2026年ナフサショック転換点、米イラン覚書合意で原油-5%急落、6月19日ジュネーブ署名と60日交渉の全貌【2026年6月版】
米イランは2026年6月14-15日、約1ページ半の了解覚書(MOU)で合意。6月19日ジュネーブ署名、ホルムズ海峡再開、米海軍封鎖解除を骨子としながら、440kgの濃縮ウラン在庫など中核論点は60日間の追加交渉に先送り。原油・ナフサ相場は急落したものの、機雷除去40-50日、戦争危険保険料は戦前の数倍、製造業調達現場では「様子見」が広がる。これは「収束」ではなく「ピーク越えの転換点」だ。
2026年6月14-15日、米イランが約1ページ半の覚書(MOU)で合意。6月19日ジュネーブ署名でホルムズ海峡再開・米海軍封鎖解除へ。Brent原油-3.9%、WTI-4.8%と3ヶ月ぶり安値。だが440kg濃縮ウラン在庫は60日交渉に先送り、機雷除去40-50日。ナフサショックは「収束」ではなく、現時点ではピーク越えに見える「転換点」と捉えるのが正確だ。
1. 何が合意されたのか:1.5ページのMOU「イスラマバード宣言」の実態
2026年6月14日(日)夜、トランプ大統領がTruth Socialで「米イランの合意は完了した」と宣言、6月15日(月)にはイラン最高国家安全保障会議も「両国がMOUを最終合意した」と発表した。同日、トランプ大統領はフランス・エビアン・レ・バンで開催されるG7サミットに向けて出発しており、世界主要国首脳が一堂に会する場の直前に合意を演出する形となった。世界経済への影響規模を考えれば、G7開催と重なるタイミング自体が「市場心理に最大の衝撃を与える設計」だった可能性が高い。
仲介はパキスタンとオマーン、合意の通称は「イスラマバード宣言(Islamabad Declaration)」。正式署名は6月19日(金)スイス・ジュネーブで予定されている。
ところが、Vance副大統領自身がCNNジェイク・タッパー氏のインタビューで明かした覚書の実態は衝撃的だ。「MOUは約1ページ半。非常に一般的な文書だ」「多くの論点は今後の技術交渉フェーズで詰める必要がある」。つまり、3か月超の戦争を終わらせる「歴史的合意」の中身は、わずか1ページ半の枠組み文書にすぎない。
確定している主な合意事項
| 項目 | 合意内容 | 実施時期 |
|---|---|---|
| 停戦延長 | 既存停戦(4月7-8日成立)を60日間延長 | 署名時から発効 |
| ホルムズ海峡再開 | 通行料無料での再開、機雷除去を米軍主導で実施 | 署名後30日以内目標 |
| 米海軍封鎖解除 | 2026年4月13日開始の対イラン港湾封鎖を解除 | 正式署名時 |
| レバノン情勢 | 関連敵対行為(対ヒズボラ含む)の終結 | 即時 |
| 核兵器 | イランが「核兵器を保有しない」と再確認 | 署名時 |
60日交渉に先送りされた論点
つまりMOUは「戦争を終わらせる枠組み」であって、「地政学リスクを根絶する合意」ではない。中核論点はすべて60日間の追加交渉に委ねられた。
追加交渉に委ねられた中核論点(60日間)
① 440kgの60%濃縮ウラン在庫の処分(兵器級まで残り数%)
② 濃縮活動の制限・凍結・廃止
③ 制裁解除のタイミングと順序
④ 最大250億ドルの凍結資産の解放
⑤ 弾道ミサイル開発の制限
⑥ イラン支援武装組織(フーシ派・ヒズボラ等)への支援停止
⑦ IAEA査察体制の再構築
「正式署名まで実施を開始しない」というイラン側の慎重姿勢
注目すべきは、イラン副外相カゼム・ガリババディが国営テレビで合意を確認しながらも、「テヘランは6月19日の正式署名まで実施を開始しない」と明言した点だ。つまり機雷除去も、ホルムズ海峡再開も、米海軍封鎖解除も、19日署名後に初めて動き始める。「合意成立」という大文字の見出しと、実際の物理的変化のタイムラインには明確なギャップがある。
2. 米イラン間の「認識のズレ」とイスラエル国内の不協和音
本来であれば合意発表で安堵が広がるはずだが、市場と政界の反応は「慎重論」が支配的だ。理由は単純で、米イラン双方が「異なる中身」を語っているからである。
サウスカロライナ州のリンゼー・グラム上院議員はXで「イラン側の説明とトランプ政権側の説明が一致していないことに、やや懸念」と表明。さらに「議会はこのような合意に投票しなければならない」と釘を刺した。
イラン副外相カゼム・ガリババディは国営テレビで合意を確認しつつ、「テヘランは6月19日の正式署名まで実施を開始しない」と慎重姿勢を強調(前章参照)。Bloomberg報道版の草案ではイラン復興のため最低3,000億ドルの開発プログラム創設に米国と地域パートナーが関与する条項が含まれるが、米側公式説明には登場しない。ロイター報道版では250億ドルの凍結資産解放が言及されるが、Bloomberg版にはこの規定なし。「合意の中身」自体に複数バージョンが存在している。
イスラエルの「深い失望」と政権内紛
もう一つの重要なリスク要因が、イスラエル国内の動向だ。ネタニヤフ首相は6月15日の記者会見で「イスラエルは合意当事者ではない」と距離を置きつつ、「現状の合意は深い失望」と表明した。さらにトランプ大統領は「イスラエルの対ベイルート攻撃は本来起きるべきでなかった」とSNSで公然と批判。米イスラエル間の同盟関係にもひびが入りつつある。
イスラエル国内では「2023年10月7日にネタニヤフはイスラエル市民の安全を守れないと判明し、2026年6月15日には外交キャンペーンも遂行できないと判明した。退陣の時だ」(野党幹部発言・NPR報道)という強い政権批判も登場。Mark Levin(Fox News司会者)など対イラン強硬派の保守派論客もMOUの内容公開を要求している。イスラエルが対ヒズボラ攻撃を継続すれば、MOUの履行プロセス自体が崩れるリスクがある。これが第6章で扱う「再エスカレートシナリオ」の主要トリガーである。
知っておきたい用語:MOU(Memorandum of Understanding)
「了解覚書」と訳される、法的拘束力が条約より弱い文書。意図と原則を共有するために用いられ、具体的な義務・履行・違反時の措置は別途協定で定める必要がある。今回のように「1ページ半」しかない場合、その後の技術交渉で詰める論点が膨大に残る。歴史的に米イラン関係でMOU合意が後続交渉でほぐれた前例は乏しく、楽観視は禁物である。なお、ナフサショックの構造的背景については総論記事「2026年ナフサショックの全体像と日本への影響|4月15日時点の総論」で詳しく整理している。
3. 原油・ナフサ相場の即時反応:「センチメント主導」の3ヶ月ぶり安値
6月15日(月)の市場は、合意発表を受けて全エネルギー商品が急落した。
| 商品・指標 | 6/15終値 | 変動率 | 到達水準 |
|---|---|---|---|
| Brent原油(北海ブレント) | 83.17ドル/バレル | -3.9%(場中-5%) | 3ヶ月ぶり安値(3月初旬以来) |
| WTI原油 | 80.75ドル/バレル | -4.8%(場中-5.5%) | 同3月初旬以来 |
| Brent先物2027年2月限 | 約80ドル/バレル | 横ばい維持 | 市場の慎重姿勢を示唆 |
| 主要株価指数 | 上昇 | +1〜2%台 | リスクオン回帰 |
| 米国債利回り | 低下 | ‐ | 安全資産需要は依然根強い |
しかし、この「3ヶ月ぶり安値」を「相場の本格反転」と読むのは早計だ。investingLiveの分析は核心を突いている。「原油市場は供給正常化のかなり前に『安堵』を織り込んでいる」「アナリスト予測のうち最も楽観的なケースでも、初月の海峡通過エネルギー量は戦前水準の半分を超えない」「完全回復は2026年後半以降にずれ込む」。
NBCニュースの取材に応じたSoc Gen ジャクス氏は「原油価格は年初水準まで3分の2戻ってきたが、市場は戦前水準への回復には長い時間がかかると示唆している」と指摘。Brent先物2027年2月限が80ドル前後を維持している事実が、市場の本音だ。
4. ホルムズ海峡の「物理的再開」は政治宣言の何倍も時間がかかる
ここが今回のニュースで最も誤解されやすいポイントだ。トランプ大統領は「ホルムズ海峡の通行料無料での開放を承認した」「船舶よ、エンジンを始動せよ」と高らかに宣言したが、政治的開放と物理的航行可能性は別物である。
機雷除去という最大のボトルネック
西側海事関係者5社の見立て:「従来型掃海艇と最新水中ドローンによる機雷除去作業は40-50日続く」「これにより保険会社・船社・石油会社が安心して海峡通過できるようになる」。一方Pentagon見解は「米国は機雷除去に最大6ヶ月かかると見ている」(Al Jazeera)。スーパータンカー1隻と原油の価値は約3億ドル。「機雷1個あれば致命傷」(V.Group CEO レネ・コフォッド=オルセン氏)の世界では、わずかなリスクも見過ごせない。
立ち往生600隻の「滞留解消」は一度きり
Kpler集計:戦前のホルムズ海峡通過量は1日約100隻、世界の原油の約20%、LNGの相当量がここを通っていた。107日間の事実上封鎖で立ち往生した船舶は約600隻、うち250隻が原油・LNGタンカー。安全航路確立後15日以内に118隻が湾外へ出る見通しだが、これは「一度きりの滞留解消イベント」であり、定常的な貿易流量の回復を意味しない。初月の通過量は1日40隻程度(戦前の40%)にとどまる公算が大きい。
戦争危険保険料の「上がりやすく下がりにくい」性質
investingLiveの引用する保険関係者の言葉が現場感覚を端的に表す。「戦争危険保険料は上がるのは早く、下がるのは遅い」。実際、独Hapag-Lloydは4隻、世界最大級の船舶管理会社V.Groupは13隻が湾内に立ち往生。BIMCO(バルティック国際海運評議会)は6月15日時点でも「海峡通過は依然として極めてリスキー」と警鐘を鳴らし続けている。マースクは「合意を歓迎するが影響評価には時期尚早。中東オペレーションに変更は加えない」。
「最初の1隻」はインドのLNGタンカー
6月15日時点で実際にホルムズ海峡を通過した商船は、インドPetronet社のLNG船「Disha」のみ。3月1-2日にカタール・ラスラファンで積み込み、海峡西側で待機していたこの船は、6月18日にインド・Dahej港到着予定とされる。3か月以上前に積んだLNGが、ようやく届く。これがホルムズ海峡再開「初日」のリアルだ。なお、戦争期間中に発生した中東の製油所・淡水化プラントの物理的被害については「イラン情勢で進行する製油所・淡水化プラントの物理的被害」で詳述している。中東サプライチェーンが戦前水準へ回復するには、和平合意の進捗とは別軸で「設備被害の復旧」が必要であり、これも完全正常化に時間を要する大きな理由である。
5. ナフサ価格と日本の調達現場:「需要破壊」局面の様子見
日本のナフサ需給は、和平合意以前から既に異常な状態にあった。これを正確に理解することが、6月以降の調達戦略の前提となる。
これまでのナフサ価格推移
| 時期 | 国産ナフサ基準価格 | 変動倍率 | 市況メモ |
|---|---|---|---|
| 2025年10-12月期 | 65,700円/kl | 基準値 | 戦前の通常水準 |
| 2026年1-3月期 | ほぼ横ばい | 1.0倍 | 戦争前のため値動き軽微(日経) |
| 2026年4月 | 101,000円台/kl | 約1.5倍 | 戦争・封鎖で急騰(新電力ネット・財務省貿易統計) |
| 2026年4月3日スポット | 約13.4万円/kl(1,190ドル/トン) | 約2倍 | 戦中ピーク(logistics-today) |
| 2026年5月末-6月 | 国際価格-26% | 需要破壊 | 需要消失による下落(供給回復ではない) |
日本のナフサ調達構造は脆弱だ。原油輸入の9割以上を中東に依存、ナフサは国内需要の約6割が輸入、その7割以上が中東産。さらに国産ナフサの民間在庫は平時で約20日分と桁違いに薄い(原油備蓄は官民合わせ約248日分)。戦中の4月以降、資源エネルギー庁(ANRE)は約580万kL(5.8M kL)の国家備蓄原油放出を実施しており、政府の手元に残る「いざという時の備蓄カード」は徐々に薄まっている。今回の和平合意で備蓄放出ペースは緩和される見込みだが、再エスカレートシナリオが顕在化した場合、政府が新たに振れる手札は限定的になっている点は留意すべき。
「引き合いがピタッと止まる」現象の実態
調達担当者・物流業者から寄せられている観測:「6月15日以降、引き合いが急激に減った」。これは合理的に説明がつく現象であり、市場メカニズムとして次の3段階で進行している。
| 段階 | 買い手側の心理 | 具体的行動 |
|---|---|---|
| 第1段:先安期待 | 「これから原材料価格が下がるかもしれない」 | 調達タイミングを後ろに倒す |
| 第2段:様子見 | 「今あわてて高い在庫を抱えたくない」 | 新規発注を停止、見積依頼のみ継続 |
| 第3段:JIT回帰 | 「地政学リスクは沈静化、早め確保は不要」 | 在庫水準を平時並みへ巻き戻し |
これまで地政学リスクに備えて「早め早めの確保」に動いていた企業が、胸をなでおろして通常発注、あるいは在庫抑制(ジャストインタイム方向への揺り戻し)に舵を切り始めている。市場全体がこの動きに同調するため、一時的に「エアポケット」と呼ぶべき需要消失現象が起きる。引き合いが止まるのは個社の営業力の問題ではなく、マクロ経済の巨大な潮目が変わる瞬間の現象である。
需要破壊と様子見の違いに注意
5月末から6月にかけてのナフサ国際価格-26%は「需要破壊(demand destruction)」によるもの。価格が高すぎて買えない・買い控える人が増え、需要そのものが消えた現象だ。今回の和平合意を受けた「様子見」は、これに連鎖して相場が下がりきるまで待つ動きで、性格が異なる。需要破壊は中長期の構造変化、様子見は短期の市場心理。両者が重なっている現在は、相場の値動きが極めて読みにくくなっている。需要破壊メカニズムについては「ナフサの「目詰まり」を一般向けにわかりやすく解説、イラン情勢でスーパーの値上げが続く本当の理由」で平易に整理している。
6. 6月19日以降の3シナリオ
今後の展開を、3つのシナリオで整理する。なお、世界最大の予測市場Polymarketでは「US x Iran permanent peace deal(米イラン恒久和平合意)」の市場が6月15日時点で約3億4,450万ドル規模の取引を集め、「恒久和平合意成立」確率は23.8%にとどまっている。MOUのような暫定枠組みは「恒久和平」の定義に含まれないため、この水準は「本格的和平までの道のりは依然遠い」という市場参加者の本音を示している。下記は当社見立てのシナリオだが、Polymarket市場の慎重姿勢と方向性は整合する。
① 順調履行シナリオ
確度:低〜中6月19日の正式署名が予定通り行われ、機雷除去も計画通り進む。60日交渉でも核問題に一定の進展がある。
相場影響:Brent 70ドル台前半まで段階的下落。ナフサも4-6月期の半値水準へ回帰。
② 膠着シナリオ(メイン)
確度:高署名はされるが、60日交渉が難航。核問題で米イランの認識ズレが表面化、9月以降の延長交渉へ。Polymarket恒久和平確率23.8%とも整合。
相場影響:Brent 80ドル台前半でレンジ推移。ナフサは高止まりも、ピーク越え。
③ 再エスカレートシナリオ
確度:中(要警戒)イスラエルが対ヒズボラ攻撃を継続、または60日交渉決裂でMOU失効。海峡封鎖再発も否定できない。
相場影響:Brent 100ドル超へ急反発。ナフサも4月ピーク水準を再試行。
調達戦略としては、②をメインシナリオに、①と③のリスクをヘッジする両建てが現実的だ。具体的には、既存契約の値決め条項(フォーミュラ・タイムラグ)の再点検、サプライヤー別の値下げ交渉余地の整理、在庫の積み増しではなく適正水準への調整、代替素材・国内品への切替コスト試算、を並行して進めるのが賢明である。
7. プラスチック・梱包資材の今後の見通し
プラスチック原料市況は、ナフサ価格に1〜3か月のタイムラグで連動する。4月のナフサ急騰局面では、PP・PE・PS等の汎用樹脂で15-30%の値上げが断続的に発表された。今回の和平合意がメインシナリオ通り「膠着」に着地した場合の見通しを整理する。
| 品目 | 4-6月の値動き | 7-9月の見通し(膠着シナリオ) |
|---|---|---|
| ポリプロピレン(PP) | +20〜30% | 横ばい〜微減(-5〜0%) |
| ポリエチレン(PE) | +18〜25% | 横ばい〜微減(-5〜0%) |
| PPバンド | +15〜22% | 横ばい〜微減 |
| ストレッチフィルム | +18〜25% | 横ばい〜微減 |
| 再生樹脂ペレット | +12〜18% | 横ばい(新材リバウンドは限定的) |
| プラスチックパレット(バージン) | +10〜18% | 横ばい |
※7-9月の見通しはプラスチックパレット株式会社の独自見立てであり、確定値ではない。市況・地政学情勢の変化により上振れ・下振れの両方の可能性がある。
重要なのは、「値下げ」ではなく「値上げ停止」が現実的という点だ。原材料費・電力費・人件費・物流費は依然高水準で、メーカー側の値下げ余地は限定的。「ピーク越え」を「値下げ局面」と読み違えると、必要在庫の確保タイミングを逃すリスクがある。
賢明な調達戦略:今週は「無理に仕掛けない」
6月19日の正式署名と、その後のナフサ国際価格・国産ナフサ価格の動向を注視する週です。今あわてて高値で発注するのも、逆に発注を完全に止めて在庫枯渇リスクを抱えるのも、どちらも得策ではありません。適正在庫水準の見極めと、代替品・代替ルートの事前リサーチに時間を投じるのが、転換点の正しい使い方です。プラスチックパレット株式会社では、ロット数・納入先をお知らせいただければ、最短で最新市況を反映したお見積りを提示いたします。
8. よくある質問(FAQ)
米イランMOUで「ナフサショック」は終わりますか?
結論から言えば、終わっていません。MOUは「1ページ半」の枠組み文書で(Vance副大統領発言)、6月19日ジュネーブ署名後も60日間の追加交渉が続きます。440kgの60%濃縮ウラン在庫の扱い、制裁解除、凍結資産解放など中核論点は先送り。さらに物理面でも機雷除去に40-50日(Pentagonは最大6ヶ月)、戦争危険保険料は依然戦前の数倍が必要で、ホルムズ海峡通過量は初月で戦前の40%程度(1日40隻、戦前100隻)にとどまる見通しです。ピーク越えの「転換点」と捉えるのが正確です。
ナフサ価格はこのまま下がり続けますか?
6月15日にBrent原油-3.9%、WTI原油-4.8%と3ヶ月ぶり安値を付け、ナフサにも下落圧力がかかっています。ただし、ブレント先物2027年2月限は80ドル前後を維持しており、市場は「戦前水準への供給回復には長い時間がかかる」と慎重姿勢です。さらに5月末から6月にかけてのナフサ国際価格約26%下落は、供給回復ではなく「需要破壊」によるもの。買い手側の様子見が広がる中、相場は神経質な値動きが続く可能性が高く、「下がりきった」と判断するのは時期尚早です。
なぜ製造業の現場で「引き合いがピタッと止まる」現象が起きているのですか?
「これから原材料価格が下がるかもしれない」と判断した買い手は、今あわてて高い在庫を抱えるのを嫌います。調達タイミングを後ろに倒し、相場が下がりきるのを見極めようとするため、一時的に市場全体の引き合いが止まる現象が起きやすい局面です。これまで地政学リスクに備えて「早め早めの確保」に動いていた企業が、通常発注やJIT(ジャストインタイム)方向への揺り戻しに舵を切り始めています。歴史的な大転換を前に、調達担当者が指をくわえて様子を見ている「エアポケット」状態と言えます。
ホルムズ海峡はいつから普通に船が通れるようになりますか?
6月19日ジュネーブ署名後、機雷除去作業が本格化します。西側海事関係者5社の見解では機雷除去に40-50日、Pentagonは最大6ヶ月の見通しを示しています。戦前の通過量1日約100隻に対し、初月は1日40隻程度(Kpler予測)。Hapag-Lloyd 4隻、V.Group 13隻など立ち往生600隻(うちタンカー250隻)が順次出航しますが、これは一度きりの「滞留解消」であり、定常運航の回復ではありません。完全正常化は2026年後半以降にずれ込む公算が大きい状況です。
プラスチック・梱包資材の調達担当として、いま何をすべきですか?
今週は「無理に仕掛けない」のが定石です。6月19日の正式署名と、その後のナフサ国際価格・国産ナフサ価格の動向を注視しましょう。並行して、①既存契約の値決め条項(フォーミュラ・タイムラグ)の再確認、②サプライヤーごとの値下げ交渉余地の整理、③在庫の積み増しではなく「適正水準」への調整、④代替素材・国内品への切替コストの試算、を進めるのが賢明です。逆に交渉がもつれて再エスカレートする可能性もゼロではないため、リスク両建てで準備するのが現実的な判断と言えます。
主な情報源
- CNN「June 15, 2026 — Trump and Vance virtually sign US-Iran agreement」https://edition.cnn.com/2026/06/15/world/live-news/iran-war-g7-summit
- CNN Business「Oil prices hit three-month lows on US-Iran agreement」https://www.cnn.com/2026/06/14/business/oil-prices-iran-peace-agreement
- NPR「U.S. and Iran announce an initial deal to end the war and reopen the Strait of Hormuz」https://www.npr.org/2026/06/15/nx-s1-5858590/us-iran-deal-updates
- NBC News「Oil prices fall on Iran peace deal, but may not go much lower」https://www.nbcnews.com/business/markets/oil-prices-iran-deal-hormuz-doubts-rcna350087
- CNBC「U.S.-Iran deal explained: What we know — and what remains unresolved」https://www.cnbc.com/2026/06/15/us-iran-deal-hormuz-markets.html
- Reuters / Insurance Journal「Scouring the Strait of Hormuz for Mines Could Take Weeks」https://www.insurancejournal.com/news/international/2026/06/15/873726.htm
- investingLive「Hormuz reopening road map: mines, insurance and stranded ships slow the path for oil flow」https://investinglive.com/commodities/hormuz-reopening-road-map-mines-insurance-and-stranded-ships-slow-the-path-for-oil-flow-20260615/
- The National「Shipping companies welcome Strait of Hormuz reopening, so long as safety is guaranteed」https://www.thenationalnews.com/business/economy/2026/06/15/hormuz-shipping-recovery-reckons-with-mine-risks-despite-us-iran-deal/
- Arms Control Association「The U.S.-Iran MOU Is a Welcome Step」https://www.armscontrol.org/blog/2026-06-15/us-iran-mou-welcome-step-now-negotiators-must-focus-practical-nuclear
- Fortune「Iran pushes differing versions of deal as U.S. sticks to timeline」https://fortune.com/2026/06/14/iran-ceasefire-terms-mou-versions-us-deal-sanctions-hormuz-blockade-nuclear-program-frozen-assets/
- Tech Times「Strait of Hormuz Reopens: US-Iran Deal Ends 107-Day Blockade but Mines Remain」https://www.techtimes.com/articles/318410/20260615/strait-hormuz-reopens-us-iran-deal-ends-107-day-blockade-mines-remain.htm
- Claims Journal「Global Shippers Cautious on Hormuz Transit Despite US-Iran Deal」https://www.claimsjournal.com/news/national/2026/06/15/338194.htm
- 日本経済新聞「国産ナフサ価格、1〜3月ほぼ横ばい 中東危機で4〜6月は2倍弱上昇へ」https://www.nikkei.com/nkd/industry/article/
- 新電力ネット「ナフサの価格推移(通関統計)」https://pps-net.org/lsc_naphtha_a
- 新電力ネット「ナフサ不足がもたらす産業・エネルギーへの影響【第1回】」https://pps-net.org/column/160640
- Polymarket「US x Iran permanent peace deal by...?」(6月15日時点 取引額3.45億ドル、Yes確率23.8%)https://polymarket.com/event/us-x-iran-permanent-peace-deal-by
- Fox News Digital「Trump touts peace agreement with Iran as Israeli leaders criticize deal」(ネタニヤフ首相会見・トランプ批判)https://www.foxnews.com/live-news/us-iran-peace-agreement-trump-israel-june-15
- NewsNation「Peace deal reached between US and Iran, Strait of Hormuz reopening」https://www.newsnationnow.com/world/us-iran-peace-deal-final-text-agreed-upon/
- logistics-today「ナフサスポット価格1190ドル/トン到達」(2026年4月3日)https://www.logi-today.com/