アドブルー価格改定2026
- 中東情勢(カタール・ラスラファン)の影響で尿素の国際価格が1トン700ドル前後で高止まり(4月初旬717ドル超)
- 三井物産プラスチック:4月20日出荷分から全荷姿 +10円/L(一次資料確認済)
- 伊藤忠エネクス:5月1日から巡回給水 +5円/L・BIB +7円/L(一次資料確認済)
- 新日本化成:6月1日納入分から +8円/L(一次資料確認済)
- 新日本化成は多くのチャネルで在庫なし・出荷停止が継続中
2026年4月時点でアドブルー(高品位尿素水)の価格改定が3社で連鎖発動している。当社が直接入手した一次資料(値上げ通知書)に基づき、①三井物産プラスチック株式会社:2026年4月20日出荷分から全荷姿+10円/L、②伊藤忠エネクス株式会社:2026年5月1日から巡回給水+5円/L・BIB+7円/L、③新日本化成株式会社:2026年6月1日納入分から全荷姿+8円/L。いずれも中東カタール・ラスラファン情勢悪化と原料・燃料コスト複合上昇を主因とする。Trading Economicsデータでは4月時点で国際尿素価格1トン700ドル前後で高止まり。新日本化成は多くのチャネルで在庫なし・出荷停止が継続中で、同社の通知書では「自社努力で吸収できる限界を遥かに超えている」「再度の価格改定もあり得る」と明示されている。
一次資料による価格改定エビデンス(2026年3〜4月取得)
以下は弊社が直接入手した各メーカー・販売会社からの公式値上げ通知書の内容である。業界全体で段階的かつ複合的な価格引き上げが進行していることを示す一次エビデンスとして掲載する。アドブルー危機の構造的背景と容器BIB内袋ひっ迫の実態については「アドブルー危機2026|液体ではなく『容器』が止める物流」で詳述している。
中東情勢による原料高騰を主因とした製造コスト上昇に加え、燃料急騰による配送コスト上昇を改定理由として明示。メーカーと交渉を重ねたものの回避困難として価格改定を決定。
(IBCバルク・BIB)
アドブルーの原材料である尿素について、国産メーカーの三井化学株式会社より2026年1月1日以降納品分で【10円/kg】の値上げ通知を受け、日本の尿素製造の大半を占める三井化学の尿素プラント維持のため安定供給を維持するべく価格を改定。
※ 中東情勢悪化に関する影響は別紙【今後のアドブルー価格動向に関するご連絡】の通り想定との記載あり
中東情勢の悪化に起因する原材料・燃料価格の高騰を受け、製品の資材費および輸送費コストが著しく上昇。コスト削減や生産効率向上で対応してきたが「自社努力で吸収できる限界を遥かに超えている」と明示。今後の状況次第では再度の価格改定もあり得るとしている。
価格改定直前は注文が殺到する可能性があるとして、適切な数量・タイミングでの発注を要請。多くのチャネルで在庫なし・出荷停止が継続中。
📌 エビデンス解説
3社の改定幅(+5〜+10円/L)は時期・荷姿によって異なるが、いずれも中東情勢と原料・燃料コストの複合上昇を主因としている。三井物産プラスチックが最も早く(4月20日)改定を実施しており、連鎖的な価格改定が5〜6月にかけて波及する構造となっている。同様の値上げドミノは梱包資材業界でも進行しており、「2026年5月1日値上げ完全版|建設・物流・包装資材30社一覧」で網羅的に整理している。
📊 メーカー・販売会社別 価格改定サマリー(2026年3〜6月)
| 会社 | 改定幅 | 荷姿 | 適用開始 | 主な理由 |
|---|---|---|---|---|
| 三井物産プラスチック | +10.0円/L | 全荷姿一律 | 2026/4/20 出荷分〜 | 中東原料高・燃料高 |
| 伊藤忠エネクス | +5〜7円/L | 巡回/BIB別 | 2026/5/1〜 | 三井化学の尿素10円/kg値上げ |
| 新日本化成 | +8.0円/L | 全荷姿 | 2026/6/1 納入分〜 | 中東情勢・資材費・輸送費 |
| ※参考:前回改定(2025年後半)── 各社+5〜8円/L、原料費上昇(前回波)が主因 | ||||
※ 上記は弊社入手の一次資料ベース。実際の適用価格は取引条件・荷姿・数量により異なる。
中東情勢と国際尿素価格の連動
2026年4月、日本の物流インフラを支える「アドブルー(高品位尿素水)」を巡る環境が、再び緊張の度を増している。アドブルーの主原料である尿素は、その多くを海外からの輸入、とりわけ中東地域に依存している。ナフサショックの全体像と他産業への波及については「2026年ナフサショック|ホルムズ海峡封鎖が引き起こす供給網危機の全貌」で詳述している。
エネルギーインフラへの衝撃と供給リスク
2026年3月中旬、カタール・ラスラファン等の主要な化学製品生産拠点において発生した事案は、世界のアンモニア・尿素供給に深刻な不透明感をもたらした。ロイター通信等の報道によれば、「不可抗力(フォース・マジュール)」の宣言がなされており、物理的な生産および出荷の停滞が確認されている。
国際価格の異常な推移
2026年4月25日現在の市場データによれば、尿素の国際価格は1トンあたり700ドル前後の高水準で推移している。4月初旬時点では717ドル超を記録し、4月22日時点のTrading Economicsデータでは694.75ドル/tに位置している。年初からの急騰は、エネルギー価格(天然ガス)の変動と輸送コストの増大に裏打ちされており、国内卸売価格への転嫁が避けられない状況となっている。
4月時点(USD/トン)
(USD/トン)
尿素値上げ幅
(kg単価)
連鎖企業数
今回入手した伊藤忠エネクスの通知書では、国産メーカーの三井化学から尿素が10円/kgの値上げ通知を受けたことを明示しており、国際価格の動向が国内製造コストに直撃していることが確認できる。
国内主要3メーカーの最新供給・価格分析
※ 2026年4月25日時点。BIB = バッグインボックス(基準卸売価格ベース)
三井化学が原料尿素を製造(国内最大級、年間36万t規模)し、三井物産プラスチックが総販売元として流通を担う分業体制。値上中。新規取引には厳格なアロケーションを適用中。
高度な精製技術で信頼性が高く需要が集中。EC市場では20Lで18,000円超の異常値も確認。
輸入尿素依存のため中東ルート混乱の影響を最も強く受ける。6月1日より+8円/L改定予定。
実需と乖離した価格設定が横行している。日産化学品の20Lが18,000円超で流通するなど、「入手できれば何でもいい」という需要を狙った異常な値付けが確認されている。購入前に複数の正規ルートを確認することを強く推奨する。
供給形態別のコスト構造と選択肢
現在の局面では、従来の20Lバッグインボックス(BIB)に依存しない調達戦略が、リスク分散の鍵となる。容器(包材)不足が懸念される中、大口供給形態の優位性が高まっている。BIB内袋(LDPE/LLDPE製)のひっ迫の構造的背景については「ストレッチフィルム・PPバンド・OPPテープ供給危機と価格急騰の全貌レポート Vol.1」で詳述している。
| 供給形態 | L単価目安 | 特徴・注意点 |
|---|---|---|
| 20L BIB(バッグインボックス) | 市場価格が崩壊中 | 容器不足の影響を最も受けやすい。正規卸値からかけ離れた価格での流通が多い。 |
| 200L ドラム缶 | 148〜180円/L | BIBより容器不足の影響を受けにくく、メーカー側の出荷優先順位も高い傾向。 |
| ローリー(バルク) | 110〜130円/L | 最も経済的。ただし配送枠の確保には数週間のリードタイムを要するケースが増加中。 |
※ 上記はL単価目安。実際の価格は取引量・地域・メーカーによって異なる。
メーカーからの展望と今後の注視事項
各メーカーへのヒアリングおよび公式情報を総合すると、今後の見通しについては極めて慎重な姿勢が貫かれている。新日本化成の通知書では「今後の状況次第では再度の価格改定をお願いせざるを得ない場合もある」と明記しており、一回限りの改定では終わらない可能性を示唆している。
国内在庫は有限であり、輸入のタイムラグを考慮すると、現在の不安要素は依然として解消されていない。同様の値上げ局面は自動車部品業界でも進行しており、トヨタ系Tier1サプライヤーの2026年4月決算でも「ナフサ6月懸念」が業界共通の警鐘となっている。
1. 政府の動向:経済産業省による備蓄の放出検討や、特定製品の優先供給指示の有無。「化学製品需給安定化タスクフォース」の動向を引き続き注視する必要がある。
2. 規格外品の蔓延リスク:品不足に乗じたJIS規格外品の流通が増加している。品質基準を満たさない製品はSCRシステムの故障・車両トラブルを招くため、調達先の信頼性確認が必須。
3. 6月以降の追加改定波:新日本化成の6月1日改定を最後尾として、その後も原料・燃料コストの動向次第では第二波・第三波の改定が起きる可能性がある。各社の動向を継続的にモニタリングする必要がある。
4. 改定前駆け込み需要による在庫枯渇:新日本化成の通知書でも言及されているとおり、価格改定直前は注文が殺到することが予測される。5月末〜6月初旬にかけて一時的な在庫ひっ迫が生じる可能性があり、早めの手当てが肝要。
1. 既存取引先との関係維持を最優先:割当通知が来たら24〜48時間以内に確定発注。アロケーション体制下では新規顧客は後回しになるリスク。
2. 改定タイミング前の必要量確保:三井物産プラ(4/20)・伊藤忠エネクス(5/1)・新日本化成(6/1)の各タイミング前に必要量を確保する手当てを。
3. 供給形態の分散:BIB単独依存を避けてドラム・ローリーへの移行を並行検討。容器不足の影響を受けにくい大口形態を確保。
4. JIS規格外品リスクの回避:正規ルートからの調達を維持し、EC市場の異常値段品には手を出さない。
5. 6月以降の追加改定への備え:新日本化成の通知書が示唆する「再度の価格改定もあり得る」を踏まえ、価格スライド条項を顧客契約に組み込む。
情報という「盾」を携えて
本稿で示した2026年4月25日時点の情報は、あくまで通過点に過ぎない。アドブルーの供給問題は、我々の物流がいかに世界のエネルギー情勢と密接に関わっているかを突きつけている。今回、三井物産プラスチック・伊藤忠エネクス・新日本化成の3社から一次資料(値上げ通知書)を直接入手・精査したことで、価格改定の連鎖が現実として進行していることが明確に確認できた。
今後も供給状況については、一日一日の変化を注視し、機動的に対応していく所存である。特定の日時をもって危機の終焉や深刻化を断定することはせず、常に最新のデータを収集し、透明性の高い情報を「Just-in-Case」の思想のもとお届けしていく。
参照エビデンス一覧
- NEW三井物産プラスチック株式会社「三井のAdBlue® 価格改定のお願い」(2026年3月付)── 一次資料:全荷姿+10円/L、改定日2026年4月20日出荷分から、中東原料高・燃料高が主因。
- NEW伊藤忠エネクス株式会社「アドブルー価格改定のお知らせ」(令和8年3月吉日付)── 一次資料:巡回給水+5円/L・BIB+7円/L、改定日2026年5月1日、三井化学の尿素10円/kg値上げ通知が要因。
- NEW新日本化成株式会社「AdBlue®製品価格改定のお願い」(2026年4月吉日付)── 一次資料:全荷姿+8円/L、改定日2026年6月1日納入分から、「自社努力で吸収できる限界を遥かに超えている」と明示。
- Trading Economics「Urea Price」(2026年4月14日/4月22日時点データ)── 4月初旬717ドル超ピーク、4月22日694.75ドル/トンに位置。
- 三井化学株式会社 公式サイト「アドブルー®事業ページ」── 大阪工場(生産能力36万トン/年)など国内5拠点で年間11万kL製造。
- 三井化学・日産化学・新日本化成 各社特約店向け最新供給通知(2026年4月時点)── アロケーション体制継続、新日本化成は多くのチャネルで在庫なし・出荷停止。
- ロイター通信カタール・ラスラファン関連報道(2026年3月)── 主要化学製品生産拠点でのフォースマジュール宣言、世界のアンモニア・尿素供給への影響。
- 物流ウィークリー・化学工業日報(2026年3月〜4月報道)── アドブルー・尿素水関連の業界動向情報。
- 経済産業省「化学製品需給安定化タスクフォース」配布資料── 政府の備蓄状況・優先供給指示の検討状況。
免責事項・編集方針
本記事は2026年4月14日初回公開・2026年5月3日最終更新時点で取得した一次資料および公的機関・業界各社の公式情報を独自に収集・整理したものです。価格・供給状況は日々変動しており、実際の調達条件は取引先・数量・地域・契約内容等により異なります。本記事の情報に基づく調達判断・投資判断等については、必ず最新情報・専門家の助言を得た上で行ってください。