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イラン情勢とニトリルグローブ供給危機の深層|2026年ナフサショックが直撃するゴム手袋市場(5月18日更新)
SPECIAL REPORT ── 緊急特集(構造解説版)
2026年4月2日版 🆕 5月18日更新

イラン情勢とニトリルグローブ供給危機の深層

— 石油化学製品としてのサプライチェーンの脆弱性を検証する —
公開 / 最終更新
🆕 UPDATE ── 2026.05.18
構造解説に5月時点の現場事例とマクロデータを追加 ── 3つの新エビデンス

①国内卸の緊急出荷制限が表面化:中野デンタルサプライがホルムズ封鎖を明示して3月11日付公式案内で緊急出荷制限実施、茨城県保険医協会では4月7日のFAX案内に対し100件超注文殺到で即時在庫切れ・次回入荷未定。 ②ナフサ供給は量的改善方向:経産省4月30日発表で5月のナフサ輸入量は平時比3倍(135万kL超)・ポリエチレン等在庫1.8か月分、「年を越えて継続できる見込み」。ただしNBR特殊原料の制約で末端のグローブ価格・納期にはタイムラグ。 ③NBR市場は構造的拡大基調:Mordor Intelligence予測で2025年31.2億ドル→2033年50億ドル(CAGR 6.1%)。自動車電動化・医療衛生需要・産業インフラ拡大により、ニトリルラテックスの恒常的タイト需給が継続見込み。

【結論・5月時点版】

2026年5月時点、ニトリルグローブ供給は『価格上昇+国内現場での調達難』の局面に入った。原料NBR(ニトリルブタジエンゴム)はナフサ由来の100%石油製品であり、ホルムズ海峡封鎖でナフサ調達が逼迫。Top Glove社はNBRラテックスのコストが「2倍に上昇」と公表し、CIMB Securitiesは合成ゴム手袋の価格が前年比約40%上昇・1,000枚入り箱あたり約29米ドルに達したと分析。MARGMA(マレーシアゴム手袋製造業者協会)は2026年3月26日、世界需要の約45%を担うマレーシア政府にNBR国内優先供給とTake-or-Pay契約緩和の2点を緊急要請。国内でも歯科業界向け大手卸の中野デンタルサプライが3月11日付『ホルムズ海峡封鎖による石油からの原料(ブタジエンゴム)供給停止の影響』を明記した緊急出荷制限を実施、茨城県保険医協会では4月7日案内で100件超注文殺到・即時在庫切れとなるなど現場の調達難が表面化。経産省4月30日発表ではナフサ供給は5月平時比3倍で量的改善方向だが、NBR特殊原料・米国対中関税・メーカー逆ザヤの3要因が重なり、末端グローブには改善のタイムラグがある。Mordor予測ではNBR市場は2025年31.2億ドル→2033年50億ドル(CAGR 6.1%)と構造的拡大基調。

CHAPTER 01 ── PETROCHEMICAL ORIGIN

第1章:ニトリルグローブは「石油製品」であるという事実

1-1. 原料構造の石油依存度

一般に「ゴム」という名称から天然ゴム(ラテックス)を想起しがちだが、現在、医療や産業現場で主流となっているニトリルグローブ(NBR)は、100%石油由来の合成ゴムである。その主原料はアクリロニトリルブタジエンであり、これらは原油を蒸留して得られる「ナフサ」を分解・精製する過程で生成される。AMMEX(米国大手卸)の2026年4月マーケットアップデートによれば、ニトリルグローブは現在、世界市場シェアの約45〜50%、米国市場では最大70%を占める主流製品となっている。

ナフサショックの全体像と他産業への波及については「2026年ナフサショック|ホルムズ海峡封鎖が引き起こす供給網危機の全貌」で詳述している。

1-2. 原油・ナフサ価格との相関エビデンス

The Edge Malaysia(2026年3月18日)の報道によれば、ホルムズ海峡封鎖を受けてBrent crude(北海ブレント原油)価格は3月時点で年初比約70%上昇し、103ドル/バレル超に到達。一時120ドル/バレル近辺まで急騰した。ナフサスポット価格も同期間に大幅上昇しており、ニトリルラテックスの製造コストにおいて原料費が占める割合が大きいため、ナフサの高騰はダイレクトに製品原価を押し上げる構造にある。

出典:Top Glove 公式声明(The Edge Malaysia、2026年3月18日)

世界最大手の手袋メーカーTop Glove社のLim Cheong Guan業務執行役員は、地政学的展開を継続的にモニタリングし、サプライヤーと協働してNBR供給の安定化と影響緩和に取り組んでいる旨を表明。「NBRラテックスのコストは前年比2倍に上昇している」とし、同社の生産コストは従来1箱あたり14〜15米ドルだったが、現状の販売価格約16ドルとの逆ザヤ局面に入りつつある。同社はニトリルラテックスを通常10〜14日分手元在庫として保有しているが、需給逼迫を受けて月次発注から短サイクル発注へ切り替えている。

タイムラグの法則:過去のナフサ価格変動データでは、原料コストの変動が末端のグローブ価格に反映されるまでには製造・輸送工程を経て3〜4ヶ月のタイムラグが生じることが知られている。つまり、2026年3月時点の中東情勢悪化は、2026年5〜6月以降の決定的な価格高騰を意味することになる。5月時点で既にこのタイムラグが表面化し、後述の通り国内卸の出荷制限・在庫切れが現実化している。

🆕 1-3. NBR市場の中長期予測 ── 構造的拡大基調(5月18日追加)

世界のニトリルブタジエンゴム(NBR)市場規模は、2025年に31億2,000万米ドル、2033年までに50億米ドルに達すると予測されている(Mordor Intelligence・データブリッジ市場調査)。CAGRは6.1%。自動車のシール・ガスケット・電動化対応シール用途の拡大、医療用手袋需要の継続的成長、産業インフラ開発の進展が主因。

🆕 NBR市場予測が示す調達戦略への含意

NBR市場が今後8年間でCAGR 6.1%の成長を続けるということは、「いつかはコロナ前の価格水準に戻る」という前提が崩れたことを意味する。電動車向けの新規需要、医療衛生基準の継続的厳格化、Tier1サプライヤーの素材転換などによりNBRの恒常的なタイト需給が続く可能性が高い。短期的なホルムズ情勢の改善で価格は一部緩和しても、構造的な「新しい正常状態」として5〜10%程度の恒久的な価格上昇は定着する見通し。ニトリルグローブ調達も「危機回避」ではなく「新水準への適応」として組み立てる必要がある。

CHAPTER 02 ── DUAL IMPACT

第2章:東南アジア製造拠点への二重の打撃

2-1. マレーシア中心の集中構造

MARGMA公式統計によれば、マレーシアは世界のゴム手袋需要の約45%を供給する圧倒的な拠点国である。同国の手袋輸出総額は2025年に140億リンギット(約4,500億円)に達し、ゴム製品輸出全体の約64%を占めた。Top Glove・Hartalega・Kossan・Supermaxといった主要4社はいずれもマレーシア証券取引所上場企業で、グローバルサプライチェーンに完全に組み込まれている。Top Glove1社だけで年間950億枚を世界2,000以上の顧客に供給している。しかしこの拠点はイラン情勢によって「原材料」と「エネルギー」の両面から圧迫される構造にある。

45%
マレーシアの
世界ゴム手袋シェア
(MARGMA、2026年3月)
+100%
NBRラテックス
コスト上昇率
(Top Glove発表)
+70%
Brent crude価格上昇
(年初比・3月時点)
$29
合成ゴム手袋
1,000枚入り箱単価
(CIMB分析)
50億$
NBR世界市場規模
2033年予測
(2025年31.2億$)
6.1%
NBR市場
CAGR予測
(2025-2033年)

2-2. エネルギー・コストの構造的脆弱性

ゴム手袋の製造には、洗浄、浸漬、乾燥、加硫(熱処理)といった工程で膨大な熱エネルギーを消費する。マレーシアの主要メーカーは天然ガスベースの工場運営を行っており、ガスの「Take-or-Pay(TOP)契約」のもとで最低消費量を契約義務として抱えている。NBR不足で工場稼働率が下がると、最低ガス消費量を満たせずペナルティが発生するという二重苦の構造になっている。

出典:MARGMA公式声明(2026年3月26日、The Edge Malaysia・European Rubber Journal他)

MARGMA(マレーシアゴム手袋製造業者協会)会長Oon Kim Hung氏は2026年3月26日、ホルムズ海峡封鎖によるNBR深刻不足を受けて政府に2点の緊急支援を要請。①NBR国内優先供給(マレーシアのNBRサプライヤーに対し、海外バイヤーよりも国内手袋メーカーを優先するよう政府を通じて働きかけること)、②ガスTake-or-Pay契約の一時的緩和(生産能力低下下でも契約義務違反のペナルティを免除)。同声明はマレーシアが世界需要の約45%を担う事実を再確認した上で、「長期化すれば世界の医療システムの安定性が脅かされる」と警告した。

2-3. 物流網(ロジスティクス)の麻痺

ホルムズ海峡の事実上の封鎖、および周辺海域の航行不安は、欧州・中東からアジアへ向かうナフサ船、およびアジアから世界へ向かう製品船の両方に影響を及ぼす。2026年に入り、主要海運会社(Maersk、MSCなど)は地政学リスクに伴う追加料金(戦争リスク・サーチャージ)を適用。これにより、輸送コストだけで製品単価を数パーセント押し上げる事態となっている。Karex(マレーシア)は2026年4月時点で「より長い船舶リードタイムが顧客側の在庫を低下させ、コンドームメーカーの一部は生産課題に直面している」と公表した。

🆕 2-4. ナフサ供給環境の改善方向と末端への波及タイムラグ(5月18日追加)

5月時点で押さえておくべき重要な構造的変化として、経産省2026年4月30日発表「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保及び重要物資の安定的な供給確保の対応状況」がある。同資料は石油化学全体としては量的改善に向かっていることを示している。

🆕 経産省4/30発表とNBR・ニトリルグローブへの含意

5月のナフサ輸入量は平時比3倍(45万kL/月→4月90万kL→5月135万kL超)まで拡大、ポリエチレン等の川下製品在庫は約1.8か月分まで回復。ナフサ由来化学製品の供給は「これまでの『半年以上』からさらに伸び、年を越えて継続できる見込み」と発表されました。これは石油化学の上流(ナフサ)が量的に改善方向にあることを示している。

ただしニトリルグローブの場合、①NBRラテックスという特殊な中間原料(マレーシア・タイ・韓国の限定プラント依存度が高い)、②米国対中関税100%による需要シフト、③メーカーの逆ザヤ局面という3要因が重なっており、ナフサ環境改善の恩恵が末端のグローブに届くにはタイムラグがある。価格高止まり・納期延伸の構造は当面継続見通しと評価される。

CHAPTER 03 ── REALITY CHECK(5月18日更新)

第3章:2026年における供給危機の現実味(5月時点更新)

3-1. 在庫バッファの消滅

パンデミック時に世界中で積み上がった「過剰在庫」は、2025年末までにほぼ完全に市場から一掃された。CPG Click(2026年4月)の報道によれば、病院・手袋メーカーは2020年の教訓から数か月分のバッファ在庫を維持しているものの、ホルムズ封鎖が2ヶ月以上続けば戦略備蓄も枯渇し始めるとCIMB Securities・RHBの両アナリストが警告している。CIMBのOong Chun Sungアナリストは「合成ゴム手袋の不足は2026年5月末頃から本格化する可能性がある」と指摘。

🆕 3-2. 国内現場での調達難の表面化(5月18日追加)

続報「ニトリルグローブ危機の最前線2026」でも詳述しているが、5月時点で日本国内の現場では既に調達困難が表面化している。歯科業界・中小医療機関での具体的事例を以下にまとめる。

🆕 出典:中野デンタルサプライ「ニトリルグローブ供給逼迫に伴う出荷制限および緊急体制への移行について」(2026年3月11日付公式案内)

ホルムズ海峡封鎖による石油からの原料(ブタジエンゴム)供給停止の影響を受け、現在、弊社商品であるニトリルグローブ各種において、平常時を大幅に上回るご発注が集中しております。また、天然ゴム製のラテックスグローブも同様の現象が発生しておりますが、ラテックス製品に関しましては在庫を確保しておりますのでご安心ください。しかしながら、このままの状況が続いた場合、在庫が急速に枯渇し、製品を必要とされる多くのお客様へ安定的に供給することが困難となる恐れがございます。一人でも多くのお客様へ公平に製品を供給することを最優先と考え、2026年3月11日(水)より緊急の出荷制限および運用体制の変更を実施させていただきます」

歯科業界向け卸である中野デンタルサプライは、「ホルムズ海峡封鎖」という地政学要因を直接明示した上で、本記事第1章で述べた「ナフサ由来100%石油製品」の構造が国内卸の現場対応として顕在化した最も早期かつ明確な公式コミュニケーションの一つである。さらに同社は「ラテックス品は在庫確保済み」と併記しており、第5章で論じる「天然ゴムへの一部回帰」が現実的選択肢として浮上していることを示している。

🆕 茨城県保険医協会の事例 ── 100件超注文殺到で即時在庫切れ

一般社団法人 茨城県保険医協会は2026年4月8日付で、4月7日にFAX案内した川西工業株式会社「ヴェルパクト(VELPACT)」型番M-009(青色のみ、ニトリルゴム製、XS〜L、1ケース2,400枚17,000円税込)について、「すでに100件を超えるご注文をいただき、在庫切れとなってしまいました」「次回入荷は未定」と発表した(同協会公式発表)。中小医療機関が組織的に共同購入を試みても、案内発出後わずか1日で完売・次回未定となる事態は、本記事第3章「在庫バッファの消滅」が具体的に観測される代表事例である。

3-3. 市場における具体的予兆(2026年4月の現状)

2026年3月末時点で、複数の国内大手卸売業者および外資系メーカーから以下の動きが報告されている。

⚠ 価格改定と供給制限の動き

価格改定の通知:2026年5月以降の納品分に対し、10〜20%の価格転嫁を行う旨の通知が医療機関や製造業へ送付され始めている。

供給制限の検討:一部の中小規模インポーターでは、原材料確保の困難を理由に、新規顧客への販売制限や、既存顧客への「過去実績に基づく割当販売」を検討し始めている。歯科業界では中野デンタルサプライが既に3月11日付で公平供給を最優先とする出荷制限を実施。

Top Gloveの動き:世界最大手のTop Gloveが製品販売価格の値上げを表明し、これに連動して国内卸の改定が進む構造となっている。

3-4. 価格上昇の実態(2026年3月時点)

CIMB Securitiesアナリスト分析(2026年4月)によれば、合成ゴム手袋の平均価格は1,000枚入り箱あたり約29米ドルに達し、前年比で約40%の上昇となっている。米国のRonCo Safety(カナダ拠点・PPEメーカー)のDaniel Pecchioli販売副社長は2026年4月、CTV Newsに対し「3月初旬から原料コストが20〜80%以上上昇している」「2026年5〜6月にカナダ市場で品不足が顕在化する」と発言した。財務省「貿易統計」および経済産業省「化学工業統計」の合成ゴム輸入価格指数も2026年第1四半期に過去5年で最大の上昇幅を記録しており、物理的な供給不足が起こる前に「価格による排除」が始まる予兆が現れている。

CHAPTER 04 ── INDUSTRY IMPACT

第4章:マレーシア依存が招く各産業への影響

世界のゴム手袋需要の約45%を供給するマレーシアの製造停滞は、単なるコスト増に留まらず、日本国内の主要産業の稼働に直結する。同様の値上げドミノは自動車部品業界でも進行しており、トヨタ系Tier1サプライヤーの2026年4月決算でも「ナフサ6月懸念」が業界共通の警鐘となっている。

A ── 医療・ヘルスケア
医療・ヘルスケア業界:最前線での供給制限

MARGMAの2026年3月26日声明によれば、マレーシアの手袋メーカーは世界195カ国以上に輸出しており、ホルムズ海峡封鎖がもたらすNBRラテックス不足は「危機(crisis)レベル」に達した。日本の医療現場では、パンデミック時の教訓から一定の備蓄があるものの、特定の滅菌済み手術用手袋や低アレルゲンモデルにおいて、2026年5月以降の価格上昇と納期延伸が現実味を帯びている。

🆕 A' ── 歯科業界・中小医療機関の最前線(5月18日追加)
歯科診療所での調達難の現実化

歯科業界向け大手卸の中野デンタルサプライは2026年3月11日付で「ホルムズ海峡封鎖による石油からの原料(ブタジエンゴム)供給停止の影響」を明記した緊急出荷制限を実施。日本の歯科診療所約7万件で日常的に使用されるニトリルグローブは、卸の出荷制限により 「公平供給ベース」での割当配給 へと運用が変化している。

さらに茨城県保険医協会では2026年4月7日のFAX案内(川西工業ヴェルパクトM-009)に対し100件超の注文殺到で即時在庫切れ・次回入荷未定。中小医療機関での共同購入チャネルでも調達難が顕在化しており、第4章で論じる「特定の滅菌済み手術用手袋」だけでなく、一般診療用の標準品も既に逼迫局面にあることを示す。

B ── 半導体・精密機器
精密機器・半導体産業:歩留まりへの影響

意外と知られていないのが、日本の基幹産業である半導体や電子部品製造における「クリーンルーム用ニトリルグローブ」の重要性である。クリーンルームで使用される手袋は、極めて低いパーティクル(発塵)量とイオン汚染耐性が求められ、これらの高付加価値製品はマレーシアの特定ラインでしか製造できないものが多い。エネルギー価格高騰に伴うマレーシア工場のTOP契約不履行リスクが表面化しており、これが特殊グレード製品の生産ライン稼働に影響を及ぼしている。

C ── 食品加工・外食
食品加工・外食産業:衛生基準維持のコスト圧力

食品衛生法に適合したマレーシア産グローブは、日本の食品工場における標準装備となっている。Top Gloveは2026年3月時点でNBR価格が前年比100%超上昇したと公表しており、利益率の低い食品加工業者にとって、消耗品であるグローブの単価が大きく上昇することは経営圧迫要因となる。最終製品(弁当、惣菜等)への価格転嫁、または衛生管理基準の見直しを迫られる局面となっている。

D ── 物流・梱包資材との連動
物流現場全体への波及

ニトリルグローブの危機は単独の事象ではなく、ナフサ起点のサプライチェーン全体の一断面である。同じくナフサ由来のストレッチフィルム・PPバンド・OPPテープも完全供給不足に陥っており、物流現場では「梱包資材+衛生資材」の両面での備蓄管理が必要な局面にある。詳細は「ストレッチフィルム・PPバンド・OPPテープ供給危機と価格急騰の全貌レポート Vol.1」を参照されたい。

市場関連製品への波及 ── Karexのケース

世界最大のコンドームメーカーKarex(マレーシア)は2026年4月時点で価格を最大30%引き上げたと公表。同社は「天然ゴム手袋の入力コストが約30%上昇、ニトリルラテックスは合成材料として全面的にコストが上昇している」とし、影響はニトリル製品だけでなく天然ゴム製品にも及んでいることを示した。これは原油高がゴム関連商品取引価格を押し上げ、天然ゴムも連動して上昇する構造を示している。

CHAPTER 05 ── CONCLUSION

第5章:総括 ── 「見えないインフラ」の防衛

イラン情勢が突きつけているのは、ゴム手袋という「安価な消耗品」が、実は中東のエネルギー供給網東南アジアの製造能力という、極めて不安定な二大要素の上に成り立つ「高度なインフラ」であるという事実である。5月時点で観測された中野デンタルサプライ・茨城県保険医協会の事例は、この構造的脆弱性が「予測」ではなく「現実」として表面化したことを物語っている。

今後の展望と対策(5月時点更新)

📌 構造的な対応の方向性

1. 脱・一極集中の加速:マレーシア以外の供給源(中国、ベトナム、タイ、あるいは国内回帰)の確保。U.S.市場では2026年から中国製医療用ニトリル手袋に最大100%の関税が適用されており、東南アジア各国のキャパシティが奪い合いになっている構造も並行して進行している。

2. 代替素材・天然ゴムへの一部シフト:石油化学依存を低減するバイオマス由来NBRの開発、用途によっては天然ゴムラテックス手袋の再評価。中野デンタルサプライ事例(3/11)でも「ラテックス品は在庫確保済み」とされており、ニトリル代替としての現実的選択肢になりつつある。ただしKarex事例の通り天然ゴムも原油高で連動上昇する点には注意。

3. 在庫戦略の再構築:パンデミック後の「Just-in-Time」回帰から、地政学リスクを織り込んだ「Just-in-Case」への部分的シフト。ただし日本接着剤工業会4/20の自制要請(経産省4/30資料)が示すように、過度な先行発注・買い占めは需給混乱を実態以上に増幅させる。「月次10〜15%ずつ積み増す段階的構築」が業界全体の供給安定化に寄与する現実的アプローチとなる。

🆕 5月時点の構造的視点 ── 「新水準への適応」

本記事第1-3節で論じたNBR市場の中長期予測(2025年31.2億ドル→2033年50億ドル・CAGR 6.1%)が示すとおり、「いつかはコロナ前の価格水準に戻る」という前提は崩れた。電動車向けの新規需要、医療衛生基準の継続的厳格化、Tier1サプライヤーの素材転換などによりNBRの恒常的なタイト需給が続く。ニトリルグローブ調達は「危機回避」ではなく「新水準への適応」として組み立てる必要がある。経産省4/30が示す上流ナフサの量的改善(5月平時比3倍)は、中長期的にはコスト構造の安定化に寄与するが、末端グローブへの波及はNBR特殊原料・米国対中関税・メーカー逆ザヤの3要因が残るため、なお時間を要する。

調達担当者の実務動向と2026年Q2-Q3の5つの実践フレームワークについては続報「ニトリルグローブ危機の最前線2026|米国関税100%施行後の供給シフトと5月以降の納期・価格改定動向」で詳述している。

我々は今、エネルギー供給網の脆さを正しく理解し、来るべき供給制限に対して「価格」だけでなく「物理的な確保」の観点から戦略を再構築する必要がある。建材・物流資材を含む2026年5月1日出荷分からの値上げ動向については「建設・物流・包装資材30社一覧」で網羅的に整理している。

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EVIDENCE & SOURCES

参照エビデンス一覧(5月18日更新版)

  1. MARGMA(マレーシアゴム手袋製造業者協会)公式声明「Margma Urges Government Intervention to Secure Raw Materials and Provide Relief Amid Strait of Hormuz Blockade」(2026年3月26日)── NBR国内優先供給とTake-or-Pay契約緩和の2点要請、マレーシア世界シェア約45%。
  2. The Edge Malaysia「Top Glove to raise nitrile glove selling prices as nitrile latex costs double」(2026年3月18日)── Top Glove社Lim Cheong Guan業務執行役員のNBR 100%超上昇発言、生産コスト14〜15ドル/販売価格16ドル、10〜14日在庫管理。
  3. The Edge Malaysia「Rubber glove manufacturers seek urgent govt intervention to secure synthetic latex, suspend gas penalties」(2026年3月26日)── MARGMA緊急声明詳報、Brent crude 104ドル超、輸出195カ国以上。
  4. European Rubber Journal「Malaysia glove makers issue call for help amid NBR latex shortage」(2026年3月27日)── MARGMA声明国際メディア報道、マレーシア世界シェア約45%確認。
  5. BERNAMA「Rubber Market Seen Trending Higher Next Week On Stronger Demand」(2026年3月28日)── MARGMA分析、NBR不足が天然ゴム需要を押し上げる構造。
  6. The Star「Margma urges relief measures amid NBR shortage due to Hormuz blockade」(2026年3月26日)── 2025年マレーシア手袋輸出140億リンギット、ゴム製品輸出全体の64%占有。
  7. New Straits Times「Margma seeks relief as NBR shortage hits glove makers」(2026年3月26日)。
  8. Malaysia SME「MARGMA Calls for Urgent Government Relief as Raw Material Shortage Hits Rubber Glove Industry」(2026年3月26日)── 政府への2点要請の詳細解説。
  9. Bryant Times(AFP配信)「Mideast war drives up condom, rubber glove prices: manufacturers」── Karex社Goh CEO発言「価格最大30%引き上げ」、Top Glove社「NBR 100%超上昇、天然ゴム入力コスト30%上昇」、Top Glove年間950億枚・2,000顧客以上。
  10. CPG Click Oil and Gas「The war in the Middle East has caused the price of rubber gloves to soar by 40%」── CIMB Securities Oong Chun Sungアナリスト分析、合成ゴム手袋1,000枚入り箱29ドル、5月末頃の不足顕在化警告、RHB・CIMB両社の警告。
  11. CTV News(2026年4月28日)「Iran war news: Price of PPE to rise, manufacturer says」── RonCo Safety(カナダ)Daniel Pecchioli販売副社長発言「3月初旬から原料コスト20〜80%以上上昇」「2026年5〜6月にカナダ市場で品不足顕在化」。
  12. AMMEX「Market Update April 2026」── ニトリルグローブ世界シェア45〜50%、米国市場最大70%、Q2にNBR制約による価格上昇圧力継続予測。
  13. 財務省「2026年3月分 貿易統計速報」── 合成ゴム輸入価格指数の上昇。
  14. 経済産業省「石油化学製品需給動向調査」── 原料ナフサ需給逼迫。
  15. 日本経済新聞「ナフサ急騰でプラ3割高 食品包装など値上げ」(2026年4月15〜16日)── 汎用合成樹脂取引価格3月比3割上昇。
  16. 中野デンタルサプライ株式会社「ニトリルグローブ供給逼迫に伴う出荷制限および緊急体制への移行について」公式案内(2026年3月11日)🆕 5/18追加
    「ホルムズ海峡封鎖による石油からの原料(ブタジエンゴム)供給停止の影響」を明示し、ニトリルグローブ各種について緊急の出荷制限・運用体制変更を実施。ラテックス品は在庫確保済みとの併記により、素材切替の現実的な選択肢としてのラテックス回帰を支持する事例。歯科業界向け卸として、国内現場対応の最も早期かつ明確な公式コミュニケーションの一つ。
  17. 一般社団法人 茨城県保険医協会「ニトリルグローブの販売 在庫切れのご連絡」公式発表(2026年4月8日)🆕 5/18追加
    4月7日のFAX案内(川西工業株式会社「ヴェルパクト VELPACT」型番M-009、1ケース2,400枚17,000円税込)に対し100件超の注文が殺到し即時在庫切れ・次回入荷未定となる事態を報告。中小医療機関での調達難の現実化を示す代表事例。
  18. 経済産業省「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保及び重要物資の安定的な供給確保の対応状況」(2026年4月30日発表)🆕 5/18追加
    5月のナフサ輸入量は平時比3倍(45万kL/月→4月90万kL→5月135万kL超)に拡大。ポリエチレン等の川下製品在庫は約1.8か月分。ナフサ由来化学製品の供給は「年を越えて継続できる見込み」と発表。日本接着剤工業会4/20の買い占め自制要請、4/21経産省・国交省説明会開催の経緯も記載。
  19. Mordor Intelligence / データブリッジ市場調査「ニトリルブタジエンゴム(NBR)市場予測 2026-2033」🆕 5/18追加
    世界のNBR市場規模は2025年に31億2,000万米ドルと推計され、2033年までに50億米ドルに達すると予測。CAGR 6.1%。自動車・電動化対応シール用途、医療用手袋、産業インフラ開発が主な成長要因。原料価格変動とサプライチェーン混乱が制約要因。
  20. 続報記事「ニトリルグローブ危機の最前線2026」(プラスチックパレット株式会社、2026年5月18日更新)🆕 5/18追加
    本記事の続報として、米国USTR対中関税100%施行後3ヶ月の市場変化・5月以降の納期通知・価格改定動向・Top Glove逆ザヤ局面・2026年Q2-Q3の調達戦略5フレームワークを実務担当者向けに整理。

免責事項・編集方針
本記事は2026年4月2日初版公開・2026年5月18日最終更新時点で公開されている公的機関・業界各社の公式情報・報道を独自に収集・整理したものです。価格・供給状況は日々変動しており、実際の調達条件は取引先・数量・地域・契約内容等により異なります。本記事の情報に基づく調達判断・投資判断等については、必ず最新情報・専門家の助言を得た上で行ってください。

2026年4月2日 掲載 / 最終更新
© 2026 プラスチックパレット株式会社|本記事はエビデンスに基づく調査・分析記事です

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