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【2026年7月3日更新】国内化学メーカー値上げ動静|国内外樹脂価格比較で読む反転局面
2026年7月3日 国内外樹脂価格比較・反転局面更新

【2026年7月3日更新】国内化学メーカー値上げ動静
国内外樹脂価格比較で読む反転局面

📅 初稿: /最終更新: 🏷 国内外樹脂価格比較 / 改定幅修正条項 / 国内波及
【結論】

2026年3月「キロ90円」→5月末「累計165円/kg」の国内値上げは、6月からナフサ急落局面に反転6/25 $627/t)。ただし日本LLDPE Q1平均$1,468/MTに対し中東$924・東南アジア$970・北米$860と国内は依然中東比+58%の高値圏。「改定幅修正条項」下方発動「国産→輸入」シフト加速の二軸で秋以降の構造再編が焦点に。

第1章:国内主要メーカーによる「2026年3月〜5月」価格改定の完全マッピング(7月3日時点の総括)

2026年3月17日から5月18日にかけて、国内石油化学大手各社が発表した改定内容は、過去のオイルショック時を凌ぐ異例の規模となりました。3月24日時点の「キロ90円値上げ」は、わずか2ヶ月後の5月後半に累計90〜165円/kg規模へと拡大しました。以下は7月3日時点でも撤回されていない「実施済み値上げ」の一覧です。

1-1. バージン樹脂(PP・PE)の値上げ推移(3月発表分と5月追加分)

メーカー 対象製品 3月発表 5月追加 累計改定幅
プライムポリマー 追加 HDPE / LLDPE / PP全品目 +90円以上/kg(4/1〜) +30円以上/kg(5/1〜) +120円以上/kg
日本ポリエチレン 5/18 PE全製品 +90円以上/kg(4/1〜) 追加改定(5/25〜) +90〜165円/kg規模
日本ポリプロ 5/18 PP全製品 +80円以上/kg(4/1〜) 追加改定(5/25〜) +80〜155円/kg規模
旭化成 3月 PE全製品(サンテック等) +120円以上/kg(4/1〜) +120円以上/kg(3割超)
東ソー 3月 PE樹脂全製品 +90円以上/kg(4/1〜) +90円以上/kg
信越化学工業 3月 塩ビ樹脂 先行発表(3/16〜) 業界の値上げ先陣
カネカ 3月 塩ビ・発泡ポリオレフィン他8製品群 塩ビ+35円/kg、発泡PO+150円/kg(4/1〜) 製品群別

1-2. エラストマー・関連樹脂・断熱材の値上げ

メーカー 対象製品 改定幅 実施時期
ダウ・ケミカル日本 ポリオレフィンエラストマー(ENGAGE等) +25円以上/kg 2026年4月1日納入分〜
三菱ケミカル 酢酸ビニルモノマー(VAM) +40円以上/kg 2026年3月18日出荷分〜
東レ 4月 ナイロン6/66/ポリエステル/アクリル短繊維 +20〜110円以上/kg 2026年4月出荷分〜
東レ(サーチャージ制) 3/27導入 樹脂・炭素繊維・衣料向け繊維 最短1カ月で価格に反映 2026年3月27日〜稼働中
旭化成建材 5/7 断熱材「ネオマフォーム」等 概ね+20%特別調整金 2026年5月7日出荷分〜
住友化学TPC FM ポリオレフィン(シンガポール) フォースマジュール宣言 2026年3月9日〜継続中

日本ポリエチレン・日本ポリプロは5/18プレスリリースの末尾に、いずれも「想定した国産ナフサ価格が大きく変動する場合は、改定幅の修正をお願いさせていただきます」と明記しました。この修正条項が7月時点でどう機能しうるかは、第3章で詳しく解説します。

第2章:値上げを引き起こした「4つの構造的要因」と、7月時点の変化

3〜5月に値上げを引き起こした4つの構造的要因(①ホルムズ封鎖、②物流コスト激増、③円安、④商慣習崩壊)は、7月時点で以下のように変化しています。①・②は明確に緩和、③・④は継続。この非対称性が「上流は下落・国内は下方修正が遅い」構造を生み出しています。

2-1. ホルムズ海峡・ナフサ供給の回復基調(緩和)とエチレン稼働率の悪化継続

2026年2月28日のホルムズ海峡実質封鎖後、日本のナフサ調達は中東ルート(輸入の約70-82%)依存の脆弱性が露呈。石化協が5月21日に発表した4月のエチレン設備稼働率は67.3%(3月68.6%からさらに悪化し過去最低水準を更新)。国内12基のエチレン生産設備のうちフル稼働はわずか3基という異常事態が継続しています。減産設備は①三菱ケミカルG鹿島、②AMEC水島(旭化成・三菱ケミカル共同運営)、③三井化学市原市と高石市の2基、④出光興産千葸・徳山(2基)。東ソー四日市は4月25日再稼働。ただし6月以降、供給面は回復基調にあります。

  • 6/2 赤澤経産大臣「7月ナフサ生産量前年並み」表明:logistics-today報道。国内エチレン稼働の段階的回復を示唆。
  • 6/3 ADNOCオマーン経由再開・アジアナフサ$788/tに下落:ロイター報道。中東供給ルートの代替路が機能開始。
  • 6/14 米イラン「イスラマバード覚書」14項目合意:パキスタン仲介。核問題・地域安全保障・ホルムズ通航について包括的な暫定合意。
  • 6/17 G7エヴィアン=レ=バン最終日にデジタル署名・6/18発効:ホルムズ海峡60日間の「無料安全通航」保証。6/18には商船25隻が通過(4/18以来最多、ロイター)、6/19には日本企業所有タンカー1隻を含む6隻通過(日経)。
  • 6/20 イラン革命防衛隊「ホルムズ全船舶接近禁止」再閉鎖声明:イスラエル軍のレバノン攻撃を受けた反応。ただし実際の通航は継続(共同通信・NHK)。
⚠️ 覚書は「一時停止」であり「和平」ではない
三菱総合研究所は2026年6月19日、覚書について「和平ではなく対立の一時停止、最も難しい問題は60日後へ先送りした」と評価しています。8月中旬の60日期限を経て、①覚書履行が進展した場合はさらなる下落余地、②覚書破綻の場合は地政学プレミアム再燃・急反転リスクという、二極化したシナリオが視野に入ります。

2-2. 円安・国内エチレン稼働率の継続

ドル建てのナフサ・LLDPE市況は急落しましたが、円安(6月上旬159円台)は継続しており、円建てナフサ価格の下落は緩やかです。加えて4月エチレン稼働率67.3%と国内石化業界の減産構造は続いており、国内価格が下方修正されにくい状況が続いています。

■ アジアナフサ価格の推移($/MT・中心値)
2/27(衝突前)
$632
3月上旬
$1,000超
3月ピーク
$1,300
5/16
$1,043
6/3
$788
6/25
$627(衝突前を下回る)

2-3. 「後決め」商慣習の崩壊と5/18プレスリリース

本記事核心の「キロ90円」値上げが「歴史的衝撃」と言われる最大の理由は、1982年通産省「石油化学原料用ナフサ対策について」から44年続いた日本独自の「後決め(レトロスペクティブ・プライシング)」商慣習の崩壊を意味することです。四半期後決めから、月次・週次の変動価格への構造転換が進行しています。この慣習変化は7月時点でも撤回・巻き戻しの兆しはなく、恒久的な構造変化として定着しつつあります。

JNC/JPP 2026.05.18 ─ プレスリリース原文
日本ポリエチレン・日本ポリプロ 同日プレスリリース(社長:安田孝/飯島要)
「今般の中東情勢緊迫化による原油価格の高止まり、更なるナフサ価格上昇により国産ナフサ価格は125千円/KL超の水準に上昇する事が見込まれている。弊社は厳しい経済環境の下、徹底したコスト削減に努めておりますが、今回の主原料価格の上昇を自助努力のみで吸収することは困難であり、価格改定をお願いせざるを得ないとの判断に至りました」
「※想定した国産ナフサ価格が大きく変動する場合は、改定幅の修正をお願いさせていただきます」

この修正条項は、当初は「いつでも追加値上げする権利の留保」を意味していました。ただし7月時点では、想定した「125千円/KL超」の前提そのものが6月急落で崩れつつあり、下方修正(値下げ)として発動しうる状況に変わっています。次章で詳しく解説します。

第3章:6月急落局面と、国内サプライチェーンへの波及シナリオ

5月末までは「累計165円/kg」の一方向値上げが焦点でしたが、6月以降の状況は明確に反転しました。この反転が日本の樹脂価格・パレット・コンテナ価格にどのタイミングで波及するかを、最新エビデンスと輸入実勢データから読み解きます。

3-1. アジアLLDPE市況の最新動向:ICIS・IMARC・ChemAnalystの視点

ナフサだけでなく、その下流のLLDPE・PE現物市況も6月以降下落基調が明確化しています。

指標 水準(2026年) ソース
アジアナフサ 3月$1,300 → 6/25 $627/t 日本経済新聞(衝突前$632を下回る)
北東アジアLLDPE 3月時点 $1.04/kg(Q4→Q1で-1.9%) IMARC調査、需要弱含みで軟調
日本LLDPE Q1平均 $1,468/MT(≒$1.47/kg) ChemAnalyst調査。円安と国内エチレン減産で高値
東南アジアエチレン 3月$0.76/kg → 6月$0.95/kg IMARC調査(一時上昇後、下落基調へ)
中国LLDPE先物 6/25 CNY 6,873/t → 7/2 CNY 6,789/t(月間-14.86%) ICIS、Trading Economics
東南アジアPE市況総評 下落基調継続 ICIS「SE Asia PE prices trend lower; return to pre-Mideast war levels unclear」(6/24)

ICIS(2026年6月24日)は「東南アジアのPE輸入価格は近週にわたって下落傾向で、中東からの供給不足があるにもかかわらず値下がりが続いている」と報道。同6/22には米イラン60日ロードマップ(パキスタン・カタール仲介共同声明)を受けて原油・PE先物ともに軟化しており、地政学プレミアム剥落が広範に確認できる状況です。

3-2. 輸入実勢データ:マレーシア産ストレッチフィルムのCIF価格17.9%下落

当社が保有するマレーシア主要ストレッチフィルムメーカーの実勢見積書(2026年5月28日付・7月3日付)では、36日間で日本向けCIF価格が全項目平均17.9%下落しました。10μmは$2.22→$1.83/kg、18μmは$1.98→$1.62/kg。納期も従来の50日程度から30日以内出荷へ改善しています。

詳細は「ナフサ急落後のマレーシアストレッチフィルム市場、5月末→7月に約18%値下げが示すLLDPE需給の転換点」を参照ください。

3-3. 国内サプライチェーンへの波及シナリオ

日本の国内フィルム消費は9割以上が輸入品または輸入樹脂に依存する構造のため、輸入品価格の下落は数ヶ月のタイムラグを伴って国内サプライチェーンにも波及します。

依存経路 内容 反映速度
完成フィルムの直接輸入 マレーシア産が日本のストレッチフィルム輸入シェア約7割 早い(1〜2ヶ月)
樹脂原料の輸入 国内フィルムメーカーが東南アジア産LLDPEペレットを輸入し国内で製膜 中程度(2〜3ヶ月)
国内エチレン→樹脂の生産 プライムポリマー・三菱ケミカル・旭化成等の国内クラッカー生産(4月稼働率67.3%) 遅い(3〜6ヶ月、フォーミュラ制が中心)
  • 8月〜9月:輸入完成フィルムを扱う卸・商社ベースで下落浸透(マレーシア産CIF価格17.9%下落分が市中に反映)
  • 9月〜10月:樹脂原料輸入コスト低下が国内フィルムメーカーの原価に反映
  • 秋〜冬:国内クラッカー稼働の正常化(赤澤経産大臣「7月前年並み」表明)+競合輸入品との価格差圧力で、国内メーカーの値下げ改定検討が本格化

ただし、上記の「輸入品先行→国内追随」のカスケードには前提条件があります。国内バージン材の値下げが実際にどこまで進むかは、「市況$627下落と実購入価格の乖離」という非対称構造に左右されます。次章で日本 vs 中東 vs 東南アジア vs 北米の実勢価格差を通じて、この構造を検証します。

第4章:日本 vs 中東 vs 東南アジア vs 北米 vs 欧州の樹脂価格実勢比較と、国内価格が下がりにくい非対称構造

本章では、2026年Q1〜7月時点の主要地域別LLDPE・LDPE・HDPE価格を横並びで比較します。ナフサ市況が$627まで下落しても日本国内の樹脂価格が同水準まで下がらない理由を、実勢データと業界トップの一次証言で検証します。

4-1. 【新規追加】主要地域別LLDPE価格実勢比較(2026年Q1〜7月)

以下は各種調査機関・報道機関が発表した2026年Q1〜7月時点の主要地域別LLDPE価格をまとめたものです。日本のLLDPE Q1平均$1,468/MTは、中東比+58%、東南アジア比+51%、北米比+70%という異常な高値圏にあります。

地域 LLDPE価格 時点・条件 日本比 ソース
日本 最高値 $1,468/MT(≒$1.47/kg) Q1平均 基準(100%) ChemAnalyst
欧州(Northwest) $1,320/MT(≒$1.32/kg) 3月、DDP契約 90% IMARC 2026 Edition
インド(CIF India) $1,100/MT(≒$1.10/kg) 3月、輸入スポット 75% IMARC 2026 Edition
北東アジア(中国含む) $1,040/MT(≒$1.04/kg) 3月(Q4→Q1 -1.9%) 71% IMARC 2026 Edition
東南アジア(CIF India経由) $970/MT 2025年9月、輸入スポット 66% Intratec Primary Commodity Prices
中東(FOB Saudi) $924/MT 2025年9月、輸出スポット 63% Intratec Primary Commodity Prices
北米(US Gulf) $860/MT(≒$0.86/kg) 3月(Q4→Q1 -6.5%) 59% IMARC 2026 Edition
中国LLDPE先物 最新 CNY 6,789/t(≒$943/MT) 7/2、月間-14.86% 64% Trading Economics(DCE)
■ 地域別LLDPE価格の比較($/MT・2026年Q1〜7月)
日本 Q1平均
$1,468
欧州 3月
$1,320
インド CIF 3月
$1,100
北東アジア 3月
$1,040
中国先物 7/2
$943
東南ア CIF
$970
中東 FOB
$924
北米 3月
$860

HDPEも同様の傾向で、日本HDPE Q1平均$1,417/MT(前四半期比-11.53%、ChemAnalyst)に対し、ブラジル$1,000/MT、北米は輸出許可義務・エタン高騰でスポット需給がタイト化する状況です。LDPE Film(Intratec、2025年11月時点)は、日本の直接データは公表されていませんが、参考として中東$1,190/t、中国$1,290/t、欧州$1,140/t、東南アジア(南米経由)$1,230/tと、地域間で$50〜150/tの差が定常化しています。

🔑 「日本が突出して高い」構造の意味
6月以降のナフサ・LLDPE市況急落局面でも、日本は世界主要市場の中で最も高値圏に位置しています。日本の樹脂実購入価格は市況指標だけでは決まらず、「市況指標×(フォーミュラ+プレミアム)+海上輸送費+為替+得率調整」という多変数の合成で構成されているためです。この構造を、次に業界トップの一次証言で確認します。

4-2. 石化協会長・大手副会長の一次証言:「中東外ナフサは通常時の約2倍」

日経ビジネス「『ナフサはお金を出せば確保できる』化学大手が悩む高値在庫リスク」(2026年5月21日)は、日本の実購入コスト構造を最も端的に示す一次資料です。

2026.05.21 日経ビジネス/石化協会長・三菱ケミカル副会長 記者会見
「プレミアムを支払うことで必要な量が調達できている状況」(三菱ケミカルグループ・筑本学副会長)
石油化学工業協会・工藤幸四郎会長(旭化成社長)は同日の会見で「中東外からのナフサ価格は通常時の約2倍」「この(高値の)レベルがある程度続くという前提でいるべきではないか」と発言。三菱ケミカルグループ・筑本学副会長は「プレミアムを支払うことで必要な量が調達できている状況」「中東外からの代替品は割高で、調達を増やしすぎれば高値在庫を抱えるリスクもある」と指摘しました。
「アジアナフサ市況の$627/tへの下落は、このプレミアム部分にはほぼ反映されていない」(業界関係者の共通認識)

4-3. 市況指標に含まれない「4層の上乗せコスト」

上乗せ層 内容 7月時点の水準
①フォーミュラ+プレミアム 日本のナフサ取引は市況スポットではなく長期契約のフォーミュラ価格(参照指標+プレミアム)で行われる。中東情勢悪化以降、調達確実性優先で通常時の数倍プレミアムを上乗せする事例が増加 「通常時の約2倍」水準(工藤会長)
②海上輸送費・戦争保険料 中東外からの代替調達は輸送距離が長距離化。アフリカ・欧州産は喜望峰経由で輸送日数約14日増・燃料コスト約1.5倍、米国産は太平洋横断ルート、中央アジア産も陸送+海上の組み合わせ。ホルムズ海峡周辺船舶への戦争保険料も爆騰、VLCC・MR用船料も高止まり 高止まり継続
③円安 ドル建て市況の下落を為替が相殺。6月上旬は159円台で推移 159円台(6月上旬〜7月)
④軽質ナフサ得率ミスマッチ 中東産と米国産・アフリカ産のナフサ組成(炭素数分布)が異なり、日本のエチレンプラントで最適条件での運転にならず、派生品歩留まりが低下。同じトン数のナフサから作れる樹脂量が減少 組成問題として継続
🔑 実購入価格の構造式
実購入価格 = 市況指標 × (フォーミュラ+プレミアム) + 海上輸送費 + 為替 + 得率調整
アジアナフサ市況の$627/tへの下落は「市況指標」部分の下落であって、プレミアム部分・輸送費部分・為替部分・得率調整部分はほぼ変化していません。5月27日時点でKplerが確認した米国産ナフサ32万トン(過去12ヶ月平均の5倍)の輸入急増は、この物流コスト構造を実需者が現に飲み込んでいる証拠です。「市況$627下落=日本の樹脂価格下落」という短絡的な解釈は成立しません。

4-4. 「国産→輸入」シフトが構造的に加速する3つのメカニズム

この非対称構造の帰結として、国内で生産するよりも、中東ルート(回復後)・東南アジア・中国からプラスチック原料や完成樹脂を輸入する方が安価な状況が定着します。これは「一時的な調達戦略の話」ではなく、日本の石化産業の構造再編に直結します。

  • ①ナフサクラッカーの「逆ザヤ」化:Polymerupdate.comの分析は、高ナフサコストがアジアのナフサクラッカーで「生産コストが仕上がり化学品の市場価格を上回る逆ザヤ」状態を生み出していると指摘。米国系(シェールエタン主体)・中東エタン系プラントに対する構造的コスト劣位が固定化しています。2026年3月に韓国LG Chemは麗水(Yeosu)のナフサクラッカー(NCC)を停止しました。
  • ②国内エチレン設備の縮小・統廃合の加速:C&EN(アメリカ化学会機関誌、2026年5月)は「日本のエチレン基数12基→8基へ約3分の1削減見通し、合計約175万トン/年能力消失」と報道。丸善石油化学・出光興産・ENEOS・AMEC水島の閉鎖・統合スケジュールが進行中です。特に2026年5月12日、旭化成・三井化学・三菱ケミカルの3社は西日本エチレン統合JVの出資比率を三井45%・三菱45%・旭化成10%とすることで正式合意し、2030年に水島のAMECクラッカーを停止し大阪・高石市のOPCクラッカーへ集約する方針が確定しました。3社の西日本エチレン年間生産能力は95.1万トンから45.5万トンへ半減します。
  • ③輸入品との価格差構造の固定化:Hydrocarbon Processing(2026年4月)は「Japan to boost intermediate chemical imports amid tighter naphtha supply(日本、ナフサ供給ひっ迫下で中間化学品輸入を拡大)」と報道。経済産業省の「対応方針(案)」(2026年4月10日)でも「ナフサ由来の主な川中製品で、プラスチックの原料となるポリエチレンは国内生産割合が7割超だが、世界から新たな調達を強化」と明記しています。
📌 短期・中期の帰結
短期的には、7月〜秋にかけて輸入品の価格下落が国内バージン材の値下げ改定を促す圧力となります。ただし国内メーカーの下方修正は、①円安、②稼働率67.3%の減産構造、③代替調達プレミアム、④得率調整、の4要因で緩やかに留まる可能性が高いです。中期的には、この価格差が「国内エチレン設備の統廃合をさらに加速」する方向に働きます。C&ENが報じた「12基→8基」の再編は、価格競争力を失った国内NCC(ナフサクラッカー)から順に停止していく道筋を示しています。旭化成・工藤社長が「事業そのものが成り立たなくなる」と述べたのは、この構造的敗北を指しています。実務含意は第6章「製造業・物流業界が今すぐ取るべき戦略」に統合しました。

第5章:戦略的代替案としての「再生材」活用(PCR材・PIR材・容リ材)

7月時点ではナフサ・LLDPE市況が急落局面に反転しましたが、①国内バージン材の下方修正には数ヶ月のタイムラグ、②ウクライナ危機時(+60円/kg)まで戻る可能性は極めて低い、③再生材の環境価値・BCP価値は価格変動と独立して評価される段階に入っている、という3点から、再生材活用は引き続き戦略的な選択肢です。

5-1. 再生材3種類の特徴と調達ルート

区分 正式名称 出所 用途適性
PCR材 Post-Consumer Recycled(市場回収材) 家庭・事業所排出の使用済プラスチックを再資源化 パレット・コンテナ・物流資材全般
PIR材 Post-Industrial Recycled(工場端材) 製造工程で発生するロス・端材・規格外品を循環 高機能パレット・精密成形品
容リ材 容器包装リサイクル法ルート材 容器包装リサイクル法に基づき市町村が回収・選別したPET/PP/PE等 容リパレット(R-1、OBP等)、リサイクル認定製品

5-2. BCP・環境価値の観点

  • 調達リスクの分散:中東依存からの脱却、ホルムズ海峡封鎖等の地政学リスクに強い
  • 為替変動リスクの低減:円安進行の影響を直接受けない
  • 環境価値の獲得:顧客企業の2030年カーボンニュートラル目標への直接的な回答
  • 輸送距離の短縮:国内回収・国内再資源化のため海上輸送依存度ゼロ
  • サプライチェーン短縮化:長距離輸送・関税・為替変動・通関手続きを介さない

5-3. 弊社の再生材製品ラインアップ

第6章:結びに、7月時点の「時間差戦略」と製造業・物流業界へ

2026年の「プラスチック・ショック」は、3月「キロ90円」から5月末「累計165円/kg」への直線的な値上げ局面から、6月以降の反転局面へと転換しました。7月時点の重要ポイントは、「上流は下落・国内は下方修正が遅い」という時間差を戦略的に読むこと、そして日本 vs 中東 vs 東南アジア vs 北米の樹脂価格差を明確に把握して調達ミックスを再設計することです。

6-1. 製造業・物流業界が今すぐ取るべき戦略

  • ① 8月中旬の覚書60日期限を焦点に:覚書履行進展/破綻の分岐点。8月上旬までに主要品目の調達を確定させておく。
  • ② 輸入品スポット買いによる底値取り(7月〜8月上旬):マレーシア産CIF価格17.9%下落の実勢、東南アジアLLDPE $970・中東$924と日本Q1平均$1,468の大きな価格差を活用。複数メーカー相見積で下限価格を探索。
  • ③ 国内メーカーとの値下げ交渉:輸入品の実勢データと第4章の地域別価格比較表を国内メーカーとの改定交渉のエビデンス材料に。フォーミュラ制取引の再交渉タイミング。
  • ④ 再生材比率の戦略的引き上げ:PCR材・PIR材・容リ材を主軸に据えた製品設計・調達計画。バージン材が下方修正されても、環境価値・BCP価値は独立して評価される段階に。
  • ⑤ 契約条件の見直し:ナフサ価格スライド条項・サーチャージ制の下方対応(従来の上方対応と対称になっているか)を確認。日本ポリエチレン・日本ポリプロの「改定幅修正条項」が下方発動された場合の受け皿を契約に組み込む。
  • ⑥ 中期的な「輸入品を含めた最適調達ミックス」の再設計:C&EN報道「12基→8基」が示す構造再編を前提に、国内バージン材/輸入完成品/輸入樹脂/再生材の4象限で最適配分を組み直す。

📌 まとめ:「キロ90円」から「累計165円/kg」、「反転局面」、そして「構造再編」へ

2026年3月「キロ90円」の衝撃、5月末「累計90〜165円/kg」の連鎖値上げを経て、7月時点では上流市況の急落と地政学プレミアム剥落による反転局面に入りました。ただし本記事第4章で示した通り、日本LLDPE Q1平均$1,468/MTは中東$924・東南アジア$970・北米$860と比較して55〜70%高い水準にあり、市況$627下落は日本国内の実購入価格に直接反映されない非対称構造が存在します。石化協・工藤会長「中東外ナフサは通常時の約2倍」(5/21日経)、三菱ケミカル・筑本副会長「プレミアムを支払うことで必要な量が調達できている」。実購入価格は市況指標+(プレミアム+輸送費+為替+得率調整)の4層構造で構成されており、4月エチレン稼働率67.3%と44ヶ月連続の90%割れという減産構造が固定費配賦悪化を通じてさらに国内価格の下方修正を妨げます。中期的には、この価格差が「国産→輸入」シフトを加速し、C&EN報道「日本のエチレン12基→8基」、5/12西日本エチレンJV合意(2030年AMEC水島停止・OPC集約)が示す構造再編を後押しします。調達担当者にとっては、①7月〜8月上旬の輸入スポット買い、②国内メーカーとの改定交渉における地域別価格比較データの活用、③秋以降の国内改定情報の入手、④中期的な調達ミックス再設計、⑤PCR材・PIR材・容リ材による価格変動独立の価値獲得、が同時に焦点となる局面です。当社では東南アジア各国のストレッチフィルム・パレット・コンテナメーカーと直接お取扱いを行い、実勢見積・LLDPE市況の最新状況をリアルタイムで把握しています。同時にPCR材・PIR材・容リ材を活用した再生材ベースの物流資材も多数取り扱っており、価格変動と独立した環境価値・BCP価値の両面から、貴社の調達戦略をサポートいたします。

📚 参考資料
  1. 日本ポリエチレン株式会社「ポリエチレンの価格改定について」プレスリリース/2026年5月18日/日経新聞掲載
  2. 日本ポリプロ株式会社「ポリプロピレンの価格改定について」プレスリリース/2026年5月18日
  3. プライムポリマー「PE・PP追加価格改定について」/ゴムタイムス/2026年4月22日
  4. 三井化学株式会社「西日本におけるエチレン製造設備の統合に向けた共同事業体の出資比率について」プレスリリース/2026年5月12日
  5. 旭化成建材「ネオマフォーム等への特別調整金上乗せ」/2026年4月16日
  6. 石油化学工業協会「4月エチレン稼働率67.3%」発表/2026年5月21日
  7. 日経ビジネス「『ナフサはお金を出せば確保できる』化学大手が悩む高値在庫リスク」/2026年5月21日
  8. C&EN(アメリカ化学会機関誌)「Asahi Kasei to sharply scale back petrochemical production in Japan」/2026年5月
  9. Hydrocarbon Processing「Japan to boost intermediate chemical imports amid tighter naphtha supply」/2026年4月
  10. 経済産業省「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保及び重要物資の安定的な供給確保のための対応方針(案)」/2026年4月10日
  11. Kpler船舶追跡情報「米国から日本ナフサ32万トン」/日経報道/2026年5月27日
  12. Polymerupdate.com「ナフサクラッカーの逆ザヤ構造分析・韓国LG Chem麗水NCC停止」/2026年
  13. 日本経済新聞「ナフサ価格がアジアで下落、衝突前下回る 代替調達で供給懸念が後退」/2026年6月25日
  14. ロイター「アジアのナフサ価格急落、ADNOCがオマーン経由で輸出再開」/2026年6月3日
  15. logistics-today「赤澤亮正経産大臣、ナフサ7月に前年並み生産量に戻る見通し表明」/2026年6月2日
  16. AFP/共同通信/各報道「米イラン『イスラマバード覚書』14項目合意・G7署名・発効」/2026年6月14-18日
  17. 三菱総合研究所「アメリカとイスラエルによるイラン攻撃⑦ 危機の先延ばし 米・イラン覚書14項目の意味するもの」/2026年6月19日
  18. 共同通信/ロイター/Axios/NHK/Bloomberg「イラン革命防衛隊ホルムズ再閉鎖声明・通航継続」/2026年6月19-21日
  19. ICIS「SE Asia PE prices trend lower; return to pre-Mideast war levels unclear」/2026年6月24日
  20. ICIS「China futures market 25 June prices」LLDPE先物 CNY 6,873/tonne/2026年6月25日
  21. ICIS「Oil prices ease on signs of progress in US-Iran talks」米イラン60日ロードマップ/2026年6月22日
  22. IMARC Group「LLDPE Prices, Trend, Chart, Demand, Market Analysis Report 2026 Edition」/北東アジア$1.04・欧州$1.32・北米$0.86・インド$1.10(2026年3月)
  23. ChemAnalyst「LLDPE Prices in APAC」/日本Q1平均$1,468/MT・日本HDPE Q1平均$1,417/MT(前四半期比-11.53%)
  24. Intratec「LLDPE Primary Commodity Prices」/中東FOB Saudi $924/t・東南アジアCIF India $970/t・中国domestic $1,010/t(2025年9月)
  25. Intratec「LDPE Primary Commodity Prices」/中東$1,190・中国$1,290・欧州$1,140・東南アジア$1,230(2025年11月)
  26. Trading Economics「Polyethylene Futures」/中国LLDPE先物 CNY 6,789/t(月間-14.86%)/2026年7月2日
  27. ChemAnalyst「HDPE Prices Q1 2026」/日本HDPE $1,417/MT・ブラジル$1,000/MT・北米エタン高騰/2026年3月
  28. Polymerupdate「Southeast Asia LLDPE Prices」/東南アジアLLDPE $900-940/t CFR(2025年6月時点)
  29. プラスチックパレット株式会社「ナフサ急落後のマレーシアストレッチフィルム市場、5月末→7月に約18%値下げが示すLLDPE需給の転換点」/2026年7月3日
  30. 日本経済新聞「三井化学系、汎用樹脂値上げ ホルムズ封鎖で原料の市場価格高騰受け」/2026年3月17日
  31. 日本経済新聞「カネカなど、汎用樹脂で値上げ ホルムズ封鎖影響し原料エチレン減産」/2026年3月19日
  32. 日本経済新聞「旭化成、汎用樹脂のポリエチレンを3割超値上げ 中東影響で」/2026年3月31日
  33. 化学工業日報「石化製品が相次ぎ値上げ ナフサ混乱、誘導品に波及」/2026年3月18日
  34. 日本経済新聞「東レ、樹脂や炭素繊維にサーチャージ制 原料高転嫁を最短1カ月で」/2026年3月27日
  35. Bloomberg「イラン戦争下でもホルムズ海峡通航続く-進入タンカーは相次ぎ湾外へ」/2026年5月18日
  36. 通商産業省(現・経済産業省)「石油化学原料用ナフサ対策について」/1982年4月7日
  37. 住友化学TPC(シンガポール)フォースマジュール宣言/日経/2026年3月10日
  38. 大景化学株式会社「ナフサ価格推移表」(財務省貿易統計)
  39. 笹川平和財団・資源エネルギー庁 日本の原油・ナフサ輸入依存度分析
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