物流資材 / 尿素・アドブルー
尿素の売り込みメールはどこまで信用できるか、CIF東京485ドルのベトナム産とLOIの先出しを求めるトルコの例
尿素やアドブルーを扱う会社には、海外から英語や日本語の売り込みメールが届きます。2026年8月下旬から10月上旬までの約6週間に当社が確認したのは6件で、条件も書き方もばらばらでした。届いたメールの中身を国と条件で並べ、国内の在庫品と比べるときの注意、どこまで信用できるかを見分ける点、売り込みが届く背景を整理しました。
ANSWER
6件のうち価格を出したのは、ベトナム産のCIF東京1トン485ドル(100トン)の1件だけでした。CIFは日本の港までの運賃と保険を含む価格で、通関や国内輸送は含まれません。月10万トンの供給をうたい、先に購入の意思を示す書類(LOI・ICPO)を求める売り込みには、慎重に構えるのが安全です。
確認した売り込み
6件
2026年8月26日〜10月9日、5社から
価格を出したもの
485ドル/トン
ベトナム産、CIF東京、100トン(8月26日の見積)
国内の在庫品(参考)
9.1万円/トン
大阪倉庫渡し・税別、1トン入りフレコン
この記事の要点
- 2026年8月26日から10月9日までに、中国・エジプト・トルコ・ベトナム産の尿素とアドブルーの売り込みを6件確認しました。5社からで、広州のアドブルーメーカーは1日あけて2通目を送ってきました。
- 価格を出したのは、シンガポールの商社が示したベトナム産の工業用尿素1件だけです。CIF東京1トン485ドル、100トン、見積の有効期限はメールが届いた当日でした。ほかの4社は価格を書いていません。
- CIFは日本の港に着くまでの価格で、通関や港からの輸送、保管の費用は入っていません。大阪の国内業者が示した倉庫渡し1トン9万1,000円(税別)とは、受け渡しの条件をそろえてから比べる必要があります。
- トルコの会社は本業が大理石で、国営の肥料工場の販売代理として月10万トンを供給できると書き、先にLOI・ICPOを出すよう求めていました。規模の目安として、中国の2026年の尿素輸出枠330万トンと比べても大きな量です。
- 国際商業会議所(ICC)の商業犯罪対策部門は2006年に、尿素とセメントを中心とする商品取引詐欺の事例を公表し、未承諾のメールで大量の供給を持ちかける手口に注意を促しました。
海外から届いた尿素の売り込み6件
2026年8月26日から10月9日までに当社が確認した、海外からの尿素とアドブルーの売り込みを並べました。会社名と担当者名は伏せ、国と条件で示しています。
約6週間で6件、5社から
売り込みはどれも英語か日本語のメールで、取引のない相手から届いたものです。工業用の尿素(粒状・小粒)が3件、アドブルーの完成品が2件、尿素とアドブルーの両方が1件でした。
| 受信日 | 国・地域 | 品目 | 主な条件・内容 |
|---|---|---|---|
| 8月26日 | シンガポールの商社(韓国事務所) | ベトナム産の工業用尿素(粒状・コーティングなし) | CIF東京1トン485ドル、100トン、フレコンとプラスチックパレットの荷姿、ベトナムの検査会社による数量・品質検査。見積の有効期限は8月26日 |
| 9月20日 | 中国(天津) | 工業用尿素46%(粒状を含む) | 仕様と最新の見積を出すという提案のみ。価格なし |
| 9月30日 | トルコ | 尿素46% | 本業は大理石と鉱業。国営の肥料工場の販売代理として月10万トンまで供給できるとし、先にLOI・ICPOを出すよう求める。価格なし |
| 10月2日 | エジプト | 尿素、車両用尿素水(アドブルー) | 必要な製品・仕様・数量・仕向地を出せば見積を出し、Zoomでの面談もできるとする。価格なし |
| 10月8日 | 中国(広州) | アドブルー(AUS 32)の完成品、充填機 | ISO 22241に適合し、VDA関連の品質書類があるとする。10L・20L・200L・1,000Lの容器。完成品の輸入を提案。価格なし |
| 10月9日 | 中国(広州)※10月8日と同じ会社 | アドブルー(AUS 32)の完成品 | 1日あけた2通目。毎月SGSの検査を受けている、大口なら安くできる、既存の仕入先がいても比べる用に見積を出すとする。品質証明書、MSDS、TDSなど6点を添付。価格なし |
出典:当社が確認した各社のメール(2026年8月26日〜10月9日)。金額と条件はメールの記載どおりで、当社が取引したものではありません。日付は日本時間です。
天津と広州の会社は、メールの中で、売り込み先の事業内容を調べたうえで連絡したと書いていました。売り手は、AIを使ったウェブ検索で、サイトに「尿素」や「UREA」と書かれている会社を探し、そこを目がけて問い合わせを送ってきているとみられます(当社の見方)。サイトに尿素やアドブルーの情報を載せている会社には、こうした売り込みが続けて届くと考えて、注意しておく必要があります。
価格を出したのは1件だけ
6件のうち、具体的な価格を書いていたのはベトナム産の1件だけでした。ほかの4社は、こちらから仕様や数量を出せば見積を出す、という書き方です。比べる材料として、同じ時期に大阪の国内業者から届いた、在庫品の案内を並べました。
| 項目 | ベトナム産(海外の商社) | 国内の在庫品(大阪の業者) |
|---|---|---|
| 価格 | 1トン485ドル(1ドル159円で約7万7,000円) | 1トン9万1,000円(税別) |
| 受け渡しの条件 | CIF東京(東京港までの運賃・保険込み) | 大阪倉庫渡し |
| 価格に入っていない費用 | 通関、港での荷揚げ・荷役、倉庫や工場までの輸送、保管 | 倉庫から自社までの輸送 |
| 数量 | 100トン | 最低数量の制限なし |
| 荷姿 | フレコンとプラスチックパレット | 1トン入りフレコン |
| 品質の書類 | ベトナムの検査会社による数量・品質検査 | 中国の2メーカー(石炭由来・天然ガス由来)の成績書 |
| 時点 | 2026年8月26日の見積(当日限り) | 2026年9月14日の案内 |
円換算は当社の計算で、2026年8月26日のドル円(1ドル159円台前半)をもとに1ドル159円としました。国内業者の案内は海外からの売り込みではありませんが、比べる材料として載せています。
CIFは、売り手が日本の港までの運賃と保険を負担する条件で、港に着いてからの通関や輸送、保管の費用は買い手が負担します。輸送中の危険は、積み出し港で船に積んだ時点で買い手に移り、港での荷揚げの費用も、運送の契約で売り手持ちになっていなければ買い手の負担です。倉庫渡しの国内価格とは、受け渡しの場所と含まれる費用が違うため、そのまま高い安いを比べることはできません(当社の見方)。
この章の結論
約6週間で5社から6件の売り込みが届き、価格を出したのはベトナム産のCIF東京1トン485ドルの1件だけでした。売り手はAIのウェブ検索で「尿素」「UREA」と書く会社を探しているとみられ、注意が必要です。
売り込みはどこまで信用できるか
6件の書き方には、いくつかの型がありました。型ごとに、確かめたい点を整理しました。どれも、その会社が詐欺だと決めつけるものではありません。
大量の供給をうたい、先に書類を求める型
トルコの会社は、本業は大理石と鉱業だとしたうえで、国営の大きな肥料工場の販売代理として、尿素46%を月10万トンまで供給できると書いていました。そのうえで、購入の意思を示す書類(LOI・ICPO)に、月の数量、購入の期間、仕様、受け渡し条件を書いて先に送るよう求めています。価格はありません。
月10万トンを1年続けると120万トンです。中国の2026年の尿素輸出枠は330万トンとされており、規模の目安として、その3分の1を超える量を、本業が別の会社が1社で扱うという話になります(当社の計算)。
国際商業会議所(ICC)の商業犯罪対策部門は2006年に、セメントや尿素などの商品取引で、未承諾のメールや仲介者を通じて、年に数十万トン規模の供給や市場価格を大きく下回る価格を持ちかけ、偽の書類を使う詐欺の事例を公表しました。資金の証明(Proof of Funds)や前払いの保証を求める条件も、注意すべき点として挙げています。先に書類を出すと、自社の名前や必要な量が仲介者の間で回ることもあります。工場との関係を示す書類や、過去の出荷の実績を先に求めるのが安全です(当社の見方)。
価格を出さず、条件だけを求める型
エジプトと天津の会社は、価格を書かず、必要な製品・仕様・数量・仕向地を出せば見積を出すとしていました。新しい取引先を探す最初の連絡としては珍しくない書き方です。
ただ、エジプトの会社のメールの署名には、エジプトのほかに、モロッコとルーマニアの国番号の電話番号が並んでいました。会社の登記や工場の所在地、輸出の実績を、メールの中の情報だけでなく、第三者の情報で確かめてから条件を出すと安心です(当社の見方)。
書類をそろえて押してくる型
広州のアドブルーメーカーは、10月8日に最初のメールを送り、翌9日に2通目を送ってきました。2通目には品質証明書、MSDS、TDS、RoHSの証明など6点の書類が添えられ、毎月SGSの検査を受けていると書かれています。
アドブルー(AdBlue)はドイツ自動車工業会(VDA)の登録商標で、日本で売られている製品は、尿素濃度32.5%の水溶液として日本産業規格(JIS K 2247-1)に適合していると表示しているものがあります。完成品を輸入するなら、書類の発行元に直接確かめること、日本の規格に適合しているか、AdBlueの名前を使ってよいかを、あわせて確かめる必要があります(当社の見方)。
この章の結論
大量の供給をうたい先にLOIを求める型、価格を出さず条件だけを求める型、書類をそろえて押す型がありました。工場との関係、会社の実在、書類の発行元を第三者の情報で確かめます。
なぜ今、日本に尿素の売り込みが来るのか
2026年は、中国が尿素の輸出を絞る一方で、中東情勢で物流が揺れ、買い手も売り手も中国以外の調達先を探す年になりました。
中国の輸出枠と、中国以外の産地
業界紙の報道によると、中国の2026年の尿素輸出枠は330万トンで、2025年の実際の出荷量(約500万トン)より約170万トン少なくなっています。輸出の最低価格(FOB、積み出し港での価格)は、大半の仕向地向けで1トン430〜440ドル、インド向けで500ドルとされています。
今回の6件のうち、中国以外の産地はベトナム、エジプト、トルコでした。中国の輸出が絞られるなかで、中国以外の産地の売り手も、日本を含む新しい買い手を探していると考えられます(当社の見方)。
アドブルーの完成品を売り込む動き
これまでの売り込みは原料の尿素が中心でしたが、今回は広州とエジプトの会社が、アドブルーの完成品を売り込んでいます。
2026年のアドブルーの品薄では、原料の尿素だけでなく、小口販売に使う容器(BIBの内袋)が足りないことも原因になりました。完成品の輸入を考えるときは、容器と輸送の費用も含めて比べる必要があります。
この章の結論
中国の輸出枠が前年より約170万トン少なく、ベトナム・エジプト・トルコなど中国以外の産地からの売り込みが届いています。アドブルーの完成品の輸入提案も出始めました。
海外から尿素の売り込みが届いたら確かめる3つのこと
当社が確認したメールと、国際的な経済団体の注意喚起をもとにまとめました。取引するかどうかは、自社の用途と数量にあわせて判断してください。
価格は、受け渡しの条件をそろえてから比べる
CIFは港まで、FOBは積み出し港まで、倉庫渡しは倉庫までの価格です。通関、港からの輸送、保管、為替の時点まで含めて、自社の工場や倉庫に届くまでの1トンあたりの費用に直してから、国内の在庫品と比べます。
先にLOIや前払いを求められたら、いったん止まる
月数万トン以上の供給をうたい、価格を出す前に購入の意思を示す書類や資金の証明を求める売り込みには、慎重に構えます。工場との契約書や過去の出荷の書類を先に求め、出せない相手とは条件のやり取りに進まないのが安全です。
書類は発行元に確かめ、まず少ない量で試す
品質証明書や検査の報告書は、発行した検査機関に番号を伝えて本物か確かめます。初めての相手とは、1コンテナなど少ない量で品質と納期を確かめてから、継続の取引に進みます。アドブルーの完成品なら、日本の規格への適合も確かめます。
よくある質問
- 海外の尿素の売り込みで、価格はいくらでしたか
- 2026年8月26日から10月9日までに当社が確認した6件のうち、価格を出したのはベトナム産の工業用尿素1件で、CIF東京1トン485ドル(100トン)でした。1ドル159円で換算すると約7万7,000円ですが、通関や国内輸送の費用は含まれていません。
- LOIやICPOとは何ですか
- LOIは購入の意思を示す書類、ICPOは「取消不能の購入申込書」を名乗る書類で、法令などで定めのある書類ではなく、仲介者を通じた商品取引の売り込みでよく求められます。価格や工場との関係が分からないうちに出すと、自社の名前や必要な量が仲介者の間で回ることがあるため、慎重に扱います。
- CIF東京485ドルと国内の1トン9万1,000円は、どちらが安いのですか
- 受け渡しの条件が違うため、そのままは比べられません。CIFは東京港に着くまでの価格で、通関、港での荷役、倉庫や工場までの輸送、保管は別にかかります。国内の価格は大阪倉庫渡しです。自社に届くまでの費用に直してから比べます。
- アドブルーの完成品を輸入するときに確かめることは何ですか
- 品質証明書の発行元への確認、日本の規格(JIS K 2247-1)への適合、AdBlueの名前を使ってよいかの3つです。AdBlueはドイツ自動車工業会(VDA)の登録商標です。
- なぜ自社に海外から尿素の売り込みが届くのですか
- 売り手は、AIを使ったウェブ検索で、サイトに「尿素」や「UREA」と書かれている会社を探し、そこを目がけて問い合わせを送ってきているとみられます(当社の見方)。サイトに尿素やアドブルーの情報を載せている会社には、同じような売り込みが続けて届くため、注意が必要です。
- なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか
- 当社はインドネシア産の尿素を扱っており、尿素とアドブルーの売り込みに日ごろ接しています。同じように海外からの売り込みを受けた会社が、条件の比べ方と確かめる点を判断できるよう、届いたメールと公表資料をもとに整理しました
出典・エビデンス一覧6件(国際団体・政府・製品の公表資料3・業界紙と市場の報道3)
国際団体・政府・製品の公表資料
- 国際商業会議所(ICC)「CCS uncovers commodity frauds」(2006年11月22日)
- 三井化学「アドブルー®」
- 中東情勢に関する関係閣僚会議 資料4(2026年4月30日)
業界紙と市場の報道
- Fertilizer Daily「China's 3.3 million tonne urea quota and FOB price floors reshape global nitrogen trade for Q4」(2026年9月18日)
- OANDA証券「ドル円は円安で159円台前半」(2026年8月26日)
- LOGISTICS TODAY アドブルーの品薄と容器の不足の報道(2026年4月21日)
当社の関連記事
- アドブルーの値段はなぜ上下したのか、尿素の2026年を1ページで振り返る|ホルムズ海峡・三井化学・インドネシア産
- アドブルーの品薄はいつまでか、尿素価格の3局面と容器不足という第二の原因
- AUS40(船舶用尿素水)にAdBlueは使えるのか|ISO 18611とISO 22241の規格差、どこで買えるか
- インドネシア Pupuk Indonesia産 高品位尿素の調達窓口、アドブルー用・冷却用・工業用をワンストップで
- ※売り込みの内容は、当社が確認した各社のメール(2026年8月26日〜10月9日)によります。会社名・担当者名・宛先は載せていません。
- ※価格と条件はメールの記載どおりで、当社が取引したものでも、その価格で買えることを示すものでもありません。
- ※「確かめたい点」は当社の見方で、特定の会社が詐欺であることを示すものではありません。
- ※円換算は当社の計算で、為替は2026年8月26日の水準(1ドル159円)を使いました。
「尿素・アドブルー」の新しい記事
- アドブルーは冬に凍るのか、マイナス11℃の凍結と解凍後の使い方・保管の注意点
- AUS40(船舶用尿素水)にAdBlueは使えるのか|ISO 18611とISO 22241の規格差、どこで買えるか
- 瞬間冷却パックの作り方と持続時間、尿素100gと水100mLの実測データ
- インドネシア Pupuk Indonesia産 高品位尿素の調達窓口、アドブルー用・冷却用・工業用をワンストップで
- 尿素の第二調達先 Pupuk Indonesia|nitrea の規格・安全性・荷姿と用途別の技術情報
- アドブルー原料用尿素の第二調達先|Pupuk Indonesia 製、1tフレコン、国内在庫から1週間〜10日
ほかのテーマ:テーマから探す