解説

利用停止・消去の請求はどう出すか、個人情報保護法35条の文例と個人情報保護委員会

2026年10月26日 公開10月26日 12時(日本時間)までの情報読む時間 約8分

この記事の答え

何が起きた
情報が漏れた会社に、使うのをやめてもらう・消してもらう請求は、個人情報保護法35条で認められています。報告が必要な漏えいがあったことも理由になります。
請求する人への影響
会社の決めた窓口と書式に従って出します。手数料の定めはなく、会社は結果を知らせる義務があります。
確かめておくこと
プライバシーポリシーの「開示等の請求」の窓口と、本人確認の書類、届いた日が残る送り方です。
次に見るところ
断られたら、個人情報保護委員会の相談ダイヤルに相談できます。裁判は請求が届いて2週間たってからです。
請求できる根拠35条5項漏えい(26条1項の事態)も理由になる
手数料定めなし取れるのは使い道の通知と開示だけ(38条1項)
裁判までの期間2週間請求が届いた日から。断られたら待たない(39条)

漏えいがあったら、法律で「使うのをやめて」「消して」と求められます

個人情報保護法35条5項は、委員会への報告が必要な漏えいが起きた場合を、利用停止や消去を求められる理由に挙げています。

個人情報保護法の35条は、本人が会社に「使うのをやめて」「消して」と求める決まりです。2022年4月の改正で、求められる場面が広がりました。

いまの条文では、次の3つの場面で求めることができます。漏えいがあった場合は、5項の2つ目の場面にあたります。

利用停止・消去・第三者提供の停止を求められる場面(個人情報保護法35条)
場面求められること条文
目的の外で使った、不正な手段で集めたなど使うのをやめる・消す1項
本人の同意なしに他社へ渡したなど他社へ渡すのをやめる3項
会社がもう使う必要がない使うのをやめる・消す・他社へ渡すのをやめる5項
委員会への報告が必要な漏えいが起きた同上5項
本人の権利や正当な利益が害されるおそれがある同上5項

出典:個人情報保護法35条(e-Gov法令検索、2026年10月26日確認)。「報告が必要な漏えい」は26条1項本文の事態です。

報告が必要な漏えいは、個人情報保護委員会が4つに分けて示しています。病歴などの情報、カード番号などお金の被害につながる情報が1つ目と2つ目です。不正アクセスなど悪意によるもの、1,000人を超えるものが残りの2つです。

会社から漏えいのお知らせが届いたら、委員会へ報告したと書かれているかを見ます。報告したと書かれていれば、この理由が使えると当社は見ています。

退会したのに情報が残っていた理由は、別の記事で説明しました。退会したのに情報が漏れたのはなぜか、タイムズカーの退会後7年保管と個人情報保護法の消去請求をご覧ください。この記事は「実際にどう出すか」に絞ります。

2026年7月17日に、個人情報保護法を改める法律が公布されました。16歳未満の子どもの情報や顔の特徴のデータは、違法かどうかを問わず止めてもらえる形になります。

ただし、公布から2年以内に政令で決める日からの施行です。2026年10月26日時点では、この記事はいまの条文で説明しています。

出す先は、プライバシーポリシーにある「開示等の請求」の窓口です

会社は請求の受け方を決めて、本人に知らせておく決まりです。窓口と書式、本人確認の方法を先に確かめます。

まず、その会社のプライバシーポリシーを開きます。「保有個人データの開示等の請求」「開示等の手続」などの見出しを探します。

法律の32条は、請求を受ける手続を本人が知れる状態にしておくよう会社に求めています。窓口の住所やメール、専用フォーム、出す書類などが載っています。

出す前にそろえるもの

  1. 会社のお知らせメールや手紙です(日付と件名がわかるもの)。
  2. 登録していたメールアドレス、会員番号、氏名の書き方です。
  3. 会社が指定する本人確認の書類です(運転免許証の写しなど)。
  4. 家族が代わりに出すときは、委任状など代理を示す書類です。

会社は、受け付ける方法を決めることができます(37条1項)。本人はその方法に従う決まりです。電話だけで済ませず、指定の書式やフォームを使います。

一方で、会社は本人に重すぎる手間をかけないよう配慮しなければなりません(37条4項)。

代わりに出せるのは、未成年者などの法定代理人と、本人が頼んだ代理人です(施行令13条)。

手数料を取れるのは、使い道の通知と開示の請求だけです(38条1項)。利用停止や消去の請求には、手数料の定めがありません。

本人確認の書類を送る方へ

  • 会社が指定する書類だけを送ります。
  • 指定がない番号や本籍などは、隠してよいか窓口に聞きます(当社の見方)。
  • 個人番号(マイナンバー)が見える面は、指定がない限り送りません(当社の見方)。

送り方は、届いた日がわかる方法にします。フォームなら受付の控えのメールを残します。郵便なら配達の記録が残る方法にします。届いた日は、あとで裁判を考えるときの起点になります。

文例は「誰が・どのサービスで・何を・なぜ」の4つでつくれます

請求する人、対象のサービス、求めること、理由をはっきり書きます。結果を知らせてもらう先も書いておきます。

会社に書式があれば、その書式を使います。書式がないときや、メールの本文に書くときは、次の形が使えます。

保有個人データの利用停止等の請求

(会社名)御中 個人情報の開示等の請求窓口

請求日:2026年○月○日

1.請求する人:氏名(ふりがな)、住所、電話番号、登録していたメールアドレス、会員番号

2.対象のサービス:(サービス名)。(○年○月○日付)のお知らせで、私の情報が漏えいのおそれの対象と知らされました。

3.求めること:

  • 私の情報(保有個人データ)を使うのをやめること。
  • 同じ情報を消すこと。
  • 同じ情報を、ほかの会社などへ渡すのをやめること。

4.理由:個人情報保護法35条5項の「第26条第1項本文に規定する事態が生じた場合」にあたるためです。私はすでに退会しており、貴社が利用する必要もなくなったと考えます。

5.法令で保存が必要な情報があるときは、その項目、根拠の法令、消去する予定日を教えてください。

6.結果は、上のメールアドレスあてに書面でお知らせください(35条7項)。応じない部分があるときは、その理由もお示しください(36条)。

添付:本人確認書類の写し(貴社の指定によるもの)

文例は当社が条文をもとに作ったものです。会社の書式があるときは、そちらが優先です。

書き足すとよいこと

  • まだ使い続けるなら、「消去」ではなく「第三者提供の停止」などに絞る書き方もあります。
  • メールマガジンなど、一部だけ止めたいときは、その項目を書きます。
  • 「退会とは別の請求です」と一文入れると、取り違えを防げます(当社の見方)。

会社は遅滞なく対応しますが、消去ではなく停止になることもあります

対応は被害を防ぐのに必要な範囲に限られます。法令で保存が決まった情報は、期間が終わってからの消去になることがあります。

理由があるとわかったら、会社は遅滞なく対応する義務があります(35条6項)。法律に「何日以内」という日数はありません。

対応の範囲は「本人の権利利益の侵害を防止するために必要な限度」です。このため、求めたとおりにならないことがあります。

求めたとおりにならないことがある主な場合
場合会社の対応の例
消去でなくても被害を防げる消去の代わりに利用を止める
法令で保存が決まっている情報保存期間が終わってから消すと約束する
契約が続いていて止めるのが難しい再発を防ぐ対策をとる
止めたり消したりに多額の費用がかかる本人を守るための代わりの措置をとる

出典:個人情報保護法35条6項と、個人情報保護委員会の2021年2月19日の資料(利用停止等の論点)。例は当社が整理しました。

委員会の資料は、本人の求めに沿う対応をできるだけ行うことが望ましい、ともしています。

会社は、対応したか、しないかを本人に知らせなければなりません(35条7項)。応じないときは、理由を説明するよう努めることになっています(36条)。

退会と消去は別の手続きです

退会と消去の請求のちがい
退会利用停止・消去の請求
何が終わるかサービスの契約会社がもつ自分の情報の利用
情報はどうなるか会社の規程で一定期間残ることがある理由があれば止める・消す
結果の知らせ法律の定めなし知らせる義務あり(35条7項)

出典:個人情報保護法35条。退会後に残る期間の考え方は退会したのに情報が漏れたのはなぜかで説明しています。

断られたら、相談ダイヤルと認定団体、最後に裁判の順で考えます

個人情報保護委員会の相談ダイヤルは、条件を満たせば会社との間に入ってくれます。裁判は請求が届いてから2週間後です。

返事がない、または断られたときは、まず会社へもう一度、理由を書いて出し直します。それでも動かないときは、次の窓口があります。

断られたときの相談先(2026年10月26日時点)
相談先できること注意
個人情報保護法相談ダイヤル(個人情報保護委員会)苦情の相談、法律の質問、条件を満たせば会社との間のあっせん03-6457-9849、平日9時30分〜17時30分。違法かどうかの判断はしません
認定個人情報保護団体会員の会社についての苦情の処理40団体(2026年4月20日時点)。会社が会員かは各団体の一覧で確かめます
消費者ホットライン188近くの消費生活センターなどの案内相談は無料で、通話料はかかります
弁護士・裁判所利用停止等を求める裁判39条の「2週間」の決まりがあります

出典:個人情報保護委員会と消費者庁の各ページ、個人情報保護法39条。

相談ダイヤルのあっせんには9つの条件があります。その1つは、先に会社へ申し出て解決しなかったことです。だから、会社への請求を記録に残しておくことが役立ちます。

裁判は「届いてから2週間」のあと

39条1項は、裁判の前に、まず会社へ請求するよう定めています。請求が届いた日から2週間たつまでは、訴えを起こせません。

ただし、会社がはっきり断ったときは、2週間を待つ必要はありません。届くはずだった時に届いたとみなす決まりもあります(39条2項)。

補償や慰謝料は、別の記事にまとめました。情報漏洩の補償はいくらか、タイムズカー660万件・焼肉きんぐ1,079万件と過去の判例の慰謝料

よくある質問

利用停止や消去を求めるのに、お金はかかりますか。

個人情報保護法38条1項で会社が手数料を取れるのは、使い道の通知と開示の請求だけです。利用停止や消去の請求には手数料の定めがありません。郵送の料金など、送るための費用は自分でかかります。

電話で「消してください」と伝えるだけでもよいですか。

会社は受け付ける方法を決めることができ、本人はその方法に従う決まりです(37条1項)。電話で受け付けていない会社もあります。あとで確かめられるように、指定の書式やフォームなど記録が残る方法で出すと安心です。

家族の分をまとめて出せますか。

代わりに出せるのは、未成年者などの法定代理人と、本人が頼んだ代理人です(個人情報保護法施行令13条)。大人の家族の分は、本人からの委任状など、会社が求める書類をそろえて出します。

消してもらえば、漏れた情報の心配はなくなりますか。

会社の手元の情報が消えても、すでに外へ出た情報は戻りません。お知らせに書かれた漏れた項目に合わせて、パスワードの変更や不審なメール・電話への注意を続けることになります。

なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか。

当社もウェブサイトや業務クラウドを使う中小の会社です。同じ立場の会社や読者が、お知らせを受けたあとに確かめる手がかりになればと考えました。法律の条文と個人情報保護委員会の資料をもとに整理しています。

言葉の意味5語
利用停止等
個人情報の利用をやめること、または消去することをまとめた言い方です(35条1項)。
保有個人データ
会社が開示や消去などに応じられる権限をもつ個人データです。2022年4月から、6か月以内に消す予定のデータも含まれます。
開示等の請求
開示、訂正、利用停止、消去、第三者提供の停止などをまとめた呼び方です。
代わるべき措置
止めたり消したりが難しいとき、本人を守るために会社がとる別の対応です。
認定個人情報保護団体
個人情報保護委員会が認めた団体で、会員の会社についての苦情を受け付けます。
出典・エビデンス一覧10件(法令2・公的機関8)
  • ※条文と数値は2026年10月26日時点。2026年7月公布の改正法は未施行で、施行後は条や項の番号が変わる場合があります
  • ※文例は当社が条文をもとに作成したもので、法律相談に代わるものではありません。個別の事情は弁護士や相談窓口にご相談ください
  • ※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の判断を推奨するものではありません。

文:プラスチックパレット株式会社 編集部

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