農業・肥料完全まとめ

農業・肥料まとめ2026、コメや野菜の値段がなぜ上がるのかを4つの経路で|JA全農・尿素

中東のイラン情勢は、原油を入口に4つの経路(肥料・配合飼料・ハウス燃料・輸入輸送)を通って、日本のコメ・肉と牛乳・野菜・果物の値段に届いています。食料指数128.4(2026年4月)、家族4人で年+約11万円の負担増(試算)、食料自給率38%という数字を手がかりに、値段がなぜ上がるのかを、専門版7本と「やさしく解説」版5本の全12記事とあわせてやさしく整理しました。2026年8月〜9月の肥料・飼料・コメの新しい動きも加えています。本記事は要点と時系列・一覧だけを短くまとめ、詳しい内容は個別記事12本へご案内します。

公開日: 最終更新: カテゴリ:農業・肥料完全まとめ 記事数:12本
3分でわかる要点
  • 中東のイラン情勢は、原油を入口に4つの経路(肥料・配合飼料・ハウス燃料・輸入輸送)を通って、日本のコメ・肉と牛乳・野菜・果物に同時に届いています。食料自給率38%、飼料自給率26%と輸入に頼る割合が高いことが、影響を大きくしています。
  • 2026年は食料指数128.4(4月)、牛肉100g 414円、キャベツ平年比+64%、たまねぎ平年比+159%と高値が広がりました。コメ5kgは2025年11月に過去最高の5,002円をつけ、2026年6月は3,775円(全国3,500店POS)に下がりました。
  • 肥料の原料の尿素は、世界銀行の月平均で4月856.9ドル/t、8月390.0ドル/tと下がりました。別の指標である中東産の相場は、9月22日に約470〜480ドル/t(IFDC)に戻っています。JA全農が5月15日に決めた秋肥の値上げは、令和8年産のコメの生産原価に表れる見通しです。
  • 8月〜9月は、原油が7月23日以来の100ドル超えとなる一方で円高が進みました。JA全農は10〜12月期の配合飼料をトン当たり約3,200円値上げし(9月18日発表)、8月の消費者物価は食料が前年同月比+3.1%、米類が−15.7%でした。
  • 家族4人の家計負担は年+約11万円(月+約9,000〜10,000円)の試算です。肥料・コメ・肉と牛乳・野菜と果物の詳しい内容は、下の「このまとめの記事を探す」から、専門版とやさしく解説版の個別記事12本で読めます。

こんな方へ ── まず読むところ

128.4
FOOD INDEX / 食料指数
総務省CPI 2026年4月
2020年=100・過去最高圏
38%
FOOD SELF-SUFFICIENCY / 食料自給率
農水省 令和6年度
カロリーベース・4年連続38%
+11万円
HOUSEHOLD BURDEN / 家族4人年間負担増
3本のシリーズ統計
コメ+肉牛乳+野菜果物の合計
857→390ドル/t
尿素価格(世界銀行の月平均)
Urea, E. Europe 2026年4月856.9→8月390.0
World Bank Pink Sheet(9月2日公表)

※家計負担額は家族4人・平均的な消費量で3本のやさしく解説シリーズから集計した参考値です。実際の負担は世帯によって異なります。

Ch.01まず全体像:農業・肥料と2026年のイラン情勢のつながり

2026年の日本の農業・畜産・青果は、中東のイラン情勢から始まった食料の値上がりの圧力を受けています。原油という1つの上流の動きが、4つの経路を通って、コメ・肉と牛乳・野菜と果物のすべてに同時に届く仕組みです。

ホルムズ海峡は世界の原油の約20%が通る海峡で、日本は原油の約9割を輸入に頼っています。近年は米国産・アフリカ産などへの切り替えも少しずつ進んでいますが、2026年2月28日以降のイラン情勢は、原油の相場を通じて日本の農業のすべての分野に広がっています。

前提になる数字

食料自給率(カロリーベース)38%(農水省 令和6年度・4年連続)、飼料自給率 26%(前年-1ポイント)、食料国産率(カロリーベース)47%と、日本は食料の多くを輸入に頼っています。これが、中東情勢の影響を大きくする前提です。特に飼料自給率26%は、肉・牛乳・乳製品の生産原価が、輸入トウモロコシ・大豆かす・粗飼料(牧草など)の国際価格に強く左右されることを意味します。

4つの経路は、肥料(原油→尿素→コメ・野菜・果樹の生産原価)、配合飼料(原油→船賃→輸入トウモロコシ・大豆かす→肉と牛乳)、ハウス燃料(原油→暖房重油・農機軽油・産地から市場までの輸送費→施設野菜・果樹)、輸入輸送(原油→船賃・円安→輸入果物・輸入食品)です。尿素の主な原料は天然ガスで、原油とは別の相場ですが、どちらもエネルギーの値段として中東情勢の影響を受けます。

1973年の第一次オイルショックでは原油と一緒に肥料・飼料・輸送費が、2022年のロシアのウクライナ侵攻では原油・穀物・肥料が同時に上がり、どちらも日本の食料品の値上げにつながりました。

Ch.022024年〜2026年9月の主な出来事(時系列)

2024年から2026年9月までの農業・肥料・食料の値上がりに関わる主な出来事を、時系列で並べました。令和のコメ騒動に、2026年2月28日以降のイラン情勢の急変と、上流の尿素・エチレン価格の高騰が重なり、食料指数は128.4(2026年4月・過去最高圏)に達しました。

2024〜2026年 ── 農業・肥料の主な出来事
2024年8月頃 令和のコメ騒動の起点:南海トラフ地震臨時情報をきっかけに、コメの品薄と値上がりが始まりました。令和5年産の猛暑による品質低下、令和6年産の出回りの遅れが重なりました
2025年1月 キャベツ1kg 490円(総務省):野菜相場の過去最高水準。天候不順(猛暑・寒波・日照不足)と生産コスト上昇の三重苦が本格化
2025年2月 キャベツ1kg 401円(平年比+2.6倍):農水省食品価格動向調査。輸入量が前年比約43倍でも国内相場は下がりませんでした
2025年秋 令和7年産コメ相対取引価格 26,000円/60kg:農水省。前年比+50%以上の顕著な上昇
2025年10月10日 令和6年度食料自給率公表:農水省。カロリーベース38%(4年連続)、生産額ベース64%(前年+3)、飼料自給率26%(前年-1)
2025年11月 コメ5kg 5,002円(総務省・過去最高):小売物価統計調査。家庭のコメ購入の実感を示す象徴的な水準
2026年1月26日の週 たまねぎ平年比+159%、にんじん+116%(農水省食品価格動向調査):常備野菜の高値が顕在化
2026年2月28日 ホルムズ海峡封鎖・米・イスラエル対イラン開戦:中東情勢の急変。原油・ナフサ市況が急上昇し、肥料・配合飼料・輸送費への波及が本格化
2026年3月 コーヒー豆前年同月比+54.0%、国内エチレン稼働率68.6%(過去最低圏):総務省CPI・石化協。上流の化学系原料の需給も引き締まりました
2026年4月 尿素4月の月平均856.9ドル/t(世界銀行)、食料指数128.4(総務省CPI・過去最高圏)、牛肉100g 414円(総務省):上流・中流・末端で高値が同時に起きました
2026年5月5日 バナナ「7月供給停止」通知(テレ朝報道):青果加工大手の浜中執行役員がエチレンガス価格10倍・1本15万円・2.5カ月待ちという現場の実態を明かしました
2026年5月15日 JA全農 令和8肥料年度秋肥(6-10月分)の顕著な値上げ決定:これから収穫される令和8年産コメの生産原価に表れます
2026年5月27日の週 キャベツ平年比+64%高(農水省):初夏の葉物相場も高値継続
2026年5月 総合CPI 113.5(前年同月比+1.5%)、米類CPI -4.9%(3年6か月ぶり低下):総務省。コメに一部落ち着きの兆しが見える一方、他品目の高値は継続
2026年6月 コメ5kg 3,775円(全国3,500店POS)、トマト平年比+16%高:コメの下落傾向確認、野菜は品目別に濃淡が続く
2026年6月26日 尿素366.50ドル/t(Trading Economics の日々の値・前月比▲22.02%):米・イランの戦闘終結の覚書合意で原油価格が下がった時期と重なりました。世界銀行の月平均(別の指標)では6月は453.1ドル/t
2026年7月12日 ホルムズ海峡再閉鎖:IRGC(イラン革命防衛隊)による再封鎖で、イスラマバード覚書が失効しました。ナフサ調達の第2波の心配が表面化し、肥料・飼料の追加値上げへの懸念が広がりました
2026年7月31日 日米が協調介入を実施:為替は円高方向へ。8月3日にドル円155.22円(7月23日は163.80円)。輸入穀物・輸入食品の円建てコストを押し下げる材料
2026年9月2日 世界銀行の尿素の月平均 8月390.0ドル/t(Pink Sheet 9月号):6月453.1ドル/t、7月400.0ドル/tから下がりました
2026年9月3日 農水省が尿素の輸入通関価格を更新:7月は96.3千円/t(5月は141.4千円/t)
2026年9月8日 サウジアラビアの石油施設が攻撃を受け73人が負傷:同国8月の産油量は前月比190万バレル減の日量623.8万バレル
2026年9月10日 ブレント109.09ドル(7月23日以来の100ドル超え)、ナフサのスポット871.17ドル/トン(前月比+17.22%):4つの経路に共通する原油が再び上がりました
2026年9月11日 日本銀行が8月の企業物価指数を公表:化学製品 前年比+13.9%、石油石炭製品 同+14.7%。輸入物価は前月比で円ベース−3.0%、契約通貨ベース−1.0%
2026年9月13日の週 税関長公示レート158.81円:8月2日週の163.16円から4.35円の円高(差の算出は当社による)
2026年9月17日 エチレン稼働率 8月73.5%(石化協・速報):6月66.6%、7月69.8%から上がりました
2026年9月18日 JA全農が10〜12月期の配合飼料をトン当たり約3,200円値上げ:とうもろこし・大豆粕のシカゴ相場の上昇が主な理由。同じ日に総務省が8月の消費者物価を公表し、食料は前年同月比+3.1%、米類は−15.7%(2025年=100)
2026年9月22日 中東の粒状尿素 約470〜480ドル/t(積み出し港での価格):ホルムズ海峡経由の肥料の出荷は事実上止まったまま(IFDC)
2026年9月25日 スーパーのコメ5kg平均2,934円(9月14〜20日):全国約1,000店舗、6週連続の値下がり(農水省発表・共同通信報道)

上流の肥料・エチレンから家庭の消費までは、値段が伝わるまでに時間差があります。それを意識して読むと、品目ごとの値動きがつかみやすくなります。7月31日以降の行は、原油・為替・企業物価・国際相場の動きと、9月に公表された肥料・飼料・物価・コメの数字です。4つの経路への効き方はCh.03で整理しました。

6月26日の366.50ドル/tは Trading Economics の日々の値で、世界銀行の月平均とは別の指標です。1本の線として比べないようご注意ください。

Ch.032026年8月〜9月の動き

この章はに追加し、に当社が確認した資料で書き足しました。ほかの章の数字は、時系列表の7月31日以降の行と、ここから参照している箇所を除き、2026年7月17日時点の内容です。この2か月は、4つの経路に共通する原油と為替が反対の向きに動き、経路ごとに効き方が分かれました。肥料の原料の尿素は8月まで月平均で下がりましたが、9月には別の指標である中東産の相場が再び上がっています。

原油と為替:反対の向きに動きました

UPSTREAM 2026.08-09 ── 原油・為替・企業物価

原油・為替:ブレントは9月8日の97.92ドルから9月10日に109.09ドルへ上がり、ナフサのスポットは前月比+17.22%となりました。一方、7月31日の日米協調介入のあとは円高方向に振れ、税関長公示レートは8月2日週の163.16円から9月13日週の158.81円へ、4.35円の円高になりました(差の算出は当社による)。なお、世界銀行の月平均では8月のブレントは90.9ドル/バレルです(日々の値とは別の指標です)。

企業物価・国内燃料:日本銀行の8月の企業物価指数では、輸入物価の前月比が円ベース−3.0%、契約通貨ベース−1.0%で、差の2.0ポイントが円高による押し下げ分にあたります(当社計算)。燃料油には価格抑制措置が働いており、軽油の全国平均は8月17日から9月7日までの3週間で0.2円しか動いていません。

肥料:尿素は8月まで下がり、9月に中東産が戻しました

世界銀行の月次統計(Pink Sheet)では、尿素の月平均は4月の856.9ドル/トンから、8月は390.0ドル/トンまで下がりました。りん酸肥料の原料のDAP(りん安)は8月に793.5ドル/トンと6月より高く、塩化カリウムは386.9ドル/トンと少し下がっています。肥料全体の価格指数(2010年=100)は、6月156.1、7月149.3、8月146.4でした。

月尿素DAP(りん安)塩化カリウム
4月856.9——
6月453.1783.8402.5
7月400.0781.3396.5
8月390.0793.5386.9
9月407.5800.6367.5

2026年、単位:ドル/トン。世界銀行 Pink Sheet の月平均(尿素は Urea, E. Europe)。4月の尿素は Pink Sheet 6月号、6〜8月は9月号(9月2日公表)。

9月は10月号(10月2日公表)。9月の尿素の月平均は407.5ドル/トンで、8月の390.0ドルから上がりました。DAP(りん安)は800.6ドル/トン、塩化カリウムは367.5ドル/トンです。

一方、中東の粒状尿素の相場は、9月22日に約470〜480ドル/トンでした(IFDC)。IFDCは、ホルムズ海峡を通る肥料の出荷が事実上止まったままだと伝えています。Trading Economics の尿素は、9月28日に457.00ドル/トンです。

時点指標(出典)値
6月26日尿素の日々の値(Trading Economics)366.50ドル/トン
9月22日中東の粒状尿素、積み出し港での価格(IFDC Fertilizer Crisis Response Bulletin #30)約470〜480ドル/トン
9月28日尿素の日々の値(Trading Economics)457.00ドル/トン(1か月で+4.10%)

世界銀行の月平均とは集計のしかたが違う別の指標です。上の表と1本の線としては比べられません。

日本の輸入価格は、7月分が9月3日に掲載されました。農林水産省「肥料の価格情報」(9月3日更新)では、尿素の輸入通関価格は1月の77.3千円/トンから5月の141.4千円/トンまで上がり、7月は96.3千円/トンに下がりました。りん安は7月に170.2千円/トンと上がっています。

月尿素りん安塩化加里
5月141.4149.275.5
6月119.7137.475.7
7月96.3170.276.6

2026年、単位:千円/トン。財務省「貿易統計」の通関価格(農林水産省「肥料の価格情報」、2026年9月3日更新)。

農家が買う肥料の値段を示す農業物価指数(令和2年=100)は、1〜5月が143台、6月は146.3でした(8月4日更新)。輸入価格の8月分と、この物価指数の7月以降は、9月28日時点ではまだ掲載されていません。JA全農の令和8肥料年度春肥(11〜5月)の価格も、当社が確認した範囲では発表されていません。尿素そのものの動きは、アドブルーの値段はなぜ上下したのか、尿素の2026年を1ページで振り返る|ホルムズ海峡・三井化学・インドネシア産で詳しく書いています。

配合飼料:10〜12月期はトン当たり約3,200円の値上げ

JA全農は9月18日、令和8年10〜12月期の配合飼料供給価格を、7〜9月期より全国全畜種総平均でトン当たり約3,200円値上げすると発表しました。理由として、とうもろこしのシカゴ定期が6月の410セント/ブッシェル台から530セント/ブッシェル台に、大豆粕のシカゴ定期が6月の340ドル/トン前後から400ドル/トン前後に上がったことを挙げています。海上運賃は75ドル/トン前後、為替は6月の160円前後から163円台後半まで円安が進んだあと、156円前後の円高になっています(いずれも発表時点)。JA全農は、こうした要因から値上げとしています。

世界銀行の月平均でも、トウモロコシは6月197.1ドル/トン、7月213.4ドル/トン、8月224.0ドル/トンと上がりました。Ch.05の「3期連続・累計+10.6%」は7月時点の数字で、今回の改定はそれより後の発表です。

食卓とコメ:8月の食料は前年同月比+3.1%、コメは下がっています

総務省の8月の消費者物価指数(9月18日公表)では、食料が前年同月比+3.1%、生鮮食品を除く食料が+2.7%(7月は+3.0%)でした。米類は−15.7%(7月は−11.6%)と下がり幅が広がっています。8月分から指数の基準が2025年=100に変わったため、この記事の食料指数128.4(2020年=100)とは水準を比べられません。

コメの取引価格は、令和7年産の相対取引価格(全銘柄平均)が8月に31,556円/玄米60kgで、前月より930円(3%)下がりました(農水省、9月18日公表)。スーパーの店頭では、全国約1,000店舗のコメ5kgの平均が9月14〜20日に2,934円で、6週連続の値下がりでした(農水省発表、共同通信の報道による)。この数字は、Ch.02とCh.05の6月3,775円(全国3,500店POS)とは集計元が違います。令和8年産の新米の相対取引価格と、秋肥の値上げが令和8年産の生産原価にどれだけ表れたかを示す資料は、9月28日時点で当社は確認できていません。

エチレン稼働率:8月は73.5%まで戻りました

石油化学工業協会によると、国内のエチレン生産設備の稼働率は6月66.6%、7月69.8%、8月73.5%(速報、9月17日発表)と上がってきました。前年同月(2025年8月)は80.2%です。農業用フィルムや食品包装の原料の供給に関わる指標です(Ch.08の指標2)。

4つの経路への効き方

  • 経路1 肥料:原油の再上昇は尿素の上流に上昇圧力として戻り、輸入依存97%の構造からは円高が押し下げに働きます。9月13日の追加時点では尿素の8月・9月の実数を確認できていませんでしたが、その後、世界銀行の8月の月平均(390.0ドル/t)と、9月22日の中東産の相場(約470〜480ドル/t、IFDC)を確認しました(上の表)。どちらも原油や為替の影響だけを取り出した数字ではないため、どちらの力が勝ったかは書きません。
  • 経路2 配合飼料:飼料原料の約75%を輸入に頼るため円高が押し下げに働き(輸入物価は前月比・円ベース−3.0%)、船賃の燃料分は原油の値上がりで上向きます。打ち消し合いが働く経路です。ただし10〜12月期の配合飼料は、穀物の値上がりを主な理由に約3,200円の値上げと決まりました(上の「配合飼料」)。
  • 経路3 ハウス燃料:暖房重油・農機軽油・産地から市場までの輸送費は国内の燃料費で、円高の恩恵がほとんど及びません(石油石炭製品は前年比+14.7%)。上昇圧力がいちばん残りやすい一方、燃料油の価格抑制措置により、軽油の全国平均は3週間で0.2円しか動いていません。
  • 経路4 輸入輸送:円高4.35円は押し下げ、燃料は押し上げで、打ち消し合いが働きます。ただし輸入物価の前年比は円ベース+24.8%、契約通貨ベース+16.7%で、1年単位ではまだ円安が押し上げています(差は+8.1ポイント・当社計算)。

ハウス栽培の暖房重油が使われるのは秋から冬です。9月時点の燃料の値段は9月の相場には表れず、10月以降の施設野菜の生産原価として遅れて出てきます。見ている品目がどの経路に乗っているかによって、原油と為替のどちらの指標を見ればよいかが変わります。

確認できていたこと・いないこと

9月13日にこの章を追加した時点で確認できていなかった6項目と、9月29日の確認結果です。農林水産省の「中東情勢関連対策ポータル」は、最新の掲載が6月(6月26日の第11回中東情勢関係閣僚会議など)で、7月下旬〜9月の新しい肥料・飼料の対策の掲載は確認できませんでした。

9月13日に確認できていなかった項目9月29日の確認結果
尿素価格の2026年8月・9月の実数(Ch.08の指標1)世界銀行の月平均 8月390.0ドル/t、中東産 9月22日 約470〜480ドル/t(IFDC)を確認
国内エチレン稼働率の2026年6月以降(Ch.08の指標2)6月66.6%・7月69.8%・8月73.5%(速報)を確認
農水省・食品価格動向調査の2026年8月以降の平年比(Ch.08の指標3)今回も確認できていません
総務省・消費者物価指数の食料指数の2026年5月以降(Ch.08の指標4)8月の食料は前年同月比+3.1%を確認。基準が2025年=100に変わったため、128.4(2020年=100)とは水準を比べられません
JA全農の配合飼料価格の追加改定の有無(Ch.08の指標5)10〜12月期 トン当たり約3,200円の値上げを確認(9月18日発表)
令和8肥料年度春肥の価格改定9月28日時点で、当社が確認した範囲では発表されていません

Ch.04値段が届く4つの経路:肥料・配合飼料・ハウス燃料・輸入輸送

Ch.01で示した4つの経路を、品目とデータごとに分けて見ていきます。同じ原油の値上がりでも、コメ・肉と牛乳・野菜と果物には、違う道筋と違う速さで届きます。

🌏 中東・イラン情勢 → 原油 → 4つの経路 → 農業・食料
経路1:肥料

🌾 肥料の経路(コメ・野菜・果樹)

原油・天然ガス → 尿素 → 農家の肥料代・田植え機の軽油代 → コメ・野菜・果樹の生産原価。尿素の月平均(世界銀行)は2026年4月に856.9ドル/t(前月比+18%)まで上がり、8月は390.0ドル/tでした。日本の尿素の輸入依存は97%で、そのうちマレーシア(ペトロナス経由)が7割超を占めます。

4月856.9→8月390.0 USD/t(世界銀行) / 依存97%
経路2:飼料

🐄 配合飼料の経路(肉と牛乳)

原油 → 船賃・船の燃料代 → 輸入トウモロコシ・大豆かす → JA全農の配合飼料の値上げ(3期連続・累計+10.6%)→ 和子牛67万円・酪農家の減少 → 牛肉100g 414円・牛乳1L 266円。飼料原料の約75%を輸入に頼っています。10〜12月期はトン当たり約3,200円の値上げです(Ch.03)。

配合飼料 +10.6% / 牛肉 414円
経路3:ハウスの燃料

🥬 ハウス燃料の経路(野菜・果樹)

原油 → 暖房重油代・農機軽油代・産地から市場までの輸送費 → 天候不順・生産コスト・人手不足の三重苦 → キャベツ+64%、たまねぎ+159%、にんじん+116%などの平年比の高値につながります。

たまねぎ +159% / キャベツ +64%
経路4:輸入

🍎 輸入輸送の経路(輸入食品)

原油 → 船賃と円安 → 輸入バナナ・輸入果物・輸入食品の到着コスト。バナナの年間支出は4,798円(家計調査1位)、コーヒー豆は前年同月比+54.0%(2026年3月)でした。エチレンガス価格10倍(青果加工大手・2026年5月時点)も、輸入果物の流通に影響しました。

バナナ 4,798円/年 / コーヒー +54.0%

経路によって、店頭に届く速さが違います

店頭価格に表れる速さは、経路によって大きく違います。野菜(特に葉物)は数日〜数週間、コメは肥料の値上げから収穫まで半年ほど、肉と牛乳は鶏肉で数か月・豚肉で半年〜1年・和牛で2〜3年、果物は数か月〜年単位です。

4つの経路は原油・円安という共通の上流でつながっているため、「中東情勢が落ち着けば食料の値上がりもすぐに落ち着く」とは言い切れません。和牛では、原油が上がった時点の飼料コストが2〜3年後の店頭価格に表れるため、2026年前半の原油の値上がりは、2028〜2029年の和牛の値段に表れる可能性があります。

Ch.055つのテーマ別の数字と関連記事

このカテゴリの詳しい記事12本を5つのテーマに分け、テーマごとの数字と関連記事を並べました。肥料(Segment A)がいちばん上流の起点で、コメ(B)には半年後、肉と牛乳(C)には数か月〜数年後、野菜と果物(D)には数日〜数週間で表れ、食卓全体(E)がその行き着く先です。

分野A 🌾

肥料(いちばん上流の起点)

尿素・エチレンといった上流の原料の値動きが、コメ・野菜・果樹の生産原価に表れる、すべての起点になるテーマです。

主な数字
  • 尿素 4月856.9 → 8月390.0ドル/t(世界銀行の月平均・Urea, E. Europe。6月26日の Trading Economics の日々の値366.50ドル/t は別の指標)
  • 尿素の輸入通関価格 5月141.4 → 7月96.3千円/t(農水省「肥料の価格情報」2026年9月3日更新)
  • 日本の尿素輸入依存度 97%(農水省「肥料をめぐる情勢」)
  • 日本のマレーシア尿素依存度 70%+(ペトロナス経由・日本農業新聞 2026年5月1日)
  • 国内エチレン稼働率 68.6%(石化協 2026年3月・過去最低圏・12基中6基減産)
  • エチレン稼働率推移:2月75.7% → 3月68.6% → 4月67.3% → 5月68.1% → 6月66.6% → 7月69.8% → 8月73.5%(速報)
  • エチレンガス価格 10倍・1本15万円・2.5カ月待ち(青果加工大手 2026年5月時点)
  • バナナ「7月供給停止」通知(テレ朝報道 2026年5月5日)
  • JA全農 令和8肥料年度秋肥の顕著な値上げ確定(2026年5月15日決定)
分野B 🌾

コメ

令和のコメ騒動と令和7年産の相対取引価格の急上昇で店頭価格が過去最高をつけ、2026年5月には米類CPIが下がって落ち着きの兆しが出ました。令和8年産には秋肥の値上げが表れる見通しです。

主な数字
  • 令和7年産コメ相対取引価格 26,000円/60kg(農水省 2025年秋・前年比+50%以上)
  • 家庭5kg店頭 5,002円(総務省小売物価統計調査 2025年11月・過去最高)
  • 2026年6月 3,775円(全国3,500店POS・下落傾向)
  • 米類CPI -4.9%(総務省 2026年5月・3年6か月ぶり低下)
  • 米類CPI −15.7%(総務省 2026年8月・前年同月比、2025年=100)
  • スーパーのコメ5kg平均 2,934円(全国約1,000店舗・2026年9月14〜20日、農水省発表)
  • 家族4人年間負担増 +約38,400円(3本のシリーズ実データより)
分野C 🐄

肉と牛乳(生産から包装までの6段階)

配合飼料の3期連続の値上げが畜産物・乳製品の原価を押し上げ、食肉のサプライチェーンの6段階(飼料→粗飼料→畜産副資材→畜舎建材→エネルギー→物流包装)のすべてに影響が及んでいます。

主な数字
  • 牛肉100g 414円(総務省 2026年4月・コロナ禍前比+59%)
  • 鶏卵1パック 315円(総務省 2026年4月・過去最高)
  • 牛乳1L 266円(総務省 2026年5月)
  • バター200g 613円(農水省 2025年12月)
  • JA全農配合飼料 +10.6%(3期連続累計)
  • JA全農配合飼料 10〜12月期 トン当たり約3,200円値上げ(2026年9月18日発表)
  • エフピコ 食肉包装関連 +20%値上げ(食肉加工・包装ステージ)
  • 家族4人年間負担増 +約43,200円
分野D 🥬🍎

野菜と果物(天候・コスト・人手の三重苦)

天候不順・生産コスト・人手不足(2024年問題)の三重苦が青果市場を圧迫し、葉物・常備野菜から輸入食品まで高値が広がりました。

主な数字
  • キャベツ1kg 401円(農水省 2025年2月・平年比+2.6倍)
  • キャベツ +64%(農水省 2026年5月27日の週・平年比)
  • たまねぎ +159%(農水省 2026年1月26日の週・平年比)
  • にんじん +116%(農水省 2026年1月26日の週・平年比)
  • トマト +16%高(農水省 2026年6月・平年比)
  • カット野菜CPI 111.0(総務省 2026年5月・過去最高)
  • コーヒー豆 +54.0%(総務省 2026年3月・前年同月比)
  • 家計調査 果物年間支出:バナナ4,798円・りんご3,814円・みかん3,700円(上位3品目合計12,312円)
  • 家族4人年間負担増 +約25,500〜39,000円
分野E 🍽️

食卓全体のまとめ

4つの経路が家庭の食卓に集まった結果を、3本のやさしく解説シリーズをまとめた「食卓統括版」で扱っています。

主な数字
  • 食料指数 128.4(総務省CPI 2026年4月・過去最高圏)
  • 総合CPI 113.5(総務省 2026年5月・前年同月比+1.5%)
  • 家族4人合計年間負担増 +約107,000〜120,000円(月+約9,000〜10,000円)
  • 食料費 約100万円 → 約111万円/年(家族4人・約1.3か月分の食料費相当の追加)
  • 額面年収500万円家庭の食料費負担率 20% → 22%への上昇

Ch.06業界別:どの記事から読むか

12記事すべてを読む必要はなく、判断に必要な2〜3本を選べば十分です。原価の管理が目的なら上流のSegment Aから、店頭価格が目的ならSegment B/C/Dから、家計への影響が目的ならSegment Eから読むと、全体像を早くつかめます。業界・立場ごとの読む順番は次のとおりです。

RETAIL / 小売業

スーパー・コンビニ・食品小売

読む順番:Segment A肥料(上流の先行指標)→ Segment D野菜と果物(数日〜数週間反映)→ Segment B コメ(秋肥→令和8年産の見通し)→ Segment E食卓統括(消費者行動の変化)
FOODSERVICE / 外食産業

レストラン・焼肉店・給食事業者

読む順番:Segment C肉と牛乳(6ステージ全工程)→ Segment A肥料(配合飼料の起点)→ Segment D野菜と果物(副菜原価)→ Segment E食卓統括(顧客の値ごろ感)
FOOD MAKER / 食品メーカー

食品加工・製菓・乳業・食品メーカー

読む順番:Segment A肥料(原料調達の起点)→ Segment C肉と牛乳(畜産物メーカー)→ Segment D野菜と果物(青果メーカー)→ 専門版7本をまとめて参照
LOGISTICS / 物流業

物流事業者・卸売市場・農業資材流通

読む順番:全12記事をまとめて参照。特に時系列表(Ch.02)と4つの経路(Ch.04)で、値段が伝わる時間差をつかむのが先です
AGRICULTURE / 農業関係者

農家・JA・農業法人・営農指導

読む順番:Segment A肥料(秋肥の詳しい分析)とCh.03(8〜9月の肥料・飼料)→ 自分の作目に対応するSegment B/C/D → Segment E食卓統括(消費者側の受容価格帯)
CONSUMER / 一般家庭

家計担当・共働き世帯・年金世帯

読む順番:Segment E食卓統括(統括版)→ 気になるSegment B/C/D → Segment A肥料(構造理解の背景として)

Ch.07家計への影響:家族4人で年+約11万円

やさしく解説シリーズ3本の数字を集計すると、家族4人の食卓の追加負担は、コロナ禍前と比べて年間約11万円になります。

💴 家族4人・食卓の年間家計負担増(3本のシリーズ実データ集計)
🌾 コメ 月+約3,200円 年+約38,400円
🐄 肉と牛乳 月+約3,600円 年+約43,200円
🥬🍎 野菜と果物 月+約2,000〜3,000円 年+約25,500〜39,000円
💰 合計 月+約8,800〜9,800円 年+約107,000〜120,000円

総務省家計調査の二人以上世帯の食料費は月平均約8万円(年間約100万円)で、約11万円の追加負担が加わると、食料費は年110万円台まで押し上げられる計算です。額面年収500万円の家庭では食料費の負担率が20%から22%に上がる計算で、家族4人の食料費の約1.3か月分にあたります。負担の時期は品目で違い、野菜は冬に値上げが集中しやすく、コメは秋の新米の出回りで大きく動き、肉と牛乳は1年を通じてゆるやかに上がる傾向があります。

この負担増は、小売業・外食産業にとっては消費者の値ごろ感の変化を、食品メーカーにとっては値上げをそのまま価格に上乗せすることの難しさを、物流業にとっては買い方の変化を通じた配送効率・積載率への影響を意味します。

この試算は2026年7月時点の数字にもとづいており、8月以降の値動き(Ch.03)は反映していません。

Ch.08これからの見方:短期・中期・長期

2026年後半からの見通しを、短期(数か月)・中期(半年〜1年)・長期(数年)の3つに分けて整理しました。天候・国際情勢・政策によって変わるため、2026年7月17日時点の見立てとしてお読みください。9月までに分かった事実はCh.03にまとめ、下の短期の欄と指標にも書き加えました。新しい予測は加えていません。

短期 / 数か月

明るい兆しと逆風が混ざっています

7月時点では、米類CPI -4.9%(2026年5月)や尿素の値下がり(世界銀行の月平均で4月856.9ドル/t→6月453.1ドル/t)という明るい材料がある一方、7月12日のホルムズ海峡再閉鎖によるナフサ第2波の心配が、肥料・配合飼料の追加値上げへの懸念を残すと見ていました。9月時点では、米類CPIは8月に−15.7%、尿素の月平均は8月に390.0ドル/tと下がった一方、中東産の尿素は9月22日に約470〜480ドル/t(IFDC)に戻り、JA全農は10〜12月期の配合飼料を約3,200円値上げしました。

中期 / 半年〜1年

令和8年産に肥料の値上げが表れます

JA全農の令和8肥料年度秋肥(6-10月分)の値上げが、令和8年産のコメ・野菜・果樹の生産原価に表れる見通しです。畜産物は配合飼料の値上げの積み重ねが続き、果物は10-12月の新物の出回り時期の産地の天候しだいです。

長期 / 数年

構造的な圧力が残ります

農家の減少、和子牛価格の高止まり、酪農家戸数の減少、果樹農家の高齢化、気候変動といった構造的な課題が残ります。和牛は繁殖から出荷まで2〜3年かかるため、2026年前半の原油の値上がりが、2028〜2029年の店頭価格に表れる可能性があります。

業界ごとに見ておきたい5つの指標

見ておきたい5つの指標
  • 指標1:尿素価格(世界銀行の月平均と、Trading Economics・IFDC などの日々の値)── 上流の先行指標です。世界銀行の月平均は4月856.9ドル/t、8月390.0ドル/tでした。日々の値では6月26日366.50ドル/t(Trading Economics)、9月22日の中東産 約470〜480ドル/t(IFDC)です。種類の違う指標なので、1本の線としては比べられません。次の春肥の価格改定と、上流の動きが農家の買う値段にどこまで表れるかがポイントです。8〜9月の動きはCh.03にまとめました。
  • 指標2:石化協・国内エチレン稼働率(月次)── 68.6%(2026年3月・過去最低圏)からの回復の速さが、農業用フィルム・化学系の副資材の需給を左右します。8月は73.5%(速報)まで戻りました。
  • 指標3:農水省・食品価格動向調査(週次)── キャベツ・たまねぎ・トマトなどの平年比が、青果市場の需給の週ごとのサインになります。
  • 指標4:総務省・消費者物価指数(食料指数)(月次)── 128.4(2026年4月、2020年=100)からの動きが、家計負担の全体の変化を示します。8月分から基準が2025年=100に変わり、8月の食料は前年同月比+3.1%でした。
  • 指標5:JA全農・配合飼料価格改定(四半期)── +10.6%(3期連続累計)からの追加改定が、畜産物・乳製品の中期の値段を左右します。10〜12月期はトン当たり約3,200円の値上げと決まりました(9月18日)。

Ch.09用語集

このまとめによく出てくる言葉を、14項目にまとめました。

ホルムズ海峡
ペルシャ湾の出口にある幅約33kmの狭い海峡です。世界の原油の約20%が通る要所で、日本の原油輸入もこの海峡を通る船が多くあります。イラン情勢が緊張するたびに、国際原油価格が上がる原因になります。
食料自給率(カロリーベース)
国内で食べられている食料のうち、国内の生産でまかなえている割合を、カロリーに換算して示した指標です。令和6年度(2024年度)は38%で4年連続の同じ水準、諸外国と比べて低い水準です。農水省が毎年10月ごろに公表します。
飼料自給率
畜産で使われる飼料のうち、国産でまかなえている割合です。令和6年度は26%(前年-1ポイント)で、日本の畜産物・乳製品の生産原価が、輸入トウモロコシ・大豆かすなどの国際価格に強く左右される前提になっています。
相対取引価格
コメの生産者側(JAなど)と卸業者などが取引する価格です。60kg単位で表示され、令和7年産は26,000円/60kg(前年比+50%以上)と急に上がりました。家庭の店頭価格の先行指標として業界で注目されます。2026年8月の令和7年産の全銘柄平均は31,556円/玄米60kgでした。
配合飼料
トウモロコシ・大豆かす・魚粉などを混ぜて作る家畜のえさです。日本の畜産の生産原価の約40〜60%を占め、原料の約75%を輸入に頼っています。JA全農が四半期ごとに価格を改定し、3期連続・累計+10.6%(令和8年度)、10〜12月期はトン当たり約3,200円の値上げです。
尿素
化学肥料の三大原料の一つで、主に天然ガスからつくるアンモニアを原料とする窒素肥料です。世界銀行の月平均では2026年4月に856.9ドル/t(前月比+18%)まで上がり、8月は390.0ドル/tでした。コメ・野菜・果樹の生産原価の起点になる上流の指標です。
りん安(DAP)・塩化加里
りん安はりん酸肥料、塩化加里はカリ肥料の原料で、尿素とあわせて化学肥料の三大原料と呼ばれます。日本は輸入に頼っており、農水省が輸入通関価格を公表しています(Ch.03)。
FOB(積み出し港での価格)
輸出する港で船に積むまでの価格で、海上運賃や保険料は含みません。Ch.03の中東の粒状尿素の相場は、この条件の価格です。
エチレン稼働率
国内のエチレンプラント(12基)の稼働の状況を示す指標で、石化協が毎月公表します。2026年3月は68.6%と過去最低圏で、8月は73.5%(速報)でした。化学系の副資材・農業用フィルム・食品包装の供給に影響します。
平年比
過去5か年の平均値と比べた数値です。「平年比+64%」なら、過去5年の平均より64%高いという意味です。農水省の食品価格動向調査で、野菜・果物の相場を見るときの標準の指標として使われます。
消費者物価指数(CPI)
総務省が毎月公表する物価の動きを示す指標です。この記事の水準の数字は2020年=100で、2026年5月の総合指数は113.5、食料指数は128.4(2026年4月・過去最高圏)でした。2026年8月分からは2025年=100に基準が変わったため、前の水準とそのまま比べることはできません。
家計調査
総務省が行う、家庭の収入と支出の全国調査です。1世帯あたりの果物の年間支出はバナナ4,798円・りんご3,814円・みかん3,700円が上位3品目で、家計への影響を示す一次データになります。
4つのパイプ(4つの経路)
中東のイラン情勢が、原油の値上がりを通じて日本の食料に届く4つの道筋の呼び方です。①肥料(コメ・野菜・果樹)②配合飼料(肉と牛乳)③ハウス燃料(施設野菜・果樹)④輸入輸送(輸入食品)。
三重苦
2025〜2026年の青果市場を圧迫している3つの構造的な要因です。①天候不順(猛暑・寒波・日照不足)②生産コストの上昇(燃料・肥料・資材)③人手不足(農家の高齢化・2024年問題によるトラック運転手不足)が同時に起きています。

Ch.10よくある質問

この記事を読むうえでよくいただく質問と、その答えをまとめました。詳しくは各テーマの個別記事をご覧ください。

なぜイラン情勢が農業・肥料と食料インフレにこれほど影響するのですか

中東は世界の原油生産の3分の1以上を占める地域で、ホルムズ海峡は世界の原油の約20%が通る海峡です。日本は原油の約9割を輸入に頼っており、以前はその大半が中東からでした。近年は米国産・アフリカ産・ロシア極東産などへの切り替えが少しずつ進んでいますが、原油の値上がりは、肥料(尿素など)・配合飼料の輸送・ハウス栽培の燃料・果物の輸入輸送という4つの経路を通じて、コメ・肉・牛乳・野菜・果物のすべての品目に届きます。日本の食料自給率はカロリーベースで38%(令和6年度・農水省)、飼料自給率は26%と、輸入に頼る割合が高いため、中東情勢の影響を強く受けます。

2026年の食料の値上がりを、数字で見るとどうなっていますか

総務省の消費者物価指数では、2026年5月の総合指数は113.5(前年同月比+1.5%)、4月の食料指数は128.4で過去最高圏でした(いずれも2020年=100)。品目別では、コメ5kgが2025年11月に過去最高の5,002円、牛肉100gが2026年4月に414円(コロナ禍前比+59%)、鶏卵1パック315円、牛乳1L 266円、キャベツ1kgが2025年2月に平年比+2.6倍の401円、たまねぎが2026年1月26日の週に平年比+159%、コーヒー豆が2026年3月に前年同月比+54.0%と、食卓の多くの品目で値上げが広がりました。上流では、尿素の4月の月平均が856.9ドル/t(世界銀行)まで上がり、国内エチレン稼働率も2026年3月に68.6%と過去最低圏になりました。2026年8月の消費者物価(2025年=100に基準改定)では、食料が前年同月比+3.1%、米類が−15.7%です。

家族4人でどれくらいの家計負担が増えていますか

家族4人の平均的な消費量で試算すると、コメで年+約38,400円、肉と牛乳で年+約43,200円、野菜と果物で年+約25,500〜39,000円、合計で年+約107,000〜120,000円の負担増になります。月にならすと+約9,000〜10,000円で、家族4人の食料費の約1.3か月分にあたります。額面年収500万円の家庭では、食料費の負担率が20%から22%に上がる計算です。この試算は2026年7月時点の数字にもとづいており、8月以降の値動きは反映していません。

農業・肥料カテゴリで具体的にどのような記事が読めますか

このカテゴリでは、専門版7本(肥料・エチレンショック→果樹農業、農業資材12品目、コメ×肥料、コメの供給不足、畜産×配合飼料、食肉サプライチェーン6ステージ、野菜果樹×三重苦)と、家庭・消費者向けの「やさしく解説」版5本(肥料値上げ、コメ、肉と牛乳、野菜と果物、食卓統括版)の、合計12本の詳しい記事をまとめています。業界別の読み順(Ch.06)で、ご自分の業種に合った記事から読み始められます。

2026年9月に原油が再び上がりましたが、食料への影響はどうなりますか

経路によって向きが分かれます。2026年8月から9月にかけては、4つの経路に共通する原油と為替が反対の向きに動きました。ブレント原油は9月10日に109.09ドルとなり、7月23日以来の100ドル超えになりました。一方で、7月31日の日米協調介入のあとは円高方向に振れ、税関長公示レートは8月2日週の163.16円から9月13日週の158.81円まで下がっています。飼料原料の約75%を輸入に頼る配合飼料の経路と、輸入食品の経路では、円高が押し下げに働いて打ち消し合いが起きます。暖房重油・農機軽油という国内の燃料に頼るハウス燃料の経路では、円高の恩恵がほとんど及ばず、上昇圧力が残ります。ただし燃料油には価格抑制措置が働いており、軽油の全国平均は8月17日から9月7日までの3週間で0.2円しか動いていません。尿素は、世界銀行の月平均で8月390.0ドル/tと下がりましたが、9月22日には中東産が約470〜480ドル/t(IFDC)に戻っています(9月13日の追加時点では確認できていなかった数字です)。詳しくはCh.03をご覧ください。

2026年9月時点で、肥料や飼料の値段はどうなっていますか

肥料の原料の尿素は、世界銀行の月平均(Urea, E. Europe)で4月856.9ドル/t、6月453.1ドル/t、8月390.0ドル/tと下がりました。日本の尿素の輸入通関価格も、5月の141.4千円/tから7月の96.3千円/tに下がっています(農水省、9月3日更新)。一方、中東の粒状尿素は9月22日に約470〜480ドル/t(積み出し港での価格、IFDC)で、ホルムズ海峡経由の肥料の出荷は事実上止まったままです。種類の違う指標なので、1本の線としては比べられません。配合飼料は、JA全農が9月18日に、10〜12月期をトン当たり約3,200円値上げすると発表しました。JA全農の令和8肥料年度春肥の価格は、9月28日時点で当社は確認できていません。詳しくはCh.03をご覧ください。

なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか

当社はプラスチックパレット・再生樹脂材料・PPバンド・ストレッチフィルムなどの物流資材を全国に供給する専門商社です。コメ・畜産物・乳製品・野菜・果物の輸送、卸売市場から小売までの流通、農業資材の物流を通じて、日本の食料のサプライチェーン全体に関わっています。中東情勢から家庭の食卓までのつながりを、物流の立場からまとめて読み解く記事群として、このまとめを作っています。

出典・エビデンス一覧38件(公的機関22・報道や企業16)

このまとめの数字と分析のもとにした資料を、政府機関・国際機関、業界団体・メーカー、報道機関・調査会社に分けて示します。詳しい一次資料へのリンクは、各個別記事をご覧ください。

GROUP 01 / 政府機関・独法・国際機関
  • 総務省統計局「消費者物価指数(CPI)」(2026年5月総合指数113.5、2026年4月食料指数128.4、コーヒー豆+54.0%、カット野菜111.0等)
  • 総務省統計局「小売物価統計調査」(コメ5kg 5,002円、牛肉100g 414円、鶏卵315円、牛乳266円、キャベツ1kg 190-490円の推移等)
  • 総務省統計局「家計調査」(バナナ4,798円、りんご3,814円、みかん3,700円等)
  • 農林水産省「食品価格動向調査(野菜・果樹)」(キャベツ+64%、たまねぎ+159%、にんじん+116%、トマト+16%等)
  • 農林水産省「相対取引価格」(令和7年産コメ26,000円/60kg)
  • 農林水産省「食料自給率・食料需給表」(令和6年度カロリーベース38%・生産額64%・摂取熱量46%・飼料自給率26%)
  • 農林水産省「野菜の生育状況及び価格見通し」(令和8年6月・主要野菜の予測)
  • 世界銀行「Commodity Markets」(尿素 2026年4月の月平均856.9ドル/t)
  • Trading Economics「Urea Price」(尿素 2026年6月26日366.50ドル/t。日々の値で、世界銀行の月平均とは別の指標)
  • 農水省「肥料をめぐる情勢」(日本の尿素輸入依存97%)
  • 日本農業新聞 2026年5月1日(日本のマレーシア尿素依存70%+・ペトロナス経由)
GROUP 01B / 2026年8月〜9月の追補分(9月13日)
  • ブレント原油 2026年9月10日 109.09ドル/同年9月8日 97.92ドル(7月23日以来の100ドル超え)
  • ナフサ スポット価格 2026年9月10日 871.17ドル/トン(前月比+17.22%)
  • サウジアラビアの石油施設への攻撃(2026年9月8日、73人が負傷)および同国8月の産油量 日量623.8万バレル(前月比190万バレル減)
  • 日本銀行「企業物価指数」2026年9月11日公表(2026年8月分)/化学製品 前年比+13.9%、石油石炭製品 前年比+14.7%、輸入物価 前月比 円ベース−3.0%・契約通貨ベース−1.0%、前年比 円ベース+24.8%・契約通貨ベース+16.7%(差の算出は当社による)
  • 税関長公示レート 2026年8月2日週 163.16円/2026年9月13日週 158.81円(差4.35円の算出は当社による)
  • ドル円 2026年7月31日の日米協調介入、2026年8月3日 155.22円、2026年7月23日 163.80円
  • 資源エネルギー庁「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置」/軽油の全国平均は2026年8月17日から9月7日までの3週間で0.2円の変動
GROUP 01C / 2026年8月〜9月の追補分(9月29日に確認)
GROUP 02 / 業界団体・メーカー
  • JA全農「配合飼料価格改定について」(3期連続値上げ・累計+10.6%)
  • 石油化学工業協会(石化協)「エチレン月次生産・出荷実績」(2026年3月稼働率68.6%・推移:2月75.7%→3月68.6%→4月67.3%→5月68.1%)
  • Jミルク・関東生乳販連(乳製品需給・生乳受託・小売価格動向)
  • 農畜産業振興機構(ALIC)「野菜情報総合把握システム」ベジ探
  • 各卸売市場(大田市場・名古屋市場・大阪本場市場)の相場データ
GROUP 03 / 報道機関・調査会社
  • マーチャンダイジング・オン社「全国3,500店POSデータ」(2026年6月コメ5kg 3,775円)
  • テレビ朝日 2026年5月5日放映(青果加工大手・浜中執行役員によるバナナ7月供給停止通知・エチレンガス価格10倍・2.5カ月待ちの現場実態)
  • 東京商工リサーチ・帝国データバンク(食肉・外食動向・焼肉店倒産26件等)
  • KSBニュース 2025年2月報道(キャベツ1kg 401円・平年比+2.6倍・キャベツ輸入量前年比約43倍)
  • 各報道機関の農業・食料インフレ関連記事(日本経済新聞・時事通信・共同通信・Yahoo!ニュース経由の各社報道)

Ch.12この記事について・ご留意点

本記事は、親記事イラン情勢まとめ2026、なぜガソリンや食品の値段に響くのかを時系列で整理|米国・湾岸4カ国の農業・肥料編として、農業・肥料テーマの詳しい記事12本をまとめたものです。物流資材・化学系原料・エネルギーなどほかの産業は親記事から、菓子・調味料・食品包装・洗剤といった加工と包装の段階は食品や日用品はどう変わった? 値上げを中身と容器の4つの型で整理|カルビー・花王・ホルムズ海峡から読めます。各記事の紹介文は概要ですので、詳しい内容は各記事の本文をご覧ください。

ご留意点
  1. 本記事は、総務省・農林水産省・JA全農・石化協・世界銀行・各卸売市場・マーチャンダイジング・オン社などの公表情報をもとに2026年7月17日時点で作成し、2026年9月13日に「2026年8月〜9月」の章を追加、9月29日にその章(現在のCh.03)を新しい資料で書き足しました。最新の情報は各機関の公式サイトでご確認ください。
  2. 数字と家族4人年+約11万円の試算(平均的な消費量を仮定した参考値)は、記事の公開後にも変わり、世帯によっても違います。仕入れ・調達・作付・購買の判断は、実際の相場と一次資料でご確認ください。
  3. 本記事は投資・取引・調達などの判断をすすめるものではなく、その正確さ・完全さを保証するものでもありません。本記事の情報にもとづく判断で生じた損失について、当社は責任を負いかねます。

文:プラスチックパレット株式会社 編集部

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