2026年度診療報酬改定の全体像、本体+3.09%は2年度平均で単年は+2.41%、後発医薬品調剤体制加算の廃止と医薬品安定供給要件27点の新設
報道で目にする「本体プラス3.09%」は、令和8年度と令和9年度の2年度平均である。単年で見れば令和8年度は+2.41%にとどまる。この差を含め、改定率の全内訳、薬価と材料価格の区分、そして在庫管理や配送依頼の抑制といった医薬品の安定供給体制が加算の基礎要件に組み込まれた構造を、厚生労働省の改定概要資料に基づいて記録する。
TL;DR — 3行要約
- 診療報酬+3.09%は令和8年度と令和9年度の2年度平均であり、令和8年度単年は+2.41%、令和9年度は+3.77%である。単年度の数字として扱うと改定幅を過大に見積もることになる。
- 薬価は▲0.86%で令和8年4月施行、材料価格は▲0.01%で同年6月施行、合計▲0.87%である。本体は6月施行のため、4月から6月までは引き下げ後の薬価で調剤しながら改定前の技術料で算定する期間が生じる。
- 後発医薬品調剤体制加算は廃止され、後発品の使用割合は新設された地域支援・医薬品供給対応体制加算1(27点)の基礎要件となった。評価の軸が使用割合から供給体制へ移った。
2026年度診療報酬改定の本体+3.09%は2年度平均であり、令和8年度単年は+2.41%にとどまる。薬価は▲0.86%。調剤では後発医薬品調剤体制加算が廃止され、使用割合85%以上は新設の27点の基礎要件へ移された。評価の軸が後発品の使用割合から医薬品の供給体制へ転換している。
CONTENTS
令和9年度は+3.77%
材料は▲0.01%
令和8年6月施行
医科診療所は+0.10%
CHAPTER 01改定率の全体構造、2年度平均という設計
本記事は、厚生労働省保険局医療課が公表した「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」を主たる資料として構成している。改定率と施設類型別の配分は医科・歯科を含む全体を扱うが、個別の点数については調剤分野を中心に整理した。病院・診療所側の個別項目については、同省が別途公表している医科版の資料を参照されたい。
2026年度(令和8年度)の診療報酬改定は、の大臣折衝で決定された。改定率をめぐる報道では「本体プラス3.09%」という数字が繰り返し示されたが、厚生労働省の改定概要資料を読むと、この数字の性格は一般に理解されているものと異なる。
1.1 3.09%は2年度平均である
厚生労働省保険局医療課が公表した改定概要には、次のとおり明記されている。診療報酬プラス3.09%は令和8年度および令和9年度の2年度平均であり、令和8年度はプラス2.41%、令和9年度はプラス3.77%である。施行は令和8年6月である。
| 区分 | 改定率 | 施行 |
|---|---|---|
| 診療報酬(本体)2年度平均 | +3.09% | 令和8年6月 |
| うち 令和8年度 | +2.41% | 同上 |
| うち 令和9年度 | +3.77% | — |
| 薬価 | ▲0.86% | 令和8年4月 |
| 材料価格 | ▲0.01% | 令和8年6月 |
| 薬価等 合計 | ▲0.87% | — |
出典:厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」(令和8年7月1日版)に記載された令和7年12月24日大臣折衝事項。
「本体プラス3.09%」を令和8年度単年の数字として理解すると、実際の改定幅である2.41%を約1.3倍に見積もることになる。2年度にわたる引き上げを平均値で示す方式は、単年度で見た場合の水準と乖離するため、経営計画への反映にあたっては年度ごとの数字を用いる必要がある。なお資料には、実際の経済・物価の動向が改定時の見通しから大きく変動し経営状況に支障が生じた場合、令和9年度予算編成において加減算を含む更なる調整を行う旨も記されている。
1.2 改定の背景に置かれた3つの視点
厚生労働省の全体概要資料は、今回の改定の前提として次の3点を挙げている。2040年頃を見据えた、全ての地域・世代の患者が適切に医療を受けることが可能かつ医療従事者も持続可能な働き方を確保できる医療提供体制の構築。医療の高度化や医療DX、イノベーションの推進等による安心・安全で質の高い医療の実現。社会保障制度の安定性・持続可能性の確保と、経済・財政との調和である。
医薬品の供給を巡る課題は、この3点目と2点目の接点に位置する。供給不安への対応に要する業務を評価する一方で、後発医薬品の使用促進と長期処方の活用によって効率化も同時に求める設計になっている。
CHAPTER 02改定率の内訳、賃上げ・物価・緊急対応・効率化
本体プラス3.09%は単一の引き上げではなく、目的の異なる複数の要素の合計である。内訳を分解する。
| 内訳 | 2年度平均 | 年度別 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 賃上げ分 | +1.70% | R8 +1.23% R9 +2.18% |
令和8年・9年にそれぞれ3.2%(看護補助者、事務職員は5.7%)のベースアップを実現するための措置。うち0.28%分は賃上げ余力の回復・確保を図るための特例的な対応。 |
| 物価対応分 | +0.76% | R8 +0.55% R9 +0.97% |
うち0.62%を令和8年以降の物価上昇への対応に充て、施設類型ごとの費用関係データ等に基づき配分。残る0.14%分は高度医療機能を担う病院への特例的な対応。 |
| 食費・光熱水費分 | +0.09% | — | 入院時の食費基準額を40円/食、光熱水費基準額を60円/日引き上げ。患者負担も食費は原則40円/食(低所得者は所得区分等に応じて20〜30円/食)、光熱水費は原則60円引き上げ(指定難病患者等は据え置き)。 |
| 緊急対応分 | +0.44% | — | 令和6年度改定以降の経営環境の悪化を踏まえた対応。令和7年補正予算の効果を減じないよう施設類型ごとのメリハリを維持。 |
| 効率化 | ▲0.15% | — | 後発医薬品への置換えの進展を踏まえた処方や調剤に係る評価の適正化、実態を踏まえた在宅医療・訪問看護関係の評価の適正化、長期処方・リフィル処方の取組強化等。 |
| その他 | +0.25% | — | 各科改定率は医科+0.28%、歯科+0.31%、調剤+0.08%。 |
出典:同上。年度別の数値は資料に記載のあるものを掲載した。
2.1 施設類型別の配分
物価対応分と緊急対応分については、施設類型ごとの配分が明示されている。
| 施設類型 | 物価上昇対応(0.62%の配分) | 緊急対応(0.44%の配分) |
|---|---|---|
| 病院 | +0.49% | +0.40% |
| 医科診療所 | +0.10% | +0.02% |
| 歯科診療所 | +0.02% | +0.01% |
| 保険薬局 | +0.01% | +0.01% |
出典:同上。配分は施設類型ごとの費用関係データ等に基づくとされている。
物価上昇への対応が病院に厚く配分されている一方、保険薬局への配分は物価対応・緊急対応ともに0.01%である。医薬品の在庫を抱え、配送を受け、容器や調剤資材を消費する立場でありながら、物価対応としての配分は限定的な水準にとどまった。この配分は、薬局側の物価上昇分が主として調剤基本料の引き上げと新設の物価対応料によって手当てされる設計であることと対応している。
2.2 賃上げと物価対応の実装
調剤分野では、賃上げと物価対応がそれぞれ独立した評価項目として新設された。
| 項目 | 点数 | 算定・要件 |
|---|---|---|
| 調剤ベースアップ評価料【新設】 | 4点 | 処方箋の受付1回につき算定。令和9年6月以降は所定点数の100分の200で算定する。施設基準は、当該保険薬局に勤務する職員がいること、対象職員の賃金改善を実施するにつき必要な体制が整備されていること。 |
| 調剤物価対応料【新設】 | 1点 | 3月に1回に限り算定。令和9年6月以降は所定点数の100分の200で算定する。 |
出典:同上。いずれも令和9年6月以降に点数が2倍となる設計である。
令和8年度の保険薬局の経営状況等について調査を実施し、実際に支給される給与(賞与を含む)に係る賃上げ措置の実績について詳細な把握を行うことも資料に記されている。
CHAPTER 03薬価▲0.86%と材料価格▲0.01%
3.1 施行時期が分かれている
薬価改定は施行、材料価格改定と本体改定は施行である。この時期のずれは実務上の意味を持つ。4月から6月までの2か月間は、引き下げ後の薬価で医薬品を購入・調剤しながら、改定前の技術料で算定する期間となる。
3.2 薬価改定が毎年実施されるようになった経緯
薬価改定は原則として2年に1度、改定前年の9月頃に実施される薬価調査に基づいて行われてきた。この薬価調査は、薬価基準に収載されている全ての医薬品について、卸売業者の販売価格、医療機関・薬局の購入価格や数量などを調査するものである。2021年度からは薬価改定が毎年行われるようになり、これに伴い薬価調査も毎年の実施となった。
今回の改定にあわせ、制度関連事項として令和8年度薬価制度改革および令和9年度の薬価改定の実施、費用対効果評価制度の更なる活用が挙げられている。
3.3 長期収載品の選定療養が2倍に
薬価そのものとは別に、患者負担の設計にも変更が入った。長期収載品の選定療養における患者負担額の算定方法が見直され、後発医薬品のある先発医薬品の薬価から当該後発医薬品の薬価を控除して得た価格に乗じる係数が、4分の1から2分の1へ引き上げられた。
先発医薬品を希望する患者の自己負担が増える方向の変更である。後発医薬品の使用促進を、薬局側の加算だけでなく患者負担の側からも進める設計になっている。あわせて、時間外の選定療養についても、これまで保険医療機関のみを対象としていた規定が改められ、保険薬局が表示する開店時間以外の時間における調剤についても特別の料金を徴収できることとなった。
医薬品の供給不安が続く局面で後発医薬品への置換えを進める設計は、供給側の状況と整合しない場面を生む可能性がある。この点については後発医薬品の供給構造を扱った記事で別途整理している。
CHAPTER 04調剤基本料の再編と立地への評価
調剤報酬の土台である調剤基本料は、全区分で引き上げられた一方、立地に依存する薬局への評価は引き下げの方向で見直された。
4.1 調剤基本料の点数
| 区分 | 改定前 → 改定後 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 調剤基本料1 | 45点 → 47点 | 調剤基本料2・3、特別調剤基本料以外。 |
| 調剤基本料2 | 29点 → 30点 | 処方箋受付回数1,800回超かつ集中率85%超ほか。都市部では600回超1,800回以下かつ集中率85%超も対象(既存薬局には当面適用しない)。 |
| 調剤基本料3イ | 24点 → 25点 | 同一グループで月3万5千回超〜40万回かつ集中率85%超。 |
| 調剤基本料3ロ | 19点 → 20点 | 同一グループで月40万回超かつ集中率85%超。 |
| 調剤基本料3ハ | 35点 → 37点 | 同一グループで月40万回超かつ集中率85%以下。 |
| 特別調剤基本料A | 5点 → 5点 | いわゆる同一敷地内薬局。 |
| 特別調剤基本料B | 3点 → 3点 | 調剤基本料の届出がない薬局。 |
出典:同上。処方箋受付回数はいずれも月当たりの回数。
4.2 新設された減算と算定基準の変更
- 門前薬局等立地依存減算 ▲15点【新設】。以降に新規開設する薬局のうち、都市部に所在し水平距離500m以内に他の保険薬局があり、集中率85%超で、かつ200床以上の医療機関の敷地境界線から100m以内の区域に他薬局が2以上あるなどの要件に該当する場合に適用される。令和8年5月31日時点で現に保険指定を受けている薬局は当面の間、対象としない。
- 同一グループ300店舗以上の区分を撤廃。調剤基本料3のロ・ハの施設基準から、同一グループの薬局店舗数が300以上であることが削除された。
- 医療モール内の複数医療機関を1つとみなす。処方箋集中率の計算において、1つの建物内または1つの敷地内に複数の保険医療機関がある場合、それらに係る処方箋の受付回数を全て合算し、特定の医療機関に係る受付回数とみなす。
厚生労働省の資料は、「患者のための薬局ビジョン」策定()から10年が経過した現状を数値で示している。処方箋集中率が95%以上の薬局の割合は2015年の14.0%から2024年には17.3%へ、85%以上の薬局の割合は32.5%から39.3%へと、いずれも増加した。目標としていた面分業の推進とは逆方向の変化である。今回の立地に着目した見直しは、この10年の実績を踏まえた対応と位置づけられている。
CHAPTER 05地域支援・医薬品供給対応体制加算の5区分
今回の調剤報酬改定で最も構造的な変更が加えられたのが、この加算である。従来の地域支援体制加算(4区分)と後発医薬品調剤体制加算(3区分)が統合され、5区分の新たな加算に再編された。
5.1 点数の対応関係
| 改定前 | 改定後 | 対象 |
|---|---|---|
| — | 地域支援・医薬品供給対応体制加算1 27点【新設】 | 全区分共通の基礎 |
| 地域支援体制加算1 32点 | 地域支援・医薬品供給対応体制加算2 59点 | 調剤基本料1の薬局 |
| 地域支援体制加算2 40点 | 地域支援・医薬品供給対応体制加算3 67点 | 調剤基本料1の薬局 |
| 地域支援体制加算3 10点 | 地域支援・医薬品供給対応体制加算4 37点 | 調剤基本料1以外の薬局 |
| 地域支援体制加算4 32点 | 地域支援・医薬品供給対応体制加算5 59点 | 調剤基本料1以外の薬局 |
出典:厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」(令和8年7月1日版)。
5.2 二階建ての構造
点数だけを見ると相当な引き上げに見えるが、構造を理解する必要がある。加算2から5は、従来の地域支援体制加算の要件(地域医療への貢献に対する要件)に加えて、新設された加算1の要件(医薬品の安定供給に資する要件)の双方を満たすことが条件となる。つまり加算1は独立した選択肢であると同時に、上位区分の基礎要件でもある。
加算2が59点、加算3が67点という点数は、従来の地域支援体制加算1(32点)・2(40点)に、加算1の27点が上乗せされた金額と一致する。加算4の37点は従来の10点に27点を加えた額、加算5の59点は32点に27点を加えた額である。
従来の地域支援体制加算のみを算定していた薬局が加算1の要件も満たせば、27点分が積み増しとなる。一方、従来は地域支援体制加算と後発医薬品調剤体制加算(21〜30点)の両方を算定できていた薬局にとっては、後者が廃止されて加算1に統合されたため、単純な増収にはならない。実質的な影響は、従来どちらの加算を算定していたかによって分岐する。
5.3 上位区分の実績要件
加算2から5の算定には、地域医療への貢献を示す9つの実績要件のうち、区分ごとに定められた数を満たす必要がある。
| 区分 | 点数 | 必要な実績 |
|---|---|---|
| 加算2【調剤基本料1】 | 59点 | 要件④(かかりつけ薬剤師による服薬管理指導料の算定実績)を含む3つ以上 |
| 加算3【調剤基本料1】 | 67点 | 9要件のうち7つ以上 |
| 加算4【基本料1以外】 | 37点 | 要件④および⑥(単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理の実績)を含む3つ以上 |
| 加算5【基本料1以外】 | 59点 | 9要件のうち7つ以上 |
9つの実績要件は、夜間・休日等の対応実績、麻薬の調剤実績、調剤時残薬調整加算および薬学的有害事象等防止加算の算定実績、かかりつけ薬剤師による服薬管理指導料の算定実績、外来服薬支援料1の実績、単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理の実績、服薬情報等提供料に相当する実績、小児特定加算の算定実績、研修認定を取得した保険薬剤師の多職種連携会議への出席である。①から⑧は処方箋1万枚当たりの年間回数、⑨は薬局当たりの年間回数で判定される。求められる回数は調剤基本料1の薬局とそれ以外で異なり、たとえば夜間・休日等の対応実績は前者が40回以上、後者が400回以上とされている。
CHAPTER 06加算1の要件、医薬品の安定供給に何が求められたか
新設された加算1の要件は、当社が扱う物流の領域と直接に重なる。在庫、調達、配送、返品という項目が制度の要件として明文化されたためである。
6.1 施設基準の構成
加算1の施設基準は2つの要素からなる。第1に、地域における医薬品の安定供給を確保するために必要な体制を有していること。第2に、当該保険薬局において調剤した後発医薬品のある先発医薬品および後発医薬品を合算した規格単位数量に占める後発医薬品の規格単位数量の割合が85%以上であることである。
6.2 安定供給の体制として求められる8項目
| # | 要件 | 実務上の含意 |
|---|---|---|
| (1) | 医薬品の安定供給に向けた計画的な調達や在庫管理を行うこと | 在庫を過度に抑制した結果として他薬局からの分譲を頻繁に受ける状況や、卸への急配依頼を繰り返す状況に陥らないことが前提とされている。 |
| (2) | 他の保険薬局に医薬品を分譲した実績があること | 直近1年間の実績が必要。分譲時は伝票または医療用医薬品の譲渡書を2年間保存する。同一開設者の薬局への分譲は実績に含まれない。 |
| (3) | 供給不安等により迅速な入手が困難な場合、入手可能な保険薬局を探し在庫を確認の上、患者を紹介または処方医に処方変更の可否を照会する等の対応をすること | 自局で確保できない場合の行動が要件化された。 |
| (4) | 重要供給確保医薬品のうち内用薬および外用薬であるものは1ヶ月程度の備蓄をするよう努めること | 努力義務の形をとるが、備蓄の水準が具体的に示された。 |
| (5) | 原則として、単品単価交渉の実施をしていること | 総価取引ではなく品目ごとの価格交渉を求めるもの。 |
| (6) | 卸売販売業者への頻回配送・休日夜間配送・急配に係る過度な依頼を慎むこと | 配送側の負担を要件に組み込んだ項目。 |
| (7) | 温度管理を要する医薬品や在庫調整を目的とした卸売販売業者への医薬品の返品は慎むこと | 品質保証と流通効率の双方に関わる。 |
| (8) | 地域の保険医療機関や保険薬局、医療関係団体と連携し、取り扱う医薬品の品目についての情報共有や事前の取り決めを行っておくこと | 「望ましい」とされる項目。 |
出典:同上。表現は資料の記載に基づき、実務上の含意は本稿による整理。
6.3 物流の視点から見た要件の性格
この8項目は、薬剤師の専門性そのものというより、在庫管理と調達の実務に関する要件である。(1)の計画的な調達と在庫管理、(6)の配送依頼の抑制、(7)の返品の抑制は、いずれも供給網全体の負荷を下げることを目的としている。
2026年に医薬品の容器や調剤資材で生じた課題では、必要量を超える発注が流通の偏りを生む局面があり、厚生労働省はに当面の必要量に見合う量のみを発注・受注するよう求める通知を発出した。今回の加算要件は、その方向を恒常的な評価の仕組みに落とし込んだものと読める。詳細な経緯は医薬品物流の3制約を扱った記事で整理している。
(1)と(6)は一見すると相反する。在庫を抑制すれば急配依頼が増え、急配を抑制すれば在庫が必要になる。両立の鍵は、需要予測の精度と、保管効率をどこまで高められるかにある。同じ保管面積でより多くの在庫を置けるなら、発注頻度を下げながら欠品も避けられる。当社が扱うパレット・ラック関連資材は、この保管効率の側面に関わる。薬局の限られたバックヤードでは、棚の構成と荷姿の統一が在庫水準の実現可能性を左右する。
CHAPTER 07廃止された加算群と経過措置
今回の改定では、複数の加算が廃止または統合された。届出と算定の実務に直接影響するため、対応関係を整理する。
7.1 廃止された項目
| 廃止された項目 | 改定前の点数 | 移行先 |
|---|---|---|
| 後発医薬品調剤体制加算1・2・3 | 21点/28点/30点 (80%/85%/90%以上) |
後発医薬品の使用割合は地域支援・医薬品供給対応体制加算の基礎要件へ組み込み。 |
| かかりつけ薬剤師指導料 | 76点 | かかりつけ薬剤師フォローアップ加算50点、かかりつけ薬剤師訪問加算230点等、実施した指導に基づく評価へ転換。 |
| 重複投薬・相互作用等防止加算 在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料 |
40点/20点 | 調剤時残薬調整加算、薬学的有害事象等防止加算の新設に伴い廃止。 |
| 調剤管理加算 | 3点/3点 | 廃止。 |
| 医療情報取得加算 | 1点(年1回) | 廃止。 |
| 医療DX推進体制整備加算1・2・3 | 10点/8点/6点 | 電子的調剤情報連携体制整備加算8点(月1回)へ一本化。 |
| 在宅患者オンライン薬剤管理指導料 在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料 |
59点/59点 | 服薬管理指導料へ一本化。 |
出典:同上。
7.2 経過措置
届出の実務で重要となる経過措置が複数設けられている。
- 後発医薬品の使用割合要件。において現に後発医薬品調剤体制加算1、2または3に係る届出を行っている保険薬局については、までの間に限り、加算1の施設基準のうち後発医薬品使用割合85%以上の要件に該当するものとみなす。
- 門前薬局等立地依存減算。において現に保険指定を受けている薬局については、当面の間、減算の施設基準に該当しないものとみなす。
- 調剤基本料2の都市部要件。令和8年5月31日までに開設し、改定後も継続して処方箋受付回数1,800回以下の薬局には、当面の間、都市部における600回超の要件を適用しない。
- 高齢者施設等への費用負担。において現に保険薬局が継続的な費用負担により行っている行為については、までの間に限り「経済上の利益の提供」に該当しないものとみなす。
7.3 新たに施設基準の届出が必要となった項目
資料は、算定にあたり新たに届出が必要となる項目として、調剤ベースアップ評価料、地域支援・医薬品供給対応体制加算、在宅薬学総合体制加算2のイ・ロ、バイオ後続品調剤体制加算、服薬管理指導料の注1を挙げている。から算定を行うためには、からまでに、届出を行う保険薬局等の所在地を管轄する地方厚生局の都道府県事務所へ届出が必要とされていた。
CHAPTER 08対人業務の評価転換
体制の評価と並行して、薬剤師が実際に行った業務を評価する方向への転換が進んだ。供給不安への対応と直接に関わる項目もあるため、要点を整理する。
8.1 かかりつけ薬剤師の評価
かかりつけ薬剤師指導料(76点)が廃止され、かかりつけ薬剤師が実施した指導の内容に応じた評価に置き換えられた。
| 項目 | 点数 | 算定要件の要点 |
|---|---|---|
| かかりつけ薬剤師フォローアップ加算【新設】 | 50点 (3月に1回) | 前回の調剤後、患者が再度処方箋を持参するまでの間に、電話等により服薬状況や残薬状況等の継続的な確認および必要な指導等を実施した場合。 |
| かかりつけ薬剤師訪問加算【新設】 | 230点 (6月に1回) | 患家に訪問して服用薬の服薬管理、残薬状況の確認等を行い、その結果を保険医療機関に情報提供した場合。 |
| 服用薬剤調整支援料2 | 110点/90点 → 1,000点 | 複数の医療機関から6種類以上の内服薬が処方されている患者について、かかりつけ薬剤師が服用中の薬剤を継続的・一元的に把握した結果、調整が必要と認める場合に処方医へ文書で提案。6月に1回、かかりつけ薬剤師1人につき月4回まで。適用は令和9年6月1日から。 |
出典:同上。服用薬剤調整支援料2は令和9年6月1日から適用される。
8.2 残薬対策と処方変更への評価
供給不安の局面では、処方された銘柄を確保できず変更を要する場面や、残薬を活用する場面が増える。これに対応する評価が新設された。
- 調剤時残薬調整加算【新設】。残薬が確認された患者について、処方医の指示の下に7日分以上相当の調剤日数の変更が行われた場合に算定する。在宅患者への実施やかかりつけ薬剤師による実施の場合は50点、それ以外は30点。
- 薬学的有害事象等防止加算【新設】。薬剤服用歴や電子処方箋の仕組みを用いた重複投薬の確認等に基づき処方医へ照会した結果、処方に変更が行われた場合に算定する。点数の区分は調剤時残薬調整加算と同様。
いずれも、従来の重複投薬・相互作用等防止加算(40点/20点)を置き換えるものである。残薬調整に係る評価が20点から30点または50点へ引き上げられた形になる。
8.3 その他の主な変更
| 項目 | 変更 | 内容 |
|---|---|---|
| バイオ後続品調剤体制加算 | 50点【新設】 | バイオ後続品(インスリン製剤を除く)を調剤した場合。バイオ医薬品の適切な保管および患者への適切な説明が可能な体制が要件。 |
| 在宅薬学総合体制加算1 | 15点 → 30点 | 訪問薬剤管理指導の実績48回以上/年ほか。 |
| 在宅薬学総合体制加算2イ【新設】 | 100点 | 単一建物診療患者が1人または単一建物居住者が1人の場合(個人宅)。ロ(それ以外)は50点。 |
| 訪問薬剤管理医師同時指導料【新設】 | 150点 (6月に1回) | 訪問診療を実施している保険医と同時に訪問し、薬学的管理および指導を行った場合。 |
| 複数名薬剤管理指導訪問料【新設】 | 300点 | 患者が興奮または攻撃性を示すこと等により単独訪問では指導の実施が担保できないおそれがある場合。 |
| 調剤管理料 | 4段階 → 2区分 | 長期処方(28日分以上)60点、それ以外(27日分以下)10点。改定前は7日分以下4点、8〜14日分28点、15〜28日分50点、29日分以上60点の4段階。 |
| 無菌製剤処理加算 | 対象拡大 | 乳幼児加算の対象を6歳未満から15歳未満へ拡大。中心静脈栄養法用輸液は137点から237点へ。 |
CHAPTER 09実務対応と観測の時間軸
制度の内容を実務に落とし込む段階では、届出の期限、実績要件の判定期間、そして今後の改定予定を分けて把握する必要がある。
9.1 実績要件の判定期間
加算の算定可否は、いつの実績で判定されるのか。資料は施設基準ごとに判定期間を整理している。
| 施設基準 | 実績要件の判断期間 | 適用期間 |
|---|---|---|
| 調剤基本料 | 前年5月1日から当年4月末日までの1年の実績(毎年5月に判断) | 当年6月1日から翌年5月末日まで |
| 地域支援・医薬品供給対応体制加算 | 後発医薬品の調剤数量の割合は直近3か月の実績。その他は前年5月1日から当年4月末日までの1年の実績 | 同上 |
| 在宅薬学総合体制加算 | 前年5月1日から当年4月末日までの1年の実績(毎年5月に判断) | 同上 |
出典:同上。継続の場合の取扱い。新規開設の場合は別の基準が定められている。
後発医薬品の使用割合のみ直近3か月で判定される点が他と異なる。供給不安によって使用割合が変動した場合、その影響が比較的短い期間で算定に反映される構造である。
9.2 分譲実績という要件の実務
加算1の要件のうち、他の保険薬局への分譲実績は記録の管理を伴う。分譲を行った際には伝票または医療用医薬品の譲渡書を2年間保存する必要があり、同一開設者の保険薬局への分譲は実績に含まれない。チェーン薬局にとっては、グループ外の薬局との関係構築が要件充足の前提となる。
この要件は、供給不安の局面で薬局間の融通が実際に機能した経験を制度化したものと考えられる。ただし分譲は本来、自局の在庫が過剰である場合か、相手方の急を要する場合に生じる。要件(1)が過度な分譲依存を戒めていることと合わせて読むと、「分譲を受ける側にならず、分譲する側になる」ことが求められている構造が見える。
9.3 観測の時間軸、4段階の整理
制度変更の影響は段階を追って現れる。現時点で確認できる事実と、各段階で観測すべき対象を整理する。推計値ではなく、公表資料で追跡可能な事項に限って記載する。
| 時間軸 | 2026年7月時点で確認できる事実 | 観測すべき対象 |
|---|---|---|
| 即時 (1〜3日) |
から新点数での算定が始まっている。届出期限はからまでであった。疑義解釈資料は時点で第9報まで発出されている。 | 自局が届け出た区分と、実際の算定実績の整合。疑義解釈の追加発出。 |
| 短期 (1〜4週間) |
後発医薬品の使用割合は直近3か月の実績で判定される。時点で後発医薬品調剤体制加算を届け出ていた薬局にはまでの経過措置がある。 | 供給不安による使用割合の変動が、経過措置終了後に算定へ及ぶ可能性。重要供給確保医薬品の指定状況。 |
| 中期 (1〜3か月) |
令和8年度の保険薬局の経営状況等について調査が実施され、賃上げ措置の実績について詳細な把握が行われることが資料に示されている。 | 調査結果の公表と、そこで示される改定の効果。物価対応分の配分が保険薬局で0.01%であったことの影響。 |
| 長期 (3〜12か月) |
以降、調剤ベースアップ評価料と調剤物価対応料は所定点数の100分の200で算定する。服用薬剤調整支援料2の新点数(1,000点)はから適用される。令和9年度も薬価改定が実施される。 | 令和9年度予算編成における更なる調整の有無。資料には、実際の経済・物価の動向が改定時の見通しから大きく変動した場合に加減算を含む調整を行う旨が記されている。 |
各段階の「確認できる事実」は本文中で引用した公表資料に基づく。観測対象は当社編集部による整理であり、将来の状況を予測するものではない。
9.4 モニタリングすべき5指標
| 指標 | 確認先 | 着眼点 |
|---|---|---|
| 後発医薬品の使用割合(自局) | 自局の調剤実績 | 直近3か月で判定される。85%を下回れば加算1の要件を欠く。経過措置はまで。 |
| 重要供給確保医薬品の指定状況 | 厚生労働省 | 内用薬・外用薬は1ヶ月程度の備蓄が求められる。指定品目の増減が備蓄負担に直結する。 |
| 疑義解釈資料の発出 | 厚生労働省 | 時点で第9報。要件の解釈が実務レベルで固まる過程を追う。 |
| 令和9年度予算編成の動向 | 厚生労働省・財務省 | 経済・物価の動向次第で加減算を含む調整が行われ得る。令和9年度の改定率は現時点で+3.77%とされている。 |
| 医薬品の供給課題品目数 | 内閣官房タスクフォース/厚生労働省提出資料 | 供給不安が続けば、備蓄要件と使用割合要件の両立が難度を増す。 |
今回の改定は、後発医薬品の使用割合85%以上を加算の基礎要件としつつ、同時に重要供給確保医薬品の1ヶ月程度の備蓄も求めている。一方で2026年の医薬品供給は、品目によって確保の難度が変動する状況が続いた。使用割合の維持と備蓄の確保を同時に満たすには、調達計画の精度が従来以上に問われる。要件の背後にあるのは、在庫を減らして急配で凌ぐ運用から、計画的に確保する運用への転換である。
CHAPTER 10用語集
CHAPTER 11出典・エビデンス一覧
一次資料(厚生労働省)
- 厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」
- 厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定について【全体概要版】」
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
- 厚生労働省「石油関連製品の供給不足に伴う医療分野の影響・対応について」(時点)
- 一般社団法人日本医薬品卸売業連合会「流通改善についてのアンケート調査」
解説・報道
- 日本医事新報社「2026年度診療報酬改定『本体』3.09%引き上げをどう読むか?」
- 武藤正樹「2026年診療報酬改定と薬価」
- ケアコム「2026年度の診療報酬改定はいつか」
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CHAPTER 12よくある質問
診療報酬本体プラス3.09パーセントは単年度の数字ですか
違う。厚生労働省の改定概要資料には、診療報酬プラス3.09パーセントは令和8年度および令和9年度の2年度平均であり、令和8年度がプラス2.41パーセント、令和9年度がプラス3.77パーセントと明記されている。単年度の数字として扱うと、令和8年度の実際の改定幅を過大に見積もることになる。
薬価はどれだけ引き下げられましたか
薬価はマイナス0.86パーセントで令和8年4月施行、材料価格はマイナス0.01パーセントで令和8年6月施行、合計でマイナス0.87パーセントである。薬価と本体で施行時期が異なる点に留意を要する。薬価改定は2021年度以降、毎年実施されている。
後発医薬品調剤体制加算はなぜ廃止されたのですか
後発医薬品の使用が定着しつつある一方、医薬品の供給不安により追加的な業務が生じている状況を踏まえ、独立した加算としては廃止され、後発医薬品の使用割合は新設された地域支援・医薬品供給対応体制加算の基礎要件に組み込まれた。評価の対象が、後発品の使用割合そのものから、供給不安に対応できる体制へと移された形である。
地域支援・医薬品供給対応体制加算1の要件には何が含まれますか
後発医薬品の使用割合85パーセント以上に加え、医薬品の安定供給に関する8項目が定められている。計画的な調達と在庫管理、他の保険薬局への分譲実績、供給不安時に入手可能な薬局を探す対応、重要供給確保医薬品のうち内用薬と外用薬について1ヶ月程度の備蓄に努めること、原則としての単品単価交渉、卸売販売業者への過度な配送依頼を慎むこと、温度管理を要する医薬品や在庫調整目的の返品を慎むこと、地域の関係者との情報共有である。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか
当社は千葉県我孫子市に本社を置き、プラスチックパレット・再生樹脂材料・PPバンド・ストレッチフィルム等の物流資材を全国に供給する専門商社である。今回の改定には、在庫管理、分譲、配送依頼の頻度、返品の抑制といった物流に関わる要件が多く含まれる。同じ供給網の下流で資材を扱う立場から、制度の内容を一次資料に基づいて整理して提供している。
本記事のご利用にあたっての注意事項
- 本記事の内容は時点で公表されている情報に基づく。厚生労働省の改定概要資料は同省が随時修正する場合があるとされており、算定要件・施設基準等の詳細は正式に発出された告示・通知および疑義解釈資料を確認されたい。
- 本記事に記載した点数・要件は厚生労働省の改定概要資料の記載に基づくものであり、個別の算定可否は各薬局・医療機関の届出内容と実績によって決まる。判断にあたっては管轄の地方厚生局に確認されたい。
- 改定率の内訳および施設類型別の配分は、令和7年12月24日の大臣折衝事項として資料に記載された数値である。今後の経済・物価の動向により、令和9年度予算編成において加減算を含む調整が行われる可能性があることも同資料に示されている。
- 本記事は特定の経営判断、届出区分の選択、投資判断を推奨するものではない。制度の適用は個別の状況によって異なる。
- 引用は各出典の表記に従い、要約にあたっては原資料の趣旨を損なわない範囲で行っている。詳細は各リンク先の原文を参照されたい。