建設資材のレポート / アスファルト混合物

アスファルト合材はなぜ過去最高値か、需要3割減でも上がる理由

2026年7月19日 公開2026年10月23日 更新(本文は7月19日時点の情報)読む時間 約22分

この記事の答え

何が起きた
建設物価調査会によると、合材の価格は2026年1月号比で433都市平均2,302円/t上がり、各地で過去最高値を更新しました。出荷量は、2013年のピークから2025年に約32%減っています。
工事の費用への影響
上がった理由は需給ではなく原料です。国土交通省の5月調査で需給は「均衡」、在庫は「普通」で、需要の減少は価格交渉の材料になりません。
確かめておくこと
契約済みの案件で、いつの時点の合材価格が適用されるか(取引先への照会)。進行中の公共工事で、単品スライド条項を使えるか。
次に見るところ
原油とストレートアスファルトの価格です。建設物価調査会は、両者は概ね連動し、タイムラグがあると整理しています。
この記事のあとの動き(2026年10月23日時点)

この記事で「〜の見通し」「〜の予定」と書いた時期(8月中旬の次回更新など)は、すでに過ぎています。本文の数字と動きは、公開した7月19日時点のものです。

最新の数字と動きは、毎月更新している建設資材の完全まとめで確かめてください。

合材の上昇幅(2026年6月号・7月号)2,302円/t433都市平均・2026年1月号比。建設物価調査会
ストレートアスファルト(2026年6月号)142,000円/t東京。過去最高水準。建設物価調査会
合材の出荷量(2013年→2025年)約32%減2013年がピーク。建設物価調査会のリポート

再生アスファルト混合物(密粒度13・東京14区)は、2022年1月号比で約49%上がっています。これは4年半の累積で、単年の率ではありません。

7月19日時点で、需要は縮み、価格は過去最高値を更新した

合材の価格は2026年1月号比で433都市平均2,302円/t上がり、各地で過去最高値を更新しました。一方で、出荷量は2013年のピークから約32%減っています。

アスファルト合材は、これまで当社が扱ってきた建設資材とは、価格の決まり方が異なります。塗料・断熱材・サッシは、ナフサから分かれる石油化学製品です。

アスファルトは、原油を蒸留した後に残る最も重い成分です。同じ原油を起点としながら、経路がまったく異なります。

需要は縮小し、価格は最高値を更新した

建設物価調査会は2026年6月18日に、リポートを公表しました。アスファルト混合物の価格は、Web建設物価2026年6月号・7月号で上がっています。2026年1月号比で、433都市の平均が2,302円/tの上昇です。

同会は、各地で過去最高値を更新していると整理しています。ストレートアスファルトの東京価格は、2026年6月号で142,000円/tとなり、過去最高水準に達しました。

一方で、需要は縮小しています。同リポートによれば、合材は2013年をピークに、2025年には約32%減りました。ストレートアスファルトは、2012年から2025年にかけて約57%減です。

震災復興需要による一時的な増加を経て、その後は市場の縮小が続いてきました。需要が3分の2以下に落ちながら、価格は最高値をつけています。通常の需給関係では説明できない状況です。

2026年7月19日時点で押さえるべき3点

第1に、価格の上昇は需給ではなく原料に起因します。国土交通省は2026年5月25日に、主要建設資材需給・価格動向調査を公表しました。アスファルト合材の新材・再生材ともに、価格は「やや上昇」と判定されています。一方で、需給動向は全資材で「均衡」、在庫状況も全資材で「普通」とされています。

第2に、上昇の速度が速いことです。建設通信新聞は2026年5月30日、4月から5月にかけての1ヶ月で、再生合材の単価が2,000〜3,000円程度上がったと報じました。新規合材は、さらに大きく3,000〜4,000円ほどの上昇です。

第3に、価格転嫁は進んでいます。前田道路が2026年4月1日出荷分から改定を実施し、道路舗装11社の2026年3月期決算では9社が営業・経常増益となりました。建設通信新聞は、価格転嫁による利益率の改善を要因として挙げています。

ナフサは7月に再び上昇に転じた

同じ原油を起点とするナフサは、2026年5月16日に1トン1,043ドルのピークをつけました。その後、6月25日には627ドルまで下がり、衝突前水準の632ドルを一時下回りました。

しかし7月12日に、イラン革命防衛隊がホルムズ海峡を再閉鎖しました。これを受けてナフサは反発し、7月16日時点では842ドルです。6月25日比で34%の上昇です。

7月16日の為替と国産ナフサの指標同じ日の数字

同日の為替は1ドル162.28円、国産ナフサ価格指標は96,965円/キロリットルでした。

建設資材全体の改定状況と情勢の推移は、【建設資材・養生テープ完全まとめ】2026年イラン情勢下の建設資材調達でまとめています。この記事ではアスファルト合材に絞り、原油からの経路がほかの建材と異なる点を扱います。

合材の改定は3月下旬に始まり、ナフサ系の建材とほぼ同じ時期だった

改定は2026年3月下旬、前田道路の発表から始まりました。塗料用シンナー(3月中旬)やシーリング材(3月末)の改定と、ほぼ同じ時期です。

アスファルト合材の改定は、2026年3月下旬に始まりました。塗料用シンナーの改定が3月中旬、シーリング材が3月末なので、ほぼ同時期です。

ナフサ系の建材と時期が重なった点は、原料の経路が異なることを考えると、注目に値します。

アスファルト合材と原油をめぐる動き(2026年3月〜7月)
日付起きたこと
2026年3月25日前田道路が、4月1日出荷分からアスファルト合材の販売価格を改定すると公表しました。対象は新規合材・再生合材および関連製品です。改定幅は、ストレートアスファルトの市場価格の上昇分を販売価格に転嫁するとしました。同社は理由として、中東情勢の緊迫化によるエネルギー価格の世界的な高騰と、ストレートアスファルトの仕入価格・製造工場の稼働に不可欠な燃料費・物流コストの上昇を挙げています。建設通信新聞も同日、中東情勢の緊迫化に伴う改定として報じました。
2026年4月1日前田道路の改定が、出荷分から発効しました。
2026年5月18日建設通信新聞が、道路舗装11社の2026年3月期決算について、9社が営業・経常増益となり、価格転嫁により利益率が改善したと報じました。同日、日本建設業連合会は、仮設費や経費を含めた全建設コストの平均が、直近約5年間で28〜32%上昇していると公表しました。
2026年5月25日国土交通省 不動産・建設経済局が「主要建設資材需給・価格動向調査(令和8年5月1〜5日現在)」を公表しました。調査対象7資材13品目のうち、アスファルト合材(新材)・アスファルト合材(再生材)・異形棒鋼・H形鋼・木材(型枠用合板)・石油の6品目が「やや上昇」と判定されました。需給動向は全資材で「均衡」、在庫状況も全資材で「普通」でした。
2026年5月30日建設通信新聞が、4月から5月にかけての1ヶ月間で、再生合材の単価が2,000〜3,000円程度、新規合材が3,000〜4,000円ほど上昇したと報じました。トン単価は地域差があるものの、業界関係者の見方として過去最高水準に達していると思われると伝えました。
2026年6月6日日本経済新聞が、アスファルト価格の上昇と道路工事へのコスト増圧力、供給面の懸念について報じました。
2026年6月18日建設物価調査会が、中東情勢に関する建設物価調査リポートを公表しました。Web建設物価2026年6月号・7月号で2026年1月号比433都市平均2,302円/tの上昇、ストレートアスファルト東京価格142,000円/t、再生アスファルト混合物(密粒度13・東京14区)が2022年1月号比で約49%上昇という数値を示しました。
2026年6月25日アジアナフサが1トン627ドルまで下がり、衝突前水準の632ドルを下回りました。ただし、アスファルト合材の価格に下方修正の動きは確認されていません。
2026年7月12日〜16日イラン革命防衛隊がホルムズ海峡を再閉鎖しました。7月12日の通航確認は6隻で、過去5週間で最少です。7月16日のアジアナフサは842ドルとなり、6月25日比で34%上昇しました。

前田道路以外の道路舗装会社による個別の価格改定については、当社として2026年7月時点で公表資料を確認できていません。ただし、建設物価調査会が示す全国433都市の平均上昇と、国土交通省調査の「やや上昇」の判定は、業界全体としての価格上昇を示しています。

アスファルトはナフサから作られず、原油の残渣から作られる

アスファルトは、ナフサなどを取り出した後に残る、原油の最も重い成分です。「ナフサを起点とする波及」という枠組みには入りません。

2026年の建設資材の値上がりを、当社はこれまで「ナフサを起点とする波及」として整理してきました。アスファルトは、この枠組みに入りません。ナフサから作られるのではなく、ナフサを取り出した後に残る成分だからです。

蒸留の順序と留分

原油は常圧蒸留装置で加熱され、沸点の違いによって成分が分かれます。軽い順に、石油ガス、ナフサ、灯油、軽油と取り出され、最後に残るのが常圧残油です。

この常圧残油をさらに減圧蒸留して得られる重質成分が、アスファルトの原料になります。

原油の留分と2026年の建設資材との関係
留分主な用途建設資材との関係
ナフサ
(軽い留分)
石油化学原料。エチレン・プロピレン等に分解される塗料用シンナー、シーリング材、断熱材、塩ビ管、樹脂サッシ、接着剤の原料
灯油・軽油
(中間留分)
燃料製造工場の燃料、輸送用軽油。エネルギーコストと物流費を経由して全建材に作用
アスファルト
(最も重い残渣)
道路舗装、防水材アスファルト合材、アスファルトルーフィング、アスファルトシングル

ストレートアスファルトと合材の関係

道路舗装に使うアスファルト合材は、ストレートアスファルトに骨材(砕石・砂・石粉)を混ぜて作ります。製造には、アスファルトを加熱する工程と、骨材を乾燥・加熱する工程があります。どちらも燃料が必要です。

前田道路が改定の理由として挙げた3つの要素は、この構造に対応しています。第1がストレートアスファルトの仕入価格、第2が製造工場の稼働に不可欠な燃料費、第3が物流コストです。

原料・製造・輸送のすべてが、原油価格の影響を受けます。

再生合材でも影響を受ける

アスファルト舗装は、再生利用が進んでいる分野です。舗装改修工事で出るアスファルト塊を再資源化し、再生合材として使う仕組みが確立されています。再生合材は、新規合材より新しいアスファルトの使用量が少ない合材です。

それでも、改定の対象からは外れませんでした。前田道路の改定は新規合材と再生合材の両方が対象で、再生合材の価格も上がっています(数値は第4章を参照)。

再生合材にも新しいアスファルトを補う必要があり、加熱工程と輸送は新規合材と変わらないためです。

アスファルトを原料とする建材は、道路以外にもあります。屋根の下葺材であるアスファルトルーフィングと、屋根材のアスファルトシングルです。どちらも2026年に改定の対象となりました。

くわしくは【2026年7月版】雨仕舞い三層が同時に上がった屋根工事で扱っています。

合材の価格は、調査機関の掲載価格と官庁統計で追う

アスファルト合材は、メーカーごとの改定率が公表されるほかの建材と異なり、調査機関の掲載価格と官庁統計で動きを追う分野です。

2026年に公表された数値を、出典別に整理します。

建設物価調査会(2026年6月18日公表)

建設物価調査会のリポートの数値
項目数値比較の基準
アスファルト混合物の上昇幅(全国)433都市平均 2,302円/tWeb建設物価2026年6月号・7月号/2026年1月号比
ストレートアスファルト(東京)142,000円/t(過去最高水準)2026年6月号
再生アスファルト混合物(密粒度13・東京14区)約49%上昇(過去最高値水準)2022年1月号と2026年7月号の比較
アスファルト混合物の出荷量約32%減2013年(ピーク)と2025年の比較
ストレートアスファルトの出荷量約57%減2012年と2025年の比較

同会は、原油価格とストレートアスファルトの価格は概ね連動しているものの、タイムラグがあると整理しています。

2022年前半に原油が1バレル110ドルを超えたときには、ストレートアスファルトは同年7月から8月に急騰しました。2025年後半から2026年にかけての原油の上昇も、同じような遅れを伴って価格に反映されたことになります。

国土交通省(2026年5月25日公表)

不動産・建設経済局は「主要建設資材需給・価格動向調査(令和8年5月1〜5日現在)」を公表しました。調査対象7資材13品目のうち、6品目が「やや上昇」と判定されています。

内訳は、アスファルト合材(新材)、アスファルト合材(再生材)、異形棒鋼、H形鋼、木材(型枠用合板)、石油です。残りの品目は「横ばい」でした。需給動向は全資材で「均衡」、在庫状況も全資材で「普通」です。

この調査結果が示すのは、価格が上がりながら、需給と在庫は落ち着いているという状態です。品薄による値上がりではないことが、官庁統計の上で確認できます。

報道による市場実勢

報道で伝えられた市場の動き
公表日媒体内容
2026年5月30日建設通信新聞4月から5月にかけての1ヶ月で再生合材が2,000〜3,000円程度、新規合材が3,000〜4,000円ほど上昇。トン単価は地域差があるものの、業界関係者は過去最高水準との見方を示した
2026年6月6日日本経済新聞アスファルト価格の上昇と道路工事へのコスト増圧力、供給面の懸念を報道
2026年5月18日建設通信新聞道路舗装11社の2026年3月期決算で9社が営業・経常増益。価格転嫁による利益率の改善を要因として挙げた

建設コスト全体の水準

日本建設業連合会は2026年5月18日、仮設費や経費を含めた全建設コストの平均が、直近約5年間で28〜32%上昇していると公表しました。

建設資材物価指数で2021年1月と2026年3月を比べると、土木部門の平均は43%の上昇です。建築部門の平均は38%、建設全体の資材価格の平均は39%上がっています。アスファルト合材が含まれる土木部門は、建築部門より上昇率が高くなっています。

需要が3割減っても、原料が上がれば合材の価格は上がる

価格を決めているのは需給ではなく、原油市況とストレートアスファルトの調達価格です。需要が3分の2に減っても、原料が上がれば価格は上がります。

アスファルト合材の出荷量は、2013年から2025年にかけて約32%減りました。通常であれば、需要の縮小は価格が下がる要因になります。

それでも2026年に過去最高値を更新した構造を、確認できる事実から整理します。

価格を決めているのは需給ではない

国土交通省の2026年5月調査では、アスファルト合材の需給動向は「均衡」、在庫状況は「普通」と判定されています。品薄が価格を押し上げているのではありません。

前田道路が改定の理由として挙げたのも、需要の動きではなく、原価の要因です。ストレートアスファルトの仕入価格・燃料費・物流コストです。

建設物価調査会は、原油価格とストレートアスファルト価格が概ね連動する関係にあると整理しています。合材の価格は、国内の道路工事の量ではなく、国際的な原油市況で決まる部分が大きいのです。

ストレートアスファルトの出荷量は合材より大きく減っている

注目したいのは、減り方の差です。合材は2013年から2025年に約32%減でした。ストレートアスファルトは2012年から2025年に約57%減と、より大きく落ち込んでいます。

この差は、再生合材の利用が進んだことと整合します。舗装改修で出たアスファルト塊を再利用すれば、新しいアスファルトの投入量は減ります。

ただし、これは価格の下落にはつながりませんでした。再生合材にも新しいアスファルトの補充が必要で、加熱工程と輸送のコストは新規合材と変わらないためです。再生合材の価格の推移は、第4章に整理しました。

2026年のアスファルト合材から確認できること

需要が縮小している市場でも、原料が国際市況で決まる資材は、価格が上がります。アスファルト合材の場合、国内の道路工事量が減っていることは、価格交渉の材料になりません。

価格の根拠は、原油市況と、それに連動するストレートアスファルトの調達価格にあります。発注者への説明では、需要の動きではなく、原料価格の推移を示すほうが適切です。

供給体制の側面

日本経済新聞は2026年6月6日の報道で、価格の上昇とあわせて、供給面の懸念にも触れています。

当社として2026年7月時点で確認できる範囲では、アスファルト合材の出荷停止や受注制限といった措置は、公表資料に見当たりません。国土交通省の5月調査でも、需給は「均衡」、在庫は「普通」と判定されています。

ただし、需要が長期的に縮小してきた分野であることは、供給体制を考えるうえで留意が必要な事実です。

原油の軽い端のナフサと重い端のアスファルトが、同じ時期に上がった

ナフサとアスファルトは蒸留装置のなかで最も離れていますが、2026年はほぼ同じ時期に上がりました。両者を結ぶのは、原油そのものと燃料です。

2026年の建設資材で起きたことを、1枚の絵にしてみます。原油という1本の柱から分かれた成分が、軽いものから重いものまで、すべて上がったという構図です。

この点で、アスファルト合材はほかの建材と別の位置にありながら、同じ原因を共有しています。

ナフサとアスファルトの距離

ナフサは原油の軽い留分で、石油化学の出発点にあたります。ここから分かれた製品が、塗料用シンナー、シーリング材、断熱材、塩ビ管、樹脂サッシ、接着剤、壁装材です。

当社がこれまで扱ってきた建材の多くは、この系統に属します。

アスファルトは、同じ原油の最も重い残渣です。蒸留装置のなかで、ナフサとアスファルトは最も離れた位置にあります。

それでも2026年、両者はほぼ同じ時期に上がりました。前田道路の改定発表が3月25日、塗料用シンナーの改定が3月中旬、シーリング材が3月末です。

共通するのは原油そのものと燃料

ナフサとアスファルトを結ぶのは、原料である原油と、製造・輸送に必要な燃料です。原油価格が上がれば、そこから取り出されるすべての留分が影響を受けます。

加えて、製造工場の稼働燃料と輸送用軽油は、中間留分から得られます。このため、どの資材でも共通のコストとして作用します。

当社はこの一連の記事で、石膏ボードの値上がりも整理しました。石油化学製品でないにもかかわらず20〜50%上がった構造を、原紙・接着剤・エネルギー・物流の4経路としてまとめています。アスファルト合材は、これとも異なります。

石膏ボードは、エネルギーと物流という間接の経路で上がりました。アスファルトは、原料そのものが原油から来ます。間接ではなく直接です。

資材ごとの原油との関係(2026年)
資材原油との関係代表的な数値
塗料用シンナー・断熱材・樹脂サッシナフサ経由(軽い留分から分岐)シンナー75%、押出法ポリスチレン40%、樹脂サッシ10〜15%
アスファルト合材・ルーフィング残渣から直接(重い成分)合材433都市平均2,302円/t、ルーフィング40〜50%
石膏ボードエネルギーと物流を経由(間接)20〜50%
構造用合板接着剤と輸送費を経由(間接)住宅1棟あたり10〜20%

上の表は原油からの経路を整理したもので、各数値の算定根拠や基準日は資材ごとに異なります。改定率を直接比べることを意図したものではありません。

逃げ場を考える枠組みが変わる

改定がナフサ系に限られるなら、ナフサ系以外への切り替えという対応が考えられます。断熱材では、石油系から鉱物系への切り替えが検討されました。結果として鉱物系も上がり、機能しませんでした。

石膏ボードはさらに、原料が鉱物と紙でありながら上がりました。

アスファルト合材は、この議論の外側にあります。道路舗装には、アスファルト舗装とコンクリート舗装があります。

当社として2026年7月時点で確認できる範囲では、価格を理由とした舗装種別の変更が行われていることを示す資料は見当たりません。2026年の状況では、材料の切り替えによる回避よりも、価格転嫁の仕組みを使うほうが、確認できる対応にあたります。

舗装業界では価格転嫁が進み、決算に表れた

道路舗装11社の2026年3月期決算では、9社が営業・経常増益でした。多くの分野で転嫁の遅れが課題となるなか、道路舗装業界は異なる経過をたどりました。

2026年のアスファルト合材には、ほかの建設資材と異なる点がもう1つあります。価格転嫁が実際に進み、その結果が決算に表れていることです。

道路舗装11社の決算

建設通信新聞は2026年5月18日、道路舗装11社の2026年3月期決算について、9社が営業・経常増益となったと報じました。要因として、価格転嫁による利益率の改善を挙げています。

2026年3月期は、前田道路の改定発表(3月25日)より前の期間にあたります。このため、この増益は2025年度中の転嫁が反映されたものです。

この事実は、2026年4月以降の改定を評価するうえで参考になります。舗装業界では改定に先立って価格転嫁が一定程度進んでおり、そのうえで2026年4月からの改定が重なりました。

前田道路の改定内容

前田道路が2026年3月25日に公表した改定は、対象をアスファルト合材全般(新規合材、再生合材、および関連製品)としています。改定幅は、ストレートアスファルトの市場価格の上昇分を販売価格に転嫁すると定めています。

率ではなく、原料価格の上昇分をそのまま転嫁する方式です。

同社は改定の背景を、次のように説明しています。中東情勢の緊迫化によりエネルギー価格が世界的に高騰しました。アスファルト合材の主材料であるストレートアスファルトの仕入価格、製造工場の稼働に不可欠な燃料費、物流コストが著しく上昇しています。

同社はコスト削減に努めてきたものの、環境の急変が企業努力の限界を超えたとしています。現在の価格体系を維持したままでは、道路インフラを支える製品の安定供給と品質を維持することが困難な状況に至った、という説明です。

他社の改定状況は確認できていない

当社として2026年7月時点で確認できる範囲では、前田道路以外の道路舗装会社による個別の価格改定を示す公表資料に遡及できていません。

ただし、建設物価調査会は全国433都市の平均上昇を示しています。国土交通省調査でも「やや上昇」の判定です。これらは、特定の1社にとどまらない業界全体の動きを示しています。

建設通信新聞は2026年5月30日、再生合材2,000〜3,000円、新規合材3,000〜4,000円という上昇幅を報じました。これも市場実勢として、全体の水準を示すものです。個社の改定率を確かめる必要がある場合は、取引先へ直接お問い合わせください。

アスファルト合材は、工場から現場まで加熱した状態で運ぶ必要があり、輸送距離に制約があります。NIPPOは全国150か所以上の合材工場を展開しており、地域ごとに供給元が異なります。トン単価に地域差が出るのはこのためです。

工事1件あたりの負担は推定せず、数値の基準時点を分けて見る

道路工事1件あたりの負担増を示した試算は、2026年7月時点で公表資料上確認できていません。ここでは金額を推定せず、確認できる数値の性質を整理します。

数値の扱いについて

アスファルト合材のトン単価の上昇幅から工事1件あたりの上昇額を算出するには、当該工事の合材使用量が必要です。使用量は舗装面積・舗装厚・工法によって決まり、案件ごとに大きく異なります。また合材費のほかに、路盤工・機械経費・労務費が原価を構成します。

当社として2026年7月時点で確認できる範囲では、道路工事1件あたりの負担増を示した公表資料は見当たりません。見積の根拠とされる場合は、自社の実際の使用数量と仕入価格から個別に算出することを推奨します。

確認できる数値とその性質

公表されている数値と、その性質
数値性質出典・時点
433都市平均 2,302円/t 上昇調査機関の掲載価格の変動幅。全国平均であり地域差がある建設物価調査会/2026年1月号比・6月号7月号
再生合材 2,000〜3,000円/t、新規合材 3,000〜4,000円/t 上昇市場実勢に関する報道。1ヶ月間の変動幅建設通信新聞/2026年4〜5月
ストレートアスファルト 142,000円/t原料の絶対価格。合材ではなく原料単体建設物価調査会/2026年6月号・東京
再生アスファルト混合物 約49%上昇4年半の累積上昇率。単年の改定率ではない建設物価調査会/2022年1月号と2026年7月号の比較・東京14区
土木部門の資材物価指数 +43%部門全体の指数。合材単体ではない建設資材物価指数/2021年1月と2026年3月の比較

時点の異なる数値を混同しない

上の表のとおり、公表されている数値は、比較の基準時点がそれぞれ異なります。433都市平均の2,302円/tは2026年1月号との比較、約49%は2022年1月号との比較、43%は2021年1月との比較です。

累積の上昇率と直近の変動幅は、性質が異なります。見積の説明資料に使うときは、基準時点を明示する必要があります。

なかでも注意が必要なのは、約49%という数値です。これは4年半にわたる累積で、2026年単年の改定率ではありません。

2026年に絞った上昇幅としては、建設物価調査会の433都市平均2,302円/tが該当します。または、建設通信新聞が報じた1ヶ月あたり2,000〜4,000円という数値です。

改定日が事前に公表されない合材は、契約の仕組みで備える

合材は原料価格の上昇分を転嫁する形が採られるため、改定日を狙った事前発注がしにくい分野です。代わりに、契約上の仕組みを使う必要があります。

アスファルト合材は、ほかの建設資材のように改定日が事前に公表される分野ではありません。前田道路の方式が示すとおり、原料価格の上昇分を転嫁する形が採られます。

このため、改定日を狙った事前発注という対応が取りにくくなります。

単品スライド条項

公共工事では、工事請負契約書第26条第5項に定める単品スライド条項により、特定資材の価格変動を契約金額に反映できます。

国土交通省は2026年4月から5月にかけて、中東情勢に伴う建設産業分野の対応として、同条項の適用を含む通知を整理しています。

アスファルト合材は、この条項の対象となりうる資材です。適用にあたっては、契約後の価格変動を客観的な資料で示す必要があります。

建設物価調査会の掲載価格と、国土交通省の主要建設資材需給・価格動向調査は、いずれも公的性格を持つ資料として説明に使えます。

民間工事での対応

民間工事では、公正取引委員会の価格交渉に関する指針が交渉の根拠となります。ただし、公共工事のような条項が用意されているわけではないため、契約時点での取り決めが重要になります。

資材価格が変動した場合の取り扱いを、見積書や契約書のなかで事前に定めておくことが、対応の選択肢となります。

2026年7月時点で確かめる4点

  1. 契約済み案件について、合材の調達価格を確かめます。改定日が公表されない方式なので、いつの時点の価格が適用されるかは、取引先への照会で確かめる必要があります。
  2. 進行中の公共工事について、単品スライド条項の適用可否を検討します。国土交通省の通知が整理されているため、2026年の状況では、条項の適用は検討しやすい環境にあります。
  3. 価格の説明資料を整えます。前に述べたとおり、需要動向は価格上昇の説明になりません。建設物価調査会が示す原油とストレートアスファルトの連動関係と、前田道路が公表した改定理由が、説明の根拠として適しています。
  4. これから見積を作る案件では、合材の単価の前提時点を明示します。

需要縮小を交渉材料にしない

第5章で述べたとおり、合材の出荷量は2013年比で約32%減、ストレートアスファルトは2012年比で約57%減です。この事実は、価格が下がるべき根拠にはなりません。

国土交通省の調査で需給が「均衡」、在庫が「普通」と判定されている以上、需給を理由とした価格交渉は成り立ちにくいのです。原料価格の推移に基づく説明のほうが、根拠として明確です。

情報の変化について

この記事は、2026年7月19日時点で確認できるエビデンスに基づいています。ホルムズ海峡の情勢と原油市況は、数日単位で動きます。8月中旬のイスラマバード覚書の交渉期限の前後には、内容が変わる可能性があります。

建設物価調査会は、原油とストレートアスファルトの価格の間にタイムラグがあると指摘しています。これを踏まえると、7月16日にアジアナフサが842ドルへ反発した局面の影響は、数ヶ月遅れて合材価格に現れる可能性があります。次回更新は2026年8月中旬を予定しています。

よくあるご質問

需要が3割減っているのに、なぜ価格が過去最高値になるのですか

価格を決めているのが国内の需給ではなく、国際的な原油市況だからです。国土交通省が2026年5月25日に公表した調査では、アスファルト合材の需給動向は「均衡」、在庫状況は「普通」と判定されており、品薄による値上がりではありません。建設物価調査会は、原油価格とストレートアスファルトの価格が概ね連動する関係にあると整理しています。前田道路が改定理由として挙げたのも、需要動向ではなくストレートアスファルトの仕入価格・燃料費・物流コストという原価要因でした。国内の道路工事量が減っていることは、価格交渉の材料になりません。

アスファルトもナフサから作られるのですか

いいえ、逆です。ナフサは原油の軽い留分で、アスファルトはナフサなどを取り出した後に残る最も重い残渣にあたります。原油は常圧蒸留装置で加熱され、軽い順に石油ガス・ナフサ・灯油・軽油と分離され、最後に常圧残油が残ります。これをさらに減圧蒸留して得られる重質成分がアスファルトの原料です。塗料用シンナーや樹脂サッシがナフサから分岐する製品であるのに対し、アスファルトは蒸留装置のなかで最も離れた位置にあります。2026年はこの両端が同時に上昇しました。

再生合材を使えば価格上昇を抑えられますか

2026年の実績では、再生合材も改定の対象となっています。前田道路の改定は新規合材と再生合材の双方を対象としており、建設物価調査会が示す再生アスファルト混合物(密粒度13・東京14区)は2022年1月号との比較で約49%上昇しています。再生合材は新しいアスファルトの使用量が新規合材より少ないものの、新しいアスファルトの補充は必要であり、加熱工程と輸送のコストは新規合材と変わりません。建設通信新聞の報道でも、上昇幅は新規合材のほうが大きいものの、再生合材も2,000〜3,000円程度上昇したとされています。

公共工事で価格上昇分を契約金額に反映できますか

工事請負契約書第26条第5項に定める単品スライド条項により、特定資材の価格変動を契約金額に反映する仕組みがあります。国土交通省は2026年4月から5月にかけて、中東情勢に伴う建設産業分野の対応として同条項の適用を含む通知を整理しています。適用にあたっては契約後の価格変動を客観的な資料で示す必要がありますので、建設物価調査会の掲載価格と国土交通省の主要建設資材需給・価格動向調査が説明の根拠として使えます。後者は同省ウェブサイトで無料で閲覧でき、出典を明記したうえでの活用が認められています。

なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか

当社は千葉県我孫子市に本社を置き、プラスチックパレット・再生樹脂材料・PPバンド・ストレッチフィルム等の物流資材を全国のお客様にお届けする専門商社です。当社が扱う物流資材は原油の軽い留分であるナフサを起点とし、アスファルトは同じ原油の最も重い残渣にあたります。経路は正反対ですが、原油市況という共通の要因で動いています。日々の調達業務で確認している一次情報を、同じ構造の影響を受ける建設業・道路舗装業のみなさまにも活用いただけるよう、記事として整理して公開しています。

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言葉の意味12語
アスファルト合材(アスファルト混合物)

ストレートアスファルトに骨材(砕石・砂・石粉)を混合した道路舗装材料。加熱状態で工場から現場へ運ばれ、敷きならして締め固める。新規合材と再生合材があり、2026年はいずれも価格改定の対象となった。

ストレートアスファルト(ストアス)

原油の減圧蒸留で得られる重質成分に加工を加えない、アスファルト合材の主材料。建設物価調査会によれば東京価格は2026年6月号で142,000円/tと過去最高水準に達した。

残渣

原油の蒸留で軽い留分を取り出した後に残る重質成分。ナフサが軽い留分であるのに対し、アスファルトは最も重い残渣にあたる。同じ原油から得られながら、蒸留装置のなかで最も離れた位置にある。

常圧蒸留・減圧蒸留

原油を沸点の違いで分離する工程。常圧蒸留では軽い順に石油ガス・ナフサ・灯油・軽油が取り出され、最後に常圧残油が残る。この常圧残油をさらに減圧蒸留して得られる重質成分がアスファルトの原料となる。

留分

蒸留によって沸点の範囲ごとに分けられた成分。軽い留分ほど沸点が低く、重い留分ほど沸点が高い。建設資材との関係では、軽い留分のナフサが石油化学製品の原料、中間留分が燃料、重い残渣がアスファルトとなる。

再生合材

舗装改修工事で発生したアスファルト塊を再資源化し、新しいアスファルトと骨材を補って製造する合材。新しいアスファルトの使用量は新規合材より少ないが、加熱工程と輸送は変わらない。2026年は再生合材も改定の対象となった。

密粒度

骨材の粒度構成による合材の分類の1つ。空隙が少なく、一般的な車道の表層に用いられる。建設物価調査会が価格推移を示した「密粒度13」は、骨材の最大粒径が13mmであることを表す。

骨材

合材に混合する砕石・砂・石粉の総称。合材の重量の大部分を占める。製造工程では乾燥と加熱が必要となるため、骨材そのものの価格に加えて燃料費の影響も受ける。

Web建設物価

建設物価調査会が提供する建設資材価格の調査情報。全国の都市別に掲載価格が示され、公共工事の積算や価格変動の確認に用いられる。本記事の合材価格はこの掲載価格に基づく。

主要建設資材需給・価格動向調査

国土交通省 不動産・建設経済局が毎月公表する調査。セメント・生コン・骨材・アスファルト合材・異形棒鋼・H形鋼・木材・石油について、地域別の価格動向・需給動向・在庫状況を示す。同省ウェブサイトで無料で閲覧できる。

建設資材物価指数

建設資材の価格水準を指数化した統計。土木部門と建築部門に分かれる。2021年1月と2026年3月の比較で、土木部門の平均が43%、建築部門の平均が38%、建設全体の平均が39%上昇している。

単品スライド条項

工事請負契約書第26条第5項に定める仕組みで、特定資材の価格変動を契約金額に反映できる。国土交通省は2026年4〜5月に、中東情勢に伴う建設産業分野の対応として同条項の適用を含む通知を整理した。アスファルト合材も対象となりうる資材である。

出典・エビデンス一覧20件(公的機関5・報道や企業15)

出典は、メーカーの公式発表で確認したもの、報道・業界媒体を経由して確認したもの、官庁・業界団体が公表したものの3区分に分けて記載している。

メーカー一次情報

  • 「アスファルト合材価格改定のお知らせ」(2026年4月1日出荷分より/対象:アスファルト合材全般=新規合材・再生合材および関連製品/改定幅:ストレートアスファルトの市場価格の上昇分を販売価格に転嫁)/前田道路株式会社/2026年3月25日
  • 製造・販売事業に関する企業情報(全国150か所以上のアスファルト合材工場、アスファルト塊の再資源化率98%以上)/株式会社NIPPO

報道・業界媒体

  • 「アスファルト合材の価格急騰、過去最高水準か」(4〜5月の1ヶ月で再生合材2,000〜3,000円程度、新規合材3,000〜4,000円程度の上昇)/建設通信新聞Digital/2026年5月30日
  • 「【価格改定】中東情勢緊迫でアス合材値上げ/前田道路」/建設通信新聞Digital/2026年3月25日
  • 「道路舗装11社の3月期決算/9社が営業・経常増益/価格転嫁で利益率改善」/建設通信新聞Digital/2026年5月18日
  • 「アスファルト価格5割高、道路工事にコスト増圧力 供給不安の芽」/日本経済新聞/2026年6月6日
  • 「日本の原油タンカー、全てホルムズ海峡通過」/日本経済新聞/2026年7月13日
  • ナフサ価格推移表/大景化学/2026年7月16日時点
  • アジアナフサ価格に関する報道/日本経済新聞/2026年6月25日

官庁・制度・業界統計

  • 建設物価調査リポート(中東情勢)「ストアス・アスファルト混合物(合材)が大幅上伸、各地で過去最高値を更新!」/一般財団法人 建設物価調査会/2026年6月18日
  • 「主要建設資材需給・価格動向調査(令和8年5月1〜5日現在)」/国土交通省 不動産・建設経済局/2026年5月25日公表
  • 建設資材物価指数(土木部門・建築部門)/一般財団法人 建設物価調査会/2021年1月・2026年3月
  • 全建設コストの上昇に関する公表(仮設費・経費を含む平均で直近約5年間28〜32%上昇)/一般社団法人 日本建設業連合会/2026年5月18日
  • 中東情勢に伴う建設産業分野の対応に関する通知(単品スライド条項の適用等)/国土交通省/2026年4〜5月
  • 建設工事費デフレーター(2015年度基準・建設総合)/国土交通省/2026年1月分
  • 「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」/公正取引委員会

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文:プラスチックパレット株式会社 編集部

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