2026年ホルムズ海峡危機が直撃する旅行業界|A重油・ナフサ・ジェット燃料が同時高騰、宿泊から航空まで貫く「燃料ショック」の構造 | プラスチックパレット株式会社
SUPPLY CHAIN INSIGHT 2026

2026年ホルムズ海峡危機が直撃する旅行業界
A重油・ナフサ・ジェット燃料が同時高騰、宿泊から航空まで貫く「燃料ショック」の構造

温泉旅館のボイラー燃料、リネンサプライの蒸気コスト、プラスチック製アメニティ、国際線燃油サーチャージ、SAF調達網、出国税引き上げ——旅行業界の各レイヤーを貫くエネルギー・原料コスト圧迫の構造を、官公庁および業界一次情報をもとに整理します。

公開日:|最終更新:|カテゴリ:物流コラム / サプライチェーン分析
結論

2026年のホルムズ海峡封鎖を引き金とする原油・ナフサ・ジェット燃料の同時高騰は、温泉旅館のボイラー燃料から国際線燃油サーチャージ、リネン洗浄の蒸気熱源、プラスチック製アメニティ、空港物流のSAF調達網まで、旅行業界のサプライチェーン全層を構造的に圧迫しており、エネルギー転換と物流資材の循環型調達への移行が経営継続の鍵となっています。

更新 ── 公開後に確定した4点

燃油サーチャージは欧米路線で片道65,000円に到達。7〜8月発券分でJAL・ANAとも同額となり、本文が扱う5月発券分から1人あたり1万〜1万5,000円上がりました。▶ 詳しく見る

出国税3,000円は予定どおり7月1日出国分から適用。6月30日までに発券済みの航空券は旧税率1,000円が据え置かれる経過措置が設けられました。▶ 詳しく見る

日本人出国者数は増加、訪日外国人数は3カ月連続の前年割れ。本文が想定した需要抑制は、アウトバウンドよりインバウンド側に先に現れています。▶ 詳しく見る

A重油の直近月次は公表待ちです。7月分の公表は8月31日の予定で、初版が扱った4月以降の推移はまだ確認できていません。▶ 詳しく見る

※ 第1章〜第5章の価格・適用額は初版公開時点(2026年5月1日)の観測値です。上記の更新分は、旧記述を残したうえで該当する章の直後に追記しています。

1. 温泉旅館・ホテルのエネルギーインフラ:A重油コストの急騰

温泉旅館や大型ホテルの運営において、給湯・大浴場の加温・館内暖房の熱源として使用されるA重油の価格高騰が、施設の固定費を極めて強く圧迫しています。

A重油価格の急騰と現場インパクト

長崎市のホテル「矢太樓」では、大浴場をはじめ館内の給湯のために多い月で約2万リットルのA重油を使用しています。A重油価格は2026年4月から1リットルあたり約20円値上がりし、ひと月あたりの燃料費は約40万円増加しました(KTNテレビ長崎報道、2026年4月15日)。

同様の影響は全国規模で観測されており、帝国データバンクが2026年3月に公表した「燃料費の高騰が企業に与える影響度調査」では、大浴場を備える旅館・ホテルおよび温浴施設はボイラー燃料消費が大きく、シーツ・タオル等のリネン類の洗濯・乾燥でも燃料を必要とするため、利益を大きく圧迫する業種の上位に位置付けられています。

▶ 帝国データバンク調査:燃料費3割上昇時の営業利益への影響

銭湯業を主業とする企業:営業利益が平均30%減少(全産業平均は約5%減)

2025年度の銭湯業界利益合計は約27億円と前年度(49億円)から半減見通し。スーパー銭湯では値上げによる客離れリスク、公衆浴場では入浴料の都道府県公定により値上げが容易でないため、減益幅・赤字幅が拡大しやすい構造にあります。

収益圧迫と設備投資の技術転換

A重油の取引価格はドバイ原油など原油指標に直接連動するため、エネルギーコストの急増は宿泊施設の自助努力(節電・節約)で吸収できる範囲を超過しています。一方で公衆浴場法に基づく入浴料の上限規制や、宿泊料金転嫁による客離れリスクから、価格転嫁が容易ではないという構造的ジレンマに直面しています。

こうした背景から、化石燃料依存リスクを低減するため、重油ボイラーから高効率ヒートポンプ、地中熱利用、バイオマスボイラーへの設備更新を前倒しで検討する事業者が増加しています。

【2026年8月9日更新】A重油の7月分は公表待ち、ガソリン全国平均は170.1円/L

燃料油の価格は、初版公開後も週次・月次の調査が続いています。資源エネルギー庁が公表するガソリン全国平均価格は2026年8月3日調査で170.1円/L、前週比±0円でした。緊急的激変緩和措置による支給が継続した状態での数値です。

ただしこれはガソリンの数値であり、温泉旅館・ホテルが使うA重油の価格をそのまま示すものではありません。また初版は2026年4月のA重油を扱っており、ガソリンの同時期の水準と直接比較できる数値は本記事では確認できていません。

産業用A重油の月次調査は本記事の更新時点で2026年6月分までが公表済みで、7月分は8月31日に公表される予定です。第1章に記した「4月から1リットルあたり約20円値上がり」がその後どう推移したかは、同調査の最新回を直接ご確認ください。

2. リネンサプライのサプライチェーン直撃

宿泊業界のバックヤードを支えるリネンサプライ(シーツ、タオル、浴衣等のクリーニング業)は、エネルギー多消費型の産業構造を持ち、原油高の直撃を受けています。

ボイラー燃料と石油化学原料の二重高騰

業務用クリーニング工場では、大量の洗濯物の洗浄・乾燥・アイロン掛け(ロール機)の各工程で大量の蒸気を必要とし、その熱源として重油・都市ガス・LPガスが使用されます。観光経済新聞(2026年4月3日)も、帝国データバンク調査で「旅館・宿泊所」が燃油価格急騰の影響を受ける業種上位に挙がったことを報じています。

さらに、洗剤・柔軟剤等の石油化学製品(ナフサ由来)の仕入れ価格上昇が重なり、リネンサプライ業者の損益分岐点を大きく押し上げています。中国メディア「チャイナネット」(2026年4月16日)は、温泉旅館経営者の「クリーニング業者の重油価格はすでに40%超上昇しており、今後の値上げだけでなく燃料供給不足の可能性についても懸念している」という発言を伝えています。

業界全体に広がる「コスト吸収限界」の現場感覚

リネンサプライ・クリーニング業界では、燃料費に加えて、洗剤・包装資材・ハンガー、車両費、最低賃金引き上げによる人件費の同時上昇が利益率を圧迫しており、複数のコスト要因が重なって経営体力を奪う構造になっています(日本M&Aセンター業界レポート、2025年12月)。

▶ 現場の声:価格転嫁の難しさ(帝国データバンク調査より)

ワイシャツで200円を超えたあたりから客足が鈍くなった

「客離れを懸念して値上げが一部しかできない

クリーニング店の2024年度業績では、減益が3割超、赤字が2割を占め、全体の半数超が業績悪化。BtoB契約の多くが中長期固定単価のため、急激なコスト上昇を完全には吸収しきれていません。

業界構造上の課題として、事業者の8割以上が営業30年以上、経営者の70歳以上が5割超、後継者不在が7割超(厚生労働省「クリーニング業の実態と経営改善の方策」)という人的基盤の脆弱性も無視できません。2025年1〜9月のクリーニング店倒産・休廃業は合計52件、ホテル・旅館の主要パートナーであるリネンサプライ事業者の事業継続リスクが急速に顕在化しています。

クリーニング業者の価格転嫁要求とホテル側の負担

これらの中間処理コストの増大は、ホテル・旅館に対するリネンのリース料金およびクリーニング委託単価の引き上げ要求として波及しており、宿泊業のサプライチェーン全体における構造的なボトルネックとなっています。「カジュアル化」「資材高」「節約志向」の三重苦に加え、ホルムズ海峡危機による燃料急騰が直撃した2026年は、業界の構造的転換点となる可能性が高まっています。

3. アメニティ(ナフサ由来製品)の供給制約

カミソリやヘアブラシ、歯ブラシなど、宿泊客に提供されるプラスチック製アメニティの多くはナフサ由来の樹脂から製造されています。長崎・矢太樓の山本専務執行役員は「ナフサ由来商品については現時点で価格はまだ上がっていないが、中東情勢の影響で今後より速いペースで価格転嫁が進むのではないか」と懸念を示しています。

業務用アメニティの海外調達依存:実態

日本の業務用アメニティ市場は、長年にわたり中国を中心とした海外生産への依存度が高い構造にあります。ホテルアメニティ専門商社の出荷案内では、「国内産の歯ブラシ・セット商品の袋詰めは3月末、カミソリの袋加工は4月中旬にメーカーが注文を締め切る」「在庫切れ次第出荷停止」「海外産歯ブラシは在庫を常備しているため代替品として案内」というオペレーション実態が示されており、量産・低価格帯のアメニティは海外生産品が国内供給を支える構造になっています。

世界のホテルアメニティ市場規模は2025年237億ドルから2026年264.7億ドルへ拡大(CAGR11.7%)と予測されており(市場調査レポート、2026年2月)、グローバル需要が急増する局面での供給制約が、日本の調達コストに直接跳ね返る構造です。

海外でも「ナフサ不足」:代替調達先の制約

従来の発想では「国内で調達できなければ海外品で代替」という選択肢がありましたが、2026年のホルムズ海峡危機は海外供給網も同時に直撃しています。

  • 中東拠点からのフォース・マジュール宣言:サウジアラビア、カタール、UAEに所在するエチレングリコール・ポリエチレン・メタノール等の生産拠点で、不可抗力条項の適用による日本向け供給停止が相次いで宣言されています
  • 欧州・北東アジアの石化設備の閉鎖加速:英調査会社Wood Mackenzieの分析では、慢性的な収益悪化に苦しんでいた欧州および北東アジアの古い石油化学設備にとって、今回の危機が「最後の一撃」になる可能性が指摘されています
  • 樹脂・建材メーカーの供給制限:建材・樹脂メーカーのフクビ化学工業は、ナフサ供給不足を理由に2026年3月26日付で全製品の供給制限を発表。日本ペイントは建築用シンナーを約75%値上げ、カネカは住宅用断熱材を40%引き上げており、樹脂供給網全体が逼迫しています
  • 製造業の3割に「調達リスク」:帝国データバンクのナフサ・サプライチェーン分析(2026年4月17日)では、ナフサ由来製品の調達リスクを抱える製造業は全国約4万7,000社、集計可能な製造業全体の約3割に上ります

つまり、宿泊施設が「中国製の安価な歯ブラシで代替する」という従来の調達戦略そのものが、原料樹脂の段階で世界規模のボトルネックに直面しているのが2026年の実態です。

調達コスト増と脱ナフサへのシフト

歯ブラシやカミソリといったアメニティの安価な海外調達モデルは構造的な見直しを迫られています。アメニティの値上げは通常半年に一度ですが、地政学リスクの織り込みにより、より頻繁な価格改定サイクルへの移行が現実味を帯びています。これに伴い、以下の構造転換が進行しています。

  • 「ジャスト・イン・ケース」型在庫管理への移行:地政学リスクを前提とした安全在庫の積み増し
  • 素材転換:価格差が縮小した竹・木材・バイオマスプラスチック素材への切替
  • 水平リサイクル網の構築:使用済みプラスチックの国内循環網が経済的合理性を持つフェーズへ

4. 航空業界:燃油サーチャージの過去最大級の引き上げ

旅行者の移動手段である航空インフラにおいて、ジェット燃料の価格高騰が直接的な足かせとなっています。

シンガポールケロシン市況の異常高騰

JAL・ANAの燃油サーチャージは、シンガポール市場で取引されるケロシン価格と為替レートの直近2カ月平均値をもとに2カ月ごとに改定されます。2026年2〜3月のシンガポールケロシン市況2カ月平均は1バレルあたり146.99米ドル、為替平均1ドル156.99円を乗じた円貨換算額は23,076円に達しました(JAL公式発表、2026年4月20日)。

この水準は従来の適用条件表の上限ゾーンを突破しており、JALはゾーンPからRまでを新設して対応する異例の措置を取っています。さらに、政府の中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置の補助を反映した上で、5月発券分はゾーンQ(22,000円基準)が適用されています。

欧米路線:従来比約7割の引き上げ

路線(日本発・片道) 4〜5月発券分 5月以降発券分(ANA) 5月以降発券分(JAL)
欧州・北米 3万円前後 55,000円 50,000円
韓国 3,000円台 6,500円 5,900円

出典:日本経済新聞(2026年4月1日)、JALプレスリリース(2026年4月20日)

家族4人で欧米を往復する場合、ANAの燃油サーチャージだけで約44万円(55,000円×8区間)に達します。レジャー目的の旅行需要を直接的に抑制するマクロ経済的要因として機能しています。

旅行会社の現場:駆け込み発券とキャンセルの同時進行

2026年4月20日のJAL・ANA同時発表(5月発券分から適用)を受けて、旅行会社の現場では「駆け込み発券」と「先の予約キャンセル」が同時に進行するという異例の事態が発生しました。

福岡・久留米市の旅行会社「西日本旅行」では、先の日程分の海外旅行予約の約9割がキャンセルとなり、その内容も「遠方のみならず、近場の韓国旅行を含めて、戦争という状況下で行き先を国内にスライドする動き」が中心と報じられています(FNNプライムオンライン、2026年4月27日)。一方で、4月30日までに発券すれば旧サーチャージが適用されることから、駆け込みの発券問い合わせが急増し、店頭は対応に追われました。

▶ 駆け込み発券で生じる差額(夫婦2人・欧州往復のケース)

4月末までに発券:29,000円 × 4区間 = 約11万6,000円

5月以降に発券:56,000円 × 4区間 = 約22万4,000円

差額は約10万8,000円。家族4人なら約21万6,000円の差が発生します。

大手旅行会社によれば、2026年ゴールデンウィーク(最大12連休)の旅行者数は国内・海外ともに前年より増加していますが、夏休み以降の海外旅行については「行きたくても行けない」価格帯への突入が現実化しており、福岡空港で取材を受けた利用者は「5月から燃油サーチャージが2倍になるんだったら、家族に会いに行けない」と困惑を口にしています。

注意すべき点として、燃油サーチャージは「搭乗日」ではなく「発券日(決済完了日)」が基準になるため、5月中に座席「予約」を確保していても、決済を後回しにして発券が6月以降に持ち越された場合は、新基準のサーチャージが適用されます。マイル特典航空券も有償チケットと同額が請求されるため、家計および企業の出張コスト全般に直接影響します。

制度的限界と国内線への波及

現行の燃油サーチャージ制度は、JAL・ANAともに従来の上限値に達しており、制度自体の改定議論が始まっています。さらにJALは、これまで国際線にのみ適用してきた燃油サーチャージを2027年4月から国内線にも導入する計画を持ち、スカイマーク等の中堅各社も国内線への適用を検討しています(日本経済新聞、2026年4月1日)。

SAF(持続可能な航空燃料)への構造転換

この価格変動リスクと供給不安を背景に、航空業界では化石燃料依存からの脱却が急務となっています。日本政府は2030年までに本邦エアラインの燃料使用量の10%(約172万kL)をSAFに置き換える目標を設定し、経済産業省・国土交通省合同の「SAF官民協議会」を設置。GX経済移行債を活用した製造設備投資支援(総額3,368億円規模)と、戦略分野国内生産促進税制によるSAF生産量に応じた税制措置を進めています。

SAFの主原料は廃食油などの非ナフサ由来原料であり、原油市況に依存しないエネルギー安全保障上の代替手段として位置付けられています。一方で、世界的なSAF需要拡大により廃食油の供給不足が課題となっており、原料確保のサプライチェーン構築が急務です。

【2026年8月9日更新】7〜8月発券分は欧米路線で片道65,000円

JAL・ANAは2026年6月12日、7月1日から8月31日までの発券分に適用する燃油特別付加運賃を発表しました。欧州・北米・中東・オセアニアは両社とも片道65,000円で、第4章で扱った5月発券分(ANA 55,000円/JAL 50,000円)からさらに上振れしています。

直近のシンガポールケロシン市況では本来28,000円基準が適用される水準に達していましたが、中東情勢を踏まえた政府の航空機燃料補助を特例として反映し、両社とも25,000円基準での適用となりました。ANAは24,000円基準から、JALはゾーンQ(22,000円基準)からゾーンTへの移行です(トラベルボイス、2026年6月13日)。

路線(日本発・片道) 5月以降発券分(第4章の値) 7〜8月発券分
欧州・北米・中東・オセアニア ANA 55,000円/JAL 50,000円 両社 65,000円
ハワイ・インド・インドネシア 本文に記載なし 両社 40,400円
タイ・シンガポール・マレーシア 本文に記載なし ANA 33,500円/JAL 35,000円
ベトナム・フィリピン・グアム 本文に記載なし 両社 22,500円
韓国 ANA 6,500円/JAL 5,900円 両社 7,400円
▶ 家族4人・欧州往復で必要になる燃油サーチャージ

65,000円 × 8区間 = 52万円。第4章時点のANA基準(55,000円 × 8区間 = 44万円)から8万円の増加です。マイル特典航空券でもこの金額は現金で必要になります。

なお9〜10月発券分は、本記事の更新時点(2026年8月9日)では未発表です。両社の改定は2カ月ごとで、次回分は8月中旬の発表が見込まれています。算定に使われるのは6〜7月のシンガポールケロシン市況と為替の平均であり、確定額は各社の公式発表をご確認ください。

第4章に記した「発券日基準」の原則は7〜8月発券分でも変わっていません。8月31日までに決済を完了した航空券には現行額が適用され、9月1日以降の発券には次回改定額が適用されます

5. 出国税引き上げと旅行需要への複合的影響

旅行コストへの影響は、燃料高騰だけにとどまりません。2026年7月1日以降の出国から、国際観光旅客税(出国税)が現行の1,000円から3,000円へ3倍に引き上げられることが税制改正大綱で明記されています(NHK・日本経済新聞報道)。家族4人の海外旅行では年間8,000円の負担増、月1回出張の出張者は年間24,000円の負担増となります。

さらに、JTBの2026年訪日旅行市場トレンド予測では、「他国と比べて日本の旅行コスト上昇率が大きいことから、欧米市場では2026年にかけて旅行需要の伸びが鈍化する兆し」が指摘されており、燃油サーチャージ・出国税・宿泊コストの三重高がインバウンド需要にも構造的影響を及ぼしつつあります。

【2026年8月9日更新】出国税3,000円は7月1日出国分から適用開始

第5章で「引き上げられることが税制改正大綱で明記されています」と記した国際観光旅客税は、予定どおり2026年7月1日の出国分から3,000円が適用されています。2019年の導入以来、初めての改定です。

あわせて経過措置が設けられました。2026年6月30日までに発券(運送契約を締結)した航空券・乗船券であれば、7月1日以降の出国でも旧税率1,000円が適用されます(トラベル Watch、2026年6月30日)。夏休み以降の渡航を6月中に手配した層と、7月以降に手配した層とで、同じ便でも税額が異なる状態が生じています。

家族4人で1回出国する場合の税額は12,000円で、従来の4,000円から8,000円の増加です。この数値は第5章の記述と一致します。

【2026年8月9日更新】出国者数は増加、訪日外国人は3カ月連続の前年割れ

第5章では、JTBの予測を引いて「欧米市場では旅行需要の伸びが鈍化する兆し」と記しました。公開から3カ月を経て、日本政府観光局の速報値には次の傾向が出ています。

指標 2026年4月 2026年5月 2026年6月
日本人出国者数 本記事では未確認 113万人(前年比+4.7%) 109万人(前年比+3.4%)
訪日外国人数 369万人(前年比-5.5%) 前年比-3.6% 315万人(前年比-6.8%)

アウトバウンドは前年を上回って推移する一方、訪日外国人数は4月から3カ月続けて前年を下回っています。第5章が示した「旅行コスト上昇によるインバウンド需要への影響」は、少なくとも前年比で見る限り現れています。

ただしこの減少がどこまで燃油サーチャージ・出国税・宿泊コストの上昇によるものかは、本記事では確認できていません。訪日外国人数の増減には為替、各国の景気、査証制度、路線数など複数の要因が同時に働きます。ここで示せるのは、旅行コスト上昇と訪日客数の前年割れが同じ期間に並んで観測されているという事実までです。

なお日本人出国者数が伸びを保っている点は、第4章で紹介した「先の予約のキャンセル」という4月時点の現場報告とは方向が異なります。特定時期の予約行動と、月次で集計された出国実績とでは、捉えている対象が異なります。

▶ 更新履歴
更新日内容該当箇所
2026年8月9日燃料油の店頭価格の現況とA重油月次の公表状況第1章の直後
2026年8月9日7〜8月発券分の燃油サーチャージ(欧米片道65,000円)第4章の直後
2026年8月9日出国税3,000円の適用開始と経過措置第5章の直後
2026年8月9日出国者数・訪日外国人数の実績第5章の直後

本記事は追記を末尾に積まず、該当する章の直後に配置しています。旧記述は削除せず、更新分を直後に並べることで、いつ何が変わったかを追えるようにしています。

エビデンスソース(一次情報・専門メディア)

  • 帝国データバンク「燃料費の高騰が企業に与える影響度調査」(2026年3月18日公表)
  • 帝国データバンク「銭湯業界 業績動向調査」(2026年4月)
  • 帝国データバンク「『ナフサ関連製品』サプライチェーン動向分析調査」(2026年4月17日)
  • 帝国データバンク「クリーニング店の倒産・休廃業解散動向」(2025年10月)
  • 厚生労働省「クリーニング業の実態と経営改善の方策」
  • 観光経済新聞「燃油価格の急騰、旅館で大きな影響 ボイラー燃料やリネン類の洗濯・乾燥で消費」(2026年4月3日)
  • KTNテレビ長崎「燃料高騰…ホテル業界にも影響 ボイラーに使う重油やアメニティ、食料品も」(2026年4月15日)
  • チャイナネット日本語版「日本の温泉業界、燃料不足で苦境に」(2026年4月16日)
  • 日本経済新聞「ANA・JAL、国際線の燃油サーチャージ6月引き上げ 日本発最大2倍」(2026年4月1日)
  • JALプレスリリース「JAL/JTA国際線『燃油特別付加運賃』の適用額を改定(2026年5月〜6月発券分)」(2026年4月20日)
  • FNNプライムオンライン / TNCニュース「海外旅行が"高嶺の花"に 旅行会社でキャンセル相次ぐ」(2026年4月27日)
  • 公明党 谷口睦生「『ナフサ危機』住宅資材値上げ、受注停止も」(2026年4月15日)
  • 国土交通省「持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた官民協議会」資料
  • 経済産業省 資源エネルギー庁「2030年における持続可能な航空燃料(SAF)の供給目標量の在り方」(2024年9月)
  • JTBグループ「2026年(1月〜12月)の訪日旅行市場トレンド予測」(2026年1月8日)
  • 政府税制改正大綱「国際観光旅客税(出国税)の改正方針」(2025年12月)
  • 日本M&Aセンター「リネンサプライ・クリーニング業界 業界レポート」(2025年12月)
  • トラベルボイス「ANAとJAL、燃油サーチャージをさらに引上げ、欧米路線は片道6万5000円、ハワイは4万400円、7月発券分から」(2026年6月13日)
    https://www.travelvoice.jp/20260613-159963
  • トラベル Watch「出国税3000円『インバウンド対策になぜ日本人が払うの?』国際ルールの壁と、動き出した新制度JESTA」(2026年6月30日)
    https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/2120551.html
  • トラベルボイス「【図解】日本人出国者数、2026年6月は前年比3.4%増の109万人 ―日本政府観光局(速報)」(2026年7月15日)
    https://www.travelvoice.jp/20260715-160184
  • トラベルボイス「【図解】訪日外国人数、2026年6月は前年比6.8%減の315万人、3カ月連続で前年割れも、15市場では過去最多 ―日本政府観光局(速報)」(2026年7月15日)
    https://www.travelvoice.jp/20260715-160182
  • 経済産業省 資源エネルギー庁「燃料油価格の激変緩和措置 全国平均価格の推移」(2026年8月3日調査)
    https://nenryo-teigakuhikisage.go.jp/
  • 経済産業省 資源エネルギー庁「石油製品価格調査(産業用軽油・A重油)」2026年6月分
    https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/petroleum_and_lpgas/pl007/results.html
トップへ戻る