📞 050-3470-4265 受付 9:00-20:00(日・祝休)
無料お見積り ›
エネルギー統計|石油統計速報

石油統計速報5月分が示した日本のエネルギー構造転換、原油輸入-38.4%・米国+74.8%・UAEが首位、2〜5月の推移で読み解く脱中東の実相

資源エネルギー庁が2026年6月30日に公表した5月分の速報値は、原油輸入量729万kl、中東依存度73.9%、米国産原油163万klという歴史的転換を数字で示した。2月から5月までの月次推移を一次データで並べ、日本のエネルギー調達構造がどう組み替えられたのかを読み解く。

初版公開: 最終更新:

2026年6月30日、資源エネルギー庁が石油統計速報5月分を公表。原油輸入量は729万kl(前年比-38.4%)、中東依存度73.9%(-16.6pt)、米国産原油163万kl(+74.8%)まで拡大し、UAEが322万klでサウジアラビアを抜き輸入首位に。2〜5月の推移で日本の調達構造の組み替えが明確に確認された。

1. 5月分速報の全体像、3か月連続マイナスも底打ちの兆し

資源エネルギー庁が2026年6月30日13時30分に公表した石油統計速報5月分は、原油輸入量729万kl、燃料油生産1,026万kl、燃料油在庫933万kl、中東依存度73.9%という4指標を主要な数字として示した。原油輸入量は前年同月比マイナス38.4%で3か月連続の前年下回りとなったものの、4月分の407万klと比較すると前月比プラス79.1%の水準まで回復した。ホルムズ海峡通航見合わせの影響が最も強く出た4月を底に、代替調達の実装が数字に反映され始めた月と読み取れる。燃料油生産も3か月ぶりに前年を上回るプラス2.0%となり、供給正常化の兆しが見えた月でもある。

5月 原油輸入量
729万kl
前年同月比 -38.4%
5月 中東依存度
73.9%
前年同月比 -16.6pt
5月 燃料油生産
1,026万kl
前年同月比 +2.0%
5月 燃料油在庫
933万kl
前年同月比 -5.0%

2. 原油輸入量の推移、2〜5月の月次で読む急変の軌跡

ホルムズ海峡の通航見合わせが本格化したのは3月中旬以降であり、2月分の速報値は前年同月比プラス10.0%の1,177万klと平常水準を保っていた。しかし3月分は1,039万kl(マイナス16.5%)と、月次で1割超のマイナスに転落。4月分は407万kl(マイナス65.7%)と、単月ベースで直近5年の最低水準を記録した。5月分は729万klまで戻したものの、依然として前年同月の6割程度にとどまる。

指標 2月分 3月分 4月分 5月分
公表日 3/31 4/30 5/29 6/30
原油輸入量 1,177万kl 1,039万kl 407万kl 729万kl
前年同月比 +10.0% -16.5% -65.7% -38.4%
前月比 -11.7% -60.8% +79.1%
連続マイナス月数 1か月 2か月 3か月

4月分から5月分にかけての前月比プラス79.1%という戻り幅は、原油タンカーの配船・運航見合わせから代替ルート確保への切り替えが月次でどの程度進んだかを示す指標として重要である。第一生命経済研究所が5月21日に公表したレポートでも、経済産業省の説明として「5月については必要量の約6割を代替調達で確保できる見通し」と示されていたが、5月分の実績値729万klは前年同月1,183万kl(概算)の約6割強にあたり、政府見通しとおおむね整合する着地となった。

3. 中東依存度の急落、94.2→95.9→87.6→73.9%という4段階

中東依存度の月次推移は、日本のエネルギー調達構造がどのタイミングで組み替わったのかを最も明瞭に示す指標である。2月分の94.2%、3月分の95.9%までは、ホルムズ海峡問題以前の水準(2023年度94.7%、2022年度過去最高95.2%)とほぼ同水準だった。4月分で87.6%と初めて9割を割り込み、5月分で73.9%まで急落。2か月で計22.0ポイントの低下となる。

2月分
94.2%
-3.1pt / 5か月連続減
3月分
95.9%
-1.0pt / 6か月連続減
4月分
87.6%
-6.1pt / 7か月連続減
5月分
73.9%
-16.6pt / 8か月連続減

日本の原油輸入における中東依存度は、1967年度に91.2%だった水準がイラン革命後の多角化政策で1987年度に67.9%まで下がり、その後は中東回帰基調で2022年度に95.2%の過去最高を記録した。5月分の73.9%は、少なくとも1980年代後半以来の水準の低さである。ただしこれは供給構造の恒久的転換というより、ホルムズ海峡通航見合わせに伴う一時的な代替調達の集中的実装によるものであり、輸送コスト・保険料の上昇や品質適合・受入設備の制約といった構造課題は残っている。

4. 輸入先国の順位変動、UAEが首位・米国が3位・ロシア再登場

5月分速報で最も象徴的だったのが、UAE(アラブ首長国連邦)がサウジアラビアを抜き輸入首位に躍り出たことである。2月分から4月分までの3か月連続でサウジアラビアが首位だった構造が入れ替わった。さらに米国が163万kl(前年同月比プラス74.8%)で3位に定着し、月次シェアで初めて2割を超えた。オマーンとロシアが前年同月実績なしから顔を出したことも、調達先の分散が進んだ証左である。

順位 2月分 3月分 4月分 5月分
1位 サウジ 600万kl
(+22.3%)
サウジ 541万kl
(+10.2%)
サウジ 182万kl
(-57.7%)
UAE 322万kl
(-33.3%)
2位 UAE 425万kl
(+3.4%)
UAE 404万kl
(-21.7%)
UAE 165万kl
(-69.4%)
サウジ 203万kl
(-58.0%)
3位 クウェート 61万kl
(+0.9%)
クウェート 30万kl
(-63.9%)
米国 31万kl
(-32.6%)
米国 163万kl
(+74.8%)
4位 米国 46万kl
(実績なし)
米国 26万kl
(+18.2%)
エクアドル 10万kl
(-42.5%)
オマーン 13万kl
(実績なし)
5位 カタール 15万kl
(-67.7%)
カタール 13万kl
(-80.9%)
オマーン 7万kl
(-51.5%)
ロシア 12万kl
(実績なし)

5月分の輸入総量729万klに対する各国シェアを計算すると、UAEが44.2%、サウジアラビアが27.8%、米国が22.4%となる。上位3か国のシェア合計が94.4%に達しており、中東2か国+米国という「3極構造」が数字の上で確立した月と言える。カタールが5月分の上位5か国から外れた点も、ホルムズ海峡通航に伴う調達コスト上昇の影響と読み取れる。

5. 燃料油生産・在庫の動向、4月の底打ちから正常化へ

燃料油生産の月次推移は、2月分1,168万kl(プラス11.9%)、3月分1,127万kl(マイナス0.3%)、4月分993万kl(マイナス11.4%)、5月分1,026万kl(プラス2.0%)と、V字型に近い動きを見せている。3月分の減少は原油輸入量マイナス16.5%のタイムラグを反映し、4月分はホルムズ海峡影響が製油所稼働に本格波及した結果、5月分は代替調達原油の入着が精製に回り始めたことによる回復と整理できる。

指標 2月分 3月分 4月分 5月分
燃料油生産 1,168万kl 1,127万kl 993万kl 1,026万kl
前年同月比 +11.9% -0.3% -11.4% +2.0%
燃料油在庫 865万kl 794万kl 828万kl 933万kl
前年同月比 +0.9% -7.3% -9.7% -5.0%

燃料油在庫は前月比で3月分マイナス71万kl、4月分プラス34万kl、5月分プラス105万klと、4月を底に積み上がっている。ただし前年同月比では5か月分連続でマイナス基調にあり、絶対水準としては依然として例年より薄い状態が続いている。ガソリン・ジェット燃料油・灯油・軽油・B・C重油の5油種で前年を下回り、ナフサとA重油のみ前年を上回った構図は、5月分生産の油種別と鏡像関係にあり、生産増加分が主に販売に回っていることを示唆する。

ナフサとA重油、対前年比が示す対極の供給実相

油種別に見ると、5月分の生産ではガソリン・ジェット燃料油・灯油・軽油・A重油の5油種が前年同月を上回った一方、ナフサとB・C重油の2油種のみが前年同月を下回った。特に注目すべきはナフサとA重油の対照的な推移である。両油種は5月分の在庫でどちらも前年同月を上回った唯一の油種でありながら、そこに至る4か月の軌跡と背景は正反対の物語を描いている。

油種 指標 2月分 3月分 4月分 5月分
ナフサ 生産 ▲ 上回る ▼ 下回る -22.8% ▼ 下回る
在庫 ▼ 下回る ▼ 下回る ▼ 下回る 上回る
A重油 生産 単独で下回る ▼ 下回る ▼ 下回る 上回る
在庫 ▲ 上回る ▼ 下回る ▼ 下回る 上回る

▲ = 前年同月を上回る / ▼ = 前年同月を下回る ※前年同月比が公表されている項目のみ具体的な数値を記載

ナフサ:石油化学系原料、供給苦戦と需要低迷のダブルパンチ

ナフサはガソリン成分の一部でありながら、その本命の用途は石油化学原料である。エチレン・プロピレンを経てプラスチック・ゴム・合成繊維・塗料・シンナー等の川下製品に加工される、化学工業のスタート地点にあたる油種だ。2月分までは生産が前年同月を上回る平常水準を保っていたが、3月分以降は前年同月を下回り続けている。4月分は生産量90万6,660klと前年同月比マイナス22.8%まで急落、赤澤経済産業大臣は「7月ぐらいまでは(製油所の)定期修理が続いて落ち込んでいる」と説明した。

5月分では生産こそ依然として前年下回りだが、日本経済新聞2026年6月30日報道によれば、国内販売量は222万889kl・前年同月比マイナス18.8%で3か月連続の2桁マイナスとなった。ナフサの国内生産量と海外からの輸入量の合計は261万6,546kl・マイナス12.7%で、国内販売量はこの合計をも下回った。石油化学工業協会が2026年6月18日に公表した5月のエチレン生産設備の稼働率は68.1%で、4月から小幅に上昇したものの過去最低水準にとどまる。経済産業省は「ナフサクラッカーの稼働率の問題が大きい」との見方を示している。

5月分でナフサ在庫が前年同月を上回ったのは、生産面の回復ではなく川下需要の低迷の裏返しである。クラッカーが動かなければナフサは消費されず、在庫は積み上がる。これはナフサ調達不足の解消ではなく、むしろ川下産業の供給制約が長期化していることを示すシグナルとなる。三菱ケミカル・三井化学・出光興産といった主要メーカーは2026年3月以降、エチレン生産抑制を継続しており、原油輸入が回復した5月時点でも川下は目詰まりから脱していない構図が読み取れる。

A重油:産業・農業・漁業用の重油、5月にV字反転

A重油は硫黄分の少ない工業用・農業用・漁業用の重油で、ボイラー・農業機械・漁船・小型船舶・工事機械の燃料として使われる。ナフサとは需要構造がまったく異なり、季節性と国内産業活動に強く連動する。2月分の生産で全油種の中で唯一前年同月を下回ったのはA重油だけで、これは冬期暖房需要のピークが過ぎたことによる季節要因と解釈できる。3月分・4月分はホルムズ海峡通航見合わせに伴う原油輸入減の直撃を受け、他油種と同じく生産・在庫ともに前年を下回った。

5月分では生産・在庫ともに前年同月を上回った点が決定的な違いである。代替調達原油の入着が本格化し、製油所の稼働率が回復に転じたことで、産業活動が本格化する春から夏にかけての需要期にA重油の供給を積み増すことができた。国内販売は依然として前年下回りが続いており(4月分・5月分ともに前年下回り)、需給が完全に正常化したとは言えないが、生産面での回復は明確である。ナフサが石化系の川下需要低迷で在庫が積み上がるのに対し、A重油は代替調達原油による生産回復と旺盛な国内需要のバランスで在庫を積み増している――同じ「5月に在庫が前年を上回る」現象でも、その意味は正反対と言える。

6. 政策対応の時系列、国家備蓄放出から代替調達拡大まで

2026年2月末のホルムズ海峡実質封鎖以降、経済産業省・資源エネルギー庁は複数段階の政策対応を実施してきた。以下は速報値の背景として押さえておくべき主要イベントの時系列である。

時期 主要対応
2026年2月末 ホルムズ海峡の実質封鎖、原油タンカーの通航見合わせ本格化
2026年3月中旬 民間備蓄15日分の活用開始、緊急的激変緩和措置3月19日発動
2026年3月末 第1弾国家備蓄原油の放出開始(30日分相当)
2026年4月24日 経済産業省が第2弾国家備蓄放出を発表(5月1日から580万kl、20日分相当)
2026年5月〜 米国・中央アジア・中南米・アジア太平洋からの代替調達本格化、5月の代替調達目途は必要量の約6割
2026年6月11日 関係閣僚会議(第10回)で6月分は前年比約8割の調達見通し
2026年6月17日 トランプ大統領とペゼシュキアン大統領が米イラン覚書(14項目)に署名、米国がイラン原油輸出容認
2026年7月上旬 ホルムズ海峡通過原油が日量1000万バレル超まで回復、サウジアラムコがラスタヌラ港積み込み再開、価格をスポット方式へ切替

5月分速報の729万klという数字は、この時系列の中で「第2弾国家備蓄放出の初月」かつ「米国・中南米からの代替調達が実運搬ベースで着地し始めた月」に位置づけられる。日本経済新聞2026年4月24日報道によれば、第2弾放出は全国10か所の備蓄基地からENEOS、出光興産、コスモ石油、太陽石油の4社に順次引き渡されたとされ、5月分の燃料油生産プラス2.0%には備蓄放出原油の精製投入分も含まれると見られる。

7. 6月17日米イラン覚書署名後の急展開、今後の原油調達拡大の実相

5月分速報が示した「4月を底とする回復の兆し」は、6月17日にトランプ大統領とペゼシュキアン大統領が14項目の米イラン覚書に署名したことで、次の局面へと一気に移行した。覚書には米国がイラン原油の輸出を容認する項目に加え、イラン経済の立て直しを支援するための3000億ドル(約48.3兆円)規模の資金提供が含まれるとされる。この政治的転機を境に、ホルムズ海峡の通航状況・サウジアラビアの輸出動向・イラン原油の商流・国際原油相場のいずれもが劇的に変化し始めている。

ホルムズ海峡通航の回復、日量1,000万バレルへ

米政府当局者がブルームバーグに明かしたところによれば、2026年7月上旬時点でホルムズ海峡を通過する原油輸送量は日量1,000万バレル超まで回復した。米中央軍が航空戦力と海軍部隊を組み合わせた防衛態勢を整えたことで、海運会社はオマーン寄りの海峡南側航路を通じた原油輸送に自信を深めた。イランは紛争中にホルムズ海峡封鎖を交渉上の優位性としてきたが、通航妨害能力の限界が浮き彫りとなった。覚書では60日間の交渉期間中は通航料を徴収しないとされ、その後の扱いは今後の協議事項となっている。トランプ大統領とルビオ米国務長官は、最終合意で通航料や海運サービス料を課すことは受け入れられないとの姿勢を表明している。

サウジアラビアの動き、ラスタヌラ再開とスポット価格切替

サウジアラビアの動きは特筆に値する。2026年7月2日、ロイター報道によれば、ペルシャ湾岸のラスタヌラ港で積み込まれた計1,000万バレルのサウジ産原油を運ぶ少なくとも5隻の超大型タンカー(VLCC)がホルムズ海峡を通過した。サウジアラムコは約4か月停止していた世界最大の石油港ラスタヌラからの積み込みを再開し、アジア向けの積み込みと出荷を拡大させている。同日、ブルームバーグ報道では、サウジアラビア海運大手バハリ保有の全長300メートル超のVLCC 4隻が約800万バレルの原油を積んでオマーン湾に姿を現したことが確認された。これはイラン戦争以降で最大の出港数である。

販売手法にも大きな変化が起きている。サウジアラムコは通常、毎月設定される公式販売価格(OSP)に基づく長期契約を通じて石油を販売してきたが、アジアでの販売を加速させるため、価格設定を長期契約方式からスポット価格方式に切り替えた。ブルームバーグ2026年7月1日報道によれば、同社は少なくとも600万バレルの原油をアジアの顧客向けにスポットで販売した。湾岸諸国の主要産油国の中でサウジのペルシャ湾内からの輸出再開時期が比較的遅かった事情から、需要を呼び込むための攻めの姿勢と読み取れる。この供給拡大は国際相場にも即座に反映され、2026年3月に1バレル120ドル近辺だった北海ブレント原油先物価格は70ドル前後まで押し下げられた

イランの動き、日本への打診と5,800万バレルの海上滞留

米イラン覚書署名を受け、イラン国営石油会社の動きも活発化した。2026年7月3日、共同通信の報道によれば、イラン国営石油会社が日本の石油元売り大手などにイラン産原油購入を打診したことが分かった。イラン外交筋は「友好国、日本への原油輸出は歓迎すべきことだ」と述べ、売買契約が成立すれば数週間以内にペルシャ湾にある石油積み出し拠点カーグ島からタンカーが出発できる態勢だと強調した。イラン国営石油会社は6月17日の覚書署名以前から日本や韓国などの複数の外国企業と接触を始めていたという。

ただし、日本側の受け止めは慎重である。日本の外交筋は「エネルギー輸送の要衝ホルムズ海峡での航行の安全が十分に確保されていない」として、交渉成立は「現実的ではない」との見方を示している。イランは第1次トランプ米政権による2019年の全面禁輸措置を受け、日本の輸入対象から外れて以降、輸入停止が続いてきた経緯もある。米イラン間の不安定な枠組みの中で、日本の元売各社にとって多額の資金を投じてタンカーを配船することは極めてリスクが高い判断となる。

さらに、イラン産原油の商業的な受入自体が困難な状況が並行して顕在化している。ブルームバーグ2026年7月2日報道によれば、7月1日時点で海上にあるイラン産原油とコンデンセートは5,800万バレル超に達し、このうち90%以上は仕向け先が不明となっている。船舶は次の寄港地として「注文待ち」または「シンガポール」を示しており、マラッカ海峡で船舶間積み替えを実施する可能性がある。米国は60日間に限りイラン原油の国際市場販売を認めているものの、EU・英国の制裁は継続し、保険手配が複雑化しているうえ、一部港湾ではイランのダークフリート受け入れをためらう動きもある。

ベッセント米財務長官は2026年6月30日、「制裁下でも購入を続けていた中国以外に買い手はおらず、そのためイラン産原油は依然として値引き価格で取引されている」と語った。ケプラーによれば、中国の6月のイラン産原油輸入量は前月の半分以下となる日量約65万4,000バレルにとどまった。インドも米ドル建て決済に関する米政府方針の明確化を待って購入を見送っている。イランの原油輸出正常化には、政治的な扉が開いたものの、商業的・保険的・決済的な障壁が幾重にも残っているのが実相である。

8. 総評、脱中東化の実相と今後の検証論点

2026年2月から5月までの4か月の月次データが示すのは、日本のエネルギー調達構造が短期間で組み替わり得ることである。中東依存度は22.0ポイント低下し、米国原油のシェアは実質ゼロから22.4%まで急拡大し、UAEがサウジアラビアを抜き輸入首位に立った。ロシアとオマーンが5月分の輸入上位5か国に顔を出したことも、日本のエネルギー安全保障の実務が動的に組み直されている証拠である。ただしこの調達構造転換は、政府の緊急対応と元売各社の集中的な代替調達実装の産物であり、恒久的な構造転換とは異なる。第一生命経済研究所のレポートが指摘するとおり、代替調達には輸送距離長期化・海上保険料上昇・スポット調達比率上昇によるコスト増、原油品質の適合、受入設備の制約、国際的な調達競争という4つの論点が残る。

そして6月17日の米イラン覚書署名を境に、ホルムズ海峡通航は日量1,000万バレル超まで回復し、サウジアラムコはラスタヌラを再開してスポット価格方式へと販売手法を切り替え、ブレント原油は120ドルから70ドル前後まで押し下げられた。一方で、イラン産原油は5,800万バレル超が海上に滞留し、日本への購入打診も慎重論に阻まれている。政府は関係閣僚会議(第10回)で6月分は前年比約8割、7月分は前年比約10割の調達に目途が立ったと説明しているが、覚書署名後の急速なホルムズ通航回復とサウジのスポット販売拡大が加われば、これらの見通しを上回る回復幅となる可能性も出てきた。

今後、2026年7月末に公表予定の6月分速報、8月末に公表予定の7月分速報を通じ、政府見通しどおりの調達水準に戻るのか、米国原油シェアが2割を超えて定着するのか、UAE・サウジアラビアの順位が再逆転するのか、中東依存度73.9%からの回復幅がどこまで進むのか、といった論点が数字で検証される段階に入る。供給正常化の兆しは明確だが、これが恒久的な調達構造の変化に結実するのか、それとも一時的な緊急対応から従来の中東依存構造への揺り戻しとなるのかは、今後数か月の月次データが答えを出すことになる。当社では引き続き月次データを追跡し、速報値の意味を実務目線で読み解く記事を公開する予定である。

本記事に関する留意事項

  1. 本記事は2026年7月4日時点の情報に基づき執筆したものです。
  2. 速報値は経済産業省が公表する確報値(5月分は7月14日公表予定)にて事後修正される可能性があります。数値の最終確定は確報値をご確認ください。
  3. 本記事は特定の投資判断・調達判断を推奨するものではありません。ビジネス上の判断は一次資料と専門家の助言に基づき行ってください。
  4. 海外資料の日本語訳出は当社の独自解釈を含みます。翻訳精度についてはご容赦ください。
  5. 引用元記事の内容は各出典元の著作権に帰属します。当社は出典を明記のうえ、要約と分析を提示しています。

よくあるご質問(FAQ)

資源エネルギー庁が2026年6月30日に発表した石油統計速報5月分の要点は何ですか。

原油輸入量が729万kl(前年同月比マイナス38.4%、3か月連続前年下回り)、中東依存度が73.9%(前年同月比マイナス16.6ポイント、8か月連続前年下回り)、米国産原油が163万kl(前年同月比プラス74.8%)、UAEが322万klでサウジアラビアを抜き輸入首位に躍り出た点が要点です。燃料油生産は1,026万kl(プラス2.0%)と3か月ぶりに前年を上回り、供給正常化の兆しが見え始めました。

2月から5月にかけて中東依存度はどのように推移しましたか。

2026年2月分の中東依存度は94.2%、3月分は95.9%、4月分は87.6%、5月分は73.9%と、ホルムズ海峡実質封鎖後の3月以降、加速度的に低下しました。特に4月から5月にかけては13.7ポイントの急落となり、5月分の73.9%は近年の速報値としては極めて低い水準です。5か月連続、6か月連続、7か月連続、8か月連続と、前年同月を下回る月数も月次で1ずつ積み上がっています。

5月分速報でUAEがサウジアラビアを抜いて輸入首位になったのはなぜですか。

5月分の輸入量はUAEが322万kl(前年同月比マイナス33.3%)、サウジアラビアが203万kl(同マイナス58.0%)となり、サウジアラビアの減少幅がUAEを大きく上回ったためです。ホルムズ海峡通航見合わせの影響が続くなか、日本の元売各社が調達先の重心をUAE・米国・ロシア・オマーンへ分散させた結果と読み取れます。米国産原油は163万klでシェア22.4%と、月次ベースで初めて2割を超えた計算になります。

5月分速報の公表後、6月から7月にかけて原油調達はどう変化していますか。

2026年6月17日にトランプ大統領とペゼシュキアン大統領が14項目の米イラン覚書に署名し、状況が急展開しました。7月上旬にはホルムズ海峡通過原油が日量1,000万バレル超まで回復し、サウジアラムコが約4か月停止していたラスタヌラ港からの積み込みを再開。7月2日には超大型タンカー5隻・計1,000万バレルがホルムズ海峡を通過し、サウジアラビアはペルシャ湾から800万バレル出荷(イラン戦争以降で最大)を実現しました。サウジアラムコは価格設定を長期契約方式(OSP)からスポット価格方式に切り替え、アジア向け販売を加速。ブレント原油は3月の120ドル近辺から70ドル前後まで下落しています。一方、イラン国営石油は7月3日に日本の元売大手に原油購入を打診しましたが、ホルムズ海峡の航行安全確保が不十分として、日本側は交渉成立に慎重な姿勢です。

なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか。

当社は千葉県我孫子市に本社を構え、全国のお客様にプラスチックパレット・再生樹脂原料・物流資材をお届けしています。原油とナフサは合成樹脂の川上原料であり、資源エネルギー庁が公表する石油統計速報の月次動向は、当社が取り扱う樹脂原料の需給と価格に直結します。イラン情勢とホルムズ海峡通航見合わせを起点とする2026年の調達構造転換を、一次データで継続的に記録することは、お取扱い先の調達判断に資すると考え、本サイトで速報を検証する記事を継続的に公開しています。

主な情報源

プラスチックパレット株式会社 千葉県我孫子市に本社、全国にお届け
プラスチックパレット・再生樹脂原料・物流資材のお取扱い
Back to top