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【2026年7月版】ナフサ由来でない石膏ボードが20〜50%上がった理由、原紙・接着剤・エネルギー・物流の4経路と内装下地の発注設計
Construction Material Report / Interior Substrate

【2026年7月版】ナフサ由来でない石膏ボードが20〜50%上がった理由、原紙・接着剤・エネルギー・物流の4経路と内装下地の発注設計

石膏ボードの主原料は鉱物の石膏と原紙であり、石油化学製品ではない。それでも2026年に20〜50%の改定が発表された。値上がりの経路を原紙・接着剤・エネルギー・物流の4つに分解し、MDF・壁装材・接着剤を含む内装下地全体の改定状況と、7月27日以降の発注設計を、基準日4類型の違いを含めて整理する。2026年7月19日時点の情報に基づく。

MONITORING 対象 内装下地材 最終更新 次回更新目安 2026年8月中旬
TL;DR / 3行要約
  • 石膏ボードは石油化学製品ではないが、チヨダウーテが7月1日から20〜50%、吉野石膏が6月出荷分から20%の改定を実施した。ナフサ非依存の資材にも改定が及んでいる。
  • 値上がりの経路は4つある。原紙、ナフサ由来の接着剤、石膏の焼成と乾燥に要するエネルギー、そして重量物であるがゆえの物流費である。ナフサはこのうち1経路にすぎない。
  • 直近の改定日は7月27日の東リ、8月18日のウッドワン、10月1日の南海プライウッドである。大建工業では透湿防水シートRの受注一時停止と既注文分のキャンセルも生じた。
Answer / この記事の結論

2026年7月19日時点、内装下地材は石油化学製品でないものまで改定が及んだ。石膏ボードはチヨダウーテ20〜50%、吉野石膏20%。経路は原紙・接着剤・エネルギー・物流の4つで、ナフサはうち1つにすぎない。次の改定は7月27日の東リ20〜30%である。

石膏ボードの改定率
20
〜50%(チヨダウーテ)
値上がりの経路
4
経路/ナフサは1つのみ
改定を発表した内装関連
10
社(下地・仕上げ・副資材)
次の改定発効日
7/27
東リ 20〜30%
Chapter 01

2026年7月19日時点の現在地

2026年の建設資材の改定は、ナフサを起点とする石油化学製品から始まった。塗料用シンナー、シーリング材、断熱材、塩ビ管はいずれもナフサから分岐する製品である。ところが内装下地では、石油化学製品ではない石膏ボードにも20〜50%の改定が発表された。ナフサ依存度の低い資材にまで及んだ点が、この分野の特徴である。

石膏ボードは石油化学製品ではない

石膏ボードの構造は単純である。硫酸カルシウムを主成分とする石膏を芯材とし、その両面を原紙で覆っている。石膏は鉱物であり、原紙は紙である。ナフサから直接つくられる部材は含まれない。それにもかかわらず、チヨダウーテが2026年7月1日から20〜50%、吉野石膏が6月出荷分から石膏関連製品を20%引き上げた。

理由は原料そのものではなく、製造と流通の各段階にある。石膏ボードの製造では、石膏を焼成して半水石膏にする工程と、成形後に水分を飛ばす乾燥工程の双方で熱を必要とする。原紙は製紙工程でエネルギーを消費する。芯材と原紙の接着や添加剤にはナフサ由来の化学品が用いられる。そして製品自体が重量物であり、原料の石膏も含めて輸送量が大きい。

2026年7月19日時点で押さえるべき3点

第1に、内装下地の改定は下地・仕上げ・副資材の3層すべてに及んでいる。下地は石膏ボードとMDF、仕上げは壁装材と床材、副資材は接着剤である。どれか1つを避けても工事全体のコストは下がらない。

第2に、直近で最も近い改定日は2026年7月27日受注分からの東リ20〜30%である。その後は8月18日受注分のウッドワン15%、10月1日発送分の南海プライウッド10%と続く。基準日が受注分・発送分に分かれている点に注意が必要である。

第3に、供給面では大建工業で透湿防水シートR(GA2115-1)の受注一時停止が生じ、納期未確定の既注文分がキャンセル扱いとなった。価格改定だけでなく、確定済みの注文が取り消される事例も発生している。

上流は7月に再び上昇に転じた

接着剤と添加剤の原料であるナフサは、2026年5月16日に1トン1,043ドルのピークをつけたのち、6月25日には627ドルまで下落し、衝突前水準の632ドルを一時下回った。しかし7月12日にイラン革命防衛隊がホルムズ海峡を再閉鎖したことを受けて反発し、7月16日時点では842ドルとなっている。6月25日比で34%の上昇である。同日の為替は1ドル162.28円、国産ナフサ価格指標は96,965円/キロリットルであった。

建設資材全体の改定状況と情勢の推移は【建設資材・養生テープ完全まとめ】2026年イラン情勢下の建設資材調達で統括している。本記事では内装下地に絞り、ナフサ依存度が低い資材がなぜ上がるのかという観点から整理する。
Chapter 02

4月から10月までの時系列

内装下地の改定は、石油化学系の建材より遅れて始まり、そして長く続いている。塗料やシーリング材が3月から4月に集中したのに対し、内装下地は4月に始まって10月まで改定日程が確定している。エネルギーと物流という経路が、ナフサより緩やかに、しかし持続的にコストへ反映されるためである。

2026-04-10
大建工業が、通常取引量を大きく上回る注文について数量制限・納期調整・分納を要請する方針を公表。あわせて石油化学製品の高騰を理由にMDF(中密度繊維板)を再改定した。
2026-04-15
ウッドワンが建材を一律15%改定。建具・収納・床材・階段部材が対象となった。
2026-04(時期詳細は未公表)
大建工業の透湿防水シートR(GA2115-1)が受注一時停止となり、納期未確定の既注文分はキャンセル扱いとなった。壁下地の防水層に関わる部材で、確定済みの注文が取り消される事例である。
2026-04-27
セメダインが出荷分より接着剤全製品を20%以上改定。内装下地の施工で使う接着剤が対象に含まれる。
2026-06-01
城東テクノが建築樹脂資材について、それまでの「受注停止」から「受注制限」へ運用を変更。供給が部分的に回復した。
2026-06(出荷分)
吉野石膏が石膏関連製品およびソーラトン製品を20%改定。石膏ボードで最初に発効した改定である。
2026-06-22
ウッドワンが建具・収納・床材・階段部材等のカタログ価格について、受注分より個別案内で改定を実施。4月の一律15%に続く2度目の対応となった。
2026-06-25
アジアナフサが1トン627ドルまで下落し、衝突前水準の632ドルを下回る。ただし内装下地メーカーの改定撤回や下方修正の発表はなかった。
2026-07-01
サンゲツが受注分より、壁装材・床材・ファブリック・エクステリア・副資材・接着剤を18〜30%程度改定。同社はIR資料で、中東情勢の緊迫化により原油・ナフサをはじめとする石油化学原料の指標が上昇し、サプライチェーンの混乱が長期化していると説明している。チヨダウーテが石膏ボードを20〜50%改定(改定率については資料により記載が異なる。Chapter 04の注記を参照)。永大産業が建材・設備を10〜15%、床材を15%、室内ドアを10%改定した。
2026-07-12〜16
イラン革命防衛隊がホルムズ海峡を再閉鎖。7月12日の通航確認は6隻と過去5週間で最少。7月16日のアジアナフサは842ドルとなり、6月25日比で34%上昇した。
2026-07-27
東リが受注分より、ビニール床タイル・床シート・壁装材を20〜30%改定する予定。内装下地に続いて仕上げ材の改定が発効する。
2026-08-18
ウッドワンが受注分より住設商品を15%改定する予定。同社にとって2026年で3度目の対応となる。
2026-10-01
南海プライウッドが発送分より、家具収納材の全製品を一律10%改定する予定。現時点で確定している最も先の改定である。
Chapter 03

石膏ボードが上がる4つの経路

石膏ボードの改定理由として公表されているのは、原紙・接着剤・エネルギーコスト・物流費の高騰である。この4つは性質が異なり、ナフサとの距離もそれぞれ違う。順に分解する。

経路何にかかるコストかナフサとの関係特徴
① 原紙 石膏の芯材を両面から覆うボード用原紙 間接的。製紙工程の燃料を経由する ナフサ市況ではなく製紙側のコスト動向に左右される
② 接着剤・添加剤 芯材と原紙の接着、強度・耐火性能の調整に用いる化学品 直接的。ナフサ由来の樹脂・化学品を使用する 4経路のうちナフサ価格が最も速く反映される
③ エネルギー 石膏を焼成して半水石膏にする工程と、成形後の乾燥工程の熱源 間接的。燃料価格を経由する 焼成と乾燥の2工程で熱を使うため、燃料価格が2度作用する
④ 物流 製品の輸送費、原料の輸送費 間接的。軽油価格と船舶燃料を経由する 製品が重量物であり、原料の石膏も含めて輸送量が大きい

各社の発表では改定理由として原紙・接着剤・エネルギーコスト・物流費が挙げられているが、それぞれが改定率のどの程度を占めるかという内訳は公表されていない。上表は経路の性質を整理したものであり、寄与度を示すものではない。

ナフサが直接効くのは1経路のみ

4経路のうち、ナフサ価格が直接反映されるのは②の接着剤・添加剤である。①③④はいずれも燃料価格や電力価格を経由する間接的な経路とされており、原油市況全体の影響は受けるが、ナフサのスポット価格とは連動の速さが異なる。

この違いは実際の値動きに現れた。ナフサは2026年6月25日に627ドルまで下落し、衝突前水準を一時下回っている。しかし石膏ボードの改定は撤回も下方修正もされず、7月1日にチヨダウーテの改定が予定どおり発効した。ナフサ価格の一時的な下落は、4経路のうち1つにしか作用しないためである。

石膏の原料側の事情

日本の石膏ボード製造では、天然石膏に加えて副産石膏が使われる。副産石膏は火力発電所の排煙脱硫工程やリン酸製造工程から発生する。前者は発電所の稼働状況に、後者は化学工業の生産動向に左右されるため、石膏そのものの調達も他産業の稼働と結びついている。原料が鉱物であることは、供給が安定していることを意味しない。

石膏ボードは建築基準法上の防火・耐火構造を構成する部材であり、内装制限のかかる部位では仕様を変更できない。断熱材が省エネ基準によって使用量を減らせないのと同様、石膏ボードも法令上の要求から数量調整の余地が限られる。
Chapter 04

メーカー別の改定マップ

2026年4月から10月にかけて発表された内装下地および関連資材の改定を整理した。改定率は各社発表ベースである。基準日が出荷分・受注分・発送分に分かれている点は、発注設計に直結するため特に注意が必要である。

下地材(石膏ボード・木質パネル)

メーカー対象改定率基準日
吉野石膏石膏関連製品・ソーラトン製品20%2026年6月 出荷分
チヨダウーテ石膏ボード20〜50%(※)2026年7月1日
大建工業MDF(中密度繊維板)再改定(率は個別案内)2026年4月
大建工業通常取引量を上回る注文数量制限・納期調整・分納2026年4月10日〜
※ チヨダウーテの改定率について

チヨダウーテの改定率は、資料により「20〜50%」と「20%」で記載が分かれている。前者は2026年7月1日からの実施を予告した業界情報に基づくもの、後者は改定の表明を伝えた資料に基づくものである。当社として2026年7月時点で確認できる範囲では、同社の公式発表を直接参照して確定できる資料に遡及できていない。製品区分ごとに率が異なる可能性もあるため、適用率は取引先へ直接ご確認いただきたい。

仕上げ材・建具・収納

メーカー対象改定率基準日
ウッドワン建材(建具・収納・床材・階段部材)一律15%2026年4月15日
ウッドワン建具・収納・床材・階段部材等のカタログ価格個別案内2026年6月22日 受注分
ウッドワン住設商品15%2026年8月18日 受注分(予定)
永大産業建材・設備10〜15%2026年7月1日
永大産業床材15%2026年7月1日
永大産業室内ドア10%2026年7月1日
サンゲツ壁装材・床材・ファブリック・エクステリア・副資材・接着剤18〜30%2026年7月1日 受注分
東リビニール床タイル・床シート・壁装材20〜30%2026年7月27日 受注分(予定)
南海プライウッド家具収納材 全製品一律10%2026年10月1日 発送分(予定)

副資材・樹脂資材

メーカー対象改定率・措置基準日
セメダイン接着剤 全製品20%以上2026年4月27日 出荷分
城東テクノ建築樹脂資材受注停止から受注制限へ変更2026年6月1日
大建工業透湿防水シートR(GA2115-1)受注一時停止・既注文分はキャンセル扱い2026年4月

永大産業は2026年1月発注分から床材・室内階段・室内ドア・収納等を5%改定しており、7月1日の改定はそれに続く2度目にあたる。2つの改定率は単純に加算されるものではなく、それぞれの時点の建値に対する改定である。

Chapter 05

内装下地の四層と副資材

内装工事は、下地を組み、ボードを張り、仕上げるという順序で進む。屋根が三層で雨を防ぐのに対し、内装は下地・ボード・仕上げ・副資材という4つの要素で構成される。2026年はこの4つすべてに改定が及んだ。

要素役割主な材料2026年の改定
下地 ボードを留め付ける骨組み 木下地(木材)、軽量鉄骨下地(LGS)、構造用合板 構造用合板が住宅1棟あたり10〜20%、鋼材が2〜15%
ボード 壁・天井の面材。防火・遮音・下地の平滑性を担う 石膏ボード、MDF、合板 石膏ボード20〜50%、MDF再改定(Chapter 04参照)
仕上げ 意匠を決める最終層 壁装材(クロス)、床材、塗装 壁装材・床材20〜30%、床材15%(Chapter 04参照)
副資材 接着・充填・下処理 接着剤、パテ、シーリング材、ビス 接着剤20%以上(Chapter 04参照)

建具・収納は下地とは別の改定日程で動く

内装工事には、上記の4要素に加えて建具と収納が含まれる。この領域はウッドワン・永大産業・南海プライウッドが担っており、改定日程が下地材とは別に組まれている。ウッドワンは4月15日・6月22日受注分・8月18日受注分と3回、永大産業は2026年1月発注分と7月1日の2回、南海プライウッドは10月1日発送分である。

内装工事の見積を1件つくる場合、下地材の改定日、仕上げ材の改定日、建具・収納の改定日をそれぞれ確認する必要がある。屋根工事と同様に、1件の見積のなかで要素ごとに価格の基準時点が異なる状態が生じやすい。

屋根工事における三層同時上昇の構造は【2026年7月版】雨仕舞い三層が同時に上がった屋根工事で扱っている。改定時期のずれが見積を層ごとに古くするという問題は、屋根と内装で共通している。
Chapter 06

ナフサ非依存でも上がる構造

2026年の建設資材の改定について、当社はこれまで「ナフサを起点とする波及」という枠組みで整理してきた。石膏ボードはこの枠組みに収まらない。ナフサ由来ではない資材が上がったという事実は、対応策の考え方そのものに修正を求める。

石油化学製品を避けても逃げ切れない

改定が石油化学製品に限られるなら、代替の方向性は明確である。ナフサ由来の材料を、そうでない材料に置き換えればよい。実際、断熱材では石油系から鉱物系への切り替えが対応策として挙げられてきた。

しかし鉱物系断熱材も6月から9月にかけて15〜25%以上の改定が実施または予告され、避難先として機能しなくなった。石膏ボードはさらにその先にある。石膏は鉱物、原紙は紙であり、ナフサ由来の部材は接着剤と添加剤に限られる。それでも20〜50%という、ナフサ由来の断熱材に匹敵する改定率が発表された。

理由はChapter 03で分解したとおり、エネルギーと物流という経路がナフサとは独立に働くためである。原油価格が上がれば燃料価格も電力価格も上がる。石膏の焼成と乾燥に熱を使い、重量物を輸送する限り、原料が鉱物であってもコストは上昇する。

2026年の改定から確認できること。資材を「ナフサ由来かどうか」で二分し、非ナフサ系に切り替えることでコストを回避するという考え方は、2026年の実績に照らすと成立していない。エネルギーと物流はほぼすべての資材に共通するコストであり、原油市況の影響から完全に外れる建設資材は事実上存在しない。切り替えによる回避ではなく、改定日程を前提とした発注管理のほうが実効性がある。

改定の速度が経路によって異なる

ナフサ由来の資材とそうでない資材とでは、改定の現れ方に違いがある。塗料用シンナーやシーリング材は2026年3月から4月に集中して改定された。ナフサ価格が原価に直結し、反映が速いためである。

一方、内装下地は4月に始まり10月まで改定日程が続いている。ナフサ由来の資材が数ヶ月に集中したのに対し、内装下地は半年以上にわたって改定が分散している。この違いは実務上、意味を持つ。ナフサ系の資材は6月の下落局面で一時的に落ち着く可能性があったが、非ナフサ系の資材は6月の下落を織り込まないまま7月以降の改定が予定どおり発効している。

2026年6月25日にナフサが627ドルまで下落し衝突前水準を下回った局面でも、7月1日のチヨダウーテと永大産業の改定は実施された。上流の一時的な緩和が下流の改定を止めなかった事例として、記録しておく価値がある。

Chapter 07

受注制限と供給調整の実態

内装下地では、屋根・防水材のような数ヶ月にわたる全面的な受注停止は発生していない。代わりに、数量制限・分納・特定品番の受注停止といった部分的な調整が行われた。なかでも既注文分のキャンセルという措置は、他の分野では確認されていない対応である。

大建工業の3つの対応

大建工業は2026年4月10日付で、現時点で直ちに生産活動へ影響する事態には至っていないとしながらも、通常取引量を大きく上回る注文については数量制限・納期調整・分納を要請する場合があるとの方針を示した。全面停止ではなく、平常時の取引量を基準に配分するという運用である。

同時期に、石油化学製品の高騰を理由としてMDF(中密度繊維板)を再改定している。MDFは合板と並ぶ住宅用パネル材で、ドア・収納・床材の基材として広く使われる。木質材料でありながら接着剤を多用するため、ナフサの影響を受ける。

既注文分のキャンセルという措置について。大建工業では、透湿防水シートR(GA2115-1)が受注一時停止となり、納期未確定の既注文分がキャンセル扱いとなった。受注制限は今後の注文を制約するが、この措置はすでに受け付けた注文を取り消すものである。発注を済ませていれば材料は確保できるという前提が成立しない事例であり、2026年の建設資材のなかでも例外的な対応にあたる。

城東テクノは受注停止から受注制限へ回復

城東テクノは建築樹脂資材について、2026年6月1日から「受注停止」から「受注制限」へ運用を変更した。受注そのものができない状態から、数量に制約はあるものの注文を受け付ける状態へ改善したことになる。屋根・防水材の田島ルーフィングが7月1日に全面再開したのと同様、6月から7月にかけて供給面は回復方向にある。

7月時点での確認事項

内装下地の本体材料である石膏ボードについては、供給制限の公表は確認されていない。7月時点で確認が必要なのは、MDFなどの木質パネル材の数量回答と、特定品番の受注可否である。大建工業の事例が示すとおり、品番単位で扱いが異なるため、製品群ではなく品番で確認する必要がある。

建具・収納については、ウッドワンが4月・6月・8月と3回にわたって改定日程を設定している。供給制限の公表はないが、改定前の駆け込みで注文が集中した場合に納期が延びる可能性がある。受注確定日を優先して調整する場合は、納期回答をあわせて確認されたい。
Chapter 08

コスト構造の見方

内装工事1件あたりの負担増を示した試算は、2026年7月時点で公表資料上確認できていない。ここでは金額を推定せず、要素別の改定率から負担を組み立てる方法を示す。

数値の扱いについて

要素別の改定率から内装工事全体の上昇額を逆算することは、原価に占める各要素の構成比が案件ごとに大きく異なるため適切ではありません。壁・天井の面積、下地の種類(木下地か軽量鉄骨下地か)、仕上げのグレード、建具・収納の点数によって構成比は変わります。当社として2026年7月時点で確認できる範囲では、内装工事1件あたりの負担増を示した公表資料は見当たりません。見積の根拠とされる場合は、自社の実際の使用数量と仕入価格から個別に算出することを推奨します。

要素別に確認できる改定率

要素改定率根拠
石膏ボード20%/20〜50%吉野石膏20%(2026年6月出荷分)、チヨダウーテ20〜50%(2026年7月1日・記載に幅あり)
MDF再改定(率は個別案内)大建工業(2026年4月)
構造用合板(下地)住宅1棟あたり10〜20%合板市況(2026年通年)。内装単体ではなく1棟分の合板コスト
軽量鉄骨下地の鋼材2〜5%/10〜15%東京製鉄2〜5%、日鉄鋼板10〜15%(2026年5月契約分)
壁装材・床材18〜30%サンゲツ18〜30%(2026年7月1日受注分)、東リ20〜30%(2026年7月27日受注分)
床材・室内ドア10〜15%永大産業(2026年7月1日)
建具・収納10〜15%ウッドワン15%(2026年4月15日・8月18日受注分)、南海プライウッド10%(2026年10月1日発送分)
接着剤20%以上セメダイン(2026年4月27日出荷分)

建材全体との関係

新築住宅1棟あたりのコスト増を建材全体で56万円超とする試算が業界専門メディアにより示されており、4,000万円の住宅であれば約1.4%にあたる。ただし当社として2026年7月時点で確認できる範囲では、この試算を公表した媒体名と算定根拠まで遡及できる資料が見当たらない。内装下地に限定した数値でもないため、参考値として扱われたい。

実務上は、自社の過去の見積から要素別の原価構成比を確認し、そこに本記事の改定率を当てはめる方法が現実的である。特に石膏ボードは面積あたりの数量が図面から算出しやすいため、改定率を掛け合わせた影響額を比較的正確に見積もれる要素にあたる。

Chapter 09

7月27日以降の発注設計

内装下地は、他の建材分野と比べて確定している改定日程が多い。2026年7月19日時点で、7月27日・8月18日・10月1日の3つが公表されている。順に近い日付から整理する。

確定している3つの改定日

日付メーカー対象改定率基準
2026年7月27日東リビニール床タイル・床シート・壁装材20〜30%受注分
2026年8月18日ウッドワン住設商品15%受注分
2026年10月1日南海プライウッド家具収納材 全製品一律10%発送分

基準日の違いを整理する

内装下地の改定は基準日が4種類に分かれている。この分野は他より種類が多く、混同すると発注判断を誤る。

基準該当メーカーの例価格が確定するタイミング実務上の留意点
発送分南海プライウッドメーカーが発送した日受注済みでも発送が改定日以降なら新価格
出荷分吉野石膏、セメダインメーカーが出荷した日発送分とほぼ同様。工程遅延が価格上昇に転化する
受注分東リ、ウッドワンメーカーが受注を確定した日受注確定さえ間に合えば旧価格。猶予が最も長い
発注分永大産業(2026年1月改定時)発注が行われた日受注分に近いが、確定の起点が発注側にある

7月から8月にかけて確認すべき4点

第1に、東リの改定が7月27日受注分からであるため、壁装材・床材を含む案件は受注確定日を確認する。受注分基準であるため、出荷が8月以降になる案件でも7月26日までに受注が確定していれば旧価格が適用される。第2に、ウッドワンの8月18日受注分についても同様に、建具・収納を含む案件の受注確定日を整理する。

第3に、要素ごとに見積の基準時点を洗い直す。4月から6月に作成した見積は、7月1日発効のチヨダウーテと永大産業、7月27日の東リを織り込んでいない可能性がある。第4に、発注者・施主への説明である。公共工事では単品スライド条項が特定資材の価格変動を契約金額に反映する仕組みとして用意されており、民間工事では公正取引委員会の価格交渉に関する指針が交渉の根拠となる。

改定率の確認が特に必要な品目

チヨダウーテの石膏ボードについては、Chapter 04で述べたとおり資料により改定率の記載が分かれている。20%と50%では見積への影響が大きく異なるため、製品区分ごとの適用率を取引先へ直接確認する必要がある。石膏ボードは数量が図面から算出しやすい反面、率の幅がそのまま金額の幅になる品目である。

情報の変化について

本記事は2026年7月19日時点で確認できるエビデンスに基づいている。ホルムズ海峡の情勢と各社の改定発表は数日単位で動くため、8月中旬のイスラマバード覚書の交渉期限前後には内容が変わる可能性がある。7月16日にアジアナフサが842ドルへ反発したことを踏まえると、接着剤・添加剤を経路とする追加改定の可能性は7月時点で高まる方向にある。次回更新は2026年8月中旬を予定している。

Chapter 10

用語集

石膏ボード(プラスターボード)

硫酸カルシウムを主成分とする石膏を芯材とし、両面を原紙で覆った面材。壁・天井の下地として最も広く使われる。防火・遮音性能を担うため、内装制限のかかる部位では仕様を変更できない。石油化学製品ではないが、2026年に20〜50%の改定が発表された。

ボード用原紙

石膏ボードの芯材を両面から覆う紙。強度と施工性を左右する。製紙工程でエネルギーを消費するため、ナフサとは独立した経路でコストが変動する。

副産石膏

天然石膏に対し、火力発電所の排煙脱硫工程やリン酸製造工程から発生する石膏。日本の石膏ボード製造で用いられる。発生量が発電所の稼働状況や化学工業の生産動向に左右されるため、鉱物原料でありながら他産業の影響を受ける。

焼成

石膏を加熱して結晶水の一部を除去し、半水石膏にする工程。水と混ぜると再び硬化する性質が得られる。この工程と成形後の乾燥工程の双方で熱を必要とするため、石膏ボードは燃料価格の影響を受けやすい製品である。

MDF(中密度繊維板)

木材繊維を接着剤とともに圧縮成形したパネル材。合板と並ぶ住宅用パネル材で、ドア・収納・床材の基材として使われる。木質材料でありながら接着剤を多用するため、ナフサの影響を直接受ける。大建工業が2026年4月に再改定した。

軽量鉄骨下地(LGS)

薄板の鋼材を成形した内装下地材。間仕切壁や天井の骨組みに用いられ、木下地と並ぶ選択肢である。鋼材価格の影響を受け、2026年は東京製鉄が2〜5%、日鉄鋼板が5月契約分から10〜15%の改定を実施した。

ソーラトン

吉野石膏が製造する化粧石膏ボードの製品名。天井材として用いられる。2026年6月出荷分から石膏関連製品とあわせて20%の改定対象となった。

壁装材(クロス)

石膏ボードの上に施工する内装仕上げ材。塩化ビニル製のものが主流で、こちらはナフサ由来である。東リが2026年7月27日受注分から20〜30%の改定を予定している。

内装制限

建築基準法に基づき、火災時の安全確保のために内装材の燃焼性能を制限する規定。対象となる部位では不燃・準不燃の材料が求められ、石膏ボードが用いられる。仕様を落とす方向のコスト調整が使いにくい理由にあたる。

出荷分・受注分・発送分・発注分

価格改定の適用を判定する基準日の4類型。内装下地では4類型すべてが使われている。出荷分と発送分はメーカー側が製品を出した日、受注分はメーカーが受注を確定した日、発注分は発注が行われた日を基準とする。

分納

注文数量を複数回に分けて納品する方式。全量を一度に確保できない場合の調整手段として用いられる。大建工業が2026年4月10日から、通常取引量を大きく上回る注文について要請する方針を示した。

単品スライド条項

工事請負契約書第26条第5項に定める仕組みで、特定資材の価格変動を契約金額に反映できる。国土交通省は2026年4〜5月に、中東情勢に伴う建設産業分野の対応として同条項の適用を含む通知を整理した。

Chapter 11

出典・エビデンス一覧

出典は、メーカーの公式発表で確認したもの、報道・業界媒体を経由して確認したもの、官庁・業界団体が公表したものの3区分に分けて記載している。

メーカー一次情報

  • 通常取引量を上回る注文に対する数量制限・納期調整・分納の要請に関する公表資料/大建工業株式会社/2026年4月10日
  • 接着剤全製品の価格改定/セメダイン株式会社/2026年4月27日出荷分
  • 建材カタログ価格の改定/株式会社ウッドワン/2026年6月22日受注分

報道・業界媒体

  • 石膏ボードの価格改定に関する業界情報(チヨダウーテ株式会社/2026年7月1日)/「建設業界 資材価格値上げ情報まとめ」クラフトバンク総研
  • 石膏関連製品・ソーラトン製品の価格改定(吉野石膏株式会社/2026年6月出荷分)/リフォームオンライン、クラフトバンク総研
  • MDFの再価格改定および透湿防水シートR(GA2115-1)の受注一時停止(大建工業株式会社/2026年4月)/日刊木材新聞、業界通知
  • 建材・設備、床材、室内ドアの価格改定(永大産業株式会社/2026年7月1日)/建材業界向け価格改定通知
  • 建材一律15%の価格改定(株式会社ウッドワン/2026年4月15日)/リフォームオンライン、中国新聞デジタル
  • 住設商品15%の価格改定(株式会社ウッドワン/2026年8月18日受注分)/新建ハウジング/2026年5月
  • ビニール床タイル・床シート・壁装材の価格改定(東リ株式会社/2026年7月27日受注分)/業界通知
  • 壁装材・床材・ファブリック・エクステリア・副資材・接着剤の価格改定(サンゲツ株式会社/2026年7月1日受注分)/同社IR資料、業界通知
  • 家具収納材 全製品一律10%の価格改定(南海プライウッド株式会社/2026年10月1日発送分)/業界通知
  • 建築樹脂資材の受注停止から受注制限への変更(城東テクノ株式会社/2026年6月1日)/業界通知
  • 建築用鋼材の価格改定(日鉄鋼板株式会社/2026年5月契約分)、鋼材の価格改定(東京製鉄株式会社)/業界通知
  • 「日本の原油タンカー、全てホルムズ海峡通過」/日本経済新聞/2026年7月13日
  • ナフサ価格推移表/大景化学/2026年7月16日時点
  • アジアナフサ価格に関する報道/日本経済新聞/2026年6月25日

官庁・制度・業界統計

  • 中東情勢に伴う建設産業分野の対応に関する通知(単品スライド条項の適用等)/国土交通省/2026年4〜5月
  • 建設工事費デフレーター(2015年度基準・建設総合)/国土交通省/2026年1月分
  • 「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」/公正取引委員会
  • 「中東情勢等を踏まえた中小企業・小規模事業者向け支援について」/中小企業庁/2026年3月23日
  • 建築基準法に基づく内装制限の規定/国土交通省

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Chapter 12

よくあるご質問

石膏ボードは石油製品ではないのに、なぜ値上がりするのですか

値上がりの経路が4つあり、ナフサはそのうち1つにすぎないためです。第1に石膏の芯材を覆うボード用原紙、第2に芯材と原紙の接着や性能調整に使うナフサ由来の化学品、第3に石膏を焼成する工程と成形後の乾燥工程で必要となる熱、第4に製品も原料も重量物であることによる物流費です。このうちナフサ価格が直接反映されるのは第2の経路だけで、残る3つは燃料価格や電力価格を経由します。原油市況が上がれば、原料が鉱物であってもコストは上昇する構造です。

チヨダウーテの改定率は20%ですか、50%ですか

資料により記載が分かれており、当社として2026年7月時点で確定できていません。「2026年7月1日から20〜50%」と予告を伝える業界情報がある一方、「20%を表明済み」と記載する資料もあります。製品区分ごとに率が異なる可能性も考えられます。20%と50%では見積への影響が大きく異なりますので、適用率は取引先へ直接ご確認ください。石膏ボードは図面から数量を算出しやすい反面、率の幅がそのまま金額の幅になる品目です。

ナフサ由来でない材料に切り替えればコストを抑えられますか

2026年の実績に照らすと、この方法は成立していません。断熱材では石油系から鉱物系への切り替えが対応策として挙げられてきましたが、鉱物系も6月から9月にかけて15〜25%以上の改定が実施または予告されました。石膏ボードはさらにその先で、原料が鉱物と紙でありながら20〜50%の改定が発表されています。エネルギーと物流はほぼすべての資材に共通するコストであり、原油市況の影響から完全に外れる建設資材は事実上ありません。切り替えによる回避よりも、改定日程を前提とした発注管理のほうが実効性があります。

いま最も近い改定日はいつですか

2026年7月19日時点で確定している直近の改定は、7月27日受注分からの東リによるビニール床タイル・床シート・壁装材の20〜30%です。その後は8月18日受注分のウッドワン住設商品15%、10月1日発送分の南海プライウッド家具収納材一律10%と続きます。いずれも基準日の種別が異なり、東リとウッドワンは受注分、南海プライウッドは発送分です。受注分基準の場合、出荷が改定日以降になる案件でも受注確定が間に合っていれば旧価格が適用されます。

なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか

当社は千葉県我孫子市に本社を置き、プラスチックパレット・再生樹脂材料・PPバンド・ストレッチフィルム等の物流資材を全国のお客様にお届けする専門商社です。内装下地に使われる接着剤や壁装材は、当社が扱う物流資材と同じくナフサを起点とする石油化学製品です。またエネルギー価格と物流費の上昇は、当社の再生樹脂材料や梱包資材にも同じ経路で作用しています。日々の調達業務で確認している一次情報を、同じ構造の影響を受ける建設業のみなさまにも活用いただけるよう、記事として整理して公開しています。

免責事項 / Disclaimer
  1. 本記事の内容は2026年7月19日時点で確認できる情報に基づいています。ホルムズ海峡の情勢および各社の価格改定発表は短期間で変動するため、記載内容が現時点の状況と異なる場合があります。
  2. 掲載した改定率・基準日・数量は各社の公式発表および報道に基づく参考値です。実際の適用価格は製品仕様・取引条件・出荷日・販売ルートにより異なります。ご発注の際は必ず各社の最新情報をご確認ください。
  3. 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の投資判断・取引判断を推奨するものではありません。調達・発注の判断は読者ご自身の責任において行ってください。
  4. 海外報道および英語資料を参照した箇所については、要約および翻訳の過程で原文のニュアンスが完全には再現されない可能性があります。正確な内容は各出典元の原資料をご参照ください。
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