アドブルーの値段はなぜ上下したのか、尿素の2026年を1ページで振り返る|ホルムズ海峡・三井化学・インドネシア産
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2026年 尿素・アドブルーまとめ

アドブルーの値段はなぜ上下したのか、尿素の2026年を1ページで振り返る|ホルムズ海峡・三井化学・インドネシア産

2026年3月のホルムズ海峡封鎖から7月の再閉鎖、そして9月まで、尿素とアドブルーの値段・入手・容器に何が起きたのかを、政府の対応・国内メーカー・Pupuk Indonesiaからの調達・BIB容器・農業と肥料への広がりに分けて、やさしく振り返ります。本記事は要点と時系列・一覧だけを短くまとめ、詳しい内容は個別記事12本へご案内します。

📅 初版公開: 🔄 最終更新: 📊 個別記事: 12本+親ハブ1本 🏷️ カテゴリ: 尿素・アドブルー
3分でわかる要点
  1. 2026年3月にホルムズ海峡が封鎖されてから、尿素とアドブルーは「値段」「入手」「容器」という性格の違う3つの困りごとを同時に抱えました。5月12日の第7回中東情勢関係閣僚会議では、アドブルーが個別の議題になりました。
  2. 尿素の国際価格は、世界銀行の月平均で4月856.9ドル/トンから6月453.1ドル、8月390.0ドルと下がりました。別の指標である中東の粒状尿素の相場は、8月14日の週の約375ドルから、9月22日には約470〜480ドル(IFDC)に上がっています。
  3. 国内の4大メーカー(三井化学・新日本化成・日産化学・三菱ケミカル)は、5月22日時点で全社フル稼働と答えました。一方で、三井物産プラスチック+10円/L、伊藤忠エネクス+5〜7円/L、新日本化成+8円/Lと値上げが続きました。
  4. 代わりの調達先としてPupuk Indonesia(2026年度140万トンの輸出枠)が注目され、豪州向けに47,250トンが初めて出荷されました。10L・20Lの箱入り容器(BIB)は内袋が足りなくなり、9月29日に当社が見た範囲でも、通販では小口の容器入りが買いにくい状態です。
  5. 事業者ができる備えは、割当通知への早めの確定発注、1〜2ヶ月分の安全在庫、第2の仕入れ先の確保など6つにまとめました。分野ごとの詳しい内容は、下の「このまとめの記事を探す」から個別記事で読めます。

こんな方へ ── まず読むところ

4社
国内メーカー
フル稼働体制
(三井化学・新日本化成・
日産化学・三菱ケミカル)
47,250t
Pupuk Kaltim
豪州向け初出荷
(2026年5月14日
ボンタン港船出)
74%
農水省統計
肥料用尿素の
マレーシア依存度
(2026年3月時点)
5/12
第7回
中東情勢閣僚会議
金子国交相「前年同月
同量」要請とBIB対応表明

CHAPTER 01まず全体像:尿素・アドブルーとイラン情勢のつながり

アドブルー(高品位尿素水=尿素を純水に溶かした液)は、ディーゼル車の排ガス浄化装置(SCR触媒)に吹き込まれ、排ガス中の窒素酸化物(NOx)を無害な窒素と水に変える消耗品です。ISO 22241規格に合った尿素32.5%と純水67.5%の混合液で、国内の需要は年間およそ50万〜60万kLと推計され、三井化学1社で約2割強(年間11万kL)をまかなっています。

原料の尿素は、天然ガスからつくるアンモニアと二酸化炭素を反応させて製造する国際商品です。ペルシャ湾地域は世界の尿素輸出量の約49%、アンモニア輸出量の約30%を占めます(JPモルガン試算)。値段は世界の市場でつながっているため、「日本は中東から尿素を直接輸入していない」からといって、値上がりと無関係ではいられません。

アドブルーは、4月に東名高速・海老名SAで販売を再開した2日後に売り切れたこと、3社の値上げ通知、5月12日の閣僚会議での議題化を経て、数か月で政府が個別に手当てする物資になりました。

2026年のイラン情勢、3つの局面

局面期間主な出来事
第1局面2026年2月28日〜4月ホルムズ海峡封鎖の初動。原油価格が1バレル94ドル台まで急伸し、ナフサ・尿素・エチレンの国際価格が相次いで上昇。世界銀行の月平均では、4月の尿素国際価格が856.9ドル/トン(3〜8月で最も高い月)
第2局面2026年4月末〜6月米国産原油の追加放出・国家備蓄石油20日分放出・鈴木憲和農相のマレーシア訪問などで調達代替が進み、6月に高市総理が「全量ホルムズ外調達」達成を表明。尿素価格は5月8日に547.50ドル/トン(前月比-21.9%、Trading Economics)、6月26日には366.50ドル/トン(Trading Economics)まで下落。世界銀行の月平均では6月453.1ドル/トン
第3局面2026年7月〜7月12日にIRGC(イラン革命防衛隊)がホルムズ海峡の再閉鎖を宣言。米中央軍空爆、LNG(液化天然ガス)船の通航ゼロ、覚書失効で第2波リスクが顕在化し、尿素価格に再上昇圧力

値段・入手・容器の3つの困りごとは第4章で、8月以降の動きは第3章で扱います。

CHAPTER 023月〜7月の出来事 ── 主な29件の時系列

2026年3月24日の第1回中東情勢関係閣僚会議から、7月12日のホルムズ海峡再閉鎖までの主な29件を、政府・メーカー・現場・統計・国際・調達・情勢の7つに分けて並べました。8月以降は第3章にまとめています。

日付 カテゴリ 主要イベント
2026-03-24政府第1回 中東情勢に関する関係閣僚会議 開催(内閣官房主催)
2026-03-31政府第2回 中東情勢に関する関係閣僚会議
2026-04-02政府「重要物資の安定的な供給確保のためのタスクフォース」設置
2026-04-10政府第3回 高市総理「供給の偏り・目詰まり解消」を関係閣僚に指示、国家備蓄石油20日分追加放出方針
2026-04-14メーカー三井物産プラスチック・伊藤忠エネクス・新日本化成 価格改定通知書 順次発行
2026-04-15統計石化協 3月エチレン稼働率68.6%(過去最低)発表、12基中6基減産・フル稼働3基のみ
2026-04-20メーカー三井物産プラスチック 全荷姿+10円/L 実施
2026-04-24政府第5回 高市総理「代替調達5月約6割確保のめど」表明
2026-04-24現場東名高速海老名SA(下り)GS アドブルー販売再開、その2日後に在庫終了・販売中止再表明
2026-04-28統計農水省 3月尿素輸入通関価格1トン93,070円(前月比+17.5%)「中東情勢の影響が反映」と明示
2026-04-30政府第6回 第2弾国家備蓄石油追加放出決定、米国産原油初到着報告
2026-05-01メーカー伊藤忠エネクス +5〜7円/L 実施(巡回給水+5円、BIB+7円)
2026-05-05国際世界銀行 4月の尿素国際価格(月平均)856.9ドル/トン(前月比+18%)発表
2026-05-05現場テレ朝放映「バナナ7月供給停止」通知(浜中・橋本執行役員インタビュー、価格10倍・2.5カ月待ちの実態)
2026-05-08国際Trading Economics 尿素国際価格547.50ドル/トン(前月比-21.9%、前年比+15.14%)
2026-05-12政府第7回 金子国交相「前年同月同量」要請とBIB容器対応を正式表明(アドブルーの閣議レベル議題化)
2026-05-14調達Pupuk Kaltim 豪州向け47,250トン(約3,800万ドル)ボンタン港船出
2026-05-15統計農水省「肥料の価格情報」更新/マレーシア74%・ベトナム10%・サウジ約5%依存構造
2026-05-21政府第8回中東情勢閣僚会議
2026-05-22メーカートラックニュース取材 国内4大メーカー全社「フル稼働で供給確保」「最悪期は通過」と回答
2026-05-27政府鈴木憲和農相 マレーシア訪問、ペトロナスとの尿素・ナフサ・原油の安定供給確約を確認
2026-06-01メーカー新日本化成 全荷姿+8円/L 実施
2026-06-02政府第9回中東情勢閣僚会議
2026-06-05政府資源エネルギー庁「潤滑油の発注適正化」公表(アドブルー含むナフサ由来品の政策整理)
2026-06-11政府第10回 高市総理「全量ホルムズ外調達」達成表明、7月前年平月比10割回復見通し
2026-06-22調達Pupuk Kaltim豪州向け出荷 ブリスベン到着
2026-06-26国際Trading Economics 尿素国際価格366.50ドル/トン(6月26日の値)
2026-06-26政府第11回中東情勢閣僚会議
2026-07-12情勢IRGC(イラン革命防衛隊)によるホルムズ海峡再閉鎖宣言、米中央軍空爆、LNG船通航ゼロ、覚書失効で第2波リスク顕在化

この間に中東情勢関係閣僚会議は11回開かれました。節目は5月12日の第7回で、金子国交相が「前年同月同量」要請とBIB容器への対応を表明し、アドブルーが閣議レベルの議題になりました。

CHAPTER 032026年8月〜9月の動き

7月12日の再閉鎖のあと、8月から9月にかけての動きを、2026年9月29日に当社が確認できた資料だけでまとめました。世界銀行の月平均と、日々・週ごとの相場は種類の違う指標なので、別々の表に分けています。

世界銀行の月平均:8月は390.0ドルまで下がりました

世界銀行の月次統計(Pink Sheet、系列は Urea, E. Europe)では、尿素の月平均は4月をピークに下がり、8月は390.0ドル/トンでした。

月尿素の月平均(ドル/トン)
2026年3月725.6
2026年4月856.9
2026年5月770.5
2026年6月453.1
2026年7月400.0
2026年8月390.0
2026年9月407.5

尿素の原料は天然ガスです。同じ世界銀行の統計では、欧州のガス価格は7月の18.06ドル/mmbtu(mmbtuは熱量の単位)から8月は21.11ドルに上がりましたが、尿素の月平均は7月の400.0ドルから8月の390.0ドルに下がりました。8月の原油(ブレント)は90.9ドルでした。原油の値段と尿素の値段を直接結びつけた資料は、当社では確認できていません。

世界銀行のPink Sheet(10月号、10月2日公表)では、9月の尿素の月平均は407.5ドル/トンで、8月の390.0ドルから上がりました。同じ統計の9月のブレント原油の月平均は116.8ドルです。

日々・週ごとの相場:9月は再び上がっています

中東の粒状尿素のFOB価格(積み出し港で船に積むまでの価格)は、8月14日の週にいったん下がったあと、9月22日には約470〜480ドル/トンまで戻っています。集計元が違うため、数字は目安としてご覧ください。

時点指標値・内容出典
8月14日の週中東の粒状尿素(FOB)約375ドル/トン(前週400ドル)Australian Fertilizer Corporation 週報
8月28日の週相場の背景ホルムズ周辺の海運の混乱と欧州の高いガス価格が相場を下支え。欧州の効率の良い工場でも、損益分岐の生産コストが約605ドル/トンに迫るAustralian Fertilizer Corporation 週報
9月22日中東の粒状尿素(FOB)約470〜480ドル/トン。ホルムズ海峡経由の肥料出荷は事実上停止(WTO/AXSMarine の追跡)IFDC Fertilizer Crisis Response Bulletin #30
9月28日尿素(Trading Economics の指標)457.00ドル/トン(前月比+4.10%)Trading Economics

Australian Fertilizer Corporation のCEOは8月28日の週の週報で、「需要ではなくコストと物流が相場を支えている」と述べています。

日本の輸入価格:5月をピークに7月は下がりました

農林水産省「肥料の価格情報」(財務省の通関実績にもとづく、9月3日更新)では、尿素の輸入通関価格は5月の141.4千円/トンが最も高く、7月は96.3千円/トンでした。

月尿素の輸入通関価格(千円/トン)
2026年1月77.3
2026年2月79.2
2026年3月93.1
2026年4月129.7
2026年5月141.4
2026年6月119.7
2026年7月96.3

アドブルーの買いやすさと、国内の発表

  • 通販:2026年9月29日に当社が見たところ、モノタロウでは三井化学のアドブルー20Lが「取扱停止中」、新日本化成は10L・20Lが「取扱終了」で、5Lは当日出荷の表示でした。アスクルでは三井化学の20Lが「現在ご注文いただけません」でした。当社が見た範囲では、小口の容器入りは通販で買いにくい状態が続いています。
  • 国内メーカー:2026年7〜9月のアドブルーの価格改定や供給についての新しい発表は、当社の調査範囲(三井化学・新日本化成・伊藤忠エネクスの公表ページ)では確認できていません。
  • 国:国交省が5月に求めた「前年同月同量」を基本とする調達のあと、新しい発表は確認できていません。

冬の凍結:凍っても解凍すれば使えます

AdBlueの商標を持つVDA(ドイツ自動車工業会)によると、アドブルーは−11℃を下回ると凍りますが、凍っても品質は損なわれず、解凍すれば使えます。BASFは、25℃以下で保管すれば製造後少なくとも12か月はISO 22241を満たすとしています。冬の保管と使い方はアドブルーの凍結と冬の注意点で詳しく書いています。

CHAPTER 04値段・入手・容器、3つの困りごと

2026年のアドブルーで起きたのは、単なる品不足ではありません。性格の違う3つの困りごとが重なりました。

値段 ── 尿素の国際価格は大きく上下しました

尿素の国際価格の推移(世界銀行の月平均と、Trading Economics の日々の値は別の指標です)

  • 2026年3月:日本の輸入通関価格1トン93,070円(前月比+17.5%、農水省4月28日発表)
  • 2026年4月:世界銀行の月平均856.9ドル/トン(前月比+18%、5月5日発表)
  • 2026年5月8日:Trading Economics 547.50ドル/トン(前月比-21.9%、前年比+15.14%)
  • 2026年6月:世界銀行の月平均453.1ドル/トン/6月26日の Trading Economics 366.50ドル/トン
  • 2026年7〜9月:世界銀行の月平均は7月400.0ドル・8月390.0ドル。9月28日の Trading Economics は457.00ドル/トン(第3章)

3〜4月の急騰は、実際の供給不安に加えて、世界中の買い手が代わりの調達に一斉に動いた先回りの需要によるものです。5〜6月に下がったのは、米国産原油の追加放出・国家備蓄の放出・ペトロナスの供給確約など、代わりの調達が進んだことを市場が織り込んだためです。世界銀行は、中東の混乱が長引く場合、2026年通年で肥料+31%・尿素+60%の上昇がありうると指摘しています。

入手 ── 肥料用尿素はマレーシアが74%

日本の肥料用尿素の輸入依存構造(農水省2026年3月統計)

  • マレーシア:74%(ペトロナス子会社PC Fertilizer Kedahが主体、鈴木憲和農相5月27日訪問で安定供給確約)
  • ベトナム:10%(PetroVietnam Ca Mau、Phu My尿素工場が主体)
  • サウジアラビア:約5%(SABIC系)
  • その他:約11%(インドネシア・ブルネイ・カタール・ロシア等)

この数字は肥料用尿素の統計で、アドブルーの原料になる工業用尿素の内訳とは違います。以前は大半を中東・北アフリカ産に頼っていましたが、近年は東南アジア産への切り替えが少しずつ進んでいます。代わりの調達先として最も注目されたPupuk Indonesiaは、第5章と第7章で扱います。

容器 ── BIB(箱入りの袋容器)の内袋はポリエチレン

BIB(バッグインボックス)の構造とポリエチレン依存

  • 用途:アドブルー10L・20L小売形態で使用(GS・カー用品店・ネット通販の主要流通形態)
  • 構造:外側の段ボール箱+内袋(ポリエチレン製)+ノズル。内袋はLLDPE/LDPE製で、ナフサ由来の石油化学品。
  • ナフサ価格連動:ホルムズ封鎖でナフサ価格が急騰した影響を直接受け、内袋の供給が滞りやすくなりました。
  • 現場影響:LOGISTICS TODAY 2026年4月20日報道で複数販売事業者がBIB内袋不足で新規受注停止。東名高速・海老名SA(下り)のGSは4月24日に販売再開、その2日後に在庫終了・販売中止を再表明。
  • 政策対応:金子国交相5月12日第7回閣僚会議で対応表明、ポリ容器メーカー・卸小売業者への働きかけ開始。

原料の尿素は国内メーカーのフル稼働で確保できていたのに、店頭で売る小口の容器が足りず、「液体はあるのに小分けで売れない」状態になりました。タンク車(バルクローリー)やキュービテナー(1,000L超の大型容器)など中口・大口の形はあまり影響を受けず、影響が大きかったのは主に10L・20LのGS向け・個人向けの販売です。

3つが重なって起きた「目詰まり」

原料尿素の国際価格の急騰が国内の値上げを呼び、品薄を見越した先回りの発注で流通の途中に在庫が偏り、そこにBIB内袋の不足が重なって店頭の販売が止まりました。国交省の「前年同月同量」要請(前年の同じ月と同じ量を目安に発注してもらう要請)は、この先回り発注を抑えて目詰まりをほぐすための政策で、経産省の4月13日付180社・70団体宛「出荷抑制の是正」要請とあわせて働きました。

CHAPTER 05分野別の要点と詳しい記事(6つの分野)

分野ごとの要点と数字を短くまとめ、詳しい内容は個別記事へご案内します。キーワードで探すときは「このまとめの記事を探す」の検索欄が便利です。

分野A ── 国内メーカー

国内4大メーカーはフル稼働、値上げは相次ぎました

三井化学・新日本化成・日産化学・三菱ケミカルの4大メーカーは、5月22日時点で全社フル稼働でした。生産能力は日本全体の需要をほぼまかなえる水準ですが、原料尿素の値上がり分は相次ぐ値上げで価格に上乗せされました。

4社フル稼働(三井化学・新日本化成・日産化学・三菱ケミカル)/三井化学11万kL/年製造(国内5拠点)/三井物産プラ+10円/L(4月20日)/伊藤忠エネクス+5〜7円/L(5月1日)/新日本化成+8円/L(6月1日)
分野B ── Pupuk Indonesia調達

140万トンの輸出枠と、豪州向け47,250トンの初出荷

インドネシア政府はPupuk Indonesiaに、2026年度140万トンの尿素輸出ライセンスを認めました。マラッカ海峡より東で生産・出荷するため、ホルムズ海峡封鎖の影響を受けません。当社は2026年7月から、同グループ製の工業用尿素を国内在庫から販売しています。

輸出ライセンス140万トン(Argus Media 2026-01-15)/豪州向け初出荷47,250トン(約3,800万ドル、5月14日ボンタン港船出)/2026年生産目標780万トン/国内需要630万トン/輸出余剰150万トン/確保競争6カ国(日・韓・印・比・ブラジル・豪)
分野C ── 政府対応

閣僚会議11回と「前年同月同量」要請

3月24日〜6月26日に中東情勢関係閣僚会議が11回開かれました。5月12日の第7回で金子国交相が「前年同月同量」要請とBIB容器への対応を表明し、経産省の4月13日付「出荷抑制の是正」要請とあわせて働きました。

閣僚会議11回(3/24〜6/26)/第7回5/12「前年同月同量」要請・BIB対応表明(金子国交相)/経産省180社・70団体宛出荷抑制是正要請(4/13)/国家備蓄石油20日分追加放出/代替調達5月6割→7月10割回復見通し(高市総理6/11表明)
分野D ── BIB容器

BIB容器の盲点と、海老名SAの例

BIBの内袋(LLDPE/LDPE製)はナフサ由来のため、ナフサ価格の急騰で供給が滞りました。液体はあるのに小分けで売れない状態になり、東名高速・海老名SA下りのGSは、4月24日に販売を再開した2日後に在庫切れで販売中止を再び表明しました。

BIB容量10L・20L/内袋材質LLDPE/LDPE(ナフサ由来)/海老名SA下り販売再開2日後在庫終了(4/24〜4/26)/LOGISTICS TODAY 2026-04-20報道/伊藤忠エネクス BIB+7円/L(巡回給水+5円より高い改定幅)
分野E ── 農業・肥料への広がり

尿素は肥料とアドブルーの両方に使われます ── 農業への広がり

尿素はアドブルーの原料であると同時に、化学肥料の三大原料の一つです(尿素・りん安・塩化加里)。日本は化学肥料の原料をほぼ全量輸入に頼っています。国内エチレン稼働率の低下(3月68.6%)や、中国のリン肥輸出規制(2025年12月〜2026年8月)とも重なりました。

尿素輸入通関価格93,070円/t(2026年3月・前月比+17.5%)/世界銀行の月平均856.9ドル/t(4月)→453.1ドル/t(6月)→390.0ドル/t(8月)/輸入通関価格141.4千円/t(5月)→96.3千円/t(7月・農水省)/エチレン稼働率68.6%(3月・過去最低、12基中6基減産)/マレーシア74%・ベトナム10%・サウジ約5%依存/世銀通年シナリオ肥料+31%・尿素+60%/バナナ7月供給停止通知・価格10倍・2.5カ月待ち(テレ朝5/5放映)
分野F ── 規格と使い方

船舶用の尿素水、凍結、冷却パックへの使い道

アドブルー(ISO 22241)と船舶用のAUS40(ISO 18611)は規格が違います。アドブルーは−11℃を下回ると凍りますが、解凍すれば使えます。尿素を水に溶かすと温度が下がる性質は、瞬間冷却パックにも使われています。

CHAPTER 06業界別:まず押さえる点と読む記事(6業界)

業界ごとに、まず押さえる点と最初に読む記事を1行にまとめました。

業界まず押さえる点まず読む記事
運送事業者・トラック運行者アドブルー価格改定の直接影響。バルクローリー・BIB併用による調達分散、価格スライド条項の顧客契約への組み込み、1〜2ヶ月分の安全在庫アドブルー危機2026 専門版
3社値上げ通知書 一次資料
物流事業者・3PL・倉庫業者荷主への価格転嫁の説明。国交省「前年同月同量」要請の理解、荷主説明用の一次資料、BIB内袋の供給状況(海老名SA事例)の把握アドブルー危機2026 専門版
アドブルー やさしく解説
自動車メーカー・ディーラー・整備業顧客からの問い合わせ対応と小口販売、SCR触媒の技術背景の説明。ISO 22241規格準拠品の確保と、規格外品の使用による触媒破損リスクの説明アドブルー危機2026 専門版
アドブルー やさしく解説
化学商社・卸売業・専門流通業者国内4大メーカーと商社経由の第2サプライヤーの並行確保、Pupuk Indonesiaを含む代替経路の情報収集、バルク・BIB・キュービテナーの複数形態への対応3社値上げ通知書 一次資料
インドネシア連携 専門版
農業関係者・JA・肥料流通業者世銀の通年シナリオ(肥料+31%・尿素+60%)、鈴木憲和農相のマレーシア訪問(5月27日)、中国のリン肥輸出規制などの複合要因。エチレン稼働率68.6%と果物流通への波及肥料・エチレンショック 専門版
肥料の値上げ やさしく解説
官公庁・シンクタンク・研究機関閣僚会議11回の議事要点、「前年同月同量」要請と経産省の出荷抑制是正要請の連動、農水省統計、世銀・Trading Economicsなどの国際価格指標の体系的な把握アドブルー危機2026 専門版
肥料・エチレンショック 専門版

CHAPTER 07主な会社・役所の動き

3つの困りごとを和らげたり強めたりした主な会社・役所の動きを、2026年7月時点でまとめました。7〜9月に新しい発表が確認できていないことは、第3章に書いています。

国内メーカー・販売会社・役所

主体2026年の動き
三井化学国内アドブルー製造の最大手。大阪工場(尿素生産能力36万トン/年)を中心に国内5拠点で年間11万kLを製造(日本全体需要の約2割強)。5月22日のトラックニュース取材で「フル稼働で供給確保」と回答
新日本化成アドブルー市場で強い流通網を持つ専業系。6月1日付で全荷姿+8円/Lの価格改定を実施(通知書に「昨今の情勢を踏まえ」の記載)
日産化学5月22日の取材で「フル稼働体制を維持し供給に支障はない」と回答。農薬・肥料事業も持ち、尿素市況の両側面を受ける立場
三菱ケミカルアドブルー用途の高品位尿素水を製造。5月22日時点でフル稼働・供給確保を表明
三井物産プラスチック4月20日付で全荷姿+10円/Lの価格改定を実施。相次いだ価格改定の最初の改定
伊藤忠エネクス5月1日付で巡回給水+5円/L、BIB+7円/Lの価格改定を実施。BIBの改定幅が大きいのは、ナフサ由来の内袋の供給乱れが容器コストを押し上げたことを反映
国土交通省(金子恭之国土交通大臣)5月12日の第7回中東情勢関係閣僚会議で「前年同月同量」要請とBIB容器問題への対応を表明。ポリ容器メーカー・卸小売業者への働きかけを開始
農林水産省(鈴木憲和農林水産大臣)4月28日に3月の尿素輸入通関価格1トン93,070円(前月比+17.5%)を発表し、「中東情勢の影響が反映されている」との見解。5月27日にマレーシアを訪問し、ペトロナスとの尿素・ナフサ・原油の安定供給確約を確認
経済産業省(赤澤経産大臣)4月13日付で180社・70団体宛に「出荷抑制の是正」要請を発出。国家備蓄石油20日分の追加放出も併せて実施
資源エネルギー庁6月5日に「潤滑油の発注適正化」を公表し、アドブルーを含むナフサ由来品の政策を整理

Pupuk Indonesia(インドネシア国営肥料公社)

2026年輸出戦略と豪州向け初出荷

  • 2026年生産目標:780万トン
  • 国内需要:630万トン
  • 輸出余剰:150万トン規模
  • 2026年度輸出ライセンス:140万トン(Argus Media 2026年1月15日)
  • 豪州向け初出荷:Pupuk Kaltim 47,250トン(約3,800万ドル、5月14日ボンタン港船出、6月22日ブリスベン到着)
  • 確保競争6カ国:日本・韓国・インド・フィリピン・ブラジル・豪州
  • 地政学的優位:マラッカ海峡以東で生産・出荷されるためホルムズ海峡封鎖の影響を受けません

当社が扱うPupuk Indonesia製の尿素

当社は2026年7月から、Pupuk Indonesiaグループ製の工業用尿素(製品名 nitrea)を扱っています。窒素46.0%以上、ビウレット0.5%以下で、固結防止剤は使っていません。国内倉庫の在庫から1週間から10日程度で出荷しています。用途別のご案内は次のとおりです。

CHAPTER 08これからの見方(2026年9月時点)と6つの備え

見通しは2026年7月時点でまとめたもので、7月12日のホルムズ海峡再閉鎖を踏まえています。9月までに分かった事実(第3章)を短期の欄に書き加えました。新しい予測は加えていません。

見通しの3段階(2026年9月時点)

段階期間焦点
短期:第2波の実務対応期〜2026年10月7月時点では、再閉鎖の影響が9〜10月の価格・調達に表れる段階と見ていました。9月時点では、世界銀行の月平均は8月390.0ドル/トンと下がった一方、別の指標である中東の粒状尿素(FOB)は、8月14日の週の約375ドル/トンから9月22日には約470〜480ドル/トン(IFDC)に上がり、ホルムズ海峡経由の肥料出荷は事実上止まっています。国内メーカーの追加の価格改定は、当社の調査範囲では確認できていません
中期:代替経路の定着期2026年11月〜2027年6月Pupuk Indonesiaを中心とする代替経路が本格運用される段階。6カ国の確保競争の中での日本の調達状況が焦点。世銀の通年シナリオ(肥料+31%・尿素+60%)が指摘される高リスクの時期
長期:構造転換期2027年下期以降ディーゼル車のEV/水素シフトによるアドブルー需要の長期的な縮小、SCR触媒の技術進化、グリーンアンモニアの展開などの構造変化。ただし2020年代後半までは大型トラック・バスのディーゼル継続が主流の見通しで、アドブルー需要は当面続く見通し

見ておきたい5つの指標

番号指標見るもの・基準
01尿素国際価格世銀月次・Trading Economics日次。500ドル/t超で警戒、700ドル/t超で緊急対応検討
02農水省輸入通関価格月次発表。前月比+10%超で川下への価格転嫁が本格化する目安
03中東情勢閣僚会議開催頻度と議題。アドブルーの個別議題化は実務対応の政策シグナル
04Pupuk輸出動向Argus Media・現地紙。次の出荷先国と数量が代替経路の実装度を示す
05BIB内袋供給LOGISTICS TODAY・現場報告。GS・カー用品店の販売可否(海老名SAのような事例)が末端の指標

事業者ができる6つの備え

  1. 既存取引先との関係維持を最優先:割当通知には24〜48時間以内に確定発注
  2. BIB内袋供給の乱れを考慮した安全在庫確保:1〜2ヶ月分の目安
  3. 第2サプライヤーの並行確保:国内メーカー品+商社経由
  4. 価格スライド条項の顧客契約への組み込み:国際情勢変化への即応
  5. 複数納品形態の並行確保:バルクローリー・BIB・キュービテナー
  6. 買い占め型発注抑制:国交省「前年同月同量」要請への協力

CHAPTER 09用語集(13項目)

このまとめで使う主な業界用語・技術用語・機関名を13項目にまとめました。

アドブルー(AdBlue)
ドイツ自動車工業会(VDA)の登録商標です。ISO 22241規格に合った尿素32.5%と純水67.5%の混合液で、SCRを積んだディーゼル車の排ガス浄化に使います。DEF(Diesel Exhaust Fluid)とも呼ばれます。
SCR(Selective Catalytic Reduction)
選択触媒還元の略です。ディーゼル排ガス中の窒素酸化物(NOx)に、アドブルーから生じるアンモニアを反応させ、無害な窒素と水に変える後処理装置で、大型ディーゼル車には欠かせません。
NOx(窒素酸化物)
Nitrogen Oxides の略です。ディーゼルエンジンの高温の燃焼で生じる大気汚染物質で、光化学スモッグや酸性雨の原因になります。SCR触媒で処理する対象です。
BIB(バッグインボックス)
Bag-in-Box の略です。段ボールの外箱にポリエチレンの内袋とノズルを組み合わせた小口容器で、アドブルーの10L・20Lの小売では主流です。内袋のポリエチレンはナフサ由来のため、ナフサ価格の影響を受けます。
LLDPE/LDPE
Linear Low-Density Polyethylene(線状低密度ポリエチレン)/Low-Density Polyethylene(低密度ポリエチレン)です。BIB内袋の主な材料で、ナフサからつくるため、ナフサ価格の上昇が容器コストの上昇に直結します。
Pupuk Indonesia
インドネシアの国営肥料公社です。傘下のPupuk Kaltimなどを通じて尿素を製造・輸出しています。2026年度140万トンの輸出ライセンスを認められ、5月14日に豪州向け47,250トンを初めて出荷しました。日本の代わりの調達先として注目されています。
ペトロナス(Petronas)
マレーシアの国営石油ガス会社です。子会社のPC Fertilizer Kedahなどを通じて尿素を製造しています。日本の肥料用尿素の輸入の74%を占め、鈴木憲和農相の5月27日の訪問で安定供給の確約が確認されました。
キュービテナー
1,000L超の大型の液体容器です。大規模な運送会社や大規模GSなど、アドブルーの中口・大口の需要に使われます。BIBのような小口容器の供給の乱れの影響を受けにくい形です。
バルクローリー
タンク車のことです。液体をタンクで運び、使う側の受入タンクに直接注ぎ込みます。アドブルーの大口需要向けで、GSなどの店頭設備に大量に供給するときに使い、容器のコストがかかりません。
前年同月同量要請
金子国交相が2026年5月12日の第7回中東情勢関係閣僚会議で表明した要請です。前年の同じ月の発注量を目安に発注してもらうことで、品薄を見越した先回りの発注を抑え、流通の途中の目詰まりをほぐすことを目的としています。
ホルムズ海峡(Strait of Hormuz)
ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ海峡です。世界の原油輸送の約20%、LNGの約30%が通る要所で、2026年3月・7月にIRGC(イラン革命防衛隊)による封鎖・再閉鎖が起き、原油・尿素・ナフサなどの国際価格が大きく動きました。
ISO 22241
アドブルー(DEF)の国際規格です。尿素濃度32.5%±0.7%、密度、屈折率、pH、金属不純物などを定めています。規格外の製品を使うとSCR触媒の破損を招きます。国内4大メーカーはすべてこの規格に準拠しています。
FOB(本船渡し)
積み出し港で船に積むまでの価格です。海上運賃や保険料は含みません。第3章の中東の粒状尿素の相場は、この条件の価格です。
出典・エビデンス一覧27件(公的機関10・報道や企業17)
出典

このまとめと関連記事で使った主な情報源を、政府・公的機関、業界団体・専門メディア、国際機関・データ集計元の3つに分けて示します。

Group 01 ── 政府・公的機関
  • 国土交通省|第7回中東情勢に関する関係閣僚会議 議事要点(2026年5月12日)
  • 農林水産省|肥料の価格情報/尿素輸入通関価格月次統計(2026年4月28日発表分ほか)
  • 農林水産省|肥料の価格情報(財務省通関実績ベース、2026年9月3日更新)
  • 経済産業省|180社・70団体宛「出荷抑制の是正」要請(2026年4月13日付)
  • 資源エネルギー庁|潤滑油の発注適正化(2026年6月5日公表)
  • 内閣官房|中東情勢に関する関係閣僚会議 第1〜第11回議事概要(2026年3月24日〜6月26日)
  • 首相官邸|高市総理「代替調達5月約6割確保」「全量ホルムズ外調達」達成表明(2026年4月24日・6月11日)
Group 02 ── 業界団体・専門メディア
  • 石油化学工業協会|3月エチレン稼働率68.6%発表(2026年4月15日)
  • トラックニュース|国内4大メーカー取材記事(2026年5月22日)
  • LOGISTICS TODAY|BIB内袋不足・海老名SA販売中止再表明報道(2026年4月20日ほか)
  • テレビ朝日|バナナ7月供給停止通知・浜中/橋本執行役員インタビュー放映(2026年5月5日)
  • 三井物産プラスチック|価格改定通知書(2026年4月20日実施)
  • 伊藤忠エネクス|価格改定通知書(2026年5月1日実施)
  • 新日本化成|価格改定通知書(2026年6月1日実施)
  • 三井化学・新日本化成・伊藤忠エネクス|公表ページ(2026年7〜9月の新しい発表の有無を当社が確認)
  • モノタロウ・アスクル|アドブルーの商品ページ(2026年9月29日に当社が閲覧)
Group 03 ── 国際機関・データ集計元・規格
  • 世界銀行|Commodity Markets Outlook・尿素国際価格月次集計(2026年5月5日ほか)
  • 世界銀行|Commodity Price Data (The Pink Sheet) 2026年6月・8月・9月号(Urea, E. Europe の月平均)
  • Trading Economics|尿素国際価格日次データ(2026年5月8日・6月26日・9月28日ほか)
  • Australian Fertilizer Corporation|週報(2026年8月14日の週・8月28日の週)
  • IFDC|Fertilizer Crisis Response Bulletin #30(2026年9月22日)
  • VDA(ドイツ自動車工業会)|AdBlue(凍結と解凍後の使用)
  • BASF|AdBlue(保管温度と品質の期間)
  • Argus Media|Pupuk Indonesia 2026年度輸出ライセンス140万トン承認(2026年1月15日)
  • JPモルガン|ペルシャ湾地域の尿素・アンモニア輸出シェア試算
  • Bloomberg/Reuters(日本語版)|ホルムズ海峡封鎖・再閉鎖関連速報
  • インドネシア現地紙|Pupuk Kaltim豪州向け47,250トン初出荷報道(2026年5月14日)

CHAPTER 11よくある質問(8問)

よくある質問を8問にまとめました。

2026年のアドブルー供給問題の全体像を教えてください

2026年3月のホルムズ海峡封鎖のあと、尿素の国際価格が急に上がり、日本のアドブルー市場は「値段」「入手」「容器」の3つの困りごとを同時に抱えました。5月8日時点の尿素国際価格は547.50ドル/トン(Trading Economics)で、前月比21.9%下がったものの、前年比では+15.14%と高い水準でした。5月12日の第7回中東情勢関係閣僚会議では、金子国交相が「前年同月同量」要請とBIB容器問題への対応を初めて正式に表明しました。国内4大メーカー(三井化学・新日本化成・日産化学・三菱ケミカル)は5月22日時点でフル稼働を続けており、この時点で「最悪期は通過した」との認識が共有されていました。8月〜9月の動きは第3章にまとめています。

国内アドブルーメーカーの供給体制はどうなっていますか

国内4大メーカー(三井化学・新日本化成・日産化学・三菱ケミカル)は、2026年5月22日のトラックニュースの取材に全社が「フル稼働で供給確保」と答えました。三井化学は大阪工場(生産能力36万トン/年)など国内5拠点で年間11万kLのアドブルーを製造しており、日本全体の需要(推計50万〜60万kL)の約2割強にあたります。4社合計の生産能力は、日本全体の需要をほぼまかなえる水準です。ただし値上げは3社で続き、三井物産プラスチック+10円/L(4月20日)、伊藤忠エネクス+5〜7円/L(5月1日)、新日本化成+8円/L(6月1日)と、原料尿素の値上がり分が価格に上乗せされました。2026年7〜9月の新しい価格改定・供給の発表は、当社の調査範囲(三井化学・新日本化成・伊藤忠エネクスの公表ページ)では確認できていません。

Pupuk Indonesia(インドネシア)からの尿素調達はどう進んでいますか

インドネシア政府は国営肥料公社Pupuk Indonesiaに、2026年度140万トンの尿素輸出ライセンスを認めています(Argus Media 2026年1月15日)。2026年5月14日にはPupuk Kaltimから豪州向けの初回出荷47,250トン(約3,800万ドル)が東カリマンタンのボンタン港を出て、6月22日にブリスベンに着きました。Pupuk Indonesiaは2026年の生産目標780万トン・国内需要630万トン・輸出余剰150万トン規模で、マラッカ海峡より東で生産・出荷するため、ホルムズ海峡封鎖の影響を受けません。日本・韓国・インド・フィリピン・ブラジル・豪州の6カ国が確保を競っています。

BIB容器問題とは何ですか

BIB(バッグインボックス)は、アドブルーの10L・20Lの小売に使われる箱入りの袋容器で、内袋はポリエチレン(LLDPE/LDPE)製です。ナフサ由来の石油化学品のため、ホルムズ海峡封鎖でナフサ価格が急に上がった影響をそのまま受けました。LOGISTICS TODAY(2026年4月20日報道)によると、複数の販売事業者がBIB内袋の不足で新規受注を止め、東名高速・海老名SA(下り)のGSは4月24日に販売を再開した2日後に、在庫切れで販売中止を再び表明しました。金子国交相は5月12日の第7回中東情勢関係閣僚会議でこの容器問題への対応を正式に表明し、ポリ容器メーカーや卸・小売業者への働きかけを始めました。2026年9月29日に当社が通販サイトを見た範囲では、小口の容器入りのアドブルーは買いにくい状態が続いています。

日本の尿素輸入構造と農業・肥料への影響は?

農林水産省の2026年3月時点の統計では、肥料用尿素の輸入先はマレーシア74%・ベトナム10%・サウジアラビア約5%です。これは肥料用の統計で、アドブルーの原料になる工業用尿素の内訳とは違う点にご注意ください。以前は大半を中東・北アフリカ産に頼っていましたが、近年は東南アジア産への切り替えが少しずつ進んでいます。ただし尿素は世界市場で取引される国際商品のため、中東からの供給が滞ると世界中の買い手が代わりの調達に動き、アジア産にも値上がりの圧力がかかります。農水省は4月28日に、3月の尿素輸入通関価格が1トン93,070円(前月比+17.5%)で「中東情勢の影響が反映されている」との見方を示しました。その後の輸入通関価格は、5月の141.4千円/トンから7月の96.3千円/トンに下がっています(農水省、9月3日更新)。世界銀行は、中東の混乱が長引く場合、2026年の肥料価格は31%、尿素は60%上がる可能性があると指摘しています。

2026年9月時点で、尿素の値段はどうなっていますか

見る指標によって動きが違います。世界銀行の月平均(Urea, E. Europe)は、4月856.9ドル/トン、6月453.1ドル/トン、8月390.0ドル/トンと下がりました。一方、中東の粒状尿素のFOB価格(積み出し港で船に積むまでの価格)は、8月14日の週に約375ドル/トン(Australian Fertilizer Corporation)でしたが、9月22日には約470〜480ドル/トン(IFDC)に上がり、ホルムズ海峡経由の肥料出荷は事実上止まっています。Trading Economicsの尿素は、9月28日に457.00ドル/トン(前月比+4.10%)です。原料の天然ガスは、欧州の価格が7月の18.06ドルから8月の21.11ドル/mmbtuに上がりました(世界銀行)。詳しくは第3章をご覧ください。

事業者として2026年下期にできる対応は?

①既存の取引先との関係を最優先し、割当通知には24〜48時間以内に確定発注する、②BIB内袋の供給の乱れを考えて1〜2ヶ月分の安全在庫を検討する、③国内メーカー品と商社経由の第2の仕入れ先を並行して確保する、④国際情勢の変化に応じた価格スライド条項を顧客との契約に入れる、⑤バルクローリー・BIB・キュービテナーなど複数の納品形態を並行して確保し、容器のリスクを分散する、⑥国交省の「前年同月同量」要請を踏まえて買い占めのような発注を控え、業界全体の目詰まりをほぐすことに協力する、の6点が実務の優先事項です。7月12日のホルムズ海峡再閉鎖のあと、9月22日時点でもホルムズ海峡経由の肥料出荷は事実上止まっており(IFDC)、引き続き動きを見ておく必要があります。

なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか

当社(プラスチックパレット株式会社、千葉県我孫子市)は物流資材の専門商社として、プラスチックパレット・折コン・PPバンド・ストレッチフィルム・再生プラスチック原料などを全国に卸値で販売しています。物流資材の取扱いを通じて運送会社・製造業の方と日々やりとりしており、アドブルー供給問題が現場にどう響いているかを身近に知る立場にあります。加えて2026年7月から、Pupuk Indonesia(インドネシア国営肥料公社)グループ製の工業用尿素を扱い、国内倉庫の在庫から供給しています。この記事は、物流の当事者であり原材料の供給者でもある立場から、2026年の尿素・アドブルーの動きを整理し、事業者の判断に役立てていただくことを目的としています。

CHAPTER 12この記事について

本記事は【イラン情勢2026完全まとめ】の尿素・アドブルー編で、尿素からアドブルーまでの流れに絞って掘り下げたものです。第3章と第8章の短期の見通しは2026年9月29日に当社が確認した資料により、そのほかの章の数値・日付は、主に2026年7月18日時点までの公開情報・一次資料によります。市況・政策・企業の動きはその後も変わるため、実務の判断に使うときは最新の情報をご確認ください。

当社は物流資材の専門商社として、運送会社・製造業の方とのやりとりを通じてアドブルー供給問題の現場への影響を集めており、2026年7月からはPupuk Indonesiaグループ製の工業用尿素も扱っています。本記事は業界の動きを整理したもので、特定の投資・調達・政策の判断をすすめるものではありません。各記事の紹介文は概要ですので、詳しい内容は各記事の本文をご覧ください。

文:プラスチックパレット株式会社 編集部

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