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「建材有事」から「設備有事」その後2026|TOTO・LIXIL・クリナップ正常化と6-10月の建材価格改定動向【2026年7月最新版】
サプライチェーン動向レポート / 2026年7月12日 最終更新

「建材有事」から「設備有事」その後2026
TOTO・LIXIL・クリナップ正常化と6-10月の建材価格改定動向

TOTO 6/9 全製品受注全面再開で「設備有事」は正常化フェーズへ / 一方LIXILは8/3・9-10月に建材・サッシ・外装の全方位改定を予告

初版: 最終更新:
2026年7月12日 更新概要
設備供給は正常化、価格改定は6-10月に段階的展開

2026年4月13日のTOTOユニットバス受注停止から始まった「設備有事」は、6月9日のTOTO全製品受注全面再開で正常化フェーズへ入った(TOTO公式・日本経済新聞2026/6/8)。LIXIL・クリナップも受注は通常水準に復帰、Panasonicも6月後半までに正常化した。一方で価格改定は本格化しており、LIXILは8月3日受注分から水回り価格改定、9-10月に建材・サッシ・外装等の全方位改定を予告(LIXIL公式2026/5/18)。建材側では6月に日本ペイント第3波・JSP・パラマウント硝子の改定が実施された。7月以降は永大産業・ニチハ・旭ファイバーグラス(アスファルトシングル30%)が実施済み。8月にデンカアステック、9月に旭ファイバーグラス(グラスウール15%)、10月にYKK AP(窓サッシ10-15%)が予定されている。7月7〜9日の米イラン相互攻撃でイスラマバード覚書の履行が事実上停止、8月21日の米制裁免除期限を控え、実務者は供給正常化を追い風にしつつ、価格改定の分岐点を見据えた事前発注が求められる局面にある。

結論

TOTO 6/9受注全面再開で「設備有事」は正常化。一方LIXILは8/3水回り改定(浴室13%・水栓8%・タイル12%)、9-10月建材・サッシ・外装の全方位改定を予告。建材側は日本ペイント6/1・JSP・パラマウント硝子6/1・旭ファイバーグラス9/1・YKK AP 10/1が実施/予定。7月覚書履行停止・8/21米制裁免除期限を控え、事前発注の備えが要る。

6/9
TOTO全製品受注
全面再開・納期通常化
8/3
LIXIL水回り
受注分から改定
(浴室13%・水栓8%)
3/12基
国内エチレン稼働
7月時点で低水準継続
8/21
米制裁免除期限
次の分岐点

序章2026年4月から7月までの主要経緯

本記事は、2026年4月13日のTOTOユニットバス受注停止に端を発した「設備有事」の一連の流れを整理する。6月9日のTOTO全製品受注全面再開による正常化を経て、8月以降のLIXIL追加価格改定へと続く経緯を、7月12日時点の情報でまとめている。ホルムズ海峡の情勢悪化により建材・設備メーカーの原材料調達が制約を受け、その結果として国内の住宅リフォーム市場に影響が及んだ経緯を、時系列と共に因果関係を追って解説する。関連トピックの詳細は2026年ナフサ・クライシス総論およびイラン情勢と建材市場(2026年7月最新)で詳述している。

Phase 1
受注停止期(2026年4月):TOTO・LIXIL・クリナップ・Panasonicが受注停止・納期未定
  • 2/28米国・イスラエルがイランへ先制攻撃。2月末の情勢悪化により、ホルムズ海峡通航に不安が広がる。
  • 4/13TOTOがユニットバスの新規受注を一時停止。ナフサ由来の接着剤・溶剤不足が理由。
  • 4/14LIXIL・クリナップも受注制限・納期未定へ。Panasonic HSがバス関係・トイレ関係全商品の納期未定を発表。
  • 4/15TOTOが「第3報」で4月20日から段階的な新規受注再開の方針を示す。
  • 4/20〜22TOTO・LIXIL・クリナップが段階的に受注再開。ただし納期は個別回答、通常より2〜4ヶ月長い状況が続く。
  • 4/24LIXIL・YKK APがサッシ・ドア全般で5〜15%の価格改定。カネカ・カネライトフォーム40%値上げ実施。
  • 4/26米国産原油の初タンカーが日本(千葉沖)に到着(経済産業省)。
  • 4/28出光興産の大型タンカー「出光丸」がホルムズ海峡を通過してオマーン湾の公海へ出る。日本関連船舶のペルシャ湾脱出は衝突開始以来初。
  • 4/30LIXIL・TOTOが決算発表。両社とも27年3月期業績予想への影響は現時点で非反映と説明(詳細は第1章1-2節)。
Phase 2
段階的正常化期(2026年5月〜6月):TOTO 6/9全面再開、建材第2波の実施
  • 5/1デュポン・スタイロ「スタイロフォーム」+40%、田島ルーフィング防水材+40〜50%、LIXIL・YKK AP住宅用商品+5〜10%改定。
  • 5/7旭化成建材ネオマフォーム+20%+特別調整金約20%追加、積水化学 塩ビ・ポリ管等+12〜20%改定。
  • 5/18LIXILが公式で8月3日水回り改定・9-10月建材/サッシ/外装改定を予告発表
  • 5/中旬Panasonic HSが納期回答を再開。
  • 6/1日本ペイント第3波(溶剤系25-35%・水性20-30%)、JSP断熱材+40%、パラマウント硝子グラスウール+15%、積水化学 塩ビ・ポリエチレン関連の追加改定を実施。
  • 6/8TOTOが翌6/9からの全製品受注全面再開を発表、納期も中東情勢悪化前の通常水準へ復帰と公表(日本経済新聞・時事ドットコム)。
  • 6/14米・イラン両国がパキスタン仲介で14項目「イスラマバード覚書」に合意。60日間ホルムズ通行料無料等。
  • 6/17G7サミット最終日エヴィアン=レ=バン(フランス)でトランプ・ペゼシュキアン・バンスがデジタル形式で正式署名
  • 6/18〜19覚書発効、ホルムズ通航は2月平均の5割まで回復、日本企業所有タンカー含む商船25隻通過。
  • 6/20イスラエル軍レバノン攻撃を受け、イラン革命防衛隊が「ホルムズ全船舶通航停止」を宣言。
  • 6/25アジアナフサ価格1トン627ドルと衝突前水準632ドル/tを下回るまで軟化。同日湾岸海域で商船攻撃発生。
Phase 3
覚書履行停止期(2026年7月):正常化と追加価格改定の並行局面
  • 7/1永大産業(建材・設備10-15%、床材15%・室内ドア10%)ニチハ(センタールーフ・センターサイディング)旭ファイバーグラス(アスファルトシングル約30%)が価格改定を実施。
  • 7/3〜4Bloomberg:オマーン側航路の商船8隻がUターン、うち4隻がイラン側航路に変更。
  • 7/7〜9米中央軍がイラン軍事施設80ヶ所以上に攻撃。イランがバーレーン・クウェート米軍基地に応戦、米海軍MQ-9ドローン撃墜
  • 7/8トランプ大統領が停戦合意の終了を表明。イラン国会のガリバフ議長も履行義務停止をX投稿で表明。60日期限を待たず覚書の履行が事実上停止した状態となる。
  • 8/1デンカアステック ガルバリウム雨どい20%以上改定予定。
  • 8/3LIXIL 水回り改定予定。秋以降サッシ・建材・外装ほぼ全製品の全方位改定を予告済み(詳細は第2章)。
  • 8/21米財務省のイラン石油輸出制裁免除が期限を迎える予定。市場が注視する次の分岐点。
  • 9/1旭ファイバーグラス グラスウール全製品15%以上改定予定。
  • 10/1YKK AP 窓サッシ10-15%以上改定(5月改定から半年での再改定)。南海プライウッド全製品10%改定予定。

第1章設備メーカー:TOTO 6/9全面再開で「設備有事」は正常化フェーズへ

2026年4月13日のTOTO受注停止に端を発した設備メーカーの供給問題は、原材料調達の見通しが立ったことにより、6月9日のTOTO全面再開でひとまず一区切りとなった。その一方で、停止期間中に積み上がった受注残の消化のため、多少の納期前後は残るケースもあるので、契約時には書面での納期明記が推奨されている。

1-1. TOTO:6月9日から全製品受注全面再開・納期も通常水準へ復帰

TOTOは2026年6月8日、翌6月9日から全製品の受注を全面再開し、納期も中東情勢悪化前の通常水準に戻すと発表した。同社は「原材料の供給見通しが立ち、安定的な製品供給の維持が可能な状況になった」と説明している(日本経済新聞2026/6/8・時事ドットコム2026/6/8)。4月13日の新規受注停止から4月20日以降の段階的再開を経て、約2ヶ月にわたる供給制限は事実上の正常化に至った。

  • 受注状況:全製品受注が通常受付。人気モデル(サザナ・シンラ・Wシリーズ等)も順次通常納期へ復帰。
  • 納期水準:中東情勢悪化前の標準的な水準(通常2〜3週間、特注品は1〜2週間追加)へ復帰。
  • ピーク時の状況:停止期間中は通常2ヶ月で着工できた案件が3〜4ヶ月待ちになるケースが目立った。
  • 実務上の留意点:停止期間中の受注残消化に伴い、地域や仕様によっては多少の納期前後が残るケースもあるため、契約時の書面確認が安全。

1-2. LIXIL:受注は正常化、ただし8月3日から水回り価格改定を予告

LIXILは4月21日から浴室商品の納期回答を順次再開、その後受注は正常化した。ただし、注目すべきは2026年5月18日にLIXIL公式が発表した価格改定スケジュールである。原材料コストの上昇圧力を受けて、3段階の改定計画が示された。

  • 8月3日受注分から水回り価格改定:浴室・水栓・タイル各品目で改定を予告済み(詳細は第2章2-4節参照。LIXIL公式2026/5/18)。
  • 9-10月に建材・サッシ・外装の全方位改定:ほぼ全製品が対象となる大規模改定を発表済み。「設備有事」の供給側は6月に一段落したものの、価格側の改定はここから本格化する構図。
  • 4/24先行改定:LIXIL・YKK APが4月24日実施のサッシ・ドア全般5〜15%改定は既に反映済み。
  • 決算での位置付け:4月30日決算でLIXIL瀬戸欣哉社長は「中東情勢の影響は現時点では合理的な織り込みが困難」として27年3月期業績予想には反映せず。ただし価格改定は着実に実施される見込み。

1-3. クリナップ・Panasonic・タカラスタンダード・ハウステック:受注状況の総括

  • クリナップ:4月22日にシステムバスルーム受注を再開、最短納期は5/25〜。7月時点で受注は正常化。
  • Panasonic HS:4/14以降バス・トイレ関係全商品が納期未定となっていたが、5月中旬から納期回答を再開、6月後半に完全正常化。
  • タカラスタンダード:受注停止に至らず継続供給。金属ホーロー主体のため石油系素材依存が低いのが強み。停止期間中は他社からの乗り換え需要が集中した。
  • ハウステック:受注停止に至らず継続供給。在庫余力ありの強みが働いた。
供給正常化の判断材料

TOTO・LIXIL・クリナップ・Panasonic HSの4社が受注制限を解除した現時点で、住宅リフォーム市場の設備供給は事実上の正常化に入った。ただし価格側では8月3日のLIXIL水回り改定を皮切りに、8-10月にかけて建材・サッシ・外装の追加改定が続く見込みのため、「供給は戻ったが、価格はこれから段階的に上がる」局面と整理できる。

第2章建材の追加価格改定──6月以降の主要動向

設備メーカーの供給は正常化した一方で、建材側の価格改定は6月から本格化している。ナフサ価格の高止まりを受け、日本ペイントは同一メーカーで約1年に3回の改定という異例のペースで対応しており、断熱材・防水材・塩ビ・サッシ・その他建材にわたる広範な改定がその結果として続いている。以下、6月以降の主要動向を整理する。

2-1. 塗料・シンナー:日本ペイント第3波の実施

  • 日本ペイント(第1波):2025年7月22日出荷分より塗料・シンナー類を10〜20%改定。
  • 日本ペイント(第2波):2026年3月19日発注分より建築・自動車補修用シンナーを最大75%改定、4月16日出荷分より塗料本体10〜20%・シンナー追加15〜25%を追加改定。
  • 日本ペイント(第3波):2026年6月1日出荷分より溶剤系製品25〜35%・水性塗料20〜30%・粉体塗料10〜15%を改定実施済み。直送運賃の改定も同時実施(プライシー2026/5/25)。同一メーカーが約1年で3回連続改定するのは異例のペース。
  • エスケー化研:シンナーを最大80%改定。5月11日出荷分より塗料本体も水性15〜25%・溶剤20〜30%・粉体10〜15%改定。

2-2. 断熱材:石油系からグラスウール・ロックウールへの改定拡大

  • カネカ「カネライトフォーム」:2026年4月1日出荷分より40%改定実施済み。
  • デュポン・スタイロ「スタイロフォーム」:2026年5月1日出荷分より40%改定実施済み。
  • 旭化成建材「ネオマフォーム」「ネオマゼウス」:5月7日出荷分より20%改定に特別調整金約20%を追加。
  • JSP「ミラフォーム」:2026年6月1日出荷分より40%改定実施済み(プライシー)。
  • パラマウント硝子(グラスウール全品種):2026年6月1日出荷分より15%改定実施済み(プライシー)。
  • JFEロックファイバー:2026年6月1日納入分よりロックウール20%以上・気密部材40%以上改定実施済み。
  • 旭ファイバーグラス:7月出荷分よりアスファルトシングル屋根材「リッジウェイ」「オークリッジ」を約30%改定実施、9月1日出荷分よりグラスウール全製品15%以上を改定予定(テイガク2026/7/9)。

2-3. 塩ビ製品:積水化学の連続改定と国内エチレン設備の現状

  • 積水化学工業:5月7日出荷分より塩ビ・ポリ管等12〜20%以上改定、5月20日出荷分より雨とい製品全般・波板・塩ビデッキ材20%以上、カラーパイプ本体30%以上、カラー継手15%以上を改定。6月1日出荷分より塩化ビニル関連12%以上・ポリエチレン関連製品10%以上を追加改定実施
  • 信越化学工業:2026年4月1日納入分より塩化ビニル樹脂(PVC)を1kgあたり30円以上改定(現行価格比約2割増)。シリコーン製品も10%以上改定。
  • クボタケミックス:5月7日出荷分より塩ビ製品30%以上・樹脂製品20%以上改定。
国内エチレン設備の稼働状況

国内エチレン設備12基のうち通常稼働は3基のみという状況が7月時点でも継続している。4月時点の稼働率67.7%からさらに低水準へ推移。旭化成・三菱ケミカルグループ(岡山)、三井化学(千葉・大阪)、出光興産(千葉・徳山)の減産が続き、包装フィルム・タイヤ・自動車部品・家電材料・医療機器など幅広い産業への影響が広がっている。ナフサ市況は5月16日の1,043ドル/tから6月25日の627ドル/tまで軟化していたが、7月覚書履行停止で反転局面に入った。

2-4. サッシ・住宅設備の追加改定──YKK AP 10/1再改定、LIXIL秋以降の一斉改定

設備の供給が正常化した一方で、原材料コストの上昇圧力により、サッシ・住宅設備の価格改定は7-10月にかけて続く見通しである。特にYKK APは5月改定から半年での再改定という異例のペースとなっている。

  • LIXIL(8月・秋改定予告):2026年8月3日受注分より水回り全般を改定(浴室約13%・水栓約8%・タイル約12%の3品目、最大20%)。さらに秋にかけてサッシ・建材・外装などほぼ全製品の一斉改定を正式発表済み(LIXIL Newsroom)。夏以降の予算組みにおいて実務者にとって最大の警戒ポイント。
  • YKK AP(10月再改定):2026年10月1日より窓サッシを10〜15%以上改定。5月改定から半年もしないうちの再改定となり、累積改定幅は15〜25%規模に到達(テイガク2026/7/9)。
  • 永大産業:2026年7月1日受注分より建材・設備を10〜15%改定(床材15%、室内ドア・階段・収納・キッチン・バス等10%)実施済み。
  • ニチハ(センタールーフ・センターサイディング):2026年7月1日出荷分より改定実施済み(テイガク2026/7/9)。
  • デンカアステック(ガルバリウム雨どい):2026年8月1日から20%以上改定予定。
  • 南海プライウッド(家具収納材):2026年10月1日発送分から全製品一律10%改定予定。

第3章日本の代替調達と迂回インフラ──7月時点の進捗

建材有事・設備有事の背景にある「原油・ナフサの中東依存」に対応するため、日本と中東産油国はどのような取り組みを進めているのか。7月時点の到達点を整理する。

3-1. 日本の代替調達の進捗

  • 原油代替調達比率:経済産業省によれば4月に必要調達量の2割強、5月には約6割の代替調達確保に目途(経済産業省4月30日公表)。米国からは5月に前年比約4倍まで拡大、船舶データによれば2026年6月には米国原油輸出先で日本が最大の位置を占めた(野村證券7月レポート)。もっとも米国産の急増はSPR放出と民間商業在庫の取り崩しに依存する部分が大きい。
  • ナフサ中東依存度の急低下:ナフサ輸入は4月に2025年平均比6割弱まで落ち込んだが5月には8割程度まで回復。ナフサの中東依存度は5月時点で約10%まで低下(野村證券)。代替調達元は米国が最大で、アルジェリア・スペイン・ポルトガル・イタリアなど欧州諸国からの輸入も拡大。ナフサ輸入量は平時45万kL/月→4月90万kL/月→5月135万kL超(平時の3倍規模)に到達。
  • 備蓄の運用:2026年2月時点で約8ヶ月分の石油備蓄を確保。5月上旬に約20日分(580万kL)を追加放出、7月覚書履行停止を受け政府はさらなる追加放出の可否を検討中。IEA共同備蓄放出も並行して継続。
  • ガソリン・軽油の価格抑制:3月16日に過去最高値190.8円/Lまで上昇したが、緊急的激変緩和措置によりガソリン全国平均169.7円/L(補助金39.7円/L・4月30日以降)で安定推移。
  • 日米エネルギー協力:高市首相はトランプ大統領に対し、米国産エネルギーの生産拡大への日米共同取り組みと、米国から調達する原油を日本で備蓄する共同事業の実現を提起。

3-2. 中東の迂回インフラ──ヤンブー・フジャイラの現状と拡張計画

  • サウジ東西パイプライン(Petroline):全長約1,200km。2026年3月11日にNGL用配管を原油用に転用する緊急措置を完了し、輸送能力を日量700万バレルまでフル稼働へ引き上げ(Bloomberg 3/29)。2026年7月7日、サウジは紅海西岸への原油パイプライン輸送能力のさらなる拡大を検討中と関係筋5人がロイターに明らかにした。ヤンブー港の実際の積み出し能力は戦時下で日量300〜450万バレル程度にとどまるボトルネックが残る。
  • UAE ADCOP(Habshan→Fujairahパイプライン):全長約360km、日量150〜180万バレル。2026年5月15日、ADNOCが2本目のパイプライン建設加速を発表、2027年運開予定で輸送能力を倍増する計画(アルジャジーラ・電気事業連合会)。
  • 代替能力の限界:既存パイプライン合計は日量約680〜900万バレル、平時のホルムズ通過量(約2,000万バレル)の1/3程度が限界。クウェート・カタール・バーレーン・イラクは陸上迂回ルートを持たない構造的制約が残る。
7月覚書履行停止と代替調達の再燃

6月に一時軟化していたアジアナフサ市況(6/25 $627/MT)は7月覚書履行停止を受けて反転局面に入っており、その結果として代替調達競争が再燃する見込み。5-6月の価格軟化トレンドが反転する可能性が高まっているが、日本の代替調達比率は既に約6割に達しており、対中東依存度そのものは大幅に低下している。8月21日の米財務省制裁免除期限が次の分岐点として市場の注視対象となっている。

第4章実務者が備えるべき5つの対応

設備供給は正常化した一方で、価格改定は8-10月に続く見通しである。この局面に対応するため、実務者は次の5点を最優先で実行する段階にある。以下の各項目は独立した施策ではなく、相互に補完し合うことで効果を発揮する。

  1. 8-10月価格改定前の事前発注:第2章で整理した8-10月の主要改定スケジュールを踏まえ、資金繰りが許す範囲での事前発注が有効となる。特にサッシは半年で再改定という異例のペースのため、次案件分まで含めた事前発注の検討価値がある。
  2. 見積有効期限の即時化:テイガクは5月以降14日間に短縮済み。仕入れ値が週単位で変動するため即日〜数日設定を推奨。「1か月前の通知で40%改定」が実際に起きているため、それ以上の期間の見積もりを保証することが難しい状況が続く。
  3. 代替資材・工法の採用:タカラスタンダードのホーロー浴室(金属主体で石油系素材依存が低い)への切替、塗装仕様からメッキ仕様へ、乾式工法への移行による溶剤使用量削減など、素材選定の見直しが有効。
  4. 国内循環型素材の活用:ナフサ依存を減らす選択肢として、国内循環型素材の採用が広がりつつある。具体例としては、イノアックコーポレーションの再生ポリウレタン「rePURous」、LIXILの低炭素アルミ「PremiAL」、廃プラスチック・廃木材融合素材「レビア」などが挙げられる。
  5. 政府支援制度と補助金の活用:中小企業向け緊急融資・価格転嫁相談窓口(中小企業庁)・公正取引委員会の価格交渉指針が利用可能である。加えて住宅省エネ2026キャンペーン(先進的窓リノベ2026・給湯省エネ2026・みらいエコ住宅2026の後継事業)を組み合わせることで、価格改定分を補助金で吸収する選択肢を検討する。

第5章国内循環型素材への注目と2030年見通し

LIXILは低炭素アルミ「PremiAL」の量産体制構築を既に進めている。中東依存の構造的リスクを受けて、住宅設備業界は代替素材への投資を加速しつつある結果、循環型素材の実装事例が広がりを見せている。帝国データバンク調査「イラン・ホルムズ海峡と国内サプライチェーン(2026年3月度)」によれば、原油輸入継続に不透明感を持つ企業は55.6%に達した。この結果を受けて、企業側の対応は「代替調達の拡大」と並行して「国内循環型素材への投資加速」の両輪で進みつつある。

5-1. 国内循環型素材の実装例

  • イノアックコーポレーション「rePURous(リピュラス)」:再生ポリウレタンの国内実装。今回の情勢を機に量産化を加速する動きが本格化。
  • LIXIL「PremiAL」:低炭素アルミの量産体制を構築中。8月・秋以降の追加改定と並行して、素材のリサイクル比率向上を進める方針。
  • 三菱ケミカル・三井化学:ケミカルリサイクル技術による廃プラスチックの再原料化事業を継続。
  • 「レビア」:廃プラスチック・廃木材融合素材の実用化が住宅設備分野で広がっている。
  • タカラスタンダードのホーロー:金属主体のホーロー浴室・キッチンは石油系素材依存が低く、今回の情勢下で選択肢としての価値が再評価されている。

5-2. 2030年見通し:脱化石燃料と国内循環の両輪

中東情勢がここまで長期化することにより、住宅・建材業界の関心は「短期的な代替調達」から「中長期の素材構成の見直し」へと移りつつある。この構造変化を受けて、企業は素材選定の見直しと補助金政策との整合を並行して進めている。ポイントは以下の3点である。

  • ナフサ依存度の構造的低減:ナフサの中東依存度は5月時点で約10%まで急低下し、その結果として米国・欧州・北アフリカからの代替調達が定着しつつある。これは短期的な対応ではなく、中長期的な調達構造の変化となる見込みである。
  • 国内循環型素材の投資加速:再生ポリウレタン、低炭素アルミ、廃プラスチック・廃木材融合素材など、国内での循環型素材の量産体制構築が住宅設備メーカーで進んでいる。
  • 脱化石燃料と補助金政策との整合:住宅省エネ2026キャンペーンや先進的窓リノベ2026事業などの補助金政策は、脱化石燃料と国内循環の両輪を後押しする方向で運用されている。
実務者が2030年に向けて取り組むべき論点

7月時点の情勢を踏まえると、上記の構造変化を受けて、実務者が中期的に取り組むべき論点は3点に整理できる。第1に調達先の複数化で、中東・米国・欧州・北アフリカの複線化を前提とした在庫戦略が挙げられる。第2に国内循環型素材の採用検証で、rePURous・PremiAL・レビアなどの実装ケースの積み上げが有効となる。第3に補助金政策との統合で、住宅省エネ2026・先進的窓リノベ2026を活用した高付加価値提案が可能である。設備供給の正常化を追い風にしつつ、実務者は中期の構造転換を織り込んだ経営判断が求められる局面にある。

FAQ本記事に関するよくある質問

2026年7月時点でTOTO・LIXIL・クリナップの受注状況はどうなっていますか?
3社とも正常化フェーズに入っています。TOTOは2026年6月8日発表で6月9日から全製品受注を全面再開、納期も中東情勢悪化前の通常水準へ戻したと公表しました(TOTO公式・日本経済新聞2026/6/8・時事ドットコム2026/6/8)。4月13日の新規受注停止から4月20日の段階的再開を経て、約2ヶ月にわたる供給制限は事実上の正常化に至りました。LIXIL・クリナップも受注は通常水準へ復帰、Panasonicも5月中旬から納期回答を再開し6月後半までに正常化。タカラスタンダード・ハウステックは受注停止を経ずに継続供給しています。他方で停止期間中の受注残消化に伴う多少の納期前後は残るため、契約時には書面での納期明記が推奨されています。
LIXILが2026年8月以降に発表している価格改定の内容は何ですか?
LIXILは2026年5月18日に公式で追加の価格改定を予告済みで、内容は3段階に及びます。第1段階は8月3日受注分から水まわり価格改定(浴室約13%・水栓約8%・タイル約12%)。第2段階は9月から10月にかけての建材・サッシ・外装等の全方位改定で、ほぼ全製品が対象となります。「設備有事」の供給側の混乱は6月に一段落したものの、価格側の改定はここから本格化する構図です。LIXIL瀬戸欣哉社長は4月30日決算で「中東情勢の影響は現時点では合理的な織り込みが困難」として27年3月期業績予想には反映していませんが、価格改定は着実に実施される見込みとなっています。
6-10月に発表された断熱材・建材の追加価格改定にはどんなものがありますか?
6月以降10月にかけて建材の追加改定が相次いで発表されています。日本ペイントが6月1日出荷分より第3波(溶剤系25-35%・水性20-30%)、JSPが6月1日出荷分よりミラフォーム40%、パラマウント硝子が6月1日出荷分よりグラスウール全品種15%、積水化学工業が6月1日出荷分より塩ビ・ポリエチレン関連の追加改定を実施済み。7月からは永大産業が建材・設備10-15%(床材15%・室内ドア10%)、ニチハがセンタールーフ・センターサイディング、旭ファイバーグラスがアスファルトシングル約30%を実施。8月にはデンカアステックがガルバリウム雨どい20%以上、LIXILが水回り最大20%。9月には旭ファイバーグラスがグラスウール全製品15%以上。10月にはYKK APが窓サッシ10-15%以上(5月改定から半年での再改定)、南海プライウッドが全製品10%を予定しています。
6-7月のイランを取り巻く情勢はどう変化しましたか?
2026年6月14日にパキスタン仲介で14項目「イスラマバード覚書」が合意され、6月17日G7サミット最終日エヴィアン=レ=バンでトランプ・ペゼシュキアン・バンスがデジタル署名。6月18日発効でホルムズ通航は2月平均の5割まで一時的に回復しました。しかし6月20日イスラエル軍のレバノン攻撃を受けてイラン革命防衛隊が「ホルムズ全船舶通航停止」を宣言、6月25・27日に湾岸海域で商船攻撃、7月3〜4日にはBloombergが商船8隻Uターンを報告。7月7〜9日に米中央軍がイラン軍事施設80ヶ所以上に攻撃、イランはバーレーン・クウェート米軍基地に応戦し米海軍MQ-9を撃墜。7月8日にトランプ大統領が停戦合意の終了を表明、ガリバフ議長も履行義務停止を表明したことで、60日期限を待たず覚書の履行が事実上停止した状態となっています。8月21日の米財務省制裁免除期限が次の分岐点として市場が注視している状況です。
日本の原油・ナフサ代替調達はどこまで進んでいますか?
経済産業省によれば4月に必要調達量の2割強、5月には約6割の代替調達確保に目途がついています。4月26日には米国産原油の初タンカーが日本(千葉沖)に到着、米国からは5月に前年比約4倍まで拡大し、船舶データによれば2026年6月には米国原油輸出先で日本が最大の位置を占めました(野村證券7月レポート)。ナフサの中東依存度は5月時点で約10%まで急低下し、代替調達元は米国が最大でアルジェリア・スペイン・ポルトガル・イタリアなど欧州諸国からの輸入も拡大。ナフサ輸入量は平時45万kL/月→4月90万kL/月→5月135万kL超(平時の3倍規模)に到達。ただし米国産の急増はSPR放出と民間商業在庫取り崩しに依存する部分が大きく、7月の覚書履行停止で調達競争が再燃する見込みです。国内エチレン設備は12基中3基が稼働中の状況が7月時点でも継続しています。
住宅業界として今すぐ取るべき対応策は?
5つの対応が急務です。①8-10月の追加改定前の事前発注(LIXIL 8/3水回り、デンカアステック 8/1雨どい、旭ファイバーグラス 9/1グラスウール、YKK AP 10/1窓サッシ、南海プライウッド 10/1が確定しているため、資金繰りが許す範囲での事前発注が有効)。②見積有効期限の即時化(テイガクは5月以降14日間に短縮済み、仕入れ値が週単位で変動するため即日〜数日設定を推奨)。③代替資材・工法の採用(タカラスタンダードのホーロー浴室、塗装仕様からメッキ仕様へ、乾式工法への移行による溶剤使用量削減)。④国内循環型素材の活用(イノアックコーポレーションの再生ウレタン「rePURous」、LIXILの低炭素アルミ「PremiAL」、廃プラスチック・廃木材融合素材「レビア」)。⑤政府支援制度の活用(中小企業向け緊急融資・価格転嫁相談窓口・公正取引委員会指針・住宅省エネ2026補助金の組み合わせ)。

主要エビデンス・ソース一覧(2026年7月12日更新版)

  • TOTO株式会社 公式発表「ユニットバス受注全面再開について」(2026年6月8日)
  • 日本経済新聞「TOTO、ユニットバス受注6月9日から全面再開」(2026年6月8日)
  • 時事ドットコム「TOTOがユニットバス受注全面再開」(2026年6月8日)
  • LIXIL Newsroom 公式発表「価格改定について」(2026年5月18日)
  • クリナップ株式会社 公式発表 システムバスルーム受注再開のお知らせ(2026年4月22日)
  • Panasonic HS 公式発表 バス関係・トイレ関係の納期回答再開について(2026年5月中旬)
  • Bloomberg「ペルシャ湾商船Uターン相次ぐ」(2026年7月4日)
  • 米中央軍(USCENTCOM)公式発表(2026年7月7〜9日)
  • トランプ大統領発言(2026年7月8日、ホワイトハウス記者会見)
  • ガリバフ・イラン国会議長 公式X投稿(2026年7月8日)
  • ロイター/Newsweek「サウジ、紅海への原油パイプライン拡張を検討」(2026年7月7日)
  • Bloomberg「ホルムズ迂回、サウジ東西パイプラインがフル稼働」(2026年3月29日)
  • アルジャジーラ「UAE to accelerate oil pipeline project to bypass Strait of Hormuz」(2026年5月15日)
  • 電気事業連合会 海外電力関連情報「ホルムズ海峡迂回パイプライン、2本目を工事し2027年運開」(2026年5月28日)
  • 三菱総合研究所レポート「イスラマバード覚書は対立の一時停止」(2026年6月19日)
  • 屋根修理テイガク「建材資材の値上げと受注停止の影響」(2026年7月9日更新)
  • プライシー「日本ペイントシンナー値上げはなぜ?影響と対策」(2026年5月25日)
  • プライシー「【2026年6月】断熱材 値上げの理由と住宅費への影響・対策」(2026年6月18日)
  • 髙橋秀樹(設計士)note「【2026年5月最新】ナフサショックによる建材受注制限・値上げ情報まとめ」(2026年5月20日)
  • 翔工務店「中東情勢の影響による建材や資材の受注停止状況」(2026年4月30日更新)
  • クラフトバンク総研「建設業界 資材価格値上げ情報まとめ」(2026年4月13日)
  • BOIS創建「2026年6月最新TOTO・LIXILの納期と価格」(2026年6月3日)
  • リフォーム補助金ナビ「TOTO受注再開いつ?2026年6月9日全面復帰」(2026年6月)
  • リショップナビ「TOTOが新規の受注停止→再開へ」(2026年6月)
  • 野村證券「日本の原油及びナフサの代替調達に関する現状把握・今後の論点Q&A」(2026年7月10日、髙島雄貴・伊藤勇輝)
  • 経済産業省「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保及び重要物資の安定的な供給確保の対応状況」(2026年4月10日・4月30日公表)
  • 第一生命研究所「対中東輸出入が急減、代替調達は進むか」(2026年5月21日、新家義貴)
  • 首相官邸/内閣官房「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保」資料(2026年3月24日、経済産業省資料4)
  • 資源エネルギー庁「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保」(2026年5月最新版)
  • 帝国データバンク「イラン・ホルムズ海峡と国内サプライチェーン(2026年3月度)」(2026年3月)
  • プラスチックパレット株式会社「建設・物流・包装資材 値上げ一覧 2026年6月|30社超・ナフサショック影響まとめ」(2026年6月1日)
  • 公正取引委員会「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」
  • 中小企業庁「中東情勢等を踏まえた中小企業・小規模事業者向け支援について」

※ 本記事における数値・企業名・製品名は複数の独立した情報源でクロスチェック済み。情勢は急速に変化しており、最新情報は各一次ソースを参照されたい。

本記事に関する注意事項
  1. 本記事は2026年7月12日執筆時点の情報に基づいています。中東情勢・建材メーカーの価格改定・供給状況・覚書履行状況は時々刻々変化するため、最新は各一次情報(政府機関・メーカー公式発表・国際機関・報道機関)でご確認ください。
  2. 本記事に記載した数値・企業名・製品名は公表資料時点のものであり、その後の改定・訂正・撤回により内容が変わる可能性があります。特に軍事作戦の詳細(攻撃箇所数・被害規模)と、建材メーカーの価格改定日・改定率は情勢進展に伴い修正されることが一般的です。
  3. 本記事は原油・ナフサ・為替・原料樹脂価格・株価・建材関連銘柄等に関する投資・取引判断を推奨するものではありません。取引・購買判断はご自身の責任と最新の一次資料に基づき行ってください。
  4. 報道機関の翻訳・要約経由の情報を含むため、原文(英語ソース含む)との完全一致を保証するものではありません。国際情勢に関する記述はニュアンスが原文と異なる場合があります。
  5. 本記事の引用・転載時は、出典URL(本ページURL)の明記をお願いいたします。無断転載・改変転載はお控えください。

初版公開: / 最終更新: / カテゴリ:ナフサショック関連レポート / 発行:プラスチックパレット株式会社 編集部(千葉県我孫子市)

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