【2026年7月版】断熱材の系統別改定マップ、押出法ポリスチレン40%・フェノールフォーム40%・グラスウール25%と9月1日改定前の発注設計
断熱材の価格改定は2026年4月から9月にかけて、押出法ポリスチレン・フェノール・ウレタン・グラスウール・ロックウールの5系統に及んだ。全6系統のうち5系統である。系統ごとの改定率と発効日を一次情報で整理し、9月1日の改定を控えた現時点で発注をどう設計すべきかを、基準日の違いを含めて実務判断に即して示す。
- 断熱材の改定は石油系にとどまらず鉱物系まで及んだ。押出法ポリスチレンが約40%、フェノールフォームが20%+特別調整金約20%、硬質ウレタンが40%、グラスウールが15〜25%以上である。
- 石油系から鉱物系への切替は代替策として挙げられてきたが、グラスウール・ロックウールも同時期に改定されたため、系統を変えることでコストを回避する余地は2026年7月時点でほぼ残っていない。
- 次の分岐点は9月1日の旭ファイバーグラスによるグラスウール全製品15%以上の改定である。それまでに確定できる受注と、確定できない受注を切り分ける作業が必要になる。
2026年7月19日時点、断熱材は全系統で改定が完了した。押出法ポリスチレン約40%、フェノールフォーム20%+特別調整金約20%、硬質ウレタン40%、グラスウール15〜25%以上、ロックウール20%以上。木造住宅1棟の断熱材コストは約50万円増と試算され、次の改定は9月1日である。
2026年7月19日時点の現在地
断熱材の価格改定は、2026年4月から7月にかけて一巡した。特徴は改定率の大きさそのものよりも、その広がり方にある。当初は押出法ポリスチレンフォームなどの石油化学系に限定されていた改定が、6月以降はグラスウール・ロックウールといった鉱物系にも及んだ。系統を変えることで上昇を回避するという選択肢が、実務上ほぼ成立しなくなっている。
石油系から始まり鉱物系まで到達した
最初に動いたのはカネカである。2026年4月1日出荷分から「カネライトフォーム」を約40%引き上げ、同社は自助努力では限界であると公表した。デュポン・スタイロが2026年3月23日のニュースリリースで「スタイロフォーム」「ウッドラック」の40%改定を表明し、5月1日出荷分から実施。JSPの「ミラフォーム」が6月1日出荷分から40%と続いた。押出法ポリスチレンフォームの主要3社が同一水準で並んだことになる。
鉱物系への波及は6月に入ってからである。パラマウント硝子がグラスウール断熱材全種を6月1日出荷分から約15%、JFEロックファイバーがロックウールを20%以上・気密部材を40%以上、いずれも6月1日納入分から改定した。マグ・イゾベールは7月1日出荷分からグラスウール製品全般を25%以上引き上げている。そして旭ファイバーグラスが9月1日出荷分からグラスウール全製品を15%以上とする改定を予告した。
第1に、改定は全6系統のうち5系統で実施済みまたは発効日が確定している。押出法ポリスチレン、フェノールフォーム、硬質ウレタン、グラスウール、ロックウールのいずれにも、価格面での避難先はない。残る1系統であるビーズ法ポリスチレン(EPS)については、2026年7月時点で改定を確認できる公表資料が見当たらない。
第2に、複数のメーカーが追加改定の可能性を明言している。デュポン・スタイロは今後も追加価格改定の可能性があるとし、カネカも追加改定の可能性を示唆した。7月16日にアジアナフサが1トン842ドルへ反発したため、この可能性は7月時点で高まる方向にある。
第3に、確定している次の改定は9月1日の旭ファイバーグラスである。それ以降の予定は現時点で公表されていない。8月から9月にかけての発注確定作業が、当面の実務上の焦点となる。
上流はいったん下げたが7月に反発した
断熱材の原料であるナフサは、2026年5月16日に1トン1,043ドルのピークをつけたのち、6月25日には627ドルまで下落して衝突前水準の632ドルを下回った。この局面で値下げを期待した調達判断もあったが、国内価格は反転していない。さらに7月12日のホルムズ海峡再閉鎖を受けて、7月16日時点のナフサは842ドルへ反発している。同日の為替は1ドル162.28円、国産ナフサ価格指標は96,965円/キロリットルである。
3月23日から9月1日までの時系列
断熱材の改定は、発表から発効までの猶予が短い点に特徴がある。デュポン・スタイロの場合、3月23日の発表から5月1日の発効まで約5週間、カネカに至っては約1ヶ月前の通知で40%という水準であり、業界でも例のないペースであった。以下に発表日と発効日を分けて整理する。
断熱材6系統と原料の経路
断熱材が同時に値上がりした理由を理解するには、系統ごとに原料の経路が異なることを押さえておく必要がある。石油化学系の3系統はナフサから直接分岐するが、鉱物系の2系統はナフサではなく製造時のエネルギーコストを経由して影響を受ける。経路が違うため、影響の出方と時期にも差が生じた。
| 系統 | 主原料 | ナフサからの経路 | 代表製品 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 押出法ポリスチレン (XPS) |
ポリスチレン | ナフサ→ベンゼン→スチレンモノマー→ポリスチレン | カネライトフォーム、スタイロフォーム、ミラフォーム | 基礎断熱、外断熱、床下 |
| ビーズ法ポリスチレン (EPS) |
発泡ポリスチレン | ナフサ→ベンゼン→スチレンモノマー→発泡ポリスチレン | 各社EPSボード | 床下、屋根、土間 |
| フェノールフォーム | フェノール樹脂 | ナフサ→ベンゼン→フェノール→フェノール樹脂 | ネオマフォーム、ネオマゼウス | 高性能断熱、薄型施工 |
| 硬質ウレタンフォーム | ポリオール、イソシアネート | ナフサ→プロピレン等→ポリオール/MDI | アキレスボード類、現場発泡 | 屋根、外壁、吹付施工 |
| グラスウール | ガラス | ナフサ経由ではなく、溶融工程のエネルギーコストと結合材(樹脂)を経由 | パラマウント硝子、マグ・イゾベール、旭ファイバーグラス | 充填断熱、天井・壁 |
| ロックウール | 玄武岩等の鉱物 | グラスウールと同様、溶融工程のエネルギーコストと結合材を経由 | JFEロックファイバー | 防火区画、気密部材 |
本記事で改定を確認できたのは、この6系統のうちビーズ法ポリスチレン(EPS)を除く5系統である。EPSは押出法ポリスチレンと同じスチレンモノマーを原料とするため同様のコスト圧力を受けると考えられるが、2026年7月時点で改定を確認できる公表資料が見当たらないため、Chapter 04の改定マップには含めていない。EPSボードを使用する案件では、取引先へ個別にご確認いただきたい。
フェノールフォームは合板と原料を共有する
系統をまたぐ影響として押さえておきたいのが、フェノール樹脂である。旭化成建材の「ネオマフォーム」はナフサ由来のフェノール樹脂を主原料とするが、同じフェノール樹脂は構造用合板(特類)の接着剤にも使われる。合板は耐水性の要求からフェノール樹脂系接着剤が必須であり、断熱材と構造材が同一の原料で競合する構造にある。断熱材だけを他系統に切り替えても、住宅1棟の原価という単位で見れば影響が残る理由がここにある。
鉱物系が遅れて上がった理由
グラスウールとロックウールはナフサから直接つくられるわけではない。それでも6月以降に改定が集中したのは、2つの経路があるためである。1つは製造工程のエネルギーコストで、ガラスや玄武岩を高温で溶融する工程は燃料価格の影響を直接受ける。もう1つは結合材で、繊維をマット状に成形するためのバインダーには樹脂が使われる。この2経路を通じて、時間差を伴いながら鉱物系にもコストが波及した。
時間差は実測で確認できる。押出法ポリスチレンの改定が4月1日から5月1日に集中したのに対し、グラスウール・ロックウールは6月1日から7月1日、そして9月1日と、約2ヶ月から4ヶ月遅れて発効している。この遅れが、後述するとおり「鉱物系は上がっていない」という一時期の判断を生んだ。
系統別・メーカー別の改定マップ
2026年3月から9月にかけて発表された断熱材および関連部材の改定を、系統別に整理した。改定率は各社発表ベースであり、実際の適用価格は製品仕様・取引条件・出荷日・販売ルートにより異なる。基準日が出荷分・納入分・受注分に分かれている点は、発注設計に直結するため特に注意が必要である。
石油化学系
| メーカー | 製品・系統 | 改定率 | 基準日 |
|---|---|---|---|
| カネカ | カネライトフォーム(押出法ポリスチレン) | 約40% | 2026年4月1日 出荷分 |
| カネカ | 発泡ポリオレフィン・発泡ポリスチレン樹脂 | +150円/kg | 2026年4月1日 出荷分 |
| デュポン・スタイロ | スタイロフォーム、ウッドラック | 40% | 2026年5月1日 出荷分 |
| アキレス | 硬質ウレタンフォーム断熱材(ボード類) | 40%+出荷制限 | 2026年5月1日 出荷分 |
| 田島ルーフィング | ポリスチレン断熱材・ウレタンフォーム断熱材 | 40〜50% | 2026年5月1日 納品分 |
| 旭化成建材 | ネオマフォーム、ネオマゼウス(フェノールフォーム) | 20%+特別調整金約20% | 2026年5月7日 出荷分 |
| JSP | ミラフォーム他(押出法ポリスチレン) | 40% | 2026年6月1日 出荷分 |
| シップス・ジャパン | 防蟻断熱材「パフォーム・ガード」シリーズ | 個別案内 | 2026年4月20日 出荷分 |
| フクビ化学工業 | 断熱材を含む製品全般 | 個別案内+供給制限 | 2026年4月1日以降 |
鉱物系・気密部材
| メーカー | 製品・系統 | 改定率 | 基準日 |
|---|---|---|---|
| パラマウント硝子工業 | グラスウール断熱材 全種 | 約15% | 2026年6月1日 出荷分 |
| JFEロックファイバー | ロックウール | 20%以上 | 2026年6月1日 納入分 |
| JFEロックファイバー | 気密部材 | 40%以上 | 2026年6月1日 納入分 |
| マグ・イゾベール | グラスウール製品 全般 | 25%以上+実績レベルの受注制限 | 2026年7月1日 出荷分 |
| 旭ファイバーグラス | グラスウール 全製品 | 15%以上 | 2026年9月1日 出荷分(予定) |
マグ・イゾベールは2025年10月にも25%以上の改定を実施しており、2026年7月1日はそれに続く2度目の改定にあたる。2025年10月と2026年7月の改定率は単純に加算されるものではなく、それぞれの時点の建値に対する改定である点に留意されたい。
本表では旭化成建材の改定を「20%+特別調整金約20%/2026年5月7日出荷分」と記載している。一方、業界媒体には「2026年4月1日出荷分より約10〜15%」と記載する資料もあり、率と時期の双方で内容が一致していない。4月と5月の2段階で実施された可能性と、いずれかの記録が正確でない可能性の両方が考えられるが、当社として2026年7月時点で確認できる範囲では、両者を確定的に整理できる公表資料は見当たらない。同社製品を使用する案件では、適用率と適用日を取引先へ直接ご確認いただきたい。
隣接資材
断熱工事の見積に同時に影響する隣接資材として、吉野石膏が石膏関連製品を2026年6月出荷分から20%改定している。断熱材と石膏ボードは内装下地工事で同時に発注されることが多く、実務上は合算での上昇として現れる。
受注制限と供給調整の実態
断熱材で生じた問題は価格だけではない。2026年4月から5月にかけて、複数のメーカーが受注制限・納期調整・出荷制限を実施した。着工日を確定できない期間が生じたほか、一部サイズの販売終了により設計変更を求められる現場も発生している。
旭化成建材の3段階の対応
供給面で最も段階的な対応をとったのが旭化成建材である。2026年4月1日受注分から「ネオマフォーム」「ネオマゼウス」の受注制限と納期調整を開始し、4月20日には注文受付を一時的に完全停止した。その後5月7日出荷分から20%の改定に約20%の特別調整金を上乗せする形で供給を再開している。この過程で一部サイズの販売終了も発表された。
サイズの販売終了は、価格改定とは性質が異なる問題である。厚みや寸法が変われば断熱性能の計算をやり直す必要が生じ、確認申請済みの物件では設計変更の手続きが伴う。改定率の数字には現れないが、工期への影響という点ではこちらのほうが大きい場合がある。
出荷制限を伴った改定
アキレスは2026年5月1日出荷分から硬質ウレタンフォーム断熱材(ボード類)を40%改定すると同時に、同製品群の出荷制限を実施した。マグ・イゾベールは7月1日出荷分からの25%以上の改定にあたり、実績レベルの受注制限を継続している。実績レベルの受注制限とは、過去の出荷実績を基準に数量を割り当てる方式であり、新規顧客や増量注文への回答が事実上停止することを意味する。
フクビ化学工業は2026年4月1日以降、断熱材を含む製品全般の価格改定を実施するとともに、副資材の入荷が不安定になる可能性を理由に、製品の供給・受注制限が生じうる旨を通知した。田島ルーフィングは4月10日に防水材・住宅建材の新規受注を停止し、6月中旬から下旬にかけて段階的に再開する見込みを示している。
鉱物系への切替が機能しない理由
石油化学系の断熱材が40%上昇した2026年4月から5月にかけて、対応策としてグラスウール・ロックウールへの切り替えが挙げられることが多かった。実際、当社が5月2日に公開した合板に関する記事でも、コスト面と供給安定性の両面から鉱物系への切り替えを有効な選択肢として示した。その後の推移を踏まえると、この判断には修正が必要である。
避難先も同じ方向に動いた
6月1日にパラマウント硝子が約15%、JFEロックファイバーがロックウール20%以上・気密部材40%以上、7月1日にマグ・イゾベールが25%以上、そして9月1日に旭ファイバーグラスが15%以上と、鉱物系の主要メーカーは順次改定を実施または予告した。押出法ポリスチレンの40%と比べれば改定率は小さいが、切り替えによって上昇を回避できるという前提は成り立たなくなっている。
さらに、マグ・イゾベールは2025年10月にすでに25%以上の改定を実施していた。2026年7月の改定はそれに続くものであり、2025年10月時点の水準から見れば累積の上昇幅は押出法ポリスチレンの単発40%と比較しうる規模になる。改定率を単発で比較すると、この累積効果を見落とすことになる。
切り替えには3つの実務コストが伴う
価格差が縮小した状況では、切り替えに伴う実務コストが相対的に重くなる。第1に断熱性能の再計算である。系統ごとに熱伝導率が異なるため、同じ性能を確保するには厚みの変更が必要になり、外皮性能計算をやり直すことになる。第2に納まりの変更である。押出法ポリスチレンは板状、グラスウールは充填という施工方法の違いがあり、下地・防湿層・気密処理の仕様が変わる。第3に確認申請済み物件での設計変更手続きである。
これらは価格差が大きければ吸収できるコストだが、2026年7月時点のように系統間の価格差が縮小した局面では、切り替えの経済合理性は限定的になる。
この論点が2026年前半に見えなかった理由
Chapter 03で述べたとおり、鉱物系はナフサから直接ではなく、溶融工程のエネルギーコストと結合材を経由して影響を受ける。この経路の違いが約2ヶ月から4ヶ月の時間差を生んだ。4月から5月の時点では鉱物系の改定がまだ発表されていなかったため、その時点の情報では鉱物系が相対的に安定して見えた。時間差を織り込まずに断面で比較すると、実際には遅れて到達する上昇を見落とすことになる。
省エネ基準・ZEHへの影響
断熱材の改定が他の建材と性質を異にするのは、使用量を減らすという対応が制度上とりにくい点にある。建築物省エネ法の改正により、新築住宅には省エネ基準への適合が求められる。断熱材は仕様を落とせば基準を満たせなくなるため、価格が上がっても必要量を確保せざるを得ない。
気密部材40%以上の意味
系統別の改定率のなかで、実務上の影響が数字以上に大きいのがJFEロックファイバーの気密部材である。ロックウール本体が20%以上であるのに対し、気密部材は40%以上と改定率が倍近い。気密部材は断熱層の連続性を確保するための部材であり、住宅の気密性能を左右する。ZEH水準の省エネ性能を確保する住宅ほど気密処理の比重が高いため、高性能仕様の住宅ほど改定の影響を強く受ける構造になっている。
同じ理由で、旭化成建材のフェノールフォームの改定も高性能仕様に集中して効く。フェノールフォームは熱伝導率が低く、限られた厚みで高い断熱性能を確保できるため、外皮性能を高めた住宅や、厚みに制約のあるリフォーム案件で採用される。20%の改定に約20%の特別調整金が加わったうえに、一部サイズが販売終了となったことで、設計上の選択肢そのものが狭まった。
性能を下げる方向の調整は成立しにくい
他の建材であれば、グレードを下げる、施工範囲を絞るといった調整でコストを吸収する余地がある。断熱材の場合、省エネ基準への適合が前提となるため、この調整は限定的にしか使えない。結果として、改定分は設計変更ではなく請負金額または利益のいずれかで吸収されることになる。この構造が、断熱材の改定を工務店・住宅会社の収益に直結させている。
住宅1棟あたりのコスト影響
改定率から実際の負担額を把握するには、1棟あたりの使用量を起点に計算する必要がある。以下に公表されている試算を挙げるが、前提条件が異なる複数の試算が存在するため、数値の性格を区別して扱う。
断熱材のみの試算
一般的な木造住宅1棟で断熱材を約250枚使用するとした場合、約40%の改定だけで資材コストが約50万円増加するという試算が公表されている(プライシー編集部、山梨県の住宅メーカーへの取材に基づく試算、2026年3月)。この試算は押出法ポリスチレンフォームの40%改定を前提としており、鉱物系や他系統を採用した場合の金額は異なる。
新築住宅の価格を3,500万円から4,000万円程度と置くと、50万円は総額のおよそ1.3%から1.4%にあたる。金額としては大きいが、住宅総額に対する比率で見ると1%台であり、断熱材単独では請負金額の改定要因として説明しにくい水準でもある。この説明のしにくさが、工務店側で利益に吸収されやすい理由の一つになっている。
建材全体での試算との関係
一方、新築住宅1棟あたりのコスト増を建材全体で56万円超、全体コストの3〜5%とする試算も公表されている。断熱材のみで50万円という試算と、建材全体で56万円超という試算は、前提となる対象範囲・時点・調査主体が異なるため、単純に整合させることはできない。両者を足し合わせることも適切ではない。
断熱材のみで約50万円という試算と、建材全体で56万円超という試算は、いずれも公表されているものだが、対象範囲が重なるにもかかわらず金額が近接しており、そのままでは整合しない。当社として2026年7月時点で確認できる範囲では、両者を統合できる公表資料は見当たらない。見積の根拠として用いる場合は、自社の実際の使用数量と仕入価格から個別に算出することを推奨する。
リフォーム・改修での現れ方
改修工事では断熱材の使用量が新築より少ない一方、フェノールフォームのように厚みに制約のある部位で使われる高性能材の比重が高くなる。旭化成建材の20%+特別調整金約20%という改定は、この領域に集中して効く。また一部サイズの販売終了により、既存の納まりに合う製品が入手できず、下地から作り直す必要が生じる場合もある。
9月1日改定前の発注設計
2026年7月19日時点で確定している次の改定は、9月1日出荷分からの旭ファイバーグラスによるグラスウール全製品15%以上である。それ以降の予定は現時点で公表されていない。ここでは、確定情報だけを前提とした発注設計の考え方を整理する。
基準日の違いを整理する
断熱材の改定は基準日が3種類に分かれており、これを混同すると発注判断を誤る。旭ファイバーグラス・マグ・イゾベール・カネカ・デュポン・スタイロ・JSPは「出荷分」基準、JFEロックファイバーと田島ルーフィングは「納入分」基準、旭化成建材は当初の受注制限が「受注分」基準であった。出荷分基準の場合、発注を済ませていても出荷が9月1日以降にずれれば改定後の価格が適用される。
| 基準 | 該当メーカーの例 | 価格が確定するタイミング | 実務上の留意点 |
|---|---|---|---|
| 出荷分 | 旭ファイバーグラス、マグ・イゾベール、カネカ、デュポン・スタイロ、JSP | メーカーが出荷した日 | 発注済みでも出荷が改定日以降なら新価格。工程遅延がそのまま価格上昇に転化する |
| 納入分 | JFEロックファイバー、田島ルーフィング | 現場または倉庫に納入された日 | 出荷分よりさらに後ろにずれるため、猶予は短い |
| 受注分 | 旭化成建材(受注制限の運用) | メーカーが受注を確定した日 | 受注確定さえ間に合えば旧価格。3種のなかでは最も猶予がある |
7月から8月にかけて確認すべき4点
第1に、9月1日以降に出荷予定のグラスウールがある案件を洗い出し、出荷日を前倒しできるかをメーカーまたは商流に確認する。第2に、受注制限が継続しているメーカーについては、価格だけでなく数量回答が得られるかを事前に確認する。実績レベルの受注制限下では、前倒し発注そのものが受け付けられない場合がある。
第3に、保管場所と品質保持の条件を確認する。前倒し発注は保管コストと在庫リスクを伴い、グラスウールは吸湿すると性能が低下するため、屋内保管が前提となる。第4に、発注者・施主への説明である。公共工事では単品スライド条項が特定資材の価格変動を契約金額に反映する仕組みとして用意されており、民間工事では公正取引委員会の価格交渉に関する指針が交渉の根拠となる。
追加改定の可能性をどう見るか
デュポン・スタイロは今後も追加価格改定の可能性があると明言しており、カネカも追加改定の可能性を示唆している。7月16日にアジアナフサが842ドルへ反発したことを踏まえると、この可能性は7月時点で高まる方向にある。ただし具体的な時期・幅は公表されていないため、確定していない改定を前提に発注を組むことは推奨できない。確定している9月1日を基準に組み立て、新たな発表があった時点で見直すのが現実的である。
本記事は2026年7月19日時点で確認できるエビデンスに基づいている。ホルムズ海峡の情勢と各社の改定発表は数日単位で動くため、8月中旬のイスラマバード覚書の交渉期限前後には内容が変わる可能性がある。次回更新は2026年8月中旬を予定している。
用語集
ポリスチレンを押し出し成形して発泡させた板状断熱材。吸水しにくく圧縮強度が高いため、基礎断熱・外断熱・床下に用いられる。カネライトフォーム、スタイロフォーム、ミラフォームが代表製品で、いずれも2026年に約40%の改定が実施された。
発泡させたポリスチレンビーズを型内で成形した断熱材。押出法より安価で加工しやすい一方、吸水性と強度で劣る。床下・屋根・土間に用いられる。原料経路は押出法と同じくナフサ由来のスチレンモノマーである。
フェノール樹脂を発泡させた断熱材で、熱伝導率が低く薄い厚みで高い断熱性能が得られる。ネオマフォーム、ネオマゼウスが代表製品。原料のフェノール樹脂は構造用合板の接着剤と共通するため、断熱材と構造材が同一原料で競合する。
ポリオールとイソシアネートを反応させて発泡させる断熱材。ボード状の製品と現場で吹き付ける施工法がある。アキレスが2026年5月1日出荷分から40%改定し、あわせて出荷制限を実施した。
ガラスを溶融して繊維化した鉱物系断熱材。柱間に充填する施工が一般的で、価格が比較的低く不燃性がある。ナフサから直接つくられるわけではないが、溶融工程の燃料費と繊維をまとめる結合材を通じてコストが波及する。
玄武岩などの鉱物を溶融して繊維化した断熱材。耐熱性が高く防火区画の部材としても用いられる。JFEロックファイバーが2026年6月1日納入分から20%以上の改定を実施した。
断熱層の連続性を確保し、隙間からの空気の移動を抑えるための部材。断熱材本体より改定率が高く設定される例があり、JFEロックファイバーは40%以上とした。高い省エネ性能を確保する住宅ほど使用比重が高い。
通常の価格改定とは別枠で、原料高騰分を上乗せする方式。旭化成建材が2026年5月7日出荷分から、20%の改定に約20%の特別調整金を追加した。実質的な負担増は改定率の単純合計に近い水準となる。
過去の出荷実績を基準に顧客ごとの数量を割り当てる供給方式。新規顧客や増量注文への回答が事実上停止する。マグ・イゾベールが2026年7月時点で継続している。
価格改定の適用を判定する基準日の3類型。出荷分はメーカーが出荷した日、納入分は現場等に納入された日、受注分はメーカーが受注を確定した日を基準とする。同じ発注でも基準の違いで適用価格が変わる。
住宅の外皮(屋根・外壁・床・開口部)から逃げる熱量を算出し、省エネ基準への適合を判定する計算。断熱材の系統を変更すると熱伝導率が変わるため、厚みの見直しと再計算が必要になる。
工事請負契約書第26条第5項に定める仕組みで、特定資材の価格変動を契約金額に反映できる。国土交通省は2026年4〜5月に、中東情勢に伴う建設産業分野の対応として同条項の適用を含む通知を整理した。
出典・エビデンス一覧
メーカー一次情報
以下は各社の公式発表・公式リリースで内容を確認したものである。業界媒体を経由して確認した情報は次の「報道・業界媒体」に分けて記載している。
- 「ポリスチレン断熱材製品の値上げ表明」ニュースリリース/デュポン・スタイロ株式会社/2026年3月23日
- 押出法ポリスチレンフォームおよび発泡樹脂の価格改定に関するトピックス/株式会社カネカ/2026年
- ネオマフォーム・ネオマゼウスへの影響および価格改定に関する通知/旭化成建材株式会社/2026年4月・5月
- ミラフォーム他製品の価格改定/株式会社JSP/2026年6月1日出荷分
- グラスウール断熱材全種の価格改定/パラマウント硝子工業株式会社/2026年6月1日出荷分
- ロックウールおよび気密部材の価格改定/JFEロックファイバー株式会社/2026年6月1日納入分
- グラスウール製品全般の価格改定および受注制限/マグ・イゾベール株式会社/2026年7月1日出荷分
- グラスウール全製品の価格改定/旭ファイバーグラス株式会社/2026年9月1日出荷分(予定)
- 製品の供給制限と価格改定に関する通知/フクビ化学工業株式会社/2026年4月以降
報道・業界媒体
- 硬質ウレタンフォーム断熱材(ボード類)の価格改定および出荷制限(アキレス株式会社/2026年5月1日出荷分)/「【2026年5月最新】ナフサショックによる建材受注制限・値上げ情報まとめ」note
- ポリスチレン断熱材・ウレタンフォーム断熱材の価格改定および受注停止(田島ルーフィング株式会社/2026年4月・5月)/「【2026年6月最新】ナフサショックによる建材受注制限・値上げ情報まとめ」note
- 石膏関連製品の価格改定(吉野石膏株式会社/2026年6月出荷分)/「建設業界 資材価格値上げ情報まとめ」クラフトバンク総研
- 「デュポン・スタイロ、ポリスチレン断熱材値上げ」/リフォームオンライン/2026年4月7日掲載
- 「スタイロフォーム、5月1日出荷分から40%値上げ」/新建ハウジング
- 「【2026年6月】断熱材 値上げの理由と住宅費への影響・対策」/プライシー/2026年6月18日時点
- 「断熱材の値上がりが2026年に急加速」/MAKE HOUSE/2026年5月
- 「建設業界 資材価格値上げ情報まとめ」/クラフトバンク総研
- 「日本の原油タンカー、全てホルムズ海峡通過」/日本経済新聞/2026年7月13日
- ナフサ価格推移表/大景化学/2026年7月16日時点
官庁・制度
- 中東情勢に伴う建設産業分野の対応に関する通知(単品スライド条項の適用等)/国土交通省/2026年4〜5月
- 建設工事費デフレーター(2015年度基準・建設総合)/国土交通省/2026年1月分
- 「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」/公正取引委員会
- 「中東情勢等を踏まえた中小企業・小規模事業者向け支援について」/中小企業庁/2026年3月23日
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よくあるご質問
石油系の断熱材が40%上がったので、グラスウールに切り替えればコストを抑えられますか
2026年7月時点では、切り替えによる価格面の効果は限定的です。グラスウールもパラマウント硝子が6月1日出荷分から約15%、マグ・イゾベールが7月1日出荷分から25%以上、旭ファイバーグラスが9月1日出荷分から15%以上の改定を実施または予告しています。さらに切り替えには外皮性能計算のやり直し、納まりと気密処理の仕様変更、確認申請済み物件での設計変更手続きが伴います。供給の安定性や防火性能を理由に系統を選定する判断は有効ですが、価格を主な理由とする切り替えは慎重に検討されることをおすすめします。
断熱材の改定はいつまで続きますか
2026年7月19日時点で確定している最後の改定は、9月1日出荷分からの旭ファイバーグラスによるグラスウール全製品15%以上です。それ以降の予定は公表されていません。ただしデュポン・スタイロは今後も追加価格改定の可能性があると明言しており、カネカも追加改定の可能性を示唆しています。原料のアジアナフサは6月25日に1トン627ドルまで下落した後、7月12日のホルムズ海峡再閉鎖を受けて7月16日には842ドルへ反発しており、追加改定の可能性は7月時点で高まる方向にあります。
9月1日より前に発注すれば旧価格が適用されますか
メーカーによって基準日が異なるため、一律には判断できません。旭ファイバーグラスをはじめカネカ・デュポン・スタイロ・JSP・マグ・イゾベールは「出荷分」基準で、発注を済ませていても出荷が改定日以降にずれれば新価格が適用されます。JFEロックファイバーと田島ルーフィングは「納入分」基準で、猶予はさらに短くなります。旭化成建材は受注制限の運用が「受注分」基準でした。前倒しを検討される場合は、基準日の種別と、実績レベルの受注制限下で数量回答が得られるかを事前にご確認ください。
住宅1棟でどのくらいの負担増になりますか
公表されている試算では、一般的な木造住宅1棟で断熱材を約250枚使用するとした場合、約40%の改定だけで資材コストが約50万円増加するとされています(プライシー編集部、山梨県の住宅メーカーへの取材に基づく試算、2026年3月)。押出法ポリスチレンフォームの40%改定を前提とした数値であり、系統や仕様によって金額は変わります。建材全体では1棟あたり56万円超という別の試算もありますが、対象範囲と調査主体が異なるため、両者を足し合わせることは適切ではありません。見積の根拠とされる場合は、自社の実際の使用数量と仕入価格から個別に算出されることをおすすめします。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか
当社は千葉県我孫子市に本社を置き、プラスチックパレット・再生樹脂材料・PPバンド・ストレッチフィルム等の物流資材を全国のお客様にお届けする専門商社です。断熱材の主原料であるポリスチレンやポリオレフィンは、当社が扱う物流資材と同じくナフサを起点とする石油化学製品であり、価格と供給の変動要因を共有しています。日々の調達業務で確認している一次情報を、同じ構造の影響を受ける建設業のみなさまにも活用いただけるよう、記事として整理して公開しています。
- 本記事の内容は2026年7月19日時点で確認できる情報に基づいています。ホルムズ海峡の情勢および各社の価格改定発表は短期間で変動するため、記載内容が現時点の状況と異なる場合があります。
- 掲載した改定率・基準日・数量は各社の公式発表および報道に基づく参考値です。実際の適用価格は製品仕様・取引条件・出荷日・販売ルートにより異なります。ご発注の際は必ず各社の最新情報をご確認ください。
- 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の投資判断・取引判断を推奨するものではありません。調達・発注の判断は読者ご自身の責任において行ってください。
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