暮らしと制度 / 情報セキュリティ

情報漏洩の補償はいくらか、タイムズカー660万件・焼肉きんぐ1,079万件と過去の判例の慰謝料

2026年9月から10月にかけて、タイムズカーで約660万件、焼肉きんぐで1,000万件を超える会員情報が漏れました。漏れた人はお詫びの品や金銭の補償を受けられるのか、裁判になればいくら認められてきたのか。各社の公表、当社に届いた漏えいの連絡、過去の判決と、漏れた人が今できることを、一次資料をもとに整理しました。

初版公開: / 最終更新: / プラスチックパレット株式会社

ANSWER

タイムズカーと焼肉きんぐは、公表の時点でお詫びの品や金銭の補償を示していません。過去のベネッセ事件では500円相当の金券が配られ、裁判で認められた慰謝料は1人1,000円〜3,000円でした。タイムズカーには集団訴訟の準備が進んでいます。漏れた人は、まず公式サイトで連絡の中身を確かめることが大切です。

タイムズカーで漏れたアカウント

約660万件

退会者・入会未完了者を含む

そのうち免許証画像などの本人確認書類

約160万件

運転免許証・公共料金の請求書など

焼肉きんぐのアプリで漏れた件数

1,079万件

1,078万8,963件。登録のほぼ全件

この記事の要点

  • タイムズカーは9月25日9時7分に不正アクセスを検知し、退会者を含む約660万アカウントの氏名・住所・生年月日・運転免許情報などが漏れたと公表しました。約160万件は運転免許証画像などの本人確認書類も漏れています。
  • 焼肉きんぐを運営する物語コーポレーションは、公式アプリの会員管理システムへの不正アクセスで、会員番号・氏名・メールアドレス・電話番号の1,078万8,963件が漏れたと公表しました。パスワードや決済情報は含まれません。
  • 両社とも、公表の時点でお詫びの品や金銭の補償は示していません。アンケートサイトのinfoQは、不正に交換されたポイント約287万円分を全額補填すると公表しており、実際の金銭被害を補う例はあります。
  • ベネッセ事件では、会社が500円相当の金券を配ったうえで、裁判では1人1,000円〜3,000円の慰謝料が認められました(弁護士費用を含めると最大3,300円)。タイムズカーには弁護士による集団訴訟の参加登録が始まり、10月1日時点で3,000人弱が登録しました。
  • 漏れた人は、メールやSMSのリンクを開かず公式サイトで連絡を確かめることが基本です。免許証画像が漏れた人は、免許証の再発行や信用情報機関への届け出という手段もあると弁護士が説明しています。

タイムズカーと焼肉きんぐで何が漏れたのか

どちらも外部からの不正アクセスで、会員のほぼ全体に近い規模の情報が漏れました。漏れた項目は大きく違います。

漏れた情報と件数

タイムズカーを運営するタイムズモビリティは、9月25日9時7分にWebシステムへの不正アクセスを検知し、26日7時25分に遮断しました。漏れたのは約660万アカウントで、今の会員だけでなく、退会した人や入会の手続きを終えていない人、タイムズビジネスサービスの会員も含みます。このうち約160万件は、運転免許証の画像や、住所を確かめるための公共料金の請求書などの画像も漏れました。

焼肉きんぐの物語コーポレーションは、10月2日に公式アプリの会員管理システムへの不正アクセスを確認し、3日に漏えいが分かったと10月5日に公表しました。登録1,080万8,784件のうち1,078万8,963件と、ほぼ全件です。

サービス漏れた情報漏れていない情報件数
タイムズカー氏名、住所、生年月日、電話番号、メールアドレス、運転免許情報、本人確認書類の画像、法人会員の所属部署名、パスワード(復元できない形式で保管)、連携サービスID(WESTER IDなど9件)クレジットカード情報約660万アカウント(本人確認書類は約160万件)
焼肉きんぐ公式アプリ会員番号、氏名(アプリの登録名)、メールアドレス、電話番号パスワード、生年月日、性別、郵便番号、ポイントを含む利用履歴、決済情報1,078万8,963件

出典:パーク24(第2報 2026年9月28日・第3報 9月29日)、タイムズカーの新着情報(9月29日、10月1日更新)、焼肉きんぐはITmedia NEWS(2026年10月5日)の報道。2026年10月8日に確認。

法人会員に届いた漏えいの連絡

当社もタイムズカーの法人会員で、9月28日に不正アクセスのお知らせ、10月6日と7日に「漏えいが確認された」という個別のメールを受け取りました。送信元はタイムズカーの配信用アドレス(magazine@mail.timescar.jp)で、フィッシングと見分けやすいよう本文にURLを載せていません。

メールに書かれた漏えいの項目は、氏名、メールアドレスと、登録していれば所属部署、住所、生年月日、電話番号、運転免許情報(免許証の画像は除く)です。本人確認書類の画像の漏えいは「現時点において確認されておりません」とし、外部の専門機関の調査を踏まえて2週間程度をめどにあらためて報告するとしています。

お詫びの品や補償についての記載はありませんでした。タイムズカーは退会後も情報を一定期間保管していたと報じられており、今は使っていない人にも連絡が届くと考えられます(当社の見方)。

この章の結論

タイムズカーは退会者を含む約660万件、うち約160万件は免許証画像などの本人確認書類まで漏れました。焼肉きんぐはほぼ全会員の1,079万件ですが、項目は会員番号・氏名・メール・電話番号です。

補償はいくらなのか

情報が漏れたことへの補償には、会社が自分から配るお詫びと、裁判で認められる慰謝料の2つがあります。過去の例では、お詫びは数百円、慰謝料は数千円から数万円です。

会社が配るお詫びと実害の補填

タイムズカーと焼肉きんぐは、2026年10月8日時点で、お詫びの品や金銭の補償を公表していません。当社に届いたタイムズカーの3通のメールにも記載はありませんでした。

一方、実際にお金の被害が出た場合に補う例はあります。アンケートサイト「infoQ」のGMOリサーチ&AIは、不正アクセスで611件・286万9,500円分のポイントがAmazonギフトコードに無断で交換されたとして、全額を補填すると公表しました。

日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)の調査報告は、500円のプリペイドカードを送ると1枚あたり650円程度かかるとしています。漏れた人数が多いほど、お詫びの品の負担は大きくなります(当社の見方)。

裁判で認められてきた慰謝料

2014年に発覚したベネッセの顧客情報漏えいでは、会社が顧客の選択に応じて500円相当の金券を配りました。そのうえで起こされた裁判では、最高裁が2017年に、精神的な損害についてさらに審理するよう高裁に差し戻しました。差戻し後の大阪高裁と、別の訴訟の東京高裁の判決では、慰謝料1人1,000円〜3,000円が認められています。請求が退けられた判決もあります。

判決1人あたりの慰謝料
最高裁 2017年10月23日金額は示さず審理を差し戻し
東京高裁 2019年6月27日2,000円
大阪高裁 2019年11月20日1,000円
東京高裁 2020年3月25日3,000円(ほかに弁護士費用300円)

出典:岩田合同法律事務所の判例解説(ベネッセ事件の各判決)。最高裁は2017年10月23日判決。

タイムズカーの集団訴訟を準備する弁護士への取材記事では、過去の裁判例の1人あたりの認容額は3,000円〜3万円程度とされています。JNSAの試算では、1人あたりの想定損害賠償額の平均は28,308円(2016〜2018年)ですが、これは漏れた情報の種類から計算した値で、実際の判決額とは違います。

この章の結論

会社が配るお詫びは過去に500円相当の例があり、裁判の慰謝料は1人1,000円〜3,000円の例があります。実際の金銭被害は、全額を補填すると公表した会社もあります。

集団訴訟と法律の動き

タイムズカーでは、弁護士が集団訴訟の参加者を募っています。2026年7月には個人情報保護法の改正法も公布されました。

タイムズカーの集団訴訟

東京都港区の牧野法律事務所は、タイムズカーの漏えいについて損害賠償を求める訴訟の参加登録サイトを開設しました。報道によると、10月1日時点で3,000人弱が登録しました。参加費用は後日案内し、合意しない限り支払いは生じないとしています。提訴するかどうかは、委任の書類が一定数に達し、会社の公表内容や調査結果を検討したうえで判断するとしています。

弁護士は、免許証の画像など重要な情報が漏れたことが、損害額を上げる大きな要素になると話しています。

2026年の個人情報保護法の改正

2026年7月17日に公布された改正個人情報保護法は、課徴金の制度を新しく設けました。対象は、不適正な利用、不正な取得、本人の同意のない第三者への提供などの違反で、本人が1,000人を基準とする大規模な事案で、事業者が相当の注意を怠った場合などに限られます。情報が漏れたことそのものは、課徴金の対象の行為には入っていません。

漏えいがあったときの本人への通知は、それだけでは意味を持たない社内IDだけが漏れた場合など、本人の権利利益を損なうおそれが少ない場合に緩められます。施行は原則として公布から2年以内です。

この章の結論

タイムズカーでは集団訴訟の参加登録が進んでいます。2026年の法改正で課徴金が新設されましたが、対象は不適正な利用などで、漏えいそのものは対象外です。

情報が漏れた人が今できる3つのこと

各社の公表と、弁護士への取材記事をもとにまとめました。どこまで対応するかは、漏れた情報の種類にあわせて判断してください。

連絡はメールのリンクから開かず、公式サイトで確かめる

当社に届いたタイムズカーのメールは、フィッシングと見分けやすいよう、本文にURLを載せていませんでした。同じメールは、不審なメール・SMS・電話・郵便物が届いたらリンクや添付を開かず、パスワードやカード情報を入力しないよう呼びかけています。連絡の中身は、自分で開いた公式サイトで確かめます。宅配会社などを装う偽SMSの見分け方は、宅配の情報漏洩をやさしく解説した記事にまとめています。

免許証の画像が漏れた人は、再発行と信用情報機関への届け出を検討する

弁護士への取材記事は、顔写真つきの本人確認書類は、ローンや銀行口座のなりすまし契約に悪用されるおそれがあると説明しています。対応として、運転免許証の再発行や、信用情報機関(JICCの不正利用防止の届け出、CICの本人申告)への届け出を挙げています。

同じパスワードを使っているサービスを見直す

タイムズカーはパスワードを復元できない形式で保管していたとしていますが、連携していた他社サービスのIDも漏れました。同じパスワードを他のサービスで使っている場合は変えておき、住所や生年月日が漏れた人は、身に覚えのない郵便や電話にも気をつけます。

よくある質問

情報が漏れたら、会社からお金はもらえますか
決まりはありません。会社が自分からお詫びの品を配る例はあり、ベネッセ事件では500円相当の金券でした。タイムズカーと焼肉きんぐは、2026年10月8日時点でお詫びの品や補償を公表していません。
裁判をすると慰謝料はいくらになりますか
過去のベネッセ事件の判決では、慰謝料は1人1,000円〜3,000円でした(弁護士費用を含めると最大3,300円)。タイムズカーの集団訴訟を準備する弁護士への取材記事では、過去の裁判例の認容額は1人3,000円〜3万円程度とされています。漏れた情報の種類によって変わります。
タイムズカーを退会していても、情報は漏れていますか
漏れた可能性があります。タイムズカーは、漏れた約660万アカウントに退会した人と入会の手続きを終えていない人も含まれると公表しています。
焼肉きんぐのアプリで、パスワードは漏れましたか
漏れていないと報じられています。漏れたのは会員番号、アプリの登録名、メールアドレス、電話番号で、パスワード、生年月日、ポイントを含む利用履歴、決済情報は含まれません。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか
当社もタイムズカーの法人会員で、漏えいを知らせる連絡を受け取りました。同じ連絡を受け取った人が補償や対応を確かめられるよう、各社の公表と公的な資料をもとに整理しました。
出典・エビデンス一覧13件(公的機関や団体3・企業や報道10)

公的機関・団体の資料

企業の公表と報道

当社の関連記事

  • ※各社の公表と報道は2026年10月8日に確認したものです。タイムズカーは調査結果をあらためて報告するとしており、内容が変わる可能性があります。
  • ※「法人会員に届いた漏えいの連絡」は、当社が受け取ったメールの文面によります。個人を特定できる情報は載せていません。
  • ※慰謝料の額は過去の判決の例で、今回の事案で認められる額を示すものではありません。
  • ※本稿は情報提供を目的としたもので、法的な判断を代行するものではありません。個別の対応は弁護士や消費生活センターに相談してください。

文:プラスチックパレット株式会社 編集部

「情報漏えい・サイバー攻撃」の新しい記事

「情報漏えい・サイバー攻撃」の記事をすべて見る(14本)

ほかのテーマ:テーマから探す

この記事は役に立ちましたか?
押すだけで送信されます。内容の改善に使います(個人を特定する情報は集めません)
トップへ戻る