【北米緊急レポート・完全更新版】
ホルムズ封鎖が現実となった今、
北米樹脂原料市場の真実
3月26日の初稿公開後、情勢は想定の最悪シナリオを超えた。 2月28日に米イスラエルがイランを空爆し最高指導者を殺害。 イランはホルムズ海峡を封鎖し、IEAは「史上最大の供給途絶」と宣言した。 最新エビデンスをもとに、全データを書き直した。
本記事の初稿(2026/3/26)執筆時点では「中東有事への備え」という文脈だったが、 現在はホルムズ海峡が実際に封鎖されている。 米国・イスラエルとイランの戦争が勃発し、停戦合意(4/8)後も海峡は正常化していない。 以下、すべてのデータを最新エビデンスに基づき更新する。
ホルムズ封鎖:「リスク」から「現実」へ — 2026年2〜4月の経緯
初稿執筆時(3月26日)、ホルムズ封鎖は「最悪シナリオ」として論じられていた。 しかし、それはすでに現実となっている。以下、確認済みの事実経緯を示す。
物理原油価格は先物を大幅に上回る$150/bbl近辺まで急騰。 IEA長官はホルムズ危機を「史上最大のエネルギー安全保障上の課題」と表現した。 ホルムズ海峡の正常化が「最も重要な単一変数」と明記されている。
北米輸出インフラ:初稿データのアップデートと修正
初稿が参照した「EIAデータ」について、最新の公式資料との照合結果を示す。 エタン輸出の+16%成長予測(EIA)は維持されているが、 重要な文脈変化と追加情報がある。
エタン輸出:EIA予測の確認と精緻化
EIAは米国エタン純輸出量が2025年に14%、2026年に16%増加すると予測。 2025年の実績は579,000 b/d(前年比+19%増)となり、これを上回った。 2026年予測は640,000 b/d(EIA May 2025 STEO)。 エタンの最大輸出先は中国(輸出全体の約50%)、次いでインド。
Neches River Terminal:フェーズ2の正確なデータ
初稿では「18万バレルのエタン、または36万バレルのプロパン」と記述したが、正確には以下の通り:
Phase 1(2025年7月稼働): 120,000 b/d のエタン処理能力。 Phase 2(2026年上半期稼働・予定通り): エタン180,000 b/d または プロパン360,000 b/d の追加。 【重要更新】RBN Energyの追跡データによれば、Phase 2の第1カーゴはVLGC「Albert」号が2026年4月15日に積み出しており、実際に稼働が確認されている。 これによりUSGC全体のエタン輸出容量はさらに21%拡大。 ただし:中国向け需要はエチレン誘導体の過剰供給と東アジアのマージン悪化により2026年に減速が見込まれており、欧州(INEOS Project One、アントワープ、2026年Q3稼働)が新たな需要源となる。 なお初稿の「Neches River Phase 2が2026年Q2(4月〜)にフル稼働」という記述は、正確には「2026年上半期稼働」(公式発表)であり「Q2(4月)」と断言した点は不正確だった。
初稿データとの差異:修正が必要な箇所
| 項目 | 初稿(3/26時点) | 最新エビデンス(4/25) | 評価 |
|---|---|---|---|
| エタン輸出増加率予測 | 16%〜25% | 16%(EIA確認) | 下限は正確 |
| アジア向けLPG追加供給とVLGC換算 | 800〜1,000万トン/年 ≒ VLGC約170隻分 | EIA:米プロパン輸出 1.8 mb/d(史上最高、2025年)。VLGC容量≈84,000㎥≈約50,000トン/隻、年12航海換算で170隻分は計算上おおむね妥当だが、出典明示なし | 方向性は正しいが一次ソース不明。計算根拠の明示が必要 |
| Neches River Ph.2 能力 | エタン18万バレル/日 | 180,000 b/d(EIA・Enterprise IR確認) | 正確 |
| Neches River Ph.2 稼働時期 | 「2026年Q2(4月〜)」 | 正式発表は「2026年上半期」。4/15に初カーゴ確認(RBN Energy) | 断言は不正確。結果的には正しい時期だが根拠の表現は修正要 |
| スポット価格水準 | $845〜$860/MT(3月末) | 物理原油$150/bbl超(IEA) | 現在は大幅に超過 |
| 中東情勢 | 「有事への懸念」段階 | 🔴 全面戦争・ホルムズ封鎖済み | 最悪シナリオ現実化 |
| 対中エタン輸出リスク | 記述なし | 米商務省ライセンス要件(7/2終了)+ 中国の関税猶予 | 追加リスク要因 |
北米LPG・石化原料価格:最新エビデンスによる時系列更新
| 期間 | Brent原油指標 | ホルムズ・市場状況 | 供給リスク評価 |
|---|---|---|---|
| 2026年1月 | ~$70/bbl | 通常稼働。シェール増産順調 | リスク低 |
| 2026年2月(戦争前) | 上昇局面 | イラン輸出が3倍増(事前備蓄放出) | 緊張感あり |
| 2026年2/28〜3月 | $80〜$82(3/2)→ 急騰 | 🔴 米・イスラエル空爆、ホルムズ封鎖開始 | 最大リスク発動 |
| 2026年3月末〜4月初 | 物理価格 ~$150/bbl | 史上最大の供給途絶 -10.1 mb/d(IEA) | 史上最高水準 |
| 2026年4月8日 | -9%急落後に反発 | 停戦合意発表 → 即日覆る。海峡は未正常化 | 停戦も脆弱 |
| 2026年4月20日(直近) | $96.25/bbl(Brent) | 交渉継続中。海峡通行量は戦前を大幅下回る | 依然高リスク |
| 2026年Q3〜(予測) | 合意次第 | IEA想定:年央に中東供給が部分回復 | 不確実性が高い |
ダラス連銀の試算によれば、ホルムズ封鎖が1四半期続いた場合はWTI平均$110/bbl、 2四半期では$132/bblがピーク、3四半期では$167/bblに達する見込み。 インフレ(PCE)への上乗せは1〜3四半期の封鎖で0.8〜1.8ポイントに及ぶ。
USGCへの「一極集中」:エビデンスが示す新たなリスク
対中エタン貿易に生じた新たな不確実性
初稿では言及されなかったが、2025年以降、USGC発の対中エタン輸出には 規制上の複雑さが加わっている。 米商務省が2025年5月に課したエタン対中輸出ライセンス要件は7月2日に終了したが、 中国の報復関税(125%)とその猶予措置が繰り返され、 米国が事実上「唯一の海上エタン輸出国」であることと相まって、 輸出の継続性に規制リスクが常態化している。
さらに、中国の2つのエチレンクラッカー計画が遅延し、 エタンではなくナフサへの切り替えが検討されるなど、 中国向け需要の成長鈍化リスクも現実のものとなっている。
欧州:新たな需要の柱として浮上
ベルギー・アントワープのINEOS「Project One」クラッカーが2026年Q3に稼働予定。 処理能力80,000 b/dはヨーロッパ最大規模で、世界最大級に相当する。 このプラントがUSGCエタンの主要輸入先となることで、 アジア一辺倒だった輸出先の地理的分散が進む。
輸送船大型化:ULECの登場
Eastern Pacific Shippingは2024年、最大150万バレル積みの 超大型エタン船(ULEC)6隻を発注(2027年引き渡し予定)。 また、VLEC(超大型エタン船)10隻がすでに中国造船所で建造されており、 VLEC世界艦隊の約25%を占める。 一方、米国通商代表部が中国建造船に対して課した航行手数料(約$200万/航海)が、 対中エタン貿易コストを押し上げる新たな要因となっている。
「最悪シナリオ」は現実となった。北米一極集中のリスクは今が頂点だ。
初稿(3月26日)が「リスク」として論じたホルムズ封鎖は、 現在進行形の現実である。IEAは史上最大の供給途絶と断じ、 物理原油価格は$150/bblを超えた。 日本・アジアの石化メーカーが中東産原料の代替を探して北米へ殺到する構図は、 初稿の通りに展開しているが、その規模と価格水準は当初の想定を大幅に上回った。
EIAが確認するUSGCのエタン輸出能力拡大(Neches River Phase 2: +21%)と プロパン輸出の史上最高水準(1.8 mb/d)は、北米の供給優位を裏付ける。 しかし現在の価格高騰は、北米の生産コストではなく、 世界中の需要が有限な輸出スロットを奪い合う「パニック構造」によるものだ。
停戦合意(4/8)後も交渉は難航し、海峡は正常化していない。 核濃縮の全面停止を求める米国とイランの主張は依然として隔たりが大きく、 早期解決の見通しは立っていない。 プラスチックパレットをはじめとする樹脂製品の原料コストは、 ホルムズ危機の行方に直接連動する。仕入れ判断には、 最新の地政学動向と北米価格指標の同時モニタリングが不可欠だ。
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