解説

漏えい件数の「最大」「おそれ」はどう読むか、タイムズカー・ニフティで変わった数字

2026年10月26日 公開10月29日 18時(日本時間)までの情報読む時間 約9分

この記事の答え

何が起きた
タイムズカーやニフティ、ユミルリンクなどで、第1報のあとに件数や項目が変わる発表が続きました。
お知らせを読む人への影響
「最大」は上限、「おそれ」は確証がない段階の言葉です。件・人・延べは数えるものがちがい、足せません。
確かめておくこと
大きな数字より、自分に連絡が来たか、どの項目が漏れたかを見てください。
次に見るところ
いちばん新しい「第○報」の日付と、前の報告から変わった項目です。
法令の報告基準1,000人超施行規則第7条4号。「おそれ」の段階もふくむ
タイムズカー 本人確認書類約160万件→約146万件第3報はアカウント数、10月23日は画像データ(外部送信の痕跡)
@nifty光最大54万→最大1万8,000件10月19日→21日。INTERNET Watchの報道

件数は各社の表記のまま。単位がちがうため、比べたり足したりはできません。

「漏えい」「滅失」「毀損」はちがう出来事で、報告は「おそれ」の段階から始まります

外に出たのは「漏えい」だけです。法令は、まだ確かでない「おそれ」の段階も報告の対象にしています。

会社のお知らせには「漏えい」「滅失」「毀損」という言葉が出てきます。どれも法令の言葉で、意味がちがいます。

3つの言葉の意味(個人情報保護委員会のQ&A)

漏えい個人データが外部に流出すること

外に出てしまった

滅失個人データの内容が失われること

なくなってしまった

毀損内容が意図しない形で変わること、内容はあっても使えない状態になること

こわされた・使えなくなった

出典:個人情報保護委員会 Q&A(漏えい等報告 Q4-5)。2026年10月26日に確認。

3つをまとめて「漏えい等」とよびます。たとえば、データを暗号化して使えなくする攻撃は「毀損」にあたることがあります。

大事なのは、外に出たのは「漏えい」だけだという点です。お知らせの見出しが「漏えい等」でも、本文でどれにあたるかを見てください。

報告が必要な4つの場合にも「おそれ」が入っています

個人情報保護法の施行規則第7条は、会社が個人情報保護委員会へ報告する場合を4つ決めています。

要配慮個人情報を含む場合

病歴など、扱いに特に注意が必要な個人情報

お金の被害が出るおそれがある場合

不正に使われて、お金の被害が出るおそれがある

不正の目的による場合

攻撃など、不正の目的をもった行為による

本人の数が1,000人を超える場合

4つのうち、人数で決まるのはこの1つだけ

4つとも、条文の終わりは「発生し、又は発生したおそれがある事態」です。つまり、まだ確かでない段階でも報告の対象になります。

個人情報保護委員会によると、報告はおおむね3〜5日以内の「速報」から始まります。早い段階の数字には、まだ確かでない分がふくまれやすい、ということです。

「おそれ」は確証がない段階、「最大」は多くてもこの数という上限です

「おそれ」「可能性」「最大」は、実際に外に出た数を言い切った言葉ではありません。

「おそれ」と「可能性」は、どちらも「外に出たとは言い切れないが、出たかもしれない」という段階を表す言葉です。

「おそれ」の考え方(BUSINESS LAWYERSが紹介するガイドラインの説明・要旨)

その時点で分かっている事実から漏えいが疑われるが、漏えいした確証がない場合が「おそれ」にあたる。

個人情報保護委員会のQ&Aも、ウイルスを見つけただけで、ただちに「おそれ」とするわけではないとしています。防御のしくみが働いたか、外への通信を止めたかも考えるとしています。

「最大」は上限です

「最大○件」は、「多くてもこの数まで」という上限です。実際に外に出た数が、その数だとは限りません。

調べる範囲を広めに取ると、上限は大きくなります。調べが進んで範囲がしぼられると、上限は下がります。

「暗号化」と書いてあるときの読み方

個人情報保護委員会のQ&Aでは、高度な暗号化を、その時点の技術で第三者が読めない状態にするものとしています。あわせて、もとに戻す鍵を分けて守ることなども求めています。

お知らせに「暗号化されていた」とあっても、それだけで安心とは言えません。会社が「読まれるおそれ」をどう書いているかを見てください。

件数は第1報のあと、へることも、ふえることも、項目が変わることもあります

数字が変わるのは、調べが進んで範囲が分かってきたためです。どの報告の数字かを日付で確かめてください。

第1報の数字は、その時点で分かっている範囲の数です。調べが進むと、数がへることも、ふえることも、項目が変わることもあります。

2026年10月に公表された4つの例を並べます。どれも会社の発表や報道にもとづく数字です。

タイムズカー(パーク24)

約160万件 → 1,464,800件(外に送られた跡)

専門機関の調べで、外に送られた跡があるものと、見られた跡だけのもの(891,602件)に分けた。はじめの約160万件はアカウント数

発表:9月29日(第3報)→ 10月23日(第5報)

@nifty光(ニフティ)

最大54万2,513件 → 最大1万8,000件

影響は@nifty光だけで、ほかの2サービスと自社サイトからの申込みは対象外と分かった(INTERNET Watchの報道)

発表:10月19日(第1報)→ 10月21日(第2報)

ローソンID(ローソン)

数は同じで、漏れた項目が変わった

メールアドレスとメルマガ取得情報は漏えいしていないと訂正。生年月日は「漏えいの可能性」に変わった

発表:10月8日(公表)→ 10月24日(更新)

Cuenote FC(ユミルリンク)

延べ約900万件 → 延べ5,162万8,280件

漏えいが確認されたシステムが、5から50に広がった

発表:10月19日(第一報)→ 10月26日(第二報)

出典:パーク24 第3報(9月29日)・第5報ほか(10月23日)。INTERNET Watch(10月21日)。ローソン(10月24日更新)。ユミルリンク 第一報(10月19日)・第二報(10月26日)。

タイムズカーでは、同じ第5報で連携サービスIDの数も9件から4件に直しています。数がへる直しと、項目がふえる直しが、同じ時期に起きることがあります。

タイムズカーの10月23日の数字(投資家向けのお知らせ)

氏名・住所など外に送られた跡があるもの

6,628,007件

本人確認書類の画像外に送られた跡があるもの

1,464,800件

本人確認書類の画像見られた跡だけのもの

891,602件

本人確認書類の画像上の2つのあわせた数

2,356,402件

パーク24は、暗号化されたデータはすぐには読めないものの、将来もとに戻されるおそれを完全には否定できないとしています。

当社の見方では、数字が変わること自体は、調べが進んだしるしです。読む側は、どの報告の数字かを日付と「第○報」で確かめると、取りちがえにくくなります。

件・人・アカウント・延べは数えるものがちがうので、足せません

同じ「件」でも、人の数とはかぎりません。会社をまたいだ合計や、単位のちがう数の引き算はできません。

件数の単位は、会社によってちがいます。同じ「件」でも、何を1つと数えたかがちがうことがあります。

件数の単位と、数えているもの

人・名本人の数。同じ人を1人にまとめた数

法令の1,000人の基準

アカウント登録の数。1人が2つ持てば2

タイムズカー第3報 約160万件

件(データ)データのまとまりの数

タイムズカー第5報 約146万件

延べ重なりを除かずに足した数

ユミルリンク第二報 5,162万8,280件

見出しと単位がずれる例見出しは人数、単位は件

ローソン 対象人数 215万5,345件

出典:施行規則第7条、パーク24、ユミルリンク(10月19日・26日 適時開示)、ローソンの各発表。2026年10月29日に確認。

タイムズカーの例では、第3報は「アカウント数」、第5報は「画像データ」の数です。数える単位が変わっているので、そのまま引き算はできません。パーク24は、この差の理由を説明していません。

「延べ」は、同じ人が何度も数えられているかもしれない数です。ユミルリンクは、第一報の延べ約900万件から、第二報で延べ5,162万8,280件になりました。第一報には、重なりをどう扱ったかの記載はありません。

別の会社の数字は足せません

A社の「件」とB社の「人」を足すと、意味のない数になります。同じ人が両方に入っていることもあります。

当社の一覧記事も、件数は発表の表記のままで、合計はしていません。

自分に関係するかは、件数ではなく連絡と漏れた項目で決まります

大きな数字よりも、本人への連絡があったか、どの項目が漏れたかが手がかりになります。

何万件という大きな数字を見ても、自分が入っているかは分かりません。見るところは、本人への連絡と、漏れた項目です。

個人情報保護委員会によると、会社は本人に、概要や漏れた項目、原因などを知らせます。一人ずつ知らせるのがむずかしいときは、ウェブでの公表や問い合わせ窓口で代えることがあります。

発表の言葉と、読む人が確かめること

漏えい

外に出た

確かめること:自分に連絡が来たか、どの項目か

滅失・毀損

なくなった・こわされた

確かめること:サービスが止まっていないか、登録の内容が正しいか

漏えいのおそれ・可能性

出たとは言い切れない段階

確かめること:あとの報告で「確認」に変わったか

最大○件

多くてもこの数(上限)

確かめること:あとの報告でしぼられたか

件・人・アカウント・延べ

数えているものがちがう

確かめること:何を1つと数えたか。ほかの数字と足さない

外部送信の痕跡/アクセスの痕跡

外に送られた跡/見られた跡だけ

確かめること:自分がどちらに入るか、会社の連絡を待つ

暗号化されていた

そのままでは読めない形

確かめること:会社が「読まれるおそれ」をどう書いているか

第○報・訂正

前の発表の直し

確かめること:最新の報告の日付と、変わった項目

当社が各社の発表と個人情報保護委員会の資料をもとに整理したもの。2026年10月29日時点。

お知らせを読んだ方へ

いちばん新しい「第○報」の日付を見る

前の報告の数字のまま読まない

使ったサービスと時期が範囲に入っているかを見る

サービス名と、使った時期の両方を見る

漏れた項目を見る

パスワード・カード・本人確認書類などが入っているか

連絡は会社の公式サイトで確かめる

メールのリンクからではなく、自分で公式サイトを開く

コピペ枠:お知らせの読み取りメモ

「全文をコピー」を押すと、そのまま貼り付けられます。〇〇の部分を書き換え、当てはまるものを残して使ってください。

お知らせの読み取りメモ

会社・サービス名:〇〇〇〇

いちばん新しい報告:第〇報(〇月〇日)

自分が使った時期:〇年〇月〜〇年〇月(範囲に入っている/入っていない)

漏れた項目:氏名/住所/電話番号/メールアドレス/パスワード/カード/本人確認書類/その他(〇〇)

書き方:「確認」(言い切り)/「おそれ」「可能性」/「最大〇件」

会社からの連絡:来た(〇月〇日・メール/郵便)/まだ来ていない

自分が対象かの確かめ方は、別の記事にまとめています。

よくある質問

件数がへったら、もう安心してよいですか。

件数がへっても、自分が残った範囲に入っているかは別です。漏れた項目が増えることもあるため、最新の報告で自分のサービスと項目を確かめてください。

1,000人以下の漏えいなら、会社は報告しなくてよいのですか。

施行規則第7条では、人数に関係なく報告の対象になる場合が3つあります。病歴などの要配慮個人情報、お金の被害のおそれ、不正の目的による漏えいです。1,000人は4つ目の基準です。

「アクセスの痕跡のみ」と書かれていたら、漏えいではないのですか。

見られた跡はあるが、外に送られた跡は見つかっていない、という意味です。タイムズカーの10月23日の発表では、この2つを分けて数えています。扱いは会社の説明と連絡を確かめてください。

ニュースで見た件数と、会社の発表の件数がちがうのはなぜですか。

報道は発表の一部を丸めたり、前の報告の数字を使ったりすることがあります。会社の公式発表の日付と「第○報」を見て、いちばん新しい数字を確かめてください。

なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか。

当社もウェブサイトや業務クラウドを使う中小の会社です。同じ立場の会社や読者が確かめるときの手がかりになるよう、公的機関の資料と各社の公式発表をもとに整理しました。

言葉の意味5語
漏えい等
漏えい・滅失・毀損をまとめた言葉
速報
個人情報保護委員会への最初の報告。おおむね3〜5日以内
第○報
会社が同じ件で出すお知らせの何回目か
要配慮個人情報
病歴など、扱いに特に注意が必要な個人情報
延べ
同じものが重なっていても除かずに足した数
出典・エビデンス一覧15件(法令・公的機関6・企業の発表6・報道や解説3)
  • ※数値は2026年10月29日時点。件数は各社の表記のままで、合計していません
  • ※ニフティの数字は公式発表の原文を取得できなかったため、INTERNET Watchの報道によります
  • ※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の判断を推奨するものではありません。

文:プラスチックパレット株式会社 編集部

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