Supply Chain Report / SAUDI ARABIA SABIC QUARTERLY OBSERVATION
サウジの樹脂はなぜ高いのか|値上がりは石油精製3月・化学品4月・成形品2.6%の順に下りてくる
当社はアジア7か国の樹脂を統計で追ってきました。どの国でも「中東から来ない」「値段が上がった」が出てきます。サウジの生産者物価を見ると、石油精製は2026年3月に12.4%、化学品は4月に11.6%上がり、成形品は4か月で2.6%しか上がっていません。売る側の国でも、値上がりは上流から順に下りてきています。
ANSWER
サウジアラビアの生産者物価は、石油精製が2026年3月に1か月で12.4%、化学品が4月に11.6%上がりました。成形品にあたるゴム・樹脂製品は、2月から6月までの4か月で2.6%しか上がっていません。上流ほど早く大きく、下流ほど遅く小さいという順番です。
販売数量(2026年4〜6月・前年同期比)
41%減
前四半期比では33%減。国の統計の輸出重量も33.9%減
平均販売価格(同)
39%高
前四半期比では41%高。国の統計の1トンあたりも36.2%高
成形品の生産者物価(2026年2月→6月)
2.6%高
石油精製は3月に12.4%、化学品は4月に11.6%高
この記事の要点
- 値上がりは上流から順に下りてきます。石油精製の生産者物価は3月に1か月で12.4%、化学品は4月に11.6%上がりました。ゴム・樹脂製品は2月から6月までの4か月で2.6%しか上がっていません。
- SABICの2026年4〜6月の販売数量は前年同期比41%減、平均販売価格は39%高です。前四半期との比較では数量33%減・価格41%高になります。石化だけを見ると数量34%減・価格42%高です。
- 国の統計でも同じことが出ています。2026年4〜6月のサウジの輸出重量は前四半期比33.9%減、輸出額を重量で割った1トンあたりは36.2%高です。SABICの開示(数量33%減・価格41%高)と、出どころの違う数字が同じ幅で動いています。
- 作ってはいました。原油の採掘の生産指数は2026年3月に29.1%落ちましたが、化学品は四半期平均で7.2%減にとどまります。販売数量が33.8%減ったことと差が大きく、出す量のほうがはるかに減っています。
- 会社が原因を書いています。決算説明で「第2四半期は、ホルムズ海峡の閉鎖の継続、エネルギー部門の主要施設における操業活動の混乱、世界的なエネルギー価格の上昇を含む、例外的な操業上の課題を突きつけた」と述べています。
- 物流費が上がっています。財務責任者は「化学品では1単位あたり約40%、農業では約60%の増加を見た」と述べ、内訳に陸送費、船舶燃料調整、世界的な輸送費、戦争リスク割増と保険を挙げています。そのうえで「これらの追加費用は製品価格の上昇で吸収されている」としています。
- 迂回しています。ポリマーの東海岸から西海岸への転送量が前四半期比150%超の増加、ヤンブー港から紅海エクスプレスで初めてポリマーを輸出、ジェッダ・イスラミック港から約6,600本のコンテナを1隻に積みました。尿素の西海岸からの輸出も初めてです。
- それでも赤字です。2026年4〜6月の純損益は8.3億サウジリヤルの赤字、調整後でも3.8億サウジリヤルの赤字です。石化セグメントの調整後営業損益は1.9億サウジリヤルの赤字で、前年同期は17.9億の黒字でした。
- 閉鎖は続いています。2026年7月30日の決算説明で、会社は海峡の「継続的な閉鎖(continued closure)」と述べています。第3四半期の見通しについて経営陣は「時期尚早」とし、「第2四半期の数量を下回らないことを願う」と答えています。
このページは何か
当社はシンガポール・マレーシア・タイ・韓国・台湾・ベトナム・インドネシアの樹脂を、それぞれの国の統計と企業の開示で追ってきた。7本とも同じことが出てくる。「中東から原料が来ない」「値段が上がった」である。
ところが中東側の数字を、当社は一度も開いていなかった。買う側からしか見ていない。本ページはその反対側にあたる。
見るのはSABIC(サウジ基礎産業公社)。サウジ証券取引所に上場しており、四半期ごとに開示がある。2025年の生産量は55.5百万トン、製造拠点は60、操業国は44で、売上の84%はサウジ国外である。親会社はサウジアラムコである。
SABICとサウジアラムコとサウジアラビアという国は、それぞれ別である。第2章はSABIC1社の開示だけを扱う。第3章から第5章では、サウジアラビア統計総局(GASTAT)が公表している国の統計を使う。貿易、鉱工業生産、生産者物価の3つである。1社の話と国の話を、分けて置く。
金額はサウジリヤル(SAR)で、会社は1米ドル=3.75サウジリヤルで換算している。本ページもこれに従う。
この章の結論7本の記事が「上流」として名前を出してきた国を、上流側の開示から見る。
数量が41%減り、価格が39%上がった
会社は販売数量と平均販売価格の増減を、比較の組み合わせごとに公表している。
全社の販売数量と平均販売価格の増減。会社の資料の値で、当社の計算ではない。価格には為替とその他の要因を含むと注記されている。網掛けは前年同期との比較。
| 比較 | 販売数量 | 平均販売価格 |
|---|---|---|
| 2026年1〜3月 対 2025年10〜12月 | -13% | +7% |
| 2026年1〜3月 対 2025年1〜3月 | -9% | -2% |
| 2026年4〜6月 対 2026年1〜3月 | -33% | +41% |
| 2026年4〜6月 対 2025年4〜6月 | -41% | +39% |
| 2026年1〜6月 対 2025年1〜6月 | -25% | +15% |
SABIC(サウジ証券取引所:2010)の2026年4〜6月期・2026年1〜3月期の決算リリースおよび決算説明資料、決算説明の書き起こしを当社が集計した。 決算説明資料による。
いちばん大きいのが2026年4〜6月と前年同期の比較で、数量41%減・価格39%高である。前四半期との比較でも数量33%減・価格41%高になる。
2026年1〜3月までは、まだ落ちていない。前年同期比で数量9%減・価格2%安である。ホルムズ海峡が閉じたのは2026年2月28日で、第1四半期の末にあたる。影響は次の四半期にまとめて出ている。
この数量と価格は会社の資料の値であって、当社が計算したものではない。価格には為替とその他の要因を含むと会社が注記している。純粋な製品価格の変化ではない。
数量と価格を掛けると、売上の変化とほぼ一致する
会社の言う増減が正しいかどうかは、売上高で確かめられる。
数量41%減と価格39%高を掛けると、0.59×1.39=0.820、つまり18.0%減である。実際の売上は302.3億から248.1億サウジリヤルへ17.9%減った。ほぼ一致する。
前四半期との比較でも、0.67×1.41=0.945で5.5%減、実際は5.1%減である。会社の数量と価格の数字は、売上高と整合している。
数量は百万トン、売上は10億サウジリヤル、1トンあたりはサウジリヤル。1トンあたりは売上を数量で割ったもので、当社の計算による。網掛けは最新期。
| 期間 | 石化の数量 | 石化の売上 | 1トンあたり | 農業栄養の数量 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年1〜3月 | 8.20 | 21.76 | 2654 | 1.40 |
| 2026年4〜6月 | 5.43 | 20.47 | 3770 | 0.96 |
SABIC(サウジ証券取引所:2010)の2026年4〜6月期・2026年1〜3月期の決算リリースおよび決算説明資料、決算説明の書き起こしを当社が集計した。 数量は決算リリースと決算説明資料の値である。 2026年1〜3月の全社の販売数量9.6百万トンは決算説明での経営陣の発言による。
もう1つ確かめられる。石化の売上を石化の販売数量で割ると、1トンあたりの金額が出る。2026年1〜3月は2,654サウジリヤル、4〜6月は3,770サウジリヤルで、42.1%の上昇である。会社が石化について公表している価格の上昇率は42%で、当社の計算と一致した。
この章の結論数量41%減・価格39%高は、売上高の17.9%減と整合する。石化の1トンあたり売上を当社が計算すると42.1%増で、会社の言う42%と一致した。
国の統計でも、輸出の重量が33.9%減っている
ここまではSABIC1社の開示である。同じことが国の統計にも出ているかどうかを確かめる。サウジアラビア統計総局(GASTAT)が月ごとに出している財の国際貿易の統計を使う。
この統計には、輸出額(サウジリヤル)と輸出重量(トン)が別々の表で載っている。2つを割れば、1トンあたりの金額が出る。会社の言う「数量」と「価格」に対応するものを、国の統計から作れる。
輸出額は10億サウジリヤル、輸出重量は百万トン、1トンあたりはサウジリヤル。1トンあたりは輸出額を輸出重量で割ったもので、当社の計算による。網掛けは最新期。
| 期間 | 輸出額 | 輸出重量 | 1トンあたり |
|---|---|---|---|
| 2025年1〜3月 | 287.6 | 113.2 | 2,542 |
| 2025年4〜6月 | 274.7 | 118.1 | 2,327 |
| 2025年7〜9月 | 301.6 | 126.0 | 2,393 |
| 2025年10〜12月 | 306.0 | 133.0 | 2,300 |
| 2026年1〜3月 | 317.7 | 118.2 | 2,689 |
| 2026年4〜6月 | 286.0 | 78.1 | 3,661 |
サウジアラビア統計総局(GASTAT)の月報を当社が集計した。輸出額は財の国際貿易月報の表1.1、輸出重量は同の表10による。2026年は原表に暫定値と明記されている。
2026年4〜6月の輸出重量は78.1百万トンで、前四半期の118.2百万トンから33.9%減った。前年同期の118.1百万トンと比べても33.8%減である。
SABICが開示している石化の販売数量は、2026年1〜3月の8.20百万トンから4〜6月の5.43百万トンへ33.8%減っている。会社が公表している前四半期比の数量の減少率は33%である。
1社の33%と、国全体の33.9%が並んだ
一方はSABICが自分で開示した販売数量、もう一方は当社が国の統計の2つの表を割って出した重量である。出どころも作り方も違う数字が、同じ幅で減っている。ただし国全体の輸出重量は原油が大半を占めており、SABICの石化の販売数量とは中身が違う。当社は2つを同じものとして扱っていない。言えるのは、同じ出来事が両方に効いている、ということまでである。
1トンあたりの金額も上がっている。2026年1〜3月の2,689サウジリヤルから4〜6月の3,661サウジリヤルへ36.2%高い。前年同期の2,327サウジリヤルと比べれば57.3%高である。会社が公表している前四半期比の価格の上昇率は41%で、こちらも近い。
重量が3分の1減ったのに、輸出額は10.0%しか減っていない。単価が上がったからである。金額だけを見ていると、この四半期に何が起きたかは見えない。
樹脂の部門だけを取り出す
この統計は品目を21の部に分けている。第7部がプラスチック・ゴム及びその製品、第6部が化学工業生産品である。
単位は10億サウジリヤル。HS第6部(化学工業生産品)と第7部(プラスチック・ゴム及びその製品)の輸出額。網掛けは最新期。
| 期間 | 化学工業生産品 | プラスチック・ゴム |
|---|---|---|
| 2025年1〜3月 | 19.9 | 17.7 |
| 2025年4〜6月 | 20.2 | 17.6 |
| 2026年1〜3月 | 18.1 | 14.8 |
| 2026年4〜6月 | 15.2 | 15.0 |
サウジアラビア統計総局(GASTAT)の月報を当社が集計した。財の国際貿易月報の表2(部門別)による。全輸出ベースである。
第7部の輸出は、2026年1〜6月で29.7十億サウジリヤル、前年同期の35.3十億から15.7%減った。第6部は33.3十億で、前年同期の40.1十億から17.0%減である。
月で見ると落ち方がはっきりする。第6部は2026年2月の6,966百万サウジリヤルから3月の4,774百万へ31.5%落ちた。第7部は同じ月に5,119百万から4,435百万へ13.4%の下落である。化学品のほうが、樹脂よりも先に、大きく落ちている。
SABICの石化の売上は2026年1〜6月で422.3億サウジリヤルであり、第7部の国全体の輸出29.7十億サウジリヤルより大きい。これは矛盾ではない。SABICの売上の84%はサウジ国外であり、44か国で操業している。サウジから輸出されたものだけではない。2つの数字は違うものを数えている。
この章の結論国の統計でも、2026年4〜6月の輸出重量は前四半期比33.9%減、1トンあたりは36.2%高である。SABICの開示(数量33%減・価格41%高)と同じ向きで、幅も近い。
生産は7%しか落ちていない
出せなかったのは分かった。では、作ってもいなかったのか。統計総局の鉱工業生産指数を見ると、答えは「作ってはいた」である。
2021年=100。原油・ガス=原油と天然ガスの採掘(ウエイト61.4)、石油精製=コークスと石油精製品(13.5)、化学品=化学品と化学製品(8.2)。網掛けは2026年3月と4月。
| 月 | 原油・ガス | 石油精製 | 化学品 | 総合 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年7月 | 100.9 | 105.7 | 123.6 | 110.5 |
| 2025年8月 | 105.2 | 109.1 | 125.9 | 113.0 |
| 2025年9月 | 105.8 | 111.7 | 127.0 | 113.7 |
| 2025年10月 | 109.7 | 106.5 | 126.3 | 115.1 |
| 2025年11月 | 106.7 | 97.3 | 128.8 | 111.1 |
| 2025年12月 | 110.6 | 107.5 | 132.4 | 115.0 |
| 2026年1月 | 110.8 | 110.1 | 131.6 | 115.1 |
| 2026年2月 | 107.8 | 106.8 | 126.7 | 112.4 |
| 2026年3月 | 76.4 | 89.0 | 127.4 | 91.0 |
| 2026年4月 | 67.0 | 84.0 | 118.4 | 83.7 |
| 2026年5月 | 72.0 | 93.7 | 118.7 | 88.5 |
| 2026年6月 | 75.6 | 96.6 | 120.7 | 92.3 |
サウジアラビア統計総局(GASTAT)の月報を当社が集計した。鉱工業生産指数月報の2026年6月号の版である。この指数は過去にさかのぼって改定される。第12章を参照。
原油と天然ガスの採掘が、2026年3月に落ちている。2月の107.8から3月の76.4へ29.1%の下落で、4月の67.0が底である。1月の110.8と比べれば39.5%減になる。
石油精製も同じ月に落ちる。2月の106.8から3月の89.0で、4月の84.0が底である。
ところが化学品は3月に落ちていない。2月126.7に対して3月127.4で、ほぼ横ばいである。落ちたのは4月の118.4で、1か月遅れている。しかも下げ幅が小さい。2025年12月の132.4という高い月から数えても10.6%の下落にとどまる。
四半期の平均でみると、化学品は2026年1〜3月の128.6から4〜6月の119.3へ7.2%の下落である。
生産7%減に対して、販売数量は34%減である
SABICの石化の販売数量は同じ2つの四半期のあいだに33.8%減っている。国内の化学品の生産は7.2%しか減っていない。作る量はほとんど変えず、出す量だけが3分の1減った、という形になる。差はどこかに残る。台湾では在庫が32万トンまで積み上がった。売る側の国でも、同じことが起きていた可能性がある。
ただしこの2つは直接引き算できない。SABICの販売数量は44か国で操業する会社の世界全体の販売であり、生産指数はサウジ国内の生産である。当社は在庫が積み上がったことを確認する資料を持っていない。差があるという事実までを書く。
総合指数は3月に112.4から91.0へ19.0%落ちている。ウエイトの61.4を原油と天然ガスの採掘が占めるためで、国全体の生産が2割落ちたと読むのは正しくない。落ちたのは主に原油である。
この章の結論原油の採掘は3月に29.1%落ち、4月が底である。化学品が落ちたのは4月で、四半期平均では7.2%減にとどまる。生産の減り方より、販売数量の減り方のほうがはるかに大きい。
値上がりは上流から1か月ずつ下りてくる
当社の読者がいちばん知りたいのは「自分が買うものはいつ上がるのか」である。サウジの生産者物価指数は、その順番を月単位で見せてくれる。
2023年=100。石油精製=ISIC 19、化学品=ISIC 20、ゴム・樹脂製品=ISIC 22。網掛けは2026年3月と4月。
| 月 | 石油精製 | 化学品 | ゴム・樹脂製品 | 総合 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年7月 | 106.6 | 101.3 | 96.3 | 102.7 |
| 2025年8月 | 106.5 | 102.2 | 96.3 | 102.9 |
| 2025年9月 | 106.7 | 103.5 | 96.0 | 103.2 |
| 2025年10月 | 106.9 | 104.9 | 95.8 | 103.5 |
| 2025年11月 | 106.2 | 103.8 | 95.6 | 103.1 |
| 2025年12月 | 106.5 | 104.0 | 96.2 | 103.5 |
| 2026年1月 | 108.5 | 104.4 | 96.7 | 104.4 |
| 2026年2月 | 108.7 | 104.3 | 96.8 | 104.5 |
| 2026年3月 | 122.2 | 105.6 | 96.9 | 109.0 |
| 2026年4月 | 124.9 | 117.8 | 98.5 | 112.6 |
| 2026年5月 | 117.1 | 118.4 | 99.3 | 110.5 |
| 2026年6月 | 119.1 | 117.3 | 99.3 | 111.2 |
サウジアラビア統計総局(GASTAT)の月報を当社が集計した。生産者物価指数月報の2026年6月号の版である。2026年2月号から6月号までの5版で、重なる152個の値はすべて一致した。
3つの指数を上流から下流に並べてある。石油精製(ISIC 19)、化学品(ISIC 20)、ゴム・樹脂製品(ISIC 22)である。ISIC 22には成形品が入る。パレットはここに属する。
石油精製が3月に跳ねる。2月の108.7から3月の122.2で、1か月で12.4%の上昇である。
化学品が跳ねるのは4月である。3月は105.6で1.2%しか上がっていない。4月に117.8へ11.6%上がる。石油精製のちょうど1か月あとである。
ゴム・樹脂製品はほとんど動かない。2月の96.8から6月の99.3まで、4か月で2.6%である。月ごとの最大の上昇でも1.7%にとどまる。2026年6月の時点でも99.3で、基準年である2023年の水準を下回ったままである。
上流ほど早く大きく、下流ほど遅く小さい
2026年2月から6月までの上昇率は、石油精製が9.6%、化学品が12.5%、ゴム・樹脂製品が2.6%である。同じ4か月で、下流だけが動いていない。成形品の値段は、原料が上がってもすぐには上がらない。逆に言えば、上がる分がまだ残っているということでもある。
これはサウジ国内の生産者物価であり、日本の樹脂製品の価格とは別のものである。当社はこれを日本の値上がりの予測として使っていない。順番と幅の違いが、上流と下流でこれだけ違うという事実を示すために載せている。
この指数は改定されていない。2026年2月号から6月号までの5版で、重なる152個の月次の値がすべて一致した。あとから書き換わっていない指数である。前の章で見た生産指数とは、この点が違う。
この章の結論石油精製は3月に12.4%、化学品は4月に11.6%上がった。1か月ずつずれている。ゴム・樹脂製品は4か月で2.6%しか上がっていない。
会社が原因を書いている
当社が集めてきた資料のうち、値上がりや数量減の理由を書いているものは少ない。タイの工業経済局と、インドネシアのチャンドラ・アスリだけだった。SABICは3例目になる。
The second quarter presented exceptional operational challenges, including the continued closure of the Strait of Hormuz, disruptions in operational activities at key facilities within the energy sector, and higher global energy prices.
SABIC 2026年4〜6月期 決算説明(2026年7月30日)における最高経営責任者の発言
訳すと「第2四半期は、ホルムズ海峡の閉鎖の継続、エネルギー部門の主要施設における操業活動の混乱、世界的なエネルギー価格の上昇を含む、例外的な操業上の課題を突きつけた」となる。
決算説明資料でも、当面の課題として「ホルムズ海峡の閉鎖」「エネルギー部門の主要施設における操業活動の混乱」「世界的なエネルギー価格の上昇」の3つが並べられている。
製品ごとの記述もある。決算リリースは、ポリエチレンについて「中東の供給網の混乱と原料費の上昇を受けて供給が制約され、価格が急上昇した。ただし四半期の終わりに向けて緩んだ。価格の上昇が購買活動を減らし、需要は弱まった」と書いている。ポリプロピレンについても「買い手が高値と入手のしにくさから購入を先送りし、需要は弱まった」としている。
当社の7本の記事と、裏表になっている
台湾では在庫が積み上がり、タイでは出荷が19.2%減り、韓国では稼働率が4月に最低になった。買う側から見た「来ない・高い」が、売る側の開示では「供給が制約され、価格が急上昇し、買い手が購入を先送りした」と書かれている。同じ出来事を反対側から見た記述である。
この章の結論会社が原因をホルムズ海峡の閉鎖と明記している。当社が扱った資料で理由が書かれているのは、タイの当局とインドネシアの企業に次いで3例目である。
物流費は1単位あたり40%増えた
決算説明の質疑で、東から西へ動かす費用がどれだけ増えたかを問われ、財務責任者が数字で答えている。
答えは化学品で1単位あたり約40%の増加、農業向けで約60%の増加である。内訳として挙げられたのは、陸送費、船舶燃料調整、世界的な輸送費、そして戦争リスク割増と保険である。
そのうえで財務責任者は、「これらの追加費用は製品価格の上昇で吸収されている」と述べている。
値上がりの一部は、モノの値段ではない
樹脂の値段が上がったとき、原料が上がったのだと考えたくなる。この開示によれば、上昇分には陸送費・船舶燃料・戦争リスク割増・保険が含まれている。ナフサやエタンの値段だけでは説明できない。当社が日本で受け取る価格にも、この構造が入っている可能性がある。ただし当社は日本向けの内訳を確認できていない。
2026年1〜3月の決算説明でも、最高経営責任者が「物流費と、戦争リスクを賄う保険費用の増加を確認しており、それは価格に反映された」と述べている。第1四半期の時点ですでに始まっていた。
この章の結論物流費は化学品で1単位あたり約40%、農業向けで約60%増えた。戦争リスク割増と保険を含み、会社は価格に転嫁したと述べている。
東から西へ、迂回している
サウジアラビアは東にペルシャ湾、西に紅海を持つ。ホルムズ海峡は東側の出口にある。会社は積み出しを西へ移した。
2026年4〜6月に会社が実施したと公表している供給網の対応。網掛けは数量が示されているもの。
| 施策 | 内容 |
|---|---|
| 東から西への転送 | ポリマーの東海岸から西海岸への転送量を前四半期比150%超の増加 |
| 紅海エクスプレス | ヤンブー港から紅海エクスプレスでポリマー製品を初めて輸出 |
| ジェッダ港 | ジェッダ・イスラミック港から約6,600本のコンテナ。単一船としてSABIC輸出の過去最高 |
| 南アジア向け | 世界最大の液体化学品タンカーで、南アジア向けの過去最大の化学品出荷 |
| 尿素の西海岸出荷 | ヤンブー商業港から尿素を初めて輸出。従来は東海岸のみ |
| ジュベイル | ジュベイルのエチレン網の柔軟性を使って原料の利用を最大化 |
SABIC(サウジ証券取引所:2010)の2026年4〜6月期・2026年1〜3月期の決算リリースおよび決算説明資料、決算説明の書き起こしを当社が集計した。 決算説明資料および決算説明での経営陣の発言による。
最大のものがポリマーの東海岸から西海岸への転送で、前四半期比150%超の増加である。ジュベイルなど東側の工場で作ったものを、陸路で西へ運び、紅海側の港から出している。第4章の陸送費の増加は、これである。
ヤンブー港では紅海エクスプレスという新しい航路で、ポリマー製品を初めて輸出した。ジェッダ・イスラミック港からは約6,600本のコンテナを1隻に積み、会社によれば単一船としてSABIC輸出の過去最高である。
尿素の西海岸からの輸出は、これが初めてである。最高経営責任者は「従来はポリマーを西部地域から出荷していたが、尿素については今回が初めてだ」と述べている。
仕向地の統計にも出ている
会社が「東から西へ移した」と言っていることは、国の貿易統計の仕向地別の表で確かめられる。
単位は百万サウジリヤル。HS第7部(プラスチック・ゴム及びその製品)の非石油輸出。網掛けは中国向けが最低となった2026年4月。
| 月 | 中国 | シンガポール | ベルギー | マレーシア | 日本 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2025年12月 | 941.1 | 249.8 | 120.6 | 142.3 | 2.6 |
| 2026年1月 | 620.8 | 333.1 | 138.9 | 170.1 | 8.7 |
| 2026年2月 | 654.7 | 263.6 | 155.6 | 139.2 | 15.7 |
| 2026年3月 | 323.7 | 312.4 | 140.8 | 16.5 | 0.4 |
| 2026年4月 | 212.7 | 461.8 | 202.3 | 38.6 | 5.8 |
| 2026年5月 | 312.5 | 362.0 | 228.0 | 37.4 | 11.1 |
| 2026年6月 | 680.5 | 593.0 | 266.7 | 101.1 | 6.2 |
サウジアラビア統計総局(GASTAT)の月報を当社が集計した。財の国際貿易月報の表6.1(国別×部門)による。この表は非石油輸出(再輸出を含む)ベースで、全輸出の部門別とは一致しない。
中国向けが2026年2月の654.7百万サウジリヤルから4月の212.7百万へ67.5%減った。マレーシア向けは2月の139.2百万から3月の16.5百万へ88.1%減で、こちらのほうが落ち方は激しい。日本向けは2月の15.7百万から3月の0.4百万まで落ちている。東へ向かう分が消えている。
逆に増えたところがある。ベルギー向けは2月の155.6百万から6月の266.7百万へ71.4%増えた。シンガポール向けは263.6百万から593.0百万へ125.0%増である。
地理で読むと筋が通る
サウジアラビアはペルシャ湾側と紅海側の両方に港を持つ。ホルムズ海峡はペルシャ湾側の出口にあり、閉じれば東アジア向けの航路が止まる。紅海側のヤンブーやジェッダから出せば、ヨーロッパ向けは動く。中国とマレーシアが減り、ベルギーが増えたことは、この地理と向きが合っている。
ただし当社は船の航路を確認していない。統計に出ているのは相手国と金額だけである。地理による説明は当社の解釈であって、統計に書かれていることではない。
シンガポールについては、もう1つの読み方がある。シンガポール向けの化学工業生産品は2026年6月で3.7百万サウジリヤルしかないのに、プラスチック・ゴムは593.0百万ある。比率が極端である。中継地として積み替えられている可能性があるが、当社は確認していない。
あわせて読む 日本のPE仕入れ先シンガポールはなぜ戻らないのか|製油所は7月に回復、石化だけ24年ぶりの低水準 サウジからの積み替え先である可能性があるシンガポールを、同国の統計で見たページ。石化の生産と船舶燃料の価格を月次で追っている。
紅海を通る以上、バブ・アル・マンダブ海峡が次の関門になる。この点を問われた最高経営責任者は「現時点までバブ・アル・マンダブ海峡による出荷への影響は見ていない。状況を注意深く見守っている」と答えている。2つの海峡のどちらかが閉じれば、迂回路も塞がる。
この章の結論東から西への転送が150%超増え、紅海側の港からの輸出が始まった。迂回は成立しているが、費用が乗っている。
それでも赤字である
価格を39%上げ、迂回路を確保しても、損益は赤字である。
単位は10億サウジリヤル。△は赤字。「調整後」は会社が一過性の要因と非継続事業を除いた値である。網掛けは最新期。
| 期間 | 売上 | 調整後EBITDA | 調整後営業損益 | 純損益 | 調整後純損益 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2025年4〜6月 | 30.23 | 5.33 | 2.67 | △4.07 | 1.20 |
| 2026年1〜3月 | 26.15 | 4.15 | 1.45 | 0.01 | 0.82 |
| 2026年4〜6月 | 24.81 | 3.38 | 0.41 | △0.83 | △0.38 |
| 2025年1〜6月 | 59.49 | 9.48 | 4.13 | △5.28 | 2.10 |
| 2026年1〜6月 | 50.96 | 7.53 | 1.85 | △0.82 | 0.43 |
SABIC(サウジ証券取引所:2010)の2026年4〜6月期・2026年1〜3月期の決算リリースおよび決算説明資料、決算説明の書き起こしを当社が集計した。 決算リリースの値である。1米ドル=3.75サウジリヤルは会社が用いる換算率である。
2026年4〜6月の純損益は8.3億サウジリヤルの赤字、調整後でも3.8億サウジリヤルの赤字である。前四半期は0.1億の黒字だった。
ただし前年同期はもっと大きい40.7億サウジリヤルの赤字である。1年前のほうが赤字は大きかった。非継続事業の損失が含まれるためで、継続事業だけを見ると前年同期は4.8億の黒字、2026年4〜6月は0.8億の赤字である。
単位は10億サウジリヤル。石化=Petrochemicals(化学品とポリマー)、農業栄養=Agri-Nutrients(尿素・アンモニア・リン酸)、スペシャリティ=Specialties。網掛けは最新期。
| 期間 | 石化 | 農業栄養 | スペシャリティ | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年4〜6月 | 25.31 | 3.15 | 1.77 | 30.23 |
| 2026年1〜3月 | 21.76 | 2.71 | 1.68 | 26.15 |
| 2026年4〜6月 | 20.47 | 2.40 | 1.94 | 24.81 |
| 2025年1〜6月 | 49.89 | 6.24 | 3.36 | 59.49 |
| 2026年1〜6月 | 42.23 | 5.11 | 3.62 | 50.96 |
SABIC(サウジ証券取引所:2010)の2026年4〜6月期・2026年1〜3月期の決算リリースおよび決算説明資料、決算説明の書き起こしを当社が集計した。 合計は当社が足したもので、5期すべてで連結の売上高と一致した。
売上の8割強は石化である。2026年4〜6月の石化の売上は204.7億サウジリヤルで、前年同期の253.1億から19.1%減った。
単位は10億サウジリヤル。△は赤字。網掛けは最新期。
| 期間 | 石化 | 農業栄養 | スペシャリティ |
|---|---|---|---|
| 2025年4〜6月 | 1.79 | 1.02 | 0.17 |
| 2026年1〜3月 | 0.10 | 1.17 | 0.25 |
| 2026年4〜6月 | △0.19 | 0.49 | 0.22 |
| 2025年1〜6月 | 2.21 | 1.96 | 0.35 |
| 2026年1〜6月 | △0.09 | 1.67 | 0.47 |
SABIC(サウジ証券取引所:2010)の2026年4〜6月期・2026年1〜3月期の決算リリースおよび決算説明資料、決算説明の書き起こしを当社が集計した。 決算リリースの値である。
石化の調整後営業損益は1.9億サウジリヤルの赤字である。前年同期は17.9億の黒字だった。農業栄養とスペシャリティは黒字を保っている。
あわせて読む インドネシアの樹脂の原料はなぜ高いのか|国産に替えても1トン966ドル、日本向けPPは51トンから1,657トンへ 買う側の国で、上場2社の開示と国の統計を並べたページ。最大手の化学部門も3期連続の赤字である。
この章の結論価格を39%上げても、石化の調整後営業損益は1.9億サウジリヤルの赤字である。前年同期は17.9億の黒字だった。
日本から見たサウジ
SABICの数量が減ったことは、日本の貿易統計にも出ている。
日本がサウジアラビアから輸入した数量(トン)と、その増減。単価は金額を数量で割った1トンあたりの円で、増減は当社の計算による。網掛けはLDPE。
| 品目 | 2025年1〜6月 | 2026年1〜6月 | 数量の増減 | 単価の増減 |
|---|---|---|---|---|
| PP | 6,517 | 4,408 | -32.4% | +10.1% |
| PPブロック | 198 | 25 | -87.4% | +4.2% |
| HDPE | 3,491 | 1,547 | -55.7% | +5.5% |
| LDPE | 38 | 153 | +302.6% | +14.7% |
財務省貿易統計にもとづく「樹脂別国別輸入実績」を当社が集計した。
PPは32.4%減、HDPEは55.7%減、PPブロックは87.4%減である。日本のPP輸入に占めるサウジの比率は7.14%から3.80%へ、HDPEは3.47%から1.31%へ下がった。
ただしLDPEだけは4倍になっている。38トンから153トンで、302.6%増である。量そのものは小さいが、向きが逆である。理由を当社は確認できていない。
単価はすべて上がっている。PPが10.1%高、LDPEが14.7%高である。数量が減って単価が上がるという形は、SABICの開示と同じ向きである。
日本の貿易統計は「サウジアラビアから輸入した」という記録であって、SABICから買ったという記録ではない。サウジには他の石化メーカーもある。当社は両者を同じものとして扱っていない。
サウジ側の品目別の統計と並べる
国の貿易統計には、HS6桁の品目別の表がある。2026年6月号にだけ収載されている表で、章ごとの上位3品目を前年同月と比べている。
単位は百万サウジリヤル。非石油輸出の額。高密度=原表の比重0.94以上、低密度=同0.94未満。―は前年同月がゼロのため増減率を出せない。網掛けはエチレングリコール。
| 品目 | 2025年6月 | 2026年6月 | 増減 |
|---|---|---|---|
| ポリプロピレン | 1505.9 | 1327.9 | -11.8% |
| 高密度ポリエチレン | 1271.5 | 1283.9 | +1.0% |
| 低密度ポリエチレン | 1267.7 | 992.7 | -21.7% |
| エチレングリコール | 1054.7 | 271.1 | -74.3% |
| パラキシレン | 0.0 | 260.6 | ― |
| フェノール | 2.4 | 104.8 | +4178.3% |
サウジアラビア統計総局(GASTAT)の月報を当社が集計した。財の国際貿易月報の表11(HS6桁、各章の上位3品目)による。この表は2026年6月号にだけ収載されている。
いちばん大きく減っているのは樹脂ではない。エチレングリコールが74.3%減である。ポリエステルの原料で、作るにはエチレンが要る。ポリプロピレンの11.8%減、低密度ポリエチレンの21.7%減より、はるかに深い。
逆に、前年同月にはほとんど輸出していなかったものが出てきている。パラキシレンは前年同月がゼロで、2026年6月は260.6百万サウジリヤルである。フェノールは2.4百万から104.8百万になった。減った品目の穴を、別の品目が部分的に埋めている。
章の合計でも同じ形になる。上位3品目とその他を足すと、第29章(有機化学品)は2,947百万サウジリヤルから1,114百万へ62.2%減、第39章(プラスチック及びその製品)は5,590百万から4,640百万へ17.0%減である。上流の中間原料のほうが、樹脂そのものより3.7倍深く落ちている。
サウジ全体では低密度PEが減っているのに、日本向けだけ増えている
サウジアラビアの比重0.94未満のポリエチレンの輸出は、2026年6月に前年同月比21.7%減である。ところが日本のサウジからのLDPEの輸入は、2026年1〜6月に302.6%増えている。全体が増えたから日本向けも増えた、という説明は成り立たない。減った量のなかで、日本向けだけが振り向けられている。なぜそうなったかを、当社はまだ確認できていない。
この表は非石油輸出(再輸出を含む)ベースであり、各章の上位3品目とその他の合計である。品目の順位は月によって入れ替わるため、この表だけで系列を作ることはできない。パラキシレンは前年同月がゼロのため、増減率を出せない。
日本は、サウジアラビアの第7部(プラスチック・ゴム)の仕向地としては小さい。2026年1〜6月で47.9百万サウジリヤルであり、中国向けの2,805百万の1.7%にあたる。日本の貿易統計とサウジの貿易統計を金額で突き合わせるには為替レートが要るが、当社はそのレートを持っていないため、突き合わせていない。
ほかの国の統計にも出ている。インドネシアのチャンドラ・アスリは、サウジアラムコ・プロダクト・トレーディングからの仕入が2026年1〜6月に44.9%減ったと開示している。一方でベトナムの税関統計では、サウジアラビアのLPGが2026年3月から現れ、1〜7月で71,554トンになっている。同じ期間にカタールのLPGは5月からゼロである。
「サウジが減った」で片づかない
日本向けの樹脂は減り、インドネシアの石化大手への供給も減っている。しかしベトナム向けのLPGは新しく現れ、日本向けのLDPEは4倍になっている。品目によって、相手によって、向きが違う。当社はこれを1つの理由で説明していない。
あわせて読む ベトナムは樹脂をいくらでどこから買っているのか|1トン1,409ドル、カタールのLPGは5月からゼロ ベトナム税関の月次統計。LPGの相手国の入れ替わりを数量で追っている。
この章の結論日本のサウジからのPPは32.4%減、HDPEは55.7%減。ただしLDPEは302.6%増で、向きが逆である。
閉鎖はいつまでか
当社の読者にとって、いちばん知りたいのはここである。会社の答えは「分からない」である。
まず事実として、2026年7月30日の決算説明で、会社は海峡の「継続的な閉鎖」と述べている。この日の時点で閉鎖は続いている、というのが会社の認識である。
第3四半期の数量について問われた最高経営責任者は、「第3四半期を語るのは時期尚早である。両方の海峡で起きていることを見ている。第2四半期の数量を下回らないことを願う」と答えている。
数量の月ごとの動きについては、「販売数量は四半期が進むにつれて徐々に改善した。今回の事態は第1四半期の末に始まったので、第2四半期に33%程度の影響が出ている」と述べている。
当社が言えるのはここまでである
「いつ戻るか」に答えられる資料を、当社は持っていない。会社自身が時期尚早と言っている。当社が言えるのは、2026年7月30日の時点で閉鎖が続いているという会社の認識と、4〜6月の数量が前年同期比41%減だったという実績までである。
他社の開示とは食い違いがある。インドネシアのチャンドラ・アスリは、2026年3月に宣言したフォースマジュールを5月5日に解除したと開示している。SABICは7月30日に閉鎖の継続と述べている。会社ごとに、原料の確保の状況も、何を「解除」と呼ぶかも違う。当社はどちらが正しいかを判定できない。両方を載せる。
この章の結論2026年7月30日の時点で、会社は閉鎖が続いていると述べている。第3四半期の見通しは会社自身が時期尚早としている。
数字の作り方と、自分で更新する手順
本ページの数字は、公開されている資料から誰でも取れる。四半期ごとに同じ手順で更新できる。
ACTION 1
決算リリースから損益とセグメントを取る
会社の投資家向けページに、四半期の決算リリースがPDFで置かれている。連結とセグメントの表があり、当四半期・前四半期・前年同期・上半期・前年同期の5列で並んでいる。1本で5期ぶんが取れる。金額はサウジリヤル10億単位である。
ACTION 2
決算説明資料から数量と価格の増減を取る
数量と価格の増減は決算リリースになく、決算説明資料にある。全社とセグメントの両方について、前四半期比・前年同期比・上半期比が載る。販売数量そのもの(百万トン)も、この資料のセグメントのページにある。
ACTION 3
書き起こしを読む。ここにしかない数字がある
物流費が1単位あたり何%増えたかは、決算リリースにも説明資料にもない。決算説明の質疑応答にしかない。全社の販売数量も、第1四半期は書き起こしの経営陣の発言でしか出てこない。表だけを見て済ませないこと。
ACTION 4
数量と価格を掛けて、売上と突き合わせる
会社が公表する数量と価格の増減は、掛け合わせれば売上の増減におおよそ一致するはずである。合わなければ、どこかを読み違えている。あわせてセグメントの売上の合計が連結の売上と一致するか、上半期が2つの四半期の合計と一致するかを確かめる。
ACTION 5
統計総局の月報を、版ごとに保存する
サウジアラビア統計総局は、鉱工業生産指数・生産者物価指数・財の国際貿易を月ごとにエクセルで公表している。いずれも過去にさかのぼった系列が1つのシートに入っているので、最新号を1本取れば全期間が取れる。ただし号を上書きしないこと。次のACTIONの理由による。
ACTION 6
版どうしを突き合わせて、改定があるかを確かめる
同じ月の値が、号によって違うことがある。当社が7つの号を突き合わせたところ、鉱工業生産指数は204個の重複値のうち86個(42.2%)が書き換わっていた。生産者物価指数は152個すべてが一致していた。どちらの性質かを知らずに数字を引用すると、あとで合わなくなる。
鉱工業生産指数は、書いてあるより深く改定される
原表には「直近3か月を更新(The latest three months have been updated)」と注記がある。実際にはそれより深い。当社が2025年12月号から2026年6月号までの7つの版を突き合わせたところ、最も古い改定月は2025年7月で、注記の3か月の外にあった。
最大の改定は2026年2月の原油・天然ガスの採掘である。2026年2月号では110.9、3月号から5月号では119.4、6月号では107.8である。11.6ポイント動いている。海峡が閉じた直前の月の生産水準が、版によってこれだけ違う。
したがって本ページの生産指数はすべて2026年6月号の版である。読者が別の号で確かめる場合、数字が合わないことがある。生産者物価指数のほうは、当社が確かめた範囲で改定がない。
当社が実際に行った検算は次のとおりである。セグメントの売上の合計と連結の売上は5期すべてで一致した。上半期と2つの四半期の合計も8項目すべてで一致した(2項目は0.01の丸め差)。数量と価格を掛けた値は、前年同期比で18.0%減となり、実際の17.9%減とほぼ一致した。
もう1つ、当社が独立に計算して会社の数字と一致したものがある。石化の売上を石化の販売数量で割った1トンあたりの金額は、2026年1〜3月の2,654サウジリヤルから4〜6月の3,770サウジリヤルへ42.1%上がる。会社が石化について公表している価格の上昇率は42%である。売上・数量・価格の3つが互いに整合していることの確認になる。
国の統計についても同じことをした。財の国際貿易の表2にある21の部門の合計は、6つの四半期すべてで表1.1の輸出額と一致した。輸出額を輸出重量で割って出した1トンあたりの金額は、2026年4〜6月に前四半期比36.2%高となり、SABICが公表している前四半期比の価格上昇率41%と近い。輸出重量の前四半期比33.9%減は、SABICの石化の販売数量の33.8%減とほぼ同じである。1社の開示と国の統計という、まったく別の出どころが同じ向きと幅を示した。
この章の結論決算リリース・説明資料・書き起こしの3点セットで読む。数量と価格を掛けて売上と突き合わせれば、読み違いは見つかる。
よくある質問
- サウジからの樹脂は本当に減っているのですか
- SABICの2026年4〜6月の販売数量は前年同期比41%減です。日本の貿易統計でも、サウジアラビアからのPPは2025年1〜6月の6,517トンから2026年1〜6月の4,408トンへ32.4%、HDPEは3,491トンから1,547トンへ55.7%減っています。ただしLDPEだけは38トンから153トンへ増えています。品目によって向きが違います。
- 値上がりの理由は原料費ですか
- それだけではありません。財務責任者が、物流費が化学品で1単位あたり約40%、農業向けで約60%増えたと述べています。内訳に陸送費、船舶燃料調整、世界的な輸送費、戦争リスク割増と保険を挙げ、「これらの追加費用は製品価格の上昇で吸収されている」としています。原料費の上昇も同時に述べられていますが、物流の分が乗っていることは会社が認めています。
- ホルムズ海峡はまだ閉じているのですか
- SABICは2026年7月30日の決算説明で「継続的な閉鎖」と述べています。一方でインドネシアのチャンドラ・アスリは、2026年3月に宣言したフォースマジュールを5月5日に解除したと開示しています。会社によって述べていることが違います。当社はどちらが正しいかを判定していません。
- いつ元に戻りますか
- 当社に分かりません。会社の最高経営責任者も「第3四半期を語るのは時期尚早である。両方の海峡で起きていることを見ている。第2四半期の数量を下回らないことを願う」と述べています。答えられる資料を当社は持っていません。
- 迂回できているなら数量は戻るのではないですか
- 会社は「販売数量は四半期が進むにつれて徐々に改善した」と述べています。ただし迂回には費用がかかっており、化学品で1単位あたり約40%です。また紅海を通る以上、バブ・アル・マンダブ海峡が次の関門になります。この点について会社は「現時点まで出荷への影響は見ていない」としています。
- SABICが赤字なら、値上げは続きますか
- 当社は先の価格を予測していません。事実として、2026年4〜6月に価格を前年同期比39%上げても、石化セグメントの調整後営業損益は1.9億サウジリヤルの赤字です。前年同期は17.9億の黒字でした。値上げが損益を黒字に戻すには足りていない、という状態です。
- SABIC1社の話ではなく、サウジ全体はどうなのですか
- サウジアラビア統計総局(GASTAT)の統計を第3章から第5章に載せています。2026年4〜6月の国全体の輸出重量は前四半期比33.9%減、輸出額を輸出重量で割った1トンあたりは36.2%高です。SABICの開示(石化の販売数量33.8%減、価格41%高)と同じ向きで、幅も近くなっています。ただし国全体の輸出重量は原油が大半で、SABICの石化の販売数量とは中身が違います。当社は2つを同じものとして扱っていません。
- サウジは生産を止めたのですか
- 原油と天然ガスの採掘は止まりに近い落ち方をしています。鉱工業生産指数は2026年2月の107.8から3月の76.4へ29.1%落ち、4月の67.0が底です。一方で化学品の生産指数は四半期平均で7.2%しか落ちていません。作る量はほとんど変えず、出す量だけが3分の1減った、という形になります。
- パレットの値段はこれから上がりますか
- 当社は先の価格を予測していません。事実として、サウジの生産者物価指数では、石油精製が2026年3月に1か月で12.4%、化学品が4月に11.6%上がったのに対し、ゴム・樹脂製品は2月から6月までの4か月で2.6%しか上がっていません。上流ほど早く大きく、下流ほど遅く小さい、という順番になっています。これはサウジ国内の生産者物価であり、日本の製品価格とは別のものです。
- SABICとサウジアラムコは同じですか
- 違います。サウジアラムコはSABICの親会社です。本ページが見ているのはSABICの開示だけです。インドネシアのチャンドラ・アスリが仕入を44.9%減らしたと開示している相手は「サウジアラムコ・プロダクト・トレーディング」で、SABICではありません。
- なぜプラスチックパレット株式会社がこの表を公開しているのですか
- 当社は物流資材の商社で、プラスチックパレット、再生樹脂原料、PPバンド、ストレッチフィルムを取り扱っています。樹脂の原料がどこで作られ、なぜ値段が動いたかは当社の仕入れの話です。アジア7か国を追ってきて、どの国でも中東の名前が出てきました。その中東側の資料を読んだものを、そのまま公開しています。
出典・エビデンス一覧
SABIC の開示(当社が原表を直接集計したもの)
- SABIC「2026年4〜6月期 決算リリース」(2026年7月30日)
- 同「2026年4〜6月期 決算説明資料」
- 同「2026年4〜6月期 決算説明の書き起こし」
- 同「2026年1〜3月期 決算リリース・決算説明資料・書き起こし」
- 同「2025年通年 決算リリース・決算説明資料・書き起こし・財務諸表」「2026年1〜3月期・4〜6月期 四半期報告書」
- 同「統合年次報告書2025」
サウジアラビアの国の統計(当社が原表を直接集計したもの)
- サウジアラビア統計総局(GASTAT)「財の国際貿易(International trade in goods)」月報 2025年12月号〜2026年6月号
- 同「鉱工業生産指数(Industrial Production Index)」月報 2025年12月号〜2026年6月号
- 同「生産者物価指数(Producer Price Index)」月報 2025年12月号・2026年2月号〜6月号
日本およびほかの国の統計
- 財務省貿易統計にもとづく「樹脂別国別輸入実績」2025年1〜6月・2026年1〜6月
- PT Chandra Asri Pacific Tbk「2026年1〜6月 連結財務報告」
- ベトナム税関総局の月次統計 2026年1〜7月
当社の関連記事
- 本ページの数値は2026年6月30日を最終時点とし、2026年7月30日に公表された資料による。四半期の財務情報は未監査である。
- 本ページは、SABIC1社の開示(第2章)と、サウジアラビア統計総局の国の統計(第3章から第5章)を、分けて扱っている。2つを足したり引いたりはしていない。
- 国全体の輸出重量は原油が大半を占める。SABICの石化の販売数量とは中身が違う。減り方が近いことは、同じ出来事が両方に効いていることを示すが、2つが同じものであることを意味しない。
- 1トンあたりの輸出額は、当社が輸出額を輸出重量で割ったものである。統計総局が公表した単価ではない。
- 鉱工業生産指数は過去にさかのぼって改定される。本ページの値はすべて2026年6月号の版である。別の号では数字が異なることがある。
- 財の国際貿易の2026年の値は、原表に暫定値と明記されている。
- 国別×部門の表(第8章)は非石油輸出(再輸出を含む)ベースであり、部門別の輸出額(第3章)とは基準が違う。
- ホルムズ海峡と紅海の地理による説明は当社の解釈である。統計には相手国と金額しか書かれていない。当社は船の航路を確認していない。
- SABICとサウジアラムコとサウジアラビアという国は別である。混ぜて読まないこと。
- 販売数量と平均販売価格の増減は会社の資料の値であり、当社が計算したものではない。価格には為替とその他の要因を含むと会社が注記している。
- 物流費の増加率(化学品約40%・農業約60%)は決算説明での財務責任者の口頭の発言である。表として開示された値ではない。
- 1トンあたり売上は当社が売上を数量で割ったものである。会社が公表した単価ではない。
- 日本の貿易統計は「サウジアラビアから輸入した」という記録であって、SABICから買ったという記録ではない。サウジには他の石化メーカーもある。
- ホルムズ海峡の状態について、SABICは2026年7月30日に閉鎖の継続と述べ、インドネシアのチャンドラ・アスリは2026年5月5日にフォースマジュールの解除を公表している。当社はどちらが正しいかを判定していない。
- 第3四半期以降の数量と価格について、当社は予測していない。会社自身が時期尚早としている。
- 本稿は情報提供を目的としたもので、特定の判断を推奨するものではありません。