サプライチェーン・レポート
肥料用尿素が10月に再び上がるのはなぜ、湾内92万トンとインド・ブラジル
この記事の答え
- 何が起きた
- 肥料用の尿素の値段が10月に再び上がり始めました。中東の積み出し港渡しで1トン447.50ドルです(10月27日)。
- 会社への影響
- 湾の中で約92万トンが出られず(報道)、インドとブラジルが買いに戻っています。日本では量より先に値段に表れる見込みです。
- 確かめておくこと
- 日本の尿素の7割以上はマレーシア産です。JA全農の11月からの値段を確かめてください。
- 次に見るところ
- ホルムズ海峡を通る肥料の船、インドの次の買い付け、中国の輸出の管理です。
値段と量は報道によります。積み出し港渡しと運賃込みの値段は条件が違うため、そのまま比べられません。
尿素の値段は、10月に再び上がり始めました
春に約780ドル、夏に300ドル台、10月27日は中東で447.50ドルです。
肥料用の尿素の国際価格は、夏に下がったあと、10月に入って再び上がり始めました。10月27日の主な産地の値段は次のとおりです。
10月27日の粒状尿素の値段(1トンあたり)
エジプト積み出し港渡し(前日比+2.50ドル)
535ドル
ブラジル運賃込み(前日比+2.50ドル)
477.50ドル
中東積み出し港渡し(前日比+7.50ドル)
447.50ドル
米国ニューオーリンズはしけ渡し、1ショートトン(約907kg)あたり
435.75ドル
出典:Discovery Alert(2026年10月28日)。どの価格調査会社の値かは記事に書かれていないため、目安として見てください。積み出し港渡しと運賃込みは条件が違うので、そのまま比べられません。
ブラジルでは、10月26日の週に運賃込みで476〜488ドルの取引が報じられました。前の週の464〜482ドルから上がっています(ウクライナの農業情報サイト UkrAgroConsult が、商社 Nobel Trading の報告を引用)。
春に跳ね上がり、夏に下がり、秋にまた上がりました
| 時期 | 値段 | 出典 |
|---|---|---|
| 4月中ごろ | 中東の積み出し港渡しで約780ドル | Argus(Discovery Alertが引用) |
| 4月 | インドの緊急買い付けで935〜959ドル(運賃込み) | 中国・広発先物 |
| 5月下旬 | インドの買い付けで444.9〜449.3ドル | 同上 |
| 8月 | インドの買い付けで、いちばん安い申し込みが390.25ドル | Fertilizer Daily |
| 10月7日 | インドの買い付けで、いちばん安い申し込みが352.10ドル | 中国の肥料会社 Keyuan |
| 10月27日 | 中東447.50ドル、エジプト535ドル | Discovery Alert |
インドの買い付けは運賃込みの値段で、中東の積み出し港渡しとは条件が違います。
夏に下がったのは、中国が輸出を再開したことと、中東の尿素の一部が紅海の港から積み出されたためです(中国の広発先物の分析)。秋に再び上がり始めた理由を、次の章から量の面で見ていきます。
湾の中で、約92万トンの尿素が出られずにいます
湾岸は世界の尿素の輸出の約3分の1を出しています。
湾岸の国々は、ふだん世界の尿素の輸出の約3分の1を出しています(国際貿易センター、ITC)。月に約100万トンです。その出口がホルムズ海峡です。
湾岸の尿素の出荷の落ち込み
4月の尿素の輸出湾岸の国々の前の年との比較(ITC)
−83%
9月初めの海峡を通る肥料の船戦争の前より約94%少ない(WTOと海運調査会社AXSMarineの集計)
ほぼゼロ
10月下旬に湾の中で出られない尿素21隻以上の積み荷(Argus・Kplerの数字。報道)
約92万トン
10月下旬の状況について、Discovery Alertは次のように伝えています(ArgusとKplerの数字の引用で、それぞれの公表文そのものは確かめられていません)。
イラン以外の粒状尿素は、10月16〜18日に出た船を最後に、海峡を通れていません。一方で、湾の中での積み込みは続いています。積み荷を抱えた船が湾の中に増えている状態です。
船は通っているが、攻撃は増えています
海峡が完全に閉じているわけではありません。英国の海運情報会社 Lloyd's List によると、10月5〜11日に海峡を通ったイランと関係のない貨物船は104隻で、1日約15隻でした。前の週より17%少なく、8月の平均より31%多い水準です。
ただ、10月前半の船への攻撃・保安上の事件は少なくとも28件で、戦争が始まってから最も多くなりました(Lloyd's List、10月22日)。タンカーだけでなく、ばら積み船やコンテナ船も狙われています。保険がつかないため、肥料の船は動きにくいままです。
工場が壊れたのではなく、運び出せないのが問題です 中国の広発先物の分析は、湾岸の問題を「作った尿素が運び出せないこと」としています。そのため、海峡が本当に開けば、たまった尿素が一気に出て、値段は大きく下がる可能性があります。
足りない分を埋めているのは中国です
中国は輸出を少しずつ認める一方、国内の値段を抑えています。
湾岸の分を埋めている最大の出し手は中国です。ほかにロシア・エジプト・米国が続きます。
中国:輸出を少しずつ認め、国内の値段は抑えています
中国の尿素の輸出
6月春の作付けのため3月に輸出を止めていた
7千トン
7月輸出の再開(Fertilizer Daily)
40.3万トン
8月前の月より30%増、平均415.28ドル(中国税関、Mysteel)
52.46万トン
中国の報道によると、2026年の尿素の輸出の枠は、9月末までに500万〜600万トンに広がりました。8月のインドの買い付け170万トンのうち、少なくとも120万トンを中国が出しました(Fertilizer Daily)。9月中ごろの中国の小粒の尿素は、積み出し港渡しで355〜365ドルでした。主な産地でいちばん安い値段です。
ただし中国は、国内の値段を1トン1,850元前後に抑えています。国内の値段が1日に50元以上上がると、新しい輸出の審査を止める運用です(中国の報道)。中国の尿素の約8割は石炭からつくられ、石炭の値段は前の年より40%以上上がりました。輸出をどこまで増やせるかは、国内の値段と石炭しだいです。
ロシア・エジプト・米国
ロシアは、6〜11月の尿素などの輸出の枠を875万トンとしています(政府決定第431号。上限で、実際の輸出量ではありません)。
エジプトは、イスラエルからのガスが止まったあとも、3月の時点では工場をフル稼働させていました(Argus)。いまは主な産地の中で最も高い値段です。
米国は、1〜6月の窒素肥料の輸出が約60%増え、尿素の輸出はほぼ3倍になりました(国際食料政策研究所、IFPRI)。
10月は、出し手が減る動きもありました
トリニダードの工場が無期限で止まり、ヨーロッパはガスが高いままです。
一方で、10月には出し手が減る動きもありました。
トリニダード・トバゴ:大手の工場が無期限で停止
米国・カナダの肥料大手ニュートリエンは10月5日、トリニダード・トバゴの窒素肥料の工場を無期限で止めると発表しました。天然ガスの供給の制約が理由です。この工場は、月に約8.5万トンのアンモニアと約5.5万トンの尿素をつくっていました(Fertilizer Daily)。
同じ記事は、米国の窒素肥料の在庫が、平均より少ないまま2027年に入る見込みだと伝えています。
ヨーロッパ:ガスが高く、作るほど赤字の水準
オランダの天然ガスの値段(TTF)は、10月20日に1メガワット時90ユーロを超えました。北西ヨーロッパの尿素の生産費は、1トン約678ドルから約740ドルに上がったと報じられています(UkrAgroConsult)。いまの国際価格より高い水準です。
ヨーロッパの1〜6月の窒素肥料の輸入は、前の年より51%減りました(IFPRI)。
インドとブラジルが、買いに戻り始めました
インドは10月の買い付けで、目標の4分の1しか買えませんでした。
買い手の側では、インドとブラジルの動きが値段を左右しています。
インド:在庫は多いが、また買いに出ます
インドは世界最大の買い手です。2025年度の尿素の輸入は1,035万トンで、前の年より83%増えました。モンスーン期の在庫は、必要量を約48%上回っていました(中国の広発先物)。
インドの10月の買い付け(IPL、10月7日に開札)
買いたい量東海岸70万トン・西海岸100万トン
170万トン
申し込み25社から
534.9万トン
いちばん安い申し込み運賃込み。東海岸352.10ドル、西海岸356.25ドル
352.10ドル
実際に買えた量報道
約41万トン
出典:申し込みと値段は中国の肥料会社 Keyuan(10月15日)、買えた量は UkrAgroConsult(10月30日)。
申し込みは目標の3倍ありましたが、実際に買えたのは約41万トンで、目標を大きく下回りました。次の買い付けは、10月末から11月中ごろと見込まれています(UkrAgroConsult)。インドが再び大きく買いに出ると、値段を押し上げる要因になります。
ブラジル:買い控えのあと、秋に買い始めました
ブラジルの1〜9月の尿素の輸入は353万トンで、2018年以来の少なさでした。9月は71万トンで、2026年でいちばん多い月です(ブラジル商工省の貿易統計 COMEX、FarmNews)。
10月下旬のブラジルでは、中国産の尿素が1トン470〜475ドルで売り込まれましたが、量は少ないと報じられています。カタール産・ナイジェリア産は485〜500ドルでした(UkrAgroConsult)。
ほかの国
オーストラリアは、4〜6月に不足したあと、34万トンの追加の輸入を支援しました(Discovery Alert)。国際農業金融のラボバンクは、2026年の世界の尿素の需要は約5%減ると見ています(同)。
日本は、量より先に値段に表れる見込みです
日本の尿素の輸入の7割以上はマレーシア産です。
日本の尿素の輸入は、7割以上がマレーシア産です。ホルムズ海峡を通る中東産は多くありません。
日本の尿素の輸入先(2024肥料年度、合計25.6万トン)
マレーシア
74%
ベトナム
10%
サウジアラビアホルムズ海峡を通る
5%
中国
3%
国産
3%
出典:農林水産省の資料をまとめた先端農業マガジン(10月2日更新)。
JA全農は4月、秋肥の供給について「たちまちひっ迫することはない」と述べ、必要な量を早めに予約するよう求めました(JAcom、4月13日)。秋肥(6〜10月)の値段は、春肥と比べて輸入尿素が14.5%、国産尿素が0.2%上がりました(JA全農、5月15日)。
国が備蓄しているのは、りん安と塩化加里です。尿素は備蓄の対象に入っていません。11月からの次の期の値段は、10月30日時点でまだ発表されていません。
日本はマレーシア産が中心なので、量がすぐに足りなくなる形ではありません。ただ、中国が輸出を絞り、インドとブラジルが買いに戻ると、東南アジアの尿素の取り合いになります。日本では、量より先に値段に表れると当社は見ています(当社の見方)。
この先は、5つの点を見ます
海峡が開けば値段は大きく下がり、閉じたままなら上がりやすくなります。
値段が上がる材料と、下がる材料の両方があります。どちらに動くかは、次の点で見えてきます。
ホルムズ海峡を通る肥料の船
湾の中の約92万トンが出られるかどうか。海峡が本当に開けば、値段は大きく下がる可能性があります。
インドの次の買い付け
10月末〜11月中ごろの見込み。買う量と値段が、年明けまでの相場の目安になります。
中国の輸出の枠と国内の値段
国内の値段が上がると、輸出の審査が止まります。
ヨーロッパの天然ガスの値段
1メガワット時90ユーロ前後が続くと、ヨーロッパの生産は増えにくいままです。
JA全農の春肥の値段
日本の農家に届く値段。11月から使う分の発表を待ちます。
IFPRIも9月に、海峡が秋まで閉じたままなら、北半球の仕入れやアジアの米、ブラジルのトウモロコシの需要で、窒素肥料の値段は再び上がるおそれがあると指摘していました。10月の動きは、その見方に沿っています。
よくある質問
肥料用の尿素はいま、いくらですか。
10月27日の粒状尿素は、中東の積み出し港渡しで1トン447.50ドル、エジプトで535ドル、ブラジルの運賃込みで477.50ドルでした(Discovery Alert)。夏に300ドル台まで下がったあと、10月に再び上がり始めています。
なぜ10月に再び上がっているのですか。
ホルムズ海峡の湾の中で約92万トンの尿素が出られず(報道)、インドとブラジルが買いに戻り、トリニダードの大手の工場が止まり、ヨーロッパのガスが高いままだからです。中国は輸出を少しずつ認めていますが、国内の値段を優先しています。
世界の尿素は足りないのですか。
世界全体の量が足りないというより、出せる国が限られている状態です。湾岸は世界の輸出の約3分の1を出していますが、運び出せていません。その分を中国・ロシア・エジプト・米国が埋めています。
日本の肥料は足りなくなりますか。
日本の尿素の輸入は7割以上がマレーシア産で、ホルムズ海峡を通る中東産は多くありません。JA全農は4月に「たちまちひっ迫することはない」と述べています。ただ、東南アジアの尿素の取り合いで、値段は上がりやすくなります。
尿素の値段は、これから下がりますか。
ホルムズ海峡が本当に開けば、湾の中の尿素が一気に出て、大きく下がる可能性があります。閉じたままなら、インドの買い付けや北半球の春の仕入れで上がりやすくなります。この記事は予測をするものではありません。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか。
当社は物流資材の商社として、インドネシアのPupuk Indonesia産の尿素も取り扱っています。尿素の値段と量の動きは、取引先の調達の判断に直結するため、海外の資料を中心に整理しました。
言葉の意味4語
- 積み出し港渡し(FOB)
- 輸出する国の港で船に積むまでの値段です。運賃と保険は含みません。
- 運賃込み(CFR)
- 買う国の港までの運賃を含んだ値段です。
- 粒状尿素
- 粒の大きい尿素です。肥料として機械でまきやすい形です。
- 秋肥・春肥
- JA全農が肥料の値段を決める期間です。秋肥は6〜10月、春肥は11〜5月に使う分です。
出典・エビデンス一覧19件(報道や企業19)
- Discovery Alert「Urea Shipments Stall at Hormuz as Gulf Backlog Nears 1M Tonnes」2026年10月28日
- Lloyd's List Intelligence「Strait of Hormuz Brief: 22 October, 2026」
- Global Agriculture「Strait of Hormuz Crisis Keeps Global Fertilizer Trade Near Standstill」2026年10月13日
- IFPRI「How are fertilizer markets coping with the continued closure of the Strait of Hormuz?」2026年9月18日
- 東方財富網(期貨日報・広発先物)「2026年前三季度全球尿素市場復盤及四季度展望」2026年9月28日
- 騰訊新聞「全球化肥的价格暴涨?中国却低价全球出售」2026年10月23日
- 騰訊新聞「商务部公布化肥进口关税配额」2026年10月15日
- Mysteel「China's Aug urea exports hit year-to-date high」2026年9月22日
- Fertilizer Daily「China urea India tender」2026年9月7日
- Fertilizer Daily「India urea tender: IPL seeks 1.7 million tonnes」2026年9月29日
- Keyuan Fertilizer「Q4 2026 Fertilizer Market Trends」2026年10月15日
- UkrAgroConsult「Urea prices in Brazil rise amid higher gas costs and limited supplies」2026年10月30日
- FarmNews「Compra de ureia sobe em setembro」2026年10月16日
- Fertilizer Daily「Russia limits fertilizer exports to 20 million tons through November 2026」
- Fertilizer Daily「Nutrien Trinidad nitrogen shutdown indefinite」2026年10月8日
- Argus「Egypt's urea availability, production solid」2026年3月24日
- 先端農業マガジン「日本の肥料輸入と価格の最新動向【2026年版】」2026年10月2日更新
- JAcom「中東情勢緊迫化 肥料原料調達は確保も尿素市況は高騰」2026年4月13日
- JAcom「2026肥料年度秋肥 高度化成は5%値上げ」2026年5月
- ※値段と量は2026年10月30日時点で当社が確かめた報道・資料によります。一部は記事の本文を読めず、他の記事の引用で確かめています
- ※インドが買えた量、湾内の量は報道の数字です
- ※日本への影響は当社の見方です
- ※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の判断を推奨するものではありません。
文:プラスチックパレット株式会社 編集部
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