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病院・薬の2026年、何が足りなくなり何が変わったのか|抗菌薬・透析・診療報酬改定を1ページで

薬の有効成分(原薬)はどこから来るのか。注射器は何でできているのか。薬はどう運ばれるのか。そして国の制度は何を求めているのか。医薬品と医療資材の供給を、原薬・素材・物流・制度の4つの層に分けて整理したまとめです。2026年8月〜9月の動きも加えました。本記事は4つの層の要点と時系列・主な数字の一覧だけを短くまとめ、詳しい内容は個別記事15本へご案内します。

ジャンル別まとめ 収録記事 15本 最終更新 次回更新目安 2026年10月中旬

3分でわかる要点

  • 医薬品と医療資材の供給は、原薬(薬の有効成分)・素材・物流・制度の4つの層で決まります。層ごとに動かす市場や制度も、動く速さも違うため、ひとつの層が良くなっても、ほかの層の問題までは解決しません。
  • 2026年に足りなくなったのは、薬や樹脂そのものより、製造工程で使う溶剤・ガス・潤滑油(工程材工程材製造・滅菌・加工・洗浄の各工程で使われ、製品にはほとんど残らない材料です。溶剤・滅菌用ガス・潤滑油・重油等を含みます。このまとめでの分け方です。)と、容器・包装でした。個別名称のある85品目のうち52品目が、こうした工程材です。
  • 厚生労働省が供給に影響ありと判断した品目は、8月24日時点で115品目です。うち102品目が解決済み、13品目は解決の道筋が立ち、対応検討中は0品目になりました。一方、βラクタム系抗菌薬の原材料はほぼ100%中国依存で、国産化の目標は2030年です。
  • 2026年9月には原油が100ドルを超え、ナフサのスポット価格は前月比+17.22%になりました。素材に表れるとすれば年末から翌春にかけてですが、診療報酬と薬価は国が決める公定価格のため、次の改定まで動きません。国が備蓄していた医療用手袋は、10月6日から一般販売に移ります。
  • 全15記事は、病院・薬局の経営、調達、透析、在宅・介護、患者さん・ご家族向けの解説に分かれています。立場ごとの入口は下の「こんな方へ」と第6章の表にまとめました。詳しい内容は、下の「このまとめの記事を探す」から個別記事で読めます。

こんな方へ ── まず読むところ

15本
収録記事数
専門版10
やさしく解説4・関連1
0/115品目
供給課題品目のうち対応検討中
2026年8月24日
厚生労働省(解決済み102)
≒100%が中国依存
βラクタム系抗菌薬の原材料
厚生労働省 取組方針
+2.41%
診療報酬本体(令和8年度単年)
2年度平均は+3.09%
令和9年度は+3.77%

CHAPTER 01このまとめで扱う範囲

「薬が手に入りにくい」とき、原因が製造なのか、輸送なのか、制度なのかで、対処のしかたも落ち着くまでの時間も違います。このまとめでは医薬品と医療資材の供給を4つの層に分け、それぞれの動き方を一次資料にもとづいて記録しています。

扱う4つの層

層 扱う対象 左右するもの
①原薬医薬品の有効成分、中間体、基礎化学品調達先の地理的分布、経済安全保障推進法、薬事上の製造所の特定
②素材注射器、輸液バッグ、血液回路、容器・包装の樹脂樹脂の物性、医療用グレード医療用グレード医療用途向けに、組成・添加剤の処方・異物の管理・保管と出荷の手順を設計した樹脂のグレードです。物性ではなく管理体制によって一般グレードと区別されます。の管理体制、滅菌方式との適合
③物流温度管理、輸送力、保管、配送頻度GDPガイドラインGDPガイドライン医薬品の適正流通基準です。2018年12月に厚生労働省から出されました。法的な強制力はありませんが、事実上の業界標準として使われています。、労働法制、燃料価格、荷姿の標準化
④制度診療報酬、薬価、備蓄要件、患者負担中医協の審議、大臣折衝、告示と通知

層の分け方は本記事による整理です。各層を扱った記事は第5章でご案内しています。

CHAPTER 022026年に起きたこと(時系列)

医療の分野で何がいつ起きたのかを、公表資料にもとづいて並べました。

日付 主体 内容
2026-03-24内閣官房中東情勢に関する関係閣僚会議(第1回)を開催。
2026-03-30経済産業省石油関連製品の製造者・卸業者等に対し、医療用途を中心とした安定供給確保への協力を要請。ポリエチレン等の安定供給も対象に含まれます。
2026-03-31厚生労働省/経済産業省「中東情勢の影響を受ける医薬品、医療機器、医療物資等の確保対策本部」を設置。同日の関係閣僚会議で輸血パック・透析回路・注射器・医療用手袋等が名指しで挙げられました。
2026-04-09厚生労働省確保対策本部(第2回)で、情報提供窓口、医療機関での定点観測、EMISEMIS広域災害救急医療情報システムです。2026年の対応では、医療物資の供給状況の報告にも使われました。(広域災害救急医療情報システム)を用いたオンライン報告システムの整備を説明。
2026-04-16厚生労働省/経済産業省イソプロパノール消毒液、ダイアライザーの製造用溶剤など5品目の供給停止リスクを解消したと発表。医療用手袋の備蓄放出を決定。
2026-05-23厚生労働省備蓄手袋の配布を開始。以降、手袋類の相談件数は減少傾向へ。
2026-05-29厚生労働省当面の必要量に見合う量のみを発注・受注するよう求める通知を発出。
2026-06-01厚生労働省令和8年度診療報酬改定(本体)を施行。地域支援・医薬品供給対応体制加算地域支援・医薬品供給対応体制加算2026年度改定で新しくできた調剤報酬の加算です。従来の地域支援体制加算と後発医薬品調剤体制加算をまとめ、5区分に組み直しました。の新設、後発医薬品調剤体制加算の廃止、入院時の食費・光熱水費の引き上げ。
2026-06-09厚生労働省分包紙について、メーカーによる優先供給の仕組みを開始。
2026-06-18厚生労働省薬剤容器について、同様の優先供給の仕組みを開始。
2026-06-23厚生労働省高齢者施設等への什器・システムの費用負担が「経済上の利益の提供経済上の利益の提供保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則が禁じている、患者さんを呼び込むための行為です。2026年6月23日に、高齢者施設への什器の提供がこれに当たることがはっきり示されました。」に該当することを事務連絡で明確化。
2026-07-02厚生労働省/経済産業省アイソレーションガウン等について「販売可能な通販サイト」リストの提供を開始。
2026-07-08厚生労働省/経済産業省注射器・輸液セット等について同リストの提供を開始。
2026-07-20厚生労働省医療分野の影響・対応の集計時点。相談総数14,316事業者、供給に影響があると判断された品目114件。
2026-07-24内閣官房重要物資の安定的な供給確保のためのタスクフォース(第3回)を持ち回りで開催し、各省提出資料を公表。
2026-07-31政府・日本銀行/米国日米が協調介入を実施。為替は円高方向へ振れました。
2026-08-01厚生労働省高額療養費制度高額療養費制度ひと月の医療費が高額になったときに、所得に応じた自己負担限度額を超えた分が払い戻される制度です。2026年8月施行予定の見直しがあります(施行状況は第3章をご覧ください)。の見直しを施行予定。年間上限の新設、多数回該当の金額の維持。
2026-08-26内閣官房タスクフォース(第4回)を持ち回りで開催。厚生労働省の資料では、8月24日時点で供給に影響があると判断された品目115件のうち102件が解決済み、対応検討中は0件。
2026-09-08—サウジアラビアの石油施設が攻撃を受け73人が負傷。同国の8月の産油量は前月比190万バレル減の日量623.8万バレル。
2026-09-10—ブレント原油が109.09ドル、ナフサのスポットが871.17ドル/トン(前月比+17.22%)。7月23日以来の100ドル超え。
2026-09-11日本銀行8月の企業物価指数を公表。化学製品が前年比+13.9%、石油石炭製品が同+14.7%。
2026-09-25厚生労働省国が備蓄していた医療用手袋について、10月6日から枚数の上限を設けない一般販売へ移ると事務連絡。

出典:内閣官房・厚生労働省・全国健康保険協会の公表資料(第10章の1〜4・7・18〜20)。日付は開催日、施行日または公表日です。7月31日・9月8日・9月10日・9月11日の4行は、医療分野の公表資料ではなく原油・ナフサ・為替・企業物価の動きを示します。8月以降の詳しい動きは第3章で扱います。

CHAPTER 032026年8月〜9月の動き

第2章の時系列のあと、2026年8月から9月にかけての動きを、2026年9月29日に当社が確認できた資料でまとめました。医療の現場の品薄は落ち着いてきた一方、上流の原油・ナフサは再び上がりました。医療がほかの産業と違うのは、価格が国の制度で決まる層を抱えている点です。

品薄の相談は落ち着いてきました(厚生労働省の集計)

厚生労働省が内閣官房のタスクフォース(第4回、8月26日に持ち回りで開催)に出した資料では、8月24日時点で対応検討中の品目が0品目になりました。新たに解決した例として、歯科用ユニット等の塗装用溶剤が挙げられています。

項目7月20日時点8月24日時点
安定供給に影響があると判断された品目114品目115品目(+1)
うち解決済み98品目102品目(+4)
うち解決の道筋が立った品目13品目13品目
うち対応検討中3品目0品目(−3)
相談総数14,316事業者14,644事業者
分包紙の供給不足の解消332薬局等(100%、7月21日)相談のあった373薬局等のすべて(8月19日)
薬剤容器の供給不足の解消437中399薬局等(7月21日)551中522薬局等(8月19日)
医療用手袋の購入実績4,921医療機関等・約2,172万枚(7月19日)5,160医療機関等・約2,480万枚(8月20日)

出典:7月20日時点は第10章の1、8月24日時点は第10章の18(どちらも厚生労働省)。同じ集計の続きなので並べています。

相談の件数は「平均して1日10件未満の状況が継続」とされ、資料は「メーカーは昨年同量並みの製造を行っている」とも書いています。量が足りないのではなく、配り方と経路の問題だったという見方(第4章の「2026年の特徴」)と合っています。

その後、タスクフォースの第5回(10月2日に持ち回りで開催)に厚生労働省が出した9月30日時点の資料では、安定供給に影響があると判断された115品目のうち、解決済みが115品目(8月24日時点から+13品目。「目詰まり解消の仕組み」により、相談があれば速やかに供給不足に対応している品目を含みます)、対応検討中が0品目でした。医療用手袋の購入実績は、5,238医療機関等・約2,631万枚(9月24日時点)です。

項目9月30日時点
安定供給に影響があると判断された品目115品目
うち解決済み115品目(+13)
うち対応検討中0品目
医療用手袋の購入実績5,238医療機関等・約2,631万枚(9月24日)

国の備蓄手袋は10月6日から一般販売へ

厚生労働省は2026年9月25日の事務連絡で、医療用手袋の不足感は緩和傾向にあり、平時の対応へ段階的に移る時期と判断しました。都道府県を通じた要請の受付は第19弾で終わり、10月6日からは購入できる枚数の上限をなくし、買う人も医療機関に限らない一般販売に移ります。販売はアスクル社の国備蓄品販売サイトで、サイズはS・M・Lです。

医薬品全体の出荷状況:限定出荷・供給停止は12%のまま

中東情勢に限らず、すべての医療用医薬品の出荷状況を調べた厚生労働省の月次調査では、メーカーが出荷を絞っている「限定出荷限定出荷・供給停止メーカーが通常どおりの量を出荷できず、出荷先や量を絞っている状態が限定出荷、出荷を止めている状態が供給停止です。厚生労働省は医薬品全体の状況を月ごとに調べて公表しています(第3章)。」と、出荷を止めている「供給停止」の合計は、7月分・8月分とも12%でした。限定出荷の理由は「自社の事情」が最も多くなっています。3.1の115品目の集計とは別の調査なので、数字どうしは比べられません。

調査限定出荷・供給停止の合計
2026年7月分12%(1,801品目)
2026年8月分12%(1,855品目)

上流で起きたこと(原油・ナフサ・為替)

時期 確認できる事実 4層のどこに届くか
2026-07-31日米が協調介入を実施。8月3日にドル円155.22円(7月23日は163.80円)。①原薬(輸入調達の円建てコスト)
2026-09-08サウジアラビアの石油施設が攻撃を受け73人が負傷。同国の8月の産油量は前月比190万バレル減の日量623.8万バレル。全層の起点
2026-09-10ブレントが109.09ドル(9月8日の97.92ドルから上昇)。ナフサのスポットが871.17ドル/トン、前月比+17.22%。②素材(樹脂・工程材)
2026-09-11日本銀行が8月の企業物価指数を公表。化学製品 前年比+13.9%、石油石炭製品 同+14.7%。②素材・③物流
2026-09-13週税関長公示レートが158.81円。8月2日週の163.16円から4.35円の円高(当社計算)。①原薬・②素材(輸入分)

出典は第10章の11〜17。「4層のどこに届くか」は第4章の区分に沿った本記事による整理です。世界銀行の月平均では、8月のブレント原油は90.9ドル/バレルでした(第10章の21)。日々の値である9月10日の109.09ドルとは種類の違う指標なので、並べて比べないでください。

層ごとの効き方

層 この局面での効き方 反映までの時間
①原薬 依存先の構造は変わっていません。円高は輸入調達の円建てコストを押し下げる方向に働きますが、調達先を変える力はありません。 根が深く、年単位。為替の影響は契約条件によります。
②素材 ナフサの前月比+17.22%は、樹脂製品と工程材(溶剤・滅菌用ガス・潤滑油)の双方の起点が動いたことを意味します。企業物価の化学製品 前年比+13.9%は、これを統計の側から裏づけています。 2〜6か月。年末から翌春にかけて。
③物流 石油石炭製品の前年比+14.7%は、配送と冷蔵・冷凍の燃料費に効きます。ただし燃料油には価格抑制措置が働いており、軽油の全国平均は2026年8月17日から9月7日までの3週間で0.2円しか動いていません。 短い期間で効きます。ただし抑制措置が続くことが前提です。
④制度 令和8年度改定はに施行されたばかりで、次の改定は令和10年度です。9月の上流の動きは、この改定率には含まれていません。 次の改定まで動きません。

ほかの産業では、上流が動けば価格改定という形で下流へ渡す経路があります。医療にはそれがありません。診療報酬も薬価も公定価格なので、改定と改定の間に上流が動いても、その間は価格に表れません。

第4章で見るように、制約は下の層ほど動きが遅くなります。その中でも④制度の層はさらに遅いというのが、この2か月で確認できたことです。

この章で確認できていないこと

次のことは、2026年9月29日の時点で当社が確認できていません。

  • 8月24日時点より後の、厚生労働省による供給課題品目の集計。第7章の114品目・111品目は時点、3.1の表の115品目は8月24日時点の数値で、どちらも9月の上流の再上昇を織り込んだものではありません。
  • 2026年8月1日に施行予定とされていた高額療養費制度の見直しが、予定どおり施行されたかどうか(全国健康保険協会のページは「令和8年8月から見直されます」の書き方のままで、施行済みと明記した一次資料は見つけられていません)。
  • 9月の原油・ナフサの上昇を受けた、医療材料メーカーおよび医薬品卸の価格改定の有無。
  • 国の備蓄手袋を一般販売するときの価格(9月25日の事務連絡には書かれていません)。

CHAPTER 04供給を決める4つの層

第1章で示した4つの層について、2026年に何が起きたかを層ごとにまとめました。

層ごとの状況

層 2026年に確認された事実 変わるまでの時間
①原薬 βラクタム系抗菌薬の原材料をほぼ100%中国に依存。抗菌性物質製剤は経済安全保障推進法の特定重要物資特定重要物資経済安全保障推進法第7条にもとづいて指定される物資です。医薬品の分野では、抗菌性物質製剤が令和4年12月23日に指定されました。に指定され、2030年までの国産化と備蓄体制の整備が目標とされています。 根が深く、変えるには年単位の時間がかかります。
②素材 供給課題品目に個別名称のある85品目のうち52品目が溶剤・ガス・潤滑油等の工程材。樹脂製品や容器包装そのものは33品目にとどまりました。 短い期間。工程材の確保により解消が進みました。
③物流 温度管理はGDPガイドライン、輸送力は2024年4月から適用された時間外労働の上限規制、容器包装は樹脂供給という3つの制約が同時に現れました。 中くらいの期間。標準化の議論は2040年を目標年としています。
④制度 診療報酬本体は2年度平均+3.09%(令和8年度単年+2.41%)。医薬品の安定供給体制が加算の基礎要件に組み込まれました。高額療養費制度の見直しは2026年8月施行予定とされていました。 年度単位。改定は2年に1度。

各層の事実は、このまとめの各記事で引用した一次資料にもとづきます。変わるまでの時間の見立ては本記事による整理です。

この4つの層から読み取れること

  • 制約は下の層ほど動きが遅くなります。原薬の依存先は年単位でしか変わらない一方、工程材の課題は数週間から数か月で片づきました。
  • 層をまたいだ原因と結果は成り立ちにくいものです。診療報酬の改定が原薬の調達先を変えることはなく、原薬の国産化が輸送力を増やすこともありません。
  • ただし、制度はほかの層に条件を課します。2026年度改定では、医薬品の安定供給体制が加算の基礎要件に組み込まれました。計画的な調達や返品の抑制といった項目は、②素材と③物流の層への働きかけです。
  • 制度の層は最も動きが遅い層です。公定価格は改定と改定の間には動きません。2026年8月から9月にかけての層ごとの効き方は、第3章にまとめました。
2026年の特徴

2026年は、作る力が足りないのではなく、配り方と経路の問題が前に出た年でした。厚生労働省の資料は「メーカーは昨年同量並みの製造を行っている」と繰り返し書いており、対処も増産の要請ではなく、供給元の特定と優先供給、販売ルートの情報提供という形をとりました。

CHAPTER 05分野別の記事ガイド(7つの分野)

収録している15記事を、扱うテーマごとに7つの分野に分けてご案内します。キーワードで探すときは、ページ上部の「このまとめの記事を探す」を使うと早く見つかります。

CHAPTER 06立場別:最初に読む記事

最初に読む記事を、6つの立場ごとに示します。

お立場 最初に読む記事 次に読むとよい記事
病院の経営・事務 2026年度診療報酬改定の全体像 病院経営と医療資材コストの構造 → 使い捨て医療材料の樹脂別マップ
薬局の経営・薬剤師 2026年度診療報酬改定の全体像 薬局経営と供給確保医薬品の制度 → 医薬品物流を規定する3つの制約
資材の調達・購買 使い捨て医療材料の樹脂別マップ 医薬品物流を規定する3つの制約 → 原薬の海外依存構造
透析施設・臨床工学 透析医療の資材供給と診療報酬改定 使い捨て医療材料の樹脂別マップ → 2026年度診療報酬改定の全体像
在宅・介護の実務 介護施設と在宅医療を支える資材の供給構造 2026年度診療報酬改定の全体像 → 医薬品物流を規定する3つの制約
患者・ご家族 「2026年の医療費の変化」やさしく解説 やさしく解説シリーズの薬不足編・薬局編・病院編

おすすめの読み順は本記事による整理です。

CHAPTER 07一次資料で確認した主な数字

各記事をつくるときに一次資料で直接確かめた数字を、時点と出典つきで一覧にしました。本記事で全項目を確かめ直したものではないため、実務では該当する記事と、出典の元の資料をご確認ください。8月24日時点の供給状況の数字は第3章の表にあります。

供給状況

項目 数値 時点 出典
安定供給に影響があると判断された品目114品目2026-07-20厚生労働省
うち解決済み98品目2026-07-20同上
うち解決の道筋が立った品目13品目2026-07-20同上
うち対応検討中3品目2026-07-20同上
相談総数14,316事業者2026-07-20同上
分包紙の供給不足の解消332薬局等(100%)2026-07-21同上
薬剤容器の供給不足の解消437中399薬局等2026-07-21同上
医療用手袋の購入実績4,921医療機関等・約2,172万枚2026-07-19同上

素材・原薬

項目 数値 時点 出典
βラクタム系抗菌薬の原材料の中国依存ほぼ100%取組方針厚生労働省
抗菌性物質製剤の特定重要物資指定令和4年政令第394号2022-12-23同上
国産化・備蓄体制の目標年2030年2023年開始同上
認定された供給確保計画2件・4成分・参画5社2023-07同上
供給課題品目のうち工程材85品目中52品目2026-07-20本記事による再編成
PPの耐熱温度110℃—医療機器部品商社の公開資料

制度

項目 数値 時点 出典
診療報酬本体(2年度平均)+3.09%令和8・9年度厚生労働省
うち令和8年度単年+2.41%令和8年度同上
うち令和9年度+3.77%令和9年度同上
薬価▲0.86%2026-04 施行同上
保険薬局への物価対応配分+0.01%令和8年度同上
地域支援・医薬品供給対応体制加算127点(新設)2026-06-01同上
慢性維持透析(J038)全区分一律▲20点2026-06-01同上
入院時の食費基準額の引き上げ40円/食2026-06-01同上
高額療養費の年間上限(標準報酬月額15万円以下)41万円2026-08 施行全国健康保険協会

患者・施設の規模

項目 数値 時点 出典
慢性透析患者総数337,414人2024年末日本透析医学会
透析の調査対象施設4,512施設2024年末同上
血液透析濾過(HDF)患者213,721人(63.3%)2024年末同上
腹膜透析(PD)患者10,774人2024年末同上

各数値の詳細な文脈と、算出方法に関する注記は、それぞれの記事本文でご確認ください。「本記事による再編成」と記載した項目は、公表資料を当社の基準で分類・集計したものです。

CHAPTER 08これからの見方と、見ておきたい指標

3つの時間の幅

時間軸 確認できる事実 見ておきたいもの
短期
(1〜3か月)
時点で対応検討中の品目は3件で、前回時点から17件減りました。9月時点で分かっている事実として、時点では対応検討中は0件になり、医療用手袋は10月6日から一般販売に移ります(第3章)。高額療養費制度の見直しは2026年8月施行予定とされていました。 次回タスクフォース資料における対応検討中の件数。高額療養費の見直し後の運用。疑義解釈資料の追加発出。
中期
(3〜12か月)
調剤ベースアップ評価料と調剤物価対応料は令和9年6月以降に所定点数の100分の200で算定。後発医薬品の使用割合要件の経過措置はまで。 令和9年度予算編成における更なる調整の有無。経過措置終了に向けた各施設の対応。
長期
(1年以上)
抗菌性物質製剤の国産化・備蓄体制は2030年までの整備が目標。物流標準化の議論は、フィジカルインターネット実現会議で2040年を目標年としています。 供給確保計画の追加認定と対象成分の拡大。医薬品ワーキンググループのアクションプランの進捗。

確認できる事実は、各記事で引用した公表資料にもとづきます。見ておきたいものは当社編集部による整理で、将来の状況を予測するものではありません。

見ておきたい6つの指標

指標 確認先 見るところ
供給課題品目数と類型構成内閣官房タスクフォース対応検討中の件数が再び増加に転じるか。新規計上分が製品側か工程材側か。
ナフサ価格の3系列アジアスポット/通関CIF/国産基準価格系列ごとにピークの時期が約2か月ずれます。1つの系列だけで判断しないようにします。2026年9月時点の水準は第3章に書きました。
供給確保計画の認定実績厚生労働省時点で2件・4成分。追加の認定が国産化の進み具合を示します。
重要供給確保医薬品重要供給確保医薬品上の加算1の要件で言及される医薬品です。内用薬・外用薬については、1ヶ月程度の備蓄に努めることとされています。の指定状況厚生労働省調剤報酬の備蓄要件と直結します。指定品目数が現場の負担を左右します。
疑義解釈資料の発出厚生労働省時点で第9報。算定要件の解釈が固まっていく過程を追います。
自施設の品目別リードタイム取引卸・メーカー公表統計に表れない変化が、最初に見える場所。
用語集13語

このまとめで使う主な用語を13項目にまとめました。

原薬(API)
医薬品の有効成分そのものです。製剤は、原薬に賦形剤・添加剤を加えて形にしたものです。供給網は原薬から中間体、基礎化学品へとさかのぼります。
工程材
製造・滅菌・加工・洗浄の各工程で使われ、製品にはほとんど残らない材料です。溶剤・滅菌用ガス・潤滑油・重油等を含みます。このまとめでの分け方です。
医療用グレード
医療用途向けに、組成・添加剤の処方・異物の管理・保管と出荷の手順を設計した樹脂のグレードです。物性ではなく管理体制によって一般グレードと区別されます。
GDPガイドライン
医薬品の適正流通基準です。2018年12月に厚生労働省から出されました。法的な強制力はありませんが、事実上の業界標準として使われています。
特定重要物資
経済安全保障推進法第7条にもとづいて指定される物資です。医薬品の分野では、抗菌性物質製剤が令和4年12月23日に指定されました。
地域支援・医薬品供給対応体制加算
2026年度改定で新しくできた調剤報酬の加算です。従来の地域支援体制加算と後発医薬品調剤体制加算をまとめ、5区分に組み直しました。
重要供給確保医薬品
上の加算1の要件で言及される医薬品です。内用薬・外用薬については、1ヶ月程度の備蓄に努めることとされています。
高額療養費制度
ひと月の医療費が高額になったときに、所得に応じた自己負担限度額を超えた分が払い戻される制度です。2026年8月施行予定の見直しがあります(施行状況は第3章をご覧ください)。
中空糸膜
内径0.2ミリ、膜厚0.05ミリ以下のごく細いチューブです。1万本程度を束ねてダイアライザーをつくります。素材はポリスルホン系が主流です。
選定療養
保険が使える診療に加えて、患者さんの希望で追加の費用を負担する仕組みです。先発医薬品を選ぶ場合や差額ベッドが当てはまります。
EMIS
広域災害救急医療情報システムです。2026年の対応では、医療物資の供給状況の報告にも使われました。
経済上の利益の提供
保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則が禁じている、患者さんを呼び込むための行為です。2026年6月23日に、高齢者施設への什器の提供がこれに当たることがはっきり示されました。
限定出荷・供給停止
メーカーが通常どおりの量を出荷できず、出荷先や量を絞っている状態が限定出荷、出荷を止めている状態が供給停止です。厚生労働省は医薬品全体の状況を月ごとに調べて公表しています(第3章)。
出典・エビデンス一覧23件

このまとめで使った主な出典です。一次資料(官公庁・公的機関・国際機関)を中心に、時点をつけて示します。

一次資料(官公庁・公的機関)

  1. 厚生労働省「石油関連製品の供給不足に伴う医療分野の影響・対応について」(時点)内閣官房 中東情勢に伴う重要物資の安定的な供給確保のためのタスクフォース(第3回)資料2/リンク
  2. 内閣官房「中東情勢に関する対応」関係閣僚会議およびタスクフォースの開催状況一覧/リンク
  3. 厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」/リンク
  4. 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」告示・通知の一覧/リンク
  5. 厚生労働省「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律に基づく抗菌性物質製剤に係る安定供給確保について」特定重要物資の指定、2030年国産化目標、認定実績/リンク
  6. 厚生労働省「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」平成30年12月/リンク
  7. 全国健康保険協会「【制度改正】令和8年8月から高額療養費制度が見直されます」年間上限の新設、多数回該当の維持/リンク
  8. 日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在)」患者総数337,414人、施設4,512/リンク
  9. 経済産業省「フィジカルインターネット実現会議」医薬品ワーキンググループの設置と活動報告/リンク
  10. 資源エネルギー庁「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置」燃料油の支給単価と全国平均価格/リンク

2026年8月〜9月の追補分(上流の指標)

  1. ブレント原油 2026年9月10日 109.09ドル/同年9月8日 97.92ドル7月23日以来の100ドル超え。
  2. ナフサ スポット価格 2026年9月10日 871.17ドル/トン(前月比+17.22%)②素材の起点となる指標。
  3. サウジアラビアの石油施設への攻撃(2026年9月8日、73人が負傷)および同国8月の産油量 日量623.8万バレル(前月比190万バレル減)供給側の制約。
  4. 日本銀行「企業物価指数」2026年9月11日公表(2026年8月分)化学製品 前年比+13.9%、石油石炭製品 前年比+14.7%。
  5. 税関長公示レート 2026年8月2日週 163.16円/2026年9月13日週 158.81円差4.35円の算出は当社によります(当社計算)。
  6. ドル円 2026年7月31日の日米協調介入、2026年8月3日 155.22円、2026年7月23日 163.80円①原薬の輸入調達に関わる為替。
  7. 資源エネルギー庁「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置」軽油の全国平均は2026年8月17日から9月7日までの3週間で0.2円の変動。上記10と同じ出典。

2026年8月〜9月の追補分(医療分野の一次資料)

  1. 厚生労働省「石油関連製品の供給不足に伴う医療分野の影響・対応について①②」(時点)内閣官房 中東情勢に伴う重要物資の安定的な供給確保のためのタスクフォース(第4回、2026年8月26日持ち回り開催)資料2/リンク
  2. 厚生労働省「中東情勢を踏まえた医療用手袋の一般販売移行について」()中東情勢関連対策ワンストップポータル掲載/リンク
  3. 厚生労働省「医薬品供給にかかる調査結果」製造販売業者の対応状況―医薬品全体(2026年7月分・8月分)限定出荷・供給停止の合計/リンク
  4. World Bank「Commodity Price Data (The Pink Sheet)」2026年9月号ブレント原油 2026年8月の月平均 90.9ドル/バレル/リンク

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  2. ナフサ・原油完全まとめ原料価格の3系列を記録したまとめ記事。

CHAPTER 11よくある質問

このカテゴリではどのようなテーマを扱っていますか

医薬品と医療資材の供給を、4つの層に分けて扱っています。薬の有効成分(原薬)そのものを扱う層、注射器や輸液バッグの素材を扱う層、それらを運ぶ物流の層、そして診療報酬や経済安全保障といった制度の層です。あわせて、病院経営・薬局経営への影響、在宅医療と介護施設の資材、患者さんとご家族に向けた解説も収録しています。

2026年の医薬品供給はどのような状況にありますか

厚生労働省が内閣官房のタスクフォース(第4回、8月26日)に出した資料によると、2026年8月24日時点で、安定供給に影響があると判断された115品目のうち102品目が解決済み、13品目は解決の道筋が立ち、対応検討中は0品目になりました。7月20日時点では114品目のうち111品目が解決済みか道筋が立った状態で、対応検討中は3品目でした。足りなくなったのは薬そのものより、製造工程で使う溶剤やガス、容器や包装といった周辺の材料が中心で、資料は「メーカーは昨年同量並みの製造を行っている」としています。なお、中東情勢に限らない医薬品全体の調査では、限定出荷・供給停止が2026年8月分で合計12%(1,855品目)です。詳しくは第3章をご覧ください。

どの記事から読むとよいですか

お立場によって違います。病院や薬局の実務に携わる方は2026年度診療報酬改定の記事から、調達や購買を担当する方は使い捨て医療材料の樹脂別マップから、経営を見る立場の方は病院経営と薬局経営の記事から読むのがおすすめです。患者さんやご家族の方には、やさしく解説シリーズの4記事を用意しています。記事の冒頭の「こんな方へ」と第6章の表からも、最初に読むところへ移れます。

記事はどのような資料に基づいていますか

厚生労働省、内閣官房、経済産業省、資源エネルギー庁などが公表する一次資料を直接参照しています。二次資料を経由した数値については、その旨を各記事の出典欄に明記しています。一次資料で確認できなかった数値は書かず、参照先を示す方針です。

2026年9月に原油とナフサが再び上がりましたが、医療への影響はいつ出ますか

層によって時間が違います。注射器や輸液バッグなどの素材と、製造工程で使う溶剤やガスは、原料から製品までに通常2〜6か月かかるため、2026年9月の上昇が反映されるとすれば年末から翌春にかけてと考えられます。配送の燃料費は短い期間で効きますが、燃料油には価格抑制措置が働いており、樹脂原料ほどは動いていません。一方、診療報酬と薬価は国が決める公定価格で、令和8年度改定が2026年6月1日に施行されたばかりのため、次の改定まで価格には反映されません。なお、第7章の114品目・111品目は2026年7月20日時点、第3章の115品目・対応検討中0品目は8月24日時点の数値で、いずれも9月の上昇を織り込んだものではありません。

国が備蓄していた医療用手袋は、いつから普通に買えるようになりますか

厚生労働省は2026年9月25日の事務連絡で、医療用手袋の不足感は緩和傾向にあるとして、10月6日から一般販売に移ると知らせました。購入できる枚数の上限をなくし、買える人も医療機関に限らない方式で、アスクル社の国備蓄品販売サイトで扱います。都道府県を通じた要請の受付は第19弾で終わりました。販売価格は事務連絡には書かれていません。

なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか

当社は千葉県我孫子市に本社を置き、プラスチックパレット・再生樹脂材料・PPバンド・ストレッチフィルム等の物流資材を全国に供給する専門商社です。取り扱う製品はナフサを起点とする石油化学由来の樹脂で、医療材料と原料のつながりを共有しています。同じ供給網の下流にいる立場から、樹脂と物流の視点で医療分野の動きを整理してお届けしています。

CHAPTER 12この記事について(作り方の方針)

医療は、誤った情報が実際の害につながる分野です。このまとめの記事は、次の方針でつくっています。

  • 一次資料を直接読みます。公表資料を直接参照し、解説記事の孫引きに頼りません。二次資料を経由した数値は、実際に参照した資料名を出典に書きます。
  • 確認できない数値は書きません。逆算や推測もせず、それぞれの数値にそれぞれの出典と時点(調査時点と公表日)をつけます。
  • あおる表現を使わず、治療方針に関わる判断をすすめません。患者さん・ご家族向けの記事では、自己判断で薬をやめないよう繰り返しお伝えしています。

第2章の7月31日以降の行と第3章は2026年9月29日に当社が確認した資料により、そのほかの章の数値は2026年7月26日時点の内容です。本記事は各記事の要点を短くまとめたもので、各記事の紹介文は概要を示したものです。詳しい内容と最新の出典は、各記事の本文でご確認ください。

文:プラスチックパレット株式会社 編集部

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