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アドブルーの品薄はいつまでか、尿素価格の3局面と容器不足という第二の原因
SPECIAL REPORT ── 緊急経済レポート
2026年8月7日更新版

アドブルーの品薄はいつまでか、尿素価格の3局面と容器不足という第二の原因

— 5〜6月「最悪期通過」から7月12日IRGC再閉鎖宣言・米空爆140目標へ —
公開 / 最終更新
⚠ 新展開(2026年7月12日) ── IRGC(イラン革命防衛隊)はホルムズ海峡を「追って通知があるまで」再閉鎖と宣言し、米中央軍はイランのミサイル基地など140目標を空爆。5月8日547.50ドル→6月26日366.50ドル/トンへ大幅反落した尿素価格に対し、再閉鎖後の再上昇圧力が発生。5〜6月の「最悪期の通過」局面から一転、7月はBIB容器リスク再燃の可能性も浮上している。
【結論】

2026年7月12日、IRGCがホルムズ海峡再閉鎖を宣言し米中央軍が140目標を空爆。尿素価格は5月547.50ドル→6月26日366.50ドル/トン(-22%)と反落し主要4社「フル稼働・供給確保」で最悪期通過を確認したが、再閉鎖で再上昇圧力が発生赤澤経産大臣主催タスクフォースを軸とする政府対応と並行し、調達源多元化とBIB容器複線化が事業者の要となる。

📌 2026年8月7日 更新 ── 前回(7月22日)からの変更点

1. 日本の通関実績で3局面を検証した。農林水産省の公表値により、尿素の輸入価格は5月に141.4千円/t(前年同月比+106.7%)のピークをつけ、6月に15.3%下がったことが確認できた。国際スポットのピークは3月末〜4月であり、日本の仕入れ値との間には1〜2か月のずれがある。▶ 詳しく見る

2. 川下への波及が6月に始まった。肥料の物価指数が5月143.4から6月146.3へ2.9ポイント上昇。通関価格の上昇開始から小売段階に届くまで約3か月かかっている。▶ 詳しく見る

3. 容器側のナフサは8月に入って下落した。7月24日982ドルから8月6日782ドルへ20.4%下落し、7月の反発分の56%を戻した。液体と容器が逆方向を向いている。▶ 詳しく見る

4. 一部メーカー品が入手できない状態にある。8月6日時点で三井化学品が「欠品中」、日星産業品が「取扱停止中」と表示されていた(モノタロウ)。第3章で扱った国内4社体制に関わる動きである。▶ 第3章を見る

CHAPTER 1 ── INTERNATIONAL MARKET

1. 国際相場の3局面変転と7月ホルムズ再閉鎖

2026年のアドブルー原料尿素相場は、3月から7月にかけて大きく3つの局面を経過した。3〜4月の急騰、5〜6月の反落、そして7月12日以降の再上昇圧力への転換である。国際尿素FOB Middle East先物と各種現物指標を追跡すると、価格レンジは4月ピーク時800ドル/トン近傍から6月26日366.50ドル/トンまで急落した後、7月中旬に再び上昇局面へ入った。

4月ピーク
800USD/t
3〜4月急騰局面
5月8日
547.50
Trading Economics確認値
6月26日底値
366.50
前月比 -22%
7月12日以降
上昇
再閉鎖リスク再燃

第1局面:3〜4月急騰 ── イラン・イスラエル衝突と海峡緊張

3月10日以降のイラン・イスラエル軍事衝突と、それに続く3月14日〜4月上旬のホルムズ海峡通航制限リスクの高まりを背景に、国際尿素相場は3月14日750ドル/トンから4月ピーク800ドル台へ上昇した。日テレNEWS NNN 3月27日報道(鈴木農林水産大臣会見)は「国際取引価格1.5倍」と報じ、農水省「肥料の価格情報」もマレーシア・ベトナム・サウジアラビア発FOB価格の同時上昇を確認した。日本のアドブルー用尿素輸入はマレーシア74%・ベトナム10%・サウジアラビア5%と中東・東南アジア発の集中依存構造で、この局面の上昇分は国内価格へ2〜4カ月遅れで反映される見通しとなった。

第2局面:5〜6月反落 ── 代替調達進展と中国の国内供給優先政策

5月に入り、複数のポジティブ材料が同時に効いてきた。Trading Economicsは5月8日時点で547.50ドル/トン(過去1カ月で-21.90%)を確認し、国際相場は下落局面に転じた。要因は以下の複合である。

要因1:インドネシアPupuk Indonesiaの供給拡大。Pupuk Kaltimが5月14日にボンタン港から豪州向け47,250トンの初回出荷を実行し(Liputan6・Bisnis Indonesia報道)、東南アジア発の新規輸出フローが具体化した。国内在庫は5月13日時点で110万トン、日産2.5万トン尿素・1.5万トンNPKの安定体制を維持した。

要因2:中国の国内供給優先政策継続。中国税関総署は3月14日〜8月31日にリン肥料等の輸出停止を継続し、3月16日〜4月30日に10kg以下小包装尿素輸出を停止した。2026年通年の輸出配額は330万トン(前年489万トンから縮減)で、国内価格を意図的に低位維持する政策バイアスが機能した。

要因3:日本国内の需要正常化。4月の駆け込み発注反動で川中4月出荷が前年同月比半減した後、5月以降の発注ペースは正常化に向かった。国交省「前年同月同量」要請(5月12日)が浸透し、投機的発注が抑制された。

6月26日にはTrading Economicsで366.50ドル/トンまで下落し、前月比マイナス22.02%、平時水準へ大幅反落した。5月547→6月366ドルの-33%の急落は、3〜4月急騰の反動としては教科書的な調整幅である。

第3局面:7月12日IRGCホルムズ再閉鎖 ── 相場再上昇へ

2026年7月12日、事態は再び逆転した。イラン革命防衛隊(IRGC)はホルムズ海峡の再閉鎖を宣言し、承認されていないルートを航行した船舶に警告射撃を実施した後、「米国の介入が終了するまで、いかなる船舶の通過も認められない」と発表した(AFP・CNN・日本経済新聞7月12日報道)。同時期に米中央軍はイランのミサイル基地など140の目標を空爆した。ヘグセス米国防長官はSNSで攻撃実行を確認し、原油ブレントは一時4%高で反応した。

再閉鎖の物理的影響として、Kplerデータは以下を確認している。

7月12日以降のホルムズ通航実態(Kplerデータ・共同通信)

LNG船通航:7月11日以降ゼロ(6月40隻から急減)。

タンカー通航:7月12日にわずか6隻(5週間ぶり最少・Kplerデータ)。

原油ブレント:79ドル前後で高止まり。

カタール船攻撃:7月7日、国営Nakilat所有LNG船Al Rekayyatがオマーン・リマ沖で被弾(紛争開始以来カタール船初攻撃)。

日本関係船舶:7月14日、共同通信報道によれば日本関係船舶の原油タンカー12隻すべてがホルムズ海峡を通過してペルシャ湾外へ退出完了。商船三井系のタンカーなどが通過、日本に向かって航行中の船もある。湾内残存は原油タンカー以外の日本関係船舶4隻に減少。

この第3局面は、アドブルー原料の国際尿素相場にも波及圧力を発生させた。マレーシア産尿素の物流経路自体は中東発ではないが、Petronas系工場が使用する国内ガス田価格は国際LNGスポット(Platts JKM等)と機会費用ベースで連動している。ホルムズ再閉鎖でLNGスポットが跳ねれば、その圧力がマレーシア尿素FOB価格に伝播する構造は変わらない。「6月に平時水準まで戻ったから安心」という短期の楽観はここで揺らいだ。

同時に注視すべきは、6月17日イスラマバード覚書(G7中トランプ・ペゼシュキアン間で署名、30日以内機雷除去・60日間無料通航)が、7月12日の再閉鎖で事実上崩壊したことである。制度枠組みでの安定化が試みられていた矢先の逆転で、7月17日OFAC制裁期限・8月中旬60日無料通航期限といったガバナンス上のマイルストーンの意味合いも変化した。国際尿素相場は6月366ドル底値からの反転上昇局面に入り、8月以降の国内価格反映が新たな警戒対象となっている。

UPDATE ── 2026.08.07

【8月7日追記】通関実績で検証する3局面 ── スポット相場と日本の仕入れ値は何か月ずれるのか

本追記は2026年8月7日時点の情報です。本記事の第1章では国際スポット相場(Trading Economics・investing.com)で3局面を整理しました。ここでは日本が実際に支払った価格、すなわち財務省「貿易統計」に基づく通関実績で同じ期間を検証します。スポット相場と通関価格には何か月のずれがあるのか。これは調達計画の精度に直結する論点です。

通関価格で見た2026年 ── ピークは5月だった

農林水産省「肥料の価格情報」は、財務省「貿易統計」に基づく尿素の通関価格を毎月公表している。2026年8月3日更新の最新分により、6月までの実績が確認できる。

通関価格前月比前年同月比同時期の国際スポット
2026年1月77.3千円/t+3.9%平常水準
2月79.2千円/t+2.5%+3.5%2月28日に情勢が急変
3月93.1千円/t+17.6%+22.7%3月14日750ドル前後から急騰
4月129.7千円/t+39.3%+81.7%スポットのピーク(800ドル台)
5月141.4千円/t+9.0%+106.7%通関のピーク/スポットは5月8日547.50ドルへ低下
6月119.7千円/t-15.3%+71.7%6月26日366.50ドルまで反落

出典:農林水産省「肥料の価格情報」(通関実績は2026年8月3日更新、原データは財務省「貿易統計」)。1千円/tは1kgあたり1円にあたる。前月比・前年同月比は当方で計算した。国際スポットの数値は本記事第1章に記載したもの。

📌 ずれは1〜2か月 ── ただし方向ではなく水準がずれる

国際スポットのピークは3月末から4月、通関価格のピークは5月である。スポットが5月8日に547.50ドルまで下がっていた時点で、日本の通関価格は141.4千円/tという年内最高値をつけていた。

これは契約から着荷・通関までのリードタイムによるものである。スポットが下がった月に日本の仕入れ値がまだ上がっているという状態は、構造上ふつうに起きる。「国際価格は下がっているのに、なぜ仕入れ値が上がるのか」という取引先からの問いには、この時差で説明がつく。

同じ論理を先に進めれば、7月にスポットが403.50ドルへ反発した分は、8月以降の通関価格に現れることになる。6月の-15.3%を根拠に「底を打った」と判断するのは早い。

4〜6月の価格改定は、通関実績と整合していた

本記事の第3章で扱った3社の価格改定(三井物産プラスチック+10円/L、伊藤忠エネクス巡回+5円/L・BIB+7円/L、新日本化成+8円/L)は、いずれも4〜6月の実施である。通関価格が4月129.7・5月141.4と最も高い水準にあった時期と重なる。

アドブルーはISO 22241規格で尿素32.5%と定められているため、通関価格から原料尿素分を計算できる。20L 1箱には約7.09kgの尿素が含まれる(20L×密度1.09kg/L=21.8kg、うち32.5%)。これに通関価格を乗じると、1月の約548円が5月には約1,002円へ、1箱あたり約454円増えたことになる。20L換算での価格改定幅(+5〜10円/L=+100〜200円)は、この原料増加分の一部を反映した水準である。

当方計算。密度はISO 22241-1に定める範囲の中央値を用いた。原料尿素の輸入価格相当分のみの計算であり、製造費・容器費・充填費・物流費・販売経費は含まない。各社の改定根拠を示すものではなく、原料変動の規模を把握するための目安である。

川下への波及は6月に始まっている

同じ農林水産省の公表資料には、農業物価統計調査に基づく肥料の物価指数も掲載されている(2026年8月4日更新)。こちらは小売段階の指数である。

肥料の物価指数(令和2年=100)前月差
2026年1〜4月143.1〜143.4ほぼ横ばい
5月143.4±0
6月146.3+2.9ポイント

出典:農林水産省「肥料の価格情報」掲載の農業物価統計調査(2026年8月4日更新)。前年同月(2025年6月139.9)比では+4.6%にあたる。前月差・前年同月比は当方で計算した。

1月から5月まで143台で動かなかった指数が、6月に146.3へ動いた。通関価格の上昇が始まってから、小売段階の指数が動くまでに約3か月かかっていることになる。通関価格が下がった6月に小売指数が上がるという、方向が逆に見える現象も、この時差で説明できる。

容器側 ── ナフサは8月に入って反発分の過半を戻した

本記事の第3章3.3で整理したとおり、BIB内袋のポリエチレンはナフサ由来であり、液体の供給が回復しても容器が確保できなければ販売できない。そのナフサに8月上旬、明確な変化が出ている。

時点輸入ナフサCIF為替国産ナフサ価格指標
2026年6月25日627ドル/t
7月24日982ドル/t163.32円113,464円/kL
8月6日782ドル/t157.73円87,725円/kL

6月25日・7月24日の数値は当社「ナフサ価格推移2026完全まとめ」に記録した値、8月6日現在の数値は大景化学「ナフサ価格推移表」(原典は財務省「貿易統計」)による。変化率は当方で計算した。

7月24日から8月6日にかけて、輸入CIFは20.4%下落、為替も163.32円から157.73円へ5.59円の円高となった。両者が同方向に働いた結果、国産ナフサ価格指標は22.7%下落している。7月12日のホルムズ再閉鎖で生じた反発(6月25日627ドル→7月24日982ドル、+57%)のうち、およそ56%を8月上旬までに戻した計算である。

⚠ 液体と容器は同じ方向に動くとは限らない

2026年8月時点で確認できる状態を整理すると、尿素は7月の国際反発が8月以降の通関に現れる局面にあり、ナフサは8月に入って下落した局面にある。この2つは同時に逆方向を向いている。

本記事が一貫して指摘してきたのは「液体の供給が戻っても容器で止まる」という二層構造だが、価格面でも同じ二層で見る必要がある。片方だけを見て調達判断を下すと読み違える。

本記事の提言に照らした、8月時点の位置づけ

第6章で示した提言の中核は、「危機時に発動する予備契約ではワークしない、平時から一定比率で継続購入して商流を生きた状態で維持する」という点にあった。2026年の推移は、この主張を裏づける形になっている。

1月から8月までの8か月で、尿素の国際相場は急騰・反落・再上昇・再下落と4回向きを変えた。この期間に調達先を切り替えようとした事業者は、そのたびに判断を迫られたことになる。一方、複数の調達源を平時から動かしていた事業者は、どの局面でも調達自体は継続できている。相場を当てにいく戦略と、経路を複線化する戦略は別のものである。

📌 当社の尿素調達窓口について

本記事の7月22日追記でお知らせしたとおり、当社は提言の実践としてインドネシア産の高品位尿素(Pupuk Indonesiaグループ製造・nitrea・窒素46%)の調達窓口を開設している。マラッカ海峡以東で生産・出荷されるため、ホルムズ海峡の通航リスクを構造的に受けにくい点が、本記事第2章で最有力候補として位置づけた根拠である。

本追記で確認したとおり、日本の尿素通関価格は2026年に入って前年同月比で一時2倍以上まで動いた。アドブルーを自社で製造・調合される事業者、冷却用・工業用途で尿素を調達される事業者にとって、調達経路の複線化は相場判断より優先度の高い論点である。ロット数・用途・納入先をお知らせいただければ、最短でお見積りする。

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CHAPTER 2 ── PROCUREMENT DIVERSIFICATION

2. 代替調達 ── マレーシア74%依存脱却とインドネシア軸

3月27日の鈴木農林水産大臣会見によれば、日本のアドブルー用尿素輸入はマレーシア74%・ベトナム10%・サウジアラビア5%・その他11%と、東南アジア1カ国への集中依存が突出している。この構造は、2021年の中国輸出制限「尿素ショック」で「脱・中国」に成功した反面、新たに「マレーシアPetronas1社集中」という単一供給源リスクを生み出した。7月12日のホルムズ再閉鎖はこの構造を再び揺さぶり、原油・ナフサ・LNG分野で進んだ中東依存低減を、尿素・アドブルー分野でも進める必要性を突きつけている。

2.1 マレーシアPetronas依存の脆弱性

日本のアドブルー用尿素輸入の中核は、Petronas Chemicals Group(PCG)が運営するSAMUR尿素工場(サバ州、年産120万トン)とBintulu尿素工場(サラワク州)である。両工場は天然ガス供給を国内ガス田に依存する気頭尿素で、東南アジア域内最大規模の安定供給源として日本・韓国・オーストラリア向け輸出の要となってきた。

この構造の脆弱性は、Argus Media 2026年1月15日レポートが端的に指摘している。Petronas系の尿素は大半がtake-or-pay長期契約で押さえられており、スポット余力は極めて限定的である。平常時にも供給硬直性が高く、緊急時のスポット追加調達が事実上不可能である。ホルムズ海峡再閉鎖のような外的ショックで日本国内需要が急増しても、既存契約を上回る追加供給を短期に確保する経路がない。5〜6月のBIB容器ひっ迫と海老名SAの48時間はその帰結として現れた現象である。

マレーシア依存比率
74%
日本アドブルー原料
SAMUR工場能力
120万t/年
Petronas・サバ州
スポット余力
極小
Take-or-pay契約主体
中東依存(間接)
LNG価格連動あり

2.2 中国は代替先として不適格

「マレーシアの代替先」としてしばしば言及される中国だが、日本の恒常的な代替調達先として設計に組み込むことはできない。理由は3つある。

第一に、農業向け国内供給優先政策の恒常化。2026年通年の輸出配額330万トンは前年489万トンから縮減された。3〜4月の春の農繁期は事実上輸出停止となり、2026年1〜2月の実輸出量は41.94万トンにとどまった。

第二に、国内外価格差200%でも輸出増を認めない政策バイアス。2026年4月20日時点で湖北宜化の国内出荷価格は約1,850元/トン、国際FOB 760ドル/トン(約5,472元)で価格差200%だったが、中国窒素肥料工業協会の指導価格1,830元/トンの上限を継続、政策で意図的に輸出を絞った。

第三に、車両用尿素(アドブルー原料相当)も実質詰まり。名目上は農業用尿素の配額枠外だが、3月25日以降、中国税関総署は硫酸アンモニウム以外の大部分の化学肥料品目について新規の検査申告・通関手続きを停止した。実務レベルでは車両用尿素の輸出も細かい絞り込みを受けている。

中国は「価格差があれば動くが、政策で常時抑制されている恒常不安定サプライヤー」であり、緊急時のスポット手配のバックアップとしては意味があるが、通常運用の枠組みには乗らない。

2.3 最有力の代替調達候補:インドネシア Pupuk Indonesia社

本記事は、日本のアドブルー原料尿素の代替調達先として最も有力な候補国をインドネシアと位置付ける。中核はインドネシア国営Pupuk Indonesia社(PIHC)で、10子会社を持つアジア最大級の肥料生産グループである。グループ全体の年間生産能力は約13.9百万トン(うち尿素8.8百万トン)で、既存の主要輸入国であるマレーシア・中東・中国のいずれとも異なる地政学的位置付けを持つ。

子会社立地尿素能力特徴
Pupuk Kaltim(PKT)東カリマンタン州ボンタン3.43百万t/年5工場体制・輸出主力
Pupuk Sriwidjaja(PSP)南スマトラ州パレンバン約2.3百万t/年50年超の歴史・尿素工業のパイオニア
Pupuk Iskandar Muda(PIM)アチェ州1.14百万t/年PIM1再稼働完了・NPK 50万t併産
Pupuk Kujang西ジャワ州チカンペック約1.14百万t/年ジャワ拠点
Petrokimia Gresik東ジャワ州グレシック約0.5百万t/年NPK・リン酸系の主力
グループ計約8.8百万t/年アジア最大級

輸出動向としては、インドネシア商業省が2026年通年で140万トンの尿素輸出許可を承認済み(Argus Media 2026年1月15日)。豪州向けはPupuk Kaltimが2026年5月14日にボンタン港を出港した47,250トンを6月22日にブリスベン港に着桟させ、初回輸送を完了した(ANTARA News 6月23日)。Rahmad Pribadi総裁が現地セレモニーに出席し、インド・バングラデシュとも並行して輸出交渉を継続しているとの発表があった。

中長期でもプラボウォ大統領政権は5年間で7つの新工場をRp50兆(約US$3B、約4,700億円)投資して建設し、尿素生産能力を9.4百万トン水準に維持する方針を打ち出している(Tempo.co 2026年1月13日)。新設地は西パプア州ファクファク・パレンバン・アチェ・チカンペック・グレシック等。豪州向け輸出フローが実物として動き出している現在、日本着桟へのアレンジも技術的には容易であり、最有力の代替調達候補として位置付ける根拠が揃っている。

「Pupuk Kaltimの豪州向け47,250トン初回輸送は、東アジア・大洋州向けの新たな輸出フローが動き出したことを示す実物の証拠です。当社は今後、東南アジア域内の輸出比率を計画的に高めていきます」

── Rahmad Pribadi Pupuk Indonesia総裁(6月22日ブリスベン港セレモニーでの発言、ANTARA News報道)

2.4 その他の代替調達候補国 ── ブルネイ・ナイジェリア・カナダ

インドネシアを最有力候補とした上で、既存輸入ルート(マレーシア・中国・中東)とは異なる地政学・物流ルートを持つ3カ国を追加の代替調達候補として提示する。各国の生産能力・輸出戦略・日本への物流実現性を整理する。

2.4.1 ブルネイ ── Brunei Fertilizer Industries(BFI)

ブルネイ・ダルサラーム国営のBrunei Fertilizer Industries(BFI)は、ベライト地区スンガイ・リアン産業団地(SPARK)に立地する、東南アジア最大級の単一train肥料工場を運営する。年産136.5万トンのグラニュール尿素能力を持ち、2022年1月に商業運転を開始した。ドイツthyssenkrupp AG産業ソリューションが約US$1.8Bで建設し、原料は自国産天然ガス、専用輸出埠頭「BFI Terminal」を保有する。CEOはDr. Harri Kiiski氏(2022年就任)。

特筆すべきは、BFIが既に日本を輸出先の1つとしていることである。BFIの公式発表と現地媒体Biz Bruneiの報道によれば、操業開始以降63.1万トンを生産し、55.6万トンを米国・豪州・日本・マレーシアを含む14カ国に輸出している(累計輸出額US$322M)。Argus Media 2026年1月15日レポートでも「Southeast Asiaのgranular urea supplier」として明示的に言及されており、既存の日本向け輸出ルートを拡張することで、追加調達枠の確保が現実的に可能である。物流面では、中東からの14〜30日に対し、ブルネイ〜東南アジア域内は2〜4日で到達可能という圧倒的な物流優位性を持つ(BFI CEOインタビュー、Invest.gov.bn 2024年)。日本向けも中東経由品より短納期での調達が期待できる。

2.4.2 ナイジェリア ── Dangote Fertiliser/Indorama Eleme

ナイジェリアは近年、アフリカ最大の尿素輸出拠点として急速に成長している。2つの世界規模の尿素工場が稼働している:

  • Dangote Fertiliser Limited:ラゴス州イベジュ・レキで$2.5B投資、500ヘクタール、アフリカ最大のグラニュール尿素工場(年産300万トン)。thyssenkrupp Uhde社のUFT技術採用。2022年開所。
  • Indorama Eleme Fertilizer & Chemicals世界最大の単一train尿素工場(日産8,000MTPD=年産280万トン)。サブサハラアフリカ最大の肥料生産者。

2026年時点で最も注目すべきは、Dangote社の急拡大投資である。2026年6月、アフリカ金融公社(AFC)が$600M融資を承認し、Nigeria工場を3→9MTPAに増設、エチオピア新工場3MTPAを建設する計画が始動した(GreenView Fertiliser Corporation経由)。Dangote社は3年で年間$4B(KES 516B)の輸出収益を見込み、thyssenkrupp UFTと4新規granulation unit契約(合計8MTPA以上へ拡張)も締結済み(World Fertilizer 2025年、Fertilizer Field 2026年)。ナイジェリア全体の尿素輸出は2017年66万トンから2024年300万トン超に急拡大した。

2026年4月、Aliko Dangote社長はイラン戦争によるアフリカ供給ひっ迫を受けて、Dangote社が緊急にアフリカ諸国への尿素輸出を拡大していると表明した(Reuters報道)。現状の主要輸出先は米国・南米・アフリカで、日本への輸出実績はほぼないが、供給能力・急拡大投資・地政学的独立性(中東紛争と物流経路が独立)から、今後の代替調達候補として大きな可能性を持つ。ラゴス港→インド洋→南シナ海→日本のルートは中東紛争と直接は競合しない。

2.4.3 カナダ ── Nutrien/CF Industries

北米は世界最大の尿素市場(グローバルシェア32%)で、カナダ・米国の大手プレーヤーが集中する。特にNutrien Ltd.(サスカチュワン州)は世界最大の肥料会社で、尿素・カリ・リン酸すべての主要供給者である。CF Industries Holdings(米国)も北米最大の窒素肥料生産者で、尿素輸出能力を保有する。

2026年7月現在、北米→アジア太平洋への尿素輸出ルート強化が具体化しつつある。Nutrienは米国ワシントン州Longviewに新たな輸出ターミナルを建設中で、インド太平洋(中国・インド・日本)向けのカリ輸出強化を掲げており(Globe and Mail 2025年11月報道)、尿素についても同ルートでの輸出拡大が期待される。カナダ・米国はG7構成国・OECD加盟国・政治安定であり、中東紛争の影響を受けないロジスティクス独立性が大きな強みである。

日本にとっての重要性は、高市総理が2026年6月11日第10回中東情勢関係閣僚会議で「新たにカナダからの輸入が決まり」「米国からは前年平月比で10倍以上が調達できる見通し」と、原油分野でカナダ・米国が代替調達先として実務化していることを表明している点にある。原油分野での政府間対話ベースが既にあることは、尿素・アドブルー分野でも同様の枠組みが構築できる政策的な下地となる。北米→太平洋航路は中東紛争と完全独立で、赤澤経済産業大臣主催のタスクフォース・POWERR Asia枠組みの中で議論する価値がある。

2.5 現実的な代替調達構造の方向性

本記事は、日本のアドブルー原料尿素の調達構造について、以下の方向性を提言する。特定サプライヤーを排除する趣旨ではなく、既存マレーシア調達を段階的に圧縮しつつ、インドネシアを最有力候補、ブルネイ・ナイジェリア・カナダを追加候補として調達源を多元化する枠組みである。具体的な配分比率は業界構造や政府方針の下で個別に決定されるべきであり、本記事では方向性のみを示す。

アドブルー用尿素の代替調達 ── 4方向の多元化

【最有力候補】インドネシア(Pupuk Indonesia社):Pupuk Kaltim・Pupuk Sriwidjaja主体で新規長期契約を締結。豪州向け輸送経路(ボンタン港→ブリスベン港)が既に稼動しており、日本着桟へのアレンジも技術的に容易。プラボウォ政権の$3B投資・7新工場計画は中長期の供給安定性を保証する。

【追加候補1】ブルネイ(BFI):既に日本輸出実績あり、東南アジア域内の物流優位(2〜4日)を活用。既存ルートの拡張で追加調達枠を確保可能。

【追加候補2】ナイジェリア(Dangote/Indorama):アフリカ最大の供給能力(現状5〜6MTPA、拡張後10MTPA以上)、中東紛争と独立した物流ルート。中長期の候補として政府間対話開始が価値ある。

【追加候補3】カナダ(Nutrien/CF Industries):政治安定・G7構成国、北米→太平洋の中東独立ルート。原油分野で既に代替調達先として実務化しており、尿素分野への横展開が期待される。

この方向性の中核は、危機時に発動する予備契約ではワークしない、平時から一定比率で継続購入して商流を生きた状態で維持する必要があるという原則である。マレーシアが天候・設備トラブルで供給を絞ればインドネシアが吸収し、インドネシア国内需要優先で輸出が絞られる局面ではブルネイ・ナイジェリア・カナダが引き受け、複数ソースの並行運用でボラティリティを緩和する構造を平時から構築する必要がある。既存のマレーシア一極集中構造から、この4方向多元化構造への段階的な移行こそが、7月12日ホルムズ再閉鎖を踏まえた日本のアドブルー原料調達戦略の中核となる。

CHAPTER 3 ── DOMESTIC MAKERS

3. 国内メーカー4社の動向と価格改定

日本のアドブルー国内生産・販売の中核を担うのは三井化学・新日本化成・日産化学・三菱ケミカルの4社である。輸入依存が74%と高い中で、国内4社の生産能力・稼働状況・価格改定動向は、日本市場全体の需給バランスを決定する重要な変数となる。7月12日ホルムズ再閉鎖後の局面で、事業者が最も注視すべき国内側の実態を整理する。

3.1 国内4社の生産体制と5月ヒアリング結果

2026年5月22日、業界紙トラックニュースが国内主要4社にヒアリングを実施した結果、4社すべてが「フル稼働・供給確保」を表明した。特に新日本化成は「5月から問い合わせが落ち着き始めた」と証言し、4月をピークとした駆け込み発注の反動が可視化された時期でもあった。

メーカー主要生産拠点5月ヒアリング時の対応
三井化学大阪工場(能力36万トン/年、国内5拠点で年間11万kL製造)フル稼働継続、供給確保表明
新日本化成高砂工場「5月から問い合わせ落ち着き」、フル稼働継続
日産化学富山工場フル稼働継続、「容器メーカーから今後出荷調整可能性」との警戒発言
三菱ケミカル水島工場フル稼働継続、供給確保表明

三井化学の大阪工場は生産能力36万トン/年で、国内5拠点で年間11万kL製造という国内需要をほぼ賄える水準にある。RIM Intelligence 2021年11月レポートは「三井物産プラスチック・日星産業の国内販売シェアは合計約4割、輸入尿素依存約6割」と分析しており、この構造は2026年時点でも維持されている。国内生産能力そのものは需要充足水準にあるが、原料尿素の6割を輸入に依存しているという点が、国際相場変動への感応度を高めている。

⚠ 2026年8月7日更新 ── 一部メーカー品が入手できない状態にある

上表は2026年5月22日のヒアリング時点の整理である。2026年8月6日時点でモノタロウを確認したところ、三井化学「アドブルー(AdBlue) 高品位尿素水」は「欠品中」と表示されていた。あわせて、三井化学AdBlueの主要販売元の一つである日星産業の「高品位尿素水 AdBlue」は「取扱停止中」となっていた。

他チャネルでの取扱状況までは確認していないため、これら2社の製品が全面的に入手不能であることを示すものではない。ただし「4社フル稼働・供給確保」という5月時点の状況が、チャネル単位ではそのまま続いているとは限らないことは押さえておく必要がある。特定メーカーを指定して調達している事業者は、代替銘柄をあらかじめ確認されたい。

出典:モノタロウ「アドブルー 20Lのおすすめ人気ランキング」(同ページに2026年8月6日更新と記載)。ページを直接参照した。

3.2 3社連鎖の価格改定 ── 4〜6月に確定

3〜4月の国際相場急騰は、想定より短い遅行期間で国内価格へ反映された。当社が直接入手した一次資料(価格改定通知書)に基づく確定情報は以下のとおりである。

2026年アドブルー価格改定 ── 3社連鎖の確定内容

第1波:三井物産プラスチック(4月20日出荷分から)「三井のAdBlue®」全荷姿で+10円/Lの値上げ。同社は三井化学・日星産業と並ぶ国内販売の主要プレーヤー。

第2波:伊藤忠エネクス(5月1日納入分から)巡回給水+5円/L、BIB(バッグ・イン・ボックス)+7円/L。BIB容器ひっ迫が価格反映の主要因。

第3波:新日本化成(6月1日納入分から)「アドブルー®」+8円/Lの値上げ。ヒアリング時期と改定タイミングが重なり、5月駆け込みが再発した経緯あり。

3社改定は、それぞれ異なるサプライチェーン層で発生した。三井物産プラスチックは商社流通層、伊藤忠エネクスは実配送・BIB容器層、新日本化成はメーカー元売り層である。3層が連鎖したことで、事業者は「どこかの層でとどまる値上げ」ではなく「全層に浸透する構造的な水準訂正」に直面した。7月12日ホルムズ再閉鎖後の再上昇圧力が発生しても、この4〜6月に確定した価格改定は取り消されない。事業者は新価格ベースでの取引継続を前提に、運賃サーチャージ体系を整備する必要がある。

📌 実際の店頭価格を知りたい方へ

本記事は「なぜ品薄になり、いつまで続くのか」という原因と見通しを扱っている。5L・10L・20L・200Lドラム・1000L IBCが現在いくらで、どのチャネルが安いのかという実売価格については、アドブルーの値段はいくらか、通販とホームセンターとスタンドの価格を容量別に全比較にチャネル別・容量別で整理している。

3.3 BIB容器ひっ迫と「容器がなければ販売できない」制約

国内4社が「フル稼働・供給確保」を表明していた5月時点で、実は国内アドブルー流通の隠れた律速要因としてBIB容器(Bag-In-Box、10L・20L主流)のひっ迫が進行していた。日産化学が「容器メーカーから今後出荷調整可能性」と警戒発言していた背景である。BIB内袋(LDPE/LLDPEフィルム製)を製造する国内業者は実質3社体制で、旭化成が3月31日にポリエチレン120円超値上げを実施、エチレン12拠点中6拠点減産により中間原料もひっ迫した。国内アドブルー本体の生産能力に余裕があっても、容器がなければ販売できないという物理的制約が5〜6月に顕在化した現場実態は、Ch5で詳述する。

7月12日ホルムズ再閉鎖でナフサ由来原料の再高騰圧力が発生した場合、ポリエチレン価格が再度上昇するリスクは継続する。国内メーカー動向を追う際には、生産能力・稼働率だけでなく、原料尿素の輸入経路・容器サプライチェーン・実配送体制の3層すべてを統合的に把握する必要がある。三井化学PLAS MIRAI+は2021〜22年の中国輸出制限による「尿素ショック」事例(地方で4倍以上の価格上昇、フリマアプリ転売問題、政府の供給多様化対応)を振り返り、「国内生産能力の余裕」を過信せず「原料調達構造の脆弱性」と「容器・物流の律速要因」を同時に見る視点の重要性を提起している。

CHAPTER 4 ── GOVERNMENT RESPONSE

4. 政府対応 ── 中東情勢関係閣僚会議の展開と主管大臣による指揮

2026年3月のイラン・イスラエル軍事衝突以降、日本政府は中東情勢に関する関係閣僚会議中東情勢に伴う重要物資の安定的な供給確保のためのタスクフォースの二層構造で、原油・LNG・ナフサ・尿素等の重要物資について段階的な対応措置を積み重ねてきた。特に注目すべきは、赤澤亮正 経済産業大臣が「中東情勢に伴う重要物資安定確保担当」を兼務指定され、アドブルー原料尿素を含む重要物資対応の主管大臣として一貫して指揮を執っている点である。事業者にとって重要な政府対応の全体像を、大臣・省庁・会議体・実務要請の4層で整理する。

4.1 赤澤経済産業大臣「中東情勢に伴う重要物資安定確保担当」の指揮体制

2026年3月、高市早苗内閣は赤澤亮正 経済産業大臣に対し、通常の経産大臣所管業務(原子力経済被害担当・GX実行推進担当・産業競争力担当・内閣府特命担当大臣〈原子力損害賠償・廃炉等支援機構〉等)に加えて、「中東情勢に伴う重要物資安定確保担当」を兼務指定した(首相官邸「第2次高市内閣 閣僚等名簿」)。これにより、アドブルー原料尿素を含む中東発サプライチェーンに依存する重要物資について、経済産業省が政府全体の実務対応を統括する体制が確立された。

赤澤大臣は3月以降、燃料油・石油製品関係業界代表者との会談、資源エネルギー庁による安定供給要請、後述のタスクフォース主催などを通じて、業界と政府の対話回路を維持してきた。経済産業省は事業者向けの情報集約サイトとして「中東情勢関連対策ワンストップポータル」(https://www.meti.go.jp/chuto_josei/)を運営し、閣僚会議・タスクフォース・対策本部・省庁横断要請・地方経済産業局窓口・「燃料油や石油由来の化学品・製品等の供給に関する情報提供窓口」を一元的に案内している。事業者は日次でこのポータルをモニタリングすることが推奨される。

4.2 中東情勢関係閣僚会議 第1回〜第11回の全時系列

閣僚会議は内閣官房が主催し、3月24日の第1回から2026年7月14日時点まで11回開催されている。主要な決定事項を整理する。

回次開催日主要議題・決定事項
第1回令和8年3月24日初回会議、体制構築、情報収集共有体制確立。
第2回令和8年3月31日重要物資の安定的供給確保に向けたタスクフォース設置決定。
第3回令和8年4月10日第2弾国家備蓄放出方針表明(国家備蓄石油20日分、5月上旬以降)。
第4回令和8年4月16日4月局面の中間評価、代替調達進捗確認。
第5回令和8年4月24日ホルムズ迂回原油の代替調達5月で約6割確保に目途、米国からの原油初到着。
第6回令和8年4月30日日本関係船舶1隻のホルムズ通過報告、代替調達継続。
第7回令和8年5月12日18:00〜18:15アドブルー対応が正式議題化。金子国交相「BIB品不足対応・運送事業者に前年同月同量調達要請」を表明。
第8回令和8年5月21日アドブルー継続監視、代替調達進展確認。
第9回令和8年6月2日ナフサ・尿素供給網の中間評価。
第10回令和8年6月11日18:00〜18:15高市総理「全量ホルムズ外調達」達成表明。米国・カナダ・メキシコ・中南米・アジア太平洋・中央アジア・アフリカからの代替調達確保。
第11回令和8年6月26日18:30〜18:405〜6月の局面反落を受けた総括、調達源の多元化(代替調達枠の恒常化)議論開始。

4.3 赤澤大臣主催「重要物資の安定的供給確保のためのタスクフォース」

閣僚会議と並行して、赤澤経済産業大臣の下で中東情勢に伴う重要物資の安定的な供給確保のためのタスクフォースが設置された。実務レベルでの供給確保対応を担う中核組織である。

赤澤大臣主催タスクフォース(経済産業省)

第1回:令和8年4月2日 ── 重要物資の類型化と省庁横断的な供給確保体制の整理、業界代表者との連絡体制構築。

第2回:令和8年4月9日 ── 燃料油・石油由来化学品・製品等の情報提供窓口設置、地方経済産業局への業務展開、事業者からの情報吸い上げ強化。

関連対策本部:「中東情勢の影響を受ける医薬品、医療機器、医療物資等の確保対策本部」(厚生労働省・第1〜5回開催)等、分野別の対策本部と連動。

タスクフォースは、閣僚会議での方針決定を具体的な業界対応に落とし込む実務エンジンとして機能した。5月12日の第7回閣僚会議でアドブルー対応が正式議題化された背景には、このタスクフォースを通じて経済産業省が4月時点から業界の実態を把握し、5月時点でのBIB品不足・海老名SA店頭消失事案を政府側で早期認識できた実務プロセスがある。

4.4 第7回会議(5月12日)── アドブルー対応の正式議題化

5月12日18:00〜18:15、首相官邸4階大会議室で開催された中東情勢に関する関係閣僚会議(第7回)で、アドブルー対応が初めて正式議題化された。金子恭之国土交通大臣が同会議で「BIB品不足対応」と「トラック・バス事業者への前年同月同量調達要請」を表明したことは、日本自動車会議所が5月15日に速報として伝えている。

この会議の意義は、アドブルー問題が「化学品業界の商流問題」ではなく「国家的な物流継続問題」として位置付けられたことにある。3〜4月の駆け込み発注で川中4月出荷が前年同月比半減した経緯、海老名SAでの店頭消失事案、BIB容器のポリエチレン内袋ひっ迫が同時進行し、単一業界の対応では収束困難な段階に達していた。「前年同月同量」要請は、投機的発注を抑制して物流網の目詰まりを解消する政策的アンカーとして機能した。

4.5 第10回会議(6月11日)── 高市総理「全量ホルムズ外調達」達成の表明

2026年6月11日の第10回会議で、高市早苗総理は原油調達について画期的な発表を行った。首相官邸公表の議事によれば、以下の発言があった。

「原油の代替調達につきましては、中東や、先週にはアラスカからも到着した米国に加えまして、中南米・アジア太平洋、中央アジア、アフリカなどのほか、新たにカナダからの輸入が決まり、7月にはメキシコから初めて原油が届く予定であるということなど、原油の調達先の多角化が進展しています。6月は、8割程度の代替調達が確保できますが、7月については、前年平月比で約10割の調達への回復にめどがつきました。特に、米国からは、前年平月比で10倍以上が調達できる見通しです。原油のホルムズ依存度が9割を超えていた我が国が、全量ホルムズ外から調達できるようになったということは、石油業界を始めとした関係者の御努力の賜物であり、感謝を申し上げます。……8月以降は、保守的に、前年平月比75パーセントの代替調達に止まると仮定したとしても、備蓄を活用することで、これまでの想定から1年程度延びまして、2028年3月末まで石油の安定供給が可能ということになりました」

── 高市早苗 内閣総理大臣(令和8年6月11日 第10回中東情勢に関する関係閣僚会議、首相官邸公表議事より)

この発表の意味は極めて大きい。日本のエネルギー中東依存構造が「従来約9割だった」段階から、わずか3カ月で実務レベルの全量代替調達が確立された。これは石油業界と政府の連携努力の結晶であり、原油分野で確立された調達源の多元化モデルが、尿素・アドブルー分野にも横展開できる政策的な基盤を提供している。事業者は「政府方針として調達源の多元化が推奨されている」という前提で調達戦略を組み立てられる状況になっている。

4.6 経済産業省・省庁横断の具体的要請

閣僚会議・タスクフォースの決定を受けて、経済産業省と関係省庁が業界向けに以下の具体的要請を継続的に実施している。

経済産業省・省庁横断の主な業界要請(2026年3〜7月)

資源エネルギー庁:潤滑油等関係事業者への安定供給要請(全22団体対象) ── 潤滑油・アドブルーを含むナフサ由来品全般の投機的発注抑制と物流網目詰まり解消を全国的に呼びかけ。5月12日の国交省「前年同月同量」要請を業界横断的に拡張。

経済産業省:石油関連製品事業者への安定供給要請 ── 特に医療用途等のサプライチェーンに留意した石油関連製品の安定供給を要請。

経済産業省:溶剤等関係事業者への安定供給要請 ── シンナーを含む溶剤等の安定供給要請。

経済産業省・国土交通省:住宅生産関連団体への要請 ── 住宅建材・設備の安定供給、「住宅分野情報提供窓口」開設。

厚生労働省:中東情勢の影響を受ける医薬品・医療機器・医療物資等の確保対策本部(第1〜5回) ── 医療分野の並行対策枠組み。

4.7 アジア連携枠組み「POWERR Asia」──代替調達源の多元化への政策基盤

経済産業省は既に、アジア地域における資源・エネルギーの安定供給を実現するための多国間枠組み「アジア・エネルギー・資源供給力強靱化パートナーシップ(通称:POWERR Asia/パワー・アジア)」を立ち上げている。この枠組みに基づき、現地企業への金融面での協力等が推進されており、中長期的にはインドネシア等のアジア地域からの尿素・化学品の安定調達を裏付ける政策基盤として機能する。事業者は、この枠組みの活用を通じて、政府と足並みを揃えた調達源多元化を実現することが可能である。

4.8 農林水産省と関連情報公表

農林水産省は「肥料の価格情報」(令和8年5月15日更新)を継続公表し、尿素・りん安・塩化加里の国際価格・通関価格・輸入相手国データを可視化した。3月27日の鈴木農林水産大臣会見では「肥料の主原料尿素が国際取引価格1.5倍、日本の尿素輸入はマレーシア74%・ベトナム10%・サウジアラビア5%、中東4割市場、秋以降の国内価格反映見通し」と現状を整理した。加えて、ジェトロ(JETRO)は「特集:イスラエル・米国とイランの衝突を巡る中東情勢関連情報」(2026年7月更新)で、中東・イラン経済情勢、ホルムズ海峡通航動向、船舶攻撃再発の複合状況を継続追跡し、事業者向け情報基盤を提供している。

4.9 7月12日ホルムズ再閉鎖後の政府対応

7月12日IRGCホルムズ再閉鎖宣言と米中央軍140目標空爆の直後、金子国土交通大臣は7月10日会見で「7月7〜9日に大型原油タンカー6隻含む日本関係船舶22隻がホルムズ海峡を通過退出、湾内残存4隻」と、退避オペレーションの実績を公表した。さらに7月14日、共同通信報道によれば、当初ペルシャ湾内に残されていた12隻の日本関係船舶の原油タンカーがすべてホルムズ海峡を通過してペルシャ湾外へ退出し、退避オペレーションが実質的に完了した。商船三井系のタンカーなどが7月14日までに通過し、一部は日本に向かって航行中で、湾内残存は原油タンカー以外の日本関係船舶4隻となった。赤澤経済産業大臣の下、タスクフォースと閣僚会議は再閉鎖後も継続稼働しており、事業者は経済産業省の中東情勢関連対策ワンストップポータル、内閣官房の中東情勢に関する関係閣僚会議ページを日次でモニタリングする体制構築が求められる。

CHAPTER 5 ── FIELD VOICES

5. 現場からの声 ── 海老名SA・BIB不足・エンドユーザー

統計データや政府方針では見えない、実際の物流現場・整備現場・小売現場で何が起きていたのか。2026年4〜6月のアドブルーの品薄が最も鮮明に可視化されたのは、東名高速道路海老名SA下りサービスエリアでの48時間の店頭消失事案だった。あわせて、業界紙が取材した運送事業者・整備事業者の生の声が、政策議論と現場実務のギャップを浮き彫りにした。7月12日ホルムズ再閉鎖後の局面で、事業者が最も参考にすべき実務証言を整理する。

5.1 海老名SAの48時間 ── 店頭消失の象徴的事案

2026年4月22日、NEXCO中日本のサービスエリア公式Xアカウントは以下を投稿した。

「E1東名高速道路海老名SA(下り)GS、アドブルー在庫終了・販売中止」

── NEXCO中日本_サービスエリア公式X(2026年4月22日投稿)

この投稿はSNSで物流停止懸念が急速に拡散し、大型トラック運送業界・整備業界・化学品業界の三方から緊急対応が動き始めた。海老名SA下りGSはENEOS・日星コーポレーション運営で、東名高速の東京方面から名古屋・関西方面へ向かう大型トラックの重要な補給拠点である。ここでの店頭消失は「首都圏〜関西の物流動脈が実務的に細くなる」ことを意味した。

販売中止発表から48時間後の4月24日、LOGISTICS TODAY報道により海老名SA下りGSは販売を再開した。価格は5L 1,450円・10L 2,900円で、品不足前水準を維持した。この2日間で日星コーポレーション・ENEOSの調整力、他店舗からの緊急転送、卸元からの優先出荷が同時に動員された。事業者側は「大手SS運営でも48時間の欠品が発生する脆弱性」を目撃した形となった。

海老名SA事案の教訓

1. 大手SS運営でも欠品リスクは実在する。ENEOS・NEXCO系列でも48時間の店頭消失が現実化した。中堅・中小SS・整備工場でのリスクはさらに高いと想定すべき。

2. SNS拡散が業界内緊急対応を加速。公式Xの店頭消失発表が業界内アラートとして機能し、48時間で復旧できた。逆に言えば、SNS拡散がなかった局面でも実は複数店舗で欠品が発生していた可能性がある。

3. 価格転嫁より在庫確保が優先。復旧時の価格は品不足前水準を維持。値上げより「まず在庫を戻す」対応が優先された。

5.2 BIB不足の実態 ── LOGISTICS TODAY取材の現場証言

LOGISTICS TODAY編集長・赤澤裕介氏の4月20日取材記事は、BIB容器(Bag-In-Box)不足の実態を業界紙として初めて詳細に報じた。同記事は複数の現場証言を集約している。

販売事業者の証言:Shatzほか複数のアドブルー販売事業者がBIB新規受注停止に踏み切った。国内大型・中型トラック9割近くがアドブルー依存という現実に対し、BIB内袋(LDPE/LLDPE製)を製造する国内業者は実質3社体制で、旭化成3月31日のポリエチレン120円超値上げ、エチレン12拠点中6拠点減産で、中間原料もひっ迫した。

運送事業者の声:キリングループ・ヤマトホールディングス・大勝・mirai計画・智商運輸などの証言が同記事に集約されている。「中小事業者では容器価格が15%〜倍程度上昇」「大手との仕入価格差が拡大」「アロケーション体制下では取引実績のない新規顧客は後回しになる」という声が共通していた。7月ホルムズ再閉鎖後の第2波局面で、この現象が再燃するリスクを事業者は継続警戒する必要がある。

整備事業者向け情報:Forest-Life Japan「【2026年最新】アドブルー不足の真実は『容器不足』?物流危機とエンジン停止事故リスクへの対策」(4月22日記事)は、警告灯点灯時の早期補充、大容量タンク・インタンク設備への切り替え検討、粗悪品回避、定期点検強化を現場対策として整理した。SCRシステムの結晶化・故障トラブル増加リスクも指摘され、整備現場での実務対応が問われる局面となった。

5.3 エンドユーザーからの声 ── 運送・建機・農機の三方視点

アドブルーのエンドユーザーは、運送事業者だけではない。大型・中型トラックが最大セグメントだが、建設機械・農業機械・バス事業者・バキュームカー・特殊車両など、SCRシステムを搭載するディーゼル車両全般が対象となる。それぞれの層から挙がった声を集約する。

ユーザー層現場からの主要な声実務対応
大型トラック運送「大手仕入価格との差が拡大」「アロケーションで後回しに」複数販社との取引維持、24〜48時間以内の確定発注
中型・小型運送「BIB価格が15%〜倍上昇」「取扱い店舗が急減」キュービテナー導入検討、大容量タンク切替
建設機械「現場常駐分の確保が不安定」建機販社経由での定期納入契約
農業機械「春の農繁期は入手困難、次期も懸念」JAグループ・農機販社経由の共同購買
バス事業者「巡回給水の到着が遅延」バルクタンク設置による自社在庫化
整備工場「SCR結晶化トラブル増加」「粗悪品混入が心配」正規販売ルート厳守、定期点検強化

共通する現場実感は「大手も中小もリスクは実在するが、対応力に差がついている」という点である。大手は複数販社契約・自社備蓄・優先出荷ルートで48時間以内に復旧可能だが、中小事業者は単一販社依存・在庫余力なし・後回しリスクが重なり、実質的な稼働停止リスクに直面した。7月ホルムズ再閉鎖後は、この格差がさらに広がる可能性が高い。

5.4 韓国の悲劇 ── 短期パニックの警告事例

日本と類似の中東依存構造を持つ韓国は、2026年4月に日本より深刻なパニック局面を経験した。Korea Herald・Seoul・韓国産業通商資源部発表等の報道によれば、以下の状況が観察された。

韓国の2026年4月 ── アドブルー緊急対応

公的備蓄放出:副首相が4月16日に公的備蓄放出を表明。

大手販社停止:ロッテ精密化学が「Urox」販売を停止。

店舗欠品拡大:GSカルテックス系売切れ店舗が20店から65店に急拡大。

価格2倍以上:店頭価格が短期間で2倍以上に上昇、フリマ転売が問題化。

韓国は「脱・中国」戦略で中東系(サウジアラビア等)への依存を高めた結果、ホルムズ緊張の直接影響を受けた。日本が「マレーシア74%集中」で同じパターンに陥る危険性は、この韓国事例が最も雄弁に警告している。7月12日ホルムズ再閉鎖後、日本で韓国型の全国パニックが再現されるかどうかは、代替調達枠の恒常化がどれだけ早期に実現できるかにかかっている。

CHAPTER 6 ── CONCLUSION

6. 調達源の多元化・早期実現に向けて ── 弊社からの提言

2026年3月から7月14日までの4カ月半、日本のアドブルー市場は「上げ・下げ・再上げ」の3局面変転を経験し、事業者・現場・政府の対応能力を試された。5〜6月の反落局面で一時的に安堵感が広がったが、7月12日のIRGCホルムズ海峡再閉鎖宣言は、その安堵が一過性のものであったことを明確に示した。原油分野では赤澤経済産業大臣の指揮の下、わずか3カ月で全量ホルムズ外調達が達成された。ここでは、この原油分野での成功モデルを尿素・アドブルー分野にも早期展開すべきという立場から、弊社(プラスチックパレット株式会社)としての提言を述べる。

6.1 なぜ「今」調達源の多元化を急ぐべきか

結論から言えば、次のホルムズ海峡ショックまで残された時間は限られているからである。7月12日再閉鎖宣言の後、事態は「開放と閉鎖の二択」ではなく、AIS表示・実運航・保険引受・制度枠組みの4層で複雑に揺れ動く局面へ移行した。EIAは「ホルムズのフロー再開は2026年第3四半期から、生産・取引が危機前に戻るのは2027年初頭になる可能性が高い」と見込んでいたが、7月12日の再閉鎖でこのシナリオは延伸する可能性が高い。

この間に代替調達枠を平時から動かしておかなければ、次のショック発生時に再び「駆け込み発注 → 川中出荷半減 → 店頭欠品 → 価格急騰 → 韓国型パニック」のサイクルが繰り返される。西久大運輸倉庫が2021年ショック以降に構築した自社輸入体制の教訓は「危機時に発動する予備契約ではワークしない、平時から一定比率で継続購入して商流を生きた状態で維持しなければならない」という一点に集約される。この教訓を政府・メーカー・商社・エンドユーザーが業界全体として共有すべき局面である。

6.2 政府対応との連携が期待される4つの制度整備

赤澤経済産業大臣の下で既に稼働している「中東情勢に伴う重要物資の安定的な供給確保のためのタスクフォース」、経済産業省の「中東情勢関連対策ワンストップポータル」、資源エネルギー庁の潤滑油等22団体要請、そして「POWERR Asia」枠組みは、いずれも尿素・アドブルー分野への横展開が可能な政策基盤である。以下の4項目について、政府と業界の連携による早期具体化が期待される。

政府対応との連携が期待される4つの制度整備

1. 尿素・アドブルー戦略備蓄制度の設計:石油・石油ガス分野で機能している国家備蓄・共同備蓄制度の考え方を、尿素・アドブルーにも展開する。当面は45〜60日相当を目標に、備蓄用倉庫(BIB・バルクタンク併用)を全国5〜7カ所の物流ハブに配置することが検討課題となる。

2. 調達源多元化契約への支援枠組み:インドネシア・湾岸系との新規長期契約締結企業に対し、初期3〜5年間の価格変動リスク保証(JOGMEC類似の枠組み)を提供する仕組みが有効となる。「POWERR Asia」パートナーシップと連動することで、単一調達源からの移行コストを緩和する実務基盤が構築可能である。

3. 国内4社体制の維持・拡大支援:三井化学・新日本化成・日産化学・三菱ケミカルの国内尿素生産に対し、炭素価格・電力コスト差を補正する制度整備が期待される。中東発ナフサ由来のアンモニア原料調達を、国産アンモニア(水電解・グリーン水素)へ段階的に移行する研究開発予算の拡充とも整合する。

4. 中東情勢関係閣僚会議での「化学品・肥料」領域の深堀り:現在の第11回までは主に原油・LNG中心の議論構成だが、赤澤大臣の「中東情勢に伴う重要物資安定確保担当」の枠組みで、尿素・アンモニア・肥料の対応を深堀りする分科会型の議論が有効となる。プラボウォ政権のRp50兆投資・7新工場計画は、日本の中長期調達安定化にとって重要な機会である。

6.3 発注元企業に期待される4つの調達戦略見直し

発注元企業に期待される4つの調達戦略見直し

1. 単一サプライヤー100%集中を段階的に解消:三井化学単独、Petronas経由単独といった一極集中構造を段階的に見直す。インドネシア(Pupuk Indonesia社)を最有力の代替候補、ブルネイ・ナイジェリア・カナダを追加候補とする調達源の多元化を、3〜5年計画で段階的に実施する。具体的な配分比率は事業規模・契約状況に応じて個別に決定する。

2. 代替調達ルートを保有する商社・代理店との連携推進:従来のマレーシア系一極集中取引に加え、インドネシアPupuk Indonesia社との取引実績を持つ商社、あるいは湾岸系・その他アジア圏からの尿素輸入ルートを既に確保している商社・代理店との連携枠を保有する。事業者自ら海外メーカーと直接契約を結ぶハードルは高いが、既存の輸入ルートを持つ商社との複線化契約であれば中堅事業者にも実行可能である。危機発生時にゼロから調達先を開拓するのではなく、平時から複数の輸入商社と取引を維持し、いざという時に即座に発注切替えができる体制を構築することを推奨する。

3. 価格スライド条項を全契約に組み込む:Argus FOB Southeast Asia、Platts JKM等の指標に連動するスライド条項を全契約に導入する。相場ショック時の価格転嫁を契約段階で保証する。3〜4月急騰・5〜6月反落の3局面変転が繰り返される前提での契約設計が求められる。

4. 容器形態の複線化を継続:BIB・バルクローリー・キュービテナー(1,000L)・200Lドラムを複線で保有する。7月ホルムズ再閉鎖でナフサ由来原料が再高騰し、ポリエチレン価格が再上昇するリスクは継続する。BIB内袋ひっ迫が2026年5月と同様の店頭欠品を招くリスクを継続警戒する。

6.4 現場実務者へのメッセージ

最後に、日々の運送・整備・小売現場でアドブルーを扱う実務者に、弊社からメッセージを送りたい。

2026年4〜6月の3カ月間、大型トラックドライバー、SS従業員、整備工場スタッフ、農機オペレーター、建機現場監督などの皆さんが直面した「欠品」「品切れ」「アロケーション」「価格上昇」の実体験は、統計データや政府文書には現れない。だがその実体験こそが、日本の物流網が単一輸入源に依存することの危うさを、最も雄弁に語る証拠である。

4月22日海老名SA下りGSの店頭消失、キリンG・ヤマトHDの調達アロケーション、Shatzの新規受注停止、農繁期の農機オペレーター現場の入手困難、5〜6月の反落局面での安堵と、7月12日再閉鎖ニュースを見た時の警戒感 ── これらの実務感覚を、政府・メーカー・商社の意思決定層に届け続けることが、次の危機を減衰させる最大の力である。危機を経験するたびに構造を組み替え、次の危機の被害を減衰させることが事業継続の本質であり、そのためには現場の声を制度改革に翻訳する回路が動き続ける必要がある。赤澤経済産業大臣主催のタスクフォース、経済産業省ワンストップポータル、資源エネルギー庁の22団体要請といった政府側の対話回路は既に開いている。事業者・業界団体が積極的にこの回路を活用することが、次の危機に向けた最大の準備となる。

6.5 弊社(プラスチックパレット株式会社)としての姿勢

本記事を発信する弊社プラスチックパレット株式会社は、物流資材(プラスチックパレット・再生樹脂材料・PPバンド・ストレッチフィルム等)を全国のお客様にお届けする商社として、アドブルー本体の販売事業者ではない。しかし物流現場と隣接する事業者として、以下の姿勢で情報発信と実務対応を続けていく。

第一に、物流資材の安定供給を維持する。ナフサ由来樹脂材料のひっ迫局面でも、当社取扱いのプラスチックパレット・PPバンド・ストレッチフィルムを含む物流副資材の供給を維持し、お客様の物流継続を支える。

第二に、業界横断的な情報共有に協力する。本記事のような業界動向レポートを継続発信し、事業者・現場・政府の情報格差を埋める役割を果たす。一次情報へのアクセスが困難な中小事業者にとって、体系化された動向レポートは意思決定の基盤となる。

第三に、調達源の多元化に向けた業界横断連携を支持する。本記事が提案するインドネシアを最有力候補、ブルネイ・ナイジェリア・カナダを追加候補とする代替調達構造の実現には、政府・メーカー・商社・エンドユーザーの4者連携が不可欠である。当社は物流資材商社としてこの連携に協力する。

7月12日ホルムズ再閉鎖はまだ収束していない。次に何が起きるかを予測することは困難だが、事業者として準備できることは多い。調達源の多元化(代替調達枠の恒常化)は、次の危機に対する最大の保険である。原油分野で赤澤経済産業大臣の指揮の下わずか3カ月で「全量ホルムズ外調達」を達成した政府対応の速度を踏まえれば、尿素・アドブルー分野での早期実現も十分に可能である。事業者・政府・現場が同じ方向を向いて動き出せば、韓国型のパニックも海老名SA型の店頭消失も、繰り返さずに済む未来は十分に構築可能である。弊社はこの立場を明確にして、本記事を締めくくる。

UPDATE ── 2026.07.22

【7月22日追記】尿素市況の反発と、当社の尿素調達窓口開設のお知らせ

本追記は2026年7月22日時点の情報です。6月26日に底値をつけた尿素の国際価格は、7月に入って反発に転じました。あわせて、当社は本記事で提言してきた「調達源の多元化」を自ら実践する取り組みとして、インドネシア産の高品位尿素の調達窓口を新たに開設しました。7月中旬以降の市況と、当社の取り組みをお知らせします。

尿素国際価格は6月底値から反発

本記事本文で扱った6月26日の底値(Trading Economics 366.50ドル/トン)から、尿素の国際価格は7月に入って反発しました。investing.comが集計する中東産粒状尿素先物(UMEc1)は、2026年7月20日時点で403.50ドル/トンとなり、6月26日の底値から約10.1%上昇しました。7月12日のホルムズ海峡再閉鎖宣言を背景とした再上昇圧力が、実際の相場に表れ始めた形です。

尿素国際価格の推移(Trading Economics/investing.com・USD/t)
600 550 500 450 400 350 300 547.50 366.50 403.50 5月8日 6月26日 7月20日

※5月8日547.50ドル・6月26日366.50ドルはTrading Economics、7月20日403.50ドルはinvesting.com(中東産粒状尿素先物UMEc1・CME)による。両者は指標が異なるため厳密な同一時系列ではなく、傾向の把握を目的とした参考図として扱う。investing.comのデータは同社公表値を数値として引用したもので、チャート画像の複製ではない。

本記事本文で述べたとおり、国内の卸価格は市況スポットへ即座に連動しない構造のため、4〜6月に確定した価格改定はそのまま維持されます。一方で、6月の底値から7月にかけての反発は、「6月に平時水準まで戻ったから安心」という短期の楽観が続かないことを示しています。調達源を単一に依存する構造そのものを見直す必要性は、7月の相場反発によってあらためて確認された形です。

当社、アドブルー原料・工業用の尿素調達窓口を開設しました

当社は物流資材の商社として、本記事で一貫して「調達源の多元化」の重要性を提言してきました。この提言を自ら実践する取り組みとして、インドネシア産の高品位尿素(ブランド名 nitrea・窒素46%)の調達窓口を新たに開設しました。取扱うのは、インドネシア国営肥料会社Pupuk Indonesiaグループが製造する尿素です。

インドネシア産の尿素は、本記事本文でも代替調達の最有力候補として位置付けたとおり、マラッカ海峡以東で生産・出荷されるため、ホルムズ海峡の通航リスクを構造的に受けにくいという立地優位を持ちます。当社が取扱うnitreaのプリル尿素は、ビウレット含有量が低く重金属含有量も少ないため、高純度が求められるアドブルー(DEF)用など工業用途にも適した品質です。

当社の位置づけについて

当社はアドブルー製品(尿素水完成品)そのものの製造・販売事業者ではありません。今回開設したのは、アドブルーの原料となる尿素、および冷却用・工業用の尿素の調達窓口です。アドブルーを製造・調合される事業者や、冷却パック原料・工業用途で尿素を必要とされる事業者に対し、用途に応じた尿素の調達をご案内します。取引エリアは全国です。

尿素の調達をご相談ください

アドブルー原料・冷却用・工業用まで、用途に合わせた尿素の調達をワンストップでご案内します。ロット数・用途・納入先をお知らせいただければ、最短でお見積りします。

尿素の調達窓口を見る

尿素の調達・技術情報(関連ページ)

尿素の調達・用途・品質について、目的に応じた詳しいご案内ページを用意しています。

SUPPLY

尿素の総合調達窓口

Pupuk Indonesia産 高品位尿素の調達窓口。アドブルー用・冷却用・工業用をワンストップでご案内します。

調達窓口を見る
GUIDE

尿素・アドブルー完全まとめ

アドブルーの原料尿素について、用途・調達・市況を体系的にまとめた総合ガイドです。

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TECH

高品位尿素 nitrea の解説

Pupuk Indonesia産 nitrea の品質仕様・用途を技術的に解説しています。

解説を見る
UPDATE HISTORY

更新履歴

日付更新内容該当箇所
2026/08/07農林水産省の通関実績で3局面を検証。国際スポットと日本の仕入れ値のタイムラグ、肥料物価指数への波及、ナフサの8月下落を追加。第1章の後
2026/08/07三井化学品の欠品中・日星産業品の取扱停止中を第3章に追記。第3章
2026/07/22尿素国際価格の反発(7月20日403.50ドル)を追加。当社の尿素調達窓口の開設を告知。第6章の後
2026/07/147月12日のホルムズ再閉鎖、日本関係船舶の退出完了を反映。本文全体
2026/03/28初回公開。

本記事は追記を末尾に積まず、該当する章の直後に配置している。旧記述は削除せず、更新分を直後に並べることで、いつ何が変わったかを追えるようにしている。

EVIDENCE & SOURCES

参照エビデンス一覧

国際相場・地政学

  1. AFP・CNN.co.jp・日本経済新聞「イラン革命防衛隊、ホルムズ海峡再閉鎖を宣言/米中央軍140目標空爆」(2026年7月12日) ── IRGC海軍の再閉鎖宣言、警告射撃事案、米国防長官SNS投稿、原油ブレント一時4%高。
  2. 共同通信「日本関係の原油タンカー全て通過 ホルムズ海峡、残り4隻」(2026年7月14日、東京新聞・沖縄タイムス・山陽新聞・琉球新報・日本海新聞・Yahoo!ニュース等転載) ── 当初ペルシャ湾内に残されていた12隻の日本関係船舶の原油タンカーがすべて7月14日までにホルムズ海峡を通過してペルシャ湾外へ退出、商船三井系タンカー等がマリントラフィック等の船舶位置情報で確認、日本に向かって航行中の船もある、湾内残存は原油タンカー以外の日本関係船舶4隻。
  3. global-scm.com「ホルムズ海峡危機:情勢と今後の見通し」(2026年7月13日・7月14日更新) ── Kplerデータで7月11日以降LNG船通航ゼロ、7月12日タンカー6隻(5週間ぶり最少)、原油ブレント79ドル前後、7月7日カタール国営Nakilat所有LNG船Al Rekayyat被弾、金子国交相7月10日会見。
  4. Trading Economics・Investing.com「尿素価格チャート/Urea Granular FOB Middle East Futures」 ── 5月8日547.50ドル/トン(過去1カ月-21.90%)、6月26日366.50ドル/トン、52週レンジ375〜750ドル。
  5. 日テレNEWS NNN「肥料の主原料尿素がイラン情勢で国際取引価格1.5倍」(2026年3月27日、鈴木農林水産大臣会見報道) ── 日本の尿素輸入マレーシア74%・ベトナム10%・サウジアラビア5%、中東4割市場、秋以降の国内価格反映見通し。

通関実績・原料市況(2026年8月7日追記分)

  1. 農林水産省「肥料の価格情報」(通関実績は2026年8月3日更新、肥料の物価指数は同8月4日更新) ── 尿素の通関価格(財務省「貿易統計」)2026年1月77.3・2月79.2・3月93.1・4月129.7・5月141.4・6月119.7(千円/t)、肥料の物価指数(令和2年=100)2026年5月143.4・6月146.3、前年同月(2025年6月)139.9。ページを直接参照した。maff.go.jp
  2. 大景化学「ナフサ価格推移表」(2026年8月6日現在) ── 輸入ナフサ782ドル/t、為替157.73円/ドル、国産ナフサ価格指標87,725円/kL。原典は財務省「貿易統計」。ページを直接参照した。daikeikagaku.co.jp
  3. ISO 22241-1「Diesel engines ― NOx reduction agent AUS 32」 ── 尿素32.5%・純水67.5%の成分規格および密度の規定。20L 1箱あたりの原料尿素分の計算に使用。
  4. 当社「ナフサ価格推移2026完全まとめ」 ── 輸入CIFの6月25日627ドル、7月24日982ドル、為替163.32円、国産指標113,464円/kLの記録/ナフサ・原油完全まとめ

代替調達(インドネシア・中国・国内)

  1. Pupuk Indonesia公式「Profil Perusahaan/Kapasitas Produksi」 ── グループ10子会社、年間総生産能力13.9百万トン(尿素8.8百万トン)、国内補助金肥料と国際市場輸出の両輪展開。
  2. Pupuk Kaltim公式「Urea」 ── 東カリマンタン州ボンタン立地、Plant 1A/2/3/4/5の5工場体制で年産3.43百万トン、インドネシア最大の尿素製造拠点。
  3. Argus Media「Indonesia approves urea export licences for 2026」(2026年1月15日) ── 2026年通年140万トン輸出許可承認、Kaltim社が最初に市場参入予定、Petronas系take-or-pay契約主体でスポット余力極小との指摘。
  4. ANTARA News「Pupuk Kaltim delivers first urea shipment to Australia」(2026年6月23日) ── Pupuk Kaltimが5月14日ボンタン港出港の47,250トン尿素を6月22日ブリスベン港着桟完了、Rahmad Pribadi総裁が現地セレモニー出席、インド・バングラデシュ輸出交渉継続。
  5. Tempo.co「Plans to Build Seven Fertilizer Production Facilities to Boost Capacity」(2026年1月13日) ── プラボウォ政権5年間7新工場、Rp50兆(US$3B)投資、尿素9.4Mトン水準維持目標。
  6. 新浪财经・21世纪经济报道・东方财富网「中国尿素輸出政策・国内外価格差」(2026年3〜4月) ── 2026年通年輸出配額330万トン(前年489万トンから縮減)、中国窒素肥料工業協会指導価格1,830元/トン上限継続、国内外価格差200%、湖北宜化の内販価格1,850元/国際FOB 760ドル。
  7. 三井化学株式会社 公式サイト・PLAS MIRAI+「アドブルー®事業ページ/アドブルー供給不足への対策と今後の見通し」(2026年3月) ── 大阪工場(能力36万トン/年)など国内5拠点で年間11万kL製造、2021〜22年中国輸出制限時の教訓、政府の供給多様化対応。
  8. Brunei Fertilizer Industries(BFI)公式サイト・Biz Brunei・Invest.gov.bn「BFI plant/exports reach US$322M」(2023年〜2024年報道) ── ブルネイ国営、Sungai Liang産業団地(SPARK)立地、年産136.5万トン(グラニュール尿素)、東南アジア最大級の単一train肥料工場、2022年1月商業運転開始、ドイツthyssenkrupp AG建設、専用埠頭BFI Terminal、CEO Dr. Harri Kiiski(2022年就任)、累計輸出63.1万トン・55.6万トンを米国・豪州・日本・マレーシア含む14カ国に輸出、中東からの14〜30日に対しブルネイ〜東南アジア域内は2〜4日で物流優位。
  9. Dangote Fertiliser Limited公式サイト・Reuters・Fertilizer Field・Leadership.ng「Dangote fertiliser expansion/AFC $600M facility/thyssenkrupp Dangote Project」(2026年4月〜6月報道) ── ラゴス州イベジュ・レキ立地、$2.5B投資、500ヘクタール、アフリカ最大のグラニュール尿素工場(年産300万トン)、thyssenkrupp Uhde UFT技術採用、2026年6月AFCが$600M融資承認でNigeria工場3→9MTPA・エチオピア新工場3MTPA計画、Dangote Group全体で$40B肥料投資・3年で年間$4B輸出収益目標、Aliko Dangote社長「イラン戦争でアフリカ諸国への尿素輸出拡大」表明(2026年4月)。
  10. Indorama Eleme Fertilizer & Chemicals・TheCable・The Lead Africa「Nigeria fertilizer export economy/OCP Dangote Indorama race」(2026年4月〜5月報道) ── 世界最大の単一train尿素工場(日産8,000MTPD=年産280万トン)、サブサハラアフリカ最大の肥料生産者、Nigeria全体尿素輸出2017年66万トン→2024年300万トン超に急拡大、World Bank予測「2026年肥料価格31%上昇」。
  11. Nutrien Ltd.公式・CF Industries公式・Globe and Mail「Nutrien Longview export terminal/北米→インド太平洋輸出強化」(2025年11月報道、2026年第1四半期業績報告) ── Nutrienは世界最大の肥料会社(サスカチュワン州本社)、CF Industriesは米国最大の窒素肥料生産者、北米が世界最大の尿素市場(32%シェア)、Nutrienがワシントン州Longview新輸出ターミナル建設中でインド太平洋(中国・インド・日本)向け強化、G7・OECD加盟国で政治安定・中東紛争独立ルート、高市総理6/11発言「新たにカナダからの輸入が決まり」(原油分野)で日加政府間対話ベース確立済み。

政府対応

  1. 首相官邸「第2次高市内閣 閣僚等名簿」/経済産業省「経済産業大臣 赤澤亮正」プロフィール ── 赤澤亮正 経済産業大臣が「中東情勢に伴う重要物資安定確保担当」を兼務指定(2026年3月)、原子力経済被害担当・GX実行推進担当・産業競争力担当・内閣府特命担当大臣(原子力損害賠償・廃炉等支援機構)も兼務。
  2. 内閣官房「中東情勢に関する対応」/「中東情勢に関する関係閣僚会議 第1回〜第11回議事」(令和8年3月24日・3月31日・4月10日・4月16日・4月24日・4月30日・5月12日・5月21日・6月2日・6月11日・6月26日) ── 全11回開催の時系列と議事次第、内閣官房主催による政府横断対応の基本枠組み。
  3. 首相官邸「中東情勢に関する関係閣僚会議(第10回)議事」(令和8年6月11日18:00〜18:15) ── 高市総理発言正式版「原油の代替調達につきましては、中東や、先週にはアラスカからも到着した米国に加えまして、中南米・アジア太平洋、中央アジア、アフリカなどのほか、新たにカナダからの輸入が決まり、7月にはメキシコから初めて原油が届く予定」「米国からは、前年平月比で10倍以上が調達できる見通し」「原油のホルムズ依存度が9割を超えていた我が国が、全量ホルムズ外から調達できるようになった」「8月以降は、保守的に、前年平月比75パーセントの代替調達に止まると仮定したとしても、備蓄を活用することで、2028年3月末まで石油の安定供給が可能」。
  4. 内閣官房「中東情勢に関する関係閣僚会議(第7回)議事次第」(令和8年5月12日18:00〜18:15、官邸4階大会議室)/「中東情勢に関する関係閣僚会議(第11回)議事次第」(令和8年6月26日18:30〜18:40、官邸4階大会議室) ── アドブルー対応が正式議題化された会議、金子国交相「BIB品不足対応・前年同月同量調達要請」表明、11回目での中間総括。
  5. 経済産業省「中東情勢関連対策ワンストップポータル」(https://www.meti.go.jp/chuto_josei/) ── 事業者向け一次情報の集約サイト、閣僚会議・タスクフォース・対策本部・省庁横断要請・地方経済産業局窓口・「燃料油や石油由来の化学品・製品等の供給に関する情報提供窓口」を一元的に案内。
  6. 経済産業省「中東情勢に伴う重要物資の安定的な供給確保のためのタスクフォース」(第1回:令和8年4月2日、第2回:令和8年4月9日) ── 赤澤大臣主催、重要物資の類型化と省庁横断供給確保体制の整理、業界代表者との連絡体制構築、地方経済産業局への業務展開。
  7. 経済産業省「アジア・エネルギー・資源供給力強靱化パートナーシップ(通称:POWERR Asia/パワー・アジア)」 ── アジア地域における資源・エネルギー安定供給を実現する多国間枠組み、現地企業への金融面協力等、インドネシア等からの尿素・化学品調達源多元化の政策基盤。
  8. 資源エネルギー庁「潤滑油等関係事業者への安定供給要請」(全22団体対象、令和8年6月5日「潤滑油の発注適正化」公表) ── アドブルー含むナフサ由来品全般の投機的発注抑制と物流網目詰まり解消の政策整理、22団体対象という規模感で業界横断的な調整枠組みを構築。
  9. 経済産業省・国土交通省・林野庁「中東情勢を踏まえたお願い」/「住宅分野情報提供窓口」開設/「石油関連製品事業者への安定供給要請」/「溶剤等関係事業者への安定供給要請」 ── 省庁横断の業界要請の枠組み、特に医療用途等サプライチェーンへの配慮を含む。
  10. 厚生労働省「中東情勢の影響を受ける医薬品、医療機器、医療物資等の確保対策本部」(第1〜5回開催) ── 医療分野における並行対策本部、赤澤大臣主催タスクフォースと連動。
  11. 日本自動車会議所「国交省、アドブルー容器不足で需給実態把握へ」(2026年5月15日) ── 金子恭之国交相の5月12日閣僚会議発言詳報、運送事業者への調達要請の実務含意。
  12. 農林水産省「肥料の価格情報」(令和8年5月15日更新)/「肥料をめぐる情勢」/「化学肥料原料の輸入相手国・輸入量」 ── 尿素・りん安・塩化加里の国際価格・通関価格・輸入相手国データ、2026年3月時点のマレーシア74%・ベトナム10%・サウジアラビア5%構造。
  13. Bloomberg「高市首相、国家備蓄石油20日分を5月上旬以降に追加放出へ」(2026年4月10日) ── 第3回中東情勢関係閣僚会議での第2弾国家備蓄放出方針表明。
  14. ジェトロ(JETRO)「特集:イスラエル・米国とイランの衝突を巡る中東情勢関連情報」(2026年7月更新) ── 中東・イラン経済情勢、ホルムズ海峡通航動向、船舶攻撃再発の複合状況。

国内メーカー・価格改定

  1. プラスチックパレット株式会社「【速報】アドブルーの価格高騰と供給状況及び今後の見通しについて」(2026年6月6日更新) ── 3社価格改定(4/20〜三井物産プラ+10円/L、5/1〜伊藤忠エネクスBIB+7円/L、6/1〜新日本化成+8円/L)の一次資料公開、6月時点「最悪期通過」判断。
  2. 三井物産プラスチック株式会社「三井のAdBlue® 価格改定のお願い」(2026年4月20日出荷分から全荷姿+10円/L)/伊藤忠エネクス株式会社(5月1日から巡回給水+5円/L・BIB+7円/L)/新日本化成株式会社(6月1日納入分から+8円/L) ── 当社直接入手の一次資料による価格改定通知書。
  3. RIM Intelligence「尿素ショック(下)=韓国は対岸の火事でない」(2021年11月) ── 三井物産プラスチック・日星産業の国内販売シェア合計約4割、輸入尿素依存約6割の構造分析。
  4. トラックニュース「主要4社ヒアリング」(2026年5月22日) ── 三井化学・新日本化成・日産化学・三菱ケミカルが「フル稼働・供給確保」表明、新日本化成「5月から問い合わせ落ち着き」、日産化学「容器メーカーから今後出荷調整可能性」の警戒発言。

現場の声・実務証言

  1. LOGISTICS TODAY「アドブルー、容器ひっ迫で店頭消失」(2026年4月20日、編集長・赤澤裕介取材記事) ── 国内大型・中型トラック9割近くがアドブルー依存、Shatz他複数販売事業者がBIB新規受注停止、BIB内袋(LDPE/LLDPE製)の供給ひっ迫、容器対応国内製造業者実質3社、旭化成3月31日のポリエチレン120円超値上げ、エチレン12拠点中6拠点減産、中小事業者で価格15%〜倍上昇、キリンG・ヤマトHD・大勝・mirai計画・智商運輸の現場証言。
  2. LOGISTICS TODAY「東名高速海老名SA下り、アドブルー販売再開」(2026年4月24日) ── 4月22日NEXCO中日本販売中止表明から2日後の販売再開、5L 1,450円・10L 2,900円で品不足前水準を維持、ENEOS/日星コーポレーション運営。
  3. NEXCO中日本_サービスエリア公式X(2026年4月22日投稿) ── 「E1東名高速道路海老名SA(下り)GS、アドブルー在庫終了・販売中止」公表、SNSで物流停止懸念が拡散。
  4. LOGISTICS TODAY「西久大運輸倉庫、アドブルー自社調達の舞台裏」(2025年10月22日) ── 福岡市の運送事業者が福岡銀行協力で海外メーカーからの調達・自社輸入体制を構築、夏場は定温倉庫保管、支店使用量約2ヶ月分確保。
  5. Forest-Life Japan「【2026年最新】アドブルー不足の真実は『容器不足』?」(2026年4月22日) ── 警告灯点灯時の早期補充、大容量タンク・インタンク設備への切り替え検討、粗悪品回避、定期点検強化の現場対策、SCRシステム結晶化トラブル警告。
  6. Korea Herald・Seoul・韓国産業通商資源部発表「韓国アドブルー緊急対応」(2026年4月時点) ── 副首相4月16日公的備蓄放出決定、ロッテ精密化学「Urox」販売停止、GSカルテックス系売切れ店舗20→65店に急拡大、店頭価格短期間で2倍以上、フリマ転売問題化。

免責事項・編集方針
本記事は2026年3月28日初回公開・2026年8月7日最終更新時点で公開されている公的機関・業界各社の公式情報・報道を独自に収集・整理したものです。価格・供給状況は日々変動しており、実際の調達条件は取引先・数量・地域・契約内容等により異なります。本記事の情報に基づく調達判断・投資判断等については、必ず最新情報・専門家の助言を得た上で行ってください。日本企業の直接調達確保状況については2026年7月時点で公開情報が確認できる範囲を記載しており、未公表の交渉案件等が並行している可能性があります。2026年7月12日のIRGCホルムズ再閉鎖宣言後の情勢は特に急速に変化しており、記載した数値・日付・立場は本稿更新基準時点のものです。

2026年3月28日 掲載 / 最終更新
© 2026 プラスチックパレット株式会社|本記事はエビデンスに基づく調査・分析記事です
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