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2026年薬局経営の生存戦略|イラン情勢・薬価改定・地域支援加算の三重苦と「重要供給確保医薬品75成分」備蓄義務の現実【2026年6月版】
薬局経営直撃|2026年6月施行 完全解説

2026年薬局経営の生存戦略
イラン情勢・薬価改定・地域支援加算の三重苦と
「重要供給確保医薬品75成分」備蓄義務の現実

〜「地域支援・医薬品供給対応体制加算」が薬局経営の生死を分ける〜

主要エビデンス:厚生労働省告示・中医協・原薬工業会・日刊薬業・薬+読・CloseDi等
初版: 最終更新:
▼ 結論

2026年6月1日施行の調剤報酬改定で、薬局経営の景色は一変した。新設された「地域支援・医薬品供給対応体制加算」は加算1(27点)の取得が他加算の前提となる「二階建て」構造で、その施設基準には重要供給確保医薬品75成分(A群35+B群40)の1か月分備蓄が組み込まれた。一方、対象成分の多くは今まさにイラン情勢・ナフサ供給不安により供給が絞られており、4月施行の薬価改定(薬剤費ベース▲4.02%)が薬剤費収益を圧迫している。三重苦は中小独立薬局を直撃し、業界ではM&A加速も予想されている。薬局経営者は「加算1取得=経営の生存ライン」という新常態への適応を迫られている。

2026年6月、薬局経営の景色が一変した

2026年6月1日、調剤報酬改定の施行とともに、日本全国の薬局はかつてない「制度的圧力」と「物理的供給不安」が交差する局面に突入した。

ひとつの起点は3月5日の官報告示。厚生労働省は2026年度調剤報酬改定で、長年薬局経営の中核を担ってきた「後発医薬品調剤体制加算」と「地域支援体制加算」を統合・再編し、「地域支援・医薬品供給対応体制加算」として5段階構造に組み替えた。新加算は加算1(27点)の施設基準クリアが加算2〜5算定の絶対前提となる「二階建て」設計で、その施設基準には「重要供給確保医薬品75成分の1か月分備蓄」という、これまでにない物理的な在庫義務が組み込まれている。

もうひとつの起点は2026年2月末のイラン情勢悪化。ホルムズ海峡封鎖から始まったナフサ供給不安は、医薬品サプライチェーンの川上を直撃し、3月31日には厚生労働省と経済産業省が「中東情勢の影響を受ける医薬品、医療機器、医療物資等の確保対策本部」を設置(5月18日に第5回会合まで継続開催)。日本ジェネリック株式会社は5月22日に8品目以上の販売中止を一斉発表するなど、撤退連鎖が加速している。詳細は2026年中東危機:医薬品サプライチェーン断絶の全貌で総論を扱った。

そして3つ目の圧力源が、4月施行の薬価改定。薬剤費ベースで▲4.02%(医療費ベース▲0.86%)の引き下げが、現場の薬剤費収益を直接圧迫している。本稿では、これら3つの圧力が薬局経営をどう変えるのか、薬局類型ごとの生存戦略までを一次情報で徹底解説する。

27
加算1の点数(旧後発医薬品調剤体制加算の代替)
2026年6月1日施行・加算2〜5の前提
75成分
重要供給確保医薬品(A群35+B群40)
厚労省告示・2025年11月/1か月分備蓄
▲4.02%
2026年度薬価改定率(薬剤費ベース)
厚労省告示第72号・2026年4月1日施行
85%
後発医薬品使用割合 全加算の共通前提要件
経過措置あり・令和9年5月末まで猶予

「地域支援・医薬品供給対応体制加算」── 5段階構造の全貌

まずは新加算の制度設計を正確に押さえる。中央社会保険医療協議会総会(第647回・2026年2月13日)で点数が確定し、3月5日に官報告示された制度の構造は、薬局経営の戦略立案の出発点となる。

1.1 加算1〜5の点数構造と対象薬局

新加算は5段階構造で、薬局の調剤基本料区分により算定可能な区分が分かれる。CloseDi(2026年4月26日)の整理に基づき、各加算の点数と対象薬局を整理する。

加算区分 点数 対象薬局 位置づけ
加算1 27点 全薬局共通の前提(特別調剤基本料B以外) 旧後発医薬品調剤体制加算の代替・他加算の前提
加算2 59点 調剤基本料1算定薬局 旧地域支援体制加算1(32点)から再編・大幅増点
加算3 67点 調剤基本料1算定薬局・最上位 旧地域支援体制加算2(40点)から再編・最高点
加算4 37点 調剤基本料1または特別調剤基本料B以外 旧地域支援体制加算3(10点)から再編・大幅増点
加算5 59点 調剤基本料2・3を算定する薬局 チェーン・大型薬局向け区分

注目すべきは、加算1が「土台」として位置づけられたこと。旧地域支援体制加算は加算1〜4の4段階だったが、新加算は5段階に拡張され、しかも加算2〜5すべてが加算1の施設基準クリアを前提とする「二階建て」構造になった。加算1を取れない薬局は、加算2〜5の算定権限自体を失うのである。

1.2 加算1の施設基準 ── 8項目の核心要件

加算1の施設基準は、ROP株式会社・m3.com・薬+読・keiji-navi等の業界各社が整理する通り、以下の8項目から成る。すべてを満たさないと加算1の算定すらできない。

  • 共通前提:後発医薬品使用割合(規格単位数量割合)が85%以上であること(経過措置:令和8年3月31日時点で後発医薬品調剤体制加算を届出していた薬局は令和9年5月31日まで猶予)
  • 体制要件①:医薬品の安定供給に向けた計画的な調達や在庫管理を行うこと
  • 体制要件②:他の保険薬局に医薬品を分譲した実績(同一グループ間は除外)があり、伝票を2年間保存していること
  • 体制要件③:供給不安等で入手困難な場合、在庫確認の上で患者紹介や処方医への処方変更提案などの適切な対応を行うこと
  • 体制要件④(核心):重要供給確保医薬品のうち内用薬および外用薬について、1か月程度分は備蓄するよう努めること。卸売販売業者が代わりに在庫を確保しているだけでは備蓄要件を満たさず、当該保険薬局に現に在庫を保有していることが必要
  • 体制要件⑤:後発医薬品の積極的な調剤を行っている旨を薬局の内側および外側の見やすい場所に掲示すること
  • 体制要件⑥:過度な値引き交渉や、卸への過度な配送依頼を行わないこと(流通改善ガイドライン遵守)
  • 体制要件⑦:特別調剤基本料Bを算定していない薬局であること

これらの要件のうち、特に体制要件④の「重要供給確保医薬品の1か月備蓄」が、本稿の核心テーマである。次章で、その対象成分の正体を明らかにする。

「重要供給確保医薬品75成分」── A群35・B群40の全貌とイラン情勢直撃

薬局経営者が今すぐ理解すべきは、自分が備蓄義務を負う「重要供給確保医薬品」とは具体的に何の成分なのか、そしてその成分の供給がイラン情勢でいかに脅かされているのかという点である。

2.1 供給確保医薬品762成分と重要供給確保医薬品75成分の関係

まず制度の全体像を整理する。厚生科学審議会医療用医薬品迅速・安定供給部会は2025年10月27日、「供給確保医薬品762成分」を了承し、11月上旬に告示された(ミクスOnline 2025年10月28日)。

  • 供給確保医薬品:762成分(A群35+B群40+C群687)― 厚労大臣が「安定供給確保の必要性が高い」と指定
  • 重要供給確保医薬品:75成分(A群35+B群40)― 上記762成分のうち、特に「安定供給確保が特に重要」と指定された成分
  • 群A:35成分 ― 最も優先して取組を行う供給確保医薬品
  • 群B:40成分 ― 優先して取組を行う供給確保医薬品
  • 群C:687成分 ― 供給確保医薬品(A群・B群以外)

制度上はA群とB群の法的効果に違いはなく相対評価とされており、地域支援・医薬品供給対応体制加算の備蓄義務はA群+B群(合計75成分)のうち内用薬・外用薬が対象となる。注射薬やワクチンは備蓄対象外である。

2.2 重要供給確保医薬品(内用・外用)の主要例

薬剤師おすし氏のnote記事(2026年2月)・YG研究会・薬事日報等が公開している情報をもとに、A群・B群の主要例を整理する。これが「薬局が現物備蓄を求められる成分」の実体である。

区分 代表成分 投与形態 薬効・用途
A群 シクロスポリン 内用剤 免疫抑制剤・他に分類されない代謝性医薬品(臓器移植・自己免疫疾患治療)
A群 タクロリムス水和物 内用剤 免疫抑制剤・他に分類されない代謝性医薬品(移植拒絶反応・関節リウマチ)
A群 ワルファリンカリウム 内用剤 血液凝固阻止剤(血栓塞栓症の治療・予防)
A群 テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤 内用剤 代謝拮抗剤(胃癌、結腸・直腸癌の治療)
A群 アセトアミノフェン 外用剤 解熱鎮痛消炎剤
A群 トロンビン 外用剤 止血剤
B群 ロキソプロフェンナトリウム 内用剤 解熱鎮痛消炎剤(処方箋による医療用)
B群 ジアゼパム 外用剤(坐剤) 催眠鎮静剤・抗不安剤(小児の熱性けいれん、てんかんの治療)

※上記は内用・外用の主要例であり、注射薬(ロピバカイン塩酸塩水和物、人免疫グロブリン製剤等)は薬局備蓄対象外。完全な成分リストは厚生労働省告示(別表第一)を参照のこと。

2.3 イラン情勢が「重要供給確保医薬品」を直撃する構造

ここが本稿の核心である。重要供給確保医薬品の多くが、まさにイラン情勢で供給不安が顕在化している成分である。

  • アセトアミノフェン(A群・外用):USP(米国薬局方)のリスクアセスメント(2026年3月)で「広く普及しているがゆえに、物流コスト増の影響を最も受けやすい」と指摘された3薬剤の一つ。本シリーズ医薬品サプライチェーン断絶の全貌で詳述。
  • ロキソプロフェンナトリウム(B群・内用):解熱鎮痛剤として日本ジェネリック5月22日のケトプロフェン坐剤販売中止と同系統の薬効分類。薬価逆ザヤが構造化している。
  • ワルファリンカリウム(A群・内用):原薬の供給ルートが多様化しているが、合成工程で大量の有機溶剤(トルエン・メタノール等)を必要とし、ナフサ供給不安の直接影響を受ける。
  • シクロスポリン・タクロリムス水和物(A群・内用):免疫抑制剤として代替の利かない薬剤。中間体製造が中東近隣(イスラエル等)に集中する品目があり、IRC(国際救済委員会・2026年3月30日)が供給リスクを警告。
構造的矛盾
「備蓄義務化された成分の多くが、入手困難になっている」

加算1の施設基準は薬局に「1か月分備蓄」を要求するが、対象成分の多くは現時点で卸からのアロケーション(割当出荷)対象であり、十分な現物在庫を確保できない状況に陥っている薬局が続出している。制度設計と現場の物理的供給制約が真っ向から衝突しているのが、2026年6月時点の現実である。

イラン情勢×薬価改定×地域支援加算の三重苦 ── 薬局経営を直撃する3つの経路

2026年6月時点で薬局経営が直面している圧力は、単一の問題ではなく、3つの圧力源が同時に作用する「三重苦」である。それぞれの経路を解剖する。

3.1 第1の圧力:イラン情勢による原料・卸供給の絞り込み

ホルムズ海峡封鎖と紅海ルート途絶により、医薬品原料の調達は構造的に不安定化している。経済産業省の調査(2026年3月25日時点)では国内有機溶剤在庫は限界水準にあり、ナフサ輸入が現状の10%で推移した場合、4月中に多くの製薬ラインが停止するリスクが指摘された。詳細はナフサ備蓄4ヶ月の陰で進む石化産業の構造的敗北で扱った。

この上流の供給不安が、製薬メーカーの「不採算品目からの撤退連鎖」を加速している。日本ジェネリック株式会社の2026年5月22日付一斉販売中止8品目以上(エポセリン坐剤125/250、イミダプリル塩酸塩錠2.5mg/10mg「JG」、アムバロ配合錠「JG」、スプラタストトシル酸塩カプセル50mg/100mg「JG」、サルポグレラート塩酸塩錠100mg「JG」、ケトプロフェン坐剤50mg/75mg「JG」等)、4月17日付ミルタザピン錠30mg「JG」販売中止は、その典型例である。沢井製薬「全製品供給状況一覧」も2026年5月8日時点で継続更新されている。

さらに4月28日付日刊薬業によれば、原薬工業会は会員企業に対し中東情勢に伴う原薬リスクの洗い出しを進めているものの、「影響の程度は不透明」と表明。業界自身が見通しを持てない状況が、卸の薬局向け出荷を一層慎重化させている。

3.2 第2の圧力:薬価改定▲4.02%による薬剤費収益の直接圧迫

4月1日施行の薬価改定(厚労省告示第72号、2026年3月5日)は、薬剤費ベース▲4.02%、医療費ベース▲0.86%の引き下げを実施。中間年改定の常態化(2021年以降毎年改定)と相まって、薬剤費収益は構造的な縮減局面にある。

これは薬局経営に2つの影響をもたらす。第一に、仕入価格と販売価格(薬価)のスプレッドが縮小し、薬剤費収益の絶対額が縮減する。第二に、4月施行の薬価改定と6月施行の調剤報酬改定で2か月のずれが生じるため、4〜5月診療分は「旧調剤報酬点数で請求」しつつ「新薬価で薬剤費請求」する変則期間となり、収益見通しが立てにくい。

3.3 第3の圧力:地域支援加算の要件強化による備蓄・体制コスト増

新加算は薬局に対し、これまで以上の「備蓄コスト負担」「分譲実績の証跡管理」「掲示物・施設基準の遵守」を要求している。特に重要供給確保医薬品75成分のうち内用・外用薬の1か月分備蓄は、品目数によっては数百万円〜数千万円規模の在庫増を意味する。

しかも前章で見たとおり、対象成分の多くがイラン情勢で供給絞り込みの対象となっており、「物理的に在庫が確保できない」リスクと「在庫過剰による資金繰り悪化」リスクの二律背反に薬局は直面している。

+3.09%
2026年診療報酬本体改定率(2年度平均)
医療従事者賃上げ・物価対応が大半
+0.08%
調剤報酬単体の改定率
技術料の実質的増額は限定的
2か月
薬価改定(4月)と調剤報酬改定(6月)のズレ
変則請求期間が4〜5月に発生
75成分
薬局が1か月分備蓄を求められる対象
うち内用・外用が対象(注射薬は対象外)

薬局類型別・経営インパクト ── 中小独立・チェーン・病院前の3類型

三重苦の影響度は、薬局の類型によって大きく異なる。本章では中小独立薬局・チェーン薬局・病院前薬局の3類型に分けて、経営インパクトと生存戦略を解剖する。

TYPE 01
中小独立薬局
調剤基本料1算定

もっとも経営インパクトが大きい層。加算2(59点)・加算3(67点)の取得には「在宅薬剤管理24回以上」「かかりつけ薬剤師実績」「医療安全に資する取組実績の報告」など、人的・実務的なハードルが高い項目が多く、現実的に届出可能なのは加算1(27点)に留まるケースが多い。

備蓄義務化への対応も、卸との交渉力・店舗内スペース・運転資金面で大型薬局に劣後する。地域の保険医療機関・他薬局との在庫融通体制が生存戦略の鍵となる。

生存戦略 加算1取得で経営の最低ラインを確保しつつ、地域連携での備蓄分譲を実績化。中長期ではM&Aや事業承継も視野に(業界では薬局M&A加速予想あり)。
TYPE 02
チェーン薬局
調剤基本料2・3算定

加算5(59点)の取得を目指せる層。本部主導で重要供給確保医薬品75成分の集中備蓄拠点を構築し、店舗間融通で個別店舗の備蓄負担を分散できる強みがある。卸との単品単価交渉も、ボリュームを活かした有利な条件交渉が可能。

一方、調剤基本料2・3の薬局は加算2・3(調剤基本料1向け)の算定権限がなく、加算1(27点)+加算4(37点)または加算5(59点)の組み合わせとなる。

生存戦略 本部に重要供給確保医薬品の集中備蓄機能を持たせ、店舗間融通の伝票・記録を徹底(2年間保存義務)。ITによる在庫見える化が経営優位性に直結。
TYPE 03
病院前薬局(マンツーマン薬局)
処方箋集中率85%超のリスク

2026年改定の議論で繰り返し指摘されてきた論点が、処方箋集中率の厳格化。集中率85%超かつ特定の調剤基本料区分に該当する薬局は「特別調剤基本料B」算定の対象となり、地域支援・医薬品供給対応体制加算は加算自体が算定不可となる重大なリスクを抱える(CloseDi等の整理)。

また特別調剤基本料A算定薬局では、加算点数が100分の10(1/10)に減額される取扱いも併存する。実質的に新加算の経済メリットを得られない層となりかねない。

生存戦略 集中率を意図的に引き下げる戦略(在宅医療シフト、近隣他医療機関の取り込み)が必要。または病院前立地を活かした包括契約・在宅専従化など、ビジネスモデル自体の転換も検討。

4.1 経営インパクトの可視化 ── 月間処方箋件数別シミュレーション

仮に月間処方箋件数1,000枚の中小独立薬局が、加算1(27点)のみ算定する場合の収入インパクトを概算すると、27点 × 1,000枚 = 27,000点 = 27万円/月(10割計算)となる。これは旧後発医薬品調剤体制加算(区分により15〜30点程度)と比較して大きな増加とは言いにくく、しかも備蓄コスト・実務体制整備コストを差し引けば実質的な経営貢献は限定的である。

一方、加算3(67点)まで取得できる調剤基本料1の中規模薬局では、67点 × 1,000枚 = 67,000点 = 67万円/月。加算1のみとの差額は月40万円・年間480万円となり、加算2・3を取得できるか否かが薬局経営の「生死を分けるライン」となる構造が浮かび上がる。

ただし、いずれの試算も備蓄確保が前提である。重要供給確保医薬品の現物在庫が確保できなければ施設基準を満たさず、加算1すら算定できない。「物理的供給制約 vs 制度的要件」のせめぎ合いが、薬局経営の最大課題となっている。

薬局経営者が今すぐ取るべき5つのアクション

ここまで見てきた三重苦の中で、薬局経営者・本部担当者・調剤事業企画担当が今週中に着手すべき実践的アクションを5つに整理する。

1
自局の「重要供給確保医薬品 該当銘柄リスト」の作成
A群35+B群40(合計75成分)のうち、直近1年間で自局が調剤実績を持つ成分を、レセコン・薬歴データから抽出する。注射薬・ワクチンは備蓄対象外なので、内用・外用に絞り込む。薬剤師おすし氏のnote記事や薬+読・YG研究会等で対象成分リストの整理事例が公開されているため、自局のDBと突き合わせる作業から始める。
2
1か月使用数量の算出と現有在庫との差分可視化
対象銘柄ごとに、直近1年間の総調剤数量を12で割って「月平均使用数量」を算出。これと現有在庫量を比較し、不足分・過剰分を一覧化する。卸からのアロケーション対象品目では、追加発注しても入荷が見込めない可能性があり、その場合は処方医への代替薬提案・分譲依頼の戦略を立てる。
3
卸との「単品単価契約」と備蓄優先供給契約の見直し
体制要件⑥「過度な値引き交渉や卸への過度な配送依頼を行わない」(流通改善ガイドライン遵守)を踏まえ、卸との価格交渉と備蓄優先供給を組み合わせた契約への切り替えを進める。価格交渉の前提として、自局の重要供給確保医薬品の月間使用数量を提示することで、卸側も計画的な供給配分が可能になる。
4
店舗間融通・地域連携の証跡管理体制の構築
体制要件②「他の保険薬局に医薬品を分譲した実績」「伝票を2年間保存」をクリアするための実務体制を構築する。チェーン薬局は本部主導で店舗間融通の電子記録を整備、中小独立薬局は地域薬剤師会・近隣他薬局との分譲ネットワーク参加が現実的。在庫融通の伝票発行・保存・台帳記録のフローを文書化することが、施設基準届出時の証憑となる。
5
施設基準届出の早期提出と経過措置の活用
2026年6月1日施行の調剤報酬改定では、各種加算の届出が必要な場合、地方厚生局への届出を要する。経過措置として、令和8年3月31日時点で後発医薬品調剤体制加算を届出していた薬局は令和9年5月31日まで加算1の後発医薬品割合要件(85%)を満たすとみなされるため、この猶予期間を活かしつつ、本格的な体制構築を並行で進める。
薬局物流の盲点
医薬品在庫管理の「物流資材」が、実は経営課題に直結する

重要供給確保医薬品の1か月分備蓄を実現するには、店舗バックヤード・本部備蓄拠点での適切な医薬品保管環境(温度管理・遮光・湿度管理)と、店舗間融通時の専用コンテナ・パレットが必須となる。プラスチックパレット株式会社(千葉県我孫子市・全国対応)は、医薬品物流の現場が抱える保管・配送資材の課題に対し、再生樹脂を用いた低コスト・高耐久パレットや折りたたみコンテナ等の選択肢をご提案できます。医薬品サプライチェーン強靭化の隠れた一手として、物流資材の見直しもぜひご検討ください。

結語

「加算1取得=経営の生存ライン」という新常態へ

2026年6月施行の調剤報酬改定は、長らく「対物業務から対人業務へ」というシフトを進めてきた厚生労働省の薬局政策が、ついに「医薬品サプライチェーン強靭化」という新次元に踏み込んだことを意味する。薬局は単に処方箋を受け付け・調剤する場所ではなく、地域の医薬品供給拠点としての機能を制度的に求められるようになった。

しかしその制度設計は、皮肉にもイラン情勢による原料供給不安と同時施行となり、「備蓄義務化された成分が、現場で入手困難」という構造的矛盾を抱えてのスタートとなった。薬価改定▲4.02%による薬剤費収益の圧迫が、この矛盾をさらに先鋭化している。

薬局経営者にとって、加算1(27点)の取得は「最低限の生存ライン」となり、加算2・3(59点・67点)の取得は「事業継続のための差別化要因」となる。備蓄義務という新ルールに適応できない薬局は、加算算定権限を失い、経営継続が困難となる。業界全体で薬局M&A・事業承継が加速するとの予想(調剤M&A支援センターR等)も、この構造変化を背景にしている。

本シリーズの医薬品サプライチェーン断絶の全貌と合わせて、薬局経営者・薬剤師会幹部・調剤チェーン本部・経営コンサルタント・医薬品卸の薬局営業担当者各位にとって、本稿が経営判断の一助となれば幸いである。

📚 エビデンス・参照元一覧(2026年6月5日時点)
  1. 厚生労働省告示第72号「使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部を改正する件」(令和8年3月5日官報告示)― 薬剤費ベース▲4.02%、医療費ベース▲0.86%、2026年4月1日施行
  2. 中央社会保険医療協議会 総会(第647回)資料(2026年2月13日)― 地域支援・医薬品供給対応体制加算 加算1〜5の点数決定(27点/59点/67点/37点/59点)
  3. 厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」― 地域支援・医薬品供給対応体制加算の施設基準
  4. 厚生科学審議会医療用医薬品迅速・安定供給部会 第2回 資料2「供給確保医薬品の選定について」(2025年10月27日)― 供給確保医薬品762成分、重要供給確保医薬品75成分(A群35+B群40)の選定
  5. ミクスOnline「供給確保医薬品762成分、重要供給確保医薬品は75成分 11月上旬に告示へ 厚科審部会」(2025年10月28日)
  6. 厚生労働省 別表第一「供給確保医薬品及び重要供給確保医薬品(ワクチンを除く)」― A群・B群の有効成分・投与形態・薬効分類一覧
  7. 日本ジェネリック株式会社「医療関係者向けお知らせ一覧」― 2026年5月22日付 エポセリン坐剤125/250、イミダプリル塩酸塩錠2.5mg/10mg「JG」、アムバロ配合錠「JG」、スプラタストトシル酸塩カプセル50mg/100mg「JG」、サルポグレラート塩酸塩錠100mg「JG」、ケトプロフェン坐剤50mg/75mg「JG」 販売中止案内
  8. 日本ジェネリック株式会社 ― 2026年4月17日付 ミルタザピン錠30mg「JG」販売中止、ベポタスチンベシル酸塩錠10mg「JG」一部包装中止案内
  9. 沢井製薬株式会社「全製品供給状況一覧」(2026年5月8日時点・継続更新中)
  10. 厚生労働省「第4回 中東情勢の影響を受ける医薬品、医療機器、医療物資等の確保対策本部」(2026年4月23日開催・厚生労働省講堂)
  11. 厚生労働省「第5回 中東情勢の影響を受ける医薬品、医療機器、医療物資等の確保対策本部」(2026年5月18日開催・厚生労働省専用第21会議室)
  12. 日刊薬業「中東情勢、原薬のリスク洗い出し 原薬工、影響の程度は不透明」(2026年4月28日)
  13. 日刊薬業「26年度改定、薬剤費ベースで4.02%減 薬価改定を官報告示」(2026年3月5日)
  14. USP(米国薬局方)リスクアセスメント(2026年3月)― アモキシシリン・エトミデート・アセトアミノフェンの供給停止リスク警告
  15. CloseDi「【2026年度調剤報酬改定】地域支援・医薬品供給対応体制加算」(2026年4月26日)― 加算1〜5の点数一覧・対応関係・施設基準・体制要件・実績要件の整理
  16. m3.com 薬剤師コラム「地域支援・医薬品供給対応体制加算の今後の注目ポイントを解説」(2026年2月13日 中医協 第647回 発表点数追記版)
  17. m3.com 薬剤師コラム「【2026新設】地域支援・医薬品供給対応体制加算の算定要件を解説」
  18. m3.com 薬剤師コラム「26改定・6月以降に算定するなら届出が必ず必要・不要な項目点数を解説」(2026年4月17日)
  19. ROP株式会社「【3/5 調剤診療報酬改定告示】地域支援・医薬品供給対応体制加算&かかりつけ薬剤師など告示内容について」(2026年3月10日)
  20. 薬+読(薬剤師のエナジーチャージ)「地域支援・医薬品供給対応体制加算とは?算定要件・点数・施設基準を解説」
  21. YG研究会「2026年(令和8年度)調剤報酬改定:重要供給確保医薬品の備蓄要件と薬局の実務対応」(2026年3月9日)
  22. keiji-navi「地域支援・医薬品供給対応体制加算の施設基準と点数一覧|届出要件と掲示義務を解説」(2026年4月13日)
  23. 薬剤師おすし note「【調剤報酬改定2026】地域支援・医薬品供給対応体制加算と重要供給確保医薬品についてわかりやすく解説します。【短冊】」(2026年2月2日)
  24. 令和8年(2026年)調剤報酬改定ガイド「地域支援体制加算の見直し」― 加算1〜5の旧加算との対応関係整理
  25. 調剤M&A支援センターR「薬局M&A加速か?2026年調剤報酬改定が調剤薬局に及ぼす影響とは」(2026年3月19日)
  26. 株式会社医療経営研究所「2026年度改定に向けた課題整理 調剤その2」― 集中率85%ライン・調剤基本料2の絞り込み
  27. 株式会社ファーマスタイルWEB「2026年度薬価制度改革が薬局業務へ及ぼす影響 長期収載品の価格調整が前倒しに」(2026年4月10日)
  28. 厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の概要」― 重要供給確保医薬品制度の法的位置づけ
  29. 薬事日報「供給確保医薬品の重要性と選定基準を解説」(2026年2月4日)
  30. 厚生労働省「医療用医薬品の供給状況」第19回医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議 参考資料3(令和7年1月24日)― 2024年12月調査結果:限定出荷・供給停止合計20%(3,244品目)、後発品で限定出荷571品目+供給停止1,016品目
  31. カネコ化学株式会社 公式ブログ「中東情勢が洗浄剤の供給に及ぼす影響とは?」(2026年4月28日更新)― 「半導体・医薬品・産業用油脂・樹脂製品など川下業界への波及」
  32. 愛知中小企業家同友会「中東情勢の緊迫化の影響調査の結果に関して」(2026年4月6日)― 543社対象、79.3%が経営リスク認識
  33. ジェトロ「中東・イラン経済情勢(2026年5月14日時点)」
  34. ロイター「アジアのナフサ価格急落、ADNOCがオマーン経由で輸出再開」(2026年6月3日)
  35. 厚生労働省「国内未承認の医薬品成分エトミデートを含有する製品に対する注意喚起について」
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