Supply Chain Report / Crude Oil Above 100
原油が再び100ドルを超えた2026年9月、7月との違いはサウジの生産が190万バレル減ったこと
2026年9月9日にブレント原油が100.45ドルを付け、7月23日以来の100ドル台に戻った。翌10日は109.09ドル、WTIも104.19ドルとなっている。ただし7月と同じ理由で上がったわけではない。今回はサウジアラビアの8月産油量が前月比190万バレル減という実績を伴っている。円建て・軽油・ナフサのどこに効くのかを、時点と出典を付けて整理する。
ANSWER
ブレント原油は2026年9月9日に100ドルを回復し、10日には109.09ドルとなった。7月23日の100ドル台との違いは、サウジアラビアの8月産油量が前月比190万バレル減の日量623.8万バレルまで落ち、輸送ではなく生産そのものが減っている点にある。円建てでは上昇は1%強にとどまる。
2026年9月12日 訂正 ── 相場の数値について
本稿の相場の数値は、当社が2026年9月11日にTrading Economicsで確認した表示値である。翌12日に同じページを開いたところ、次の2点が変わっていた。
- 9月11日のブレントは104.42ドルと表示されていた。本稿が記録した107.25ドルとは2.83ドルの差がある。本文と表は104.42ドルに訂正し、EIAの想定との開きも再計算した。
- 9月10日の109.09ドルとWTIの104.19ドルは、同サイトで確認できなくなっていた。同サイトは日付つきの過去日次値を表示しておらず、当社は9月11日の確認をもって記録している。値は残し、再確認できない旨をここに開示する。
あわせて、同社は掲載する原油価格について「公式のベンチマークを示すものではない」と明記しており、CFD・OTCベースの価格である。公式の決済価格が必要な場合は、EIA・CME/NYMEX・ICEの公表値を参照されたい。
ブレント原油(2026年9月10日)
109.09ドル/バレル
9月8日の終値97.92ドルから2営業日で11.4%の上昇。9月11日は104.42ドル。
サウジアラビアの産油量(2026年8月)
623.8万バレル/日
前月比190万バレル減。1990年以来36年ぶりの低い水準にあたる。
軽油の全国平均(2026年9月7日調査)
159.5円/L
8月17日から3週で0.2円の動き。店頭価格はほとんど反応していない。
この記事の要点
- ブレント原油は2026年9月9日に取引時間中100.45ドルを付け、7月23日以来となる100ドル台に戻った。翌10日には109.09ドル、WTIも104.19ドルまで上がり、9月11日は104.42ドルとなった。
- 7月の100ドルと今回の100ドルは中身が違う。7月は輸送と通航の不確実性が中心だったのに対し、今回はサウジアラビアの8月産油量が前月比190万バレル減の623.8万バレルまで落ちた。湾岸諸国全体の8月の原油輸出も日量約1,300万バレルと、戦前のおよそ半分にとどまる。
- 円建てに直すと様子が変わる。7月23日は1バレル16,536円、9月10日は16,722円から16,767円で、ドル建てが8.1%上がったのに対し円建ての上昇は1%強にとどまる。ドル円が163.80円から153円台へ動いた分が相殺した。
- 軽油の全国平均は9月7日調査で159.5円と、3週間で0.2円しか動いていない。燃料油の価格抑制措置と円高が二重の緩衝材になっており、日本銀行の8月の輸入物価指数も円ベースは前月比マイナス3.0%、契約通貨ベースはマイナス1.0%と開いている。
- 一方でナフサと樹脂には抑制措置がない。ナフサのスポット価格は9月10日時点で1トン871.17ドル、前年比55.26%高で、原油と同じ方向にすでに動いている。国産ナフサ価格は四半期遅れで効いてくる。パレットに効くのはこちらの経路である。
2026年9月8日から11日に原油相場で起きたこと
原油が100ドルを超えたという見出しは、2026年に入ってから何度か出ている。同じ見出しでも、相場のどこから来た100ドルなのかで意味がまるで違う。まず、いつ何ドルだったのかを時点で押さえる。
2026年9月9日、ブレント原油は取引時間中に1バレル100.45ドルを付けた。前日8日の終値は97.92ドルだったので、100ドルの節目はこの日の取引のなかで越えたことになる。直近で100ドル台を付けたのは7月23日で、当社はこのときのブレントを100.95ドルと記録している。それ以来ということになる。
ただし、この記事を書いている時点で見るべきなのは9日ではなく、その翌日以降である。ブレントは9月10日に109.09ドル、WTIは104.19ドルまで上がった。米国産の指標であるWTIが100ドルを超えたのは、ブレントより1日遅れてのことだった。9月11日のブレントは104.42ドルであった。9月10日の109.09ドルからは4.3%の下げにあたる(当社の計算)。
2営業日で11.4%動いた値動きを時点で並べる
網掛けの太字は、この記事で基準に置く2026年9月10日の値である。
| 時点 | ブレント | WTI |
|---|---|---|
| 2026年7月23日 | 100.95 | — |
| 2026年9月8日(終値) | 97.92 | — |
| 2026年9月9日(時間中高値) | 100.45 | — |
| 2026年9月10日 | 109.09 | 104.19 |
| 2026年9月11日 | 104.42 | 99.99 |
単位はドル/バレル。7月23日は当社既存記事の記録、9月8日・9月9日はRigzone(2026年9月9日配信)、9月10日・9月11日はTrading Economicsによる。Trading Economicsの値は、当社が2026年9月11日および12日に同ページで確認した表示値である。同社は掲載する原油価格について「公式のベンチマークを示すものではない」と明記しており、CFD・OTCベースの価格にあたる。9月11日については、9月11日時点で107.248ドルと表示されていたものが、翌12日には104.42ドルと表示されていた。本表は後者を採る。9月10日の値は12日時点では確認できなくなっており、9月11日の確認をもって記録している。
9月8日の97.92ドルから10日の109.09ドルまでで11.4%の上昇になる。これは当社が両時点から算出した値である。Trading Economicsの表示では、9月10日時点のブレントは前月比22.63%高、前年比64.28%高、WTIは前月比25.23%高、前年比67.05%高となっている。週単位でも約12%上がったと同社は伝えている。つまり、9日の100ドル超えは単日の跳ねではなく、9月に入ってから続いていた上昇の途中にある通過点だった。
7月23日の100ドルと今回の100ドルは同じではない
2026年に100ドルを超えたのは今回が初めてではない。7月23日には紅海でサウジアラビア向けの石油タンカー2隻が攻撃を受け、ブレントは100.95ドルを付けている。当社はこのときの状況を別記事で記録している。
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【2026年7月23日速報】フーシ派が紅海でサウジ石油タンカー2隻を攻撃、ブレント100.95ドル・ドル円163.80円で円建て原油は1バレル16,500円台、ナフサ調達コストが再上昇局面へ
2026年7月23日時点のブレント価格とドル円、円建て原油の水準、およびナフサ調達コストの再上昇局面について記録した記事。
この2つを並べると、価格の数字が近いだけで、背景にあるものが違うことが分かる。
| 比べる観点 | 2026年7月23日 | 2026年9月10日 |
|---|---|---|
| 直接のきっかけ | 紅海でサウジ向け石油タンカー2隻が攻撃を受けた | サウジの石油施設が攻撃を受け、8月の産油実績の落ち込みが明らかになった |
| 供給側の状態 | 輸送と通航の不確実性が中心で、産油量そのものの数字は前面に出ていなかった | 産油量が前月比190万バレル減という実績値として出てきた |
| ブレント | 100.95ドル | 109.09ドル |
| ドル円 | 163.80円 | 153.29円から153.70円 |
| 円建て原油(1バレル) | 16,536円 | 16,722円から16,767円 |
7月23日のブレントとドル円は当社既存記事の記録による。9月10日のブレントはTrading Economics、ドル円はみんかぶFXが伝えた同日の東京市場の値幅による。円建て原油は当社がブレント価格にドル円を乗じて算出した値で、実際の調達価格ではない。9月10日は為替が値幅で示されているため、下限と上限の両方を示した。
この章の結論
2026年9月の100ドル超えは、7月の再現ではない。7月が輸送の不確実性を織り込んだ価格だったのに対し、今回は産油量の実績が減ったことを織り込んだ価格である。
今回の上昇を作っているのは運賃ではなく生産量である
相場が動いた理由を「中東情勢」でまとめてしまうと、7月との違いが消える。2026年9月に新しく出てきたのは情勢そのものではなく、産油量という実績の数字である。
サウジアラビアの2026年8月の産油量は、日量623.8万バレルだった。前月からの減少幅は190万バレルで、1990年以来36年ぶりの低い水準にあたる。この数字はサウジがOPEC事務局へ報告したもので、海運データを扱うKplerが実際の動きと突き合わせている。報じたのはAl-Monitorで、2026年9月10日の記事である。
減少幅190万バレルを8月の実績に足し戻すと、日量813.8万バレルになる。これは当社が2つの数字から計算した参考値で、7月の産油量そのものを確認したものではない。それでも、量の桁がどれくらいかを掴むには足りる。
減っているのはサウジだけではない
国際エネルギー機関(IEA)が2026年9月に公表した石油市場報告によれば、OPECの原油生産は7月の日量2,112万バレルから8月には1,956万バレルへ落ちている。減少幅は日量156万バレルで、これは当社が両月の値から計算した。Bloombergが9月8日に伝えた別の調査ではOPEC全体の減少を日量90万バレルとしており、集計の方法によって幅がある。
同報告はさらに、湾岸諸国からの8月の石油輸出を日量約1,300万バレルと推計し、これが戦前のおよそ半分にあたるとしている。また、湾岸では日量1,000万バレルを超える生産が、安全上の理由で停止したままだとしている。サウジ1国の190万バレルは、この大きな絵の一部である。
輸出が細った3つの経路
Al-Monitorは、サウジの産油量が落ちた理由を輸出経路の3点に整理している。1つ目はホルムズ海峡で、2026年2月28日に始まった情勢の展開のあと、イラン革命防衛隊が同海峡を通る船舶への攻撃を続けている。2つ目は紅海で、フーシ派が7月に海上封鎖を宣言し、船舶への攻撃と通航の妨げが続いている。3つ目はサウジの石油施設そのものへの攻撃で、9月8日にはアラムコの施設が狙われ、73人が負傷したと報じられた。
ここが7月との分かれ目になる。7月23日の局面では、攻撃の対象はタンカーであり、市場が織り込んでいたのは「運べるかどうか」だった。運べないだけであれば、通航が戻れば数字も戻る。実際に2026年の相場は、8月にかけて100ドルを大きく下回る水準まで落ちている。
これに対して9月の局面では、生産と積出の設備そのものが対象になり、8月の産油実績という後から動かしようのない数字として出てきた。生産設備が止まった分は、通航が戻っても自動では戻らない。同じ100ドルでも、戻りかたの速さが違うと考えられる理由がここにある。
「情勢が落ち着けば元の値段に戻る」と単純には言えない
アジアの石油化学では、情勢とは別に設備そのものの再編が進んでいる。恒久的に閉鎖された生産設備は、輸送の問題が解けても戻らない。原油価格が下がれば供給量も元に戻るという読み方をすると、この部分を取りこぼす。価格の話と設備能力の話は、別々に置いて見る必要がある。アジア各国の再編については当社の別記事で扱っている。
この章の結論
今回の100ドルは、輸送の不確実性ではなく産油実績の減少を映している。サウジ単独で日量190万バレル、湾岸全体の輸出は戦前のおよそ半分であり、生産設備が止まった分は通航の回復では戻らない。
供給・在庫・運ぶコストを実数で並べる
価格は結果であって原因ではない。値上がりの根拠を確かめるには、どれだけ作られ、どれだけ残っていて、運ぶのにいくらかかるのかを別々に見る必要がある。国際機関と統計当局が公表している数字を並べる。
作られている量は前年より日量570万バレル少ない
IEAの2026年9月の石油市場報告によれば、2026年の世界の石油供給は日量1億70万バレルで、前年から日量570万バレル減る見込みである。同時に世界の需要も日量250万バレル減る見通しで、製油所の処理量は日量8,150万バレル、前年比で日量260万バレルの減少とされている。
需要も供給も減っているという点は、読み違えやすいところである。需要が減れば値段は下がるはずだと考えたくなるが、実際には供給の減りかたのほうが大きく、在庫の取り崩しで差を埋めている状態にある。
在庫は2月以降ずっと減り続けている
網掛けの太字は、在庫の取り崩しが続いていることを示す累計の値である。
| 指標 | 数値 | 時点と出典 |
|---|---|---|
| 世界の観測在庫の減少 | 1か月で9,500万バレル | 2026年8月/IEA石油市場報告2026年9月版 |
| 同じく2月以降の累計 | 5億700万バレル(日量280万バレル) | 2026年2月から8月/同上 |
| 世界在庫の年初来の減少 | 4億バレル | 2026年1月から8月/EIA短期エネルギー見通し2026年9月版 |
| 米国クッシング在庫 | 2,000万バレルを割り込み | 2026年6月19日から7月10日/EIA |
| 米国の商業原油在庫の週次変化 | 39万1,000バレルの減少 | 2026年9月4日終了週/EIA週報 |
IEAとEIAでは在庫の集計範囲と対象期間が異なるため、9,500万バレル・5億700万バレル・4億バレルの3つは単純に足し引きできない。それぞれ別の物差しによる値として読む。9月4日終了週の米国の減少幅39万1,000バレルは、市場の予想であった160万バレル減を下回っている。同じ週にクッシングは68万4,000バレル減り、ガソリン在庫は126万9,000バレル、留出油は208万7,000バレル増えた。
クッシングはWTIの受渡地点にあたる貯蔵拠点で、ここが2,000万バレルを割った状態は「タンクボトム」と呼ばれる水準に近い。貯蔵タンクはポンプを動かすために一定量の油を残しておく必要があり、タンクが空でなくても取り出せない分が出てくる。EIAは、この局面でブレントとWTIの価格差が縮み、一時は逆転したと説明している。
運ぶコストは、価格表に出てこないところで上がっている
相場の数字には表れにくいが、実際の調達では輸送と保険が効く。海運市況を扱うBreakwave Advisorsが2026年9月8日に公表した報告によれば、ホルムズ海峡を1回通航するための戦争リスク保険料は、船体価格の7.5%から12.5%に達している。情勢が動く前の水準は約0.25%だった。
保険料の桁が変わっている
船体価格の0.25%が7.5%から12.5%になるということは、通航1回あたりの保険負担が30倍から50倍になったことを意味する。これは当社が両者の比から計算した倍率である。原油そのものの値段が1バレルいくらかという話とは別に、日本へ運ぶまでの間にこの負担が乗っている。
同報告は、イラクの8月の輸出が日量約235万バレルまで戻したものの戦前の水準には届いておらず、バスラ積みの貨物が限られた船に頼り続けていると述べている。米国とイランの双方によるタンカーへの攻撃が再び起きたことで、商品船の通航は5月以来の低い水準まで落ちたという。
運賃そのものについては、EIAが2026年3月26日に、中東からアジアへ向かうVLCCの運賃が2005年11月に統計を取り始めて以来の最高を記録したと報告している。要因として、船舶が攻撃を受ける物理的なリスク、通航にかかる戦争リスク保険の高さ、ペルシャ湾内での船の滞留による世界の船腹の目減りを挙げている。
2026年9月時点のVLCC用船料そのものは、当社として一次資料で確認できていない。本章で挙げた運賃の水準は2026年3月時点のものであり、現在の値ではない。保険料の水準は9月8日時点の報告による。
この章の結論
供給は前年比で日量570万バレル減り、在庫は2月以降で5億700万バレル取り崩され、ホルムズ通航の保険料は船体価格の0.25%から7.5%以上になっている。価格の上昇は、この3つの結果として出ている。
公式見通しはすでに実勢に追い抜かれている
調達の計画を立てるとき、公的機関の見通しを前提に置くことがある。2026年9月時点では、その前提が実勢とどれくらい離れているのかを確認しておく価値がある。
EIAが2026年9月に公表した短期エネルギー見通しは、2026年下期のブレント原油を1バレル約90ドル、2027年を74ドルと想定している。8月の実績は91ドルで、7月から7ドル上がったとされている。
一方、この記事が基準に置いている9月10日のブレントは109.09ドル、9月11日は104.42ドルである。見通しの90ドルとの開きは14ドルから19ドルになる。これは当社が両者の差から計算した値である。
| 区分 | ブレント | 出典・時点 |
|---|---|---|
| 2026年8月の実績 | 91ドル | EIA/9月版 |
| 2026年下期の想定平均 | 約90ドル | EIA/9月版 |
| 2026年9月10日の実勢 | 109.09ドル | Trading Economics |
| 2026年9月11日の実勢 | 104.42ドル | Trading Economics |
| 2027年の想定平均 | 74ドル | EIA/9月版 |
単位は1バレルあたり。EIAの数値は短期エネルギー見通し2026年9月版による。下期の想定平均は7月から12月の平均であり、9月単月が90ドルを上回っていても年末にかけて下がれば平均は成り立つ。したがって想定が外れたと断じるものではない。網掛けの太字は本記事が基準に置く値。
ここで読み取るべきなのは、当たり外れではなく前提の置きかたである。EIAは同じ見通しのなかで、中東の産油量が今後数か月かけて上昇するとしつつ、輸出の制約は年末まで残り、この地域の生産が戦前の水準に戻るのは2027年第2四半期以降になるとしている。つまり、価格が下がるという見通しは、輸出の制約が徐々にほどけることを前提にしている。
2027年の回復は、かなり大きな変化を前提にしている
IEAの2026年9月の報告も、2027年については需要が日量260万バレル、生産が日量800万バレル増えると見込んでいる。生産の800万バレルというのは、2026年に失われた分を取り戻す規模である。この回復が起きるかどうかは、湾岸からの輸出がどこまで戻るかにかかっている。
あわせてEIAは、米国の留出油在庫が2026年9月に1億バレルを割り込み、2027年の大半にわたって過去5年の最低水準を下回り続けると見ている。留出油には軽油とジェット燃料が含まれる。原油価格が見通しどおりに下がったとしても、トラック輸送に使う燃料の在庫は薄いままという形になる。
この章の結論
公的機関の見通しは、輸出の制約が徐々にほどけることを前提に置いている。前提が動けば数字も動くため、見通しの価格をそのまま調達計画に貼り付けると、前提の変化がそのまま計画のずれになる。
円建てと店頭価格では上がって見えないのに、樹脂には効く理由
ドル建ての原油が8%上がったと聞いても、給油のたびに同じ金額を払っている人には実感がない。実感がないのには理由が2つあり、そのどちらもパレットや樹脂には当てはまらない。
理由の1つ目は為替である
7月23日のドル円は163.80円だった。9月10日の東京市場は153.29円から153.70円の値幅で、円は10円ほど戻している。ブレントの100.95ドルに163.80円を掛けると1バレル16,536円、109.09ドルに153.29円から153.70円を掛けると16,722円から16,767円になる。ドル建てでは8.1%の上昇だが、円建てでは1.1%から1.4%にとどまる。いずれも当社の計算による参考値である。
つまり、円で支払う側から見れば、原油の負担は7月とほぼ変わっていない。これは円高が助けたという以上に、7月の時点ですでに円建ての原油が高い水準にあったということでもある。為替がナフサ価格に対してどう働くかは、当社の別記事で扱っている。
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日本銀行の輸入物価指数をもとに、円安がナフサ価格の上昇局面と下落局面のそれぞれにどう働くかを扱った記事。
日本銀行の統計でも、為替の効きかたが数字で出ている
2026年9月11日に日本銀行が公表した2026年8月の企業物価指数は、この点を2つの物差しで示している。輸入物価指数には、円に直した「円ベース」と、契約に使われている通貨のままの「契約通貨ベース」の2種類がある。両者の差が、為替が動いた分にあたる。
網掛けの太字は、為替の効きかたが読み取れる2つの差である。
| 輸入物価指数 | 前月比 | 前年比 |
|---|---|---|
| 円ベース | −3.0% | +24.8% |
| 契約通貨ベース | −1.0% | +16.7% |
| 差(為替の寄与) | −2.0ポイント | +8.1ポイント |
日本銀行「企業物価指数(2026年8月速報)」2026年9月11日公表による。差は当社が両者を引いて求めた値であり、日本銀行が公表している数値ではない。
読みかたはこうなる。直近1か月では円が強くなったため、契約通貨ベースで1.0%下がった輸入物価が、円ベースでは3.0%の下落になった。2.0ポイント分を円高が押し下げている。一方で1年前と比べると関係は逆で、契約通貨ベースの16.7%高に対して円ベースは24.8%高と、8.1ポイント分を円安が押し上げている。
つまり円は、この1年を通して見れば負担を増やす側に働き、直近1か月だけを見れば負担を減らす側に働いている。いま円建ての原油がほとんど上がっていないのは、この短い期間の動きによるものである。
理由の2つ目は燃料油の価格抑制措置である
軽油の全国平均は、2026年8月17日調査で159.3円、8月24日で159.3円、8月31日で159.4円、9月7日で159.5円と推移している。3週間で0.2円しか動いていない。同じ期間にレギュラーガソリンも169.8円から170.0円へ0.2円の動きにとどまる。中東情勢を踏まえた燃料油の価格抑制措置が入っているため、原油の値動きが店頭価格にそのまま出ない状態になっている。
| 調査日 | レギュラー | 軽油 |
|---|---|---|
| 2026年8月17日 | 169.8 | 159.3 |
| 2026年8月24日 | 169.9 | 159.3 |
| 2026年8月31日 | 170.0 | 159.4 |
| 2026年9月7日 | 170.0 | 159.5 |
単位は円/L。全国平均の店頭現金価格。新電力ネットが資源エネルギー庁の石油製品価格調査をもとに掲載している値による。網掛けの太字は直近の調査日。
ナフサと樹脂には、この2つの緩衝材がない
ナフサには価格抑制措置がない。そしてスポット市場は、原油と同じ方向にすでに動いている。Trading Economicsによれば、2026年9月10日のナフサは1トン871.17ドルで、前日比5.52%高、前月比17.22%高、前年比55.26%高である。原油の前年比64.28%高(ブレント)に対し、ナフサも同じ桁で上がっている。
ここが、この記事でいちばん実務に効くところである。給油所の表示が3週間で0.2円しか動いていない同じ期間に、樹脂の原料は1か月で17%動いている。「まだ値上がりしていない」という感覚は、見ている指標が違うことから生まれる。
国内の統計にも、すでに出ている。同じ2026年8月の企業物価指数では、国内企業物価が前年比7.6%高、そのうち石油・石炭製品が14.7%高、化学製品が13.9%高となっている。輸入物価のうち石油・石炭・天然ガスは前年比42.2%高である。
国産ナフサ価格は四半期遅れで効いてくる
国産ナフサ価格は2026年1〜3月期の65,700円から4〜6月期には118,900円へ上がった。上昇率は81.0%で、これは当社が両期の値から算出したものである。7月分の速報値は104,331円で、4〜6月期のピークからは下がっているものの、1〜3月期と比べれば高い水準にある。単位はいずれも円/kLである。
この上流の動きは、樹脂メーカーの価格改定として下流に出ている。プライムポリマーは2026年3月17日に、ポリエチレンとポリプロピレンについて1kgあたり90円以上の価格改定を発表し、4月1日出荷分から適用している。理由として同社はホルムズ海峡をめぐる情勢に伴う原料コストの上昇を挙げ、ナフサが1kLあたり11万円を超える見通しであることに言及している。
効きかたは製品の重量に比例する
樹脂の価格改定は1kgあたりで示されるため、同じ改定であっても、軽量な製品と重量のある製品では負担の絶対額が変わる。用途に対して過剰な強度・重量の製品を使っている場合、樹脂相場が上がる局面ではその差が金額として出やすい。パレットの仕様と運用の組み合わせについては、当社の別記事で比較している。
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ナフサ価格が高い局面でのパレット調達について、5つのパターンを比較した記事。
国産ナフサ価格は四半期ごとの通関実績に基づいて決まるため、2026年9月の原油の動きが国産ナフサ価格に出るのは先の期になる。本章で並べた国産ナフサの数字は、今回の100ドル超えの結果ではなく、それ以前の局面の結果である。一方でスポット価格と企業物価指数は、9月10日および8月時点の動きをすでに含んでいる。今回の上昇がどこまで国産ナフサ価格に出るかは、現時点では確認できていない。
この章の結論
円高と燃料油の価格抑制措置という2つの緩衝材が、原油高を店頭価格から見えにくくしている。ナフサのスポット価格は1か月で17.22%、1年で55.26%上がっており、物流資材の側では原油の動きがすでに出ている。
で、どうすればいいのか
以下は確認の手順であり、判断そのものは各社の在庫・契約・運用によって変わる。当社が代わりに決められる性質のものではないため、確認に使える数字の置き場所だけを示す。
ACTION 01
手元の見積書の有効期限と適用基準日を確認する
価格改定は、発注日を基準にするか出荷日を基準にするかで負担の出かたが変わる。見積書に有効期限の記載があるか、価格改定があった場合にどちらの日付で適用されるかが書かれているかを見る。書かれていない場合は、いま発注したものがいつの価格で請求されるのかを取引先に確認しておくと、後からの差額調整を避けやすい。
ACTION 02
使っている製品の重量を台帳で確認する
樹脂の価格改定は1kgあたりで示されるため、効きかたは製品の重量に比例する。手元のパレットが1枚あたり何kgかを確認し、年間の使用枚数を掛けると、樹脂相場が動いたときにいくら動くのかの見当がつく。重量が分からない場合は、品番からメーカーの仕様表で確認できる。
ACTION 03
原油の話と為替の話を分けて記録する
ドル建ての原油が上がっても、円高が同時に進めば円建ての負担は変わらないことがある。逆に原油が落ち着いても円安が進めば負担は増える。社内で相場を共有するときは、ドル建ての価格と為替を別々に記録しておくと、次に動いたときにどちらが効いたのかを追える。日本銀行の輸入物価指数は、この2つを円ベースと契約通貨ベースという形で分けて公表している。
ACTION 04
見ている指標が店頭価格だけになっていないか確かめる
軽油の全国平均は3週間で0.2円しか動いていないが、同じ期間にナフサのスポット価格は1か月で17.22%上がっている。燃料の店頭価格には価格抑制措置が入っているため、原料側の動きは映らない。樹脂や包装材を調達している場合、見るべき指標は店頭の燃料価格ではなくナフサと企業物価指数の側になる。
ACTION 05
戻る前提で組んでいる調達計画の前提を書き出す
今回の上昇には、輸送の問題だけでなく生産設備が止まったことによる分が含まれている。EIAは中東の生産が戦前の水準に戻るのを2027年第2四半期以降と置いている。通航が回復すれば元に戻るという前提で数量や時期を組んでいる場合、その前提がいつ成り立つと見ているのかを言葉にして残しておくと、前提が動いたときに計画のどこを直せばよいかが分かる。
よくある質問
- 原油が100ドルを超えると、プラスチックパレットの価格はいつ上がりますか
- 原油からナフサ、ナフサから樹脂、樹脂から成形品という順に伝わるため、時間差があります。国産ナフサ価格は四半期ごとの通関実績に基づいて決まるので、2026年9月の原油の動きが国産ナフサ価格に出るのは先の期になります。ただしナフサのスポット価格は9月10日時点ですでに前月比17.22%高まで動いており、上流側の動きは始まっています。実際の製品価格はメーカーの在庫や成形費の状況でも変わるため、本記事の時点でいつ何円という形では確認できていません。
- 7月にも100ドルを超えましたが、今回は何が違うのですか
- 7月23日は紅海でサウジ向けの石油タンカー2隻が攻撃を受けた局面で、運べるかどうかが中心でした。今回はサウジの石油施設そのものが攻撃を受け、8月の産油量が前月比190万バレル減の日量623.8万バレルという実績として出ています。湾岸諸国全体の8月の石油輸出も日量約1,300万バレルと戦前のおよそ半分です。運べない分は通航が戻れば戻りますが、止まった生産設備の分は自動では戻りません。
- 軽油の全国平均が動いていないのはなぜですか
- 中東情勢を踏まえた燃料油の価格抑制措置が入っているためです。全国平均は2026年8月17日調査の159.3円から9月7日調査の159.5円まで、3週間で0.2円しか動いていません。一方で同じ8月の企業物価指数では、輸入物価のうち石油・石炭・天然ガスが前年比42.2%高となっています。店頭価格が動かないことと、調達コストが動いていないことは別の話です。
- EIAは2026年下期を90ドルと見ていますが、これから下がるということですか
- 下期の想定は7月から12月の平均ですので、9月が90ドルを上回っていても年末にかけて下がれば平均としては成り立ちます。ただしその見通しは、中東からの輸出制約が徐々にほどけることを前提にしています。EIA自身も、この地域の生産が戦前の水準に戻るのは2027年第2四半期以降としています。前提が動けば数字も動くという性質のものです。
- 円建てではほとんど上がっていないなら、様子を見ていてよいのですか
- 円建ての負担が7月とほぼ同じであることは事実ですが、それは円が163.80円から153円台へ戻った分で相殺されているという意味です。日本銀行の8月の輸入物価指数を見ると、前年比では円ベースが契約通貨ベースを8.1ポイント上回っており、1年単位では円安が負担を増やす側に働いています。為替が反対に動けば同じ原油価格でも負担は増えます。
- なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか
- 当社はプラスチックパレットと再生樹脂原料をお取扱いしており、原油とナフサの相場がそのまま仕入価格に効く立場にあります。お客様から相場についてお問い合わせをいただくことも多く、自社が日々見ている数字を出典付きで整理したものを公開しています。
出典・エビデンス一覧
原油価格
- Rigzone「Brent Oil Price Breaks $100 Per Barrel」(2026年9月9日)
- Trading Economics「Brent crude oil」「Crude Oil」(2026年9月11日および9月12日に当社が参照)
需給・在庫
- 国際エネルギー機関(IEA)「Oil Market Report – September 2026」
- 米エネルギー情報局(EIA)「Short-Term Energy Outlook」2026年9月版
- EIA「Weekly Petroleum Status Report」2026年9月4日終了週
- EIA「Cushing crude inventories near tank bottom operating levels」(2026年7月16日)
産油量・情勢
- Al-Monitor「Saudi Arabia's oil production slumps lowest in 36 years as war bites」(2026年9月10日)
- Bloomberg「OPEC Output Slumps as Conflict Curbs Saudi Flows, Survey Shows」(2026年9月8日)
海運・保険
- Breakwave Advisors「Breakwave Bi-Weekly Tanker Report」(2026年9月8日)
- EIA「Middle East crude oil tanker rates reached a multi-decade high in March」(2026年3月26日)
為替・国内物価
- 日本銀行「企業物価指数(2026年8月速報)」2026年9月11日公表
- みんかぶFX「ドル円は153円台でのもみ合いに終始=東京為替概況」(2026年9月10日)
- 新電力ネット「ガソリン価格(ハイオク・レギュラー・軽油・灯油)の推移」(2026年9月7日調査分まで)
ナフサ・樹脂
- Trading Economics「Naphtha」(2026年9月11日に当社が参照)
- 大景化学「ナフサ価格推移表」(2026年9月10日時点)
- LOGISTICS TODAY「プライムポリマー、ホルムズ影響で値上げ」(2026年3月17日)
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- ナフサ価格推移2026完全まとめ|国産ナフサ価格・スポット・通関CIFの最新チャート
- 原油価格・為替・ナフサのスポット価格は2026年9月11日時点で確認した値です。いずれも取引時間中に変動するため、閲覧時点の値とは異なります。
- 円建て原油、上昇率、減産前の産油量、OPEC生産の減少幅、輸入物価指数の差、保険料の倍率は、いずれも当社が公表値から計算した参考値です。実際の取引価格ではありません。
- 2026年7月23日のブレント価格は、当社既存記事に記録した100.95ドルを用いています。同日の値については他社が異なる数値を伝えている場合があり、集計の時点によって差が出ます。OPEC全体の産油量の減少幅についても、IEAとBloombergで集計方法が異なるため両方を記載しています。
- 2026年9月時点のVLCC用船料そのものは一次資料で確認できていません。本稿に記載した運賃の最高水準は2026年3月時点のものです。また、今回の原油価格の上昇が国産ナフサ価格および樹脂価格にどこまで反映されるかも確認できていません。
- 本稿は情報提供を目的としたもので、特定の判断を推奨するものではありません。