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FLASH / 2026.07.22

【2026年7月22日速報】ホルムズ通航が商品輸送船4隻に縮小しLNG船通航ゼロ、ブレント90ドル超、ナフサ・石油製品の調達不確実性が再拡大

2026年7月19日から22日にかけて、ホルムズ海峡でタンカーが相次いで被弾し、確認可能な通航はさらに縮小した。フーシ派の対サウジアラビア海上封鎖宣言により紅海の迂回ルートにも制約が及び、海上輸送は二正面の不確実性に直面している。本稿は、確認済み事実・第三者推計・当事者発表を区別して整理する。

監視カテゴリ MONITORING 公開日 最終更新 次回更新目安 状況変化時に随時

TL;DR / 3行要約

  • Kplerの集計で、2026年7月20日にホルムズ海峡を通航した商品輸送船は4隻(前日7隻)にとどまり、可視化された超大型原油タンカー(VLCC)とLNG船はゼロ。LNG船の最終確認通航は7月11日である。
  • 2026年7月19日から21日にかけてタンカー3隻(KAVOMALEAS・ACHELOOS・KAIFAN)が被弾。フーシ派の対サウジ海上封鎖宣言を受け、紅海でサウジ原油積みタンカー2隻が反転、1隻が接近を中止した。
  • ブレント原油は2026年7月21日に1バレル91.34ドル、WTIは85.03ドルの場中値をつけ一時90ドルを超えた。IEAは原油を代替供給・備蓄が下支えする一方、石油製品はより需給が引き締まっていると評価。ナフサ・樹脂原料の調達不確実性が再び拡大している。

要点(結論)

2026年7月20日、ホルムズ海峡の商品輸送船通航は4隻に縮小し、VLCC・LNG船の通航はゼロ。7月19〜21日にタンカー3隻が被弾し、フーシ派の対サウジ封鎖宣言で紅海でも積載タンカー2隻が反転した。ブレント原油は91.34ドル、紅海の戦争保険料指標は約0.75%へ上昇。全面閉鎖も停戦合意も確認されず、ナフサ・石油製品の調達不確実性が再拡大している。

ホルムズ通航
(商品輸送船・7/20)
4
隻(前日7隻・Kpler)
ブレント原油
(7/21場中値)
91.34
ドル/バレル
紅海 戦争保険料
(7/20・指標値)
0.75
%(7/17比+0.45pt)
LNG船 最終確認通航
7/11
以降 確認ゼロ(Kpler)

直近約48時間の主要事象(時系列)

本稿は、2026年7月22日午前1時(日本時間)までに公表・確認された情報を対象とする。時刻はいずれも公表資料・報道に基づくもので、正確な発生時刻とは異なる場合がある。

ホルムズ海峡・紅海をめぐる主要事象(2026年7月19日〜21日)
日本時間確認された事象確認水準
7月20日 午前4時24分 プロダクトタンカーKAVOMALEASが被弾し機関室火災。英国海運貿易オペレーション(UKMTO)が7月19日19時24分UTCの発生と報告 確認済み事実
7月20日 未明 VLCCのACHELOOSもほぼ同時刻に被弾。海事警備会社は2隻とも「南側回廊」を航行中だったと説明 確認済み事実
7月20日 午前11時ごろ 米中央軍が、イランに対する9夜連続の攻撃を完了したと発表 当事者発表
7月20日 フーシ派がサウジアラビアに対する海上封鎖を即時発効すると宣言(海運会社向け通知の発効時刻は7月20日21時1分) 当事者発表
7月21日 午前5時10分 UKMTOが、オマーンのリマ北東8海里でタンカーが不明な飛翔体に被弾したとの報告を受領。IMOが被弾船をKAIFAN(クウェート籍)と特定 確認済み事実
7月21日 中 サウジ原油を積んだXIN LONG YANGとRODOSが紅海で反転、NEW PRIMEがオマーン沖で接近を中止。紅海の戦争保険料指標が上昇 第三者推計・追跡
7月21日 中 イラン高官が、仲介者から10日間の停戦案を受領したとロイターに説明。合意文書・双方の受諾は未公表 当事者発表
7月21日 午後11時53分 ブレント原油は1バレル91.34ドル、WTIは85.03ドルの場中値 市場データ
凡例:「確認済み事実」は政府・国際機関・海事当局の公表資料、または複数の独立報道・船舶追跡データで裏付けられた事項。「第三者推計・追跡」は調査会社・船舶追跡による把握。「当事者発表」は交戦当事者や武装組織の主張で、独立確認のない攻撃主体・戦果は確定事実として扱わない。

タンカー連続被弾と通航縮小の詳細

2026年7月19日から21日にかけて、ホルムズ海峡およびオマーン沖でタンカー3隻の被弾が確認された。いずれも乗組員の安否は確認されているが、攻撃主体を特定する第三者情報は情報基準時点で存在しない。

即座に押さえる3ポイント

  1. 被弾したのはKAVOMALEAS(マルタ船籍・パナマックス型プロダクトタンカー、2025年建造、飛翔体2発・機関室火災・退船)、ACHELOOS(リベリア船籍VLCC、飛翔体1発・操舵機区画損傷)、KAIFAN(クウェート石油タンカー会社運航、IMO番号9656046、機関室火災)の3隻。
  2. Kplerの集計で、7月20日のホルムズ海峡通航は商品輸送船4隻(前日7隻)。可視化されたVLCCとLNG船はゼロで、航路は主としてイラン側の北側ルートだった。
  3. 攻撃主体はいずれも第三者確認がない。イラン革命防衛隊は「南側の危険な航路」を通ろうとした船舶を停止させたと発表したが、被弾船との同一性は確定していない。

被弾3隻の確認範囲

ギリシャのDynacom Tankersによると、KAVOMALEASは飛翔体2発を受けて機関室で火災が発生し、船長が消火設備を作動させたのち退船を決定した。乗組員はタグボートに救助され、オマーン当局が全員を確認して陸上へ移送した。UKMTOは環境影響の報告はないとしている。ACHELOOSは飛翔体1発を操舵機区画に受け、損傷評価のため投錨地へ移動した。汚染は報告されていない。

3隻目のKAIFANは、UKMTO警報094-26として7月20日20時10分UTC(日本時間7月21日午前5時10分)に報告され、オマーンのリマ北東8海里で不明な飛翔体に被弾したと通報された。IMOは船名をKAIFAN、IMO番号を9656046として記録し、複数の海事専門メディアはクウェート石油タンカー会社(KOTC)運航の石油製品タンカーで、乗員が機関室火災を通報したと伝えている。UKMTO更新報および海事当局の説明を引用した複数報道は、情報基準時点で負傷者の報告はないとしている。KAVOMALEAS・ACHELOOSの事案とは警報番号・位置・報告時刻が異なる別事案である。

通航隻数は集計方法で異なる

通航隻数は調査会社ごとに対象船種・観測窓・AIS停止船の扱いが異なるため、単純比較はできない。共通して確認できるのは、通常時より通航が大幅に少ないという点である。

通航隻数の各社集計(2026年7月19日〜20日)
集計主体対象・期間隻数比較基準
Kpler商品輸送船/7月20日4隻前日7隻。可視のVLCC・LNG船ゼロ
LSEG全船種/7月19日(日曜)4隻前日8隻
Windward直近24時間/7月19日まで11隻紛争前基準 約33隻
Clarksons大型タンカー/直近1週間平均日量2隻前週5隻、6月下旬〜7月上旬 平均8隻

LNG船については、Kplerが最後に確認した通航を、ADNOC運航のAL HAMRAが湾外へ出た7月11日としている。それ以降、入峡・出峡は確認されていない。同社の把握では、7月21日時点で湾内にLNG船21隻(空船13隻・積載5隻・着桟中4隻)が残留している。6月は1カ月で40隻が通航しており(5月8隻、4月4隻、3月ゼロ)、現在の停止が6月の回復局面からの急反転であることが読み取れる。

3月以降の連鎖と累積効果(構造分析)

今回の通航縮小は、2026年3月以降の一連の経緯の延長線上にある。米国・イスラエルによるイラン攻撃を契機に、ホルムズ海峡の通航は3月から急減し、その後の停戦協議・海峡再開と、協議難航・攻撃再燃を繰り返してきた。6月17日に米国とイランが署名した暫定合意(MOU)でいったん航行が再開されたが、7月上旬以降の戦闘再燃により、事実上その効力を失ったとされる。

この経緯が示すのは、封鎖が「一度きりの断絶」ではなく、宣言・攻撃・協議・再開・再燃という複数の局面を往復してきたという点である。国際海事機関(IMO)の確認済み事案一覧は、7月21日時点で3月1日以降の累計を61件としている。断面の数値だけでは全体像を捉えにくく、通航の増減が短期間で反転しうる構造が続いている。

累積効果として重要なのは、物理的な通航可否だけでなく、保険・傭船・船員確保といった商業条件が段階的に悪化してきた点である。海峡が物理的に「通れる」状態でも、戦争危険保険が成立しにくく、傭船契約や船員確保が難しくなれば、実勢としては「商業的に通りにくい」状態が生まれる。7月19日以降の再度の通航縮小は、この商業条件の悪化が改めて表面化した局面と整理できる。

「二正面制約」という論点(独自の切り口)

今回の局面の特徴は、ホルムズ海峡の制約に加えて、その迂回路であった紅海側にも新たな不確実性が重なった点にある。他媒体では海峡ごとに個別に報じられがちだが、実務上は両者を一体の「二正面制約」として捉える必要がある。

フーシ派は7月20日、サウジアラビアに対する海上封鎖を即時発効すると宣言した。海運会社向けの通知では、サウジアラビアのいずれかの港で貨物を積み降ろしする船を対象とし、到達可能な範囲では場所を問わず攻撃対象になり得るとした。これを受けて、サウジ原油を積んだXIN LONG YANG(VLCC、COSCO Shipping管理、原油約200万バレル)とRODOS(アフラマックス、Dynacom管理、インド向け約70万バレル)が紅海で反転し、後日ヤンブーで積み込む予定だったNEW PRIME(VLCC)は紅海に入る前にオマーン沖で引き返した。

ただし、これは宣言と、それに対する商業側の反応の段階である。米海軍主導の統合海上情報センター(JMIC)は7月21日時点で、紅海における直前48時間の確認済み船舶攻撃はないとしていた。バブ・エル・マンデブ海峡の物理的閉鎖も、ヤンブー港の閉鎖も確認されていない。サウジ主導連合の報道官は、フーシ派が主張する「サウジによるイエメン封鎖」を否定している。

論点の核心:ホルムズ海峡の制約を紅海・ヤンブー経由で迂回してきた輸送量が増えていた矢先に、その迂回路にも警告が及んだ。宣言・配船変更・保険料上昇が、物理的な供給途絶に先行して費用と納期を動かしている——これが「二正面制約」の実務的な意味である。

品目別・国別の依存度マップ

日本にとってホルムズ海峡がどの程度重要かは、品目によって大きく異なる。原油とLNGでは中東依存度・ホルムズ経由率が異なり、影響の現れ方も同一ではない。

品目別に見たホルムズ海峡への依存構造
品目中東・ホルムズ依存の目安影響の現れ方
原油 中東依存は従来約9割で、その多くがホルムズ海峡経由。米国産・迂回ルート活用で調達の一部代替が進む 代替供給と国家備蓄が緩衝材となるが、調達コストの上振れと物流リードタイムの長期化が残る
ナフサ UAE・クウェート・カタールの3カ国で輸入の約3分の2を占める構造(従来) 石化プラントに直接投入する在庫は原油備蓄と別で薄く、供給の目詰まりが価格・稼働に波及しやすい
LNG ホルムズ経由は全体の約6%(カタール・UAE中心)にとどまる 経由率は低いが、スポット市場全体の需給の引き締まりを通じて調達コストが間接的に上昇する

この違いは、「ホルムズ経由率が低い=影響が小さい」とは限らないことを示す。LNGのように直接の経由率が低くても、世界的な需給の引き締まりがスポット価格を押し上げ、油価連動型の長期契約を通じて時間差で調達コストへ反映される経路がある。ナフサのように経由率が高い品目では、供給の目詰まりが石油化学の稼働率と価格の双方に影響しやすい。

保険料・船員手当・迂回工程(現場レベル)

物理的な通航可否の手前で、海上輸送の費用構造が先に動いている。とくに戦争危険保険料と船員手当、迂回工程の3点が、実勢の輸送能力を左右している。

紅海の戦争危険保険料

ロイターが保険業界筋から得た指標値では、紅海航海の戦争危険保険料は、フーシ派発表前の7月17日(金曜)の船価約0.3%から、7月20日に約0.75%へ上昇した。7日間の航海では小幅な料率変化でも追加費用が数十万ドルに達するとされる。参考として、紅海の同保険料は2023年秋の攻撃開始前は約0.05%、2024年の危機ピーク時には約1%まで上昇した経緯がある。現在の0.75%はピークに迫る水準である。ただしこれは匿名の業界筋による紅海向けの指標値であり、市場共通の統一料率でも、ホルムズ海峡単独の料率でもない。

船員確保という新たな制約

海事メディアによると、湾岸航路の運航継続を図る一部船社は、ホルムズ往復1航海に対し月給の約6倍、最大で半年分の賃金に相当する特別手当を船員に提示している。船体・保険・運賃だけでなく、乗組員の確保自体が輸送能力の制約要因になりつつある。

迂回は距離だけでなく船型制約を伴う

ヤンブーからアジアへ向かう船がバブ・エル・マンデブを避ける場合、スエズ運河を北上したのち地中海から喜望峰を回る経路となり、従来経路より輸送期間が数週間長くなる可能性がある。船型による制約もあり、満載のVLCCはスエズ運河の通峡前に原油の一部を降ろす必要がある。海運業界団体BIMCOの試算では、サウジの紅海経由の原油・石油製品輸出は3月から6月に日量470万バレルへ増加し(前年同期は160万バレル)、その9割超がバブ・エル・マンデブを通過していた。この経路が使えなくなればアジア向けの航行距離は少なくとも倍増し、世界の輸送トンマイルを5〜10%押し上げ得るという。

原油・石油製品・LNGの市場動向

原油価格は再び上昇した。ロイターの2026年7月21日午後11時53分(日本時間)時点の市場報道では、ブレント原油は1バレル91.34ドルで前日比2.4%上昇、WTIは85.03ドルで2.2%上昇した。いずれも場中のスナップショットで、終値・清算値ではない。週末の戦闘激化を受けて一時90ドルを超えたのち、イランが対話の可能性に言及したことを受けて上げ幅を一部消す動きも見られた。海上輸送への懸念と停戦協議への期待が、同じ日のうちに価格へ反映された形である。

国際エネルギー機関(IEA)は7月21日の声明で、湾岸からの輸出は6月下旬の高水準を下回る一方、3月初旬から6月半ばまでの水準を大きく上回っているとした。米国・ブラジル・ベネズエラ・カザフスタンからの輸出増が湾岸の減少を部分的に補い、3月11日に発表した4億バレルの緊急放出のうち加盟国から約2億9,000万バレルが放出済みで、政府管理の緊急在庫はなお10億バレル超あるとした。

一方でIEAは、軽油・ガソリンなどの石油製品市場を原油市場より明確に需給が引き締まっていると評価した。原油供給の回復ほど製油所稼働と製品供給が増えていないためである。LNGについては、主として米国・カナダからの代替供給が、ホルムズ経由で失われた供給の約70%を相殺したと推計したが、これは残る不足が解消したという意味ではなく、湾岸輸出の遅れが続けば来冬に向けて貯蔵を積み増す欧州を含む輸入者に影響が及び得るとの評価も併記している。

読み解きの要点:「原油の緩衝材」と「製品の需給引き締まり」は別問題である。原油在庫や代替産地の存在だけでは、製品別・地域別の供給制約を同じ速度では解消しない。ナフサを含む石油製品の調達を扱う実務では、原油価格の落ち着きをそのまま自品目の安心材料とは見なせない。

ナフサ・樹脂原料への波及

プラスチックパレット・PPバンド・ストレッチフィルム・再生樹脂材料といった物流資材は、ナフサを起点とする石油化学製品である。ナフサはエチレン・プロピレンへ分解され、ポリエチレン(PE)・ポリプロピレン(PP)などの樹脂となり、最終的に成形品となる。この起点であるナフサは石油製品の一種であり、IEAが指摘する「原油より需給が引き締まりやすい石油製品」の系列に位置する。

日本のナフサは、UAE・クウェート・カタールの湾岸3カ国への依存度が高い構造にあり、ホルムズ海峡の通航制約は供給の目詰まりに直結しやすい。国家備蓄の大部分は原油形態であり、石化プラントへ直接投入できるナフサ形態の在庫は原油備蓄ほど厚くない。このため、原油の代替調達が進んでも、ナフサ供給の不確実性は別途残る。

樹脂原料の価格は、ナフサ相場・エチレン相場に連動して形成される。再生樹脂材料も、新材(バージン材)価格との相対関係のなかで動くため、上流の変動から完全には切り離されない。7月19日以降の通航縮小と石油製品の需給引き締まり評価は、樹脂原料の供給・価格の両面で不確実性を高める方向に働く。現時点で確認できるのは上流(原油・石油製品・ナフサ)の値動きと供給制約であり、個別の追加価格改定の規模を断定できる段階ではない。実務上は、上流指標の推移を継続的に確認し、調達計画に織り込むことが現実的な対応となる。

日本産業への含意とモニタリング指標

日本のエネルギー調達は、中東依存の高さという構造的な特徴を抱えてきた。エネルギー経済社会研究所の松尾豪代表取締役は、中東依存(原油では従来約9割)の分散が十分に進まなかったことが今回の局面で表面化したと、一連の論考・出演で指摘してきた。同時に、代替調達はなお不安定で備蓄に頼る面が大きく、米国産に加えメキシコ産原油の輸入検討など調達先の多様化が模索されている点も、繰り返し示している。LNGについては、スポット市場での争奪と、大手電力・ガス事業者による追加調達の動きを早くから注視してきた。

ほかの専門家の見方も、依存構造への警鐘という点で共通する。エネルギーアナリストの大場紀章氏(ポスト石油戦略研究所代表)は、イラン原油の買い手が中国・インドに集中している構造と、イランが輸出相手国を増やそうとする動きを指摘している。JETRO・JOGMECなどの機関も、代替ルートと備蓄で当面の供給に一定の目処が立つ一方、コスト上振れと正常化ペースの不確実性が残るとの整理を示している。

波及タイムライン(目安)

影響の波及時間軸(一般的な目安)
局面時間軸主に動く要素
即時1〜3日原油・海運指標・戦争保険料の指標値、配船判断
短期1〜4週間スポットLNG・石油製品価格、傭船料、リードタイム
中期1〜3カ月ナフサ・樹脂原料の調達コスト、燃料費調整制度を通じた電気・ガス料金
長期3〜12カ月油価連動型LNG長期契約への反映、調達先多様化の進捗

モニタリングすべき5指標

状況変化を判断する観測点

  1. ホルムズ海峡の通航隻数(とくにVLCC・LNG船の入出峡が複数日連続で再開するか)。
  2. 紅海・バブ・エル・マンデブの通航量と、フーシ派の宣言が実際の攻撃・拿捕へ移るか。
  3. 紅海・ホルムズ双方の戦争危険保険料の指標値と、傭船料・船員手当の推移。
  4. ブレント・WTI原油価格と、ナフサ・エチレンなど石油化学系スポット指標の推移。
  5. 10日間停戦案の帰趨(合意文書・双方の受諾・発効時刻・対象範囲の公表の有無)。

業界別の対応の視点(目安)

実務部門別の確認事項
部門確認の視点
調達・購買品目別(原油・ナフサ・LNG・石油製品)に在庫水準と代替調達先を再評価。上流指標の推移を短周期で確認
物流・輸送湾岸積み・紅海経由の双方でスケジュールを船社・フォワーダーに短周期で確認。納期は保守的に見積もる
法務・契約戦争危険条項・不可抗力条項・運賃/保険割増条項の発動要件と対象海域(ホルムズ・紅海)を確認
財務・経営当事者発表・第三者推計・確認済み事実を区別して経営報告。過大・過小いずれのリスク評価も避ける
製造・生産ナフサ・樹脂原料の調達不確実性を生産計画に織り込み、代替材・在庫方針を点検
営業・購買調整見積り有効期限が短期化する前提で、価格改定の可能性を取引先と早期に共有

情報の取り扱いに関する注意

  • 戦時下の当事者発表・船舶位置情報・貨物量・被害情報は不完全で、後日訂正される可能性がある。
  • 船舶追跡データは、対象期間・船種・AIS停止船の推定方法により数値が異なる。単一指標で全体を判断しない。

用語集

ホルムズ海峡
ペルシャ湾とアラビア海を結ぶ海上の要衝。世界の海上原油輸送の約2割、LNG貿易量の約4分の1が通過するとされる。
バブ・エル・マンデブ海峡
紅海とアデン湾を結ぶ海峡。ホルムズ迂回の一部が経由する紅海・ヤンブー経由ルート上に位置する。
VLCC
超大型原油タンカー。最大積載能力は約200万バレル。ただし通航隻数に最大能力を掛けても実輸送量にはならない。
ナフサ
原油を蒸留して得られる石油製品。エチレン・プロピレンへ分解され、ポリエチレン・ポリプロピレン等の樹脂原料となる。
UKMTO
英国海運貿易オペレーション。海域の事案通報と航行安全情報を扱う。攻撃主体の特定は行わない。
IMO
国際海事機関。海事の国際基準を所管し、中東海域の確認済み事案一覧を公表している。
IEA
国際エネルギー機関。石油・ガス市場の需給評価や緊急備蓄放出の調整を担う。
AIS
船舶自動識別装置。これを切って航行する船(暗船)は公開追跡データで捕捉されにくい。
STS(船舶間積み替え)
湾外へ出たタンカーがオマーン沖で別の大型タンカーへ貨物を移す中継工程。海峡通航リスクの分散手段。
戦争危険保険料
紛争海域を航行する船舶にかかる保険料。船価に対する率で示され、航海・船籍・条件ごとに提示が異なる。
暫定合意(MOU)
2026年6月17日に米国とイランが署名した、ホルムズ海峡再開を含む合意。7月上旬以降の戦闘再燃で、事実上その効力を失ったとされる。
燃料費調整制度
原油・LNG・石炭の調達費用の変動を、一定期間の平均を基に電気・ガス料金へ反映する仕組み。

出典・エビデンス一覧

一次官庁・国際機関

  • UKMTO(英国海運貿易オペレーション)Warning 094-26 および Update 001(2026年7月20日)
  • IMO(国際海事機関)中東海域 確認済み事案一覧(2026年7月21日時点、累計61件)
  • IEA(国際エネルギー機関)事務局長 石油市場声明(2026年7月21日)
  • 米中央軍(CENTCOM)対イラン攻撃完了の発表(2026年7月19日・20日)
  • 欧州航空安全機関(EASA)CZIB-2026-07(有効期限 2026年7月29日)
  • ヨルダン国営Petra通信 無人機・ミサイル迎撃の発表(2026年7月21日)

主要通信社・データ会社

  • Reuters「ホルムズ海峡の商品輸送船通航」「サウジ原油積載タンカーの反転」「紅海の戦争危険保険料」(2026年7月21日)
  • Kpler「7月11日以降のLNG船通航」分析(2026年7月21日)
  • Bloomberg/CNBC 原油市場・タンカー被弾報道(2026年7月20日・21日)
  • LSEG・Windward・Clarksons・S&P Global 通航・在庫集計
  • BIMCO(海運業界団体)紅海経由輸出量の試算
  • gCaptain/The Maritime Executive/SAFETY4SEA/Splash247 海事専門メディア

日本語媒体・専門家の分析

  • 松尾豪(エネルギー経済社会研究所 代表取締役)日経エネルギーNext/東洋経済オンライン/日本経済新聞掲載コメント
  • 大場紀章(ポスト石油戦略研究所 代表)NewsPicks 解説
  • JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)原油・天然ガス関連情報
  • JETRO(日本貿易振興機構)中東情勢・エネルギー動向レポート
  • 関連する当社の過去記事:ナフサ供給に関する総論記事イラン情勢とナフサ供給の構造分析

よくある質問(FAQ)

2026年7月22日時点でホルムズ海峡は完全に封鎖されているのですか。

完全な物理的閉鎖は確認されていません。Kplerの集計では2026年7月20日の商品輸送船通航は4隻で、可視化された超大型原油タンカー(VLCC)とLNG船はゼロでした。少数の通航は続いており、大口エネルギー輸送の著しい縮小と、全船種の物理的停止は別の状態として区別する必要があります。

フーシ派の対サウジアラビア海上封鎖宣言で、紅海の迂回ルートはどうなりましたか。

2026年7月20日の宣言後、サウジ原油を積んだタンカー2隻が紅海で反転し、1隻が接近を中止しました。ただしバブ・エル・マンデブ海峡の物理的閉鎖やヤンブー港の閉鎖は確認されていません。確認できたのは宣言と、それを受けた配船変更・戦争保険料指標の上昇です。

ナフサや樹脂原料への影響はどう見ればよいですか。

ナフサは石油製品の一種であり、国際エネルギー機関(IEA)は2026年7月21日の評価で、原油は代替供給と備蓄が緩衝材となる一方、軽油・ガソリンなどの石油製品は原油より需給が引き締まっているとしました。ナフサを起点とするエチレン・ポリエチレン・ポリプロピレン系の樹脂原料は、供給・価格の両面で不確実性が残る局面にあります。

原油価格と海上保険料は現在どの水準ですか。

ブレント原油は2026年7月21日に1バレル91.34ドル、WTIは85.03ドルの場中値をつけ、一時90ドルを超えました。紅海航海の戦争危険保険料の指標値は、7月17日の船価約0.3%から7月20日に約0.75%へ上昇しています。いずれも局面ごとに変動し、確定値ではない点に留意が必要です。

なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか。

プラスチックパレット株式会社は、プラスチックパレット・再生樹脂材料・PPバンド・ストレッチフィルムなどの物流資材を扱う商社です。これらの原料はナフサを起点とする石油化学製品であり、ホルムズ海峡情勢は調達コストと供給の見通しに直結します。取引先の実務判断に資する情報を、一次ソースに基づき事実本位で整理する目的で編集部が執筆しています。

免責事項

  1. 本稿は2026年7月22日午前1時(日本時間)までに公開確認できた情報を、情報源ごとの確認水準を区別して整理したものです。情勢は急速に変化しており、記載内容はその後変動している可能性があります。
  2. 戦時下の当事者発表・船舶位置情報・貨物量・被害情報は不完全で、後日訂正される可能性があります。船舶追跡データは対象期間・船種・AIS停止船の推定方法により数値が異なります。
  3. 本稿は一般的な情報提供のみを目的とし、投資判断・取引判断・安全保障判断・運航判断を構成するものではありません。
  4. 海外報道・英語資料の要約・翻訳を含みます。原資料との差異が生じ得るため、個別の判断には最新の一次情報をご確認ください。
  5. 引用は各出典の趣旨を損なわない範囲での要約にとどめ、詳細は各一次資料をご参照ください。
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