出張コスト管理 / ビジネス・実務情報
出張旅費規程は2026年の実態に合っているか、航空券の付帯費用
この記事の答え
- 何が起きた
- 2026年7月を境に、燃油サーチャージ(欧米・片道1名)が65,000円に、国際観光旅客税が3,000円になりました。どちらも規程がふつう扱わない、航空券の付帯費用です。
- 出張費への影響
- 北米3泊5日・一般社員1名の試算では、付帯費用134,560円は日当と宿泊料の合計73,113円の1.84倍です。航空券の本体運賃は別にかかります。
- 確かめておくこと
- 規程の最終改定日と、付帯費用・発券時期の扱いです。付帯費用は発券日で確定し、同じ北米往復1名でも4月発券と7〜8月発券で68,200円違います。
- 次に見るところ
- 2カ月ごとに改定される燃油サーチャージ(ANA・JAL公式)と、宿泊税の導入自治体、自社の出張の回数と行き先の構成です。
この記事の「見通し」「予定」は、公開した時点のものです。この記事で「〜の見通し」「〜の予定」と書いた時期は、すでに過ぎています。
最新の数字と動きは、毎月更新している航空・出張の完全まとめで確かめてください。
国内出張に占める宿泊税は1.54%です(2泊3日・総額26,019円、うち宿泊税400円)。数字はどれも当社の試算で、条件は第2章・第4章・第5章にあります。
2026年7月を境に、出張コストの項目が同じ時期に動いた
燃油サーチャージ・国際観光旅客税・宿泊税が、2026年7月を境に動きました。変わった項目の大半は、出張旅費規程が直接定めていない費目です。
出張旅費規程は、日当と宿泊料を細かく定めています。しかし2026年に大きく動いたのは、規程がふつう扱わない航空券の付帯費用でした。
この記事は制度の解説ではありません。総額の内訳を計算で示したうえで、規程のどこを点検すべきかを、実務の観点から整理します。
2026年は、出張にかかる費用のうち複数の項目が同じ時期に動きました。まず何が変わったのかを一覧で整理します。
| 項目 | 2026年前半 | 2026年7月以降 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 燃油サーチャージ (欧米・片道1名) | 31,900円(4月発券分) 56,000円(5〜6月発券分) | 65,000円 | 4月比 +103.8% |
| 国際観光旅客税 (出国1回1名) | 1,000円 | 3,000円 | +2,000円 |
| 航空保険特別料金 (片道1名) | 800円(3月31日購入分まで) | 780円 | −20円 |
| 宿泊税 | 熊本市・宮崎市は未導入 | 7月1日に両市が導入 | 施行中は約20自治体 |
| 為替(ドル円) | 158.85円(4〜5月平均) | 163.83円(7月24日終値) | 円安方向 |
燃油サーチャージと航空保険特別料金は、ANA公式サイト(2026年6月30日更新)の日本発の金額によります。国際観光旅客税と宿泊税、為替の出典は、記事の最後の「出典・エビデンス一覧」にあります。航空保険特別料金は日本での購入の場合です。日本〜カナダ・香港・メキシコ発着便と、ブラジル発旅程には適用されません。
変更が同じ時期に重なった
注目したいのは、これらがいずれも2026年7月を境に動いていることです。燃油サーチャージは、7〜8月発券分から65,000円となりました。
国際観光旅客税は、7月1日以後の出国から3,000円になりました。熊本市と宮崎市の宿泊税も、同じ7月1日の施行です。
個々の変更は、それぞれ別の理由で生じています。燃油サーチャージは燃料市況と為替、国際観光旅客税は税制改正、宿泊税は各自治体の条例によります。
相互に関係はありませんが、実務では同じ月の精算に一度に表れます。
変わった項目の大半は、規程が直接定めていない
出張旅費規程出張旅費規程出張時に支給する日当・宿泊料・交通費の取扱いを定めた社内規程。インボイス制度の出張旅費等特例を適用する際の根拠にもなる。が金額を定めているのは、通常は日当と宿泊料です。交通費は、実費精算とする企業が多くあります。
ところが2026年に大きく動いたのは、その実費側に含まれる航空券の付帯費用でした。規程を改定しなくても総額が変わる構造にあるため、変化が把握されにくくなります。
北米3泊5日の付帯費用は134,560円、規程の支給分と合わせて207,673円になる
北米へ3泊5日で1名を派遣する場合、日当と宿泊料の合計は73,113円です。燃油サーチャージ・国際観光旅客税国際観光旅客税通称「出国税」。日本から出国する者に課される国税で、2026年7月1日以後の出国から1人3,000円(改正前は1,000円)。航空券代金に上乗せして徴収される。・航空保険特別料金航空保険特別料金航空保険料や保安強化に関わる費用の一部を負担する料金。ANAの国際線では2026年4月1日以降の購入分で1旅客1区間片道あたり780円が設定されている。の合計は134,560円です。航空券の本体運賃は、これとは別にかかります。
実際にどれくらいの金額になるのか、条件を固定して積み上げます。北米へ3泊5日、一般社員1名を派遣する場合を例にとります。
規程で支給される分
日当と宿泊料の水準は、産労総合研究所が公表した2025年度の調査結果(調査期間2025年6〜8月)を用います。その結果に記載された、円建て企業の一般社員の金額です。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 日当 | 5,199円 × 5日 | 25,995円 |
| 宿泊料 | 15,706円 × 3泊 | 47,118円 |
| 小計 | 73,113円 |
航空券の付帯費用
次に、航空券の運賃とは別に発生する費用を積み上げます。2026年7月1日から8月31日までの発券分を前提とします。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 燃油サーチャージ | 65,000円 × 2区間 | 130,000円 |
| 国際観光旅客税 | 3,000円 | |
| 航空保険特別料金 | 780円 × 2区間 | 1,560円 |
| 小計 | 134,560円 | |
| 合計(航空券の本体運賃を除く) | 73,113円 + 134,560円 | 207,673円 |
この試算に、航空券の本体運賃は含まれていません。実際の出張費用には、運賃と、空港までの交通費、現地での移動費、通信費などが加わります。
また、日当・宿泊料の水準は企業ごとに異なります。上記は、調査結果に示された一般社員の金額を用いた例示です。
現地支出には為替も効く
現地でドル建ての支出が発生する場合、円換算額は為替に左右されます。100ドルの支出は、1ドル158.85円なら15,885円、163.83円なら16,383円です。498円の差が生じます。率にして3.14%です。
宿泊料の上限を円建てで定めている規程では、この差がそのまま、実質的な上限の目減りとして現れます。
規程が金額を定めない付帯費用が、日当・宿泊料の1.84倍になる
付帯費用134,560円は、日当と宿泊料の合計73,113円の1.84倍にあたります。規程が金額を定めていない付帯費用のほうが、規程が定める分より大きくなっています。
第2章の数字を並べ直すと、この記事の要点が見えてきます。
| 区分 | 内訳 | 金額 | 扱い |
|---|---|---|---|
| 規程が金額を定める分 | 日当25,995円+宿泊料47,118円 | 73,113円 | 規程に金額を明記 |
| 航空券の付帯費用 | 燃油サーチャージ130,000円+出国税3,000円+航空保険1,560円 | 134,560円 | 実費精算に含まれることが多い |
| 比率 | 付帯費用 ÷ 規程支給分 | 1.84倍 | ― |
「扱い」は規程での扱いです。
規程の外側で総額が動いている
出張旅費規程は、日当をいくらにするか、宿泊料の上限をどう設定するかを丁寧に定めます。しかしこの試算では、規程が金額を定めていない付帯費用のほうが、規程が定める分より大きいのです。
日当を数百円見直す議論を重ねている間に、燃油サーチャージが1回の出張で数万円動いている。そういう状態になりえます。
なぜこの構造が見えにくいのか
理由は3つ考えられます。
- 航空券は総額で計上されるため、内訳が意識されにくくなります。見積や請求では、運賃と付帯費用が合算されることがあります。燃油サーチャージがいくらだったかを、個別に確認する機会は少なくなります。
- 規程の改定を伴わないため、決裁の場に上がりません。日当や宿泊料の変更は、規程改定として審議されます。付帯費用の上昇は、実費として自動的に処理されます。
- 1件ずつでは金額が大きく見えません。1回の出張で数万円の差でも、年間の出張回数を掛けると相応の規模になります。
年間で見るとどうなるか
仮に北米出張を年12回行う企業であれば、付帯費用の増加分だけで68,200円 × 12回 = 818,400円となります。1回ずつでは把握しにくい差が、年度予算では無視できない規模になります。
出張の回数と行き先の構成を把握したうえで、年間ベースで影響を確認しておきたいところです。
付帯費用は発券日で決まり、発券時期で68,200円の差が生じる
付帯費用は発券日発券日航空券を購入し支払いを済ませた日。燃油サーチャージと国際観光旅客税の適用額は、出発日ではなくこの発券日を基準に確定する。で確定します。同じ北米往復1名でも、2026年4月発券なら66,360円、7〜8月発券なら134,560円で、68,200円の差が生じます。旅程が同じでも、手配の時期によって費用が変わります。
付帯費用には、もうひとつ実務上重要な性質があります。金額が確定するのは、搭乗日ではなく発券日であるという点です。
| 発券時期 | 燃油サーチャージ | 出国税 | 航空保険 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年4月 | 63,800円 | 1,000円 | 1,560円 | 66,360円 |
| 2026年5〜6月 | 112,000円 | 1,000円 | 1,560円 | 114,560円 |
| 2026年7〜8月 | 130,000円 | 3,000円 | 1,560円 | 134,560円 |
北米往復1名の試算です。燃油サーチャージは片道×2区間、航空保険特別料金は×2区間の額です。「出国税」は国際観光旅客税、「合計」は付帯費用の合計です。4月発券分の国際観光旅客税は1,000円としています。2026年6月30日までに発券された航空券は、7月1日以後の出国であっても1,000円が適用される経過措置経過措置制度改正時に一定の条件を満たす取引へ従前の取扱いを継続適用する仕組み。国際観光旅客税では、2026年6月30日までに発券された航空券による出国に改正前の1,000円が適用される。があるためです。
経過措置により、同じ月の出張でも金額が分かれる
国際観光旅客税には経過措置があります。2026年6月30日までに発券された航空券であれば、7月1日以後の出国でも1,000円が適用されます。判定は出発日ではなく、券面の発券日で行われます。
このため、同じ8月に出発する社員であっても、精算書の金額が分かれることがあります。6月中に手配していれば1,000円、7月に入ってから手配していれば3,000円です。
経理部門でこの仕組みを共有しておくと、照会の手間を減らせます。
発券のタイミングを社内ルールに落とし込めるか
付帯費用が発券日で確定するということは、手配の時期が費用に直結するということでもあります。旅程が確定しているのに手配を後回しにすると、改定を挟んで費用が増える可能性があります。
一方、旅程が不確実な段階で発券すると、変更時に差額調整や取消手数料が生じます。どちらを優先するかは、案件の性質によります。そのため、判断の基準を社内で決めておくことが実務的な対応となります。
燃油サーチャージの算定方法と改定のタイミング、国際観光旅客税の経過措置の詳細は、当社の別の記事で整理しています。「宿泊税の全国導入実態と出張経費の処理」と「燃油サーチャージが片道65,000円になった理由をやさしく解説」です。
国内出張では、宿泊税より宿泊単価の水準が費用を押し上げている
国内出張では宿泊税宿泊税自治体が条例で定める法定外目的税。宿泊施設が特別徴収義務者として宿泊者から徴収し自治体へ納付する。消費税は不課税で、経費処理では租税公課または旅費交通費に区分される。の影響は小さく、2泊3日で総額26,019円のうち宿泊税は400円です。割合は1.54%にとどまります。国内で費用を押し上げているのは宿泊単価の水準で、直近3年間に宿泊料を増額した企業は31.1%に達しています。
海外出張では、付帯費用が総額を押し上げていました。では、国内出張はどうでしょうか。
2026年7月に熊本市・宮崎市で宿泊税が導入されたことから、宿泊税の影響を確認しておきます。
2泊3日で積み上げる
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 日当 | 2,621円 × 3日 | 7,863円 |
| 宿泊料 | 8,878円 × 2泊 | 17,756円 |
| 宿泊税 | 200円 × 2泊 | 400円 |
| 合計 | 26,019円 | |
| 宿泊税が総額に占める割合 | 1.54% |
宿泊税は、総額の1.54%にとどまります。国内出張の費用を押し上げているのは、宿泊税そのものより宿泊単価の水準です。
産労総合研究所の2025年度調査に示された結果を見ます。直近3年間に国内出張の宿泊料を増額した企業は、31.1%に達しています。日当を増額した企業の14.9%を、大きく上回っています。宿泊費の上昇が規程の見直しを促していることがうかがえます。
| 区分 | 金額 | 出所 |
|---|---|---|
| 国内宿泊料(一般社員・全地域一律) | 8,878円 | 産労総合研究所 2025年度調査 |
| 同(地域区分ありの最高地・大都市圏等) | 11,262円 | 同上 |
| 同(普通地) | 8,990円 | 同上 |
| 国内日当の平均額 | 2,621円 (最低1,780円/最高3,786円) | 経費精算システムの解説記事が財務省のアンケート報告書から引用した数値 |
| 国内宿泊費の全体平均 | 10,672円〜11,304円 | 出張管理システムの解説記事が財務省のアンケート結果から整理した数値。上限付き実費支給が最多とされる |
産労総合研究所の数値は、同社の2025年度調査(調査期間2025年6〜8月)に関する公表内容によります。財務省のアンケートに由来する数値は、当社が確認したのは解説記事の記載です。原資料を直接確認したものではありません。
宿泊税は金額より処理の手間が論点になる
金額の影響は限定的ですが、実務上の負担は別です。宿泊税は消費税の不課税取引にあたります。領収書に独立して記載されていれば租税公課、記載がなければ宿泊費に含めて旅費交通費として処理するという区分が必要になります。
自治体ごとに、税率・免税点・徴収方法が異なります。事前決済していても、フロントで宿泊税だけ精算する運用の施設もあります。制度の詳細は、当社の別の記事「宿泊税の全国導入実態と出張経費の処理」で整理しています。
宿泊料を増額した企業は国内31.1%、海外は8.5%にとどまる
直近3年間に宿泊料を増額した企業は、国内出張で31.1%、海外出張で8.5%です。海外出張では、2026年の変化を織り込んだ見直しはこれからという企業が多いと考えられます。
自社の規程が世間の水準と比べてどうかを確認する材料として、2つの調査が参照できます。
海外出張の日当・宿泊料
| 地域 | 日当 | 宿泊料 |
|---|---|---|
| 北米 | 5,199円 | 15,706円 |
| 中国 | 4,765円 | 13,511円 |
| 東南アジア | 4,841円 | 12,706円 |
産労総合研究所「2025年度 国内・海外出張旅費に関する調査」に示された、円建てで支給する企業の一般社員の金額です。調査期間は2025年6〜8月です。
直近3年間の見直し状況
| 区分 | 日当を増額 | 宿泊料を増額 |
|---|---|---|
| 国内出張 | 14.9% | 31.1% |
| 海外出張 | 14.6% | 8.5% |
調査の時点と、その後に起きたこと
この調査の実施期間は2025年6〜8月です。その後に起きたのは、次のことでした。
- 2026年2月28日以降の燃油サーチャージの段階的な引き上げ
- 7月1日の国際観光旅客税の3倍化
- 円安の進行
海外出張の宿泊料を増額した企業は、8.5%にとどまっています。これらの変化を織り込んだ見直しは、これからという企業が多いと考えられます。自社の規程が最後に改定された時期を確認しておきたいところです。
国内と海外で見直しの進み方が違う
この2つの数字の差は示唆的です。国内出張の宿泊料を増額した企業が31.1%に対し、海外は8.5%です。
国内の宿泊単価の上昇は、予約のたびに実務担当者が直面します。そのため、規程との乖離が表面化しやすくなります。
一方、海外出張は件数が少なく、宿泊料の妥当性を検証する機会も限られます。問題が見えにくい分だけ、見直しが遅れやすい構造にあると考えられます。
加えて海外出張では、第3章で見たとおり、規程が定める日当・宿泊料よりも航空券の付帯費用のほうが金額として大きくなります。規程の水準を議論しても総額への影響が限定的なため、優先順位が下がりやすいという面もあります。
その他の項目
同じ調査では、新幹線グリーン車の利用を許可している企業(そのつど判断を含む)が、部長クラスで20.4%とされています。移動手段の等級についても、規程で定めている企業と、そのつど判断する企業に分かれます。
長時間の移動が続く出張では、移動中の業務効率や疲労の観点から等級を判断する企業もあります。一律の基準を設けるか、個別に判断するかで、運用が分かれています。
規程は、変化が生じたときに把握できる仕組みかで点検する
規程と運用は、金額の妥当性そのものより別の視点で見ていきます。変化が生じたときに把握できる仕組みになっているか、という視点です。
ここまでの整理を踏まえ、規程と運用を確認する観点を挙げます。
- ポイント1:規程の外の費目
航空券の付帯費用を、実費とするか概算に含めるか。実費とする場合、内訳を把握する手順があるか。付帯費用の変動を誰が把握し、いつ報告するかが決まっているか。 - ポイント2:手配のタイミング
付帯費用は発券日で確定します。旅程が確定した案件について、いつまでに発券するかの目安があるか。旅程が不確実な場合の判断基準が定められているか。 - ポイント3:為替の換算
現地通貨建ての支出を、どの時点のレートで換算するか。円建てで宿泊料の上限を定めている場合、円安局面で実質的な上限が目減りする点をどう扱うか。
出張旅費規程・運用の点検リスト
- 規程の最終改定日を確認する(2026年の変更を織り込んでいるか)
- 航空券の付帯費用の扱いが明記されているか確認する
- 発券のタイミングに関する社内の目安を定める
- 国際観光旅客税の経過措置(6月30日までの発券は1,000円)を経理と共有する
- 宿泊税を実費精算とし、固定額に含めない運用になっているか確認する
- 経費精算システムに「宿泊税(不課税)」の費目があるか確認する
- 現地通貨建て支出の換算レートの基準を明記する
- 旅費規程に出張旅費等特例出張旅費等特例インボイス制度の例外規定。旅費規程に基づく出張で通常必要と認められる範囲の宿泊費・交通費は、インボイスの保存が不要で帳簿のみで仕入税額控除が可能となる。の適用条件と上限額を明記する
- 年間の出張回数と行き先の構成を把握し、付帯費用の年間影響を試算する
- 海外出張の宿泊料が現地の実勢と乖離していないか確認する
日当や宿泊料の金額を定める際には、税務上の留意点があります。役職に対して著しく高額な日当・宿泊費は、税務調査で給与として認定されるおそれがあります。
金額の設定にあたっては、通常必要と認められる範囲であることを説明できる状態にしておく必要があります。個別具体的な判断は、税理士等の専門家にご相談ください。
旅費規程の整備が、インボイス特例と精算の処理に直結する
旅費規程があれば、通常必要と認められる範囲の宿泊費・交通費は、インボイスの保存が不要です。宿泊税は不課税のため、事前決済や自動仕訳では別に扱う必要があります。
出張旅費等特例
インボイス制度のもとでも、社内に旅費規程があり、通常必要と認められる範囲の出張に対して支給する宿泊費・交通費は、インボイスの保存が不要です。帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能となります。これが出張旅費等特例です。
適用の前提は、「通常必要と認められる範囲」であることです。その判断の根拠となるのが旅費規程です。規程の整備そのものが、税務上の取扱いに直結しています。
BTM利用時に生じる論点
BTMBTMBusiness Travel Managementの略。企業の出張手配(航空券・宿泊・経費精算)を一括して管理するシステム・サービス。(出張手配を一括して行うシステム・サービス)を利用して、事前決済する企業が増えています。ただし宿泊税は、現地で別途徴収される運用があります。そのため、事前決済済みであっても、出張者が現地で立て替えるケースが生じます。
熊本市は2026年7月に宿泊税を導入しました。同市では、事前決済済みの宿泊であってもフロントでの精算が必要とする施設が案内されています。
OCR自動仕訳の確認
経費精算システムのAI・OCR機能による自動仕訳では、宿泊税まで旅費交通費として合算で取り込む誤りが生じやすくなります。宿泊税は、消費税の不課税取引です。
そのため、課税仕入れを過大に計上することになり、税務調査で否認されるおそれがあります。自動仕訳の結果を目視で確認する運用ルールを定めておきたいところです。
海外出張の出国税は按分が必要になる場合がある
航空券代金に上乗せされる国際観光旅客税は、業務出張であれば旅費交通費として処理するのが一般的です。ただし出張と私的旅行が混在する場合は、業務日数の比率で按分する必要があります。
5日間のうち4日が業務であれば、3,000円のうち80%にあたる2,400円が会社経費です。20%の600円が個人負担となります。旅費規程に按分の考え方を明記しておくと、処理がスムーズになります。
本章の記載は、一般的な実務情報の整理です。税務代理・税務相談を行うものではありません。
個別具体的な税務判断・申告内容については、顧問税理士・税務署・国税庁への相談と、公式ガイドラインの確認のうえで行ってください。
燃油サーチャージは2カ月ごとに変わるため、確認する指標を決めておく
確認する指標は、燃油サーチャージ・ドル円レート・宿泊税の導入自治体・宿泊単価・自社の出張実績です。燃油サーチャージは2カ月ごとに改定されるため、予算は幅を持たせた見積が現実的です。
出張コストは、複数の要素が重なって決まります。予想ではなく、確認すべき指標を挙げます。
| # | 指標 | 確認先・頻度 | 着眼点 |
|---|---|---|---|
| 1 | 燃油サーチャージ | ANA・JAL公式/2カ月ごと | 9月以降発券分は2026年8月に案内予定 |
| 2 | ドル円レート | 日次 | 現地支出の円換算額に直結する |
| 3 | 宿泊税の導入自治体 | 各自治体/随時 | 2026年10月に那須町・盛岡市が導入予定 |
| 4 | 宿泊単価 | 予約時の実勢/随時 | 規程の上限で確保できるかを確認 |
| 5 | 自社の出張実績 | 社内/月次・四半期 | 回数と行き先の構成、付帯費用の合計額 |
「着眼点」は2026年7月の公開時点の書き方です。この後の動きは、冒頭の「この記事のあとの動き」にあるまとめ記事で確かめてください。
方向を左右する要素
| 要素 | 7月時点の状況 | 出張コストへの向き |
|---|---|---|
| 燃料市況 | 4月のピークから7月1日に低下したが、7月12日以降に原油が反発 | 不確実 |
| 為替 | 7月24日終値163.83円と円安方向 | 押し上げ |
| 宿泊税 | 施行中は約20自治体、2026年末から2027年に約50自治体規模の見込み | 押し上げ(幅は小さい) |
| 宿泊単価 | 都市部を中心に上昇傾向 | 押し上げ |
年度の予算編成で押さえる時期
出張予算を組む立場では、燃油サーチャージの改定が2カ月ごとであることが計画の単位になります。年度の予算を編成する時期に確定しているのは、直近の2カ月分だけです。その先は見通しとなります。
過去の推移を踏まえた、幅を持たせた見積が現実的です。2026年の実績は、4月発券分の31,900円から7〜8月発券分の65,000円までです。約4カ月で2倍を超える変動が生じています。
9月以降発券分の案内は2026年8月に予定されている
日本航空は2026年6月12日のプレスリリースで、9月以降発券分の燃油特別付加運賃燃油特別付加運賃燃油サーチャージの正式名称。航空運賃とは別に燃料価格の変動分を請求する仕組み。ANA・JALの国際線ではシンガポールケロシン価格と為替の2カ月平均で算定し、2カ月ごとに改定される。を2026年8月に案内する予定としています。算定期間は6月から7月です。
この期間には、燃料市況の下落局面と、7月下旬の再上昇局面の双方が含まれます。秋以降の出張予算を検討する際は、この発表内容を確認したうえで判断してください。
よくある質問
2026年に出張コストで何が変わったのか。
航空券の付帯費用と、宿泊にかかる地方税が同時に動いた。ANA公式サイトによると、欧州・北米路線の燃油サーチャージは日本発片道で2026年4月発券分の31,900円から5〜6月発券分56,000円、7〜8月発券分65,000円へと段階的に引き上げられた。国際観光旅客税は2026年7月1日以後の出国から1人1,000円が3,000円になった。宿泊税は熊本市・宮崎市が7月1日に導入し、施行中の自治体は約20となっている。加えて為替が円安方向に振れ、現地でのドル建て支出の円換算額も上昇している。
海外出張の総額はどのくらい変わったのか。
北米へ3泊5日で1名を派遣する場合を試算すると、航空券の付帯費用は2026年4月発券分で66,360円、7〜8月発券分で134,560円となり、同じ行程でも68,200円の差が生じる。内訳は燃油サーチャージ65,000円の2区間分、国際観光旅客税3,000円、航空保険特別料金780円の2区間分である。航空券の本体運賃はこれとは別にかかる。発券日で金額が確定する仕組みのため、旅程が同じでも手配の時期によって費用が変わる。
国内出張への宿泊税の影響はどのくらいか。
総額に占める割合は小さい。2泊3日の国内出張を試算すると、日当2,621円の3日分と宿泊料8,878円の2泊分に宿泊税200円の2泊分を加えて26,019円となり、宿泊税は総額の1.54%にとどまる。国内出張で費用を押し上げているのは宿泊税そのものより宿泊単価の水準であり、産労総合研究所の2025年度調査では直近3年間に国内出張の宿泊料を増額した企業が31.1%に達している。ただし宿泊税は自治体ごとに扱いが異なり、経費処理では勘定科目の区分に注意が必要となる。
出張旅費規程はどこを点検すべきか。
規程が定める日当・宿泊料の水準に加えて、規程の外にある費目の扱いを確認したい。具体的には、航空券の付帯費用を実費とするか概算に含めるか、発券の時期に関する社内ルールがあるか、宿泊税を実費精算とするか固定額に含めるか、現地通貨建て支出の為替換算をどの時点のレートで行うか、旅費規程に出張旅費等特例の適用条件と上限額が明記されているか、といった点である。産労総合研究所の2025年度調査では、直近3年間に海外出張の宿泊料を増額した企業は8.5%にとどまっている。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか。
当社は千葉県我孫子市を拠点に、プラスチックパレット・再生樹脂原料・PPバンド・ストレッチフィルム等の物流資材をお取扱いしている。全国の製造拠点・物流倉庫・取引先を訪問する業務があり、海外の仕入先とのやりとりも含めて出張が日常的に発生する。2026年は航空券の付帯費用と宿泊にかかる税が同時に動いたため、社内の経費精算でも影響を確認する必要が生じた。同じ立場に置かれた製造業・物流業の経理・総務部門の方に役立つ形で整理するため、本記事を作成している。
用語集10語
出張時に支給する日当・宿泊料・交通費の取扱いを定めた社内規程。インボイス制度の出張旅費等特例を適用する際の根拠にもなる。
出張中の食事代・通信費・細かな負担を定額で補う手当。実費精算ではなく定額で支給するのが一般的である。
燃油サーチャージの正式名称。航空運賃とは別に燃料価格の変動分を請求する仕組み。ANA・JALの国際線ではシンガポールケロシン価格と為替の2カ月平均で算定し、2カ月ごとに改定される。
通称「出国税」。日本から出国する者に課される国税で、2026年7月1日以後の出国から1人3,000円(改正前は1,000円)。航空券代金に上乗せして徴収される。
航空保険料や保安強化に関わる費用の一部を負担する料金。ANAの国際線では2026年4月1日以降の購入分で1旅客1区間片道あたり780円が設定されている。
自治体が条例で定める法定外目的税。宿泊施設が特別徴収義務者として宿泊者から徴収し自治体へ納付する。消費税は不課税で、経費処理では租税公課または旅費交通費に区分される。
インボイス制度の例外規定。旅費規程に基づく出張で通常必要と認められる範囲の宿泊費・交通費は、インボイスの保存が不要で帳簿のみで仕入税額控除が可能となる。
Business Travel Managementの略。企業の出張手配(航空券・宿泊・経費精算)を一括して管理するシステム・サービス。
航空券を購入し支払いを済ませた日。燃油サーチャージと国際観光旅客税の適用額は、出発日ではなくこの発券日を基準に確定する。
制度改正時に一定の条件を満たす取引へ従前の取扱いを継続適用する仕組み。国際観光旅客税では、2026年6月30日までに発券された航空券による出国に改正前の1,000円が適用される。
出典・エビデンス一覧12件
航空券の付帯費用(一次資料を直接確認)
- ANA(全日本空輸)公式サイト「燃油特別付加運賃 / 航空保険特別料金について」2026年6月30日更新(燃油サーチャージ 4月31,900円・5〜6月56,000円・7〜8月65,000円、航空保険特別料金780円および改定前800円の根拠)|https://www.ana.co.jp/ja/jp/guide/plan/charge/fuelsurcharge/
- 日本航空 プレスリリース第26025号「JAL/JTA国際線『燃油特別付加運賃』の改定を申請(2026年7月〜8月発券分)」2026年6月12日(算定に用いた為替2カ月平均158.85円、9月以降発券分を2026年8月に案内予定とする記載の根拠)|https://press.jal.co.jp/ja/release/202606/009574.html
出張旅費規程の実態(二次ソース経由)
- 産労総合研究所「2025年度 国内・海外出張旅費に関する調査」の公表内容(調査期間2025年6〜8月。海外一般社員の日当・宿泊料、国内宿泊料8,878円・11,262円・8,990円、直近3年間の増額割合、新幹線グリーン車の許可状況20.4%の根拠。当社が確認したのは同社の公表ページに記載された内容であり、報告書本体を確認したものではない)|https://www.sanro.co.jp/news/n118144.html
- 楽楽精算「出張日当(出張手当)の相場は?非課税になる条件も解説」(財務省のアンケート報告書から引用された国内出張の日当平均2,621円・最低1,780円・最高3,786円の根拠。当社が確認したのは同解説記事の記載である)|記事ページ
- ピカパカ出張DX「【詳しく解説】出張手当の相場はいくら?国内・海外の宿泊料・日当の実態を徹底解説」2026年7月9日最終更新(財務省が令和5年8月に公表したアンケート結果をもとに整理された国内宿泊費の全体平均10,672円〜11,304円、上限付き実費支給が最多とする記載の根拠。当社が確認したのは同解説記事の記載である)|記事ページ
税制・為替(二次ソース経由)
- TRAICY「出国税、きょうから引き上げ 3,000円に」2026年7月1日(国際観光旅客税3,000円の施行、非課税対象の根拠)|https://www.traicy.com/posts/20260701375132/
- 税理士法人 小山・ミカタパートナーズ「出国税が3,000円に引き上げ(2026年7月1日〜)」(経過措置と券面の発券日で判定する取扱いの根拠)|https://kmp.or.jp/kokusai-kanko-ryokakuzei-3000en-2026/
- 熊本朝日放送「1人1泊200円『宿泊税』熊本市で導入 年間7億円の税収見込む」2026年7月1日(熊本市の宿泊税200円の根拠)
- みんかぶFX「24日の為替市場の四本値」2026年7月25日掲載(ドル円 7月24日終値163.83円の根拠)|https://fx.minkabu.jp/news/374216
- 国税庁「No.6459 出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」|https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6459.htm
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文:プラスチックパレット株式会社 編集部
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