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イラン情勢×ナフサショックで構造化する石油製品高止まり──値下がりは大不況と中東復興の先【2026年6月】 | プラスチックパレット株式会社
STRATEGIC OUTLOOK — 2026.06

イラン情勢×ナフサショックで構造化する石油製品高止まり──値下がりは大不況と中東復興の先

初版公開 最終更新 カテゴリ:原油・エネルギー
ANSWER BLOCK

石油製品の値下がりが構造的に実現するには、原油高による世界的需要破壊消費崩壊を伴う大不況ホルムズ航行回復+中東精製インフラ復旧──の三条件が複合的に絡み合う必要がある。しかし1929年大恐慌は1939年の世界大戦へ連鎖した。日本が高止まりを受容し、ASEAN投資・JAIF・サプライチェーン多元化でアジア経済を支える役割が、戦争の連鎖を断つ唯一の道である。

DEMAND CHANGE
-8
万bbl/日
IEA 2026年世界原油需要
2020年以来の前年比減
SUPPLY LOSS
1,010
万bbl/日
2026年3月供給途絶
世界の約1割・史上最大
PIPELINE LIMIT
500
万bbl/日
サウジ東西パイプライン
ホルムズ代替能力の上限
PRICE SHOCK
+78
%
WTI 67→119ドル
10日間の上昇率
01

前提──代替調達が「進んでも進まなくても」価格は下がらない構造

本記事は前稿「非中東原油代替の落とし穴」の続編である。前稿で示した結論は明確だった。代替調達には四つの構造的な壁が立ちはだかる──運賃ショック、OSPプレミアム最高値、軽質スイートと中質サワーの装置設計の壁、そして連産品の歩留まり差。これらは同時に作用し、ガソリン・ナフサ・灯油・軽油・重油・アスファルト・潤滑油基油まで、原油から取り出される全留分を同時に押し上げる。

では、代替を進めなければ価格は下がるのか。答えは「下がらない」である。経済産業省が2026年4月10日に首相官邸に提出した対応方針では、原油の代替調達の結果として、備蓄放出量を抑えつつ年を越えて石油供給を確保できる見通しが立ったと整理されている。同時に、5月上旬以降に国家備蓄原油を約20日分追加放出することも決定された。「代替調達を進めなければ供給そのものが細る」。代替が進まない場合の供給途絶リスクが、そのまま希少性プレミアムとなって価格を押し上げる。

代替を進めれば長距離輸送と装置調整のコストが乗り、進めなければ供給細りで希少性プレミアムが乗る。どちらに転んでも価格は下がらない。これが2026年6月時点の構造であり、本記事はこの前提から議論を進める。

02

値下がりが実現する「三つの条件」──そしてそれが夢物語である理由

石油製品の値下がりが構造的に実現するには、以下の三つの条件が複合的に絡み合う必要がある。単独では十分な下押し圧力にならず、複数が同時並行で進まなければ価格は高止まりを続ける。順に検証する。

石油製品値下がりの三条件と現状評価
条件内容現状評価
条件①
需要破壊
原油高により世界の石油需要が物理的に減少する(demand destruction)IEAが2026年世界原油需要を前年比日量8万バレル減と新型コロナ禍以来の減少に下方修正。需要破壊は既に観測されているが、価格下落を実現する規模には未到達。
条件②
世界的大不況
消費崩壊を伴う深刻な経済縮小により、需要が長期にわたり持続的に減退するIMF・OECDは2026年予測でスタグフレーション懸念を表明。ただし大不況の正式宣言は出ていない。大不況の代償は計り知れず、引き起こすことそのものが破局シナリオである。
条件③
中東インフラ復旧
ホルムズ自由航行回復、損壊した湾岸諸国のエネルギー施設・精製設備の物理的復旧笹川平和財団IINAは「中東情勢が2月28日以前に戻ることは極めて難しい」と分析。物理的損壊からの完全復旧には数年単位を要する見方。現状では夢物語の領域。
03

第一の条件:需要破壊── IEAが既に観測した「2020年以来の前年比減少」

原油価格が高すぎれば需要そのものが破壊される。これは経済学的な常識であり、現実に起きつつある。SMBC信託銀行が整理した2026年4月時点の国際機関見通しによれば、IEA(国際エネルギー機関)は2026年の世界原油需要見通しを前年比日量8万バレル減と下方修正した。これは新型コロナ禍に見舞われた2020年以来となる前年比減少への転換である。

IEAは原油供給の途絶と原油高により需要が破壊されると指摘した。2026年の世界の原油供給(日量)は下方修正された。EIAは前年比203万バレル減(2025年:1億630万バレル→2026年:1億427万バレル)に前月から下方修正し、IEAも同150万バレル減に見通しを引き下げた。IEAはホルムズ海峡の事実上の封鎖や中東各国の石油施設への攻撃に伴う減産により、3月の世界原油供給量が全体の1割に相当する日量1010万バレル減少したとの見方を示し、史上最大の供給途絶と指摘した。 SMBC信託銀行プレスティア「原油:世界原油需給が需要超過になるとの見方も」2026年4月20日

需要破壊は確かに観測されている。JOGMECの市場レポートでも、2026年1月の米国ガソリン需要が日量826万バレル(前年同月比2.7%減)と相当程度減少したと整理されている。しかしこのレベルの需要破壊は、原油価格を年間ベースで実質的に押し下げる規模には到達していない。需要破壊が価格下落をもたらすには、世界需要が日量で数百万バレル単位で持続的に減退する必要がある。それは個人消費・物流・産業活動の全面的縮小なしには起こりえず、すなわち次の条件「世界的大不況」とセットでしか実現しない。

04

第二の条件:世界的大不況── 1973・1979オイルショックが残した教訓

原油価格の構造的下落は、需要破壊の極限形である世界的大不況なしには実現困難である。これは1973年・1979年の二度のオイルショックが既に示した歴史的事実である。

1973年と1979年の2度にわたる原油価格の急激な上昇によってもたらされた国際石油市場およびエネルギー需給における激変と、それによる甚大な経済的・社会的・政治的混乱を指して、第一次石油危機、第二次石油危機と呼ぶ。第一次の場合は約4倍、第二次の場合は約2倍にはね上がった。これによるマクロ経済的なインパクトは大幅な物価上昇、国際収支赤字、経済成長率の低下と失業率の上昇に及んだ。 JOGMEC用語辞典「石油危機」

第一次オイルショック時、日本の消費者物価は20%以上上昇し、物価高と景気停滞が同時発生するスタグフレーションが日本経済を直撃した。ENEOS石油便覧は、当時の状況を「狂乱物価の鎮静化を図るため、政府は石油製品の元売仕切価格を1973年末の水準に凍結する行政措置をとった」と記録している。第二次オイルショックでも国際原油価格は3年間で約2.7倍に跳ね上がり、再びインフレと景気減速が発生した。

これら2回の危機を経て、日本は石油需給適正化法(1973年)、石油備蓄法(1975年)、国家備蓄制度(1978年開始)を相次いで創設した。今回2026年の国家備蓄放出は、2022年のウクライナ侵略対応に続く制度創設以来2回目の発動である。2回のオイルショックでさえ、価格を構造的に押し下げたのは需要破壊と不況による消費縮小であって、外交努力ではなかった──この歴史的事実が、現在の三条件論を裏付ける。

05

第三の条件:中東インフラ復旧── 物理的損壊と「失われる5年」シナリオ

仮に需要破壊と大不況が起きても、ホルムズ海峡の自由航行が回復し、攻撃で損壊した中東各国の精製インフラが復旧しなければ、構造的な供給余力は戻らない。笹川平和財団国際情報ネットワークIINAの分析は、この壁の高さを明確に指摘する。

ホルムズ海峡を通行する石油は日量約2,000万バレル、液化天然ガス(LNG)は8,000万トン弱であり、それぞれ世界の供給量の約2割に相当する。サウジアラビアは紅海側から原油を輸出可能な「東西パイプライン」を持つものの、その輸送能力は日量500万バレル程度と極めて限定的である。ホルムズ海峡が封鎖された場合のLNGの代替輸送は基本的に不可能である。仮に本稿執筆時点でトランプ大統領が戦争終結を宣言したり、米軍に攻撃停止を命じたとしても、中東・エネルギー情勢が2月28日以前の状況に戻ることは極めて難しい。 笹川平和財団IINA 小林周「求められる『エネルギー地政学』の視点」2026年3月19日

停戦が成立しても、物理的に破壊された精製設備・港湾設備・パイプライン・淡水化プラントの復旧には数年単位の時間が必要である。前稿「中東エネルギーインフラの崩壊と『失われる5年間』」で整理した通り、JETROも「法的・政治的な開放と商業的通航再開の間には時間的・構造的な乖離が残る」との日系物流企業見解を引用している。さらに4月7日に2週間停戦合意が成立したが、ホルムズ海峡の通行は依然として極めて限定的だ。

つまり、値下がり3条件のうち第三条件は「戦争が完全終結し、被害状況が確定し、再建投資が決定し、物理復旧が完了する」という多段階のプロセスを経なければ充足されない。野村證券エコノミストの分析も、2026年内のWTI期近物先物価格は75〜95米ドルのレンジで推移しやすく、攻撃前の65米ドル水準への完全回帰は困難と見通している。

06

「三条件が絡み合っての値下がり」の代償──大不況が戦争の引き金になる歴史

ここまで「値下がり3条件」を検証してきた。しかし最も深刻な事実は、仮に三条件が複合的に絡み合って石油製品が値下がりしても、その代償は受け入れ難いものとなるという点である。条件②の「世界的大不況」は単なる経済縮小ではない。歴史を振り返れば、大不況が次の戦争の引き金となる経路が繰り返されてきた。

1929年に始まった世界恐慌は、1933年のナチス政権成立を経由して、1939年の第二次世界大戦へと連鎖した。第一次世界大戦の戦後処理(ヤング案)への反発が拡大する中で、与党への風当たりが強まり、翌年の選挙で野党ナチス党が議会の議席の18%を獲得した。大恐慌期のドイツではハイパーインフレと失業が社会基盤を破壊し、公共事業(アウトバーン建設)と兵器生産を掲げる政治勢力が支持を集めた。建設労働者・機械工の雇用が回復する一方で、その出口は戦争であった。

不況が戦争に転じる5つの経路 歴史研究が示す「大不況→戦争」の連鎖は、以下の経路を通じて発生する。①雇用喪失が排外主義を強化する②近隣窮乏化政策(関税戦争・通貨切り下げ競争)が外交を硬化させる③資源獲得競争が領土・航路を巡る摩擦を生む④軍需産業が雇用回復の手段として正当化される⑤強い指導者を求める社会心理が独裁・拡張主義を後押しする。これら五つは独立ではなく、互いに強化し合いながら戦争への閾値を下げる。

2026年の現在に置き換えれば、ホルムズ海峡封鎖が長引き、石油製品の高止まりが世界経済を縮小させた先には、エネルギー資源を巡る新たな摩擦・通貨を巡る競争・サプライチェーンを巡る分断が待ち構える。SBI証券のレポートは今回のイラン戦争を「第3次石油危機」と位置づけ、米ドル/円レートの大きな上昇が示すように、石油供給遮断が長期化すれば日本経済が大きな打撃を受ける一方、産油国である米国は影響が限定的という非対称構造を指摘している。非対称性は摩擦の温床である

07

日本がとるべき道──高止まり受容と「アジア経済を支える」リーダーシップ

以上を整理する。①代替調達が進んでも進まなくても石油製品は上がる。②値下がりは需要破壊・大不況・中東インフラ復旧の三条件が複合的に絡み合ったときに限られ、しかも③その経路にある大不況は戦争の引き金になる歴史を持つ。この袋小路において、日本がとるべき道は何か。

答えは一つしかない。高止まりを受け入れ、世界経済の縮小スパイラルを止める側に立つこと。具体的には、日本が主導してアジア経済を支える役割を強化することである。これは理念論ではない。すでに制度的なインフラは存在している。

日本が活用可能なアジア経済支援の枠組み(一次資料整理)
枠組み規模・内容役割
JAIF3.0
(日ASEAN統合基金)
2023年設立、108億円(1億米ドル)拠出「自由で開かれたインド太平洋」推進、AOIPの主流化支援
海外サプライチェーン
多元化等支援事業
予算額 計351億円日ASEANサプライチェーン強靱化、生産拠点分散
対ASEAN海外投融資
イニシアティブ
3年間(2020-2022)で 官民30億ドル規模JICA出融資12億ドル、ASEANインフラ投資
RCEP協定2022年1月発効、ASEAN+日中韓豪NZ地域包括的経済連携、関税減免・サプライチェーン統合
ASEAN DEFA
(デジタル経済枠組み協定)
2026年調印見込み、9つの中核要素2030年までにASEANデジタル経済を 3000億ドル→2兆ドル に倍増目標
日ASEAN経済共創ビジョン未来デザイン&アクションプラン包括的連結性イニシアティブ、ブルーエコノミー、気候協力

日本の対ASEAN直接投資残高は東アジア地域2位の中国の2倍に達し、ODA支出純額・直接投資・人的往来のすべてでASEANは日本の重要パートナーである。ASEANの2026年議長国はフィリピンで、テーマは「共に未来を切り拓く」。DEFA調印によりASEANデジタル経済規模を3000億ドルから2030年までに2兆ドルへ倍増、域内で400〜500万人のデジタル関連雇用を創出する見通しがある。これは石油価格高止まり下でも経済を回し続ける土台になりうる。

1970年代の二度のオイルショックを経験した日本は、1979年6月の東京サミットで石油消費抑制・石油輸入目標量設定・他エネルギー開発促進を決議し、翌1980年6月のベネチアサミットで経済成長と石油消費のリンクを切断、一次エネルギーに占める石油比率を約40%に引き下げる目標を採択した。当時の主要先進国首脳会議で日本が果たした役割は、石油依存からの脱却を国際合意に格上げする外交的リーダーシップであった。

2026年の現在、日本が同じ役割を果たすべき領域は、エネルギー安全保障・サプライチェーン強靱化・通貨スワップ・デジタル経済統合・脱炭素転換投資である。これらを日本主導で推進し、アジア各国の経済を縮小スパイラルから守ることが、長期不況→排外主義→戦争という歴史的連鎖を断つ唯一の現実的な道筋となる。石油価格は下がらない。しかし、価格が下がらないまま経済を回す方法は、日本にしか創れない──それが2026年6月時点の戦略的現実である。

「高止まり受容」と「縮小拒否」の同時実行 購買担当者・素材メーカー・商社の実務的判断軸として、本記事の含意を整理すれば次の三点である。①石油製品価格の「いつか戻る」期待を捨て、高止まり前提でサプライチェーンを再設計する②ASEAN・南西アジアへの生産分散・調達多元化を、コスト最適化ではなくリスク分散として進める③日本国内の素材・物流・包装の循環型調達(リサイクル材活用・中古資材の再流通)を企業ポートフォリオの主軸に据える。価格高止まりを「個社で逃げ切る」発想ではなく、「アジア経済全体を回し続ける」発想で対応する局面に入っている。

出典・エビデンス一覧

  1. 経済産業省「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保及び重要物資の安定的な供給確保のための対応方針(案)」2026年4月10日
  2. 資源エネルギー庁「中東情勢を踏まえた石油及び関連製品等に関する対応」https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/energysecurity/index.html
  3. SMBC信託銀行プレスティア「原油:世界原油需給が需要超過になるとの見方も」2026年4月20日
  4. JOGMEC JOURNAL「原油市場他:米国の対イラン大規模攻撃の警告、そしてその後のイランとの停戦合意等により、乱高下する原油価格」2026年4月
  5. JOGMEC用語辞典「石油危機」https://oilgas-info.jogmec.go.jp/termlist/1001027/1001057.html
  6. 笹川平和財団国際情報ネットワークIINA 小林周「求められる『エネルギー地政学』の視点――米・イスラエル・イラン衝突が浮き彫りにした課題」2026年3月19日
  7. 野村證券NOMURA ウェルスタイル 髙島雄貴「4月14日は原油価格下落 今後の見通しを原油安定供給の観点から解説」2026年4月
  8. SBI証券「『第3次石油危機』想定で債券投資を考える」2026年3月26日
  9. FPメディア「『最悪のシナリオ』が現実になった日──ホルムズ海峡封鎖と原油高騰が日本経済に与える本当の衝撃」2026年3月10日
  10. ENEOS石油便覧「石油危機(オイルショック)と石油高価格の時代」https://www.eneos.co.jp/binran/document/part01/chapter02/section06.html
  11. ENEOS石油便覧「石油危機と石油需要の停滞」https://www.eneos.co.jp/binran/document/part01/chapter01/section05.html
  12. 資源エネルギー庁「日本のエネルギー、150年の歴史④ 二度のオイルショックを経て、エネルギー政策の見直しが進む」https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/history4shouwa2.html
  13. SpaceshipEarth「オイルショックとは?第一次・二次に分けてわかりやすく解説」2025年3月
  14. Wikipedia「世界恐慌」https://ja.wikipedia.org/wiki/世界恐慌
  15. Wikibooks「中学校社会 歴史/世界恐慌と各国の対応」https://ja.wikibooks.org/wiki/中学校社会_歴史/世界恐慌と各国の対応
  16. 外務省「日・ASEAN統合基金(Japan-ASEAN Integration Fund/JAIF)」https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/asean/j_asean/jaif.html
  17. 外務省「ファクトシート:主な新型コロナウイルス感染症関連の対ASEAN支援実績」2021年10月27日
  18. 外務省「ASEAN概要」https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000127169.pdf
  19. ASEAN日本政府代表部「日ASEAN協力の推進(主要協力分野)」https://www.asean.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_00078.html
  20. ジェトロ「ASEAN(主に経済分野)の主要アジェンダおよび政策決定プロセスに関する調査」2026年3月
  21. ジェトロ「ASEANの貿易投資年報」https://www.jetro.go.jp/world/asia/asean/gtir/
  22. 時事ドットコム「イラン情勢 関連ニュース」https://www.jiji.com/jc/v7?id=201905iran
  23. 東洋経済オンライン「『世界大恐慌』今だからこそ響く忌まわしい歴史」2020年3月
  24. 御津電子株式会社「2026年 原油高騰が製造業に与える影響とその対策」2026年5月
  25. logistics-today「中東原油9割依存の日本、備蓄頼みに限界も」2026年3月2日
なぜ代替調達が進むほど石油製品価格は上がるのですか
代替調達は長距離輸送・割高な軽質スイート原油の購入・装置調整コスト・OSPプレミアム最高値という四方向のコスト圧力を経由するため、進むほど石油製品の出荷価格を押し上げます。一方で代替が進まなければ供給そのものが細り、希少性プレミアムが価格を押し上げます。どちらに転んでも価格は下がらず、連産品ロジックでガソリン・ナフサ・灯油・軽油・重油・アスファルトまで全品目が連動値上げします。
石油製品の値下がりが実現する条件は何ですか
三つの条件が複合的に絡み合う必要があります。第一に、原油高による世界的な需要破壊(demand destruction)。IEAは2026年の世界原油需要が前年比日量8万バレル減と新型コロナ禍以来の減少に転じる見通しを示しました。第二に、需要減を伴う世界的大不況。第三に、ホルムズ海峡の自由航行回復と、攻撃で損壊した中東各国の精製インフラ復旧。これらが複合的に絡み合わない限り、価格は構造的に高止まりします。
中東石油インフラの復旧にはどれくらいかかりますか
笹川平和財団国際情報ネットワークIINAの分析は、トランプ大統領が戦争終結を宣言したり攻撃停止を命じたとしても、中東・エネルギー情勢が2月28日以前の状況に戻ることは極めて難しいと指摘しています。サウジアラビアの紅海側「東西パイプライン」は日量500万バレル程度しか輸送できず、ホルムズ封鎖時のLNG代替輸送は基本的に不可能です。物理的損壊からの完全復旧には数年単位の時間を要するとの見方が業界内で広がっています。
過去のオイルショックでは何が起きたのですか
1973年の第一次オイルショックでは中東戦争を契機に原油価格が約4倍に上昇、日本の消費者物価は20%以上上昇しました。1979年の第二次オイルショックではイラン革命とイラン・イラク戦争が重なり、原油価格は3年で約2.7倍に。両危機ともスタグフレーション(物価上昇と景気停滞の同時進行)を引き起こし、日本は石油需給適正化法・石油備蓄法・国家備蓄制度を相次いで創設しました。
なぜ大不況は戦争の引き金になりうるのですか
1929年の世界恐慌は1933年のナチス政権成立を経由して1939年の第二次世界大戦に連鎖した歴史があります。大恐慌期のドイツではハイパーインフレと失業が社会基盤を破壊し、公共事業と軍需生産を掲げた政治勢力が支持を集めました。長期不況は分配の縮小・排外主義・近隣窮乏化政策・資源獲得競争を生み、それらが軍事的解決の動機を強化する経路が歴史上繰り返されてきました。
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