ナフサと灯油はなぜ下がらないのか、IEAが示す世界在庫5億バレル減と10月のタンカー攻撃
石油から作られるナフサは、プラスチック製品のもとになる原料です。冬の暖房に使う灯油も、同じ石油から作られます。どちらも値段が下がらないのは、世界の石油のたくわえが減っているところに、10月に入って中東の海で船への攻撃が増えたためです。国際エネルギー機関(IEA)の報告などをもとに、仕組みを順に説明します。
- 世界の石油のたくわえ(在庫)は、国際エネルギー機関(IEA)の集計で、戦争が始まる前より5億900万バレル少なくなっています。陸の上にあるたくわえは、少なくとも2016年以降でいちばん少ない量です。
- 9月には中東から出ていく原油がかなり戻りましたが、10月に入ると船への攻撃が増え、ホルムズ海峡を通る石油の量は再び減り始めました。
- ナフサは前の年より7割ほど高く、札幌では灯油の配達価格が10月9日に1リットル159.35円まで上がりました。国の補助が10月8日から減ったことも、お店の値段に響きます。
ナフサや灯油が下がらないのは、世界の石油のたくわえが戦争前より5億バレルほど減っているうえに、10月に入って中東の海で船への攻撃が増え、石油の流れが再び細り始めたためです。ナフサは前の年より7割ほど高く、北海道では灯油が全国より先に上がっています。日本のたくわえは204日分あります。
CHAPTER 01世界の石油のたくわえが減っている
石油は、世界中の国や会社が、すぐには使わない分をタンクにためています。これを「たくわえ」(在庫)といいます。2026年2月末に中東で戦争が始まってから、中東から出てくる石油が大きく減り、世界はこのたくわえを取り崩して足りない分を埋めてきました。
たくわえは戦争前より5億バレル少ない
国際エネルギー機関(IEA)の10月の報告では、9月末の世界のたくわえは、戦争が始まる前より5億900万バレル少なくなっています。陸の上にあるたくわえは、少なくとも2016年以降でいちばん少ない量です。世界最大の石油会社サウジアラムコの社長は、たくわえは「恐ろしいほど薄い」と話し、元に戻すには約2年かかるという見方を示しました。
9月に戻った流れが、10月に再び細り始めた
| いつ | どうなったか |
|---|---|
| 2026年2月末 | 中東で戦争が始まり、ホルムズ海峡を通る船が大きく減る |
| 9月 | 中東から出ていく原油が、戦争前の75%を超えるところまで戻る(IEA) |
| 10月5〜11日 | 中東の海で船への攻撃が12件報告される。戦争が始まってからいちばん多い週 |
| 10月13日 | ホルムズ海峡を通る石油が1日1,260万バレルに減る(9月末は1,500万バレル。報道) |
出典:IEA「Oil Market Report - October 2026」(2026年10月14日)、The Vibes(2026年10月17日、英国海事貿易機関のデータとケプラーの集計を引用)。2026年10月18日に確認。
9月には、パイプラインや小さな船での運び出しなど、いろいろな方法で中東から出ていく原油がかなり戻りました。ところが10月に入ると、中東の海で船への攻撃が増え、石油の流れは再び細り始めています。たくわえが少ないときに流れが細ると、値段はどうしても上がりやすくなります。
CHAPTER 02ナフサと灯油が下がらないわけ
ナフサも灯油も、原油を分けて作ります。原油が高くなると、どちらも高くなります。ただ、下がらない理由は少しずつ違います。
| もの | 値段 | いつ・どこの数字か |
|---|---|---|
| ナフサ | 1トン877.90ドル(前の年より70.65%高い) | 10月15日、Trading Economics |
| 灯油(全国の平均・お店で買う場合) | 1リットル141.8円 | 10月5日、資源エネルギー庁の調査 |
| 灯油(札幌市・配達の場合) | 1リットル159.35円(前の調査より11.72円高い) | 10月9日、札幌市の調査 |
| 国の補助 | 1リットル42.4円(10月1〜7日は50.7円) | 10月8日から |
出典:Trading Economics(2026年10月15日。参考値)、資源エネルギー庁の調査(補助金ポータル2026年10月8日更新経由)、札幌市「灯油価格調査」。
ナフサ:値段がプラスチック製品に届くまで時間がかかる
ナフサの値段は、前の年より7割ほど高くなっています。ただ、IEAによると、ナフサは原油よりも安くしか売れない状態が続いています。プラスチックを作る工場の注文が弱っているためです。
ナフサの値段は、3か月ごとに決まる「国産ナフサ価格」を通じて、少し遅れてプラスチック製品の値段に伝わります。7〜9月の国産ナフサ価格は、10月29日に出る国の貿易統計をもとに計算されます。
灯油:北海道で先に上がり、冬の需要が増える
灯油の全国の平均は、10月5日の時点で1リットル141.8円です。一方、札幌市の調査では、10月9日の配達価格が159.35円まで上がりました。北海道新聞は、さらに約190円になる可能性があると伝えています。
国は、ガソリンや灯油の値段を抑えるために補助を出しています。10月8日からは1リットル42.4円で、その前の週の50.7円より減りました。補助が減ると、お店の値段は上がりやすくなります。
全国の平均はお店で買う場合、札幌市の数字は配達の場合です。いつも買っているお店や配達の会社の値段を、早めに確かめておくと安心です。
CHAPTER 03これから見ておきたい数字
ナフサや灯油の値段がこれからどう動くかは、毎月出てくるいくつかの数字で追うことができます。
国産ナフサ価格(10月29日)
7〜9月の国産ナフサ価格は、10月29日に出る国の貿易統計(輸入の統計)をもとに計算されます。この数字が上がると、少し遅れてプラスチック製品の値段に伝わります。樹脂メーカーが値上げを発表するかどうかも、合わせて見ておくと動きが分かります。
国際エネルギー機関の報告(毎月中旬)
IEAは毎月中旬に、世界の石油のたくわえや、中東から出ていく石油の量をまとめて報告しています。たくわえがさらに減っているか、中東からの流れが戻っているかが分かります。
灯油の値段と国の補助(毎週)
灯油の値段は、資源エネルギー庁が毎週調べて公表しています。国の補助の額が変わると、お店の値段も動きます。北海道など寒い地域では、自治体も灯油の値段を調べて公表しています。
ニュースの数字を見るときのコツ
ニュースの数字には、ある1日の様子や、話している人の見立てが入っていることがあります。「誰が」「いつの」「何の数字を」言っているのかを確かめ、国や国際機関が毎月出している数字と見比べると、落ち着いて判断しやすくなります。
灯油の配達業者に聞いておくこと
灯油の値段や配達の決まりは、お店によって違います。寒くなる前に、次のことを聞いておくと安心です。
コピペ枠:灯油の配達業者に聞くことメモ
「全文をコピー」を押して、スマートフォンのメモに貼り付けてお使いください。
CHAPTER 04この記事に出てきた言葉の意味
よくあるご質問
日本の石油は、あと何日分ありますか。
経済産業省によると、2026年8月末で204日分のたくわえがあります。国がためている分が103日分、会社がためている分が96日分、産油国と一緒にためている分が4日分です。ただし、ナフサはこの日数に入っていません。
プラスチック製品は、これから値上がりしますか。
ナフサの値段は、国産ナフサ価格を通じて少し遅れて製品に伝わります。7〜9月の国産ナフサ価格は、10月29日に出る国の貿易統計をもとに計算されます。その後の樹脂メーカーの発表を見ると、動きが分かります。
灯油は、この冬足りなくなりますか。
足りなくなるかどうかは、公表されている数字からは分かりません。札幌では灯油の配達価格が10月9日に1リットル159.35円まで上がり、北海道新聞は約190円になる可能性を伝えています。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか。
当社が扱うプラスチックパレットや物流資材は、ナフサから作られる樹脂でできています。ナフサと原油の動きは毎日の仕入れに関わるため、公表されている資料をもとに、仕組みをやさしくまとめました。
出典・エビデンス一覧8件(国と国際機関3・報道など5)
国と国際機関の資料
- IEA「Oil Market Report - October 2026」(2026年10月14日)|世界のたくわえは戦争前より5億900万バレル少ない、陸上は2016年以降で最少、9月の湾岸の原油の輸出は戦争前の75%超、ナフサと原油の値差
- 経済産業省 資源エネルギー庁「石油備蓄の現況」(2026年10月15日公表)|8月末の備蓄204日分(国家103日・民間96日・産油国共同4日)
- 札幌市「灯油価格調査」|10月9日の配達価格159.35円、前回より11.72円高い
報道・データ
- TradeArabia(2026年10月6日、ロイター配信)|サウジアラムコのナセルCEOの発言(たくわえは「恐ろしいほど薄い」、戻すのに約2年)
- The Vibes(2026年10月17日)|10月5〜11日に船への攻撃が12件報告された(UKMTOのデータ)、10月13日のホルムズ海峡の通過量(ケプラーの集計)
- 北海道新聞(2026年10月9日)|コープさっぽろの配達価格159円、約190円になる可能性
- 補助金ポータル(2026年10月8日更新)|国の補助42.4円(10月8日から)、灯油の全国平均141.8円(10月5日)
- Trading Economics「Naphtha」|ナフサ877.90ドル(10月15日)、前の年より70.65%高い。参考値で公式の値段ではない
値段の数字は、それぞれの出典で2026年10月18日に確かめたものです。
- ※数字は2026年10月18日に当社が確かめたものです。石油の値段や海の様子は日々変わります。
- ※Trading Economicsの値段は参考値で、公式の値段ではありません。
- ※灯油が足りなくなるかどうかは、2026年10月18日の時点で公表されている数字からは分かりません。
- ※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の判断を推奨するものではありません。引用に際しては出典として本記事URLを明記してください。記載内容に事実誤認がありましたら、お問い合わせフォームよりご連絡ください。
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