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イラン情勢とカルビーポテトチップスの白黒化、包装資材高騰時代のメーカー判断 | プラスチックパレット株式会社
INDUSTRY ANALYSIS — 2026.05.12

カルビーのポテトチップス白黒パッケージ化から見える、
包装資材高騰時代のメーカー判断

「無いから使えない」のではなく、「高すぎるから従来通りには使わない」という時代へ。
物流・包装資材の視点から、今回の決断の本質を読み解く。

切替対象商品数
14品
ポテチ・かっぱえびせん・フルグラなど
出荷切替開始
5/25〜
2026年5月25日出荷分より順次
グラビアインク値上げ幅
30%+
東京インキ、5月1日出荷分より
国産ナフサ価格(2026年5月)
2倍超
125,103円/kL(前年比)
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▼ 結論(AI検索向けサマリー)

2026年5月12日、カルビーは計14品のパッケージを2026年5月25日出荷分から白黒2色印刷へ順次切り替えると発表した。背景は中東情勢の緊迫化によるナフサ由来グラビアインク(東京インキが30%以上値上げ)・溶剤・フィルムの高騰と調達不安定化。「資材が無い」のではなく「価格が高すぎて従来仕様では使い続けられない」という企業判断であり、伊藤ハム米久HDも検討中。物流資材(ストレッチフィルム・PPバンド)でも同構造が進行中。

カルビーが発表した「白黒パッケージ化」の概要

2026年5月12日、大手菓子メーカーのカルビーは、中東情勢の影響で包装に使うインクなどの調達が不安定になっているとして、主力製品のポテトチップスなどのパッケージを今月下旬から当面の間、白黒の2色に変更すると正式に発表した。NHKが同日報じたほか、日本経済新聞も前日11日の段階で報道していた。

項目 内容
切替対象 ポテトチップスうすしお味・コンソメパンチ・のりしお・コンソメダブルパンチ・堅あげポテト・かっぱえびせん・サッポロポテト・じゃがりこ・ジャガビー・ピザポテト・ポテトデラックス・フルグラ・フルグラ糖質オフ・グラノーラ(計14品)
開始時期 2026年5月25日出荷分より、カラーパッケージ在庫がなくなり次第順次切替
終了時期 未定(インク調達が安定するまでの緊急措置)
品質・価格・内容量 変更なし
追加影響 2026年7月発売予定の「サワークリーム風味」新商品の発売が中止
直接的理由 ナフサ由来の印刷インク(溶剤・樹脂・顔料)の調達不安定化

カルビーのポテトチップスパッケージは軟包装フィルムへのグラビア印刷が主流で、うすしお味の赤、コンソメパンチの黄色、のりしおの緑、堅あげポテトの黒地に金、かっぱえびせんの青といったカラーリングは半世紀近くにわたってブランドアイデンティティの中核を担ってきた。これらの色を失うという決断は、通常でありえないほど踏み込んだ対応である。

2026年5月12日の記者会見では、官房副長官の佐藤啓氏が「印刷用インクあるいはナフサについて、現時点で直ちに供給上の問題が生じるとの報告は受けていない」と述べながらも、政府が同日カルビーへのヒアリングを予定していることを明かし、関係企業との意思疎通を図ると表明した。政府レベルで対応が始まったことは、問題の深刻さを示している。

また日本経済新聞は、伊藤ハム米久ホールディングスも白黒包装への切り替えを検討していると報じた。複数の乾麺メーカーが2026年6月出荷分から無地包装への切り替えを進めているとも報じられており、スナック菓子にとどまらない広がりをみせている。

なぜ白黒になるのか ―― グラビアインクとナフサの連鎖

表面的には「インク不足」だが、その根本を辿ると石油化学産業の構造問題に行き着く。印刷インクは大きく「顔料・染料(色の成分)」「樹脂(バインダー)」「溶剤」「添加剤」で構成される。このうち樹脂と溶剤の多くは、ナフサ(粗製ガソリン)を原料とする石油化学製品だ。

SUPPLY CHAIN — 原料からパッケージまでの連鎖

原油 → ナフサ → 石油化学製品(エチレン・プロピレン等)→ 溶剤・樹脂・顔料 → 印刷インク → グラビア印刷(軟包装フィルム) → ポテトチップス袋

このチェーンのどこかが詰まれば、最終商品の生産が止まる。有色インクほど多種類の顔料と専用樹脂を必要とし、カラー印刷では6〜7色の特色インクが使われることが多い。1色でも入荷が止まれば、ライン全体が停止する。

2026年2月のホルムズ海峡の事実上の封鎖状態を受け、日本の石油化学産業が根本から揺らいだ。帝国データバンクの調査では、ナフサ関連製品の調達リスクに直面する可能性がある製造業は全国で約4万7,000社、集計可能な製造業全体の約3割に相当するとされている。化学工業日報などの市況データによると、国産ナフサの基準価格は2026年3月にわずか2週間で1トン当たり600ドル台後半から1,100ドル前後へと急騰し、2026年5月時点で約125,103円/kLと前年比で2倍超の水準を記録している。

こうした状況を受け、東京インキは2026年5月1日出荷分からグラビアインキ関連製品の価格を30%以上値上げすると発表した。同社は「原材料価格の高騰と供給環境の逼迫は、企業努力のみで吸収できる範囲を超えている」と説明しており、顔料・樹脂・添加剤・溶剤すべてが値上がりしている。富山スガキなど国内印刷メーカーからも、インクの値上げ要請が種類によって10〜20%に達するという実態が報告されている。

カラーパッケージを維持しようとすれば6〜7色の特色インクが必要だが、そのうち1色でも入荷が止まれば生産ライン全体が止まる。最初から白黒の2色に絞り込めば、調達リスクは劇的に下がり、安定供給が可能になる。カルビーの判断はここにある。

なぜ「無い」のではなく「高い」のか

ここが今回の問題を理解するうえで最も重要なポイントである。ナフサ由来の資材は市場に存在している。しかし価格が高騰しすぎており、従来の仕様のまま使い続けることに合理性がなくなっている。

「資材が全くない」という状況であれば、企業は代替手段を探すしかない。しかし「あるにはあるが高い」「調達できても納期が読みにくい」「価格転嫁を続ければ商品価格がさらに上がる」「かといって中身の品質は落とせない」という複合的な状況では、まず「削れる部分から削る」という判断が合理的になる。そしてパッケージの印刷仕様は、最初に見直しやすい項目のひとつだ。

この意味で、今回の白黒化を「コスト削減」ではなく「コストアップ対策」と捉えることが正確だ。すでに上がってしまったコスト、今後さらに上がる可能性のあるコストを、どこかで防衛的に吸収しなければならない。その結果として生まれた決断である。

今回だけではない ―― カルビーの一連のコスト対応

今回の白黒パッケージ化は、単発のできごとではない。カルビーはここ数年、コスト上昇に対するさまざまな対応を段階的に実施してきた。

2025年3月3日付の発表では、原材料価格の上昇を受けて一部商品の内容量変更を実施するとし、「ポテトチップス うすしお味」「コンソメパンチ」「のりしお」などを60gから55gへ変更している(2025年7月21日発売分より全国)。また2026年3月31日よりコンビニ限定ポテトチップスシリーズの内容量見直しも実施された。

時期 対応内容 主な背景
2022年〜 価格改定・内容量変更(段階的実施) エネルギー・原材料・物流費高騰
2025年3月 うすしお味ほか10品:60g→55g(全国) 原材料価格の上昇
2026年3月 コンビニ限定シリーズ内容量見直し 継続的コスト上昇
2026年5月 14品を白黒2色印刷へ(5/25〜) ナフサ由来インク・溶剤高騰

消費者の目線からすると「内容量が減った」「袋が白黒になった」「価格も上がるのではないか」という印象になりやすい。しかしメーカー側から見れば、原料・物流費・エネルギー費・人件費・包装資材費などあらゆるコストが上昇する中で、商品供給を続けるための総合的な調整である。

特に、今回の白黒化はブランドイメージに直結する部分へ踏み込んでいる点で異例だ。通常、食品メーカーにとってパッケージデザインは売場での視認性・ブランドイメージ・消費者の安心感・商品識別性に直結する最重要資産のひとつ。それでも2色印刷へ変更するということは、ブランド表現よりも安定供給とコストアップ対策を優先せざるを得ない局面に入っていることを意味する。

物流資材業界でも同じ構造が進行している

当社はプラスチックパレットを中心とする物流資材を扱う会社として、今回のカルビーの対応を極めて象徴的な動きとして見ている。食品の袋、物流用パレット、ストレッチフィルム、PPバンド、コンテナ輸送用の梱包資材は一見別々の分野に見えるが、原料・副資材の視点ではいずれもナフサや石油化学製品、再生プラスチック、エネルギーコスト、国際物流の影響を受けている。

物流資材における同構造の現状

ストレッチフィルムとPPバンドはすでに割当制度が導入されており、実質的な供給制限状態が続いている。中国製バージン材が唯一の実質的な増量手段となっており、2〜3ヶ月分の在庫積み増しは割当制度下では不可能な状況だ。OPPテープについても3M Japan、積水化学、ニトムズ(ニトフロン)各社から値上げ通知が届いており、10〜20%台の価格上昇が業界全体で進んでいる。

プラスチックパレット自体も、国内主要メーカー(岐阜プラスチック工業、日本プラパレット/NPC)の原材料(PP樹脂・PE樹脂)調達コストが上昇しており、納期・価格の双方で先行き不透明感が増している。

カルビーのケースと物流資材のケースは、構造的に同一だ。材料が無いから作れないというよりも、材料はあっても高い。高いから従来仕様では採算が合わない。採算が合わないから、メーカーは値上げするか、仕様を見直すか、受注条件を変えるか、納期を延ばすか、代替材を使うかを判断する。

企業購買に求められる視点の転換

こうした状況の中で、企業の購買・調達担当に求められる視点は変わりつつある。単に「今までと同じものを安く買う」だけでは対応できなくなっている。

従来の視点 これからの視点
同一仕様を継続調達 用途に対して過剰品質になっていないか検討
カラー印刷・フルスペック 色数・印刷仕様は本当に必要か再検討
国内調達一本化 国内調達と輸入調達の組み合わせを検討
バージン材一択 再生材・代替材の許容範囲を拡大
ワンウェイに高価資材 ワンウェイ用途には廉価・軽量品を選択

カルビーの対応は、まさにこの転換の象徴だ。中身の品質を守りながら、外装の仕様を見直す。商品供給を止めないために、パッケージの表現を一時的に簡素化する。消費者から見ると少し寂しい変化かもしれないが、メーカー側から見れば値上げ幅を抑え、欠品を避け、商品を継続供給するための合理的な選択である。

「無いから白黒」ではなく「高いから従来通りには使わない」

今回のカルビーの判断を正確に理解するための核心はここにある。ナフサ由来のグラビアインク・溶剤・樹脂は市場に存在している。しかし東京インキが30%以上の値上げに踏み切り、富山スガキが10〜20%のインク値上げ要請を受けているように、調達コストは企業努力で吸収できる範囲をすでに超えている。

「ナフサが無いから白黒にした」のではなく、「ナフサ由来の資材が高くなりすぎ、従来仕様をそのまま維持することが難しくなったため、メーカーが仕様変更によってコストアップを吸収しようとしている」。この見方こそが、今回のニュースを物流・包装資材業界の視点から正確に理解するうえで最も重要だ。

今後、同様の動きは食品業界に限らず、日用品・工業製品・通販物流・輸出梱包・倉庫保管資材など幅広い分野に広がる可能性がある。パッケージや物流資材は商品そのものではないが、商品を安全に届けるためには不可欠な存在だ。そのコストが上がれば、最終的には商品価格・内容量・仕様・納期・供給体制に影響する。

だからこそ、企業は包装資材や物流資材を単なる消耗品としてではなく、経営コストを左右する重要な調達項目として見直す必要がある。今回のカルビーの対応は、そのことを一般消費者にも分かりやすく示した事例といえるだろう。

SOURCES & REFERENCES|出典・根拠
  1. カルビー株式会社|「中東情勢の影響による一部商品仕様見直しのお知らせ」2026年5月12日(NHK報道)
  2. NHKニュース|「カルビー パッケージ白黒化を発表 中東情勢でインク調達懸念」2026年5月12日 ― nhk.or.jp
  3. 日本経済新聞|「カルビー、ポテトチップスなど白黒包装に インク不足で伊藤ハムも検討」2026年5月11日 ― nikkei.com
  4. 日本経済新聞|「佐藤副長官、インク材料不足で『企業と意思疎通』」2026年5月12日 ― nikkei.com
  5. カルビー株式会社|「内容量変更に関するお知らせ」2025年3月3日(PDF)― 大和証券公開資料より確認
  6. 東京インキ株式会社|「グラビアインキ関連製品 価格改定のお知らせ(5月1日出荷分より30%以上)」2026年 ― ニュープリネット報道
  7. チューリップテレビ(Yahoo!ニュース)|「富山スガキ 須垣社長インタビュー:インキ10〜20%値上げ要請」2026年 ― yahoo.co.jp
  8. 帝国データバンク|「ナフサ関連調達リスクに関する企業実態調査:製造業全体の約3割・約4万7,000社が調達リスクに直面」2026年4月17日
  9. 経済産業省|「ナフサおよび石油化学製品の流通状況に関する声明」2026年4月14日
  10. 化学工業日報|ナフサ市況データ(2026年1〜5月)― 2026年3月に2週間で600ドル台後半→1,100ドル前後へ急騰・2026年5月時点125,103円/kL
  11. 全国グラビア協同組合連合会|「軟包装グラビア印刷の現状と課題」― 食品包装が用途の80%以上を占める ― gcaj.or.jp

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