【2026年7月版】中東依存を10年前に脱していたLPGがなぜ過去最高値になったのか、米国産への需要集中とパナマ運河が示す代替調達の限界
LPGの中東依存度は2011年度の86.6%から2023年度には4.7%まで下がった。代替調達は10年以上前に完了していた。それでも2026年、輸入単価は過去最高水準に達している。資源エネルギー庁が「北米への一極集中」と記す構造を、依存度が高いのに供給に支障が生じなかったLNGと並べて整理し、調達構造を評価する視点を提示する。
- LPGの輸入単価は2026年4月速報値で1トン115,660円、前月比20,175円(21%)上昇し過去最高水準となった。中東依存度は2023年度で4.7%まで下がっていた。
- 依存先が中東から北米へ移っただけで、米国が61.5%を占める一極集中は残っていた。ホルムズ海峡の封鎖で世界の需要が米国産に集中し、現地価格と海上運賃が同時に上がったためである。
- LNGは豪州39.7%・マレーシア14.8%・ロシア8.9%と輸入先が分散しており、ホルムズ依存度は6.3%。経済産業省は在庫も同水準を保有し電力の安定供給に支障は生じていないとしている。
LPGは中東依存度を4.7%まで下げながら、2026年4月に115,660円/トンと過去最高水準になった。理由は米国61.5%という新たな一極集中である。他国の需要が同じ供給元に向かえば、現地価格と運賃が同時に上がる。当社は多角化が供給を守るが価格は守らないと整理している。輸入先が分散したLNGとの差がこれを示す。
2026年7月19日時点の現在地
2026年のエネルギー調達を振り返るとき、LPGは特異な位置にある。中東依存からの脱却を10年以上前に完了していた品目でありながら、輸入単価が過去最高水準に達した。代替調達を進めれば価格を守れるという見方が成り立たないことを、最もはっきり示している。
依存度4.7%で過去最高値
資源エネルギー庁の「エネルギー動向」によると、LPガス輸入の中東依存度は2011年度の86.6%から2023年度には4.7%へ低下した。同じ2023年度、米国からの輸入は61.5%を占めている。シェール革命による米国産の増加と、2016年6月に完了したパナマ運河の拡張が背景にある。
一方、日本経済新聞は2026年6月8日、LPGの輸入価格が過去最高水準になったと報じた。貿易統計の2026年4月速報値で、輸入額を輸入量で割った単価は1トンあたり115,660円、前月比20,175円(21%)の上昇である。ホルムズ海峡の実質的な封鎖で中東産の出荷が滞り、米国産に世界の需要が集中したこと、現地価格の上昇に海上運賃の高騰が加わったことが要因とされる。
第1に、依存先が移っただけで一極集中は残っていた。資源エネルギー庁は「北米への一極集中が進んでいる」と明記している。中東から北米へ移動しただけであり、単一地域への集中という構造は変わらなかった。
第2に、供給は守られた。日本のLPGは輸入量の40日分にあたる約106万トンが民間備蓄として義務づけられ、国家備蓄と合わせて約245万トンが確保されている(2026年3月末時点)。出荷停止や配給制限の発表は確認されていない。
第3に、LNGは異なる結果になった。2025年のLNG輸入は豪州39.7%、マレーシア14.8%、ロシア8.9%と分散しており、ホルムズ依存度は6.3%である。経済産業省は代替調達も進んでおり電力の安定供給に支障は生じていないとしている。
3月から7月までの時系列
LPGの価格は、サウジアラムコが毎月通告するCPと、実際に通関した価格で動きが異なる。系列を明示しながら推移を整理する。
2026年5月以降のCPの推移について、当社として本記事の作成時点で公表資料を確認できていない。4月積みの750ドルが本記事で確認できる範囲の最高値である。
LPG価格の3系列
LPGの価格も、ナフサと同じく複数の系列がある。どの系列を見ているかで数字が変わるため、混同すると調達判断を誤る。
| 系列 | 何を示すか | 基準 | 公表元 |
|---|---|---|---|
| ① CP (Contract Price) |
サウジアラムコが輸入国に通告する公式販売価格。中東産の基準となる | 積み月ベース | サウジアラムコ(月次) |
| ② MB (Mont Belvieu) |
米国テキサス州の取引価格。米国産LPGの国際的な指標として扱われる | 市場実勢 | 米国市場 |
| ③ 通関CIF単価 | 輸入額を輸入量で割った実勢値。運賃・保険料を含む | 到着月ベース | 財務省 貿易統計 |
CPと通関CIFは基準月が違う
CPは積み月ベース、通関CIF単価は到着月ベースである。4月積みのCPが750ドルであっても、その貨物が通関するのは翌月以降になる。したがって2026年4月速報の通関単価115,660円/トンは、それ以前に積まれた貨物を含む数値である。両者を同じ月で並べて差額を取ると、意味のない計算になる。
この構造は、当社がナフサで整理したものと同じである。ナフサではアジアスポット市況・輸入CIF・国産基準価格の3系列に約2ヶ月ずつの時差があった。LPGでも積み月と到着月の間に時間差が存在する。
実際の取引単価について
個社ごとの契約単価は公開されていない。公開されている数値のなかでは、CPが実際の取引価格に最も近い。サウジアラムコが毎月、日本のLPG元売各社に通告する公式販売価格だからである。通関CIF単価は輸入額を輸入量で割った平均値であり、個別の取引を示すものではない。
代替調達では、公式価格に加えてプレミアムが上乗せされる場合があります。ただし当社として2026年7月時点で確認できる範囲では、LPGのプレミアム部分を数値で示した公表資料は見当たりません。通関CIF単価にはCPまたはMBを基礎とする商品代金のほか、運賃・保険料・プレミアムが含まれますが、その内訳は公表されていません。CIF単価とCPの差額から逆算する方法も考えられますが、前述のとおり両者は基準月が異なるため計算が成立しません。本記事では構造の説明にとどめ、推計値は掲載していません。
中東依存は10年前に脱していた
2026年の原油・ナフサでは、中東依存が高いことが問題として論じられた。LPGはその逆である。すでに脱却を終えていた品目に何が起きたかを見ると、代替調達の意味が別の角度から見えてくる。
依存度の推移
| 時点 | 中東依存度 | 出典 |
|---|---|---|
| 2007年度 | 91% | 日本経済新聞/2026年4月7日 |
| 2011年度 | 86.6% | 資源エネルギー庁 エネルギー動向 |
| 2022年度 | 1割未満 | 日本経済新聞/2026年4月7日 |
| 2023年度 | 4.7% | 資源エネルギー庁 エネルギー動向 |
転換の起点は2013年である。シェールオイル・シェールガスの開発に随伴して生産される米国産LPGの輸入が始まり、2015年度には早くも米国が最大の輸入元となった。2016年6月にパナマ運河の拡張が完了し、大型LPG船の通航が可能になったことが、この流れを加速させている。
日本経済新聞は2026年4月7日、LPGについて中東依存度が2007年度の91%から2022年度には1割未満まで下がり、主に米国・カナダ・オーストラリアの3カ国から輸入していると報じた。2026年の情勢下では、この転換を先行事例として評価する見方もある。
資源エネルギー庁は「一極集中」と記している
しかし同庁の記述には、続きがある。エネルギー動向は、米国が2023年度に61.5%という高いシェアを占めている状況について、中東依存度が大きく低下し「逆に北米への一極集中が進んでいる」と整理している。
依存先が中東から北米へ移ったのであって、単一地域への集中という構造そのものは変わっていない。この記述は2026年の情勢より前になされたものである。
国内供給の構造
日本LPガス協会によると、国内で使われるLPガスの約85%は輸入品で、残りは原油精製時および化学製品の生産時に発生する国内生産分である。備蓄については、輸入量の40日分にあたる約106万トンが民間備蓄として法律で義務づけられ、国家備蓄と合わせて約245万トンが確保されている(2026年3月末時点)。
なお、法律によって備蓄が義務づけられているエネルギーは石油とLPガスの2種類のみである。天然ガスに備蓄義務はない。ナフサも国家備蓄制度の対象外であり、この点はLPGと大きく異なる。
それでも過去最高値になった理由
中東からの輸入が4.7%しかないのであれば、ホルムズ海峡が封鎖されても影響は限定的なはずである。しかし2026年4月の輸入単価は過去最高水準になった。日本経済新聞が示した理由は3つである。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 需要の集中 | ホルムズ海峡の実質封鎖で中東産LPGの出荷が滞り、米国産に世界の需要が集中した |
| 現地価格の上昇 | 需要が集中したことで、米国での現地価格が上昇した |
| 海上運賃の高騰 | 運賃の上昇が値上がりに拍車をかけた |
自国が買っていなくても価格は上がる
重要なのは第1の要因である。日本が中東からLPGを買っていなくても、他国が中東から買えなくなれば、その需要は日本と同じ供給元へ向かう。ここから当社は、国際商品において供給元を変えることは自国の物理的な調達を守るが、価格を守ることにはならないと整理している。なおこの整理は、日本経済新聞が示した3つの要因をもとに当社が導いたものであり、同紙がこの表現を用いているわけではない。
2026年のLPGは、この点を数字で示した事例である。中東依存度4.7%という水準は、原油やナフサと比べて桁が違う。それでも輸入単価は前月比21%上昇し、過去最高水準に達した。
石油化学原料としてのLPG
LPGは家庭用のプロパンだけでなく、石油化学原料となるブタンを含む。ナフサと代替関係にあり、価格差によって使い分けられる。国際エネルギー機関によれば、2025年にホルムズ海峡を通過していたLPGは日量150万バレル、ナフサは日量120万バレルの規模であった。
2026年には、この代替関係が実際に働いた。中国ではLPG・エタン不足の一部が、ナフサの代替使用によって補われている。規模は年間で日量9万バレル増とされる。LPGが不足するとナフサの需要が増え、ナフサの需給にも作用するという関係である。
当社が扱う物流資材の多くはナフサ由来であるため、LPGの需給はナフサを経由して間接的に影響する。LPGとナフサを別の市場として見るのではなく、代替関係にある1つの原料群として捉える必要がある。
パナマ運河という経路の制約
中東から北米へ調達先を移すと、輸送経路も変わる。米国メキシコ湾岸からアジアへ向かう航路では、パナマ運河が要となる。この経路が2026年に新しい制約として表れた。
通航量が2013年以降で最高に
日本経済新聞は2026年5月12日、パナマ運河を通る原油や石油製品の量が4月に日量177万バレルへ達し、データのある2013年以降で最高となったと報じた。2025年平均の日量102万バレルから74%の増加である(欧州調査会社ケプラー)。ホルムズ海峡の実質封鎖で中東産の輸入が減ったアジア各国が、米国産の調達を急いだ結果とされる。同紙は、運賃や通航料の上昇が石油の調達価格を押し上げると指摘している。
拡張が生んだ依存
2016年6月に完了したパナマ運河の拡張は、日本のLPG調達にとって転換点であった。それ以前、パナマ運河を通れる最大船型を超える船で北米湾岸とアジアを結ぶには、アフリカ南端を回るか、パナマ運河で小型船に積み替える必要があった。拡張により大型LPG船の直航が可能になり、米国産のシェア拡大につながった。
同時に、この経路への依存も生まれた。ホルムズ海峡という制約を回避した先に、パナマ運河という別の制約があったことになる。運河は通航容量に限りがあり、通航料も運営者の判断で変わる。
豪州・カナダという選択肢
日本LPガス協会は、近年オーストラリアやカナダの新規天然ガスプロジェクトに伴うLPGの増産体制が確立され、調達先の多様化が進んでいるとしている。日本経済新聞も2026年4月7日、LPGの輸入先を米国・カナダ・オーストラリアの3カ国と報じた。
豪州からの調達はパナマ運河を通らない。カナダは西岸からの積み出しであれば同様である。米国61.5%という比率のなかで、これらの調達先がどこまで比率を高められるかが、経路の分散という観点では論点になる。ただし各国別の直近シェアについて、当社として本記事の作成時点で確認できる公表資料は2023年度のものにとどまる。
LNGとの対比、なぜ結果が分かれたか
LNGもまた、中東依存度が低い品目である。しかし2026年の結果はLPGと異なった。両者の違いを見ることで、何が価格と供給を分けたのかが具体的に見えてくる。
LNGの調達構造
ジェトロによると、2025年の日本のLNG輸入はカタールが5.3%、UAEが1.0%で、ホルムズ海峡依存度は6.3%であった。ホルムズ海峡を通過しないオマーンからの4.5%を加えると、中東全体では10.8%となる。輸入先の内訳はオーストラリアが39.7%と最多で、マレーシアが14.8%、ロシアが8.9%と続く。
| 項目 | LPG | LNG |
|---|---|---|
| 中東依存度 | 4.7%(2023年度) | 10.8%/ホルムズ経由は6.3%(2025年) |
| 最大の輸入元 | 米国 61.5%(2023年度) | 豪州 39.7%(2025年) |
| 第2・第3の輸入元 | カナダ・オーストラリア(比率は未確認) | マレーシア14.8%、ロシア8.9% |
| 備蓄の義務 | あり(輸入量の40日分) | なし |
| 2026年の価格 | 4月速報で過去最高水準 | 本記事作成時点で単価の推移を確認できていない |
| 2026年の供給 | 出荷停止等の発表は確認されていない | 電力の安定供給に支障は生じていない(経済産業省) |
分散の度合いが違った
両者の中東依存度は、LPGが4.7%、LNGが10.8%であり、数字だけを見ればLPGのほうが低い。しかし最大の輸入元が占める比率は、LPGが61.5%、LNGが39.7%である。LNGは豪州・マレーシア・ロシアと複数国に分かれており、単一国への集中度がLPGより低い。
資源エネルギー庁がLPGについて「北米への一極集中」と記した一方で、LNGについては供給源の多様化が進んでいると整理している。2012年度に19.6%であった豪州の割合は2023年度に41.0%まで拡大したが、2014年度にパプアニューギニアから、2016年度に米国本土からの輸入が始まるなど、供給源そのものが増えている。
在庫という備え
経済産業省は2026年3月末の資料で、日本のLNGについてホルムズ経由の輸入は6%程度、年間400万トン程度であるのに対し、電力・ガス事業者がほぼ同水準の在庫(400万トン程度)を保有していると示した。代替調達も着実に進んでおり、現時点で電力の安定供給に支障は生じていないとしている。さらに万全を期す観点から、発電効率が低い石炭火力について年間の設備利用率を50%以下とする方針も示された。
なお、カタールエナジーは2026年3月10日、天然ガス施設の被害を受けてLNGの生産停止を発表している。カタールはLNGの世界輸出で19.6%のシェアを占めており、日本向けの比率が低くても国際市場には影響する。日本が受けた影響が限定的であったのは、輸入先の分散と在庫の両方が働いた結果と考えられる。
中東依存度という単一の指標では、調達の強さを測れない。LPGは依存度4.7%でも価格が過去最高水準となり、LNGは依存度10.8%でも供給に支障が生じなかった。当社は、分かれ目が最大の輸入元が占める比率と在庫の水準にあったと整理している。調達構造を評価する際は、依存度に加えてこの2点を見る必要がある。
マレーシア・インドネシアの位置
2026年の代替調達において、東南アジアは複数の役割を担った。LNGの供給元、原油の代替調達先、そして日本企業の上流権益の所在地である。それぞれ性質が異なる。
LNGの供給元として
マレーシアは2025年のLNG輸入で14.8%を占め、豪州に次ぐ第2位である。ただし資源エネルギー庁は、マレーシアからのLNG輸入について2000年代半ばをピークに割合を年々減らしていると整理している。インドネシアはさらに早く、1980年代半ばがピークであった。長期的には比率が下がってきた供給元にあたる。
原油の代替調達先として
経済産業省は2026年3月31日の資料で、中東以外からの調達拡大に向けてアジアではマレーシア、アフリカではナイジェリアやアンゴラ等の産油国、石油製品の供給国としてカナダやシンガポール等にアプローチしていることを示した。マレーシアは、LNGだけでなく原油についても代替調達先として位置づけられている。
上流権益の所在地として
資源エネルギー庁が2026年5月15日に示した資料には、日本企業が保有する上流権益の一覧がある。マレーシアではサラワク陸上に出光興産、インドネシアではINPEXが権益を持つ。上流権益は、日本企業が産油国・産ガス国で自ら探鉱・開発・生産を行い、生産された石油・天然ガスの一定割合を取得する仕組みである。
ただし権益からの取得量が日本の需要に占める比率について、当社として本記事の作成時点で確認できる公表資料は見当たらない。調達の安定性にどの程度寄与しているかは、この比率が示されなければ評価できない。
アジア全体の枠組みとして
2026年4月15日、エネルギーや重要物資のサプライチェーン強靱化に向けて、アジアの国々と協力を進めることを目的としたAZEC+のオンライン首脳会合が開催された。5月5日にはUAEのジャーベル産業・先端技術大臣兼アブダビ国営石油GroupCEOとの会談が行われ、パワー・アジアに基づくアジアでの備蓄協力などが提案されている。
東南アジアは供給元であると同時に、日本と同じくエネルギーを輸入する立場でもある。当社のアジア石化再編に関する記事で扱ったとおり、2026年には各国が異なる対応を選択した。調達先として見るだけでなく、同じ市場で競合する需要家としても捉える必要がある。
調達実務への含意
2026年のLPGから、調達実務に持ち帰れる論点を整理する。特定の対応を推奨するものではなく、判断材料として提示する。
依存度だけでは測れない
Chapter 07で見たとおり、中東依存度が低いことは価格の安定を意味しなかった。調達構造を評価する際は、依存度に加えて最大の供給元が占める比率、輸送経路の分散、在庫の水準という複数の観点が必要になる。LPGは依存度4.7%を達成しながら、米国61.5%という集中と、パナマ運河への経路集中を抱えていた。
系列を確認してから判断する
LPGの価格を確認する際は、どの系列を見ているかを明示する必要がある。CPは積み月ベースの公式販売価格、通関CIF単価は到着月ベースの実勢値である。報道で「LPGが値上がり」とある場合、CPの通告なのか通関実績なのかで意味が変わる。仕入価格の交渉では、取引先がどの系列を基準としているかを確認することになる。
ナフサとの代替関係を踏まえる
LPGとナフサは石油化学原料として代替関係にある。LPGが不足すればナフサの需要が増え、その逆も生じる。当社が扱う物流資材はナフサ由来であるため、LPGの需給を確認しておくことは、ナフサの先行きを読む材料になる。中国でLPG・エタン不足の一部がナフサ代替で補われた事例は、この関係が実際に働くことを示している。
2026年7月時点で確認すべき4点
第1に、自社が使用するLPGについて、取引先の価格改定がどの系列に連動しているかを確認する。第2に、通関CIF単価の推移を貿易統計で追う。2026年4月速報値の115,660円/トンが直近で確認できる水準である。第3に、ナフサの推移とあわせて見る。7月16日時点で輸入ナフサ価格は1トン842ドル、国産ナフサ価格指標は96,965円/kLである。第4に、パナマ運河の通航状況を確認する。米国産の調達がこの経路に依存するためである。
本記事は2026年7月19日時点で確認できるエビデンスに基づいている。ホルムズ海峡の情勢とエネルギー市況は数日単位で動くため、8月中旬の交渉期限前後には内容が変わる可能性がある。LPGの輸入単価は2026年4月速報値、輸入先の構成は2023年度、LNGの輸入先は2025年と、それぞれ基準時点が異なる点にご留意いただきたい。次回更新は2026年8月中旬を予定している。
用語集
主に油田や天然ガス田の採掘に伴う随伴ガス、石油精製設備の副生ガスから取り出される。家庭の暖房・給湯に使うプロパンと、石油化学原料となるブタンに分かれる。日本で使われるLPガスの約85%が輸入品である。
サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコが、輸入国の取引先に毎月通告するLPGの公式販売価格。原油価格の動向と市場の需給を考慮して決定される。中東産LPGの基準価格として扱われ、積み月ベースで示される。
米国テキサス州の地名で、同地で取引されるLPGの価格を指す。全米で生産されたガスがパイプラインで集約され精製されるため、国際市場において米国産LPGの指標価格として扱われる。
財務省の貿易統計において、輸入額を輸入量で割って算出される単価。運賃・保険料を含み、到着月ベースで集計される。2026年4月速報値でLPGは1トン115,660円であった。
LPGを構成する2つの成分。プロパンは主に家庭用の暖房・給湯に、ブタンは石油化学原料に用いられる。サウジアラムコはCPを両者それぞれについて通告する。
米国のシェールオイル・シェールガス開発に伴って生産されるLPG。日本は2013年から輸入を開始し、2015年度には米国が最大の輸入元となった。
法律により民間企業に義務づけられる備蓄。LPGでは輸入量の40日分にあたる約106万トンが対象となる。国家備蓄と合わせて約245万トンが確保されている(2026年3月末時点)。備蓄が義務づけられているエネルギーは石油とLPガスの2種類のみで、天然ガスに義務はない。
Very Large Gas Carrier の略で、大型LPG運搬船を指す。2016年6月のパナマ運河拡張により、従来は通航できなかった船型の直航が可能になった。
2016年6月に完了した拡幅工事。通航可能な最大船型が大きくなり、北米湾岸とアジアを結ぶ航路で大型船の直航が可能になった。米国産LPGのシェア拡大を支えた要因の1つである。
天然ガスに含まれる成分で、石油化学の原料となる。分解してエチレンを得る。ナフサより安価な原料として、米国や中東の石化産業で用いられる。2026年は不足分の一部が中国でナフサ代替により補われた。
日本企業が産油国・産ガス国において自ら石油・天然ガスの探鉱・開発・生産を行い、生産された分の一定割合を取得する仕組み。マレーシアのサラワク陸上は出光興産、インドネシアはINPEXが権益を持つ。
アジア地域におけるエネルギー供給の強靱化を目的とした日本の構想。生産施設や代替ルートへの金融支援、備蓄協力などが含まれる。2026年5月のUAEとの会談でも提案された。
出典・エビデンス一覧
出典は、報道・業界媒体、官庁・業界団体、当社の関連記事の3区分に分けて記載している。個社の契約単価は公開されていないため、本記事では公表されている価格系列のみを掲載している。
報道・業界媒体
- 「輸入LPGが最高値、中東代替で米国産上昇 運賃高騰が拍車」(貿易統計4月速報値で単価1トン115,660円、前月比20,175円・21%上昇)/日本経済新聞/2026年6月8日
- 「中東産LPGの対日価格、3月積み据え置き 今後は中東リスク警戒」(プロパン1トン545ドル、ブタン1トン540ドル、据え置きは6ヶ月ぶり)/日本経済新聞/2026年3月9日
- 「中東産LPGの対日価格、3年ぶり高値 5月にも家庭用ガス値上がり」(4月積みプロパンは前月比205ドル・38%高の1トン750ドル、2023年2月以来の高値)/日本経済新聞/2026年4月8日
- 「パナマ運河を通る石油7割増 アジア各国、中東代替で米国産シフト」(4月の通航量は日量177万バレルで2013年以降最高、2025年平均比74%増。欧州調査会社ケプラー)/日本経済新聞/2026年5月12日
- 「LPガス、エネ調達『勝ち組に』 中東依存度15年で9割から1割未満に」(2007年度91%から2022年度に1割未満、主に米国・カナダ・オーストラリアの3カ国から輸入)/日本経済新聞/2026年4月7日
- 「日本のLNG輸入量のホルムズ海峡依存度は6.3%、LNG生産停止中のカタールのシェアは5.3%」(2025年。豪州39.7%、マレーシア14.8%、ロシア8.9%。世界輸出シェアは米国21.2%、豪州19.6%、カタール19.6%)/ジェトロ/2026年3月
官庁・業界団体
- 「エネルギー動向(2025年6月版)第1章第3節 一次エネルギーの動向」(LPガス輸入の中東依存度は2011年度86.6%から2023年度4.7%へ低下、米国シェア61.5%、北米への一極集中。LNGの中東依存度9.4%、豪州41.0%)/経済産業省 資源エネルギー庁
- 「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保」資料2(LNGのホルムズ経由輸入は6%・年間400万トン程度、電力・ガス事業者はほぼ同水準の在庫を保有。マレーシア等アジア、ナイジェリア・アンゴラ等アフリカ、カナダ・シンガポール等へのアプローチ)/経済産業省/2026年3月31日
- 「燃料調達をめぐる動向と電力・ガスの安定供給について」資料7/資源エネルギー庁/2026年3月27日
- 「資源・燃料政策を巡る状況について」資料3(上流権益一覧、2026年5月5日のUAEジャーベル大臣との会談、2026年4月15日のAZEC+オンライン首脳会合)/資源エネルギー庁 資源・燃料部/2026年5月15日
- 「LPガス事業の現在:供給」(国内使用の約85%が輸入、民間備蓄は輸入量の40日分・約106万トン、国家備蓄と合わせ約245万トン。2026年3月末時点)/日本LPガス協会
- ホルムズ海峡経由の輸送規模に関する分析(2025年のLPGは日量150万バレル、ナフサは日量120万バレル)/国際エネルギー機関
当社の関連記事
- 「【ナフサ・原油完全まとめ】2026年ナフサ価格3系列の全記録、スポット・通関CIF・国産基準価格が2ヶ月ずつずれて伝わる構造」/2026年7月19日
- 「イラン情勢×ナフサショックで露呈する非中東原油代替の落とし穴─運賃3倍・OSP19.5ドル・歩留まり差が全石油製品を押し上げる構造【2026年6月】」/2026年6月2日
- 「アジア石化再編2026|イラン情勢×フィードストック革命×「使いこなす力」の時代」/2026年5月16日
- 「【2026年7月11日速報】ウクライナSBUドローン、露製油所を年間194回打撃、精製能力42.7%喪失・損害$135億、ガソリン輸出禁止・ディーゼル禁輸で世界原油・LPG需給に構造的圧力」/2026年7月11日
よくあるご質問
中東依存度が4.7%なのに、なぜホルムズ海峡の封鎖で値上がりするのですか
日本が中東から買っていなくても、他国が中東から買えなくなれば、その需要は日本と同じ供給元へ向かうためです。日本経済新聞によれば、ホルムズ海峡の実質封鎖で中東産LPGの出荷が滞り、米国産に世界の需要が集中しました。その結果、米国での現地価格が上昇し、海上運賃の高騰も加わって輸入単価が押し上げられています。国際商品において、供給元を変えることは自国の物理的な調達を守りますが、価格を守ることにはなりません。
LPGの実際の取引単価はどこで確認できますか
個社ごとの契約単価は公開されていません。公開されている数値のなかでは、サウジアラムコが毎月通告するCPが実際の取引価格に最も近い指標です。2026年3月積みはプロパン1トン545ドル、4月積みは750ドルでした。このほか財務省の貿易統計に通関CIF単価があり、2026年4月速報値は1トン115,660円です。ただしCPは積み月ベース、通関CIF単価は到着月ベースで基準が異なるため、同じ月の数値を並べて差額を取ることはできません。
代替調達のプレミアムはいくらですか
当社として2026年7月時点で確認できる範囲では、LPGのプレミアム部分を数値で示した公表資料は見当たりません。通関CIF単価にはCPまたはMBを基礎とする商品代金のほか、運賃・保険料・プレミアムが含まれますが、その内訳は公表されていません。CIF単価とCPの差額から逆算する方法も考えられますが、両者は基準月が異なるため計算が成立しません。本記事では構造の説明にとどめ、推計値は掲載していません。実際のプレミアムについては、取引先へ直接ご照会ください。
LNGは同じ影響を受けなかったのですか
経済産業省は2026年3月末の資料で、LNGのホルムズ経由輸入は6%程度・年間400万トン程度であるのに対し、電力・ガス事業者がほぼ同水準の在庫を保有しており、代替調達も進んでいるため電力の安定供給に支障は生じていないとしています。2025年の輸入先は豪州39.7%、マレーシア14.8%、ロシア8.9%と分散しており、最大の輸入元が占める比率はLPGの61.5%より低い水準です。中東依存度そのものはLNGのほうが高いものの、分散の度合いと在庫の水準が結果を分けたと考えられます。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか
当社は千葉県我孫子市に本社を置き、プラスチックパレット・再生樹脂材料・PPバンド・ストレッチフィルム等の物流資材を全国のお客様にお届けする専門商社です。当社が扱う資材はナフサ由来であり、LPGはそのナフサと石油化学原料として代替関係にあります。LPGが不足すればナフサの需要が増えるため、LPGの需給はナフサの先行きを読む材料になります。また代替調達を完了していた品目に何が起きたかは、調達構造を考えるうえで当社自身の実務課題でもあります。日々確認している一次情報を、記事として整理して公開しています。
- 本記事の内容は2026年7月19日時点で確認できる情報に基づいています。ホルムズ海峡の情勢およびエネルギー市況は短期間で変動するため、記載内容が現時点の状況と異なる場合があります。
- 掲載した価格・シェア・依存度は各官庁・業界団体・報道に基づく参考値です。LPGの輸入単価は2026年4月速報値、輸入先の構成は2023年度、LNGの輸入先は2025年と基準時点が異なります。実際の適用価格は取引条件により異なりますので、ご発注の際は必ず取引先の最新情報をご確認ください。
- 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の投資判断・取引判断を推奨するものではありません。調達・発注の判断は読者ご自身の責任において行ってください。
- 海外報道および英語資料を参照した箇所については、要約および翻訳の過程で原文のニュアンスが完全には再現されない可能性があります。正確な内容は各出典元の原資料をご参照ください。
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