なぜSAFの義務は燃料供給側に課されたのか、航空法の制約と7空港・段階的引き上げの制度設計
2026年7月23日、SAF混合義務の方針が示された。注目すべきは義務を負う相手である。航空会社ではなく、石油元売りや商社などの燃料供給事業者が対象となった。その背景には、航空法の枠組みでは出発便への給油義務化が難しいという制約がある。制度がこの形になった経緯と、国産SAFの価格差、供給体制の期限を整理する。
- 経済産業省と国土交通省は2026年7月23日、成田・羽田など給油量の多い7空港の国際線を対象に、2030年度1%以上、2031年度3%以上、2032年度から2034年度5%以上のSAF混合を義務付ける方針を示した。
- 義務を負うのは航空会社ではなく石油元売りや商社である。航空法第63条の燃料携行義務は運航の安全を確保するための規定であり、脱炭素を目的としたものではないため、出発便への給油義務化は困難とされた。
- 国産SAFは1リットルあたり約300円とされ、当社の換算では従来のジェット燃料の約2.5倍にあたる。2030年の大規模供給には遅くとも2026年末頃までに最終投資決定が必要とされており、期限は迫っている。
2026年7月23日、経済産業省と国土交通省がSAF混合義務の方針を示した。対象は成田・羽田など7空港の国際線で、2030年度1%以上から2032年度5%以上へ段階的に引き上げる。義務を負うのは航空会社ではなく燃料供給事業者である。航空法の枠組みでは利用義務化が困難とされたためである。
給油量の多い空港の国際線
2031年度3%以上から段階的に
報道による
IATA 7月1日+為替7月24日
CHAPTER 012026年7月23日に示された方針
2026年7月23日、経済産業省と国土交通省が、一部の空港で供給する燃料へのSAF混合を義務付ける方針を示したと報じられた。SAFは持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel)の略で、廃食油やバイオマスなどを原料とするジェット燃料である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 義務を負う主体 | 石油元売りや商社などの燃料供給事業者 |
| 対象 | 成田空港や羽田空港など給油量が多い7空港の国際線 |
| 混合率 | 2030年度に1%以上、2031年度に3%以上、2032年度から2034年度に5%以上 |
| 支援の検討 | 2030年度の開始を念頭に、SAFを給油する航空会社へ一定額を支援する仕組み |
| 負担の検討 | 航空サービスの利用者に一律で負担を求めることも検討 |
| 今後の予定 | 法改正も視野に、2026年度末までに詳細な制度設計を行う |
2026年7月23日の報道による。制度の詳細は今後の検討によって変わりうる。正確な内容は所管省庁の公表資料をご確認いただきたい。
制度の検討はどこまで進んでいるか
この方針は突然出てきたものではない。経済産業省と国土交通省は2025年7月から12月にかけて「更なるSAF導入促進策検討タスクフォース」を計7回開催し、具体的な導入促進策について制度の検討と議論を重ねてきた。構成員は政府の課長級と民間事業者の責任者である。
その検討の考え方として、特定の主体のみに過度な負担を生じさせないよう、海外事例なども参考として、様々な規制・支援制度の実現性や課題等について検討してきたとされている。検討された促進策は、政府による取組(支援策の柔軟な対応、義務等の規制的措置、航空利用者全体でコストを広く負担する仕組み)と、民間事業者による取組(環境価値証書の利用拡大、利用者選択式運賃、価格低廉化努力)に分かれる。
混合率や対象空港の数は報道でも取り上げられている。本記事が扱うのは、なぜ義務を負う相手が航空会社ではなく燃料供給事業者なのかという点である。この設計には、日本の航空法の枠組みに由来する制約が関わっている。
CHAPTER 02なぜ航空会社ではなく燃料供給事業者なのか
SAFを使うのは航空会社である。素直に考えれば、航空会社に対して「一定割合をSAFにせよ」と義務付けるほうが分かりやすい。実際、この案も検討された。しかし現行の法制度では困難とされている。
国土交通省航空局が2026年1月28日の第8回SAF官民協議会に提出した資料には、航空法の現行の枠組みにおいて、国内空港の出発便に対して国産SAFの給油を義務付けること(利用義務化)は困難と明記されている。理由は4つ挙げられている。
理由1:航空法第6章は安全のための規定である
理由2:脱炭素を扱う第10章は本邦事業者しか対象にできない
では、脱炭素を規定する条文を使えばよいのではないか。航空法には第10章(航空の脱炭素化の推進)がある。しかしここにも制約がある。
資料によると、第10章は本邦航空運送事業者を対象とした規定であり、外国人国際航空運送事業者に対してSAFを利用することを義務付けることはできない。そして本邦航空運送事業者のみにSAFの利用を義務付けることは、公正な競争を阻害するおそれがある。したがって第10章においてもSAFの利用を義務付けることはできない、とされている。
ここが制度設計の分かれ目である。日本の航空会社だけに義務を課せば、同じ空港に就航する外国の航空会社との間に競争条件の差が生じる。かといって外国の事業者に日本の航空法で義務を課すことはできない。この行き止まりが、供給側に義務を課す設計につながっている。
理由3・理由4:国際条約にも諸外国の事例にも根拠がない
- 国際民間航空条約の規定および同条約の附属書として採択された標準・方式・手続において、航空運送事業者に対してSAFの利用を義務付けるような規定は存在しないとされている。
- 諸外国におけるSAFの利用義務化の規制に関する事例を見ても、航空法の枠組みの中で行っているものはないと承知しており、現行の航空法・国際条約の規定の趣旨にはそぐわないと考える、とされている。
実際、後述するEU・英国・韓国・シンガポールはいずれもジェット燃料供給事業者を義務の対象としている。航空会社を対象とする例はブラジル(国内線が対象)とトルコ(供給事業者と併せて対象)に限られる。
自動車の車検は安全性と環境基準の確認を目的としている。仮に「ガソリンにバイオ燃料を何パーセント混ぜよ」という政策を実施しようとしても、車検の枠組みで運転者に義務付けるのは筋が通らない。給油所や燃料の供給者に対して制度を設けるほうが自然である。航空でも同じ構造が生じている。
供給側に課す設計の含意
| 観点 | 供給側に課す場合 |
|---|---|
| 外国航空会社の扱い | 空港で給油する燃料そのものに混合されるため、日系・外資を問わず同じ条件になる。理由2で挙げられた公正競争の問題を回避できる |
| 対象の把握 | 石油元売り等は数が限られており、制度の運用がしやすい |
| コストの転嫁 | 供給事業者のコスト増は燃料価格を通じて航空会社へ、さらに運賃へ波及しうる |
| 空港ごとの適用 | 給油量の多い空港に絞った適用が可能になる |
タンカリング規制も同じ理由で困難とされている
関連する論点としてタンカリング規制がある。タンカリングとは、出発地で復路分の燃料の一部または全部を給油する運用のことで、燃料費の節約などを目的に行われる。EUとトルコはすでに規制を導入済みで、韓国も2028年から開始する予定とされている。いずれも年間給油量の90%以上を出発空港で給油することを義務付ける形である。
日本でも検討されたが、同じ資料で困難とされている。第63条の要件を満たす限り燃料を給油する場所を規制することはできず、国際条約にも規定がないためである。加えて、資料には次の趣旨の記載がある。
復路分の全量を搭載できるタンカリング可能な路線は、距離的に韓国・中国・香港・台湾の各路線等に限られる。航空局の調査によると2019年度実績で、外国人国際航空運送事業者の日本国内給油量のうち、これら4地域の事業者の給油量は全体の約20%であった。ジェット燃料の10%がSAFに置き換わっているとすると、これらの事業者が給油するSAFの混合割合は日本国内給油量全体の約2%にすぎない。その約2%のために法律を改正することは根拠として不十分と考える、とされている。
制度を作るかどうかは、効果の規模と法改正の負担を秤にかけた判断でもある。数字で効果を示せなければ制度化は難しいという、政策決定の実際が表れている箇所である。
CHAPTER 03対象と段階、7空港・2030年度1%から5%へ
示された方針の中身を、時系列で整理する。
| 年度 | 混合率 | 対象 |
|---|---|---|
| 2030年度 | 1%以上 | 給油量が多い7空港の国際線 |
| 2031年度 | 3%以上 | 同上 |
| 2032〜2034年度 | 5%以上 | 同上 |
もうひとつの目標との関係
日本にはこれとは別に、SAFの利用に関する目標がある。資源エネルギー庁が2026年4月17日に示した資料によると、2030年時点のSAF使用量として、本邦エアラインによる燃料使用量の10%をSAFに置き換えるという目標が設定されている。
この10%という目標と、今回の混合義務の1%以上という数字は、性格が異なる。
| 区分 | 2030年の水準 | 性格 |
|---|---|---|
| SAF使用量の目標 | 本邦エアラインの燃料使用量の10% | 政策目標 |
| 混合義務(方針) | 対象7空港の国際線で1%以上 | 法令に基づく義務として検討中 |
目標として掲げる水準と、義務として課す水準は別であるという点は押さえておきたい。義務は違反時の扱いを伴う。制度の検討にあたっては特定の主体のみに過度な負担を生じさせないよう実現性や課題を検討してきたとされており、確実に履行できる水準から始める設計はこの考え方に沿うものといえる。目標との差は、支援策や自主的な取り組みで埋めることが想定されていると考えられる。
供給側の目標としては、エネルギー供給構造高度化法に基づき、2030年のSAF供給目標を2019年度の国内ジェット燃料の温室効果ガス排出量の5%相当以上と定める方針が示されているとの解説がある。対象期間は2030年度から2034年度の5年間とされる。制度の位置づけが複数あるため、どの数字がどの制度のものかを区別して読む必要がある。
CHAPTER 04国際的な位置づけ、EU・韓国・シンガポール・CORSIA
日本の水準を評価するには、他国の制度と並べる必要がある。国土交通省航空局の資料には、諸外国の義務量を年次で整理した表が掲載されている。
各国のSAF供給義務量
| 国・地域 | 義務対象者 | 2025年 | 2027年 | 2030年 | 2034年 |
|---|---|---|---|---|---|
| EU | ジェット燃料供給事業者 | 2% | 2% | 6% | 6% |
| 英国 | ジェット燃料供給事業者 | 2.0% | 5.5% | 10.6% | 14.5% |
| 韓国 | ジェット燃料供給事業者 | ― | 1% | 3〜5% | 3〜5% |
| シンガポール | ジェット燃料供給事業者 (国が現物供給) |
― | 1% | 3〜5% | 3〜5% |
| 日本(方針) | 石油元売り・商社等 | ― | ― | 1%以上 | 5%以上 |
国土交通省航空局が2026年1月28日の第8回SAF官民協議会に提出した資料による。韓国の義務量は法制化されていない値、シンガポールの数量は目標値とされる。日本の数値は2026年7月23日に示された方針で、対象は7空港の国際線に限定される。EUと英国は国内線・国際線を問わず域内・国内空港を出発する便が対象であり、適用範囲が異なるため単純な比較はできない。
同資料には、2030年における供給義務量は国ごとに差があり、ジェット燃料供給量の3〜10%程度となっているとの記載がある。ニートSAFの脱炭素効果を平均50%と仮定すると、GHG排出量の1.5〜5%相当量にあたるとされる。日本の2030年度1%以上という水準は、この3〜10%という幅の下限をさらに下回る。
EUの詳細
EUのReFuelEU Aviationは、2023年10月18日付けの欧州議会及び理事会規則である。義務の対象はEU域内の空港にジェット燃料を供給する事業者で、国産・輸入を問わない。対象となるのは年間の旅客輸送量が80万人以上または貨物輸送量が10万トン以上の空港を出発する便である。
| 期間 | SAF全体 | うち合成燃料 |
|---|---|---|
| 2025〜2029年 | 2% | ― |
| 2030〜2031年 | 6% | 0.7% |
| 2032〜2033年 | 6% | 1.2% |
| 2035〜2039年 | 20% | 5% |
| 2040〜2044年 | 34% | 10% |
| 2045〜2049年 | 42% | 15% |
| 2050年以降 | 70% | 35% |
EUはSAF全体の割合に加えて、合成燃料の最低割合も別途定めている点が特徴である。罰則も設けられており、給油義務違反には非給油量に従来ジェット燃料とSAFの価格差の2倍以上を掛け合わせた金額が罰金として科される。
韓国のロードマップは2025年9月に発表済み
韓国は2025年9月19日、国土交通部と産業通商資源部がSAF混合義務化制度ロードマップを発表している。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 混合義務比率 | 2027年から1%。2030年は3〜5%(2026年に確定予定)、2035年は7〜10%(2029年に確定予定) |
| 供給義務対象 | 石油精製業者・石油輸出入業者 |
| 未履行時の課徴金 | 当該年度の平均取引価格の1.5倍の範囲内。ただし一定期間猶予する計画 |
| 柔軟性制度 | 全体の履行量の20%程度を最大3年まで繰り越し可能 |
| 給油義務 | 2028年から適用予定。年間給油量の90%以上を出発空港で給油 |
シンガポールのSAF Levyは2026年10月1日から
2025年11月10日、シンガポール民間航空局は、2026年10月1日以降にシンガポールを出発する全ての旅客便・貨物便・一般航空およびビジネス航空便に対し、飛行距離に応じたSAF Levyを導入すると発表した。金額は2026年のSAF使用率1%目標の達成に必要なSAF量、従来型ジェット燃料に対する価格プレミアム、認証・混合・配送コストを含む諸経費に基づき設定されている。
| 地理的帯域 | 対象地域 | 旅客(エコノミー) | 旅客(プレミアム) | 貨物(kg当たり) |
|---|---|---|---|---|
| Band I | 東南アジア | S$1.00 | S$4.00 | S$0.01 |
| Band II | 北東アジア・南アジア・豪州等 | S$2.80 | S$11.20 | S$0.04 |
| Band III | アフリカ・欧州・中東等 | S$6.40 | S$25.60 | S$0.09 |
| Band IV | 南北アメリカ | S$10.40 | S$41.60 | S$0.15 |
日本はBand IIに該当する。1シンガポールドルは約123円(2026年1月時点)とされており、シンガポール発日本行きのエコノミーで約344円にあたる。貨物にも課される点は、荷主にとって直接の論点となる。
その他の国
- ブラジル:2024年10月8日付けの法律に基づき、航空会社を義務対象とする。国内線が対象で、2027年1%から段階的に引き上げ、2037年に10%とする。GHG排出削減率で義務を課す品質規制の形をとる。
- トルコ:2025年6月公布のSHT-SAFにより、航空会社とジェット燃料供給事業者の双方を対象とする。トルコ国内空港を出発する国際便が対象で、使用量は現時点で定量では定められていない。
- マレーシア:2023年のNational Energy Transition Roadmapで2050年に47%という目標を掲げ、初期段階で1%の混合義務化を行う方針を表明している。
CORSIAは2027年から強制参加になる
国際的な枠組みとして、ICAOのCORSIA(国際航空のためのカーボン・オフセットおよび削減制度)がある。経済産業省の資料によると、CORSIAは2026年までが自主参加、2027年以降は強制参加とされている。
2027年は、CORSIAの強制参加が始まる年であり、韓国の混合義務が開始される年であり、同時に日本のSAF混合義務の制度設計が完了する予定の年度でもある。2026年度末という期限は、この国際的な流れと歩調を合わせたものと読める。
CORSIAは航空会社に排出量のオフセットを求める制度であり、SAFの混合義務とは別の枠組みである。ただしSAFの利用はCORSIAにおける排出削減として算入されうるため、両者は関連する。なお韓国の資料では、CORSIAの認証を受けたSAFのみが国際航空の炭素削減として認められる一方、併産される副産物は一般製品としてしか販売できないという課題が指摘されており、韓国政府はICAO総会で制度改善を要請する予定としている。
CHAPTER 05国産SAFの価格、従来燃料との差
制度を実効あるものにするうえで最大の論点が価格である。SAFは従来のジェット燃料より高い。どの程度かを整理する。
報道されている価格
報道によると、国産SAFは1リットルあたり約300円で、一般的なジェット燃料の2倍以上とされる。海外産SAFは約200円である。国産のほうが1リットルあたり100円ほど高い。
従来のジェット燃料と比べる
比較の前提を明示したうえで、当社が換算する。IATAの指標で2026年7月1日のジェット燃料は1バレル116.63ドルであった。これを2026年7月24日のドル円終値163.83円で円換算する。
1バレルを158.987リットルとして換算した当社の試算である。ジェット燃料の市況は変動が大きく、為替も日々動くため、この倍率は時点によって変わる。実際の調達価格は契約条件により異なる。
注意したいのは、従来燃料の価格が下がるほど、SAFとの価格差は相対的に大きくなるという点である。2026年4月3日週のジェット燃料は1バレル209ドルだったが、7月1日には116.63ドルまで下がっている。仮に同じ為替で4月の水準を換算すると1リットルあたり約215円となり、国産SAFとの差は約1.4倍にとどまる計算になる。燃料市況の落ち着きは、SAF導入の相対的なコスト負担を重くする方向に働く。
自治体による補助の例
東京都は、羽田空港で航空会社に国産SAFを供給する場合の補助を実施している。報道によると、2025年度に国産SAF利用促進事業を創設し、コスモ石油マーケティングが羽田空港で供給する国産SAFに上限100円/リットルで総量250万リットル分の補助を始めた。これにより約200円の海外産SAFに近い水準へ寄せる狙いがあったとされる。
2026年度には総量450万リットル分に補助を拡大し、5月には中東情勢の影響を踏まえた補正予算案で上限150円/リットルの補助創設を決めたとされている。
| 区分 | 価格 | 備考 |
|---|---|---|
| 従来ジェット燃料 | 約120円/L | 当社換算(2026年7月1日の指標+7月24日の為替) |
| 海外産SAF | 約200円/L | 報道による |
| 国産SAF | 約300円/L | 報道による |
| 国産SAF(上限100円補助後) | 約200円/L | 2025年度の東京都の補助 |
| 国産SAF(上限150円補助後) | 約150円/L | 2026年5月の補正予算案で創設 |
CHAPTER 06供給体制と2026年末のFID期限
義務を課すには、供給できる体制が要る。国内の準備状況を確認する。
各社の供給計画
| 事業者 | 2030年の供給計画 | 取り組みの例 |
|---|---|---|
| ENEOS | 50万〜70万kL | 三菱商事と2027年をめどに原料調達を含む供給網の構築を検討 |
| 出光興産 | 50万kL | 千葉製油所でバイオエタノールを原料とする製造に取り組み、2026年から10万kL/年を目指す |
| コスモ石油 | 30万kL | TotalEnergiesと連携し、和歌山製油所跡地で廃食油等を用いた事業化。2026年時点で約40万kL/年の製造を目指す |
| 業界全体 | 190万kL超 | 石油元売り等の公表情報を積み上げた見込み |
各社の計画値は2024年8月時点の報道による。その後の見直しの状況は本記事では確認できていない。コスモ石油の40万kLと30万kLは出所が異なる数値であり、対象とする事業範囲が同一かは確認できていない。
2026年末というFIDの期限
供給体制の構築には時間がかかる。資源エネルギー庁が2026年4月17日に示した資料には、次の趣旨の記載がある。
プラント建設に2年半から3年ほどを要することに加え、支援措置の適用要件・期間を考慮すると、2030年の国産SAF大規模供給に向けては遅くとも2026年末頃までに最終投資決定(FID)することが必須とされている。税額控除の適用には2026年度末までの計画認定(FIDが要件)が必要であり、GX経済移行債を活用した設備投資支援は2028年度、GI基金による技術開発支援は2029年度が、それぞれ適用の終期とされる。
つまり2026年は、2030年の供給体制を決める年にあたる。7月に混合義務の方針が示されたのは、投資判断の期限を意識したものと読める。義務の枠組みが定まらなければ、供給側は需要の見通しを立てられず、投資判断を下しにくいためである。
投資判断が進まない理由
同じ資料には、FIDが進みにくい構造も記されている。現在5つのプロジェクトでいずれもFEED(基本設計)を実施中で、2026年初頭から秋にかけて順次終了する予定とされる。そのうえで、次のような状況が示されている。
石油元売事業者によるSAF製造プラントのFIDを直前に控えた現在、航空会社と石油元売事業者とのSAF売買に関する交渉が始まったところである。一定程度、売買契約が見えない中では、石油元売事業者はFIDを実施することができない。他方、航空会社としても燃料費の高騰は経営への影響が非常に大きく、国際競争力のある価格の国産SAFが必要不可欠である。この状況を踏まえ、航空会社と石油元売事業者の共存共栄を図りながら導入促進策を検討する、というのが政府の立場として示されている。
買い手が価格に納得しなければ売り手は投資できず、売り手が投資しなければ供給されない。この膠着を解くために制度が要る、という順序で今回の混合義務が位置づけられていると読める。義務があれば需要の下限が定まり、供給側は投資判断の前提を得られる。
2025年5月には、日揮ホールディングスとコスモ石油などが出資する事業体が国内でのSAF製造に関わっているとされる。また2024年6月には、経済産業省と国土交通省が航空会社・空港・石油元売り・海運などが参加する官民タスクフォースを立ち上げている。これは国内の製油所の統廃合が進んだ結果として生じた航空燃料の供給不足への対応を目的としたものであり、SAFの議論とは別の文脈で始まった取り組みである。
CHAPTER 07原料の制約、廃食油をめぐる構造
供給計画を実現するうえで、設備と並ぶ課題が原料の確保である。
廃食油の3割が輸出されている
経済産業省の資料には、次の趣旨の記載がある。足下ではSAFの主な原料は廃食油だが、世界的な需要の増大により供給量が不足し価格が上昇している。そして日本の廃食油は全体の約3割が海外に輸出され、それを原料として製造された割高なSAFを輸入しているという状況にある。
原料を安く売り、それを加工した製品を高く買い戻す。この構図は、資源の乏しい国の産業でしばしば問題になる形である。廃食油は国内で発生する資源であり、回収の仕組みを整えれば国内での活用余地がある。エネルギー安全保障の観点からも、また製造時のCO2削減効果を評価するライフサイクル分析の観点からも、国産原料の活用が重要とされている。
代替原料の検討
廃食油だけでは量が足りないため、複数の原料が検討されている。
| 原料 | 状況 |
|---|---|
| 廃食油(UCO) | 現在の主な原料。世界的な需要増で供給不足と価格上昇。日本では約3割が輸出されている |
| バイオエタノール | 賦存量が豊富な米国・ブラジルのもの(コーン、さとうきびが原料)の活用が検討されている |
| 非可食原料 | 可食原料は欧州が利用を制限しているため、東南アジア・豪州を中心にポンガミア等の非可食原料が検討されている |
| 国内のバイオマス資源 | 国内に点在するが、効率的な回収・処理の仕組みが課題とされる |
| CO2と水素(e-SAF) | 合成燃料として技術開発・実証が進む。より高い炭素削減効果が期待される |
SAFの連産品としてバイオナフサが生産される
ここは当社の事業に直接関わるため、資料の記述を正確に引く。国土交通省航空局の資料には、SAFへの投資に取り組む意義として9項目が挙げられており、そのうち2項目が素材産業に触れている。
| 意義 | 資料に示された内容 |
|---|---|
| 連産品 | SAFの連産品として次世代バイオディーゼル(HVO・RD)やバイオナフサ等が生産されることから、航空だけでなく自動車・建設機械や素材産業等の脱炭素化に貢献することに繋がる |
| グリーンケミカルとの連携 | 紙パルプからの国産バイオエタノールをSAFの原料とするほか、SAFの連産品であるバイオナフサを化学業界へ供給すること等の取組は、業種を超えた競争力強化に繋がる |
| エネルギー安全保障 | SAF原料は中東以外の地域からの供給が大宗を占めるため、中東依存度の低減が期待されるほか、国産原料を用いたSAF製造はエネルギー自給率の向上に繋がる |
ナフサは樹脂原料の出発点である。SAFの製造過程で連産品としてバイオナフサが生産され、それが化学業界へ供給されるという構図は、当社が扱うプラスチックパレットや梱包資材の原料側に直接つながる。石油由来のナフサが中東情勢の影響を受けやすいのに対し、SAF原料は中東以外の地域からの供給が大宗を占めるとされる。SAFの国内製造が立ち上がれば、樹脂原料の調達先が一つ増えることを意味する。
当初、当社はこの記事を「SAFの原料需要が既存のリサイクル原料と競合しうる」という懸念の観点から整理しようとしていた。しかし資料を確認すると、政府はむしろ連産品を通じた素材産業への供給を意義として掲げている。競合ではなく供給源の追加という側面が、公式の位置づけとしては前面に出ている。もっとも、原料の回収網をめぐる競合が生じないと確定したわけではなく、両方の可能性を見ておく必要がある。
CHAPTER 08支援策と負担の分担
価格差がある以上、誰がその差を負担するかが制度の要になる。現時点で示されている方向を整理する。
利用者への負担も検討されている
報道によると、航空サービスの利用者に一律で負担を求めることも検討されているとされる。シンガポールが2026年から航空旅客に課金する制度を導入するとされており、こうした海外の事例が制度設計の参考になっていると考えられる。
負担の分担は、次のいずれか、あるいはその組み合わせになる。
| 負担する主体 | 方法 | 論点 |
|---|---|---|
| 燃料供給事業者 | 義務を履行するためのコストを負担 | 投資判断の前提として需要の確実性が要る |
| 航空会社 | 燃料価格を通じて負担 | 2026年は燃料費が営業費用の3割を占める状況にある |
| 利用者(旅客・荷主) | 運賃や課金を通じて負担 | 負担の可視化と納得感の確保 |
| 国・自治体 | 税制・補助金による支援 | 支援の期間と規模、終期後の自立 |
航空機燃料税に係る特例措置については2027年まで措置されているとの記載がある。SAFの導入促進策と既存の税制上の措置がどう接続するかも、制度設計の論点となる。
CHAPTER 09見通しとモニタリング指標
制度は検討の途上にあり、2026年度末までに詳細が固まる予定とされている。確認すべき指標を挙げる。
| # | 指標・確認先 | 着眼点 | 時期 |
|---|---|---|---|
| 1 | SAF官民協議会の資料 | 対象空港の特定、義務量の算定方法、違反時の扱い | 随時 |
| 2 | 制度設計の完了 | 法改正を含む詳細設計 | 2026年度末まで |
| 3 | 各社のFID | 2030年の大規模供給には2026年末頃までが必須とされる | 2026年内 |
| 4 | CORSIAの移行 | 2027年以降は強制参加 | 2027年 |
| 5 | ジェット燃料の市況と為替 | 従来燃料が安いほどSAFとの価格差は相対的に開く | 週次・日次 |
2026年から2027年にかけての節目
| 時期 | 予定されていること |
|---|---|
| 2026年内 | 2030年の大規模供給に向けた最終投資決定の期限とされる |
| 2026年度末(2027年3月末) | SAF混合義務の詳細な制度設計。税額控除の適用に必要な計画認定の期限 |
| 2027年 | CORSIAが強制参加へ移行。航空機燃料税の特例措置の期限 |
| 2028年度 | GX経済移行債を活用した設備投資支援の適用終期 |
| 2029年度 | GI基金による技術開発支援の適用終期 |
| 2030年度 | 混合義務1%以上の開始(方針) |
2026年に何が決まるかで方向が見える
本記事で扱った制度は、いずれも2026年から2027年にかけて形が定まる。制度設計の完了が2026年度末、FIDの期限が2026年末、CORSIAの強制参加が2027年という3つの節目が重なっている。逆に言えば、2026年内の動きを見れば、2030年以降の姿がおおよそ見通せるということでもある。
SAFの導入は、航空運賃を通じて航空貨物のコストに及ぶ可能性がある。負担の分担が「利用者に一律で求める」形になれば、旅客だけでなく荷主にも影響しうる。2030年度の開始まで時間はあるが、制度設計は2026年度末までに固まる予定であり、方向は近いうちに見えてくる。輸出入で航空便を使う事業者は、制度の枠組みが決まる段階で内容を確認しておきたい。
CHAPTER 10用語集
Sustainable Aviation Fuelの略。持続可能な航空燃料。廃食油やバイオマス、CO2と水素などを原料とするジェット燃料で、従来の石油由来燃料と比べてライフサイクルでの温室効果ガス排出量を削減できるとされる。
供給する燃料に一定割合以上のSAFを混ぜることを義務付ける制度。日本では2026年7月に、7空港の国際線を対象とする方針が示された。
国際航空のためのカーボン・オフセットおよび削減制度。ICAOが定める枠組みで、航空会社に排出量のオフセットを求める。2026年までが自主参加、2027年以降は強制参加とされる。
EUがSAFの混合を義務付ける制度。2025年に2%、2030年に6%、2050年に70%という段階的な引き上げが設定されている。
Final Investment Decisionの略。プロジェクトへの投資を正式に決定すること。プラント建設には2年半から3年ほどを要するため、2030年の供給には2026年末頃までのFIDが必須とされている。
グリーントランスフォーメーションの実現に向けた投資を支援するために発行される国債。SAF製造設備への投資支援にも活用される方針が示されている。
Used Cooking Oilの略。飲食店や食品工場などで使用された食用油。現在のSAFの主な原料だが、世界的な需要増で供給が不足し価格が上昇している。
CO2と水素を原料として合成する燃料。合成燃料の一種で、廃食油やバイオマスに依存しないため原料制約を受けにくく、より高い炭素削減効果が期待される。技術開発と実証の段階にある。
非化石エネルギー源の利用促進を図るための法律。SAFの供給目標の設定にもこの枠組みを活用する方針が示されているとの解説がある。
出発地において必要燃料の一定量以上(EU・トルコ・韓国では年間給油量の90%以上)を給油することを義務付ける規制。意図的な燃料の持ち込みを制限し排出削減を図る。日本では航空法第63条の要件を満たす限り給油場所を規制できないため困難とされている。
主目的の製品を製造する過程で同時に生産される製品。SAFの製造では次世代バイオディーゼル(HVO・RD)やバイオナフサ等が連産品として生産され、素材産業への供給が意義として挙げられている。
Front End Engineering Designの略。基本設計。最終投資決定(FID)の前段階にあたり、プラントの仕様とコストを固める作業を指す。2026年1月時点で5つのプロジェクトが実施中とされる。
原料の調達から製造・輸送・使用・廃棄までの全過程を通じた環境負荷を評価する手法。SAFの温室効果ガス削減効果もこの考え方で算定される。
CHAPTER 11出典・エビデンス一覧
2026年7月の方針・制度設計
- 脱炭素技術センター「航空機向けバイオ燃料(SAF)とは」(2026年7月に経済産業省と国土交通省が示した方針。成田・羽田など7空港の国際線を対象に2030年度1%以上・2031年度3%以上・2032〜2034年度5%以上の混合義務、航空会社への支援と利用者への負担の検討、国産SAF約300円/L・海外産約200円/L、東京都の補助の根拠)|https://www.decarbonation-tech.com/aircraft_1000/
- 読売新聞「『SAF』普及に向け7空港で混合義務化へ…政府方針、国際線向け『5%以上』目指す」2026年7月23日(方針の公表日と概要の根拠。当社が確認したのはニュース配信サイト上の見出しと要旨である)
- 国土交通省 航空局・経済産業省 資源エネルギー庁「第8回持続可能な航空燃料(SAF)官民協議会 事務局説明資料(更なるSAF導入促進策検討タスクフォース中間とりまとめ文書 補足説明資料)」令和8年1月28日(利用義務化が困難とされる4つの理由、航空法第6章第63条および第10章の位置づけ、タンカリング規制が困難とされる理由と2019年度の給油量約20%・SAF混合割合約2%の試算、諸外国のSAF義務量一覧、EU・英国・韓国・シンガポール・ブラジル・トルコ・マレーシアの制度概要、シンガポールSAF Levyの帯域別金額、韓国ロードマップの内容、SAFへの投資に取り組む意義9項目のうち連産品・グリーンケミカル連携・エネルギー安全保障、5つのプロジェクトのFEED実施状況と売買契約が見えない中ではFIDができないとする記述の根拠。本資料は当社が直接取得して確認した)|資料PDF
目標・支援策・原料
- 資源エネルギー庁「持続可能な航空燃料(SAF)に関する取組の現状」2026年4月17日(2030年時点で本邦エアラインの燃料使用量の10%をSAFに置き換える目標、プラント建設に2年半〜3年、2026年末頃までのFIDが必須、税額控除は2026年度末までの計画認定が要件、GX経済移行債のCAPEX支援は2028年度・GI基金は2029年度が適用終期とする記載の根拠。当社が確認したのは検索結果として表示された同資料の記載である)|資料PDF
- 経済産業省 資源エネルギー庁「持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた施策の方向性について(中間取りまとめ案)」(CORSIAが2026年まで自主・2027年以降強制参加とされる旨、航空機燃料税の特例措置が2027年まで措置される旨、廃食油の約3割が海外に輸出され割高なSAFを輸入している状況、米国・ブラジルのバイオエタノールや非可食原料の検討の根拠。当社が確認したのは検索結果として表示された同資料の記載である)|資料PDF
- 三井化学「SAF(持続可能な航空燃料)とは?製造方法・原料・価格からメリットまでわかりやすく解説」2026年6月5日(GX経済移行債による5年間で約3,400億円の投資支援、戦略分野国内生産促進税制による1リットルあたり30円の法人税減免、EUの段階的引き上げ目標の根拠)
- NTN 自然エネルギー商品特設サイト「持続可能な航空燃料(SAF)はこれからどうなる?」(エネルギー供給構造高度化法に基づく2030年の供給目標を2019年度の国内ジェット燃料GHG排出量の5%相当以上とする方針、対象期間2030〜2034年度の根拠)
- 資源エネルギー庁 スペシャルコンテンツ「SAF製造に向けて国内外の企業がいよいよ本格始動」(コスモ石油の和歌山製油所跡地での事業化とTotalEnergiesとの連携、出光興産の千葉製油所でのバイオエタノール原料の取り組みの根拠)|記事ページ
- 日経ESG「SAF義務化へ、元売り大手が供給競う」2024年8月(ENEOS 50万〜70万kL、出光興産50万kL、コスモ石油30万kL、業界全体190万kL超の根拠。2024年8月時点の計画値である)
市況・為替・当社関連記事
- oilgasstoragenews(IATA Jet Fuel Price Monitorの集計。2026年7月1日1バレル116.63ドル、4月3日週209ドルの根拠)
- みんかぶFX「24日の為替市場の四本値」2026年7月25日掲載(ドル円 7月24日終値163.83円の根拠)|https://fx.minkabu.jp/news/374216
- 「ジェット燃料が4月209ドルから7月116ドルへ、欧州「6週間分」警告が現実化しなかった3つの理由と再上昇局面」(ジェット燃料市況の推移とIATAのSAF関連データ)
- 「航空貨物の運賃は実重量と容積重量の大きい方で決まる、2026年市況と輸出梱包の重量設計」(航空貨物運賃の算出と燃料費の位置づけ)
FAQよくある質問
2026年7月に示されたSAF混合義務の内容はどのようなものか。
報道によると、経済産業省と国土交通省は2026年7月23日、石油元売りや商社などの事業者に対し、成田空港や羽田空港など給油量が多い7空港の国際線を対象として、2030年度に1%以上、2031年度に3%以上、2032年度から2034年度に5%以上のSAF混合を義務付ける方針を示した。2030年度の開始を念頭に、SAFを給油する航空会社へ一定額を支援する仕組みと、航空サービスの利用者に一律で負担を求めることも検討されている。法改正も視野に、2026年度末までに詳細な制度設計を行うとされている。
なぜ航空会社ではなく燃料供給事業者に義務が課されるのか。
航空法の現行の枠組みでは、国内空港の出発便に対して国産SAFの給油を義務付けることが困難とされているためである。国土交通省航空局が2026年1月の官民協議会に提出した資料には4つの理由が挙げられている。第一に、航空法第6章第63条の燃料携行義務は運航安全を確保するための規定でありICAO附属書第6の国際標準に基づくもので、同章では脱炭素の推進を規定できない。第二に、脱炭素を規定する第10章は本邦航空運送事業者を対象としており外国人国際航空運送事業者には義務付けができず、本邦事業者のみに課すことは公正な競争を阻害するおそれがある。第三に、国際民間航空条約とその附属書にSAFの利用を義務付ける規定は存在しない。第四に、諸外国でも航空法の枠組みで利用義務化を行っている例はない。このうち第二の理由が、供給側に義務を課す設計の直接の背景にあたる。
国産SAFは従来のジェット燃料と比べていくらか。
報道によると、国産SAFは1リットルあたり約300円で、一般的なジェット燃料の2倍以上とされる。海外産SAFは約200円である。当社が従来のジェット燃料を換算すると、IATAの指標で2026年7月1日の1バレル116.63ドルを7月24日のドル円終値163.83円で計算した場合、1リットルあたり約120円となる。この前提では国産SAFは約2.5倍にあたる。東京都は2025年度に上限100円の補助を始め、2026年5月の補正予算案で上限150円の補助を創設することを決めており、補助後の実質価格を従来燃料に近づける取り組みが進んでいる。
海外の制度と比べて日本の水準はどうか。
国土交通省航空局の資料によると、2030年における供給義務量は国ごとに差があり、ジェット燃料供給量の3%から10%程度とされる。EUのReFuelEU Aviationは2025年から2029年に2%、2030年から2034年に6%、2050年以降は70%と定めている。英国はさらに高く、2030年に10.6%、2034年に14.5%である。韓国は2025年9月19日に発表したロードマップで2027年から1%、2030年に3%から5%としている。シンガポールは2026年10月1日以降にシンガポールを出発する便を対象としたSAF Levyを導入する。日本の2030年度1%以上という方針は、この3%から10%という幅の下限を下回る水準にあたる。ただし対象範囲や義務の形式が国ごとに異なるため、単純な比較はできない。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか。
当社は千葉県我孫子市を拠点に、プラスチックパレット・再生樹脂原料・PPバンド・ストレッチフィルム等の物流資材をお取扱いしている。原油は精製の過程でジェット燃料とナフサに枝分かれし、ナフサは樹脂原料を経てプラスチックパレットや梱包資材へとつながる。SAFの原料となる廃食油やバイオマスの調達が広がれば、既存の石油精製の稼働と製品構成にも影響が及びうる。航空燃料と樹脂原料の双方に接する立場から、制度の設計を整理しておくことが調達判断に役立つと考え、本記事を作成している。
- 本記事は2026年7月26日時点で確認できた報道および官公庁資料の記載をもとに、当社が整理したものである。2026年7月23日に示された方針は制度設計の途上にあり、法改正を含む詳細は2026年度末までに固まるとされている。対象空港の特定、義務量の算定方法、違反時の扱いなどは今後の検討により変わりうる。
- 本記事で参照した官公庁資料のうち、国土交通省航空局・経済産業省資源エネルギー庁による第8回SAF官民協議会の事務局説明資料(令和8年1月28日)は、当社が直接取得して確認したものである。一方、資源エネルギー庁の2026年4月17日資料およびSAF導入促進策に関する中間取りまとめ案については、当社が確認したのは検索結果として表示された記載であり、資料全体を通読したものではない。出典欄では両者を「一次」「二次」として区別して表記している。航空法の条文の解釈および制度の詳細については、所管省庁の公表資料を直接ご確認いただきたい。
- 第5章の価格比較は当社による換算である。IATAの指標による2026年7月1日の1バレル116.63ドルを1バレル158.987リットルとして計算し、2026年7月24日のドル円終値163.83円で円換算した。ジェット燃料の市況と為替はいずれも変動が大きく、この倍率は時点によって変わる。SAFの価格も報道による概数であり、実際の調達価格は契約条件によって異なる。
- 第6章に記載した各社の供給計画は2024年8月時点の報道による数値であり、その後の見直しの状況は本記事では確認できていない。またコスモ石油について記載した30万キロリットルと約40万キロリットルは出所の異なる数値であり、対象とする事業範囲が同一かどうかを当社は確認できていない。
- 本記事は特定の企業・技術・投資対象を推奨するものではなく、投資判断・経営判断の最終的な根拠として作成したものではない。引用に際しては出典として本記事URLを明記されたい。記載内容に事実誤認があった場合は、お問い合わせフォームよりご連絡いただきたい。