Supply Chain Report / SINGAPORE PETROCHEMICAL OUTPUT AND BUNKER SALES
日本のPE仕入れ先シンガポールはなぜ戻らないのか|製油所は7月に回復、石化だけ24年ぶりの低水準
シンガポールの石油化学の生産指数は、2026年6月に56.8まで落ちました。この水準を最後に下回ったのは2001年11月です。一方で船に売る燃料は2025年に5,677万トンと1995年以降の最高を記録しました。ところがその船舶燃料も、2026年4月から前年同月を下回っています。2つの系列を同じ時間軸に並べました。
ANSWER
シンガポールの石油化学の生産指数は2026年6月に56.8で、2001年11月以来の低さです。急落は3月で、2月の87.0から66.3へ落ちました。ホルムズ海峡の封鎖は2月28日です。船舶燃料は2025年に過去最高でしたが、2026年4月から前年割れに転じています。
石油化学の生産指数(2026年6月)
56.82025年=100
2001年11月以来の低さ
船舶燃料の販売(2025年)
5,677万トン
1995年以降の最高
同 2026年5月の前年同月比
6.8%減
4月から2か月連続の前年割れ
この記事の要点
- シンガポールの石油化学の生産指数は、2026年2月の87.0から3月に66.3へ、1か月で20.7ポイント落ちました。ホルムズ海峡が閉じたのは2026年2月28日です。底は6月の56.8で、7月も58.6と戻っていません。
- この56.8という水準を最後に下回ったのは2001年11月の55.0です。24年7か月ぶりの低さになります。年平均で見ても2021年の136.6から2025年の100.0へ下がり、2026年は1〜7月の平均で69.8です。
- 同じ化学クラスターの中で回復が分かれています。石油部門は4月の68.5を底に7月には95.0まで戻りましたが、石油化学は4月60.4から7月58.6とむしろ下がっています。製油所は動き出したのに、石化は止まったままです。
- スペシャリティ部門はまったく別の動きです。2026年3月の100.7から7月には114.3へ上がっています。原料をナフサに頼らない部門は、封鎖の影響を受けていません。
- 船に売る燃料は2025年に5,677万トンと1995年以降の最高になりました。1995年の1,749万トンの3.25倍です。ところが2026年は1月の16.5%増から失速し、4月に1.2%減、5月に6.8%減と前年割れに転じています。
- 燃料の中身も入れ替わりました。2026年1〜5月はC重油が12.0%増、LNGが39.4%増、メタノールが前年ゼロから6,300トンへ。逆にバイオ混合燃料は35%から56%減っています。
このページは何か
シンガポールで同時に起きている2つのことを、同じ時間軸に並べた定点観測のページである。1つは石油化学の生産が落ちていること。もう1つは船に燃料を売る商売が伸びていたこと。前者はシンガポール統計局の生産指数、後者はシンガポール海事港湾庁の月次データで追える。どちらも公開されており、誰でも同じ手順で再現できる。
当社がこの2つを並べるのは、片方だけを見ると事実の半分になるためである。生産の数字だけを見ればシンガポールは一方的にやられたように読める。燃料の数字だけを見れば無傷に見える。同じ港で両方が起きている。
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シンガポールの石化はなぜ半減したのか、自国に原油はゼロ、6月の生産52.3%減と住友化学系2社の停止
本ページの生産指数が落ちた理由を、原油の調達先、2026年3月のフォースマジュール3件、住友化学の出資関係、日本への輸入実績まで追った記事である。事情のほうを知りたい場合はそちらを先に読むとよい。
この章の結論
本ページは数字だけを置く。理由と経緯は別記事にある。新しい月が公表されるたびに追記する。
石油化学の生産は24年ぶりの低さにある
シンガポール統計局が公表している鉱工業生産指数は、化学クラスターを4つの部門に分けている。この4つは原料が違うため、同じ事故に対して別々の反応をする。まず何が何を指しているかを置く。
| 部門 | 主に何をつくるか | 主な原料 | 本ページでの位置づけ |
|---|---|---|---|
| 石油 | ガソリン・軽油・重油などの石油製品 | 原油 | 製油所そのものの稼働を示す |
| 石油化学 | エチレン・プロピレンと、そこからつくる樹脂 | ナフサ | 当社の仕入れに直接つながる系列 |
| スペシャリティ | 香料・添加剤・触媒など | 中間原料。ナフサ依存は小さい | 封鎖の影響を受けたかどうかの対照 |
| その他化学 | 上の3つに入らない化学品 | 品目により異なる | 同上 |
区分はシンガポール統計局の分類による。原料と位置づけの列は当社の整理である。
ナフサを原料にするのは石油化学である。指数は2025年の平均を100とし、月次の系列は1992年1月までさかのぼれる。
2025年の平均を100とした指数。100を下回れば2025年の平均より低い。
| 月 | 石油化学 | 石油 | スペシャリティ | その他化学 | クラスター全体 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2025年1月 | 99.3 | 98.9 | 103.9 | 87.6 | 97.4 |
| 2025年2月 | 93.8 | 97.0 | 98.5 | 90.7 | 95.3 |
| 2025年3月 | 101.9 | 101.1 | 100.8 | 77.4 | 96.1 |
| 2025年4月 | 103.4 | 97.5 | 94.7 | 102.0 | 99.2 |
| 2025年5月 | 113.3 | 103.3 | 109.4 | 94.1 | 104.4 |
| 2025年6月 | 119.2 | 97.8 | 106.4 | 98.0 | 103.6 |
| 2025年7月 | 114.2 | 102.1 | 108.4 | 104.9 | 106.2 |
| 2025年8月 | 95.2 | 104.2 | 99.2 | 103.3 | 101.4 |
| 2025年9月 | 86.3 | 94.9 | 92.7 | 101.7 | 94.3 |
| 2025年10月 | 90.5 | 96.5 | 96.1 | 100.7 | 96.2 |
| 2025年11月 | 90.9 | 99.0 | 95.0 | 109.6 | 98.9 |
| 2025年12月 | 92.0 | 107.6 | 94.9 | 129.9 | 107.0 |
| 2026年1月 | 94.4 | 106.5 | 91.7 | 98.1 | 99.7 |
| 2026年2月 | 87.0 | 93.2 | 93.0 | 91.6 | 91.6 |
| 2026年3月 | 66.3 | 80.9 | 100.7 | 82.6 | 81.8 |
| 2026年4月 | 60.4 | 68.5 | 101.7 | 110.9 | 81.7 |
| 2026年5月 | 65.1 | 90.6 | 106.4 | 110.5 | 92.5 |
| 2026年6月 | 56.8 | 87.8 | 106.3 | 119.5 | 91.6 |
| 2026年7月 | 58.6 | 95.0 | 114.3 | 113.3 | 95.0 |
シンガポール統計局「Index Of Industrial Production By Industry Cluster」(2025年=100、出典は経済開発庁)。網掛けは石油化学の底となった月。
2026年3月に落ちている。2月の87.0から3月の66.3へ、1か月で20.7ポイントである。ホルムズ海峡が閉じたのは2026年2月28日である。その翌月に落ちた。
底は6月の56.8で、7月は58.6である。2か月たっても戻っていない。
56.8という水準の意味
当社が1992年1月からの全月を調べたところ、この56.8を最後に下回ったのは2001年11月の55.0である。24年7か月ぶりということになる。ただし2000年前後のシンガポールの石油化学は現在より規模が小さく、当時の指数は40台から50台で推移していた。同じ数字でも産業の大きさが違う点には注意が要る。本ページで申し上げられるのは、いまの設備規模のまま生産がこの水準まで落ちた、ということである。
年で均すと、落ち込みが2026年に集中していることがはっきりする。
| 年 | 石油化学の年平均 | 石油の年平均 | 月数 |
|---|---|---|---|
| 2016年 | 107.4 | 99.8 | 12 |
| 2017年 | 121.2 | 108.7 | 12 |
| 2018年 | 126.6 | 108.2 | 12 |
| 2019年 | 118.3 | 102.7 | 12 |
| 2020年 | 119.5 | 85.8 | 12 |
| 2021年 | 136.6 | 88.3 | 12 |
| 2022年 | 119.4 | 95.0 | 12 |
| 2023年 | 101.7 | 93.6 | 12 |
| 2024年 | 108.6 | 98.0 | 12 |
| 2025年 | 100.0 | 100.0 | 12 |
| 2026年 | 69.8 | 88.9 | 7 |
当社が月次指数を単純平均した。2026年は1〜7月の7か月分である。網掛けは2026年。
2021年の136.6から2025年の100.0まで、5年かけて緩やかに下がってきた。そこから2026年の1〜7月平均69.8へ、1年で30ポイント落ちた。石油部門の年平均が2025年100.0から2026年88.9へ11.1ポイントの低下にとどまるのと対照的である。
この章の結論
石油化学の生産指数は2026年3月に1か月で20.7ポイント落ち、6月に56.8で底を打った。7月も58.6で戻っていない。この水準を最後に下回ったのは2001年11月である。
同じクラスターの中で、石油は戻り、石化は戻っていない
化学クラスターは4つの部門に分かれる。この4つが同じ動きをしていない。第2章の表をもう一度、部門ごとに読む。
石油部門は戻っている。2026年4月の68.5が底で、5月90.6、6月87.8、7月95.0である。底から38.6%戻した。製油所は動き出している。
石油化学は戻っていない。同じ4月が60.4、7月が58.6である。底から2.9%下がっている。原油が入るようになっても、ナフサを分解する装置のほうは動いていない。
EDBは7月の減少要因として、定期修理・需要の弱さ・原料供給の途絶の3つを挙げている。当社では、この3つのうちどれがどれだけ効いているかを分けられない。分けられないことを分けられないと書く。
スペシャリティはまったく別の動きをしている。2026年3月の100.7から4月101.7、5月106.4、6月106.3、7月114.3である。落ちていないどころか上がっている。その他化学も4月以降110を超えている。
スペシャリティは香料・添加剤・触媒などを含む部門である。EDBは7月の増加要因として香水・フレグランスと添加剤の生産増を挙げている。原料をナフサに頼らない部門は、封鎖の影響を受けていない。「シンガポールの化学産業が止まった」ではなく「ナフサを使う部門だけが止まった」というのが、この4系列の示していることである。
この章の結論
石油部門は4月を底に7月まで38.6%戻したが、石油化学は同じ期間に2.9%下がった。スペシャリティは3月から7月にかけて上がっている。同じクラスターの中で、原料をナフサに頼る部門だけが取り残されている。
船舶燃料は過去最高のあと、4月に前年割れへ転じた
もう1つの系列に移る。シンガポール海事港湾庁は、船に売った燃料の量を1995年1月から燃料種別に公開している。当社はこのデータを直接集計した。
販売量とLNGの単位は万トン、前年比は%。
| 年 | 販売量 | 前年比 | うちLNG |
|---|---|---|---|
| 2016年 | 4861.5 | +7.7 | — |
| 2017年 | 5063.7 | +4.2 | 0.1 |
| 2018年 | 4979.9 | -1.7 | — |
| 2019年 | 4746.4 | -4.7 | 0.1 |
| 2020年 | 4983.3 | +5.0 | — |
| 2021年 | 5004.0 | +0.4 | 4.9 |
| 2022年 | 4789.7 | -4.3 | 1.6 |
| 2023年 | 5182.4 | +8.2 | 11.1 |
| 2024年 | 5492.1 | +6.0 | 46.1 |
| 2025年 | 5677.5 | +3.4 | 57.1 |
シンガポール海事港湾庁「Bunker Sales Breakdown, Monthly」を当社が年計した。原データは千トン単位で、表は万トンに換算している。前年比とLNGの抜き出しも当社の計算。網掛けは1995年以降の最高となった2025年。
2025年の5,677万トンは、1995年以降で最高である。1995年の1,749万トンと比べると3.25倍になる。2022年に4,790万トンまで落ちたあと、3年続けて増えた。
ここまでが「売る商売で勝った」という話である。ただし月次で見ると、2026年の途中で向きが変わっている。
数量の単位は万トン、前年同月比は%。網掛けは前年同月を下回った月。
| 月 | 2025年 | 2026年 | 前年同月比 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 448.8 | 522.8 | +16.5 |
| 2月 | 414.5 | 467.8 | +12.9 |
| 3月 | 446.9 | 476.5 | +6.6 |
| 4月 | 440.4 | 435.1 | -1.2 |
| 5月 | 487.8 | 454.8 | -6.8 |
| 6月 | 459.5 | — | — |
| 7月 | 491.8 | — | — |
| 8月 | 496.5 | — | — |
| 9月 | 476.5 | — | — |
| 10月 | 481.8 | — | — |
| 11月 | 482.1 | — | — |
| 12月 | 550.9 | — | — |
同上を当社が月次で並べ、前年同月比を計算した。
2026年1月は16.5%増、2月は12.9%増、3月は6.6%増、そして4月が1.2%減、5月が6.8%減である。伸び率が毎月下がり、4月に前年割れへ転じた。
1〜5月累計の5.3%増は、前半の貯金である
累計だけを見ると2026年1〜5月は2,357万トンで前年同期比5.3%増になる。この数字は間違っていないが、中身は1〜3月の伸びと4〜5月の減りの差し引きである。当社は前回のシンガポール記事で、四半期と累計の数字だけを使って「売る商売では勝った」と書いた。月次を見ると、勝っていたのは3月までである。累計は局面の変化を隠す。
なお単月の最高は2025年12月の551万トンで、2026年1月の523万トンがこれに次ぐ。2026年の失速は、その直後から始まっている。
この章の結論
船舶燃料の販売は2025年に1995年以降の最高となったが、2026年は1月の16.5%増から毎月伸びが縮み、4月に前年割れへ転じた。5月は6.8%減である。累計の5.3%増は前半の貯金による。
燃料の中身も入れ替わっている
数量が動いただけではない。何を売っているかが変わっている。海事港湾庁のデータは16種類に分かれており、そこまで追える。
数量の単位は千トン、前年同期比は%。「・バイオ」はバイオ燃料を混合したもの、B100はバイオ燃料100%。「合計」は数量のない種類を含む全16種の合計。網掛けは代替燃料。
| 燃料 | 2025年1〜5月 | 2026年1〜5月 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 低硫黄C重油 | 11518.7 | 11694.0 | +1.5 |
| C重油 | 8491.3 | 9509.4 | +12.0 |
| 低硫黄軽油 | 1552.9 | 1704.0 | +9.7 |
| LNG | 188.9 | 263.3 | +39.4 |
| 低硫黄C重油・バイオ | 442.4 | 286.1 | -35.3 |
| C重油・バイオ | 164.1 | 72.5 | -55.8 |
| B100 | 6.0 | 20.6 | +246.5 |
| メタノール | 0.0 | 6.3 | 新規 |
| 合計 | 22384.8 | 23571.0 | +5.3 |
同上。原データは16種類に分かれており、表には数量のあるものを載せた。合計は16種すべての合計である。前年同期比は当社の計算。
いちばん伸びたのはC重油である。2026年1〜5月で950万トン、前年同期比12.0%増。低硫黄C重油が1.5%増でほぼ横ばいなのと対照的である。当社では、この差が船側の設備によるものか価格差によるものかを判定できない。
代替燃料は伸びている。LNGは前年同期の18.9万トンから26.3万トンへ39.4%増。メタノールは前年同期がゼロで、2026年1〜5月に6,300トン出ている。B100は6,000トンから20,600トンへ増えた。
逆に減ったのがバイオ混合燃料である。低硫黄C重油のバイオ混合は44.2万トンから28.6万トンへ35.3%減、C重油のバイオ混合は16.4万トンから7.3万トンへ55.8%減。代替燃料の中で、増えているものと減っているものが分かれている。
アンモニアは全期間を通じて数量がゼロである。海事港湾庁のデータには項目として存在するが、実績はまだ立っていない。年次で見るとLNGは2021年の4.9万トンから2025年の57.1万トンへ増えており、代替燃料の中ではLNGが先行している。
この章の結論
2026年1〜5月はC重油が12.0%増、LNGが39.4%増、メタノールが新規に立ち上がった一方、バイオ混合燃料は35%から56%減った。数量の増減だけでなく、燃料の構成も動いている。
2つの系列を同じ月で並べる
最後に、2つの系列を同じ表に置く。船舶燃料の公表は2026年5月分までなので、比較できるのは5月までである。
石油化学は2025年平均=100の生産指数、船舶燃料は万トン。「前年比」はいずれも前年同月比(%)。網掛けは、船舶燃料も前年同月を下回った月。
| 月 | 石油化学の指数 | 前年比 | 船舶燃料 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年1月 | 94.4 | -4.9 | 522.8 | +16.5 |
| 2026年2月 | 87.0 | -7.2 | 467.8 | +12.9 |
| 2026年3月 | 66.3 | -35.0 | 476.5 | +6.6 |
| 2026年4月 | 60.4 | -41.6 | 435.1 | -1.2 |
| 2026年5月 | 65.1 | -42.5 | 454.8 | -6.8 |
生産指数はシンガポール統計局、船舶燃料はシンガポール海事港湾庁。前年同月比はいずれも当社の計算。船舶燃料の公表は2026年5月分までである。
1月から3月までは、たしかに逆方向である。石油化学が下がるなかで船舶燃料は二桁増えていた。つくる商売で負けて、売る商売で勝っている形になる。
4月から同じ方向になった。石油化学は41.6%減、船舶燃料も1.2%減。5月は42.5%減と6.8%減である。片方が支えるという関係は、3月で終わっている。
因果関係を示す数字ではない
この表は2つの系列を同じ時間軸に置いただけである。石油化学が落ちたから船舶燃料が落ちた、という関係を当社は示していない。船舶燃料の需要は世界の海上荷動きと運賃で決まり、シンガポールの製油所の稼働とは別の要因で動く。同じ月に同じ向きへ動いたという事実だけを載せている。
この章の結論
2026年1〜3月は石油化学の減少と船舶燃料の増加が同時に起きていたが、4月以降は両方とも前年を下回っている。「つくる商売で負けて売る商売で勝つ」という構図は、月次で見ると3月までである。
数字の作り方と、自分で更新する手順
本ページの数字は生産指数が2026年7月分、船舶燃料が2026年5月分までである。どちらも公開データで、同じ手順で更新できる。当社が使った経路をそのまま書く。買うか買わないかの判断は、この数字だけでは決まらない。判断そのものは読者に委ねる。
ACTION 01
生産指数はシンガポール統計局の表から取る
シンガポール統計局のテーブルビルダーにある「Index Of Industrial Production By Industry Cluster」を全期間でCSVに落とす。化学クラスターが石油・石油化学・スペシャリティ・その他化学に分かれており、本ページで使うのはこの4系列である。基準年は改定のたびに変わる。本ページは2025年=100の版を使っている。基準年が変わっても前年同月比は計算できるが、過去の版と数値を混ぜてはいけない。改定で過去の月の値も動く。
ACTION 02
船舶燃料は海事港湾庁の月次データから取る
シンガポール政府のオープンデータ配信で、海事港湾庁の「Bunker Sales Breakdown, Monthly」がCSVで公開されている。1995年1月から燃料種別に並んでおり、単位は千トンである。報道の年間販売量と合わないことがあるが、範囲の違いによる。2025年について、全16種の合計は5,677万トン、LNGを除くと5,620万トンで、後者が報道値と一致する。どちらの範囲で集計しているかを先に決める。
ACTION 03
累計ではなく月次で前年同月比を出す
累計は局面の変化を隠す。船舶燃料の2026年1〜5月は累計で5.3%増だが、月次にすると1月16.5%増から5月6.8%減まで一本調子で下がっている。累計しか見ていなければ、4月の反転に気づけない。生産指数についても、四半期や半期ではなく月次で並べる。
- 統計局のテーブルビルダーから生産指数のCSVを落とし、化学クラスターの4系列を抜き出す。基準年と更新日を控える。
- オープンデータ配信から船舶燃料のCSVを落とし、月ごとに全燃料種を合計する。LNGを含めるかどうかを決めて統一する。
- それぞれ前年同月比を計算する。累計は使わない。
- 本ページの表に追記する。生産指数は毎月下旬、船舶燃料は翌月中旬ごろに更新される。
- 過去の月の値が前回と変わっていないかを確かめる。生産統計は改定される。
よくある質問
- 石油化学の生産はいまどれくらいですか
- シンガポール統計局の生産指数で、2026年7月が58.6です。2025年の平均を100とした値ですから、平均の6割を下回っています。底は6月の56.8でした。急落したのは3月で、2月の87.0から66.3へ1か月で20.7ポイント落ちています。ホルムズ海峡が閉じたのは2026年2月28日です。
- 56.8はどれくらい低い水準ですか
- 当社が1992年1月からの全月を調べたところ、この水準を最後に下回ったのは2001年11月の55.0でした。24年7か月ぶりになります。ただし2000年前後のシンガポールの石油化学は現在より規模が小さく、当時の指数は40台から50台で推移していました。同じ数字でも産業の大きさが違う点にはご注意ください。
- 製油所も止まったままなのですか
- いいえ。石油部門は2026年4月の68.5を底に、7月には95.0まで戻っています。底から38.6%の回復です。一方で石油化学は4月60.4から7月58.6と、むしろ下がっています。原油が入るようになっても、ナフサを分解する装置は動いていません。EDBは7月の減少要因として定期修理・需要の弱さ・原料供給の途絶の3つを挙げていますが、当社ではどれがどれだけ効いているかを分けられません。
- 化学産業全体が止まっているのですか
- 止まっていません。スペシャリティ部門は2026年3月の100.7から7月の114.3へ上がっており、その他化学も4月以降110を超えています。EDBは7月の増加要因として香水・フレグランスと添加剤の生産増を挙げています。原料をナフサに頼らない部門は、封鎖の影響を受けていません。
- 船に売る燃料は増えているのですか
- 2025年までは増えていました。2025年の販売量は5,677万トンで1995年以降の最高です。1995年の1,749万トンの3.25倍にあたります。ただし2026年は1月の16.5%増から毎月伸びが縮み、4月に1.2%減、5月に6.8%減と前年割れに転じています。1〜5月累計では5.3%増ですが、これは1〜3月の伸びによるものです。
- 燃料の種類はどう変わっていますか
- 2026年1〜5月の前年同期比で、C重油が12.0%増、低硫黄C重油が1.5%増、LNGが39.4%増です。メタノールは前年ゼロから6,300トンが出ました。逆にバイオ混合燃料は減っており、低硫黄C重油のバイオ混合が35.3%減、C重油のバイオ混合が55.8%減です。アンモニアは項目としてありますが実績はまだゼロです。
- 生産が落ちると日本への樹脂は減りますか
- 2026年6月までの日本の輸入実績では減っていません。PP・PPブロック・HDPE・LDPEの合計は1〜6月累計で8,284トンから8,686トンへ4.9%増えています。変わったのは単価のほうで、6月単月のPPは1kg360円と輸入全体の平均278円を上回りました。詳しくは当社の別記事で扱っています。
- この数字は誰でも確認できますか
- できます。生産指数はシンガポール統計局のテーブルビルダー、船舶燃料はシンガポール政府のオープンデータ配信で、いずれも無償で全期間のCSVが取得できます。第7章に当社が使った手順を書いています。ただし生産統計は速報値で、翌月以降に改定されます。過去の版と新しい版の数値を混ぜないようご注意ください。
- なぜプラスチックパレット株式会社がこの表を公開しているのですか
- 当社は物流資材の商社で、プラスチックパレット、再生樹脂原料、PPバンド、ストレッチフィルムを取り扱っています。これらはポリプロピレンとポリエチレンからできており、シンガポールは日本のポリエチレンの仕入れ先の1つです。仕入れ先で何が起きているかを毎月追う必要があり、そのために作った表をそのまま公開しています。
出典・エビデンス一覧
生産指数(当社が原データを直接集計したもの)
- シンガポール統計局「Index Of Industrial Production By Industry Cluster (2025 = 100), Monthly」(出典表示は経済開発庁、データ更新日2026年8月26日)
- シンガポール経済開発庁「Monthly Manufacturing Performance – July 2026」(2026年8月26日)
船舶燃料(当社が原データを直接集計したもの)
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- 本ページの生産指数は2026年7月分、船舶燃料は2026年5月分を最終時点とする。いずれも公表された確定値だが、生産統計は速報値であり後日改定される。
- 生産指数は2025年を100とする指数であり、生産量そのものではない。基準年は改定のたびに変わり、そのとき過去の月の値も動く。当社は2026年8月26日更新の版を使っている。異なる版の数値を混ぜて比較していない。
- 2026年6月の56.8を最後に下回ったのが2001年11月であることは、当社が1992年1月からの全月を照合した結果である。それ以前の月は原データが公表されていない。なお2000年前後のシンガポールの石油化学は現在より規模が小さく、指数の水準が同じでも産業の大きさは異なる。
- 年平均、前年同月比、底からの回復率、船舶燃料の年計と燃料種別の増減率は、すべて当社が原データから計算した。
- 船舶燃料の集計範囲には全16種を含めている。報道でよく使われる数字はLNGを除いたものであり、範囲が異なる。第7章に両方の値を書いた。
- 第6章の表は2つの系列を同じ時間軸に置いたものであり、両者の因果関係を示すものではない。船舶燃料の需要は世界の海上荷動きと運賃で決まり、シンガポールの製油所の稼働とは別の要因で動く。
- 石油化学の減少要因について、EDBは定期修理・需要の弱さ・原料供給の途絶の3つを挙げている。当社ではこの内訳を分離できていない。
- 本稿は情報提供を目的としたもので、特定の判断を推奨するものではありません。