速報
ホルムズ通航が4隻に減少、タンカー3隻被弾と原油90ドル超え(7月22日)
この記事の答え
- 何が起きた
- 7月19〜21日に、タンカー3隻が飛翔体による攻撃を受けました。7月20日にホルムズ海峡を通った商品輸送船は4隻(前日7隻)で、追跡できた大型原油タンカーとLNG船は0隻です。
- 資材への影響
- プラスチックの原料になるナフサは、原油よりも足りなくなりやすい状態です。樹脂原料は、量と値段の両方で見通しにくくなっています。
- 確かめておくこと
- 見積りの有効期限と、次に必要な数量。値段の目安は、原油ではなくナフサ・エチレンの動きです。
- 次に見るところ
- 大型原油タンカーとLNG船が、何日か続けて海峡を通るか。10日間の停戦案がまとまるか。
7月29日の通航は、両方向あわせて14隻まで戻りました。封鎖が表明される前(約130隻)の約11%で、ナフサの調達は良くなっていません。
7月31日の日米協調介入による円高、9月の原油100ドル再突破とサウジアラビアの産油量の減少(前月比190万バレル減)は、まとめの記事で整理しています。
続きの記事:原油は戻ってもナフサ不足が続く理由 ›まとめの記事:イラン情勢2026完全まとめ(9章)›
ブレント原油は、世界の原油の値段の目安です。戦争保険料は、紛争のある海を通る船にかける保険の料金で、保険業界の関係者から出た指標の値です。
3日間でタンカー3隻の被弾と、紅海の封鎖宣言が続いた
7月19〜21日に、タンカー3隻が攻撃を受けました。同じ時期に、イエメンのフーシ派がサウジアラビアへの海上封鎖を宣言しています。
この記事は、7月22日午前1時(日本時間)までに発表・確認された情報をもとにしています。時刻は発表や報道によるもので、実際に起きた時刻とは違うことがあります。
| 日本時間 | 起きたこと | 確かさ |
|---|---|---|
| 7月20日 午前4時24分 | 石油製品を運ぶタンカー KAVOMALEAS が被弾し、機関室で火災が起きました。英国海運貿易オペレーション(UKMTO)は、7月19日19時24分(世界標準時)に起きたと報告しています。 | |
| 7月20日 未明 | 大型原油タンカー(VLCC)の ACHELOOS も、ほぼ同じ時刻に被弾しました。海事警備会社は、2隻とも「南側回廊」を通っていたと説明しています。 | |
| 7月20日 午前11時ごろ | 米中央軍が、イランへの9夜連続の攻撃を終えたと発表しました。 | |
| 7月20日 | フーシ派が、サウジアラビアへの海上封鎖をすぐに始めると宣言しました。海運会社向けの通知では、7月20日21時1分から有効としています。 | |
| 7月21日 午前5時10分 | UKMTO が、オマーンのリマの北東8海里でタンカーが正体不明の飛翔体に当たったと報告を受けました。国際海事機関(IMO)は、この船を KAIFAN(クウェート籍)と特定しています。 | |
| 7月21日 中 | サウジ原油を積んだ XIN LONG YANG と RODOS が紅海で引き返し、NEW PRIME はオマーン沖で近づくのをやめました。紅海の戦争保険料の指標も上がりました。 | |
| 7月21日 中 | イランの高官が、仲介する側から10日間の停戦案を受け取ったとロイターに話しました。合意の文書や、双方が受け入れたかは発表されていません。 | |
| 7月21日 午後11時53分 | ブレント原油は1バレル91.34ドル、WTIは85.03ドル(どちらも取引中の値)でした。 |
攻撃した側が誰かや、その戦果についての当事者の主張は、ほかから確かめられるまで事実としては扱っていません。
通航は4隻に減り、LNG船は7月11日から通っていない
7月20日にホルムズ海峡を通った商品輸送船は4隻でした。3隻とも乗組員の安否は確認されていますが、誰が攻撃したかを確かめた第三者の情報はありません。
攻撃を受けたのは、次の3隻です。
- KAVOMALEAS:石油製品を運ぶタンカー。飛翔体(ミサイルなどの飛んでくる物)が2発当たり、機関室が燃えて、乗組員は船を離れました。
- ACHELOOS:大型原油タンカー(VLCC)。飛翔体1発が、舵を動かす区画に当たりました。
- KAIFAN:クウェート石油タンカー会社が運航する石油製品タンカー。機関室が燃えました。
イランの革命防衛隊は、「南側の危険な航路」を通ろうとした船を止めたと発表しました。ただし、攻撃を受けた船と同じ船かは確かめられていません。
3隻のくわしい情報船籍・救助・警報の番号
KAVOMALEAS はマルタ船籍のパナマックス型の石油製品タンカーで、2025年に造られた船です。ギリシャの運航会社 Dynacom Tankers によると、飛翔体2発を受けて機関室で火災が起き、船長が消火設備を動かしたあと、船を離れると決めました。乗組員はタグボートに救助され、オマーン当局が全員を確かめて陸に移しました。UKMTO は、環境への影響の報告はないとしています。
ACHELOOS はリベリア船籍の VLCC です。飛翔体1発を舵を動かす区画に受け、損傷を調べるため停泊地へ移りました。汚染は報告されていません。
KAIFAN は、UKMTO の警報 094-26 として、7月20日20時10分(世界標準時)、日本時間の7月21日午前5時10分に報告されました。IMO は船名を KAIFAN、IMO番号を 9656046 と記録しています。複数の海事専門メディアは、クウェート石油タンカー会社(KOTC)運航の石油製品タンカーで、乗組員が機関室の火災を通報したと伝えています。UKMTO の続報と海事当局の説明を引いた複数の報道は、この時点でけが人の報告はないとしています。前の2隻とは警報番号・場所・報告の時刻が違う、別の出来事です。
Kpler の集計では、7月20日の通航は商品輸送船4隻(前日7隻)でした。追跡できた VLCC と LNG船は0隻で、船は主にイラン側の北側ルートを通っていました。
通った船の数は、調べる会社によって違います。対象の船の種類、数える時間の幅、船の位置を知らせる装置(AIS)を切った船の扱いが違うためです。どの会社の数字も、ふだんより大きく少なくなっています。
| 会社 | 対象と日付 | 隻数 | 比べる数 |
|---|---|---|---|
| Kpler | 商品輸送船・7月20日 | 4隻 | 前日7隻。追跡できた VLCC・LNG船は0隻 |
| LSEG | すべての船・7月19日(日曜) | 4隻 | 前日8隻 |
| Windward | 直近24時間・7月19日まで | 11隻 | 紛争前の目安 約33隻 |
| Clarksons | 大型タンカー・直近1週間の平均 | 1日2隻 | 前の週5隻、6月下旬〜7月上旬の平均8隻 |
どれも各社の集計です。
LNG船(液化天然ガスを運ぶ船)が最後に通ったのは7月11日で、ADNOC が運航する AL HAMRA が湾の外へ出た記録です。それ以降、出入りは確認されていません。Kpler によると、7月21日の時点で湾の中に LNG船21隻(空の船13・積んだ船5・岸に着いている船4)が残っています。
6月には、1か月で40隻の LNG船が通っていました(5月8隻・4月4隻・3月0隻)。回復しかけたところで、急にまた止まった形です。
3月から、止まる・戻るを繰り返している
今回の通航の減少は、3月から続く流れの中で起きています。封鎖は一度きりではなく、宣言・攻撃・協議・再開・再燃を行き来してきました。
米国とイスラエルによるイランへの攻撃をきっかけに、ホルムズ海峡の通航は3月から大きく減りました。その後、停戦の協議と海峡の再開、協議のつまずきと攻撃の再燃をくり返しています。
6月17日に米国とイランが署名した暫定合意(MOU)で、いったん航行は再開しました。しかし7月上旬からの戦闘の再燃で、合意は事実上効力を失ったとされています。
国際海事機関(IMO)の確認済みの事案の一覧では、3月1日から7月21日までの合計が61件です。ある日の数字だけでは全体が見えにくく、通航の増減は短い間に逆向きに変わりえます。
大事なのは、船が物理的に通れるかだけではありません。保険・船の借り入れ・船員の確保といった、商売の条件が少しずつ悪くなってきました。海峡が「通れる」状態でも、戦争保険が成り立ちにくく、船や船員を確保しにくければ、実際には「商売として通りにくい」状態になります。
7月19日以降の通航の再びの減少は、この商売の条件の悪化が、あらためて表に出た場面とみています。
迂回路の紅海にも攻撃の予告が出た
ホルムズ海峡を避けて使われていた紅海のルートにも、攻撃の予告が出ました。二つの海の制約を一緒に見る必要があります。
フーシ派は7月20日、サウジアラビアへの海上封鎖をすぐに始めると宣言しました。海運会社向けの通知では、サウジアラビアのどこかの港で荷物を積み降ろしする船を対象とし、届く範囲ならどこでも攻撃の対象になりうるとしています。
これを受けて、サウジ原油を積んだ2隻が紅海で引き返しました。後日ヤンブーで積む予定だった1隻は、紅海に入る前にオマーン沖で引き返しています。
- XIN LONG YANG:VLCC。COSCO Shipping が管理。原油 約200万バレル。紅海で引き返しました。
- RODOS:アフラマックス(中型のタンカー)。Dynacom が管理。インド向けの約70万バレル。紅海で引き返しました。
- NEW PRIME:VLCC。紅海に入る前に、オマーン沖で引き返しました。
ただし、これは宣言と、それを受けた海運側の動きの段階です。米海軍が中心の統合海上情報センター(JMIC)は7月21日の時点で、紅海で直前48時間に確認された船への攻撃はないとしていました。
紅海の出入口のバブ・エル・マンデブ海峡や、ヤンブー港が閉じたことも確認されていません。サウジ主導の連合の報道官は、フーシ派が言う「サウジによるイエメン封鎖」を否定しています。
実務での意味 ホルムズ海峡を避けて紅海・ヤンブー経由で運ぶ量が増えていたところに、その迂回路にも警告が出ました。宣言・船の配置の変更・保険料の上昇が、実際に供給が止まる前に、費用と納期を動かしています。
ホルムズ海峡への頼り方は、原油・ナフサ・LNGで違う
日本にとってのホルムズ海峡の重さは、品目によって大きく違います。海峡を通る割合が低くても、影響が小さいとは限りません。
| 品目 | 頼り方の目安 | 影響の出方 |
|---|---|---|
| 原油 | 中東への依存は、これまで約9割。その多くがホルムズ海峡を通ります。米国産や迂回ルートで、一部の置き換えが進んでいます。 | ほかの国からの供給と国の備蓄が支えになります。ただ、調達の費用が上がり、運ぶ時間が長くなる影響は残ります。 |
| ナフサ | UAE・クウェート・カタールの3か国で、輸入の約3分の2を占める作りです(これまで)。 | 工場ですぐ使えるナフサの在庫は、原油の備蓄とは別で薄いです。供給が詰まると、値段と工場の稼働に響きやすいです。 |
| LNG | ホルムズ海峡を通る分は、全体の約6%(カタール・UAEが中心)です。 | 通る割合は低いものの、世界のスポット市場の品薄を通じて、調達の費用が間接的に上がります。 |
LNG のように通る割合が低くても、世界の品薄がスポット価格を押し上げます。その分は、原油の値段に連動する長期契約を通じて、時間をおいて調達の費用に表れます。
ナフサのように通る割合が高い品目では、供給の詰まりが、石油化学の工場の稼働と値段の両方に響きやすくなります。
船を出す費用が、供給が止まる前に上がっている
船が通れるかどうかの手前で、海で運ぶ費用が先に動いています。戦争保険料・船員の手当・遠回りの3つが、実際に運べる量を左右しています。
紅海の戦争保険料は、ピークに近い水準
紅海を通る船の戦争保険料は、7月20日に船の値段の約0.75%へ上がりました。フーシ派の発表前の7月17日(金曜)は約0.3%でした。ロイターが保険業界の関係者から得た指標の値です。
7日間の航海では、少しの率の変化でも、追加の費用が数十万ドルになるとされています。紅海の同じ保険料は、2023年秋の攻撃が始まる前は約0.05%、2024年の最も高い時期には約1%でした。今の0.75%は、その最も高い時期に近い水準です。
ただし、これは名前を出していない業界関係者による紅海向けの指標の値です。市場で共通の決まった率でも、ホルムズ海峡だけの率でもありません。
船員を確保することも難しくなっている
海事メディアによると、湾岸の航路で運航を続けたい一部の船会社は、船員に特別手当を示しています。ホルムズ海峡の1往復に、月給の約6倍、最大で半年分の給料にあたる額です。船・保険・運賃だけでなく、乗る人の確保そのものが、運べる量を狭めつつあります。
遠回りは、距離だけでなく船の大きさの制約もある
ヤンブーからアジアへ向かう船がバブ・エル・マンデブ海峡を避けると、スエズ運河を北へ抜け、地中海から喜望峰を回ることになります。これまでより、運ぶ時間が数週間長くなるおそれがあります。
船の大きさによる制約もあります。満載の VLCC は、スエズ運河を通る前に原油の一部を降ろす必要があります。
海運業界団体 BIMCO の試算があります。サウジの紅海経由の原油・石油製品の輸出は、3月から6月に1日470万バレルまで増えました(前の年の同じ時期は160万バレル)。その9割超がバブ・エル・マンデブ海峡を通っていました。この道が使えなくなると、アジア向けの距離は少なくとも2倍になり、世界の輸送量に距離を掛けた値(トンマイル)を5〜10%押し上げうるとしています。
原油は備蓄で支えられるが、石油製品は足りない
原油の値段はまた上がりました。国際エネルギー機関(IEA)は、原油は備蓄やほかの国の供給が支えになる一方、石油製品は原油よりはっきり品薄だとみています。
ロイターの7月21日午後11時53分(日本時間)の市場の報道では、ブレント原油は1バレル91.34ドルで、前の日より2.4%高い値でした。WTI は85.03ドルで、2.2%高い値です。どちらも取引中の値で、終値や清算値ではありません。
週末の戦闘の激化で、ブレント原油は一時90ドルを超えました。その後、イランが話し合いの可能性に触れたことで、上げ幅を一部失っています。海で運ぶことへの不安と停戦への期待が、同じ日のうちに値段に表れた形です。
IEA は7月21日の声明で、次のように説明しています。
- 湾岸からの輸出は、6月下旬の高い水準より少ないものの、3月初めから6月半ばまでの水準は大きく上回っている
- 米国・ブラジル・ベネズエラ・カザフスタンからの輸出の増加が、湾岸の減少を一部補っている
- 3月11日に発表した4億バレルの緊急放出のうち、加盟国から約2億9,000万バレルが放出ずみで、政府が管理する緊急の在庫はなお10億バレルを超える
一方で IEA は、軽油・ガソリンなどの石油製品の市場は、原油の市場よりはっきり品薄だと評価しました。原油の供給が戻るほどには、製油所の稼働と製品の供給が増えていないためです。
LNG については、主に米国・カナダからの供給が、ホルムズ海峡で失われた分の約70%を補ったと推計しています。ただし、残りの不足がなくなったという意味ではありません。湾岸の輸出の遅れが続けば、冬に向けて貯蔵を増やすヨーロッパを含む輸入国に影響が出うる、という評価も並べています。
読み解くときの要点 「原油の支え」と「石油製品の品薄」は、別の問題です。原油の在庫やほかの産地があっても、製品ごと・地域ごとの品薄は同じ早さでは解けません。ナフサを含む石油製品を扱う実務では、原油の値段が落ち着いても、自分の品目の安心材料とは見なせません。
ナフサは原油より不足しやすく、樹脂原料に響く
パレットやフィルムの原料は、ナフサから作られます。原油の買い先を増やしても、ナフサの供給の見通しにくさは別に残ります。
プラスチックパレット・PPバンド・ストレッチフィルム・再生樹脂の材料などの物流資材は、ナフサから始まる石油化学の製品です。ナフサを分けてエチレンやプロピレンを作り、そこからポリエチレン(PE)・ポリプロピレン(PP)などの樹脂を作り、最後に製品の形にします。
ナフサは石油製品の一つで、IEA が「原油より品薄になりやすい」とした石油製品の仲間です。
日本のナフサは、UAE・クウェート・カタールの湾岸3か国への頼りが大きい作りです。ホルムズ海峡が通りにくくなると、供給の詰まりに直結しやすくなります。
国の備蓄のほとんどは原油の形です。石油化学の工場にそのまま入れられるナフサの形の在庫は、原油の備蓄ほど厚くありません。このため、原油の代わりの調達が進んでも、ナフサの供給の見通しにくさは別に残ります。
樹脂原料の値段は、ナフサやエチレンの相場につられて決まります。再生樹脂の材料も、新しい樹脂(バージン材)の値段との関係で動くので、上流の動きから切り離せません。
7月19日以降の通航の減少と、石油製品の品薄の評価は、樹脂原料の量と値段の両方で、見通しにくさを強める方向に働きます。ただし、今確かめられるのは上流(原油・石油製品・ナフサ)の値動きと供給の制約です。個別の値上げの大きさは、まだ言い切れる段階ではありません。
調達・購買のご担当の方へ
- 品目ごと(原油・ナフサ・LNG・石油製品)に、在庫の水準と代わりの調達先を見直す
- 上流の指標(ナフサ・エチレンの値段)の動きを、短い間隔で確かめる
- 見積りの有効期限が短くなる前提で、値上げの可能性を取引先と早めに共有する
これから見る5つの目印と、部門ごとに確かめること
日本は中東への依存が大きく、その分散が進まなかったことが今回表に出たと、専門家は指摘しています。次の5つが、状況が良くなるか悪くなるかの目印です。
エネルギー経済社会研究所の松尾豪代表取締役は、論考や出演でくり返し指摘してきました。中東への依存(原油ではこれまで約9割)の分散が十分に進まず、それが今回表に出たという指摘です。ほかの調達はまだ不安定で備蓄に頼る面が大きいこと、米国産に加えメキシコ産原油の輸入の検討など、買い先を増やす動きがあることも示しています。LNG では、スポット市場での奪い合いと、大手の電力・ガス会社の追加の調達の動きを、早くから注目してきました。
エネルギーアナリストの大場紀章氏(ポスト石油戦略研究所 代表)は、二つの点を指摘しています。イラン原油の買い手が中国・インドに集中している作りと、イランが輸出先を増やそうとする動きです。JETRO・JOGMEC などの機関も、同じように整理しています。代わりのルートと備蓄で当面の供給にはある程度の見通しが立つ一方、費用の上振れと、正常に戻る早さには不確かさが残る、という見方です。
見る5つの目印
- ホルムズ海峡の通航数。とくに VLCC と LNG船の出入りが、何日か続けて再開するか。
- 紅海・バブ・エル・マンデブ海峡の通航量と、フーシ派の宣言が、実際の攻撃や船の拿捕(だほ=船をつかまえること)に変わるか。
- 紅海とホルムズ海峡の戦争保険料の指標、船を借りる料金、船員の手当の動き。
- ブレント・WTI の原油の値段と、ナフサ・エチレンなど石油化学のスポットの指標の動き。
- 10日間の停戦案がどうなるか(合意の文書、双方の受け入れ、始まる時刻、対象の範囲が発表されるか)。
影響が広がる時間の目安
| 時期 | 時間 | 主に動くもの |
|---|---|---|
| すぐ | 1〜3日 | 原油・海運の指標、戦争保険料の指標、船の配置の判断 |
| 短期 | 1〜4週間 | スポットの LNG・石油製品の値段、船を借りる料金、届くまでの日数 |
| 中期 | 1〜3か月 | ナフサ・樹脂原料の調達の費用、燃料費調整制度を通じた電気・ガス料金 |
| 長期 | 3〜12か月 | 原油の値段に連動する LNG の長期契約への反映、買い先を増やす動きの進み具合 |
部門ごとに確かめること(目安)
| 部門 | 確かめること |
|---|---|
| 調達・購買 | 品目ごと(原油・ナフサ・LNG・石油製品)に、在庫の水準と代わりの調達先を見直す。上流の指標の動きを短い間隔で確かめる。 |
| 物流・輸送 | 湾岸での積み込みと紅海経由の両方で、日程を船会社・フォワーダーに短い間隔で確かめる。納期は余裕を持って見積もる。 |
| 法務・契約 | 戦争危険の条項・不可抗力の条項・運賃や保険の割増の条項が、どんなときに・どの海域(ホルムズ海峡・紅海)で効くかを確かめる。 |
| 財務・経営 | 当事者の発表・第三者の推計・確認済みの事実を分けて報告する。リスクを大きすぎにも小さすぎにも見積もらない。 |
| 製造・生産 | ナフサ・樹脂原料の調達の見通しにくさを生産計画に入れ、代わりの材料や在庫の方針を点検する。 |
| 営業・購買の調整 | 見積りの有効期限が短くなる前提で、値上げの可能性を取引先と早めに共有する。 |
情報の扱いについて 戦争中の当事者の発表・船の位置・荷物の量・被害の情報は不完全で、あとで直されることがあります。船の追跡のデータは、期間・船の種類・AIS を切った船の見積もり方で数字が変わります。一つの指標だけで全体を判断しないでください。
よくある質問
2026年7月22日時点でホルムズ海峡は完全に封鎖されているのですか。
完全な物理的閉鎖は確認されていません。Kplerの集計では2026年7月20日の商品輸送船通航は4隻で、可視化された超大型原油タンカー(VLCC)とLNG船はゼロでした。少数の通航は続いており、大口エネルギー輸送の著しい縮小と、全船種の物理的停止は別の状態として区別する必要があります。
フーシ派の対サウジアラビア海上封鎖宣言で、紅海の迂回ルートはどうなりましたか。
2026年7月20日の宣言後、サウジ原油を積んだタンカー2隻が紅海で反転し、1隻が接近を中止しました。ただしバブ・エル・マンデブ海峡の物理的閉鎖やヤンブー港の閉鎖は確認されていません。確認できたのは宣言と、それを受けた配船変更・戦争保険料指標の上昇です。
ナフサや樹脂原料への影響はどう見ればよいですか。
ナフサは石油製品の一種であり、国際エネルギー機関(IEA)は2026年7月21日の評価で、原油は代替供給と備蓄が緩衝材となる一方、軽油・ガソリンなどの石油製品は原油より需給が引き締まっているとしました。ナフサを起点とするエチレン・ポリエチレン・ポリプロピレン系の樹脂原料は、供給・価格の両面で不確実性が残る局面にあります。
原油価格と海上保険料は現在どの水準ですか。
ブレント原油は2026年7月21日に1バレル91.34ドル、WTIは85.03ドルの場中値をつけ、一時90ドルを超えました。紅海航海の戦争危険保険料の指標値は、7月17日の船価約0.3%から7月20日に約0.75%へ上昇しています。いずれも局面ごとに変動し、確定値ではない点に留意が必要です。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか。
プラスチックパレット株式会社は、プラスチックパレット・再生樹脂材料・PPバンド・ストレッチフィルムなどの物流資材を扱う商社です。これらの原料はナフサを起点とする石油化学製品であり、ホルムズ海峡情勢は調達コストと供給の見通しに直結します。取引先の実務判断に資する情報を、一次ソースに基づき事実本位で整理する目的で編集部が執筆しています。
用語集12語
- ※本稿は2026年7月22日午前1時(日本時間)までに公開確認できた情報を、情報源ごとの確認水準を区別して整理したものです。情勢は急速に変化しており、記載内容はその後変動している可能性があります。
- ※戦時下の当事者発表・船舶位置情報・貨物量・被害情報は不完全で、後日訂正される可能性があります。船舶追跡データは対象期間・船種・AIS停止船の推定方法により数値が異なります。
- ※本稿は一般的な情報提供のみを目的とし、投資判断・取引判断・安全保障判断・運航判断を構成するものではありません。
- ※海外報道・英語資料の要約・翻訳を含みます。原資料との差異が生じ得るため、個別の判断には最新の一次情報をご確認ください。
- ※引用は各出典の趣旨を損なわない範囲での要約にとどめ、詳細は各一次資料をご参照ください。
出典・エビデンス一覧17件
一次官庁・国際機関
- UKMTO(英国海運貿易オペレーション)Warning 094-26 および Update 001(2026年7月20日)
- IMO(国際海事機関)中東海域 確認済み事案一覧(2026年7月21日時点、累計61件)
- IEA(国際エネルギー機関)事務局長 石油市場声明(2026年7月21日)
- 米中央軍(CENTCOM)対イラン攻撃完了の発表(2026年7月19日・20日)
- 欧州航空安全機関(EASA)CZIB-2026-07(有効期限 2026年7月29日)
- ヨルダン国営Petra通信 無人機・ミサイル迎撃の発表(2026年7月21日)
主要通信社・データ会社
- Reuters「ホルムズ海峡の商品輸送船通航」「サウジ原油積載タンカーの反転」「紅海の戦争危険保険料」(2026年7月21日)
- Kpler「7月11日以降のLNG船通航」分析(2026年7月21日)
- Bloomberg/CNBC 原油市場・タンカー被弾報道(2026年7月20日・21日)
- LSEG・Windward・Clarksons・S&P Global 通航・在庫集計
- BIMCO(海運業界団体)紅海経由輸出量の試算
- gCaptain/The Maritime Executive/SAFETY4SEA/Splash247 海事専門メディア
日本語媒体・専門家の分析
- 松尾豪(エネルギー経済社会研究所 代表取締役)日経エネルギーNext/東洋経済オンライン/日本経済新聞掲載コメント
- 大場紀章(ポスト石油戦略研究所 代表)NewsPicks 解説
- JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)原油・天然ガス関連情報
- JETRO(日本貿易振興機構)中東情勢・エネルギー動向レポート
- 関連する当社の過去記事:ナフサ供給に関する総論記事、イラン情勢とナフサ供給の構造分析
文:プラスチックパレット株式会社 編集部
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