
|---|---|---|---|
| 2026年5月15日 | 1,031ドル | 115,164円/kL | 157.93円/ドル |
| 2026年5月16日 | 1,043ドル | ― | ― |
| 2026年5月20日 | 1,005ドル | 113,092円/kL | ― |
| 2026年6月3日 | 767ドル(5月16日比 約26%減) | ― | ― |
| 2026年6月25日 | 627ドル(衝突前632ドルを下回る) | ― | ― |
| 2026年7月9日 | 702ドル | 81,146円/kL | ― |
| 2026年7月15日 | 808ドル | 93,169円/kL | 162.35円/ドル |
| 2026年7月16日 | 842ドル(6月25日比 +34%) | 96,965円/kL | 162.28円/ドル |
| 2026年9月10日 | 900ドル(7月16日比 +6.89%) | 97,783円/kL(同 +0.84%) | 153.13円/ドル |
2026年9月10日の行に、この系列の性質がはっきり表れています。ドル建てでは7月16日から6.89%上がったのに、円建ての指標は0.84%しか上がっていません。差の6.04ポイントが、162.28円から153.13円への円高で打ち消された分にあたります(いずれも当社の計算)。ドル建てで見るか円建てで見るかで、上昇幅の印象がまったく変わります。9月26日の値は第3章に載せました。
当社の過去記事では、この系列の数値を「シンガポールナフサスポット価格」と書いた箇所があります。出典元は財務省貿易統計にもとづく通関ベースの推移表で、系列①のスポット市況とは違います。このまとめの整理を正とし、該当記事は順次直します。
系列③ 国産ナフサ基準価格
樹脂メーカーの値決めに使われる四半期ごとの指標です。系列②の3ヶ月平均金額に2,000円/kLを足し、10の位を四捨五入して計算されます。
| 四半期 | 基準価格 | 反映される市況の期間 |
|---|---|---|
| 2025年10〜12月 | 65,600円/kL(第1四半期の前四半期) | ― |
| 2026年1〜3月 | 65,700円/kL(前四半期比 +100円) | 2025年11月後半〜2026年2月前半 |
| 2026年4〜6月 | 118,900円/kL(前四半期比 +53,200円/1.81倍) | 2026年2月後半〜5月前半 |
| 2026年7〜9月 | 104,800円/kL(前四半期比 −14,100円/−11.86%)※確定値ではない | 2026年5月後半〜8月前半 |
| 2026年10〜12月 | 95,900円/kL(前四半期比 −8,900円/−8.49%)※確定値ではない | 2026年8月後半〜11月前半 |
2026年7〜9月期の104,800円/kLと10〜12月期の95,900円/kLは、三協化学が2026年9月1日更新分として掲載している値です。どちらも確定値ではありません。4〜6月期が確定したのは2026年7月31日で、7〜9月期の確定は10月下旬の公表が見込まれます。大景化学の四半期平均は7〜9月期が空欄で、7月単月の104,331円/kLが速報として載っているだけです。前四半期比と変化率は当社の計算です。「反映される市況の期間」は、この系列が通関実績の3ヶ月平均に2,000円/kLを足して計算されることから、当社が機械的に2ヶ月ずらして書いたもので、報道が明示した期間ではありません。
2025年10〜12月期の65,600円/kLは、2026年第1四半期が前四半期比100円高という報道からの逆算値で、化学工業日報が直接示した数値ではありません。三協化学は黒字と青字で確定・速報と想定を区別していますが、当社の取得ツールでは色の情報が失われるため、104,800円/kLと95,900円/kLがどちらにあたるかを判別できませんでした。
3系列を重ねると何が見えるか
| 系列 | ピーク時期 | ピーク水準 | 2026年9月12日時点の状況 |
|---|---|---|---|
| ① アジアスポット市況 | 2026年3月末 | 1,200ドル超 | 8月に底を打ち、9月11日は855.28ドル。反転している |
| ② 輸入ナフサ価格(通関) | 2026年5月16日 | 1,043ドル | 9月10日は900ドル・97,783円/kL。ドル建ては上昇、円建てはほぼ横ばい |
| ③ 国産ナフサ基準価格 | 2026年4〜6月期 | 118,900円/kL(前期比1.81倍) | 7〜9月期104,800円、10〜12月期95,900円。下降中・いずれも見込み |
同じ値上がりが、系列ごとに約2ヶ月ずつ遅れて下流へ伝わっています。化学工業日報は3月末の市況を「5月前半到着分」と明記しており、この2ヶ月が輸送と通関にかかる期間にあたります。スポットが3月末、通関ベースが5月、値決めに使う基準価格が4〜6月期という順番です。上流の値下がりを見て「もう値上げは終わる」と判断すると、実務では読み違えます。
ピークを越えたあと、その先で起きている反転
ここまでは上り局面の記録です。3系列はいずれもピークを越え、いちばん上流にある系列①だけが、9月12日時点ですでに反転していました。三協化学が掲載するMOPJ(アジアのナフサ価格の評価)の推移は次のとおりです。
| 時点 | MOPJ(ドル/トン) | 前月比 |
|---|---|---|
| 2026年5月 | 1,139.84 | ― |
| 2026年6月 | 1,107.69 | −2.82% |
| 2026年7月 | 924.83 | −16.51% |
| 2026年8月 | 829.00 | −10.36%(底) |
| 2026年9月 | 840.00 | +1.33% |
| 2026年10月 | 849.00 | +1.07% |
| 2026年11〜12月 | 855.00 | +0.71% |
出典は三協化学(2026年9月1日更新)で、前月比は当社の計算です。9月以降の値は同社が置いている想定とみられますが、確定・速報・想定を区別する色分けが当社の取得ツールでは読めなかったため、断定できません。なお実勢として、Trading Economicsのナフサは2026年9月11日に855.28ドル/トンをつけています。MOPJとは価格評価の仕組みが違うため直接は比べられませんが、水準としては同社が11〜12月に置く値にすでに並んでいました。
10〜12月期の国産基準価格95,900円/kLという見込みは、2026年8月後半から11月前半の市況を映すものです。その入口にあたる8月は、MOPJが829ドルで底をつけた月でした。つまりこの見込みは、いちばん安かった時期を反映して作られています。9月に入ってからの反転は、まだこの数字に入っていません。
上り局面では「上流が下がっても製品価格は下がらない」という形で時差が働きました。下り局面では逆に、下がり続ける見込み値と、すでに上がり始めた市況が同時にあるという読みにくい状態になります。社内資料に系列③を使う場合は、その数字が映しているのは2〜3ヶ月前の市況だという点を添えておく必要があります。
原油も同じ向きに動いていました。2026年9月11日の終値は、ブレントが104.42ドル/バレル、WTIが99.99ドルでした。どちらも週間で9%前後の上昇で、ナフサだけが戻していたわけではありません。8月以降の原油の動きは第3章にまとめました。
当社が2026年9月11日に記録したブレントは107.248ドルでしたが、翌日に同じページを開くと9月11日の値は104.42ドルと表示されており、同じページ内に104.610ドルという別の表示もありました。このまとめは、同社が9月11日の値として本文に記す104.42ドルを採っています。ただしTrading Economicsは、掲載する原油価格について「公式のベンチマークを示すものではない」と明記しており、CFD・OTCベースの価格です。公式の決済価格が必要な場合は、EIA・CME/NYMEX・ICEの公表値をご覧ください。
原油から身の回りの資材へ、どうつながるか
ナフサは原油の一部にすぎません。原油を蒸留すると、軽い順にいくつもの留分(沸点ごとに分かれた成分)が同時に得られます。この「連産品」(1つの工程から複数の製品が同時にできること)という性質が、2026年の値上がりが特定の品目にとどまらなかった理由です。
留分と資材の対応
| 留分 | 主な用途 | 2026年に影響が及んだ資材 |
|---|---|---|
| ナフサ (軽い留分) |
石油化学原料。分解炉でエチレン・プロピレン・ブタジエン・BTXになる | ストレッチフィルム、PPバンド、OPPテープ、塩ビ管、断熱材、樹脂サッシ、塗料用シンナー、シーリング材、接着剤、包装材 |
| 灯油・軽油 (中間留分) |
燃料 | 製造工場の稼働燃料、輸送費。石膏ボードなど非石油化学製品にもエネルギーと物流を通じて波及 |
| 重油・潤滑油基油 | 燃料、エンジンオイル | エンジンオイル、油圧作動油 |
| アスファルト (最も重い残渣) |
道路舗装、防水材 | アスファルト合材、アスファルトルーフィング、アスファルトシングル |
連産品であることの意味
ナフサの分解炉を動かすと、エチレン・プロピレン・ブタジエン・BTXが同時にできるため、特定の製品だけを増やすことはできません。当社は総論記事でこの広がりを、燃料(第1波)、日用品・タイヤ(第2波)、衣料・家電(第3波)、建材・医療機器・機能性化学品(第4波)の4段階に整理しており、波及は日本標準産業分類の21の中分類に及んでいます。同じ性質は原油にも当てはまり、中東以外から調達しても、運賃・OSPプレミアム(産油国の公式販売価格の上乗せ分)・品質の不一致・歩留まりの差の4つが同時に働いて、ガソリンからアスファルト・潤滑油の基油まで、すべての留分が値上がりします。
エチレン稼働率という制約
値段だけでなく、生産能力の側にも制約がありました。石油化学工業協会の集計によると、2026年4月のエチレン設備稼働率は67.3%です(8月は73.5%、第3章)。国内のエチレン12基のうち6基が減産を続けた時期があり、旭化成は2026年5月12日に、水島事業所のスチレンモノマー・低密度ポリエチレン・高密度ポリエチレンについて2030年の生産終了計画を発表しました。同時に、三井化学45%・三菱ケミカル45%・旭化成10%の出資による西日本エチレンJVの設立で基本合意し、現在の95.1万トン体制を45.5万トン体制へ縮める再編が動き出しています。
立場別:どの価格を見ればよいか
同じナフサ価格でも、立場によって見るべき系列と読み方が変わります。立場ごとに、まず確認したい系列と読み方を整理しました。
| 立場 | 優先して見る系列 | 読み方の要点 |
|---|---|---|
| 樹脂・化学品の需要家 (成形加工・包材) |
系列③ 国産ナフサ基準価格 | 仕入価格の改定は基準価格に連動します。スポットの下落から実際の値下げまで数ヶ月かかるため、四半期ごとの確定値を確認します |
| 物流資材の調達担当 (パレット・フィルム・バンド) |
系列②+系列③ | 通関ベースの月次推移で方向を、基準価格で改定時期を読みます。国内の再生材のルートは別の系列で動きます |
| 建設・工事の見積担当 | 系列③+改定発表 | 基準価格の四半期ごとの変動が、2〜3ヶ月遅れでメーカーの改定になります。見積の有効期間の決め方に直結します |
| 自動車・部品メーカー | 系列①+在庫水準 | スポットの変動が調達計画に効きます。在庫を数ヶ月分持つ運用が広がっています |
| 石油化学メーカー | 系列①+エチレン稼働率 | 市況と実際の購入価格の差を確認します。フォーミュラ・輸送費・保険料・為替・得率の上乗せがあります |
| 暮らしの視点 | 系列③ | 店頭価格に届くのは最も遅く、上流が下がっても身近な商品はすぐには安くなりません |
どの立場でも、市況の指標と実際の購入価格は一致しません。フォーミュラ価格へのプレミアム、海上輸送費と戦争保険料、円安、軽質ナフサの得率(取れる製品の割合)の不一致という4つの上乗せがあるためです。
9つの分野の要点と詳しい記事
66本の記事を9つの分野に分け、要点を2〜3行にまとめました。詳しい内容は、各分野の末尾のリンク先で読めます。キーワードで探したいときは、ページ上部の「このまとめの記事を探す」を使うと早く見つかります。
ナフサの市況と供給(総論・目詰まり・調達の実情)
2026年2月28日のホルムズ海峡封鎖から、ナフサの値段と供給がどう動いたかを追う中心の分野です。経済産業省は4月14日、日本全体として量は確保できており、流通の目詰まりの解消が課題だと表明しました。当社はこの目詰まりを、物理・経済・流通の3層に、需要破壊と覚書合意という2つの局面の変化を加えた5層で分析しています。日本の月間ナフサ需要は約283万kLで、国産ナフサの原料となる原油の9割超が中東由来のため、実質的な中東依存度は8割にのぼります。
- 【2026年7月19日更新】ナフサ・クライシス2026|緊急特集TOP20と反転局面、8月中旬60日期限の分岐点
- ナフサ供給「目詰まり」の正体|3層構造を一次情報で解読する
- 原油調達は9月分めど・ナフサ調達は改善基調、ENEOS副社長・化学メーカー4社社長コメントから読み解く2026年7月時点の調達現実と価格転嫁の壁
- イラン情勢が招いた日銀31年ぶり利上げと住宅ローン1%超え、2026年「住宅購入の壁」の全構造
- ナフサ高騰で何が値上がりするのか、食品・建材・電気代への影響をやさしく解説
- ナフサ不足はいつまで続くのか、目詰まりの原因と値上げが止まらない理由
- 「ナフサ年越し確保」の本当の意味─年明けまで暮らしのプラスチックが安くならない構造【2026年6月】
- 円安はナフサ高を上乗せし、ナフサ安を打ち消す、日銀の輸入物価指数が示す2026年の二重負担
- ナフサとは何かをやさしく解説、ナフサからできるものと不足で値上がりする日用品
原油調達の組み替え(中東以外からの代替・多角化の恒久化・地政学)
日本の原油輸入は、中東依存95%から約4ヶ月で代替調達率がほぼ10割に達し、政府は多角化の恒久化を指示しています。ただし代替調達はコストを下げません。運賃・OSPプレミアム・品質の不一致・歩留まりの差の4つの壁が同時に働くためです。中東依存度を2011年度の86.6%から2023年度に4.7%まで下げていたLPGも、2026年4月の輸入単価は1トン115,660円と過去最高の水準になりました。代替先の豪州の事情も扱っており、同時期のナフサ価格は1トン933ドル、前年比70%高でした(2026年4月24日時点)。
- イラン情勢×ナフサショックで露呈する非中東原油代替の落とし穴─運賃3倍・OSP19.5ドル・歩留まり差が全石油製品を押し上げる構造【2026年6月】
- イラン情勢×ナフサショックで構造化する石油製品高止まり─値下がりは大不況と中東復興の先【2026年6月】
- 日本の原油調達2026年7月報告、中東回帰という選択肢を捨てた政府の判断、産油国の「量で稼ぐ」圧力と多角化恒久化の真相
- 日本の中東離れが招く地政学リスク2026、中国・インド・ロシア軸に流れる原油と「ペトロユアン」加速の真相
- イラン情勢と資源大国オーストラリアの最新ナフサ事情
- 【2026年7月版】中東依存を10年前に脱していたLPGがなぜ過去最高値になったのか、米国産への需要集中とパナマ運河が示す代替調達の限界
- ナフサは石油備蓄法の「石油」に含まれるのに備蓄日数の算定には入らない、2026年に見えた制度と実態のずれ
- イラン情勢が招く『2026年中東依存度73.9%の異変』をやさしく解説、日本の原油調達が急速に組み替わった本当の理由
- 石油統計速報5月分が示した日本のエネルギー構造転換、原油輸入-38.4%・米国+74.8%・UAEが首位、2〜5月の推移で読み解く脱中東の実相
- イラン情勢が招く「2026年日本のエネルギー調達の異変」をやさしく解説、政府が中東回帰を捨てて多角化恒久化を選んだ本当の理由
- イラン情勢が招く「2026年原油調達の異変」をやさしく解説、日本が買わない中東の石油を中国・インド・ロシアが吸収する本当の理由
- イラン情勢と政府発表石油備蓄「254日」の虚像
産油国とOPEC+(増産の力学・中東のインフラ)
OPEC+の7カ国は2026年7月5日の会合で、8月の生産枠を日量18万8千バレル引き上げることで合意しました。歳入は量と価格の掛け算で決まるため、価格が下がるほど産油国には増産の圧力がかかります。中東の製油所と海水淡水化プラントの復旧には5年から7年かかると当社は整理しており、供給側の制約は短期では解消しません。
産業への広がりとアジアの石油化学の再編
トヨタ系Tier1(一次部品メーカー)各社の2026年4月の決算では「ナフサ6月懸念」が共通の論点となり、在庫を数ヶ月分持つ考え方が広がりつつあります。2026年5月に福岡で開かれたアジア石油化学工業会議では各国の対応の違いが確認され、日本は能力削減・ナフサ路線の維持・バイオエタノールの組み合わせを選びました。国内では三井化学・三菱ケミカル・旭化成の3社が西日本エチレンJVの設立で基本合意しています。
ロシア・ウクライナ要因(もう1つの供給制約)
中東とは別の供給制約です。ウクライナ保安庁のドローン攻撃はロシアの製油所を年間194回にわたって攻撃し、精製能力の42.7%が失われました(損害額135億ドル)。ロシアの原油輸出量が過去最高を更新しながら財政赤字が広がる理由は、やさしく解説版で扱っています。
原油相場の動き(急落・戦前水準への回帰・再封鎖)
原油の値段は、6月の米イラン覚書合意で急落し、7月上旬にはWTI69ドル・ブレント72ドルと戦前の水準に戻りました。一方で6月下旬には、ホルムズ海峡の再封鎖や米国の戦略備蓄の減少も重なっています。局面ごとに何が値段を動かしたかを追った記事です。
国別に見る樹脂と原料(アジア・中東・米州)
同じホルムズ海峡の封鎖が、国によってまったく違う形で効いています。中国・韓国・台湾・シンガポール・マレーシア・タイ・インドネシア・ベトナム・サウジ、そして北米と中南米について、各国の統計や報道から樹脂と原料の生産・在庫・価格を国ごとに追った記事です。
- 中国の樹脂はどこへ行ったのか、輸出先の上位10か国に日本はなく、それでも6月の輸入単価は最も安い
- 中国のPE・PP在庫はいくら減ったのか|2025年からの全記録と、PP生産企業在庫55.4%減の中身
- 韓国の樹脂の原料はなぜ落ちたのか|設備110.7は減らさず稼働率4月75.5、プラ製品は6月に最高
- 台湾の樹脂の在庫はなぜ最高なのか|生産36.8%減・輸出52.0%減でも在庫だけ32万トンに積み上がる
- シンガポールの石化はなぜ半減したのか、自国に原油はゼロ、6月の生産52.3%減と住友化学系2社の停止
- 日本のPE仕入れ先シンガポールはなぜ戻らないのか|製油所は7月に回復、石化だけ24年ぶりの低水準
- マレーシアの樹脂はなぜ止まったのか、ホルムズの東にあるのに原油の4割が海峡経由、日本向けは4割減
- マレーシアで減ったのは樹脂の原料だけ|精製石油は前年と同額、原料の販売額はいつから29.1%減か
- タイの樹脂はなぜ届かないのか|当局が「ホルムズで上流が停止」と明記、出荷は19.2%減で在庫は増加
- インドネシアの樹脂の原料はなぜ高いのか|国産に替えても1トン966ドル、日本向けPPは51トンから1,657トンへ
- ベトナムは樹脂をいくらでどこから買っているのか|1トン1,409ドル、カタールのLPGは5月からゼロ
- ベトナムの樹脂はいつまで買えるのか、6月のPPは日本の輸入の43.4%、唯一のPE工場は5月から停止
- イラン情勢とベトナム石油化学・製造サプライチェーンの混乱
- ベトナム再生プラスチック原料・輸入拡大の最前線2026|VPA・世界銀行データで読み解く越南市場
- サウジの樹脂はなぜ高いのか|値上がりは石油精製3月・化学品4月・成形品2.6%の順に下りてくる
- アジア石化メーカー計31件のフォースマジュール、韓国・台湾・シンガポール・インドネシア・タイの企業別・工場別発動状況とマレーシア・ベトナムの独自事情
- イラン情勢と世界を呑み込む北米樹脂原料市場の真実
- イラン情勢とベネズエラ政変からの中南米エネルギー事情最前線
日本の樹脂原料と化学メーカー(価格・稼働率・値上げ)
国産ナフサの基準価格は2026年4〜6月期に1kLあたり118,900円と過去最高になり、エチレン設備の稼働率は8月に73.5%まで戻りました。国内の化学メーカーの値上げやナフサ・サーチャージ、PP・LLDPEの原料事情を扱う記事です。
キシレン・トルエン(溶剤・インキ)
キシレンとトルエンはナフサから作る溶剤で、粘着テープ・シンナー・印刷インキの原料です。トルエンの生産42%減・出荷67%減の影響や、ポテトチップスの袋が白黒になった理由など、溶剤の不足がどこに響いたかを扱う記事です。
これからの見方と、見ておきたい5つの指標
価格の向きを左右する要素を整理します。見方は2026年7月26日時点でまとめたもので、9月までに分かった事実は第3章に分けて書きました。予測は加えず、確認できる事実と、今後の判断材料になる指標を示します。
7月時点で見ていた分かれ目
当社の総論記事は、8月中旬の60日期限を分かれ目として位置づけていました。2026年6月14日に合意され、6月18日に正式に発効したイスラマバード覚書について、三菱総合研究所は6月19日、和平ではなく対立の一時停止だという評価を示しており、7月12日のホルムズ海峡の再閉鎖はこの評価と合っています。9月も、ホルムズ海峡の通航は戦争前の水準に戻っていません(第3章)。
経済産業省は2026年4月10日、ナフサ由来の製品について、輸入と国内精製で2ヶ月分、川中製品の在庫で2ヶ月分の計4ヶ月分を確保できるとしました。報じられる備蓄日数は燃料油を対象としており、ナフサなどへの供給分は算定に含まれていません(ナフサは石油備蓄法の「石油」に含まれるのに備蓄日数の算定には入らない、2026年に見えた制度と実態のずれ)。
見ておきたい5つの指標
| 指標 | 確認先 | 頻度 | 着眼点 |
|---|---|---|---|
| アジアスポット市況 | 化学工業日報、日本経済新聞 | 日次 | 最も速く動きます。方向をつかむのに使います |
| 輸入ナフサ価格・国産ナフサ価格指標 | 大景化学 ナフサ価格推移表 | 随時更新 | 約2ヶ月前のスポットが反映されます |
| 国産ナフサ基準価格 | 三協化学、化学工業日報 | 四半期 | 樹脂メーカーの値決めに直結します |
| エチレン設備稼働率 | 石油化学工業協会 | 月次 | 2026年4月は67.3%、8月は73.5%(第3章)。供給能力の制約を示します |
| ホルムズ海峡の通航状況 | 報道、船舶追跡情報 | 随時 | 7月12日の通航確認は6隻と過去5週間で最少。9月21〜27日は132回(報道、第3章) |
系列ごとに見通しの意味が変わります
「ナフサが下がったので値上げは終わる」という判断は、どの系列を見ているかで当たり外れが分かれます。調達の実務では系列③、市況の向きをつかむには系列①と、目的に応じて使い分けてください。
用語集
このまとめで使う主な用語を14項目にまとめました。
原油の蒸留で得られる軽い留分の一種で、石油化学の基礎原料です。分解炉でエチレン・プロピレン・ブタジエン・BTXに分けられ、そこから樹脂・接着剤・溶剤・フィルムなどが作られます。日本のナフサは大部分が輸入品です。
市場で日々取引されるナフサの価格です。単位はドル/トン。報道で「ナフサ価格」として最も多く登場する系列にあたります。2026年は3月末に1トン1,200ドル超に達しました。
Mean of Platts Japan の略です。日本向けナフサのスポット価格指標の1つで、アジア圏の代表的な目安として参照されます。
Cost, Insurance and Freight の略です。商品代金に運賃と保険料を加えた価格で、輸入品が日本に着いた時点の価格にあたります。財務省貿易統計にもとづく通関ベースの数値がこれにあたります。
樹脂メーカーの値決めに使われる四半期ごとの指標です。単位は円/キロリットル。輸入ナフサ価格の3ヶ月平均金額に2,000円/kLを足し、10の位を四捨五入して計算されます。2026年第1四半期は65,700円/kL、第2四半期は118,900円/kLでした。
蒸留によって沸点の範囲ごとに分けられた成分です。軽い順に石油ガス・ナフサ・灯油・軽油と取り出され、最後に残る重い成分がアスファルトの原料になります。
1つの工程から複数の製品が同時にできる仕組みです。ナフサの分解炉を動かすとエチレン・プロピレン・ブタジエン・BTXが同時に得られるため、特定の製品だけを増やすことはできません。
ナフサの分解炉の動き具合を示す指標で、石油化学工業協会が毎月公表しています。2026年4月は67.3%で、損益分岐とされる90%を大きく下回りました。8月は73.5%でした。
Official Selling Price の略です。産油国が公表する原油の公式販売価格で、基準の原油との差額をプレミアム(上乗せ)またはディスカウント(割引)として設定します。中東産原油ではこのプレミアムが上がりました。
石油輸出国機構(OPEC)の加盟国に、ロシアなど加盟していない産油国を加えた枠組みです。生産枠の調整を話し合います。UAEは2026年5月1日にOPECを脱退しました。
産油国の財政収支がちょうど釣り合う原油価格の水準です。これを下回ると財政赤字になるため、価格が下がったときには数量を増やして歳入を確保しようとする圧力が生じます。
不可抗力による契約履行の免責の宣言です。原料の調達難などで供給の義務を果たせない場合に出されます。2026年はアジア各国の石油化学メーカーで相次ぎました。
価格の高騰によって需要そのものが減る現象です。買い控えや代替品への切り替えが進みます。2026年5月から6月にかけての市況の急落の要因の1つとされています。
現物価格はその時点で受け渡す原油やナフサの取引価格、先物価格は将来の受け渡し月を決めて取引する価格です。同じブレント原油でも、米国エネルギー情報局(EIA)の現物価格と、先物をもとにした価格は値が違うことがあるため、1本の線にして比べないようにします。
出典・エビデンス一覧39件(公的機関16・報道や企業23)
出典は、価格の一次データ、2026年9月の更新で参照したもの、報道・業界媒体、官庁・業界団体などに分けて載せています。個別の詳しい出典は各記事に載せています。
価格の一次データ
- ナフサ価格推移表(出典:財務省貿易統計/Q平均は3ヶ月の平均金額に2,000円/klを加算し10の位を四捨五入)/大景化学株式会社
- 国産ナフサ価格推移表(3ヶ月平均・黒字は確定および速報、青字は想定/2026年7月8日更新)/三協化学株式会社
- 貿易統計(ナフサ輸入CIF価格)/財務省
2026年9月の更新で参照したもの
- ナフサ・ブレント原油・WTI原油・米ドル/円の各相場(2026年9月11日の終値)/Trading Economics/2026年9月12日に当社が直接参照した。同ページは上部の表示と本文の記述で値や変化率が食い違う箇所があり、本まとめでは日付と整合する本文側の終値を採用している
- 国産ナフサ価格・MOPJ・輸入ナフサ価格の推移/三協化学株式会社/2026年9月1日更新分を2026年9月12日に当社が直接参照した。確定・速報・想定を示す色分けは当社の取得ツールでは読めなかった
- ナフサ価格推移表(2026年9月10日現在の指標を含む)/大景化学/2026年9月12日に当社が直接参照した。7〜9月期の四半期平均は空欄であることを確認した
- ナフサの価格推移(通関統計・石化用/その他)/新電力ネット(原データは財務省貿易統計)/2026年9月4日更新分を2026年9月12日に当社が直接参照した
2026年9月29日の更新(第3章)で参照したもの
- 2026年8月実績概要(メモ)(エチレン生産量・稼働プラントの実質稼働率試算)/石油化学工業協会/2026年9月17日公表
- ナフサ価格推移表(2026年9月26日現在の指標、出典は財務省貿易統計)/大景化学/2026年9月29日に当社が参照した
- 市況情報の一覧(国産ナフサ価格の更新は9月1日が最新)/三協化学株式会社/2026年9月29日に当社が参照した
- ナフサの価格推移(通関統計)/新電力ネット(原データは財務省貿易統計)/2026年9月4日更新分
- Naphtha(2026年9月25日の値)/Trading Economics
- Commodity Price Data (The Pink Sheet) 2026年9月号(ブレント原油の8月の月平均)/世界銀行
- Spot Prices for Crude Oil(月平均、2026年9月23日公表)/米国エネルギー情報局(EIA)
- Short-Term Energy Outlook(2026年9月9日公表)/米国エネルギー情報局(EIA)
- 日本の8月の原油輸入額に関するビジネス短信(財務省貿易統計の速報にもとづく)/ジェトロ/2026年9月18日
- 2026年ニュース一覧/株式会社プライムポリマー/2026年9月29日に当社が参照した
- 中東情勢を踏まえた石油及び関連製品等に関する対応/資源エネルギー庁/2026年9月29日に当社が参照した
- ホルムズ海峡の攻撃と原油相場に関する報道(9月7日・9月28日)/Al Jazeera
報道・業界媒体
- 「国産ナフサ価格、過去最高へ 1~3月は横ばい」(2026年第1四半期65,700円/kL、前四半期比100円高。2月末に600ドル未満だった市況が3月末=5月前半到着分に1,200ドル超、6月前半到着分は1,000ドル前後)/化学工業日報/2026年4月30日
- 「4~6月の国産ナフサ11・8万円 上げ幅含め最高」(2026年第2四半期118,900円/kL、前四半期比53,200円高。水準・上げ幅とも過去最高)/化学工業日報/2026年7月31日/2026年8月26日に記事本文を直接参照した
- ナフサスポット価格の推移に関する報道(2月末600ドル台後半から約2週間余りで1,100ドル前後)/化学工業日報/2026年3月18日
- ナフサ価格に関する報道(3月6日776ドルから1週間後に1,000ドル突破。石油化学アナリスト川上正則氏)/米国化学会 C&EN/2026年3月17日
- 「デンソーや豊田合成『ナフサ6月から懸念』 トヨタ系部品に中東リスク」/日本経済新聞/2026年4月29日
- 汎用合成樹脂の取引価格および値上げ幅に関する報道/日本経済新聞/2026年3月17日・3月31日・4月15日
- 東ソーのポリエチレン樹脂値上げ(5月21日納入分から45円/kg以上)/日本経済新聞/2026年5月14日
- ガソリン市況とナフサ市況の逆転および食品値上げの包装資材要因に関する報道/日本経済新聞/2026年5月30日
- 「日本の原油タンカー、全てホルムズ海峡通過」/日本経済新聞/2026年7月13日
- OPEC+7カ国の8月生産枠に関する報道(日量18万8千バレル増、7月5日会合)/ジェトロ
官庁・業界団体
- エチレン設備稼働率(2026年4月67.3%)/石油化学工業協会/2026年5月21日公表
- 「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保及び重要物資の安定的な供給確保のための対応方針(案)」/経済産業省/2026年4月10日
- ナフサ供給に関する表明(日本全体として量は確保、流通の目詰まり解消が課題)/経済産業省/2026年4月14日
- ナフサ供給に関する見解(川上の原料は維持、個別製品では偏り)/日本化学工業協会/2026年5月15日
- イスラマバード覚書に関する評価(和平ではなく対立の一時停止)/三菱総合研究所/2026年6月19日
- 中東情勢に伴う一部製品の新規受付再開・出荷納期に関する案内/三協化学株式会社/2026年6月2日
当社の関連まとめ
- 「イラン情勢まとめ2026、なぜガソリンや食品の値段に響くのかを時系列で整理|米国・湾岸4カ国」(親ハブ)
- 「建設資材の値上げ一覧2026、工事の費用がなぜ上がるのかを品目別に|養生テープ・断熱材・TOTO・LIXIL」
- 「農業・肥料まとめ2026、コメや野菜の値段がなぜ上がるのかを4つの経路で|JA全農・尿素」
- 本記事が統括するナフサ・原油関連66本(第8章に一覧を掲載)
よくあるご質問
「ナフサが2.5倍」と「ナフサは衝突前を下回った」はどちらが正しいのですか
どちらも正しく、見ている系列が違います。2.5倍という表現はアジアスポット市況の話で、2026年3月末に1トン1,200ドル超をつけた局面を指します。衝突前を下回ったという表現は輸入ナフサ価格(通関ベース)の話で、2026年6月25日に627ドルとなり、衝突前の632ドルを一時下回った局面です。系列が違うため、同じ「ナフサ価格」という言葉でも指している数字が違います。第5章に3系列の全推移を整理しています。
なぜスポットが下がったのに製品の値上げが続くのですか
樹脂メーカーの値決めが、スポットではなく四半期ごとの国産ナフサ基準価格に連動しているためです。基準価格は輸入ナフサ価格の3ヶ月平均に2,000円/kLを足して計算され、その輸入価格自体もスポットから約2ヶ月遅れて動きます。2026年第1四半期の基準価格が2025年11月後半から2026年2月前半の市況で決まったように、上流の変動が値決めに届くまで4ヶ月前後かかります。2026年6月25日にスポットが下がったあとも7月1日発効の改定が予定どおり実施されたのは、この時間差によるものです。
中東以外から原油を買えば価格は下がりますか
当社の分析では下がりません。4つの要因が同時に働くためです。1つ目は長距離輸送による運賃の上昇、2つ目は中東原油のOSPプレミアムそのものの上昇、3つ目は軽質スイート原油と国内製油所の装置構成の不一致、4つ目は連産品の留分構成と国内の需要構成のずれです。日本は中東依存95%から約4ヶ月で代替調達率がほぼ10割に達しましたが、これはコストを下げるためではなく、供給を確保するための転換でした。政府は多角化を恒久化する方針を示しています。
自社の調達では、どの系列を見ればよいですか
目的によって使い分けます。仕入価格の改定時期を読むなら国産ナフサ基準価格(四半期)、市況の向きをつかむならアジアスポット市況(日次)、その中間の動きを確かめるなら輸入ナフサ価格(大景化学の推移表)が向いています。ただし、どの系列も実際の購入価格とは差があります。フォーミュラ価格へのプレミアム、海上輸送費と戦争保険料、為替、軽質ナフサの得率ミスマッチという上乗せがあるためです。第7章に立場別の整理を載せています。
2026年9月時点で、ナフサ価格はどうなっていますか
系列によって動きが違います。国産ナフサ基準価格は、7〜9月期104,800円/kL・10〜12月期95,900円/kLと下がる見込みのままで、どちらも確定値ではありません。一方、大景化学の国産ナフサ価格指標は9月26日に101,884円/kLで、9月10日の97,783円/kLから円安もあって上がりました。アジアのスポットは9月25日に811.83ドル/トン(Trading Economics)でした。原油は8月のブレントの月平均が90.9ドル(世界銀行)で、7月より上がりました。詳しくは第3章をご覧ください。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか
当社は千葉県我孫子市に本社を置き、プラスチックパレット・再生樹脂材料・PPバンド・ストレッチフィルムなどの物流資材を全国のお客様にお届けする専門商社です。当社が扱う資材はいずれもナフサを起点とする石油化学製品で、価格と供給の変動を日々の調達業務で直接受けています。どの系列の数字を見て仕入と販売を判断するかは、当社自身の実務の課題でもあります。そこで確認している一次情報を、同じ仕組みの影響を受けるみなさまにも役立てていただけるよう、記事として整理して公開しています。
この記事について・ほかのカテゴリまとめ
このまとめは、上流の価格と調達の仕組みを扱っています。各産業への広がりは、カテゴリごとのまとめでまとめています。次の1本目が、すべてのカテゴリの親となるまとめです。
- イラン情勢まとめ2026、なぜガソリンや食品の値段に響くのかを時系列で整理|米国・湾岸4カ国
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- 農業・肥料まとめ2026、コメや野菜の値段がなぜ上がるのかを4つの経路で|JA全農・尿素
このまとめの数値は、表と本文に書いた時点の観測値です。第1章冒頭の3系列の表と第5章後半の「ピークを越えたあと、その先で起きている反転」は2026年9月12日時点、第3章は2026年9月28日までに当社が確認した資料、それ以外の説明は主に2026年7月26日時点のもので、時点を明記したうえで記録として残しています。ホルムズ海峡の情勢と原油・ナフサの市況は数日単位で動きます。次回の更新は、第3四半期(7〜9月期)の確定値が公表される2026年10月下旬を予定しています。
第8章の各分野の紹介文は概要を示したもので、詳しい内容は各記事の本文をご覧ください。
文:プラスチックパレット株式会社 編集部
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