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PACKAGING COST REPORT

パッケージ白黒化のコスト削減効果を検証、グラビア印刷1色と4色で1,000枚あたり12万9,250円の差、カルビーが2か月で表面カラーに戻した判断の中身

2026年5月以降、印刷インキの調達難を理由にパッケージの色数を減らす動きが相次いだ。実際にどれだけコストが下がるのか、包装資材メーカーが公表している価格表から具体的な金額を確認する。あわせて、先行したカルビーが約2か月で表面のカラー印刷を再開した経緯と、カゴメが選んだ別の対応、そして両者の判断が示す線引きを整理する。

監視カテゴリ PACKAGING / COST 公開 最終更新 次回更新目安 2026年8月上旬

TL;DR

  • 包装資材メーカーの株式会社モロフジが公表する参考価格では、A4サイズの楕円抜き袋1,000枚が1色51,480円、4色180,730円。差額は129,250円で、1色はフルカラーの28.5%にあたる(いずれも印刷版代込み)。
  • カルビーは2026年5月25日出荷分から主要14品を2色印刷に切り替えたが、7月9日に8品の表面フルカラー印刷再開を発表した。裏面は白黒を維持し、節約を継続する形をとっている。
  • デザイン会社プラグの3,000人調査では白黒パッケージの購入意向低下が報じられた。削減額と識別性の低下を並べて評価する必要があり、面ごとに使い分ける設計が現実的な着地点になりつつある。

ANSWER

グラビア印刷のA4袋1,000枚で比較すると、1色51,480円に対し4色180,730円、差額は129,250円である(版代込み・モロフジ公表値)。1色はフルカラーの28.5%にとどまる。一方でカルビーは2026年7月9日、識別性を理由に8品の表面カラー印刷再開を発表した。削減効果は明確だが、適用する面の選択が判断の中心になる。

1色印刷(1,000枚)
51,480
円・版代込み
A4楕円抜き袋・グラビア印刷
4色印刷(1,000枚)
180,730
円・版代込み
同一条件での比較
削減率
71.5
%
1色はフルカラーの28.5%
カルビー再カラー化
8
品/2026年7月9日発表
白黒展開は14品だった

CHAPTER 01なぜ色数を減らすとコストが下がるのか

軟包装の印刷で主に使われるグラビア印刷は、色ごとに版を作り、色数の分だけ印刷ユニットを通す方式である。フルカラーはシアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの4色を重ねて表現するため、単純化すると1色印刷の4倍の版と工程が必要になる。色数を減らすことは、この構造を直接縮めることを意味する。ただし工程数がそのまま金額の倍率になるわけではなく、実際の価格差は第2章で公表値をもとに確認する。

削減が生じる4つの内訳

  • 版代。グラビア印刷では色ごとに円筒状の版(シリンダー)を製作する。版代は数量にかかわらず発生する初期費用のため、ロットが小さいほど1枚あたりの負担が重くなる。色数削減の効果が最も明確に表れる項目である。
  • インキ使用量。使用する色が減れば、その分のインキが不要になる。2026年の局面では、インキそのものの単価が上昇しているため、使用量の削減がそのまま調達額の削減につながりやすい。
  • 印刷工程の手間。色数分のユニットを通す必要がなくなり、段取り替えや洗浄の作業が減る。稼働効率の面でも余裕が生まれる。
  • 色合わせの調整時間。多色印刷では版と版の位置合わせや色の再現性の確認に時間を要する。1色であればこの工程が大幅に簡素化される。
調達難と価格上昇は別の問題である。2026年5月以降に相次いだパッケージ変更の理由として企業が挙げているのは、主に「インキが手に入らない」という調達面の問題だった。一方、本稿が扱うコスト削減は「インキと版に払う金額が下がる」という価格面の効果である。両者は同じ対応で同時に解決するが、意思決定の動機としては別のものとして整理しておく必要がある。

CHAPTER 02公表価格で見る削減額、1,000枚で129,250円

削減効果を具体的な金額で確認できる資料は限られる。包装資材の印刷製造を手がける株式会社モロフジ(福岡県筑紫野市)は、自社サイトで「石油原料節約パッケージ(白黒印刷)」として、1色とフルカラーの参考価格を並べて公表している。同社は熊本本社工場・群馬工場・福岡工場の3拠点で製造を行っている。

比較条件と金額

項目内容
印刷方法グラビア印刷
形状楕円抜き(小判抜き)袋
サイズA4(幅250mm×高さ400mm×厚さ0.07mm)
数量1,000枚(印刷版代込み)
1色単価51.5円/合計51,480円
4色(フルカラー)単価181.7円/合計180,730円
差額129,250円(1枚あたり129.25円)
削減率71.5%(1色はフルカラーの28.5%)

同社は自社サイトで、ロットにもよるとしたうえで、フルカラーに比べ約4分の1程度のコスト削減を提案しているとしている。上表の28.5%は同社の公表金額から算出した値であり、この表現とおおむね整合する。なお同社の注記によれば、この価格はCMYKから分解した色数の単価であり、フルカラーに白を加えた5色印刷の場合は別途見積となる。黒以外の特色指定も可能とされている。

この数字を自社に当てはめる際の注意

  • 条件が変われば金額も変わる。上記はA4・0.07mm厚・1,000枚という特定条件の参考価格である。形状、サイズ、材質、ロット、分納の有無によって単価は変動する。同社は北海道・沖縄・離島・イベント会場・商業施設・高層階・個人宅などへの納品では運賃や仕分費が別途発生するとしている。
  • ロットが大きいほど削減率は下がる方向に働く。版代は固定費であるため、数量が増えるほど1枚あたりの版代負担は薄まる。同社の経済ロットは3,000メートル(250mm×400mmの手提げ袋で約7,500枚に相当)とされており、大ロットでは版代以外の要素の比重が高まる。
  • 切り替えには期間が要る。同社の納期は約4週間とされている。既存のカラー版から新規の単色版へ移行する場合、デザインの作り直しと製版の期間を見込む必要がある。
同社が対応可能とする材質は、LLDPE、HDPE、梨地、バイオマス、BAMBIO、LIMEX、パルピース、ヌープラスチックとされている。色数の削減と素材の見直しは別々の検討軸だが、いずれも同じ調達環境への対応として並行して議論されやすい。

CHAPTER 03カルビーの2か月、白黒化から表面カラー再開まで

パッケージの色数削減で最も広く知られた事例がカルビーである。ただし重要なのは、切り替えたという事実よりも、その後どうなったかである。同社の白黒パッケージは約2か月で方針が見直された。

日付内容
2026年5月11日主力商品のパッケージを2色に変更する方針を取引先へ通知。同日夜から各社が報道(日本経済新聞は19時43分配信)
2026年5月12日「中東情勢の影響による一部商品仕様見直しのお知らせ」として正式発表。印刷インクの溶剤や樹脂の品薄が理由
2026年5月25日出荷分から順次切り替え開始。対象はポテトチップス、かっぱえびせん、堅あげポテト、フルグラの計14品
2026年6月24日デザイン会社プラグの3,000人調査結果が報じられ、購入意向の低下が示される
2026年7月9日ポテトチップス、かっぱえびせん、フルグラの計8品について、パッケージ表面のフルカラー印刷再開を発表
2026年7月27日週以降フルグラが店頭展開開始。同品は表面・裏面の全面でフルカラー印刷を再開
2026年8月3日週以降かっぱえびせんが店頭展開開始
2026年8月10日週以降ポテトチップスが店頭展開開始

再開の理由として示された内容

同社は7月9日の発表で、カラーパッケージについて、商品に関する必要な情報を適切に伝え、消費者が安心して商品を選ぶうえで重要な役割を担うと考えているとした。そのうえで、商品の安定供給を最優先に、調達状況を見極めながら、節約を継続してカラー印刷を再開すると説明している。裏面は白黒を維持しており、全面復帰ではない点が要点である。

再開対象から外れた商品がある

  • 白黒で展開していたのは計14品だが、表面フルカラー再開が発表されたのは8品である。
  • 「堅あげポテト」のうすしお味とブラックペッパー、「ポテトチップス」の大容量タイプ(160g)については、再開が発表されていない。
  • これらの再開見通しについて、同社広報部は2026年7月9日時点で回答できかねるとしている。売上やブランドへの影響についても、現時点でわかりかねるとの回答である。

この事例から読み取れる構造

カルビーの一連の対応は、白黒化が「一時的な緊急避難」なのか「恒久的なコスト対策」なのかという問いに対する、一つの実例を示している。同社が選んだのは全面復帰でも全面継続でもなく、面ごとの使い分けだった。消費者が店頭で見る面はカラーへ戻し、購入後にしか見ない面では節約を続ける。この線引きは、削減効果と識別性の両方を評価した結果として理解できる。

なお、白黒パッケージの期間中も販売価格は据え置かれていた。色数削減はあくまで供給の安定とコストの抑制を目的とした措置であり、値下げに直結するものではない。

CHAPTER 04カゴメと伊藤ハム、2つの別解

色数を減らす以外にも、印刷コストと資材調達の制約に対応する方法がある。カゴメが2026年5月14日に発表したパッケージ変更は印刷面積を削る方向の対応であり、伊藤ハムが6月5日に発表した新シリーズは、削減分を販売価格の訴求に転化する方向の対応だった。カルビーの事例とあわせて3つの型が出そろっている。

カゴメ、印刷面積を減らす

変更の内容

  • 対象は「カゴメトマトケチャップ」の500g、300g、180gの3品。
  • 外装パッケージを、当面の間、印刷部分を減らした透明のデザインに変更する。
  • 店頭では2026年5月下旬頃から順次切り替え。
  • チューブ容器および中身の品質に変更はない。

理由として示された白インクの制約

同社は、中東情勢の緊迫が続くなかでインクや塗料の需給状況が変化し、外装パッケージに使用している白インクにも影響が及んでいるとした。パッケージの印刷下地として使う白インクは、印刷適性の観点から使用可能な種類が限られるという説明である。代替が難しいため、白い下地そのものを減らして透明部分を増やす対応をとった形になる。

白い下地を減らすことに伴い、トマト柄が減り、「日本の食卓で愛されてNo.1」の文字も外れた。報道によれば、トマト柄のパッケージは40年以上使われてきたものである。同社は、長年親しまれてきたデザインの変更となり心苦しいとしたうえで、製品を安定的に届けるためのやむを得ない対応であるとしている。

伊藤ハム、削減分を価格訴求に転化する

カルビーの発表当初、日本経済新聞は伊藤ハムも同様の対応を検討していると報じていた。同社が実際に発表したのは、既存商品のパッケージ変更ではなく新シリーズの投入だった。

伊藤ハム(兵庫県西宮市)は2026年6月5日、コストを抑えた新シリーズ「サニープライス」を7月1日に発売すると発表した。ハムやウインナーなどが対象で、包装用インクを3色にするなど資材使用量を減らし、あわせて原材料にも工夫を施すことで、同社の主力製品より2〜4割安く提供するとしている。親会社である伊藤ハム米久ホールディングスの中嶋祐子常務執行役員は、求めやすい価格帯で勝負し切れていない部分もあったと説明している。

この事例の位置づけは、カルビー・カゴメとは異なる。両社が既存商品の仕様を当面の間変更する対応だったのに対し、伊藤ハムは削減した分を新シリーズの価格競争力として設計に織り込んでいる。同社は色数を1色ではなく3色としており、識別性を一定程度確保したうえで資材使用量を抑える形をとった。物価高が続くなかで値頃感を打ち出す商品設計の一部として、包装の簡素化を組み込んだ形といえる。

色数を減らす型(カルビー)

版の本数とインキ使用量を減らす。削減効果は明確に金額化できるが、ブランドカラーによる識別が失われるため、店頭での見え方への影響が大きい。

印刷面積を減らす型(カゴメ)

特定のインキの使用量を減らす。中身や容器が見える設計であれば透明化が成立し、デザインの骨格は残せる。ただし下地が透けるため、視認性の設計を作り直す必要がある。

価格訴求に転化する型(伊藤ハム)

削減分を新商品の価格設定に反映する。既存ブランドの見え方を変えずに済み、簡素な包装が値頃感の説明材料になる。ただし新シリーズの開発と販路の確保が前提になる。

面で使い分ける型(カルビーの着地)

店頭で見える面はカラーへ戻し、そうでない面で節約を続ける。識別性を確保しつつ削減を継続できるが、版を二度作り直す費用が発生する。

これらの型は排他的ではなく、組み合わせることもできる。実務上の判断材料は、どのインキが調達難なのか、どの要素が商品識別に不可欠なのか、削減分を価格に反映するのか原価に留めるのか、そして版の作り直しにどれだけの費用と期間をかけられるのか、という4点に整理できる。

CHAPTER 05上流のインキ値上げ、グラビアは30%以上

色数削減が検討される背景には、インキ自体の価格改定がある。2026年春以降、インキメーカー各社が改定を公表しており、軟包装で使うグラビア・フレキソ系の改定幅が特に大きい。

メーカー対象製品改定幅実施時期
DICグラフィックスグラビア・フレキソインキ、接着剤、製缶用塗料、金属インキなどリキッドカラー製品全般30%以上2026年4月21日納入分より
DICグラフィックス商業オフ輪インキ15%以上2026年5月21日出荷分より
DICグラフィックス油性枚葉インキ・UVインキ・新聞インキなど10%以上2026年5月21日出荷分より
東京インキオフ輪インキ、油性枚葉インキ、UVインキ、新聞インキ20%以上2026年6月1日出荷分より
東京インキ中間色、特練インキなど一部製品30%以上2026年6月1日出荷分より
T&K TOKAUVインキ、油性枚葉インキ、オフリンインキ、水性ニスなど10%以上2026年5月時点で公表

軟包装への影響が大きい理由

食品袋やレトルトパウチなどの軟包装で使われるのは、上表のうちグラビア・フレキソ系のインキである。DICグラフィックスの改定では、この区分が30%以上と最も高い改定幅になっている。紙媒体向けのオフセット系が10〜20%台であることと比べると、軟包装のコスト圧力がより強いことがわかる。

同社は改定の理由として、中東情勢の変化に伴い原油・ナフサをはじめとする石油化学原料の調達環境が悪化していること、アジア各国のエチレンプラントの停止や減産により顔料・樹脂原料・モノマー・溶剤の調達環境が厳しさを増していることを挙げている。あわせて、今後の原料市況や国際情勢の変動によっては追加の価格改定や供給調整を行う可能性があるとしている。

色数削減の効果とインキ単価の上昇は、方向が逆の力である。使用する色を4色から1色に絞れば、必要なインキの種類と量、そして版の本数が減る。単価が30%上がっていても、使用量と版数の減少がそれを上回れば支出は下がる。ただし単価の上昇が続けば、削減後の水準も時間とともに押し上げられていく。色数削減は水準を一段下げる効果であり、継続的な上昇そのものを止める手段ではない点を踏まえて計画を立てる必要がある。

CHAPTER 06識別性の低下という反作用

コスト削減の効果が明確である一方、色数の削減には売場での影響が伴う。この点について、実際の消費者調査の結果が報じられている。

3,000人調査で示された購入意向の低下

デザイン会社のプラグ(東京・千代田)は、10〜60代の男女計3,000人を対象に、カルビーの白黒パッケージに対する購入意向の変化を調査した。日経クロストレンドが2026年6月24日に報じた内容によれば、白黒パッケージでは購入意向が大きく下がり、パッケージ変更を発表していない競合商品に後れを取る可能性が示されている。

影響が生じる仕組みは理解しやすい。ポテトチップスであれば、うすしお味、のりしお、コンソメパンチといった味の違いは、長年にわたり色で判別されてきた。色が失われると、消費者は文字を読んで判別する必要が生じる。売場での選択にかかる時間が延び、迷った末に別の商品を手に取る可能性が高まる。

削減額と影響を同じ表で比較する

色数削減を検討する際は、削減額だけを見て判断すると評価を誤りやすい。1,000枚あたり129,250円という削減額は明確な数字だが、売上への影響は事後にしか確定しない。判断材料としては、次の3点を同じ表に並べることが有効である。

  • 年間発注量に削減単価を乗じた年間削減額(版代の償却期間も含めて計算する)。
  • 対象商品の年間売上と、そのうち何%の減少で削減額が相殺されるかという分岐点。
  • その商品が色で識別されている度合い。同一ブランド内に複数のバリエーションがあり、色で区別している商品ほど影響が大きい。

影響が小さい領域もある

識別性への影響は、商品の性質によって大きく異なる。売場で色による選択が行われない用途であれば、削減効果をそのまま享受できる可能性がある。前掲のモロフジが例示している肥料袋や米袋のような業務用・産業用の包装は、この領域にあたる。物流工程で使われる資材や、店頭に並ばない外装、購入後にしか目に触れない面も同様である。

カルビーが裏面の白黒を維持したのは、この線引きを商品単位ではなく面単位で適用した例といえる。同じ考え方は、外装段ボールと個装、店頭什器と輸送用資材といった区分にも応用できる。

CHAPTER 07供給側メーカーの動きと代替技術

需要側の対応が進むのと並行して、包装資材と印刷の供給側でも提案の内容が変化している。

単色印刷を商品として提示する動き

モロフジは「石油原料節約パッケージ(白黒印刷)」という名称で単色印刷を独立した商品カテゴリとして掲載し、フルカラーとの価格比較を公開している。同社は2026年6月時点の状況として、ナフサ不足によりプラスチックやポリエチレン、印刷用インクをはじめとする化学薬品の価格高騰や供給遅延が発生していること、大手食品メーカーでフルカラーから単色印刷への切り替えの動きが加速していることを挙げている。

価格表を公開する形での提示は、発注側にとって比較検討の起点になる。包装資材は仕様が案件ごとに異なるため個別見積によることが多く、色数を変えた場合の差額を事前に把握できる資料は限られる。当社が確認した範囲では、1色とフルカラーの価格を同一条件で並べて公開している例は多くない。

溶剤依存そのものを下げる方向

色数を減らす以外に、インキの種類を変えることで石油化学原料への依存度を下げる方向の提案もある。セキ株式会社は、水性フレキソ印刷とノンソルベントラミネートによる環境配慮型パッケージを、印刷からラミネート加工まで一貫して提供しているとしている。同社は食品パッケージでの採用実績として、井村屋の「袋入 水ようかん」を挙げている。

この方式は、有機溶剤への依存をあらかじめ減らしておくことで、供給リスクへの備えと脱炭素への対応を同時に進めるという位置づけである。ただし設備と工程の変更を伴うため、短期のコスト対策として即座に採用できる性格のものではない。

短期の対応

色数の削減、印刷面積の削減。既存の設備で対応でき、効果が金額で明確に出る。ただし版の作り直しに費用と期間を要し、識別性の低下という副作用がある。

中長期の対応

印刷方式そのものの変更、素材の見直し。設備投資と検証期間が必要だが、原料の需給変動に対する感応度を構造的に下げられる。

CHAPTER 08値上げ要因に占める包装資材の位置

パッケージのコストが企業の価格判断にどの程度影響しているのかは、統計から確認できる。帝国データバンクが2026年6月30日に公表した「食品主要195社」価格改定動向調査によれば、包装資材は値上げ要因として上位に位置している。

項目数値備考
2026年7月の値上げ品目数2,566品目単月で2,000品目超は2026年4月以来3か月ぶり
1回あたり平均値上げ率11%2026年7月分
値上げ要因「原材料高」92.5%最も高いが2026年3月以降は低下傾向
値上げ要因「物流費」71.9%2026年6月30日公表時点
値上げ要因「包装・資材」69.8%前年同月から10.5ポイント上昇
値上げ要因「中東情勢」24.7%2026年6月30日公表時点
2026年通年の値上げ品目数14,902品目1〜11月までの判明分
2026年8月の計画1,898品目同上公表時点の見通し
2026年9月の計画3,029品目2026年内で最多の見通し

包装・資材を要因に挙げた企業の比率が前年同月から10.5ポイント上昇し69.8%に達したことは、パッケージのコストが例外的な項目ではなく、価格判断の常設要因になりつつあることを示している。同調査は、中東情勢の悪化による原油やナフサ高を受け、トレーやフィルムの資材価格や原材料高の影響が表面化し、値上げ品目数を押し上げたと分析している。

数値の時点に注意する。同調査は毎月更新されるため、公表時点によって同じ「7月の値上げ品目数」でも数値が異なる。2026年5月29日公表時点では7月分は2,269品目、包装・資材は73.7%、中東情勢は22.7%とされていた。本稿では最新の2026年6月30日公表分を採用している。他の資料と突き合わせる際は、公表時点を確認する必要がある。

CHAPTER 09今後の展開と検討時の判断材料

色数削減の動きが今後どう推移するかは、インキの調達環境に左右される。ただし伊藤ハムの事例が示すように、削減分を価格に反映する設計であれば、調達環境が改善しても簡素な包装を維持する動機が残る。ここで注意すべきは、カルビーがカラー再開を決めた時点と、その後の情勢に時間差があることである。

判断時点と情勢のずれ

カルビーが表面フルカラー印刷の再開を発表したのは2026年7月9日である。同社は調達状況を見極めながらの再開としており、その時点で原材料の調達に一定の見通しが立っていたことがうかがえる。しかしその後、7月中旬以降に中東情勢は再び動いている。当社が別稿で整理したとおり、ホルムズ海峡の通航は7月13〜19日の週に53隻と前週比66%減となり、7月23日には紅海でサウジアラビアの石油タンカー2隻への攻撃が発表された。ブレント原油は7月24日0時22分に1バレル100.95ドルをつけている。

店頭展開はフルグラが7月27日週以降、かっぱえびせんが8月3日週以降、ポテトチップスが8月10日週以降と、いずれもこれからである。予定どおり進むかどうかは今後の調達環境次第であり、本稿の時点では確定していない。同社が「地政学的リスクを含む事業環境の変化に、機動的かつ柔軟に対応する」としている点は、この不確実性を前提とした表現として読める。

色数削減を検討する際に確認する5項目

  • 対象を面単位で切り分けたか。商品全体で判断せず、表面・裏面・外装・個装のどこで削減するかを分けて検討する。カルビーが選んだのはこの形である。
  • 版代の償却期間を計算に入れたか。単色版の新規製作には初期費用がかかる。年間発注量に対して何回転で回収できるかを確認する。情勢が短期で改善した場合、版代が回収前に不要になる可能性もある。
  • 識別性への影響を金額に換算したか。削減額と、売上が何%下がると相殺されるかという分岐点を同じ表に並べる。色で選ばれている商品ほど慎重な検討が必要になる。
  • 切り替え期間を工程表に反映したか。デザインの作り直しと製版を含めると、発注から納品まで一定の期間を要する。既存在庫の消化計画とあわせて組む必要がある。
  • 戻す場合の条件を決めてあるか。カルビーは約2か月で方針を見直した。どの条件が満たされたらカラーに戻すのかを事前に決めておくと、判断が遅れにくい。

モニタリングすべき指標

  • インキメーカーの追加改定の有無。DICグラフィックスは、今後の原料市況や国際情勢の変動によっては追加の価格改定や供給調整を行う可能性があるとしている。
  • アジアのナフサ価格と国産ナフサ基準価格。インキの原料である溶剤・樹脂の価格に先行する。スポットから通関価格まで約2か月、国産基準価格までは4か月前後の時差がある。
  • カルビーの店頭展開の進捗。8月10日週のポテトチップス展開が予定どおり進むかは、調達環境の実態を示す一つの指標になる。
  • 再開が発表されていない商品の扱い。「堅あげポテト」うすしお味・ブラックペッパー、「ポテトチップス」大容量160gの動向は、どの条件で判断が分かれるかを示す材料になる。
  • 帝国データバンクの月次調査における包装・資材の比率。2026年6月30日公表時点で69.8%。この比率の推移が、業界全体のコスト圧力の方向を示す。
  • 包装簡素化を価格訴求に転化する商品の広がり。伊藤ハムの「サニープライス」は2026年7月1日発売である。同種の設計が他社にも広がるかどうかは、包装の簡素化が一時的な対応にとどまるのか、商品設計の選択肢として定着するのかを見分ける材料になる。

情報の変化についての注意

本稿は2026年7月24日10時00分(日本時間)までに公表・確認された情報を対象としている。価格・数量・実施時期は各社の公表資料に基づくものであり、以後変更される可能性がある。掲載した参考価格は特定条件下のものであり、実際の調達にあたっては自社の仕様で各社に見積を依頼されたい。

CHAPTER 10用語集

グラビア印刷

凹版の一種で、円筒状の版に彫った微細なくぼみにインキを詰めて転写する方式。食品袋やレトルトパウチなど軟包装の主力。写真の再現性が高く長尺の連続印刷に適する一方、版の製作費が高い。

フレキソ印刷

樹脂やゴムの凸版を使う方式。段ボールや紙器のほか軟包装にも使われる。グラビアに比べ版代が抑えられ、水性インキとの相性がよい。

オフセット印刷

版から一度ブランケットに転写し、そこから紙へ移す平版方式。チラシ、書籍、紙器など紙媒体の主力。軟包装のフィルムには適さない。

版代(製版費)

印刷用の版を製作する費用。色ごとに発生し、数量にかかわらずかかる初期費用のため、小ロットほど1枚あたりの負担が大きい。色数削減の効果が最も明確に表れる項目。

CMYK

シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色。この4色の重ね合わせで色を再現する方式をフルカラー(4色)印刷と呼ぶ。単色印刷はこのうち1色のみを使う。

特色

CMYKの掛け合わせではなく、あらかじめ調合されたインキで刷る色。DICやPANTONEなどの色見本番号で指定する。ブランドカラーの再現に用いられる。

白インク(白版)

透明フィルムに印刷する際、下地として敷く白色のインキ。上に刷る色の発色を支える役割を持つ。印刷適性の観点から使用できる種類が限られ、代替が難しい場合がある。

軟包装

フィルムや紙などの柔軟な材料を用いた包装の総称。食品袋、パウチ、ラミネートチューブなどが含まれる。グラビア印刷の主要な用途。

ノンソルベントラミネート

有機溶剤を使わずにフィルム同士を貼り合わせる加工方式。溶剤の調達リスクと排出を同時に抑えられる。設備と工程の変更を伴う。

経済ロット

製造効率上、1回の発注で確保したい最小の数量。軟包装では原反の長さ(メートル)で示されることが多い。これを下回ると1枚あたりの単価が上がる。

ナフサ

原油を蒸留して得られる軽質留分。エチレンなどの石化基礎原料を経て、樹脂・溶剤・顔料の出発点となる。印刷インキの原料もここに連なる。

楕円抜き袋

生地に楕円形の手穴を開けた形状の袋。小判抜き袋とも呼ぶ。持ち帰り袋として広く使われ、構造が簡素なため製造コストを抑えやすい。

CHAPTER 11出典・エビデンス一覧

価格・製品情報(一次資料)

報道

技術・業界解説

  • セキ株式会社「ナフサ不足でインクが足りない!2026年に印刷インク危機が起きた理由と“溶剤に頼らない”代替策」2026年6月8日
    https://works.seki.jp/column/naphtha/

当社の関連記事

CHAPTER 12よくある質問

白黒印刷にすると実際にどれだけコストが下がりますか

株式会社モロフジが公表しているグラビア印刷の参考価格では、A4サイズの楕円抜き袋1,000枚(印刷版代込み)が1色で51,480円、4色で180,730円です。差額は129,250円で、1色はフルカラーの28.5%にあたります。ただしこれは同社の特定条件下の参考価格であり、形状・サイズ・材質・ロット・分納の有無によって変動します。自社の仕様で見積を取ることが前提になります。

なぜ色数を減らすとこれだけ安くなるのですか

グラビア印刷では色ごとに版(シリンダー)を製作し、色数だけ印刷ユニットを通します。色数が減れば版の本数、インキの使用量、印刷工程の手間、色合わせの調整時間がいずれも減ります。特に版代は初期費用として1色ごとに発生するため、ロットが小さいほど1枚あたりの負担が大きく、色数削減の効果が出やすくなります。

カルビーはなぜ2か月で表面のカラー印刷を再開したのですか

同社は2026年7月9日、カラーパッケージが商品情報を適切に伝え、消費者が安心して商品を選ぶうえで重要な役割を担うとしたうえで、安定供給を最優先に調達状況を見極めながら、節約を継続してカラー印刷を再開すると発表しました。裏面は白黒を維持しており、全面復帰ではありません。ブランド識別に関わる面はカラーへ戻し、そうでない面で節約を続ける形です。

白黒化にはどのようなリスクがありますか

店頭での識別性が下がる点が最大の論点です。デザイン会社のプラグが10〜60代の男女3,000人を対象に実施した調査では、カルビーの白黒パッケージについて購入意向の低下が報じられています。色で味を判別してきた商品ほど影響が大きく、削減額と売上への影響を並べて評価する必要があります。加えて版の作り直しには初期費用と期間がかかります。

なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか

当社はプラスチックパレット、再生樹脂材料、PPバンド、ストレッチフィルムなどの物流資材を全国のお客様に供給する商社です。これらの資材はいずれも原油からナフサを経て製造される石油化学製品であり、包装資材のコスト構造と調達環境はお客様の実務に直結します。公表資料に基づく事実情報を、確認できる範囲を明示したうえで整理し、継続的に発信しています。

DISCLAIMER

  • 本稿は2026年7月24日10時00分(日本時間)までに公表・確認された情報を対象としています。各社の価格・仕様・実施時期は以後変更される可能性があります。
  • 掲載した参考価格は各社が特定条件下で公表しているものです。形状・サイズ・材質・数量・納品条件によって実際の金額は変動します。調達にあたっては各社に直接お問い合わせください。
  • 本稿は情報提供を目的としたものであり、特定の企業・製品・サービスの採用を推奨するものではありません。また投資判断に用いることを意図したものではありません。
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