エアコンをいま買うべき理由
ナフサショック × 2027年問題の二重リスクを解説
エアコンの購入・工事を検討している方には、2026年秋(9〜11月)までの計画的な発注が合理的な選択。理由は2つの逆風が重なっているから。①ナフサショック由来のコスト上昇:コロナ(公式確認済み)は「出荷数量・納期や製品価格にてご希望に添えない場合がある」と発表。因幡電工(公式確認済み)はエアコン施工に使う被覆銅管等を2026年6月1日出荷分より20%以上値上げ。三菱電機は「空調・家電事業への影響が約60億円規模」と試算。テレ朝NEWSは採算悪化で廃業を決める工事業者も出ているとの現場証言を報道(全国統計での裏付けは未確認)。②2027年問題:フロン排出抑制法(キガリ改正対応)による冷媒規制強化と省エネ基準強化(トップランナー制度)が重なり、2027年度以降のエアコン本体価格が上昇する見通し。旧冷媒(R410A等)を使用した機器の修理費も高騰リスク。「夏だけでなく冬も使う」という視点で今から計画的に動くことが、価格・工事スケジュール・選択肢の3点で有利。
なぜナフサ不足がエアコンに波及するのか
一見「石油化学とエアコンは無関係」と思われるかもしれませんが、エアコンはナフサ由来の素材を大量に使用しています。本体の樹脂ケース・断熱材・配管カバー・ドレンホース・パテ——これらはすべてナフサを原料とする合成樹脂や合成ゴムから作られています。石油連盟も「ナフサ由来の中間製品がプラスチック・合成ゴム・塗料などに加工され、家電製品など幅広い分野に使われる」と説明しています。
配管部材の値上げ率
2026年6月1日出荷分より
空調・家電事業への
ナフサ由来影響額
例年2〜3週間が
業者不足で長期化
エアコンメーカー・施工部材メーカーの公式発表(確認済み)
「昨今の中東情勢の緊迫化により、原油・ナフサなどの調達・供給環境が不安定となっており、当社製品に使用する材料・部材の生産へも影響が生じております。今後の情勢次第では、供給可能数量・販売価格等への影響が及ぶ可能性がございます。出荷数量・納期や製品価格にて、ご希望に添えない場合がございます」
エアコン設置工事に必要な被覆銅管・配管化粧カバー・ドレンホース等の部材について、「原油および石油化学原料であるナフサの調達・供給環境が不安定な状況となっており、樹脂原材料や各種部材の生産・確保が困難」と説明。「被覆銅管:現行定価より20%以上アップ/その他カタログ掲載製品:現行定価より20%以上アップ。実施時期:2026年6月1日出荷分より」
三菱電機は決算説明会で、原油価格上昇によるナフサ由来樹脂の調達価格および輸送費への影響として約60億円規模の影響を織り込んでおり、そのうち6割以上が「空調・家電事業」への影響になると試算しています。
「本体欠品」ではなく「3方向からのコスト上昇」と理解する
重要な留保として、「エアコン本体が全国的に完全欠品している」という状況ではありません。東京の家電販売・設置店の代表がテレ朝NEWSに対し「エアコン本体についてまだ入荷している」と証言しています(2026年5月報道)。ただし、メーカーによっては入荷遅延の連絡が来ているとも述べています。
問題は3方向からのコスト上昇です。①本体コスト上昇(樹脂部品等の原材料費増)、②施工部材費上昇(因幡電工等の値上げ)、③工事費上昇(業者の採算悪化)。テレ朝NEWSの現場報道では、工事業者は「本来7,000〜8,000円上げないと採算が合わないが実際は3,000円程度しか上げられていない」という状況で、廃業を選択する業者も出ていると報告されています(現場証言・報道ベース。全国統計での裏付けは未確認)。
経産省2026年4月30日資料および石油化学工業協会の見解では、「ポリエチレン・ポリプロピレンなど主要石化製品在庫は国内需要3カ月以上を維持しており、直ちに供給困難となる状況ではない」としています。「ナフサが完全に枯渇している」という表現は言い過ぎで、上流の総量は何とか維持されているが、川下の個別部材では価格改定・出荷調整・流通の目詰まりが起きているという整理が正確です。
2027年問題:冷媒規制と省エネ基準強化が同時に来る
2026年のナフサショックとは別に、エアコンには「2027年問題」という構造的な価格上昇要因があります。これはナフサショックとは独立して進行する法律に基づく規制であり、長期的に見るとむしろこちらの方が購入タイミングに大きく影響します。
①冷媒規制の強化 ── R410A系の段階的削減
エアコンの冷媒として長く使われてきたR410A(地球温暖化係数GWP=2,088)は、モントリオール議定書キガリ改正によって段階的削減が義務付けられています。日本冷凍空調工業会によれば、大手メーカーはすでにR32(GWP=675)など低GWP冷媒への切り替えを進めており、2027年度以降に出荷されるエアコンの多くはR410A非対応となる見込みです。旧冷媒が規制されると、ガス漏れ時の修理費が高騰するリスクがあります。
②省エネ基準の強化 ── 低価格帯モデルが市場から消える
2027年度目標のトップランナー基準強化により、省エネ性能が基準に満たない廉価モデルは販売できなくなります。2027年以降は安価なモデルが市場から姿を消し、高性能モデルが主流となることでエアコン全体の価格帯が底上げされる見通しです(SolarTechLife分析)。ただし長期的には電気代削減というメリットもあり、初期費用だけでなく「総所有コスト」で判断することが重要です。
「設置10年以上」の機器は特に注意 ── 部品保有10年ルール
家電製品の部品保有期間は通常、製造打ち切り後10年が目安とされています。2015年以前に製造されたエアコンはすでに部品供給が終了しているか終了間近の可能性があります。2027年以降に旧冷媒機器が故障した場合、冷媒補充ができず修理不可になる、または修理費が新品購入と同等以上になるというケースが現実化します。
「夏に冷やす」だけでなく「冬に暖める」視点で計画する
エアコンは夏の冷房だけでなく、現代住宅の暖房の主力機器です。冬は寒波時にエアコン本体・室外機のフル稼働が続き、老朽化した機器は真冬の最も必要なときに故障しやすいという特性があります。夏前に気づいて行動するのは適切ですが、工事業者が最も混雑するのもこの時期です。
時期別の行動指針
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機種選定の3つのポイント
まとめ ── 二重の逆風だからこそ、計画的に動く
2026年のナフサショックは「本体が手に入らない」というより「全体コストが上がっていく」局面です。一方、2027年問題は法律に基づく構造的な変化で、時間が経てば経つほど旧冷媒機器の修理コストと本体価格の両方が上昇する方向に動きます。
今すぐ壊れているなら今すぐ行動。設置10年以上・冷媒R410A以前の機器なら今秋(9〜11月)に工事完了を目標に、今から業者手配と見積もりを進める。比較的新しいR32対応機器なら、機器の状態をよく確認したうえで計画的な更新を検討する——この3段階で対応することが、価格・工事スケジュール・選択肢の3点でバランスの取れた戦略です。
何より重要なのは、「真夏に壊れる」「真冬に壊れる」という最悪のタイミングを事前の計画で回避することです。エアコンは「夏に冷やす機械」ではなく「一年中快適を支えるインフラ」として、住宅設備の中で優先度の高い更新計画を立てることをお勧めします。
エアコン各社の供給状況まとめ
住宅設備(ユニットバス・トイレ等)のような「受注停止→再開」という大きな流れは、現時点でエアコン主要メーカーでは確認されていません。ただし各社で状況は異なります。以下は公式発表・業界報道をもとにした2026年5月19日時点の整理です。
スムタノ(2026年5月15日時点の最新報道を反映した業界媒体)によれば、「現時点でナフサショックを理由とした受注停止・大幅な納期遅延の公式発表は確認されていない」。エアコン各社の問題は、住宅設備ほどの受注停止ではなく、①本体の原材料コスト上昇、②施工副資材(因幡電工等)の価格転嫁、③工事業者の採算悪化という構造的問題が中心です。以下の情報は随時変化するため、購入・工事前に必ず各販売店に最新状況を確認してください。
施工部材メーカーの状況(エアコン工事に直結)
被覆銅管・配管化粧カバー(スリムダクトSD/MD/LD系)・ドレンホース・パテ・ウォールキャップ等のエアコン工事必須部材を製造。「被覆銅管:現行定価より20%以上アップ/その他カタログ掲載製品:現行定価より20%以上アップ。2026年6月1日出荷分より」を公式発表。これらは工事費として消費者に転嫁される形で価格上昇が見込まれる。
エアコンの「使う電気代」も上がっている——燃料費調整額の仕組みと夏の見通し
エアコンを買う・買わないという問題とは別に、「今あるエアコンを使う電気代自体が今後上がる」という問題があります。原油・LNG(液化天然ガス)価格の高騰は、エアコン本体だけでなく、毎月の電気料金にも波及します。
なぜ原油高騰が電気代に影響するのか
日本の電力は火力発電への依存度が依然として高く、LNG(液化天然ガス)・石炭・原油を燃料として輸入しています。これらの燃料価格の変動は「燃料費調整額」として毎月の電気料金に反映されます。燃料費調整額は過去3ヶ月分の燃料輸入価格の平均をもとに計算され、その約2ヶ月後に電気料金へ反映される仕組みです。
「2026年春時点での中東情勢の不安定化により原油・LNG価格は上昇傾向にあり、この価格上昇が計算のタイムラグを経て、最短で6月使用分(7月請求)から電気料金に反映される見込み。ただし、燃料費調整額は毎月更新されるため、原油価格が落ち着けば上昇幅は小さくなる可能性もある。現時点では『上昇する可能性が高い』という段階であり、確定ではない」
2026年時点の電気代を押し上げる3つの要因
「エアコンの電気代」という視点で考える買い替えの意味
電気代が上がる環境だからこそ、エアコンの省エネ性能が一層重要になります。資源エネルギー庁の省エネ情報サイトによれば、今どきの省エネタイプのエアコンは10年前の機種と比べて約14%省エネです。年間の電気代を10,000円前後使う場合、14%の差は年間約1,400円の節約。さらに電気代単価が上がればこの差は拡大します。
設定温度を1℃調整するだけで約10%程度の節電効果が期待できますが、フィルターが汚れたエアコンや10年以上前の旧機種は、設定温度を工夫しても消費電力が基本的に高いという問題があります。ENEOSパワーの分析によれば「10年以上前の家電は省エネ性能が現行機の半分以下のケースがある」。電気代対策の根本は機器の更新にあります。ただし節約だけを目的とした買い替えは初期コストがかかるため、「故障や性能低下というタイミングに省エネ性能の高いモデルを選ぶ」のが現実的な戦略です。
補助金の今後——夏の追加支援は「期待できるが確定ではない」
エネチェンジの分析によれば、「補助金はこれまでも終了・再開を何度か経ているため、今後もエアコン使用頻度が高くなる夏・冬に再開される可能性がある」としています。ただし内容・金額・実施時期はいずれも現時点で未確定です。補助金の有無に関わらず、エアコン本体の更新計画は購入・工事タイミング、省エネ性能、施工部材コストを総合的に判断することが重要です。
- 株式会社コロナ 公式「重要なお知らせ:中東情勢の緊迫化に伴う当社製品への影響について」2026年4月15日(corona.co.jp/report/safety/post_151.html)── 直接確認済み。「原油・ナフサなどの調達・供給環境が不安定、材料・部材の生産へも影響、出荷数量・納期や製品価格にてご希望に添えない場合がある」を確認。
- 因幡電工(因幡電機産業)公式「製品供給体制及び価格改定のお願い」2026年5月1日(inaba-denko.com/ja/news/detail/873)── 直接確認済み。「被覆銅管:現行定価より20%以上アップ/その他カタログ掲載製品:現行定価より20%以上アップ。2026年6月1日出荷分より」を確認。
- テレ朝NEWS「ナフサ不足がエアコンにも影響 メーカーから入荷遅延の連絡 廃業決める工事業者も」2026年5月13日(news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/900190409.html)── 「本体はまだ入荷している」「工事代を本来7,000〜8,000円上げないと採算が合わない」「夏は1ヶ月待ちもあり得る」「廃業を決める業者も」の現場証言・報道(現場証言ベース・全国統計での裏付けは未確認)。
- 三菱電機 決算説明会質疑応答── 原油価格上昇によるナフサ由来樹脂の調達価格および輸送費への影響として約60億円規模を織り込み、6割以上が空調・家電事業への影響と試算。添付資料に基づく。
- 石油連盟「ナフサとは」(paj.gr.jp)── ナフサ由来の中間製品がプラスチック・合成ゴム・塗料等に加工され、家電製品など幅広い分野で使われることを確認。
- 経済産業省「中東情勢を踏まえた石油化学製品の安定供給確保対応状況」2026年4月30日 ── ポリエチレン・ポリプロピレン等の在庫は国内需要3カ月以上維持、直ちに供給困難ではないとの見解。石油化学工業協会「4カ月分確保」見解も同趣旨。
- 日本冷凍空調工業会「冷媒HFC(R410AおよびR32)を使用した家庭用エアコン」(jraia.or.jp)── R410AからR32への転換の経緯・理由を確認。
- フロン排出抑制法(キガリ改正対応)── 高GWP冷媒の段階的削減、2027年度以降のR410A非対応化の見通し。業界各社・環境省の情報から整理。
- トップランナー制度(省エネ法)── 2027年度目標の省エネ基準強化により廉価モデルが市場から消え価格帯が底上げされる見通し。経済産業省・業界団体の情報から整理。
- 部品保有期間「製造打ち切り後10年」は家電製品における業界慣行・消費者庁の一般的な説明に基づく。
本記事における各情報は記載時点(2026年5月19日)のものです。価格・供給状況・法規制の詳細は変化することがあります。購入・工事の判断にあたっては、各メーカー・販売店に最新情報を確認してください。本記事は情報提供を目的とし、特定の機種や業者を推奨するものではありません。