解説

決済画面の改ざんでカード番号はなぜ漏れるか、EC-CUBEと日本クレジット協会

2026年10月26日 公開10月26日 12時(日本時間)までの情報読む時間 約7分

この記事の答え

何が起きた
カードを保存しないネットショップでも、番号を入力する決済画面が書きかえられ、入力した中身が盗まれる漏えいが起きています。
お客さまのカードへの影響
入力したカード番号・有効期限・セキュリティコードが盗まれ、番号だけで買い物をされる「番号盗用」につながります。2025年の番号盗用は475.4億円です。
確かめておくこと
お店はEC-CUBEなどの版と管理画面の守りを、利用者はお知らせの期間に使ったかと明細を確かめます。
次に見るところ
EC-CUBE公式の脆弱性情報とJVN、日本クレジット協会のガイドラインの改訂、使っているカード会社からの連絡です。
番号盗用の被害額(2025年)475.4億円日本クレジット協会・40社の回答
不正利用にしめる番号盗用の割合93.1%2025年・総額510.5億円のうち
ガイドラインの最新版6.1版2026年3月・指針対策は6.0版と同じ

数字は2026年10月26日時点で確認できた公表値です。

カード情報を保存しない店でも、入力する画面が書きかえられると漏れます

番号を打ちこむ画面が書きかえられると、入力した中身が外へ送られます。

ネットショップの多くは、カード番号を自社に残さず、決済代行会社に送るしくみを使っています。これを「非保持化」と呼びます。

ところが日本クレジット協会のガイドライン6.1版は、いまの主な漏えいは非保持化を済ませたお店で起きているとしています。お店のウェブサイトの弱いところを突かれ、カード情報が盗まれる形です。

同じ協会の導入ガイドには、ページの中で動くプログラム(スクリプト)が書きかえられた例があります。入力した情報が漏れつづけたとしています。お店のデータベースではなく、お客さまの画面の上で抜きとられるため、保存の有無は関係ありません。

保存したデータが漏れる場合と、画面が書きかえられる場合のちがい
くらべる点保存したデータが漏れる決済画面が書きかえられる
どこで抜かれるかお店のサーバーの中お客さまが入力する画面の上
非保持化で防げるか防ぎやすい防げない
漏れやすい項目保存していた項目入力した番号・有効期限・セキュリティコード
気づきにくさ侵入の記録が残りやすい買い物は普通に終わるため、気づくまで時間がかかることがある

出典:クレジット取引セキュリティ対策協議会のガイドライン6.1版 p.9と、附属文書20(2.1版)p.4〜5。表の「気づきにくさ」は当社の見方です。

この手口は「ウェブスキミング」と呼ばれることもあります。ここでは、どこが狙われるかだけを説明し、具体的なやり方には触れません。

カード番号の盗用による被害は2025年に475.4億円で、不正利用の9割をこえます

2025年の被害510.5億円のうち、番号盗用が93.1%です。

カードそのものを持たずに、番号だけを使って買い物をされる被害を「番号盗用」と呼びます。ネットで盗まれた番号は、この形で使われます。

クレジットカード不正利用被害額(日本クレジット協会)
種類2024年2025年前年比
番号盗用513.5億円475.4億円−7.4%
偽造カード5.9億円7.2億円+22.0%
その他35.6億円27.9億円−21.6%
合計555.0億円510.5億円−8.0%

出典:日本クレジット協会「クレジットカード不正利用被害の集計結果について」(2026年3月6日公表)。国際ブランドのカード発行会社を中心とした40社の回答。海外で発行されたカードは含みません。

2025年は前の年より減りましたが、番号盗用の割合は93.1%です。統計には、番号がどこで盗まれたかの内訳はありません。そのため、ネットショップの画面改ざんがどれだけをしめるかは、この数字からはわかりません。

EC-CUBEでは、決済画面の改ざんにつながった脆弱性が過去に悪用されています

IPAは2019年に、この被害が多いと注意をよびかけました。

EC-CUBE(イーシーキューブ)は、PHPというプログラムの言葉で作られた、ネットショップを作るためのソフトです。IPAは「ECサイト構築で多く利用されている」ソフトとしています。

IPA(情報処理推進機構)は2019年12月25日に注意をよびかけました。EC-CUBEのサイトで決済画面が改ざんされ、カード番号などが盗まれる被害が多いという内容です。経済産業省によると、漏れた番号などは約14万件にのぼるとしています。

カード情報の漏えいに関係する主なEC-CUBEの告知
公表日告知対象と対策
2019年12月25日IPAの注意喚起決済画面の改ざん被害。バージョンの確認と最新版への更新
2021年5月10日JVN#97554111(CVE-2021-20717)4.0.0〜4.0.5。4.0.5-p1か修正パッチ。公開時点で悪用を確認
2024年7月29日JVN#483242544.0.0〜4.2.3。プラグインを入れるときの入力チェックの不備
2026年3月5日JVN#63765888(CVE-2026-30777)4.1〜4.3系。管理画面の多要素認証をすり抜けられる。修正ファイルを適用

出典:IPA、JVN(JPCERT/CCとIPAが運営する脆弱性情報サイト)、EC-CUBE公式「脆弱性情報」。2026年10月26日時点。

2021年の脆弱性は、イーシーキューブ社が、悪用によるカード情報の流出も確認したと告知していたと報じられています。修正のあとも、すでに書きかえられていないかを確かめるよう求めていました。

ほかのソフトでも同じ考え方があてはまります。協会の導入ガイドは、無料で公開されているソフトの更新は、使うお店の責任で行うと書いています。

ガイドラインは2025年から、ネットショップに脆弱性対策とEMV 3-Dセキュアを求めています

カードを保存しないお店も、サイトの点検が求められています。

クレジットカード・セキュリティガイドラインは、カード会社や関係する団体でつくる協議会がまとめています。事務局は日本クレジット協会です。

2025年3月の6.0版で、ネットショップの「システムとウェブサイトの脆弱性対策」が、守るべき対策に加わりました。2026年3月の6.1版では、この対策の中身は変わっていません。

EMV 3-Dセキュアは、カードを使うときに持ち主本人かを確かめる仕組みです。5.0版で、原則すべてのネットショップに2025年3月末までの導入が求められました。これは盗まれた番号の悪用をふせぐ対策で、画面の改ざんそのものを止めるものではありません。

協会がネットショップに求める脆弱性対策の5つの区分
区分おもな中身
①管理画面入れる場所(IPアドレス)を限る、推測しにくいURLとパスワード、多要素認証、ログイン失敗10回以下でロック
②データの置き場所顧客データやログを公開される場所に置かない、アップロードできるファイルを限る
③ウェブアプリ脆弱性診断、プラグインとソフトの更新、自社で手を加えた部分の確認
④マルウェアサーバーと業務のパソコンにウイルス対策ソフト、定期的な全体スキャン
⑤番号の当てずっぽう確認カード番号を何度も試す使われ方への入力制限など

出典:附属文書20 別紙a「EC加盟店におけるセキュリティ対策一覧」1.1版(2026年3月)。言いかえは当社によります。

ネットショップ担当の方へ

  • 使っているEC-CUBEの版と、入れているプラグインの版を書き出し、公式の脆弱性情報とくらべる。
  • 管理画面に入れる場所を社内などに限り、多要素認証を使っているかを確かめる。
  • 使わなくなった管理用のフォルダや、テスト用のファイルが残っていないかを見る。
  • 決済画面のファイルが、自分たちの知らないうちに変わっていないかを定期的にくらべる(当社の見方)。
  • 制作会社や保守会社に任せている場合は、だれが更新するかを契約で確かめる。
  • カード会社(加盟店契約の会社)に出す対策の申告書と、実際の設定がそろっているかを見る。

決済画面のファイルを定期的にくらべる点検は、協会の資料で項目名として確認できませんでした。当社の見方として挙げています。

お店から漏えいのお知らせが届いたら、カード会社への連絡と明細の確認から始めます

まずカード会社に相談し、明細を1件ずつ見ます。

  1. お知らせにある、漏れたおそれのある期間に、そのお店でカードを使ったかを思い出します。
  2. カードの裏にある番号から、カード会社に電話します。お知らせメールの中のリンクや番号は使いません。
  3. カードを止めるか、番号を変えて作り直すかを相談します。
  4. 利用明細を、合計ではなく1件ずつ見ます。身に覚えのない少額の請求にも気をつけます。
  5. 同じカードを登録しているほかのサービスは、新しい番号に登録しなおします。

静岡県の消費生活の相談例では、気づくのが遅れた分は返金されなかったことがあります。明細はこまめに見ることが大切だとしています。迷ったときは、消費者ホットライン188で相談できます。

カートサービスの会社で起きた漏えいは、別の記事ショップサーブの情報漏洩で自分は対象か、Eストアー約2,335万人とカード番号の先頭6桁・下4桁で整理しています。

よくある質問

カード番号を下4桁しか表示しないお店でも、番号は漏れるのですか。

表示の仕方とは別の話です。画面の改ざんは、お客さまが番号を入力するときに起きるため、お店がどう表示するかにかかわらず漏れるおそれがあります。

EMV 3-Dセキュアがあれば、カード番号は漏れないのですか。

漏れることそのものは防げません。EMV 3-Dセキュアは、盗まれた番号がほかのお店で使われるのを防ぐための本人確認です。ガイドラインでも、漏えいを防ぐ脆弱性対策とは別の対策として分けられています。

カートサービスやモールを使っているお店は、自分で何もしなくてよいのですか。

IPAのECサイト向けガイドラインは、SaaSやモール型のサービスを使うお店も対象にしています。サービスの会社が更新する範囲と、お店が設定する範囲(管理画面のパスワードなど)を分けて確かめることが大切です。

漏えいのお知らせメールが本物か不安なときは、どうすればよいですか。

メールの中のリンクは開かず、お店の公式サイトのお知らせ欄を自分で開いて確かめます。カードのことは、カードの裏にある番号からカード会社に問い合わせます。

なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか。

当社もウェブサイトや業務クラウドを使う中小の会社として、同じ立場の会社や読者が確かめるときの手がかりになるよう、公的機関と業界団体の資料をもとに整理しました。

言葉の意味6語
非保持化
お店がカード番号を自社のサーバーに保存・処理・通過させないしくみ。決済代行会社が預かります
決済画面の改ざん
カード番号を入力する画面のファイルやプログラムが、知らないうちに書きかえられること
番号盗用
カードそのものではなく、番号などの情報だけを使って不正に買い物をされること
EMV 3-Dセキュア
カードを使うときに、持ち主本人かをカード会社が確かめるしくみ
JVN
JPCERT/CCとIPAが運営する、日本で使われるソフトの脆弱性情報サイト
脆弱性
ソフトの作りの弱いところ。悪用されると、書きかえや情報の持ち出しにつながります
出典・エビデンス一覧13件(公的機関5・業界団体5・企業2・報道1)
  • ※数値・版数は2026年10月26日時点
  • ※攻撃の具体的な手順は悪用を防ぐため記載していません
  • ※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の判断を推奨するものではありません。

文:プラスチックパレット株式会社 編集部

「情報漏えい・サイバー攻撃」の新しい記事

「情報漏えい・サイバー攻撃」の記事をすべて見る(77本)

ほかのテーマ:テーマから探す

この記事は役に立ちましたか?
押すだけで送信されます。内容の改善に使います(個人を特定する情報は集めません)
トップへ戻る