ナフサ価格推移2026完全まとめ|国産ナフサ価格・スポット・通関CIFの最新チャート
「ナフサが2.5倍になった」と「ナフサは6月に衝突前を下回った」は、どちらも事実である。見ている系列が違うためだ。アジアスポット・輸入CIF・国産基準価格という3つの系列を分けて全推移を記録した。同じ高騰が約2ヶ月ずつ遅れて下流へ伝わる構造と、日本の原油調達が中東依存から転換した経緯を、自社24記事を横断して整理する。
- ナフサ価格には3つの系列がある。アジアスポット市況、輸入CIF(通関統計)、四半期ごとの国産ナフサ基準価格である。報道で見る数字はこのいずれかを指しており、系列が違えば水準もピーク時期も異なる。
- アジアスポットは2026年3月末に1トン1,200ドル超のピークをつけた。これは5月前半到着分の価格であり、通関CIFのピークは約2ヶ月遅れて5月16日の1,043ドルとなった。
- 国産ナフサ基準価格は2026年第1四半期が65,700円/kLでほぼ横ばい。第2四半期は7月31日に118,900円/kLで確定した。前四半期比53,200円高の1.81倍で、水準・上げ幅とも過去最高である。樹脂メーカーの値決めはこの系列に連動する。
ナフサ価格は3系列ある。アジアスポットは2026年3月末に1,200ドル超、通関CIFは5月16日に1,043ドル、国産基準価格は4〜6月期が118,900円/kLで確定し過去最高。同じ高騰が約2ヶ月ずつ遅れて下流に届く。上流の下落が製品価格に効かない理由がここにある。
- 2026年4〜6月期の国産ナフサ基準価格は118,900円/kLで確定した。前四半期比53,200円高、1.81倍である。水準・上げ幅とも過去最高であった(化学工業日報/2026年7月31日)。▶ 系列③の推移を見る
- 4月30日時点の「前期比2倍弱」という見通しは、そのとおりの結果になった。本まとめが記録してきた「同じ高騰が約2ヶ月ずつ遅れて下流へ伝わる」という構造が、値決めの系列でも実測で裏づけられた形である。▶ 3系列の時差を見る
- 次に出るのは第3四半期(7〜9月期)の確定値で、2026年10月下旬の公表が見込まれる。2026年後半の樹脂・資材の値決めは、この118,900円/kLを基準に動く。▶ 価格の全記録を見る
※ 第1章の現在地、および原油・アジアスポット・輸入CIF・為替の各数値は2026年7月26日時点の観測値である。今回の更新は系列③(国産ナフサ基準価格)の確報反映に限る。
2026年7月26日時点の現在地
2026年のナフサ価格について、当社はこれまで24本の記事を公開してきた。それぞれの記事では、その時点で最も適切な数値を引用している。しかし記事を横断して読むと、同じ「ナフサ価格」という言葉が異なる数字を指している箇所がある。本まとめの出発点はここにある。
3つの数字はいずれも正しい
2026年のナフサについて、次の3つの記述はいずれも一次資料に基づいている。
| 記述 | 系列 | 実務での使いどころ | 出典 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月末に1トン1,200ドル超に達した | アジアスポット市況 | 相場の方向を最も早くつかむ。日次で動く | 化学工業日報/2026年4月30日 |
| 2026年5月16日に1トン1,043ドルのピークをつけた | 輸入CIF(通関統計) | 実際に日本へ入った価格。スポットの約2ヶ月後 | 大景化学 ナフサ価格推移表 |
| 2026年第1四半期は65,700円/kLでほぼ横ばいだった | 国産ナフサ基準価格 | 樹脂の値決めはこれに連動する。社内資料に使うならこの系列 | 化学工業日報/2026年4月30日 |
| 2026年第2四半期は118,900円/kLで確定した(前四半期比+53,200円) | 国産ナフサ基準価格 | 2026年後半の値決めの基準。現時点で社内資料に使うべき最新値 | 化学工業日報/2026年7月31日 |
矛盾しているように見えるが、いずれも異なる系列の数値である。アジアスポットは市場で日々取引される価格、輸入CIFは実際に日本へ到着し通関した価格、国産ナフサ基準価格は樹脂メーカーの値決めに使われる四半期ごとの指標である。
第1に、系列間には約2ヶ月の時差がある。化学工業日報は、3月末に1,200ドル超をつけたのが「5月前半到着分」の価格であると記している。市況で値が付いてから船積み・輸送を経て通関するまでに時間がかかるためである。
第2に、国産基準価格の時差はさらに長い。2026年第1四半期の基準価格は、2025年11月後半から2026年2月前半のナフサ市況が入着時の為替で円換算されて決まる。上流の変動が値決めに届くまで4ヶ月前後を要する。
第3に、スポットの下落は製品価格の下落を意味しない。2026年6月25日にアジアナフサが627ドルまで下がり衝突前水準を下回ったが、7月1日発効の建材各社の改定は予定どおり実施された。値決めに使われる基準価格は、下落局面の市況をまだ織り込んでいなかったためである。
7月に入って再び上昇している
2026年7月12日、イラン革命防衛隊がホルムズ海峡を再閉鎖した。7月12日の通航確認は6隻と過去5週間で最少である。輸入CIFは6月25日の627ドルから7月15日808ドル、7月16日842ドルへと反発し、7月24日には982ドルに達した。6月25日比で57%の上昇にあたる。為替も7月16日の1ドル162.28円から7月24日は163.32円へ円安が進み、国産ナフサ価格指標は7月16日の96,965円/キロリットルから7月24日には113,464円/キロリットルへ、8日間で約17%上昇した(大景化学 ナフサ価格推移表)。
2月末から7月までの時系列
2026年2月末のホルムズ海峡封鎖から7月の再閉鎖まで、約5ヶ月間の推移を整理する。系列が異なる数値には出典と種別を併記した。
ナフサ価格3系列の構造
「ナフサが2.5倍になった」という記述と「ナフサは6月に衝突前を下回った」という記述は、どちらも正しい。前者はスポット系列、後者は通関系列の話である。3つの系列がそれぞれ何を測っているのかを整理する。
| 系列 | 何を測るか | 更新頻度 | 上流からの時差 | 主な参照先 |
|---|---|---|---|---|
| ① アジアスポット市況 (MOPJ等) |
市場で日々取引される価格。単位はドル/トン | 日次 | なし(最も速い) | 化学工業日報、日本経済新聞、業界紙 |
| ② 輸入CIF価格 (通関統計) |
日本に到着し通関した価格。運賃・保険料・為替を含む | 月次(速報・確定) | 約2ヶ月 | 財務省貿易統計、大景化学 ナフサ価格推移表 |
| ③ 国産ナフサ基準価格 | 樹脂メーカーの値決めに使われる指標。単位は円/kL | 四半期 | 約4ヶ月 | 化学工業日報、三協化学 国産ナフサ価格推移表 |
なぜ2ヶ月ずれるのか
化学工業日報は2026年4月30日の記事で、3月末に1トン1,200ドル超をつけたナフサ市況について「5月前半到着分」と明記している。市場で値が決まってから、船積み・航海・入港・通関という工程を経て日本に到着するまでに約2ヶ月を要するためである。
国産ナフサ基準価格の時差はさらに長い。同紙は第1四半期の基準価格について、2025年11月後半から2026年2月前半のナフサ市況が入着時の為替で円換算されて決まると説明している。四半期の基準価格が確定するまでに、上流の市況から4ヶ月前後かかる計算になる。
樹脂メーカーの価格改定は、多くの場合③の国産ナフサ基準価格に連動する。したがって①のスポットが下落しても、製品価格の改定は数ヶ月後まで続く。2026年6月25日にスポットが衝突前水準を下回った後も、7月1日発効の建材各社の改定が予定どおり実施されたのはこのためである。「原料は下がったのに製品は上がる」という状況は、値決めの仕組み上そうなる。
換算の目安
ドル/トンと円/kLを比較する場合、1トンは約1.41キロリットルにあたる。したがって1トンあたりのドル価格を1.41で割り、為替を掛けるとキロリットルあたりの円価格の概算が得られる。ただし通関CIFには運賃・保険料が含まれるため、スポット価格から単純に換算した値とは一致しない。
為替の影響も小さくない。2026年第1四半期の国産基準価格がほぼ横ばいだった理由について、化学工業日報は原油・ナフサ安を円安によるコスト高が相殺したためと説明している。ドル建て価格が下がっても円安が進めば、円建てのコストは下がらない。この構造は円安はナフサ高を上乗せし、ナフサ安を打ち消す、日銀の輸入物価指数が示す2026年の二重負担で、日本銀行の輸入物価指数を用いて整理している。同指数は契約通貨ベースと円ベースの両方が公表されており、2026年6月の前年同月比はそれぞれ17.8%高と29.7%高で、差は11.9ポイントであった。系列の時差がいつ届くかの話であるのに対し、為替は届いたときにいくらになっているかの話である。
5大セグメント別まとめ
24本の記事を、価格系列と調達構造の両面から5つのセグメントに整理した。各セグメントの末尾に該当記事へのリンクを配置している。関心のあるセグメントから読み進めていただきたい。
ナフサ市況・供給(総論・目詰まり・調達現実)
本カテゴリの中核をなすセグメントである。2026年2月28日のホルムズ海峡封鎖から、ナフサの価格と供給がどう動いたかを追っている。総論記事は緊急特集として継続更新しており、8月中旬の60日期限を分岐点として位置づけている。
供給面の論点は「量」ではなく「流通」にあった。経済産業省は2026年4月14日に日本全体として量は確保できており流通の目詰まり解消が課題であると表明し、日本化学工業協会も5月15日に川上の原料は維持されているが個別製品では偏りがあると追認している。当社はこの目詰まりを物理・経済・流通の3層構造として整理し、その後に需要破壊と覚書合意という2つの局面変化を加えて5層として分析した。
物理面ではナフサ収率が前年比4.2%減、4月のエチレン稼働率が67.3%と過去最低を記録した。経済面ではガソリンに170円超の補助がある一方でナフサには補助がないという格差が生じた。流通面では精製・石化・商社の各段階で在庫がロックされ、フリー在庫が実質ゼロとなった。加えて市況指標は実購入価格と乖離する。フォーミュラ価格へのプレミアム、海上輸送費と戦争保険料、円安、軽質ナフサの得率ミスマッチという4つの上乗せがあるためである。
2026年7月時点では、ENEOS副社長が原油調達のめどを9月分までと語り、化学メーカー4社の社長がナフサ調達の改善基調に言及している。ただし川下ほど価格転嫁が困難という構造課題は残り、三井化学は中東影響でコア営業利益150億円減を織り込んだ。日本の月間ナフサ需要は約283万kLで、内訳は国産4割・中東からの輸入4割超・その他地域2割弱である。国産ナフサの原料となる原油の9割超が中東由来であるため、実質的な中東依存度は8割にのぼる。
- 【2026年7月19日更新】ナフサ・クライシス2026|緊急特集TOP20と反転局面、8月中旬60日期限の分岐点
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- 原油調達は9月分めど・ナフサ調達は改善基調、ENEOS副社長・化学メーカー4社社長コメントから読み解く2026年7月時点の調達現実と価格転嫁の壁
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原油調達の構造転換(非中東代替・多角化恒久化・地政学)
ナフサの上流にある原油調達そのものが変わったセグメントである。日本の原油輸入は中東依存95%という一極集中の状態から、約4ヶ月で代替調達率がほぼ10割に到達した。高市首相は原油安の今こそ好機と明言し、多角化を恒久化する方針を指示している。
ただし代替調達はコストを下げない。当社の分析では4つの構造的な壁が同時に作用する。第1が運賃で、長距離輸送によりVLCC運賃が過去最高となった。第2がOSPプレミアムで、中東原油の価格自体が上昇した。第3が品質ミスマッチで、軽質スイート原油と国内製油所の装置構成が整合しない。第4が歩留まり差で、連産品の留分構成と国内の需要構成がずれる。この4点により、ガソリン・ナフサ・灯油・軽油・重油・アスファルト・潤滑油基油まで全留分が同時に値上がりする。このうち第3の品質ミスマッチと第4の歩留まり差については、中東産ナフサの代替が別の不足を生む、軽質ナフサへの転換で採れにくくなるブタジエンと芳香族でナフサの側から扱っている。軽質ナフサに代替するとエチレンは得られるがブタジエンや芳香族が採れにくくなるため、量を確保しても得られる製品の構成が変わる。また調達先を変えても価格が下がるとは限らないという構造は、より早く切り替えを終えていたLPGに明確な形で現れている。LPGの中東依存度は2011年度の86.6%から2023年度には4.7%まで下がっていたが、2026年4月の輸入単価は1トン115,660円と過去最高の水準になった。調達先の分散が価格を守るとは限らない理由は、【2026年7月版】中東依存を10年前に脱していたLPGがなぜ過去最高値になったのか、米国産への需要集中とパナマ運河が示す代替調達の限界で整理している。
代替調達先の供給余力にも目を向けている。オーストラリアは石油精製から撤退し、豊富な天然ガスを軸とした経済圏の構築を優先してきた。天然ガスの副産物であるコンデンセートはナフサの原料として適するが、老朽化した国内精製設備では分留できず、高品質な原料を日本や韓国へ輸出して製品を買い戻す構造が固定化していた。2026年4月にはINPEXがIchthys産コンデンセート約63万バレルを豪州国内の精製所へ緊急供給し、ジーロング精製所は4月15日の火災から20日に操業を再開している。同時期のナフサ価格は1トン933ドル、前年比70%高であった(2026年4月24日時点)。
価格が下がる条件についても分析した。需要破壊・世界的な景気後退・中東インフラの復旧が複合的に絡み合う必要があり、いずれか1つでは十分でない。日本にはアジア全体の経済を支える役割が求められるという論点も扱っている。地政学の側面では、日本の中東離れが中国・インド・ロシア軸への原油の流れを加速させ、人民元建て決済の拡大につながるリスクを整理した。
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産油国とOPEC+(増産の力学・中東インフラ)
供給する側の事情を扱うセグメントである。OPEC+の7カ国は2026年7月5日の会合で8月の生産枠を日量18万8千バレル引き上げることに合意した。増産分の累計は日量94万バレルとなり、世界需要の約1%に相当する。UAEは5月1日にOPECを脱退している。
産油国が増産を止められない理由は財政構造にある。歳入は量と価格の積で決まるため、価格が下がれば数量を増やして補う圧力がかかる。しかし各国が同じ判断をすれば供給過剰となり価格はさらに下がる。個々には合理的な判断が全体では不利益をもたらす構造である。
中東のエネルギーインフラそのものの被害も、供給能力を長期にわたって制約する。製油所と海水淡水化プラントの損傷は、復旧に5年から7年を要すると当社は整理している。供給側の制約が短期では解消しない見通しであり、セグメントBで扱う調達構造の転換とあわせて読む必要がある。
産業への波及とアジア石化再編
ナフサ高騰が具体的な産業でどう表れたかを扱うセグメントである。自動車では、トヨタ系Tier1各社の2026年4月決算で「ナフサ6月懸念」が共通の論点として浮上した。日本経済新聞は2026年4月29日、デンソーや豊田合成がナフサについて6月からの懸念を示したと報じている。在庫を数ヶ月分持つという発想が事業継続計画として定着しつつあり、効率最大化を前提とした調達から転換が進んでいる。
アジア全体では石油化学産業の再編が動き出した。2026年5月28日から29日に福岡で開催されたアジア石油化学工業会議では、各国が異なる対応を選択したことが確認された。韓国は政府主導の再編、タイは合弁、マレーシアは資産再編、ベトナムはエタンへの原料転換、インドネシアは不可抗力宣言という分岐である。
日本の選択は能力削減による稼働率の改善、ナフサ路線の維持による副産物経済の温存、バイオエタノールによる将来への備えという組み合わせであった。汎用品では中国・米国・中東と競争しないという意思決定にあたる。国内では旭化成が水島事業所の一部製品について2030年の生産終了を発表し、三井化学・三菱ケミカル・旭化成の3社による西日本エチレンJVの設立で基本合意している。
ロシア・ウクライナ要因(もう1つの供給制約)
中東情勢とは別に、原油市場に作用しているもう1つの要因を扱うセグメントである。ウクライナ保安庁のドローンによる攻撃はロシアの製油所を年間194回にわたって打撃し、精製能力の42.7%が喪失した。損害額は135億ドルにのぼる。ロシアはガソリンの輸出禁止とディーゼルの禁輸に踏み切っており、世界の原油・LPG需給に構造的な圧力を与えている。
特徴的なのは、ロシアの原油輸出量が最高記録を更新しながら財政赤字が拡大している点である。この逆転がなぜ生じるのかは、やさしく解説版で詳しく扱っている。産油国の歳入構造という論点は、セグメントCのOPEC+の議論とも接続する。
価格の全記録
2026年のナフサ価格を、系列ごとに分けて記録する。個別記事はそれぞれの時点で必要な数値を引用してきたが、系列を分けた通期の記録は本まとめが初めてとなる。他のカテゴリまとめから参照される基準データとして整理した。
系列① アジアスポット市況
市場で日々取引される価格である。単位はドル/トン。報道で「ナフサ価格」として最も多く登場する系列にあたる。
| 時点 | 水準 | 出典 |
|---|---|---|
| 2025年11月後半〜2026年2月前半 | 565〜590ドル | 化学工業日報/2026年4月30日 |
| 2026年2月末 | 600ドル未満 | 化学工業日報/2026年4月30日 |
| 2026年3月6日 | 776ドル | 米国化学会C&EN/2026年3月17日(石油化学アナリスト川上正則氏) |
| 2026年3月中旬 | 1,100ドル前後(2月末の600ドル台後半から約2週間余りで到達) | 化学工業日報/2026年3月18日 |
| 2026年3月末 | 1,200ドル超(5月前半到着分) | 化学工業日報/2026年4月30日 |
| 2026年6月前半到着分 | 1,000ドル前後 | 化学工業日報/2026年4月30日 |
本まとめで確認できる範囲では、2026年3月末の1,200ドル超がスポット系列の最高値である。この値は「5月前半到着分」の価格として報じられている点に注意が必要となる。市況で値が決まってから日本に到着するまでの時間差が、この表記に表れている。
系列② 輸入ナフサ価格(通関ベース)
実際に日本へ到着し通関した価格である。大景化学のナフサ価格推移表は財務省貿易統計を出典としており、運賃・保険料・為替を含む。国産ナフサ価格指標は円/キロリットルで示される。
| 時点 | ドル/トン | 国産ナフサ価格指標 | 為替 |
|---|---|---|---|
| 2026年5月15日 | 1,031ドル | 115,164円/kL | 157.93円/ドル |
| 2026年5月16日 | 1,043ドル | ― | ― |
| 2026年5月20日 | 1,005ドル | 113,092円/kL | ― |
| 2026年6月3日 | 767ドル(5月16日比 約26%減) | ― | ― |
| 2026年6月25日 | 627ドル(衝突前632ドルを下回る) | ― | ― |
| 2026年7月9日 | 702ドル | 81,146円/kL | ― |
| 2026年7月15日 | 808ドル | 93,169円/kL | 162.35円/ドル |
| 2026年7月16日 | 842ドル(6月25日比 +34%) | 96,965円/kL | 162.28円/ドル |
当社の過去記事では、この系列の数値を「シンガポールナフサスポット価格」と記載した箇所がある。出典元は財務省貿易統計に基づく通関ベースの推移表であり、系列①のスポット市況とは異なる。本まとめの整理を正とし、該当記事は順次修正する。
系列③ 国産ナフサ基準価格
樹脂メーカーの値決めに使われる四半期ごとの指標である。系列②の3ヶ月平均金額に2,000円/kLを加算し、10の位を四捨五入して算出される。
| 四半期 | 基準価格 | 反映される市況の期間 |
|---|---|---|
| 2025年10〜12月 | 65,600円/kL(第1四半期の前四半期) | ― |
| 2026年1〜3月 | 65,700円/kL(前四半期比 +100円) | 2025年11月後半〜2026年2月前半 |
| 2026年4〜6月 | 118,900円/kL(前四半期比 +53,200円/1.81倍) | 2026年2月後半〜5月前半 |
2025年10〜12月期の65,600円/kLは、2026年第1四半期が前四半期比100円高であるという報道からの逆算値である。化学工業日報が直接示した数値ではない。2026年第2四半期は2026年7月31日に118,900円/kLで確定した。前四半期比53,200円高で、水準・上げ幅とも過去最高である。4月30日時点で「前期比2倍弱」と報じられていた見込みは、1.81倍という結果でほぼそのとおりになった。
3系列を重ねると何が見えるか
| 系列 | ピーク時期 | ピーク水準 | 7月19日時点の状況 |
|---|---|---|---|
| ① アジアスポット市況 | 2026年3月末 | 1,200ドル超 | 7月12日の再閉鎖を受けて上昇局面 |
| ② 輸入ナフサ価格(通関) | 2026年5月16日 | 1,043ドル | 842ドル(7月16日・6月25日比+34%) |
| ③ 国産ナフサ基準価格 | 2026年4〜6月期 | 118,900円/kL(前期比1.81倍) | 7月31日に確定値を公表 |
同じ高騰が、系列ごとに約2ヶ月ずつ遅れて下流へ伝わっている。化学工業日報は3月末の市況を「5月前半到着分」と明記しており、この2ヶ月が輸送と通関に要する期間にあたる。スポットが3月末、通関ベースが5月、値決めに使う基準価格が4〜6月期という順序である。上流の下落を見て「もう値上げは終わる」と判断すると、実務では読み違えることになる。
原油から各資材への分岐
ナフサは原油の一部にすぎない。原油を蒸留すると、軽い順に複数の留分が同時に得られる。この連産品という性質が、2026年の値上がりが特定の品目にとどまらなかった理由である。
留分と資材の対応
| 留分 | 主な用途 | 2026年に影響が及んだ資材 |
|---|---|---|
| ナフサ (軽い留分) |
石油化学原料。分解炉でエチレン・プロピレン・ブタジエン・BTXになる | ストレッチフィルム、PPバンド、OPPテープ、塩ビ管、断熱材、樹脂サッシ、塗料用シンナー、シーリング材、接着剤、包装材 |
| 灯油・軽油 (中間留分) |
燃料 | 製造工場の稼働燃料、輸送費。石膏ボードなど非石油化学製品にもエネルギーと物流を通じて波及 |
| 重油・潤滑油基油 | 燃料、エンジンオイル | エンジンオイル、油圧作動油 |
| アスファルト (最も重い残渣) |
道路舗装、防水材 | アスファルト合材、アスファルトルーフィング、アスファルトシングル |
連産品であることの意味
ナフサ分解炉を動かすと、エチレン・プロピレン・ブタジエン・BTXが同時に生産される。特定の製品だけを増産することはできない。当社は総論記事において、この構造による波及を4つの段階として整理してきた。第1波が燃料、第2波が日用品・タイヤ、第3波が衣料・家電、第4波が建材・医療機器・機能性化学品である。時間差を伴う連鎖が、日本標準産業分類における21の中分類に及んでいる。
同じ性質は原油そのものにも当てはまる。中東以外から原油を調達しても、軽質スイート原油と国内装置構成の不整合、連産品の留分構成と需要構成のずれが生じる。当社の非中東原油に関する記事では、運賃・OSPプレミアム・品質ミスマッチ・歩留まり差という4つの要因が同時に作用し、ガソリンからアスファルト・潤滑油基油まで全留分が同時に値上がりする構造を扱った。
エチレン稼働率という制約
価格だけでなく、生産能力の側にも制約があった。石油化学工業協会の集計によると、2026年4月のエチレン設備稼働率は67.3%である。国内エチレン12基のうち6基が減産を継続した時期があり、旭化成は2026年5月12日に水島事業所のスチレンモノマー・低密度ポリエチレン・高密度ポリエチレンについて2030年の生産終了計画を発表した。同時に三井化学45%・三菱ケミカル45%・旭化成10%の出資による西日本エチレンJVの設立で基本合意し、現在の95.1万トン体制を45.5万トン体制へ縮小する再編が動き出している。
業界別ナビゲーション
同じナフサ価格でも、立場によって見るべき系列と読み方が変わる。業界別に、優先して確認すべき系列と関連記事を整理した。
| 立場 | 優先して見る系列 | 読み方の要点 |
|---|---|---|
| 樹脂・化学品の需要家 (成形加工・包材) |
系列③ 国産ナフサ基準価格 | 仕入価格の改定は基準価格に連動する。スポットの下落から実際の値下げまで数ヶ月かかる。四半期ごとの確定値を確認する |
| 物流資材の調達担当 (パレット・フィルム・バンド) |
系列②+系列③ | 通関ベースの月次推移で方向を、基準価格で改定時期を読む。国内再生材ルートは別系列で動く |
| 建設・工事の見積担当 | 系列③+改定発表 | 基準価格の四半期変動が2〜3ヶ月遅れでメーカー改定になる。見積の有効期間設定に直結する |
| 自動車・部品メーカー | 系列①+在庫水準 | スポットの変動が調達計画に効く。在庫を数ヶ月分持つ運用が定着しつつある |
| 石油化学メーカー | 系列①+エチレン稼働率 | 市況と実購入価格の乖離を確認する。フォーミュラ・輸送費・保険料・為替・得率の上乗せがある |
| 暮らしの視点 | 系列③ | 店頭価格に届くのは最も遅い。上流が下がっても身近な商品はすぐには安くならない |
共通して押さえる点
いずれの立場でも、市況指標と実購入価格は一致しない。当社の目詰まり分析では、フォーミュラ価格へのプレミアム、海上輸送費と戦争保険料、円安、軽質ナフサの得率ミスマッチという4つの上乗せ要因を挙げている。市況が下がったことをもって調達コストが下がったと判断すると、実務では読み違えることになる。
全24記事リファレンス
本記事が統括する24本を、専門版とやさしく解説版の2階層で一覧化した。各カードから該当記事へ遷移できる。
専門版(18本)
【2026年7月19日更新】ナフサ・クライシス2026|緊急特集TOP20と反転局面、8月中旬60日期限の分岐点
本カテゴリの総論ハブ。連産品構造による4フェーズの波及と、日本標準産業分類21中分類への影響を継続更新している。
▸ この記事を読むナフサ供給「目詰まり」の正体2026|需要破壊・米イラン覚書合意・7月前年並み生産、目詰まりの3層構造を一次情報で解読【2026年6月25日】
物理・経済・流通の3層に需要破壊と局面転換を加えた5層で分析。市況と実購入価格が乖離する4つの上乗せ要因を扱う。
▸ この記事を読む原油調達は9月分めど・ナフサ調達は改善基調、ENEOS副社長・化学メーカー4社社長コメントから読み解く2026年7月時点の調達現実と価格転嫁の壁
経営トップの発言から2026年7月時点の調達実態を整理。月間需要283万kLの内訳と実質的な中東依存度8割を扱う。
▸ この記事を読むイラン情勢とナフサ備蓄4ヶ月の陰で進む、石化産業の構造的敗北と「住まいの危機」
補助金政策の非対称性とアジア各国のフォースマジュール連鎖を整理。住宅取得への影響も扱う。
▸ この記事を読むイラン情勢×ナフサショックで露呈する非中東原油代替の落とし穴─運賃3倍・OSP19.5ドル・歩留まり差が全石油製品を押し上げる構造【2026年6月】
運賃・OSPプレミアム・品質ミスマッチ・歩留まり差の4つの壁を分析。全留分が同時に値上がりする構造を扱う。
▸ この記事を読むイラン情勢×ナフサショックで構造化する石油製品高止まり──値下がりは大不況と中東復興の先
価格が下がる条件を需要破壊・景気後退・中東復旧の複合として整理。日本のアジアにおける役割も論じる。
▸ この記事を読む日本の原油調達2026年7月報告、中東回帰という選択肢を捨てた政府の判断、産油国の「量で稼ぐ」圧力と多角化恒久化の真相
中東依存95%から代替調達ほぼ10割への転換と、多角化を恒久化する政府方針を政府一次資料から整理する。
▸ この記事を読む日本の中東離れが招く地政学リスク2026、中国・インド・ロシア軸に流れる原油と「ペトロユアン」加速の真相
供給・価格・通貨・外交の4層リスクを整理。中東東方外交と人民元建て決済の拡大を扱う。
▸ この記事を読むイラン情勢と資源大国オーストラリアの最新ナフサ事情
代替調達先の供給余力を扱う。石油精製から撤退しガス経済圏を選んだ豪州の構造と、コンデンセートの緊急供給を整理する。
▸ この記事を読む【2026年7月版】中東依存を10年前に脱していたLPGがなぜ過去最高値になったのか、米国産への需要集中とパナマ運河が示す代替調達の限界
中東依存を86.6%から4.7%へ下げたLPGが、それでも過去最高値になった構造。多角化ではなく米国への一極集中だった実態をLNGとの対比で扱う。
▸ この記事を読むナフサは石油備蓄法の「石油」に含まれるのに備蓄日数の算定には入らない、2026年に見えた制度と実態のずれ
約230日分という数字がナフサに当てはまらない理由。1982年の省議決定を経て1993年度に備蓄義務から外れた経緯まで一次資料で追う。
▸ この記事を読む中東エネルギーインフラの崩壊と「失われる5-7年間」
製油所と海水淡水化プラントの被害を整理。復旧に要する期間が代替調達の恒久化を後押しした背景を扱う。
▸ この記事を読むトヨタ系Tier1の決算が示す「ナフサ6月懸念」 ホルムズ封鎖が突きつけた供給網の真の脆弱性
トヨタ系部品メーカー7社の決算から調達リスクを分析。在庫戦略と事業ポートフォリオの再設計を論じる。
▸ この記事を読むAPIC2026 福岡レポート 完全版 — ホルムズ海峡封鎖下のアジア石油化学、各国・主要企業コメント総まとめ
2026年5月に福岡で開催された会議の総まとめ。アジア8か国の対応分岐と主要企業のコメントを収録する。
▸ この記事を読むアジア石化再編2026|イラン情勢×フィードストック革命×「使いこなす力」の時代
日本が選んだ能力削減・ナフサ路線維持・バイオエタノールという組み合わせの意味を、アジア各国との対比で論じる。
▸ この記事を読む【2026年7月11日速報】ウクライナSBUドローン、露製油所を年間194回打撃、精製能力42.7%喪失・損害$135億、ガソリン輸出禁止・ディーゼル禁輸で世界原油・LPG需給に構造的圧力
中東とは別の供給制約要因を扱う。ロシアの精製能力喪失と輸出構造の変化を12章で分析する。
▸ この記事を読む円安はナフサ高を上乗せし、ナフサ安を打ち消す、日銀の輸入物価指数が示す2026年の二重負担
契約通貨ベースと円ベースの差は2026年6月に11.9ポイント。ドル建ての下落が仕入価格に届かない理由を、系列の時差とは別の要因として扱う。
▸ この記事を読む中東産ナフサの代替が別の不足を生む、軽質ナフサへの転換で採れにくくなるブタジエンと芳香族
量を確保しても得られる製品の構成は変わる。軽質ナフサでブタジエンと芳香族が減る仕組みと、産地別データが公表されていない現状を扱う。
▸ この記事を読むやさしく解説版(6本)
ニュースで聞く「ナフサ・クライシス2026」をやさしく解説、暮らし・食品・建材・電気代への波及【2026年6月版】
総論の暮らし目線版。中東依存度が2020年53%から2024年74%へ上昇した構造と、国家備蓄の対象外という論点を扱う。
▸ この記事を読むナフサ不足はいつまで続くのか、目詰まりの原因と値上げが止まらない理由
目詰まりの構造を暮らし目線で解説。覚書合意の後もスーパーの値上げが続く理由を扱う。
▸ この記事を読む「ナフサ年越し確保」の本当の意味──年明けまで暮らしのプラスチックが安くならない構造
政府が示した年末までの確保という表明が、家庭のプラスチック製品の価格に何を意味するかを整理する。
▸ この記事を読むニュースで聞くイラン情勢が招く「2026年OPEC+の異変」をやさしく解説、産油国が増産を止められない本当の理由
産油国の財政均衡油価と歳入構造を暮らし目線で解説。ガソリン代・電気代への波及も扱う。
▸ この記事を読むニュースでよく聞く「ナフサショック」をやさしく解説、トヨタ系部品メーカー7社の現状と今後の見通し【2026年6月版】
自動車部品への影響を暮らし目線で解説。非中東調達の高コスト構造と在庫戦略の変化を扱う。
▸ この記事を読むニュースで聞くウクライナのドローン攻撃が招く「2026年原油市場の異変」をやさしく解説、露の原油輸出が最高記録なのに予算赤字が拡大する本当の理由
輸出量が最高記録なのに財政赤字が拡大する仕組みを解説。精製能力の喪失が輸出単価に効く構造を扱う。
▸ この記事を読む見通しとモニタリング指標
2026年7月26日時点で、価格の方向を左右する要素を整理する。予測は行わず、確認できる事実と、今後の判断材料となる指標を示す。
直近の分岐点
当社の総論記事は、8月中旬に到来する60日期限を分岐点として位置づけている。2026年6月14日に合意され6月18日に正式発効したイスラマバード覚書について、三菱総合研究所は6月19日、和平ではなく対立の一時停止であり本質は60日後への先送りであるという評価を示した。7月12日のホルムズ海峡再閉鎖は、この評価が現実の推移と整合していることを示している。
期限までの間に供給がどこまで持つかという論点もある。経済産業省は2026年4月10日、ナフサ由来製品について輸入と国内精製で2ヶ月分、川中製品の在庫で2ヶ月分の計4ヶ月分を確保できるとした。報じられる備蓄日数は燃料油を対象としており、ナフサ等への供給分を算定に含まない点には注意が要る。この扱いの根拠と経緯は、ナフサは石油備蓄法の「石油」に含まれるのに備蓄日数の算定には入らない、2026年に見えた制度と実態のずれで一次資料から追っている。
モニタリングすべき5指標
| 指標 | 確認先 | 頻度 | 着眼点 |
|---|---|---|---|
| アジアスポット市況 | 化学工業日報、日本経済新聞 | 日次 | 最も速く動く。方向の把握に用いる |
| 輸入ナフサ価格・国産ナフサ価格指標 | 大景化学 ナフサ価格推移表 | 随時更新 | 約2ヶ月前のスポットが反映される |
| 国産ナフサ基準価格 | 三協化学、化学工業日報 | 四半期 | 樹脂メーカーの値決めに直結する |
| エチレン設備稼働率 | 石油化学工業協会 | 月次 | 2026年4月は67.3%。供給能力側の制約を示す |
| ホルムズ海峡の通航状況 | 報道、船舶追跡情報 | 随時 | 7月12日の通航確認は6隻と過去5週間で最少 |
系列ごとに見通しの意味が変わる
スポットが下落しても、通関ベースに反映されるのは約2ヶ月後、値決めの基準価格に反映されるのはさらに後になる。したがって「ナフサが下がったので値上げは終わる」という判断は、どの系列を見ているかによって成否が分かれる。調達実務では系列③、市況の方向感を掴むには系列①というように、目的に応じて使い分けることになる。
本まとめは2026年7月26日時点で確認できるエビデンスに基づいている。ホルムズ海峡の情勢と原油・ナフサ市況は数日単位で動くため、8月中旬の60日期限前後には内容が変わる可能性がある。2026年第2四半期の国産ナフサ基準価格は2026年7月31日に118,900円/kLで確定し、本記事に反映した。次回更新は第3四半期(7〜9月期)の確定値が公表される2026年10月下旬を予定している。
用語集
原油の蒸留で得られる軽質留分の一種で、石油化学の基礎原料となる。分解炉でエチレン・プロピレン・ブタジエン・BTXに分けられ、そこから樹脂・接着剤・溶剤・フィルムなどが作られる。日本のナフサは大部分が輸入品である。
市場で日々取引されるナフサの価格。単位はドル/トン。報道で「ナフサ価格」として最も多く登場する系列にあたる。2026年は3月末に1トン1,200ドル超に達した。
Mean of Platts Japan の略。日本向けナフサのスポット価格指標の1つで、アジア圏の代表的なベンチマークとして参照される。
Cost, Insurance and Freight の略。商品代金に運賃と保険料を加えた価格で、輸入品が日本に到着した時点の価格にあたる。財務省貿易統計に基づく通関ベースの数値がこれに該当する。
樹脂メーカーの値決めに使われる四半期ごとの指標。単位は円/キロリットル。輸入ナフサ価格の3ヶ月平均金額に2,000円/kLを加算し、10の位を四捨五入して算出される。2026年第1四半期は65,700円/kL、第2四半期は118,900円/kLであった。
蒸留によって沸点の範囲ごとに分けられた成分。軽い順に石油ガス・ナフサ・灯油・軽油と取り出され、最後に残る重質成分がアスファルトの原料となる。
1つの工程から複数の製品が同時に生産される構造。ナフサ分解炉を動かすとエチレン・プロピレン・ブタジエン・BTXが同時に得られるため、特定の製品だけを増産することができない。
ナフサ分解炉の稼働状況を示す指標。石油化学工業協会が月次で公表する。2026年4月は67.3%で、損益分岐とされる90%を大きく下回った。
Official Selling Price の略。産油国が公表する原油の公式販売価格。基準原油との差額をプレミアムまたはディスカウントとして設定する。中東産原油ではこのプレミアムが上昇した。
石油輸出国機構(OPEC)加盟国に、ロシアなど非加盟の産油国を加えた枠組み。生産枠の調整を協議する。UAEは2026年5月1日にOPECを脱退した。
産油国の財政収支が均衡する原油価格の水準。これを下回ると財政赤字となるため、価格下落時には数量を増やして歳入を確保する圧力が生じる。
不可抗力による契約履行の免責宣言。原料の調達難などにより供給義務を果たせない場合に発動される。2026年はアジア各国の石化メーカーで相次いだ。
価格の高騰により需要そのものが減少する現象。買い控えや代替品への移行が進む。2026年5月から6月にかけての市況急落の要因の1つとされる。
出典・エビデンス一覧
出典は、価格の一次データ、報道・業界媒体、官庁・業界団体の3区分に分けて記載している。個別の詳細な出典は各記事に掲載している。
価格の一次データ
- ナフサ価格推移表(出典:財務省貿易統計/Q平均は3ヶ月の平均金額に2,000円/klを加算し10の位を四捨五入)/大景化学株式会社
- 国産ナフサ価格推移表(3ヶ月平均・黒字は確定および速報、青字は想定/2026年7月8日更新)/三協化学株式会社
- 貿易統計(ナフサ輸入CIF価格)/財務省
報道・業界媒体
- 「国産ナフサ価格、過去最高へ 1~3月は横ばい」(2026年第1四半期65,700円/kL、前四半期比100円高。2月末に600ドル未満だった市況が3月末=5月前半到着分に1,200ドル超、6月前半到着分は1,000ドル前後)/化学工業日報/2026年4月30日
- 「4~6月の国産ナフサ11・8万円 上げ幅含め最高」(2026年第2四半期118,900円/kL、前四半期比53,200円高。水準・上げ幅とも過去最高)/化学工業日報/2026年7月31日/2026年8月26日に記事本文を直接参照した
- ナフサスポット価格の推移に関する報道(2月末600ドル台後半から約2週間余りで1,100ドル前後)/化学工業日報/2026年3月18日
- ナフサ価格に関する報道(3月6日776ドルから1週間後に1,000ドル突破。石油化学アナリスト川上正則氏)/米国化学会 C&EN/2026年3月17日
- 「デンソーや豊田合成『ナフサ6月から懸念』 トヨタ系部品に中東リスク」/日本経済新聞/2026年4月29日
- 汎用合成樹脂の取引価格および値上げ幅に関する報道/日本経済新聞/2026年3月17日・3月31日・4月15日
- 東ソーのポリエチレン樹脂値上げ(5月21日納入分から45円/kg以上)/日本経済新聞/2026年5月14日
- ガソリン市況とナフサ市況の逆転および食品値上げの包装資材要因に関する報道/日本経済新聞/2026年5月30日
- 「日本の原油タンカー、全てホルムズ海峡通過」/日本経済新聞/2026年7月13日
- OPEC+7カ国の8月生産枠に関する報道(日量18万8千バレル増、7月5日会合)/ジェトロ
官庁・業界団体
- エチレン設備稼働率(2026年4月67.3%)/石油化学工業協会/2026年5月21日公表
- 「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保及び重要物資の安定的な供給確保のための対応方針(案)」/経済産業省/2026年4月10日
- ナフサ供給に関する表明(日本全体として量は確保、流通の目詰まり解消が課題)/経済産業省/2026年4月14日
- ナフサ供給に関する見解(川上の原料は維持、個別製品では偏り)/日本化学工業協会/2026年5月15日
- イスラマバード覚書に関する評価(和平ではなく対立の一時停止)/三菱総合研究所/2026年6月19日
- 中東情勢に伴う一部製品の新規受付再開・出荷納期に関する案内/三協化学株式会社/2026年6月2日
当社の関連まとめ
- 「【イラン情勢完全まとめ】」(親ハブ)
- 「【建設資材・養生テープ完全まとめ】2026年イラン情勢下の建設資材調達、供給・工期・価格改定の全体像」
- 「【農業・肥料完全まとめ】2026年イラン情勢が招く食料インフレとコメ・肉・野菜・果物への影響」
- 本記事が統括するナフサ・原油関連24本(Chapter 08に一覧を掲載)
よくあるご質問
「ナフサが2.5倍」と「ナフサは衝突前を下回った」はどちらが正しいのですか
どちらも正しく、見ている系列が違います。2.5倍という表現はアジアスポット市況の話で、2026年3月末に1トン1,200ドル超をつけた局面を指します。衝突前を下回ったという表現は輸入ナフサ価格(通関ベース)の話で、2026年6月25日に627ドルとなり衝突前の632ドルを一時下回った局面です。系列が異なるため、同じ「ナフサ価格」という言葉でも指している数字が違います。Chapter 05に3系列の全推移を整理しています。
なぜスポットが下がったのに製品の値上げが続くのですか
樹脂メーカーの値決めが、スポットではなく四半期ごとの国産ナフサ基準価格に連動しているためです。基準価格は輸入ナフサ価格の3ヶ月平均に2,000円/kLを加えて算出され、その輸入価格自体もスポットから約2ヶ月遅れて動きます。2026年第1四半期の基準価格が2025年11月後半から2026年2月前半の市況で決まったように、上流の変動が値決めに届くまで4ヶ月前後かかります。2026年6月25日にスポットが下がった後も7月1日発効の改定が予定どおり実施されたのは、この時間差によるものです。
中東以外から原油を買えば価格は下がりますか
当社の分析では下がりません。4つの構造的な要因が同時に作用するためです。第1に長距離輸送による運賃の上昇、第2に中東原油のOSPプレミアム自体の上昇、第3に軽質スイート原油と国内製油所の装置構成の不整合、第4に連産品の留分構成と国内需要構成のずれです。日本は中東依存95%から約4ヶ月で代替調達率がほぼ10割に到達しましたが、これはコスト低減ではなく供給確保のための転換でした。政府は多角化を恒久化する方針を示しています。
自社の調達では、どの系列を見ればよいですか
目的によって使い分けが必要です。仕入価格の改定時期を読むなら国産ナフサ基準価格(四半期)、市況の方向感を掴むならアジアスポット市況(日次)、その中間の動きを確認するなら輸入ナフサ価格(大景化学の推移表)が適しています。ただしいずれの系列も、実際の購入価格とは乖離します。フォーミュラ価格へのプレミアム、海上輸送費と戦争保険料、為替、軽質ナフサの得率ミスマッチという上乗せがあるためです。Chapter 07に立場別の整理を掲載しています。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか
当社は千葉県我孫子市に本社を置き、プラスチックパレット・再生樹脂材料・PPバンド・ストレッチフィルム等の物流資材を全国のお客様にお届けする専門商社です。当社が扱う資材はいずれもナフサを起点とする石油化学製品であり、価格と供給の変動を日々の調達業務で直接受けています。どの系列の数字を見て仕入と販売を判断するかは、当社自身の実務課題でもあります。そこで確認している一次情報を、同じ構造の影響を受けるみなさまにも活用いただけるよう、記事として整理して公開しています。
他のカテゴリまとめ
本まとめは上流の価格と調達構造を扱っている。各産業への波及は、カテゴリごとのまとめで統括している。
- 本記事の内容は2026年7月26日時点で確認できる情報に基づいています。ホルムズ海峡の情勢および原油・ナフサ市況は短期間で変動するため、記載内容が現時点の状況と異なる場合があります。
- 掲載した価格・指標・比率は各調査機関・官庁・報道に基づく参考値です。市況指標と実際の購入価格は乖離します。ご発注の際は必ず取引先の最新情報をご確認ください。
- 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の投資判断・取引判断を推奨するものではありません。調達・発注の判断は読者ご自身の責任において行ってください。
- 海外報道および英語資料を参照した箇所については、要約および翻訳の過程で原文のニュアンスが完全には再現されない可能性があります。正確な内容は各出典元の原資料をご参照ください。
- 引用にあたっては出典元を明記し、必要最小限の範囲にとどめています。本記事の内容を転載・引用される場合は、出典として本記事のURLを明記してください。