介護施設と在宅医療を支える資材の供給構造、114品目に含まれた在宅関連品目と2026年6月に明確化された高齢者施設への物品提供の線引き
在宅療養では、医療機関でも薬局でもなく患者宅が資材の最終到達点になる。在宅血液透析、在宅酸素療法、気管カニューレ、留置カテーテル。それぞれの医療行為が固有の消耗材を継続的に必要とする。代替調達の余地が乏しいこの供給構造と、2026年6月に明確化された高齢者施設への物品提供のルールを、一次資料に基づいて記録する。
TL;DR — 3行要約
- 在宅療養で行われる医療行為は多岐にわたり、2026年度診療報酬改定で重症度の高い患者として列挙された状態だけでも13区分に及ぶ。それぞれが固有の消耗材を継続的に必要とする構造にある。
- 厚生労働省が2026年7月20日時点で公表した供給課題品目には、尿道カテーテル、吸引チューブ、呼吸器の加湿装置、気管切開チューブの部品製造用溶剤など、在宅・介護の現場で使われる品目が複数含まれた。
- 2026年6月23日の事務連絡により、配薬カートや調剤棚等の什器を保険薬局が高齢者施設のために負担することは経済上の利益の提供に該当すると明確化された。経過措置は令和9年5月31日まで。
在宅療養では患者宅が資材の最終到達点となり、配送の継続性がそのまま治療の継続性になる。厚生労働省の114品目には尿道カテーテル等の在宅関連品目が含まれた。2026年6月23日には高齢者施設への什器提供が経済上の利益の提供に該当すると明確化され、経過措置は令和9年5月31日までとされている。
CONTENTS
2026年度改定
厚生労働省
ロは50点
令和8年6月23日事務連絡
CHAPTER 01在宅・介護の資材が置かれた位置
医療資材の供給を論じるとき、想定される到達点は病院か薬局であることが多い。しかし実際には、資材が最も届きにくい場所は患者の自宅である。
1.1 3つの到達点の違い
| 到達点 | 在庫の持ち方 | 欠品時の対応余地 | 配送が止まった場合 |
|---|---|---|---|
| 病院 | 資材管理部門が集中管理。品目数が多く、一定の在庫を保有できる。 | 他施設からの融通、代替品への変更、購買ルートの切替が可能。 | 在庫の範囲で持ちこたえる時間がある。 |
| 薬局 | バックヤードの容量に制約。分譲による相互融通の仕組みがある。 | 他薬局への照会、処方医への処方変更の照会が制度上も要件化されている。 | 患者を他薬局へ紹介する選択肢がある。 |
| 患者宅 | 保管スペースが限られ、まとめ置きに物理的な上限がある。 | 患者・家族には代替調達の手段がほとんどない。 | 配送の停止がそのまま治療の中断につながる。 |
薬局における分譲・照会の要件は2026年度診療報酬改定の地域支援・医薬品供給対応体制加算1の施設基準による。その他は各到達点の一般的な特性に基づく本稿の整理。
病院や薬局であれば、欠品時に別の入手経路を探す余地がある。2026年の対応で厚生労働省が有効に機能させた手法も、供給元を特定して優先供給を要請することと、販売可能な通販サイトを提示することであった。いずれも探す側に一定の知識と時間が要る。患者宅にはその余地がない。在宅療養の資材供給では、届けきることが唯一の解になる。
1.2 継続性が要件になる
在宅で行われる医療行為の多くは、日単位あるいは週単位で消耗材を消費する。経管栄養であれば栄養剤とチューブ、在宅自己導尿であればカテーテル、人工肛門であれば装具というように、いずれも中断できない。医薬品の供給不安が議論される際、内服薬に注目が集まりやすいが、在宅療養を成立させているのは、これらの消耗材の途切れない供給である。
CHAPTER 02在宅療養13区分と必要な資材
在宅でどのような医療行為が行われているかは、診療報酬の規定から把握できる。2026年度診療報酬改定では、在宅薬学総合体制加算の追加的措置に関連して、重症度の高い患者が特掲診療料の施設基準等(厚生労働省告示)別表第8の2として列挙されている。
2.1 列挙された状態と対応する資材
| 告示に列挙された状態 | 継続的に必要となる主な資材 |
|---|---|
| 在宅自己連続携行式腹膜灌流を行っている状態 | 腹膜透析液バッグ、接続チューブ、接続デバイス、消毒材 |
| 在宅血液透析を行っている状態 | ダイアライザー、血液回路、透析液、穿刺針 |
| 在宅酸素療法を行っている状態 | 酸素供給装置、カニューラ、加湿器関連部材 |
| 在宅中心静脈栄養法を行っている状態 | 輸液バッグ、輸液セット、カテーテル、フィルター、消毒材 |
| 在宅成分栄養経管栄養法を行っている状態 | 栄養剤、経腸栄養用チューブ、カテーテルチップシリンジ、注入ボトル |
| 在宅自己導尿を行っている状態 | 導尿カテーテル、潤滑剤、消毒材 |
| 在宅人工呼吸を行っている状態 | 呼吸回路、加湿装置関連部材、吸引チューブ、フィルター |
| 植込型脳・脊髄刺激装置による疼痛管理を行っている状態 | 機器管理に伴う消耗材 |
| 肺高血圧症でプロスタグランジンI2製剤を投与されている状態 | 注入ポンプ関連部材、輸液セット |
| 気管切開を行っている状態 | 気管切開チューブ、固定材、ガーゼ |
| 気管カニューレを使用している状態 | カニューレ、吸引チューブ、消毒材 |
| ドレーンチューブまたは留置カテーテルを使用している状態 | チューブ、固定用テープ、蓄尿バッグ、消毒材 |
| 人工肛門または人工膀胱を設置している状態 | ストーマ装具、皮膚保護材、粘着剥離剤 |
左列は特掲診療料の施設基準等(厚生労働省告示)別表第8の2に列挙された状態の記載による。右列の資材は各医療行為に一般的に必要とされるものを本稿で整理したものであり、告示に記載されているものではない。
2.2 対象疾患による区分
同じ別表第8の2では、状態による区分に加えて、疾患による区分も示されている。末期の悪性腫瘍、スモン、指定難病、後天性免疫不全症候群、脊髄損傷、真皮を越える褥瘡がこれにあたる。褥瘡が含まれている点は資材の観点で重要で、創傷被覆材、皮膚保護用フィルム、洗浄剤などが継続的に必要となる。
別表第8の3に定める包括的支援加算の対象患者には、要介護3以上に相当する患者、認知症高齢者の日常生活自立度でランクIII以上の患者、月4回以上の訪問看護を受ける患者、訪問診療時または訪問看護時に注射や処置を行っている患者、特定施設等の入居者で看護師が痰の吸引や経管栄養の管理等の処置を行っている患者、麻薬の投薬を受けている患者、医師の指導管理のもと家族等が処置を行っている患者などが含まれる。医療行為の種類ではなく、支援の必要度で区分する枠組みである。
CHAPTER 03114品目に現れた在宅・介護関連品目
2026年の医薬品・医療物資の供給課題において、在宅・介護の現場で使われる品目がどの程度含まれたのかを確認する。
3.1 該当する品目の抽出
厚生労働省がに公表した資料には、安定供給に影響があると判断された品目の個別名称が列挙されている。このうち、在宅療養および介護の現場で用いられる品目を抽出する。
| 品目 | 関連する療養行為 | 資料上の区分 |
|---|---|---|
| 尿道カテーテル(2件) | 在宅自己導尿、留置カテーテル | 対応検討中または解決の道筋が立った品目 |
| 吸引チューブ | 気管カニューレ、痰の吸引 | 同上 |
| 呼吸器の加湿装置 | 在宅人工呼吸、在宅酸素療法 | 同上 |
| 吸入器のアダプタ | 吸入療法 | 同上 |
| 気管切開チューブの部品製造用及び包装用溶剤 | 気管切開 | 解決済みの品目 |
| 皮膚保護用フィルムの製造用溶剤 | 褥瘡管理、ストーマ管理 | 解決済みの品目 |
| 医療用粘着テープの製造用溶剤 | チューブ固定、創傷管理 | 解決済みの品目 |
| 伸縮包帯等の原材料 | 創傷管理、圧迫療法 | 解決済みの品目 |
| 医療用脱脂綿、コットンボールの梱包材 | 清拭、消毒 | 解決済みの品目 |
| 留置針等の洗浄剤 | 在宅中心静脈栄養法、皮下注射 | 解決済みの品目 |
| 病院等の寝具類の洗濯に使用するボイラー用A重油 | 施設の寝具管理 | 解決済みの品目 |
| リハビリ用機器の部品 | リハビリテーション | 対応検討中または解決の道筋が立った品目 |
| フェイスシールド | 感染対策 | 対応検討中または解決の道筋が立った品目 |
出典:厚生労働省「石油関連製品の供給不足に伴う医療分野の影響・対応について」(時点、内閣官房タスクフォース第3回 資料2)。品目名は同資料の記載による。「関連する療養行為」は本稿による整理。
3.2 抽出結果が示すこと
13品目が該当した。この構成には次の特徴がある。
- 製品そのものと工程材が混在している。尿道カテーテルや吸引チューブは製品だが、気管切開チューブの部品製造用溶剤、皮膚保護用フィルムの製造用溶剤、医療用粘着テープの製造用溶剤は工程材である。同じ療養行為に必要な資材でも、供給網上の位置が異なる。
- 創傷・皮膚管理に関する品目が複数含まれる。皮膚保護用フィルム、医療用粘着テープ、伸縮包帯、脱脂綿の梱包材。褥瘡管理やストーマ管理を要する在宅患者にとって、これらは日常的に消費される。
- 施設運営に関わる品目もある。寝具類の洗濯に使用するボイラー用A重油は、直接の医療行為ではないが、施設の日常運営を支える。
供給課題を素材の観点から再編成した分析は使い捨て医療材料の樹脂別マップで行っている。そこでは個別名称のある85品目のうち52品目が工程材であることを確認した。在宅・介護関連の品目にも同じ構造が現れている。
CHAPTER 04資材はどの経路で患者宅に届くのか
在宅療養の資材は、単一の経路で供給されているわけではない。誰が用意し、誰が届けるのかは資材の種類と制度上の位置づけによって分かれる。
4.1 供給の主体
| 供給主体 | 扱う資材の例 | 制度上の位置づけ |
|---|---|---|
| 保険医療機関 | 在宅療養指導管理に伴う衛生材料・保険医療材料 | 在宅療養指導管理料の算定に際し、必要かつ十分な量の衛生材料または保険医療材料を支給することとされている。 |
| 保険薬局 | 処方箋に基づく医薬品、特定保険医療材料、高度管理医療機器 | 薬局が高度管理医療機器を扱うには販売業の許可を要する。在宅薬学総合体制加算2の施設基準にも高度管理医療機器販売業の許可が含まれる。 |
| 訪問看護ステーション | 訪問時に使用する材料 | 医療機関との連携により、在宅医療に必要な衛生材料等の量の把握に努めることとされている。 |
| 医療機器・在宅酸素の事業者 | 酸素濃縮装置、人工呼吸器、関連消耗材 | 機器のレンタルと保守、消耗材の定期補充を担う。 |
| 患者・家族による購入 | 紙おむつ、一部の衛生用品 | 紙おむつは介護保険の福祉用具に含まれず、給付の対象外。市区町村独自の助成制度が設けられている場合がある。 |
在宅療養指導管理料に係る衛生材料の支給、訪問看護ステーションとの連携に関する記載は、在宅医療の運用に関する解説資料の記述に基づく。福祉用具の範囲に関する記載は厚生労働省の公表内容による。
4.2 紙おむつが給付の外にあるという構造
介護保険の福祉用具は、要介護者等の日常生活の便宜を図るための用具および機能訓練のための用具であって、利用者がその居宅において自立した日常生活を営むことができるよう助けるものについて保険給付の対象とされている。消耗品である使い捨ての紙おむつは、この定義に含まれない。
そのため紙おむつの費用は原則として利用者の負担となり、市区町村独自の助成制度によって一部が補われる形をとる。助成の内容は自治体によって異なり、購入費の助成、現物支給、購入補助券の支給などの方式がある。要介護認定の区分や所得による条件が設けられている場合も多い。
紙おむつは、消費量が多く容積の大きい資材である。施設であればまとめ買いによる単価低減が効くが、保管面積を要する。在宅であれば購入頻度が高くなり、運搬の負担が生じる。当社は物流資材を扱う立場から、こうした嵩張る品目の保管と搬送の設計に関わってきた。パレット単位での受け入れが可能かどうか、ラックの段構成をどうするかは、施設の実務では在庫水準の実現可能性を直接に左右する。
CHAPTER 052026年6月23日、高齢者施設への物品提供の線引き
2026年に確定した制度変更のうち、介護施設と薬局の関係に直接影響するのがこの内容である。実務への影響が大きい一方、報道での扱いは限られている。
5.1 根拠となる規定
保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(昭和32年厚生省令第16号)第2条の3の2第2項は、保険薬局が事業者またはその従業員に対して、患者を紹介する対価として金品を提供することその他の健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益を提供することにより、患者が自己の保険薬局において調剤を受けるように誘引してはならないと定めている。
厚生労働省はの事務連絡により、この規定の適用範囲を明確化した。
5.2 該当するものとしないもの
| 区分 | 対象 | 取扱い |
|---|---|---|
| 該当する | 配薬カートや調剤棚等、高齢者施設等に備え付ける什器 | 以降、保険薬局が新たに費用を負担すること、または継続的な費用負担を行うことは「経済上の利益の提供」に該当する。 |
| 該当する | 高齢者施設等が利用するシステム(施設職員による配薬を支援するシステム、入居者の見守りシステム等)の導入または利用 | 同上。 |
| 該当しない | 患者個別に用意する服薬カレンダーや服薬ボックス等 | 保険薬局の薬剤師が服薬管理指導業務の一環として必要と判断した場合には、保険薬局の負担により手配することは該当しない。 |
出典:厚生労働省「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則第2条の3の2第2項に規定する経済上の利益の提供による誘引の禁止について」(令和8年6月23日事務連絡)。同事務連絡の内容は令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】に掲載されている。
5.3 経過措置
同事務連絡は、この取扱いをこれまで明確化していなかったことを踏まえ、において現に保険薬局が継続的な費用負担により行っている行為については、までの間に限り「経済上の利益の提供」に該当しないものとみなすとしている。
すでに薬局が費用を負担している什器やシステムについては、経過措置期間の終了までに扱いを整理する必要がある。判断の分かれ目は、それが施設の設備であるか、患者個別の服薬管理に必要なものであるかにある。配薬カートは施設全体の運用に使われるため前者に、個々の患者の服薬カレンダーは後者にあたる。あわせて同事務連絡は、経済上の利益の提供には、金銭の供与のほか、明らかに服薬管理指導業務と関係のない物品やサービスを保険薬局の負担により提供すること(寄付を含めて無償もしくは安価で提供すること、または無償もしくは安価で貸与すること)も含まれるとしている。
5.4 併せて明確化された2つの事項
同日の事務連絡では、患者向けの誘引についても取扱いが示されている。
- 処方箋受付サイトによる金銭等の付与。保険薬局から登録料等を徴収して処方箋受付サイトを運営する外部事業者が、当該サイトを通じて調剤を受けた利用患者に対し、アンケート回答やサイト利用への謝礼等の名目で金銭の払い戻しまたはポイントの供与を行っている事例について、名目の如何にかかわらず経済上の利益の提供に実質的に該当するとされた。当該サイトを通じて処方箋を応需する保険薬局は指導の対象となる。
- 調剤した薬剤の送料の減額・無料化。送付費用の一部または全部を患者から徴収しないこととし、当該費用を減額または無料化する旨の宣伝または広告を行うことは、経済上の利益の提供による患者の誘引に実質的に該当するとされた。
在宅・介護の領域では、薬剤の配送が日常的に行われる。送料の扱いは実務に直結する論点である。
CHAPTER 062026年度改定における在宅の評価
2026年度診療報酬改定では、在宅医療に関する評価が複数の項目で見直された。資材の供給と関わる部分を中心に整理する。
6.1 在宅薬学総合体制加算の見直し
| 項目 | 改定前 → 改定後 | 要件の要点 |
|---|---|---|
| 在宅薬学総合体制加算1 | 15点 → 30点 | 訪問薬剤管理指導の実績48回以上/年、開局時間外の在宅業務対応、医療材料および衛生材料の供給体制、麻薬小売業者の免許の取得等。 |
| 在宅薬学総合体制加算2 イ【新設】 | 100点 | 単一建物診療患者が1人または単一建物居住者が1人の場合。いわゆる個人宅への訪問。 |
| 在宅薬学総合体制加算2 ロ | 50点 | イ以外の場合。高度管理医療機器販売業の許可、常勤換算3名以上の保険薬剤師の勤務等が加算2の要件に含まれる。 |
出典:厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」(令和8年7月1日版)。
加算1の施設基準に「医療材料及び衛生材料の供給体制」が含まれている点は、在宅療養における資材供給が制度上の要件として位置づけられていることを示す。個人宅への訪問に対する評価が100点に引き上げられたのは、施設と比べて1件あたりの移動と対応の負担が大きいことを反映したものと読める。
6.2 訪問に関する新設項目
- 訪問薬剤管理医師同時指導料 150点【新設】。在宅療養を行っている通院困難な患者に対し、訪問診療を実施している保険医と同時に訪問し、薬学的管理および指導を行った場合に6月に1回算定する。ポリファーマシー対策および残薬対策を推進する観点によるもの。
- 複数名薬剤管理指導訪問料 300点【新設】。患者が興奮または攻撃性を示すこと等により、薬剤師単独での訪問では指導の実施が担保できないおそれがある場合に、複数名で訪問した上で必要な薬学的管理および指導を行った場合に算定する。同資料は、この必要性が訪問薬剤管理指導を行うにあたっての利便性に基づく理由によるものではないことを明記している。
- 在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定間隔の見直し。「中6日以上」から「週1回」に変更された。あわせて、休日・夜間を含む開局時間外であっても調剤および訪問薬剤管理指導に対応できるよう、原則として初回訪問時に連絡先電話番号や緊急時の注意事項等を文書により交付することが要件に追加された。
6.3 個人宅以外への追加的措置
個人宅以外(高齢者施設等)においても重症度の高い患者等に対して訪問薬剤指導を実施している保険薬局の取組が後退することを防止する観点から、追加的措置が設けられた。在宅薬学総合体制加算1を届け出ている保険薬局のうち、個人宅の患者に対する訪問薬剤管理指導または居宅療養管理指導に係る算定回数が直近1年間で480回以上である場合等の要件を満たせば、個人宅以外であっても加算2のイ(100点)を算定できる。
算定の対象となるのは、CHAPTER 02で確認した重症度の高い患者(別表第8の2)または包括的支援加算の対象患者(別表第8の3)から訪問薬剤管理指導等に係る処方箋を受け付けて調剤を実施した場合である。改定の全体像については2026年度診療報酬改定の全体像で扱っている。
CHAPTER 07保管と在庫という物理的制約
在宅・介護の資材供給を難しくしている要因のひとつが、保管スペースの制約である。制度の議論では扱われにくいが、実務では最も直接的な制約として現れる。
7.1 容積が大きい資材が多い
在宅療養と介護の現場で消費される資材には、重量に対して容積が大きいものが多く含まれる。
| 資材 | 特性 | 保管上の論点 |
|---|---|---|
| 紙おむつ・尿とりパッド | 軽量だが極めて嵩張る | まとめ買いによる単価低減と保管面積がトレードオフになる。 |
| 経腸栄養剤 | 液体で重量がある | 床荷重と搬入動線の確保が要る。積み上げ段数に制限がある場合がある。 |
| 透析液・腹膜透析液 | 液体で重量・容積ともに大きい | 在宅では患者宅の一室を占有する規模になることがある。 |
| 各種チューブ・カテーテル類 | 個包装で軽量 | 品目数が多く、種類ごとの分別管理が煩雑になりやすい。 |
| 創傷被覆材・皮膚保護材 | 軽量・小容積 | 使用量の変動が大きく、必要量の予測が難しい。 |
資材の特性と保管上の論点は、当社が物流資材の供給を通じて得た実務上の整理による。
7.2 配送頻度と在庫水準の関係
2026年度改定で新設された地域支援・医薬品供給対応体制加算1の施設基準には、医薬品の安定供給に向けた計画的な調達や在庫管理を行うことと、卸売販売業者への頻回配送・休日夜間配送・急配に係る過度な依頼を慎むことが並んで規定されている。この2つは、在庫を減らせば配送頻度が上がり、配送を減らせば在庫が要るという関係にある。
在宅・介護の現場では、この関係がより厳しい形で現れる。患者宅の保管容量には上限があり、施設のバックヤードも限られる。配送頻度を下げるには、同じ容積により多くを収める工夫が要る。
保管効率を左右するのは、多くの場合、個々の資材の大きさより荷姿の統一である。外装寸法がばらつくと、ラックにも車両にも端数が生じ、実効的な収納量が落ちる。標準的な平面寸法に合わせた荷姿であれば、パレット単位での受け入れと保管が成立し、荷役時間も短縮できる。医療・介護の分野でも、物流の標準化に関する議論はフィジカルインターネット実現会議の医薬品ワーキンググループで進んでいる。この論点は医薬品物流を規定する3つの制約で扱った。
CHAPTER 08介護事業所への支援制度
介護分野では、医療分野とは別の枠組みで備蓄と事業継続の支援が行われている。
8.1 サービス継続に対する支援
厚生労働省老健局総務課がに発出した介護保険最新情報Vol.1444では、介護サービスの円滑な継続を支援することにより介護サービスの維持を図るとして、介護事業所・施設への支援が示されている。同情報では、大規模災害の発生時には介護事業所・施設への避難も想定されることから、衛生用品や備蓄物資、ポータブル発電機などについて言及されている。
支援の単価は事業所の類型と規模によって区分されており、訪問介護・通所介護・施設系を除く介護事業所・施設については1事業所あたり20万円とされている。訪問介護は延べ訪問回数により30万円・40万円・50万円の3区分、通所介護は延べ利用者数により20万円・30万円・40万円の3区分となっている。
医療分野では、供給不安に対する対応が厚生労働省と経済産業省の合同の確保対策本部という形で組織され、品目ごとの供給状況が集計・公表されてきた。介護分野の支援は、事業所単位での定額補助という形をとる。備蓄の水準や対象品目が個別に定められる仕組みではなく、事業所の判断に委ねられる部分が大きい。この違いは、介護施設が医療機関と同じ品目を使用しながら、供給状況の把握においては異なる情報経路に置かれていることを意味する。
8.2 福祉用具の制度上の位置づけ
介護保険の福祉用具については、から一部の品目で貸与と販売の選択制が導入された。対象となるのは固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)、多点杖である。利用者に対しては、ケアマネジャー・福祉用具専門相談員が必要な情報を収集し、選択制の提案を行うこととされている。
ただし、これは耐久性のある用具に関する制度であり、CHAPTER 04で確認したとおり、消耗品である紙おむつは福祉用具の定義に含まれない。在宅・介護の資材は、給付の対象となるもの、自治体の助成によるもの、全額自己負担となるものが混在している。
CHAPTER 09実務対応と観測の時間軸
在宅・介護の現場で資材の供給変動に備えるには、医療機関とは異なる観点が要る。
9.1 主体別に確認できること
| 主体 | 確認すべき事項 | 理由 |
|---|---|---|
| 介護施設 | 入居者の療養行為の構成と、それぞれに必要な消耗材の月間消費量 | 入居者の状態が変われば必要な資材も変わる。CHAPTER 02の13区分が構成把握の枠組みになる。 |
| 介護施設 | 薬局が費用を負担している什器・システムの有無 | 令和9年5月31日の経過措置終了までに扱いを整理する必要がある。 |
| 在宅療養支援診療所・訪問看護 | 衛生材料の支給ルートと在庫の所在 | 医療機関が支給する材料、薬局が供給する材料、患者が購入する材料が混在するため、切れ目の生じる箇所を特定する。 |
| 薬局 | 高度管理医療機器販売業の許可の有無 | 在宅薬学総合体制加算2の施設基準に含まれる。腹膜灌流用チューブセット等の供給可否を左右する。 |
| 患者・家族 | 自治体の紙おむつ助成制度の内容 | 助成の方式と条件は自治体によって異なる。給付の対象外である以上、制度の把握が負担軽減の起点になる。 |
9.2 観測の時間軸、4段階の整理
制度変更と供給変動は異なる速度で現れる。現時点で確認できる事実と、各段階で観測すべき対象を整理する。推計値ではなく、公表資料で追跡可能な事項に限って記載する。
| 時間軸 | 2026年7月時点で確認できる事実 | 観測すべき対象 |
|---|---|---|
| 即時 (1〜3日) |
厚生労働省の情報提供窓口、医療機関での定点観測、EMISを用いたオンライン報告システムが稼働している(の確保対策本部第2回で整備を説明)。 | 使用中の資材の出荷調整・供給停止の情報。在宅では代替調達の余地が乏しいため、早期の把握が対応時間を左右する。 |
| 短期 (1〜4週間) |
時点で供給に影響があると判断された品目は114件、うち解決済み98件、解決の道筋が立った品目13件、対応検討中3件。在宅・介護関連では尿道カテーテル、吸引チューブ、呼吸器の加湿装置等が計上された。 | 次回のタスクフォース資料に在宅・介護関連の品目が新たに計上されるか。対応検討中に残る品目の内容。 |
| 中期 (1〜3か月) |
2026年度診療報酬改定がに施行され、在宅薬学総合体制加算2イ(100点)等が新設された。疑義解釈資料は時点で第9報まで発出されている。 | 在宅関連項目に係る疑義解釈の追加。届出区分の変更が必要になる場合の判断。 |
| 長期 (3〜12か月) |
高齢者施設等への什器・システムの費用負担に関する経過措置はまで。それ以降は経済上の利益の提供に該当する。 | 経過措置終了に向けた対応。現に費用を負担している什器・システムの整理と、施設側との協議。 |
各段階の「確認できる事実」は本文中で引用した公表資料に基づく。観測対象は当社編集部による整理であり、将来の状況を予測するものではない。
9.3 モニタリングすべき5指標
| 指標 | 確認先 | 着眼点 |
|---|---|---|
| 供給課題品目における在宅・介護関連の増減 | 内閣官房タスクフォース/厚生労働省提出資料 | 時点で13品目を抽出。新規計上の有無が現場への影響を示す。 |
| 什器・システム負担の経過措置 | 厚生労働省 事務連絡 | で終了。施設と薬局の双方で整理が必要になる。 |
| 自治体の紙おむつ助成制度 | 各市区町村 | 介護保険の給付対象外であり、自治体ごとに方式と条件が異なる。 |
| 疑義解釈資料の発出 | 厚生労働省 | 時点で第9報。在宅関連の算定要件の解釈が実務レベルで固まる過程を追う。 |
| 自施設の品目別リードタイム | 取引卸・メーカー・医療機器事業者 | 公表統計に現れない変化が最初に観測される場所。在宅では配送の遅延が直接に療養の継続に及ぶ。 |
医療資材の供給を病院や薬局の視点だけで見ると、在宅・介護の現場が抱える制約は視野に入らない。代替調達の余地がないこと、保管スペースに上限があること、給付の対象と対象外が混在すること。この3点は在宅・介護に固有の条件である。2026年の経過では、供給課題品目に在宅関連の品目が確かに含まれていた。制度の側でも、什器提供の線引きという形で施設と薬局の関係に変更が加えられた。両方を並べて見なければ、現場で何が起きているかを把握できない。
CHAPTER 10用語集
CHAPTER 11出典・エビデンス一覧
一次資料(厚生労働省・内閣官房)
- 厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」
- 厚生労働省「石油関連製品の供給不足に伴う医療分野の影響・対応について」(時点)
- 内閣官房「中東情勢に関する対応」
- 厚生労働省「第2回 中東情勢の影響を受ける医薬品、医療機器、医療物資等の確保対策本部」
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修」
- 厚生労働省老健局総務課「介護保険最新情報 Vol.1444」
解説・実務資料(二次資料)
- 京都府薬剤師会「在宅医療で使用される医療機器と衛生材料の基礎知識」
- エール在宅診療所「在宅医療での医療材料について」
- 管理薬剤師.com「薬局の在宅医療(医療材料・衛生材料の供給)」
- ユニ・チャーム ライフリー「介護保険でおむつ代は支給されるか」
- 倉敷市「介護用品(紙おむつ等)の支給」
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CHAPTER 12よくある質問
在宅療養ではどのような資材が使われるのですか
在宅で行われる医療行為の種類によって異なる。2026年度診療報酬改定で重症度の高い患者として列挙された状態には、在宅自己連続携行式腹膜灌流、在宅血液透析、在宅酸素療法、在宅中心静脈栄養法、在宅成分栄養経管栄養法、在宅自己導尿、在宅人工呼吸、気管切開、気管カニューレの使用、ドレーンチューブまたは留置カテーテルの使用、人工肛門または人工膀胱の設置などが含まれる。それぞれが固有の消耗材を継続的に必要とする。
2026年の供給課題に在宅関連の品目は含まれましたか
含まれた。厚生労働省が時点で公表した資料には、尿道カテーテル、吸引チューブ、呼吸器の加湿装置、吸入器のアダプタ、気管切開チューブの部品製造用および包装用溶剤、皮膚保護用フィルムの製造用溶剤、医療用粘着テープの製造用溶剤、伸縮包帯等の原材料、医療用脱脂綿およびコットンボールの梱包材などが記載されている。
薬局が高齢者施設に什器を提供することはできますか
2026年6月23日の事務連絡により、配薬カートや調剤棚等の高齢者施設等に備え付ける什器について、保険薬局が新たに費用を負担することまたは継続的な費用負担を行うことは、経済上の利益の提供に該当することが明確化された。一方、患者個別に用意する服薬カレンダーや服薬ボックス等については、薬剤師が服薬管理指導業務の一環として必要と判断した場合、薬局の負担により手配することは該当しないとされている。
在宅の資材供給が施設内と異なるのはどのような点ですか
最終到達点が患者宅である点が最も大きい。医療機関や薬局であれば在庫を持ち、欠品時には別ルートを探す余地があるが、在宅療養では配送そのものが治療の継続性に直結する。また保管スペースが限られるため、まとめ配送による在庫の積み増しにも物理的な制約がある。訪問の頻度と配送の頻度を分けて設計する必要がある。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか
当社は千葉県我孫子市に本社を置き、プラスチックパレット・再生樹脂材料・PPバンド・ストレッチフィルム等の物流資材を全国に供給する専門商社である。保管効率と荷姿の設計は当社が日常的に扱う領域であり、限られたスペースに必要量を収めるという課題は在宅・介護の現場と共通する。同じ原料構造を持つ資材の動向を、供給網と保管の視点から整理して提供している。
本記事のご利用にあたっての注意事項
- 本記事の内容は時点で公表されている情報に基づく。制度・供給状況はいずれも変動し得るため、実務判断にあたっては各出典の最新版および正式に発出された告示・通知・事務連絡を確認されたい。
- CHAPTER 02の右列に示した資材、CHAPTER 03の「関連する療養行為」、CHAPTER 07の保管上の論点は、いずれも本稿による整理であり、告示や公表資料に記載されているものではない。
- 在宅療養指導管理料の個別の点数については、2026年度改定後の内容を一次資料で確認できていないため本記事では記載していない。算定にあたっては診療報酬点数表および関係通知を参照されたい。
- 紙おむつの助成制度は市区町村ごとに方式・要件・助成額が異なる。本記事の記載は制度の枠組みを示すものであり、個別の自治体の内容を保証するものではない。
- 本記事は特定の経営判断、届出区分の選択、製品の選定、投資判断を推奨するものではない。引用は各出典の表記に従い、詳細は各リンク先の原文を参照されたい。