【2026年7月版】需要が3割減ったアスファルト合材がなぜ過去最高値なのか、原油の残渣という原料構造と道路工事の発注設計
アスファルト合材の出荷量は2013年をピークに2025年には約32%減少した。それでも2026年、価格は各地で過去最高値を更新している。需要が縮小しながら価格が最高値をつけるという構造を、原油の残渣という原料の性質から分解する。あわせて建設物価調査会と国土交通省の公表数値を整理し、道路工事の発注と価格転嫁の実務を扱う。
- アスファルト合材の価格は、Web建設物価2026年6月号・7月号で2026年1月号比433都市平均2,302円/t上昇し、各地で過去最高値を更新した。ストレートアスファルトは東京で142,000円/tである。
- 一方で出荷量は縮小している。合材は2013年のピークから2025年に約32%減、ストレートアスファルトは2012年から2025年に約57%減。国土交通省の5月調査でも需給は「均衡」と判定された。
- ナフサが原油の軽い留分であるのに対し、アスファルトはナフサなどを取り出した後に残る最も重い残渣にあたる。2026年は原油から得られるこの両端が、ほぼ同じ時期に上昇した。
アスファルト合材は需要が約32%減しながら過去最高値を更新した。ストレートアスファルトは東京で142,000円/t(2026年6月号)。原因は需給ではなく、原油の残渣という原料構造にある。国土交通省の5月調査でも合材の新材・再生材ともに上昇と判定された。
2026年7月19日時点の現在地
アスファルト合材は、これまで当社が扱ってきた建設資材とは価格の決まり方が異なる。塗料・断熱材・サッシがナフサから分岐する石油化学製品であるのに対し、アスファルトは原油を蒸留した後に残る最も重い成分である。同じ原油を起点としながら、経路がまったく異なる。
需要は縮小し、価格は最高値を更新した
建設物価調査会が2026年6月18日に公表したリポートによると、アスファルト混合物の価格はWeb建設物価2026年6月号・7月号において、2026年1月号比で433都市の平均が2,302円/t上昇した。同会は各地で過去最高値を更新していると整理している。ストレートアスファルトの東京価格は2026年6月号で142,000円/tとなり、過去最高水準に達した。
一方で需要は縮小している。同リポートによれば、合材は2013年をピークに2025年には約32%減、ストレートアスファルトは2012年から2025年にかけて約57%減となっている。震災復興需要による一時的な増加を経て、その後は市場の縮小が続いてきた。需要が3分の2以下に落ちながら価格が最高値をつけるという、通常の需給関係では説明できない状況にある。
第1に、価格上昇は需給ではなく原料に起因する。国土交通省が2026年5月25日に公表した主要建設資材需給・価格動向調査では、アスファルト合材の新材・再生材ともに価格が「やや上昇」と判定される一方、需給動向は全資材で「均衡」、在庫状況も全資材で「普通」とされている。
第2に、上昇の速度が速い。建設通信新聞は2026年5月30日、4月から5月にかけての1ヶ月で再生合材の単価が2,000〜3,000円程度、新規合材はさらに大きく3,000〜4,000円ほど上昇したと報じた。
第3に、価格転嫁は進んでいる。前田道路が2026年4月1日出荷分から改定を実施し、道路舗装11社の2026年3月期決算では9社が営業・経常増益となった。建設通信新聞は価格転嫁による利益率の改善を要因として挙げている。
ナフサは7月に再び上昇に転じた
同じ原油を起点とするナフサは、2026年5月16日に1トン1,043ドルのピークをつけたのち、6月25日には627ドルまで下落し、衝突前水準の632ドルを一時下回った。しかし7月12日にイラン革命防衛隊がホルムズ海峡を再閉鎖したことを受けて反発し、7月16日時点では842ドルとなっている。6月25日比で34%の上昇である。同日の為替は1ドル162.28円、国産ナフサ価格指標は96,965円/キロリットルであった。
3月から7月までの時系列
アスファルト合材の改定は、2026年3月下旬に始まった。塗料用シンナーの改定が3月中旬、シーリング材が3月末であることを考えると、ほぼ同時期である。ナフサ系の建材と時期が重なった点は、原料の経路が異なることを考えると注目に値する。
過去最高水準に達していると思われると伝えた。
前田道路以外の道路舗装会社による個別の価格改定については、当社として2026年7月時点で公表資料を確認できていない。ただし建設物価調査会が示す全国433都市の平均上昇と、国土交通省調査における「やや上昇」の判定は、業界全体としての価格上昇を示している。
アスファルトは原油の残渣である
2026年の建設資材の値上がりを、当社はこれまで「ナフサを起点とする波及」として整理してきた。アスファルトはこの枠組みに入らない。ナフサから作られるのではなく、ナフサを取り出した後に残る成分だからである。
蒸留の順序と留分
原油は常圧蒸留装置で加熱され、沸点の違いによって成分が分離される。軽い順に、石油ガス、ナフサ、灯油、軽油と取り出され、最後に残るのが常圧残油である。この常圧残油をさらに減圧蒸留して得られる重質成分がアスファルトの原料となる。
| 留分 | 主な用途 | 2026年の建設資材との関係 |
|---|---|---|
| ナフサ (軽い留分) |
石油化学原料。エチレン・プロピレン等に分解される | 塗料用シンナー、シーリング材、断熱材、塩ビ管、樹脂サッシ、接着剤の原料 |
| 灯油・軽油 (中間留分) |
燃料 | 製造工場の燃料、輸送用軽油。エネルギーコストと物流費を経由して全建材に作用 |
| アスファルト (最も重い残渣) |
道路舗装、防水材 | アスファルト合材、アスファルトルーフィング、アスファルトシングル |
ストレートアスファルトと合材の関係
道路舗装に使うアスファルト合材は、ストレートアスファルトに骨材(砕石・砂・石粉)を混合して製造される。合材の製造にはアスファルトを加熱する工程と骨材を乾燥・加熱する工程があり、いずれも燃料を必要とする。
前田道路が改定の理由として挙げた3つの要素は、この構造に対応している。第1がストレートアスファルトの仕入価格、第2が製造工場の稼働に不可欠な燃料費、第3が物流コストである。原料・製造・輸送のすべてが原油価格の影響を受ける。
再生合材でも影響を受ける
アスファルト舗装は再生利用が進んでいる分野である。舗装改修工事で発生するアスファルト塊を再資源化し、再生合材として利用する仕組みが確立されている。再生合材は新規合材より新しいアスファルトの使用量が少ない。
それでも改定の対象からは外れなかった。前田道路の改定は新規合材と再生合材の双方を対象としており、再生合材の価格も上昇している(数値はChapter 04を参照)。再生合材にも新しいアスファルトを補充する必要があり、加熱工程と輸送は新規合材と変わらないためである。
価格データの整理
アスファルト合材は、メーカーごとの改定率が公表される他の建材と異なり、調査機関の掲載価格と官庁統計で動向を追う分野である。2026年に公表された数値を出典別に整理する。
建設物価調査会(2026年6月18日公表)
| 項目 | 数値 | 比較の基準 |
|---|---|---|
| アスファルト混合物の上昇幅(全国) | 433都市平均 2,302円/t | Web建設物価2026年6月号・7月号/2026年1月号比 |
| ストレートアスファルト(東京) | 142,000円/t(過去最高水準) | 2026年6月号 |
| 再生アスファルト混合物(密粒度13・東京14区) | 約49%上昇(過去最高値水準) | 2022年1月号と2026年7月号の比較 |
| アスファルト混合物の出荷量 | 約32%減 | 2013年(ピーク)と2025年の比較 |
| ストレートアスファルトの出荷量 | 約57%減 | 2012年と2025年の比較 |
同会は、原油価格とストレートアスファルトの価格は概ね連動しているが、タイムラグが存在すると整理している。2022年前半に原油が1バレル110ドルを超えた際には、ストレートアスファルトは同年7月から8月に急騰した。2025年後半から2026年にかけての原油上昇に対しても、同様の遅れを伴って価格が反映されたことになる。
国土交通省(2026年5月25日公表)
不動産・建設経済局が公表した「主要建設資材需給・価格動向調査(令和8年5月1〜5日現在)」では、調査対象7資材13品目のうち6品目が「やや上昇」と判定された。内訳はアスファルト合材(新材)、アスファルト合材(再生材)、異形棒鋼、H形鋼、木材(型枠用合板)、石油である。残りの品目は「横ばい」、需給動向は全資材で「均衡」、在庫状況も全資材で「普通」であった。
この調査結果が示すのは、価格が上昇しながら需給と在庫は落ち着いているという状態である。品薄による値上がりではないことが、官庁統計の上で確認できる。
報道による市場実勢
| 公表日 | 媒体 | 内容 |
|---|---|---|
| 2026年5月30日 | 建設通信新聞 | 4月から5月にかけての1ヶ月で再生合材が2,000〜3,000円程度、新規合材が3,000〜4,000円ほど上昇。トン単価は地域差があるものの、業界関係者は過去最高水準との見方を示した |
| 2026年6月6日 | 日本経済新聞 | アスファルト価格の上昇と道路工事へのコスト増圧力、供給面の懸念を報道 |
| 2026年5月18日 | 建設通信新聞 | 道路舗装11社の2026年3月期決算で9社が営業・経常増益。価格転嫁による利益率の改善を要因として挙げた |
建設コスト全体の水準
日本建設業連合会は2026年5月18日、仮設費や経費を含めた全建設コストの平均が直近約5年間で28〜32%上昇していると公表した。建設資材物価指数では、2021年1月と2026年3月の比較で土木部門の平均が43%、建築部門の平均が38%、建設全体の資材価格の平均が39%の上昇となっている。アスファルト合材が含まれる土木部門は、建築部門より上昇率が高い。
需要が減っても価格が下がらない理由
アスファルト合材の出荷量は2013年から2025年にかけて約32%減少した。通常であれば需要の縮小は価格の下落要因となる。それでも2026年に過去最高値を更新した構造を、確認できる事実から整理する。
価格を決めているのは需給ではない
国土交通省の2026年5月調査では、アスファルト合材の需給動向は「均衡」、在庫状況は「普通」と判定されている。品薄が価格を押し上げているのではない。前田道路が改定の理由として挙げたのも、需要動向ではなくストレートアスファルトの仕入価格・燃料費・物流コストという原価要因である。
建設物価調査会は、原油価格とストレートアスファルト価格が概ね連動する関係にあると整理している。合材の価格は、国内の道路工事の量ではなく、国際的な原油市況によって決まる部分が大きい。需要が3分の2に減っても、原料が上がれば価格は上がる。
ストレートアスファルトの出荷量は合材より大きく減っている
注目すべきは減少幅の差である。合材が2013年から2025年に約32%減であるのに対し、ストレートアスファルトは2012年から2025年に約57%減と、より大きく落ち込んでいる。この差は、再生合材の利用が進んだことと整合する。舗装改修で発生したアスファルト塊を再利用すれば、新しいアスファルトの投入量は減る。
ただし、これは価格の下落にはつながらなかった。再生合材にも新しいアスファルトの補充が必要であり、加熱工程と輸送のコストは新規合材と変わらないためである。再生合材の価格推移はChapter 04に整理した。
需要が縮小している市場でも、原料が国際市況で決まる資材は価格が上昇する。アスファルト合材の場合、国内の道路工事量が減っていることは価格交渉の材料にならない。価格の根拠は原油市況と、それに連動するストレートアスファルトの調達価格にある。発注者への説明では、需要動向ではなく原料価格の推移を示すほうが適切である。
供給体制の側面
日本経済新聞は2026年6月6日の報道で、価格上昇とあわせて供給面の懸念にも触れている。当社として2026年7月時点で確認できる範囲では、アスファルト合材の出荷停止や受注制限といった措置は公表資料に見当たらない。国土交通省の5月調査でも需給は「均衡」、在庫は「普通」と判定されている。ただし需要が長期的に縮小してきた分野であることは、供給体制を考えるうえで留意すべき事実である。
原油の両端が同時に上がった
2026年の建設資材で起きたことを1枚の絵にすると、原油という1本の柱から分かれた成分が、軽いものから重いものまですべて上昇したという構図になる。この点で、アスファルト合材は他の建材と別の位置にありながら、同じ原因を共有している。
ナフサとアスファルトの距離
ナフサは原油の軽い留分で、石油化学の出発点にあたる。ここから分岐した製品が、塗料用シンナー、シーリング材、断熱材、塩ビ管、樹脂サッシ、接着剤、壁装材である。当社がこれまで扱ってきた建材の多くはこの系統に属する。
アスファルトは同じ原油の最も重い残渣である。蒸留装置のなかで、ナフサとアスファルトは最も離れた位置にある。それでも2026年、両者はほぼ同じ時期に上昇した。前田道路の改定発表が3月25日、塗料用シンナーの改定が3月中旬、シーリング材が3月末である。
共通するのは原油そのものと燃料
ナフサとアスファルトを結ぶのは、原料である原油と、製造・輸送に必要な燃料である。原油価格が上がれば、そこから取り出されるすべての留分が影響を受ける。加えて、製造工場の稼働燃料と輸送用軽油は中間留分から得られるため、どの資材でも共通のコストとして作用する。
当社は本記事群において、石膏ボードが石油化学製品でないにもかかわらず20〜50%上昇した構造を、原紙・接着剤・エネルギー・物流の4経路として整理した。アスファルト合材はこれとも異なる。石膏ボードがエネルギーと物流という間接経路で上がったのに対し、アスファルトは原料そのものが原油から来る。間接ではなく直接である。
| 資材 | 原油との関係 | 2026年の代表的な数値 |
|---|---|---|
| 塗料用シンナー・断熱材・樹脂サッシ | ナフサ経由(軽い留分から分岐) | シンナー75%、押出法ポリスチレン40%、樹脂サッシ10〜15% |
| アスファルト合材・ルーフィング | 残渣から直接(重い成分) | 合材433都市平均2,302円/t、ルーフィング40〜50% |
| 石膏ボード | エネルギーと物流を経由(間接) | 20〜50% |
| 構造用合板 | 接着剤と輸送費を経由(間接) | 住宅1棟あたり10〜20% |
上表は原油からの経路を整理したものであり、各数値の算定根拠や基準日は資材ごとに異なる。改定率の直接比較を意図したものではない。
逃げ場を考える枠組みが変わる
改定がナフサ系に限られるなら、非ナフサ系への切り替えという対応が考えられる。断熱材では石油系から鉱物系への切り替えが検討され、結果として鉱物系も上昇して機能しなかった。石膏ボードはさらに、原料が鉱物と紙でありながら上昇した。
アスファルト合材は、この議論の外側にある。道路舗装にはアスファルト舗装とコンクリート舗装があるが、当社として2026年7月時点で確認できる範囲では、価格を理由とした舗装種別の変更が行われていることを示す資料は見当たらない。2026年の状況では、材料の切り替えによる回避よりも、価格転嫁の仕組みを使うほうが確認できる対応にあたる。
舗装業界の対応と価格転嫁の状況
2026年のアスファルト合材で、他の建設資材と異なる点がもう1つある。価格転嫁が実際に進み、その結果が決算に表れていることである。多くの分野で転嫁の遅れが課題となるなか、道路舗装業界は異なる経過をたどった。
道路舗装11社の決算
建設通信新聞は2026年5月18日、道路舗装11社の2026年3月期決算について、9社が営業・経常増益となったと報じた。要因として価格転嫁による利益率の改善を挙げている。2026年3月期は前田道路の改定発表(3月25日)より前の期間にあたるため、この増益は2025年度中の転嫁が反映されたものである。
この事実は、2026年4月以降の改定を評価するうえで参考になる。舗装業界では改定に先立って価格転嫁が一定程度進んでおり、そのうえで2026年4月からの改定が重なった。
前田道路の改定内容
前田道路が2026年3月25日に公表した改定は、対象をアスファルト合材全般(新規合材、再生合材、および関連製品)とし、改定幅をストレートアスファルトの市場価格の上昇分を販売価格に転嫁すると定めている。率ではなく、原料価格の上昇分をそのまま転嫁する方式である。
同社は改定の背景として、中東情勢の緊迫化によりエネルギー価格が世界的に高騰し、アスファルト合材の主材料であるストレートアスファルトの仕入価格、製造工場の稼働に不可欠な燃料費、物流コストが著しく上昇していると説明している。コスト削減に努めてきたものの、環境の急変が企業努力の限界を超え、現在の価格体系を維持したまま道路インフラを支える製品の安定供給と品質を維持することが困難な状況に至ったとしている。
他社の改定状況は確認できていない
当社として2026年7月時点で確認できる範囲では、前田道路以外の道路舗装会社による個別の価格改定を示す公表資料に遡及できていない。ただし建設物価調査会が示す全国433都市の平均上昇と、国土交通省調査における「やや上昇」の判定は、特定の1社にとどまらない業界全体の動きを示している。
建設通信新聞が2026年5月30日に報じた再生合材2,000〜3,000円、新規合材3,000〜4,000円という上昇幅も、市場実勢として全体の水準を示すものである。個社の改定率を確認する必要がある場合は、取引先へ直接照会されたい。
コスト構造の見方
道路工事1件あたりの負担増を示した試算は、2026年7月時点で公表資料上確認できていない。ここでは金額を推定せず、確認できる数値の性質を整理する。
アスファルト合材のトン単価の上昇幅から工事1件あたりの上昇額を算出するには、当該工事の合材使用量が必要です。使用量は舗装面積・舗装厚・工法によって決まり、案件ごとに大きく異なります。また合材費のほかに、路盤工・機械経費・労務費が原価を構成します。当社として2026年7月時点で確認できる範囲では、道路工事1件あたりの負担増を示した公表資料は見当たりません。見積の根拠とされる場合は、自社の実際の使用数量と仕入価格から個別に算出することを推奨します。
確認できる数値とその性質
| 数値 | 性質 | 出典・時点 |
|---|---|---|
| 433都市平均 2,302円/t 上昇 | 調査機関の掲載価格の変動幅。全国平均であり地域差がある | 建設物価調査会/2026年1月号比・6月号7月号 |
| 再生合材 2,000〜3,000円/t、新規合材 3,000〜4,000円/t 上昇 | 市場実勢に関する報道。1ヶ月間の変動幅 | 建設通信新聞/2026年4〜5月 |
| ストレートアスファルト 142,000円/t | 原料の絶対価格。合材ではなく原料単体 | 建設物価調査会/2026年6月号・東京 |
| 再生アスファルト混合物 約49%上昇 | 4年半の累積上昇率。単年の改定率ではない | 建設物価調査会/2022年1月号と2026年7月号の比較・東京14区 |
| 土木部門の資材物価指数 +43% | 部門全体の指数。合材単体ではない | 建設資材物価指数/2021年1月と2026年3月の比較 |
時点の異なる数値を混同しない
上表のとおり、公表されている数値は比較の基準時点がそれぞれ異なる。433都市平均の2,302円/tは2026年1月号との比較、約49%は2022年1月号との比較、43%は2021年1月との比較である。累積の上昇率と直近の変動幅は性質が異なるため、見積の説明資料に用いる際は基準時点を明示する必要がある。
なかでも注意が必要なのは約49%という数値である。これは4年半にわたる累積であり、2026年単年の改定率ではない。2026年に絞った上昇幅は、建設物価調査会の433都市平均2,302円/t、または建設通信新聞が報じた1ヶ月あたり2,000〜4,000円という数値が該当する。
道路工事の発注設計
アスファルト合材は、他の建設資材のように改定日が事前に公表される分野ではない。前田道路の方式が示すとおり、原料価格の上昇分を転嫁する形が採られるため、改定日を狙った事前発注という対応が取りにくい。代わりに、契約上の仕組みを使う必要がある。
単品スライド条項
公共工事では、工事請負契約書第26条第5項に定める単品スライド条項により、特定資材の価格変動を契約金額に反映できる。国土交通省は2026年4月から5月にかけて、中東情勢に伴う建設産業分野の対応として同条項の適用を含む通知を整理している。
アスファルト合材はこの条項の対象となりうる資材である。適用にあたっては、契約後の価格変動を客観的な資料で示す必要がある。建設物価調査会の掲載価格と国土交通省の主要建設資材需給・価格動向調査は、いずれも公的性格を持つ資料として説明に用いることができる。
民間工事での対応
民間工事では、公正取引委員会の価格交渉に関する指針が交渉の根拠となる。ただし公共工事のような条項が用意されているわけではないため、契約時点での取り決めが重要になる。資材価格が変動した場合の取り扱いを見積書や契約書のなかで事前に定めておくことが、対応の選択肢となる。
2026年7月時点で確認すべき4点
第1に、契約済み案件について合材の調達価格を確認する。改定日が公表されない方式であるため、いつの時点の価格が適用されるかは取引先への照会で確認する必要がある。第2に、進行中の公共工事について単品スライド条項の適用可否を検討する。国土交通省の通知が整理されているため、条項の適用は2026年の状況では検討しやすい環境にある。
第3に、価格の説明資料を整える。前述のとおり、需要動向は価格上昇の説明にならない。建設物価調査会が示す原油とストレートアスファルトの連動関係と、前田道路が公表した改定理由が、説明の根拠として適している。第4に、これから見積を作成する案件については、合材の単価の前提時点を明示する。
需要縮小を交渉材料にしない
Chapter 05で述べたとおり、合材の出荷量は2013年比で約32%減、ストレートアスファルトは2012年比で約57%減である。この事実は、価格が下がるべき根拠にはならない。国土交通省の調査で需給が「均衡」、在庫が「普通」と判定されている以上、需給を理由とした価格交渉は成立しにくい。原料価格の推移に基づく説明のほうが、根拠として明確である。
本記事は2026年7月19日時点で確認できるエビデンスに基づいている。ホルムズ海峡の情勢と原油市況は数日単位で動くため、8月中旬のイスラマバード覚書の交渉期限前後には内容が変わる可能性がある。建設物価調査会が指摘する原油とストレートアスファルトのタイムラグを踏まえると、7月16日にアジアナフサが842ドルへ反発した局面の影響は、数ヶ月遅れて合材価格に現れる可能性がある。次回更新は2026年8月中旬を予定している。
用語集
ストレートアスファルトに骨材(砕石・砂・石粉)を混合した道路舗装材料。加熱状態で工場から現場へ運ばれ、敷きならして締め固める。新規合材と再生合材があり、2026年はいずれも価格改定の対象となった。
原油の減圧蒸留で得られる重質成分に加工を加えない、アスファルト合材の主材料。建設物価調査会によれば東京価格は2026年6月号で142,000円/tと過去最高水準に達した。
原油の蒸留で軽い留分を取り出した後に残る重質成分。ナフサが軽い留分であるのに対し、アスファルトは最も重い残渣にあたる。同じ原油から得られながら、蒸留装置のなかで最も離れた位置にある。
原油を沸点の違いで分離する工程。常圧蒸留では軽い順に石油ガス・ナフサ・灯油・軽油が取り出され、最後に常圧残油が残る。この常圧残油をさらに減圧蒸留して得られる重質成分がアスファルトの原料となる。
蒸留によって沸点の範囲ごとに分けられた成分。軽い留分ほど沸点が低く、重い留分ほど沸点が高い。建設資材との関係では、軽い留分のナフサが石油化学製品の原料、中間留分が燃料、重い残渣がアスファルトとなる。
舗装改修工事で発生したアスファルト塊を再資源化し、新しいアスファルトと骨材を補って製造する合材。新しいアスファルトの使用量は新規合材より少ないが、加熱工程と輸送は変わらない。2026年は再生合材も改定の対象となった。
骨材の粒度構成による合材の分類の1つ。空隙が少なく、一般的な車道の表層に用いられる。建設物価調査会が価格推移を示した「密粒度13」は、骨材の最大粒径が13mmであることを表す。
合材に混合する砕石・砂・石粉の総称。合材の重量の大部分を占める。製造工程では乾燥と加熱が必要となるため、骨材そのものの価格に加えて燃料費の影響も受ける。
建設物価調査会が提供する建設資材価格の調査情報。全国の都市別に掲載価格が示され、公共工事の積算や価格変動の確認に用いられる。本記事の合材価格はこの掲載価格に基づく。
国土交通省 不動産・建設経済局が毎月公表する調査。セメント・生コン・骨材・アスファルト合材・異形棒鋼・H形鋼・木材・石油について、地域別の価格動向・需給動向・在庫状況を示す。同省ウェブサイトで無料で閲覧できる。
建設資材の価格水準を指数化した統計。土木部門と建築部門に分かれる。2021年1月と2026年3月の比較で、土木部門の平均が43%、建築部門の平均が38%、建設全体の平均が39%上昇している。
工事請負契約書第26条第5項に定める仕組みで、特定資材の価格変動を契約金額に反映できる。国土交通省は2026年4〜5月に、中東情勢に伴う建設産業分野の対応として同条項の適用を含む通知を整理した。アスファルト合材も対象となりうる資材である。
出典・エビデンス一覧
出典は、メーカーの公式発表で確認したもの、報道・業界媒体を経由して確認したもの、官庁・業界団体が公表したものの3区分に分けて記載している。
メーカー一次情報
- 「アスファルト合材価格改定のお知らせ」(2026年4月1日出荷分より/対象:アスファルト合材全般=新規合材・再生合材および関連製品/改定幅:ストレートアスファルトの市場価格の上昇分を販売価格に転嫁)/前田道路株式会社/2026年3月25日
- 製造・販売事業に関する企業情報(全国150か所以上のアスファルト合材工場、アスファルト塊の再資源化率98%以上)/株式会社NIPPO
報道・業界媒体
- 「アスファルト合材の価格急騰、過去最高水準か」(4〜5月の1ヶ月で再生合材2,000〜3,000円程度、新規合材3,000〜4,000円程度の上昇)/建設通信新聞Digital/2026年5月30日
- 「【価格改定】中東情勢緊迫でアス合材値上げ/前田道路」/建設通信新聞Digital/2026年3月25日
- 「道路舗装11社の3月期決算/9社が営業・経常増益/価格転嫁で利益率改善」/建設通信新聞Digital/2026年5月18日
- 「アスファルト価格5割高、道路工事にコスト増圧力 供給不安の芽」/日本経済新聞/2026年6月6日
- 「日本の原油タンカー、全てホルムズ海峡通過」/日本経済新聞/2026年7月13日
- ナフサ価格推移表/大景化学/2026年7月16日時点
- アジアナフサ価格に関する報道/日本経済新聞/2026年6月25日
官庁・制度・業界統計
- 建設物価調査リポート(中東情勢)「ストアス・アスファルト混合物(合材)が大幅上伸、各地で過去最高値を更新!」/一般財団法人 建設物価調査会/2026年6月18日
- 「主要建設資材需給・価格動向調査(令和8年5月1〜5日現在)」/国土交通省 不動産・建設経済局/2026年5月25日公表
- 建設資材物価指数(土木部門・建築部門)/一般財団法人 建設物価調査会/2021年1月・2026年3月
- 全建設コストの上昇に関する公表(仮設費・経費を含む平均で直近約5年間28〜32%上昇)/一般社団法人 日本建設業連合会/2026年5月18日
- 中東情勢に伴う建設産業分野の対応に関する通知(単品スライド条項の適用等)/国土交通省/2026年4〜5月
- 建設工事費デフレーター(2015年度基準・建設総合)/国土交通省/2026年1月分
- 「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」/公正取引委員会
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よくあるご質問
需要が3割減っているのに、なぜ価格が過去最高値になるのですか
価格を決めているのが国内の需給ではなく、国際的な原油市況だからです。国土交通省が2026年5月25日に公表した調査では、アスファルト合材の需給動向は「均衡」、在庫状況は「普通」と判定されており、品薄による値上がりではありません。建設物価調査会は、原油価格とストレートアスファルトの価格が概ね連動する関係にあると整理しています。前田道路が改定理由として挙げたのも、需要動向ではなくストレートアスファルトの仕入価格・燃料費・物流コストという原価要因でした。国内の道路工事量が減っていることは、価格交渉の材料になりません。
アスファルトもナフサから作られるのですか
いいえ、逆です。ナフサは原油の軽い留分で、アスファルトはナフサなどを取り出した後に残る最も重い残渣にあたります。原油は常圧蒸留装置で加熱され、軽い順に石油ガス・ナフサ・灯油・軽油と分離され、最後に常圧残油が残ります。これをさらに減圧蒸留して得られる重質成分がアスファルトの原料です。塗料用シンナーや樹脂サッシがナフサから分岐する製品であるのに対し、アスファルトは蒸留装置のなかで最も離れた位置にあります。2026年はこの両端が同時に上昇しました。
再生合材を使えば価格上昇を抑えられますか
2026年の実績では、再生合材も改定の対象となっています。前田道路の改定は新規合材と再生合材の双方を対象としており、建設物価調査会が示す再生アスファルト混合物(密粒度13・東京14区)は2022年1月号との比較で約49%上昇しています。再生合材は新しいアスファルトの使用量が新規合材より少ないものの、新しいアスファルトの補充は必要であり、加熱工程と輸送のコストは新規合材と変わりません。建設通信新聞の報道でも、上昇幅は新規合材のほうが大きいものの、再生合材も2,000〜3,000円程度上昇したとされています。
公共工事で価格上昇分を契約金額に反映できますか
工事請負契約書第26条第5項に定める単品スライド条項により、特定資材の価格変動を契約金額に反映する仕組みがあります。国土交通省は2026年4月から5月にかけて、中東情勢に伴う建設産業分野の対応として同条項の適用を含む通知を整理しています。適用にあたっては契約後の価格変動を客観的な資料で示す必要がありますので、建設物価調査会の掲載価格と国土交通省の主要建設資材需給・価格動向調査が説明の根拠として使えます。後者は同省ウェブサイトで無料で閲覧でき、出典を明記したうえでの活用が認められています。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか
当社は千葉県我孫子市に本社を置き、プラスチックパレット・再生樹脂材料・PPバンド・ストレッチフィルム等の物流資材を全国のお客様にお届けする専門商社です。当社が扱う物流資材は原油の軽い留分であるナフサを起点とし、アスファルトは同じ原油の最も重い残渣にあたります。経路は正反対ですが、原油市況という共通の要因で動いています。日々の調達業務で確認している一次情報を、同じ構造の影響を受ける建設業・道路舗装業のみなさまにも活用いただけるよう、記事として整理して公開しています。
- 本記事の内容は2026年7月19日時点で確認できる情報に基づいています。ホルムズ海峡の情勢および原油市況は短期間で変動するため、記載内容が現時点の状況と異なる場合があります。
- 掲載した価格・上昇幅・出荷量は各調査機関・官庁・報道に基づく参考値です。実際の適用価格は製品仕様・取引条件・地域・出荷時期により異なります。ご発注の際は必ず取引先の最新情報をご確認ください。
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