包装コストのレポート

パッケージ白黒化でいくら安くなるか、1,000枚あたり12万9,250円

2026年7月24日 公開2026年10月23日 更新本文は7月24日 10時00分(日本時間)時点の情報読む時間 約21分

この記事の答え

何が起きた
2026年5月以降、印刷インキの調達難を理由に、パッケージの色数を減らす動きが相次ぎました。カルビーは約2か月で、表面のカラー印刷を再開しました。
包装コストへの影響
モロフジの参考価格では、A4の袋1,000枚が1色51,480円、4色180,730円です(版代込み)。差額は129,250円です。
確かめておくこと
削減額と、売上が何%下がると相殺されるかの分岐点を同じ表に並べること。版代の償却期間と切り替えの期間も含めます。
次に見るところ
インキメーカーの追加改定の有無と、帝国データバンクの月次調査で包装・資材を挙げる比率の推移です。
この記事のあとの動き(2026年10月23日時点)

この記事の「見通し」「予定」は、公開した時点のものです。この記事で「〜の見通し」「〜の予定」と書いた時期は、すでに過ぎています。

最新の数字と動きは、毎月更新しているまとめの記事で確かめてください。

まとめの記事:物流資材の完全まとめ ›
1色と4色の差額(1,000枚)129,250円版代込み。A4楕円抜き袋・グラビア印刷。モロフジの参考価格
1色印刷(1,000枚)51,480円版代込み。A4楕円抜き袋・グラビア印刷
4色印刷(1,000枚)180,730円版代込み。同じ条件での比較

削減率は71.5%で、1色はフルカラーの28.5%です。カルビーが表面のカラー印刷に戻したのは8品で(2026年7月9日発表)、白黒で展開していたのは14品でした。

色数を減らすと、版・インキ・工程・色合わせの4つが減る

グラビア印刷は色ごとに版を作るため、色数を減らすと版・インキ・工程・色合わせの手間が減ります。ただし工程の数が、そのまま金額の倍率になるわけではありません。

軟包装軟包装フィルムや紙などの柔軟な材料を用いた包装の総称。食品袋、パウチ、ラミネートチューブなどが含まれる。グラビア印刷の主要な用途。の印刷で主に使われるグラビア印刷グラビア印刷凹版の一種で、円筒状の版に彫った微細なくぼみにインキを詰めて転写する方式。食品袋やレトルトパウチなど軟包装の主力。写真の再現性が高く長尺の連続印刷に適する一方、版の製作費が高い。は、色ごとに版を作り、色数の分だけ印刷ユニットを通す方式です。

フルカラーは、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの4色を重ねて表します。単純にいえば、1色印刷の4倍の版と工程が要ります。色数を減らすことは、この作りを直接縮めることです。

ただし工程数が、そのまま金額の倍率になるわけではありません。実際の価格差は、第2章で公表値をもとに確かめます。

削減が生じる4つの内訳

  • 版代。グラビア印刷では、色ごとに円筒状の版(シリンダー)を作ります。版代は数量にかかわらずかかる初期費用です。そのため、ロットが小さいほど1枚あたりの負担が重くなります。色数削減の効果が、最もはっきり表れる項目です。
  • インキ使用量。使う色が減れば、その分のインキが要らなくなります。2026年の局面では、インキそのものの単価が上がっています。そのため使用量を減らすと、そのまま調達額の削減につながりやすくなります。
  • 印刷工程の手間。色数分のユニットを通す必要がなくなり、段取り替えや洗浄の作業が減ります。稼働効率の面でも余裕が生まれます。
  • 色合わせの調整時間。多色印刷では、版と版の位置合わせや、色の再現性の確認に時間がかかります。1色であれば、この工程が大幅に簡素になります。

調達難と価格上昇は、別の問題です。2026年5月以降に相次いだパッケージ変更の理由として、企業が挙げているのは主に「インキが手に入らない」という調達面の問題でした。

一方、この記事が扱うコスト削減は、「インキと版に払う金額が下がる」という価格面の効果です。両者は同じ対応で同時に解決します。ただし意思決定の動機としては、別のものとして整理しておく必要があります。

公表価格では、1,000枚で129,250円安くなる

包装資材メーカーの株式会社モロフジが、参考価格を公表しています。A4サイズの楕円抜き袋楕円抜き袋生地に楕円形の手穴を開けた形状の袋。小判抜き袋とも呼ぶ。持ち帰り袋として広く使われ、構造が簡素なため製造コストを抑えやすい。1,000枚で、1色51,480円、4色180,730円です。差額は129,250円で、1色はフルカラーの28.5%にあたります(いずれも印刷版代込み)。

削減の効果を、具体的な金額で確かめられる資料は限られます。包装資材の印刷製造を手がける株式会社モロフジ(福岡県筑紫野市)は、自社サイトで参考価格を公表しています。「石油原料節約パッケージ(白黒印刷)」として、1色とフルカラーの価格を並べたものです。

同社は、熊本本社工場・群馬工場・福岡工場の3拠点で製造しています。

比較条件と金額

モロフジの参考価格(1色と4色の比較)
項目内容
印刷方法グラビア印刷
形状楕円抜き(小判抜き)袋
サイズA4(幅250mm×高さ400mm×厚さ0.07mm)
数量1,000枚(印刷版代込み)
1色単価51.5円/合計51,480円
4色(フルカラー)単価181.7円/合計180,730円
差額129,250円(1枚あたり129.25円)
削減率71.5%(1色はフルカラーの28.5%)

株式会社モロフジ「石油原料節約パッケージ(白黒印刷)」の公表価格によります。差額と削減率は、公表金額から算出した値です。

同社は自社サイトで、ロットにもよるとしたうえで、フルカラーに比べ約4分の1程度のコスト削減を提案しているとしています。上の表の28.5%は、同社の公表金額から算出した値です。この表現と、おおむね整合します。

なお同社の注記によれば、この価格はCMYKCMYKシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色。この4色の重ね合わせで色を再現する方式をフルカラー(4色)印刷と呼ぶ。単色印刷はこのうち1色のみを使う。から分解した色数の単価です。フルカラーに白を加えた5色印刷の場合は、別途見積となります。黒以外の特色特色CMYKの掛け合わせではなく、あらかじめ調合されたインキで刷る色。DICやPANTONEなどの色見本番号で指定する。ブランドカラーの再現に用いられる。指定も可能とされています。

この数字を自社に当てはめる際の注意

  • 条件が変われば、金額も変わります。上の表は、A4・0.07mm厚・1,000枚という特定の条件の参考価格です。形状、サイズ、材質、ロット、分納の有無によって単価は変わります。同社は、北海道・沖縄・離島・イベント会場・商業施設・高層階・個人宅などへの納品では、運賃や仕分費が別途かかるとしています。
  • ロットが大きいほど、削減率は下がる方向に働きます。版代は固定費のため、数量が増えるほど1枚あたりの版代の負担は薄まります。同社の経済ロット経済ロット製造効率上、1回の発注で確保したい最小の数量。軟包装では原反の長さ(メートル)で示されることが多い。これを下回ると1枚あたりの単価が上がる。は3,000メートル(250mm×400mmの手提げ袋で約7,500枚に相当)とされています。大ロットでは、版代以外の要素の比重が高まります。
  • 切り替えには期間が要ります。同社の納期は約4週間とされています。既存のカラー版から新しい単色版へ移る場合は、デザインの作り直しと製版の期間を見込む必要があります。

同社が対応可能とする材質は、LLDPE、HDPE、梨地、バイオマス、BAMBIO、LIMEX、パルピース、ヌープラスチックとされています。

色数の削減と素材の見直しは、別々の検討の軸です。ただし、どちらも同じ調達環境への対応として、並行して議論されやすいものです。

カルビーは約2か月で、表面だけカラー印刷に戻した

カルビーは2026年5月25日出荷分から、主要14品を2色印刷に切り替えました。7月9日には、8品の表面フルカラー印刷の再開を発表しました。裏面は白黒を維持し、節約を継続する形をとっています。

パッケージの色数削減で、最も広く知られた事例がカルビーです。ただし大事なのは、切り替えたという事実よりも、その後どうなったかです。同社の白黒パッケージは、約2か月で方針が見直されました。

カルビーの白黒パッケージの経緯(2026年)
日付内容
2026年5月11日主力商品のパッケージを2色に変更する方針を取引先へ通知。同日夜から各社が報道(日本経済新聞は19時43分配信)
2026年5月12日「中東情勢の影響による一部商品仕様見直しのお知らせ」として正式発表。印刷インクの溶剤や樹脂の品薄が理由
2026年5月25日出荷分から順次切り替え開始。対象はポテトチップス、かっぱえびせん、堅あげポテト、フルグラの計14品
2026年6月24日デザイン会社プラグの3,000人調査結果が報じられ、購入意向の低下が示される
2026年7月9日ポテトチップス、かっぱえびせん、フルグラの計8品について、パッケージ表面のフルカラー印刷再開を発表
2026年7月27日週以降フルグラが店頭展開開始。同品は表面・裏面の全面でフルカラー印刷を再開
2026年8月3日週以降かっぱえびせんが店頭展開開始
2026年8月10日週以降ポテトチップスが店頭展開開始

再開の理由として示された内容

同社は7月9日の発表で、カラーパッケージについての考えを示しました。商品に関する必要な情報を適切に伝え、消費者が安心して商品を選ぶうえで重要な役割を担う、と考えているとしています。

そのうえで、商品の安定供給を最優先に、調達状況を見極めながら、節約を継続してカラー印刷を再開すると説明しています。裏面は白黒を維持しており、全面復帰ではない点が要点です。

再開対象から外れた商品があります

  • 白黒で展開していたのは計14品ですが、表面フルカラー再開が発表されたのは8品です。
  • 「堅あげポテト」のうすしお味とブラックペッパー、「ポテトチップス」の大容量タイプ(160g)は、再開が発表されていません。
  • これらの再開見通しについて、同社広報部は2026年7月9日時点で、回答できかねるとしています。売上やブランドへの影響についても、現時点でわかりかねるとの回答です。

この事例から読み取れる構造

カルビーの一連の対応は、白黒化が「一時的な緊急避難」なのか「恒久的なコスト対策」なのか、という問いへの一つの実例です。

同社が選んだのは、全面復帰でも全面継続でもなく、面ごとの使い分けでした。消費者が店頭で見る面はカラーへ戻し、購入後にしか見ない面では節約を続けます。この線引きは、削減効果と識別性の両方を評価した結果として理解できます。

なお、白黒パッケージの期間中も、販売価格は据え置かれていました。色数削減は、あくまで供給の安定とコストの抑制を目的とした措置です。値下げに直結するものではありません。

カゴメと伊藤ハムは、色数とは別のところを削った

カゴメは印刷面積を削り、伊藤ハムは削減分を新シリーズの販売価格の訴求に回しました。色数を減らすカルビーとあわせて、3つの型が出そろっています。

色数を減らす以外にも、印刷コストと資材調達の制約に対応する方法があります。カゴメが2026年5月14日に発表したパッケージ変更は、印刷面積を削る方向の対応でした。

伊藤ハムが6月5日に発表した新シリーズは、削減分を販売価格の訴求に転化する方向の対応でした。カルビーの事例とあわせて、3つの型が出そろっています。

カゴメ、印刷面積を減らす

変更の内容

  • 対象は「カゴメトマトケチャップ」の500g、300g、180gの3品です。
  • 外装パッケージを、当面の間、印刷部分を減らした透明のデザインに変更します。
  • 店頭では、2026年5月下旬頃から順次切り替えます。
  • チューブ容器と中身の品質に、変更はありません。

理由として示された白インクの制約

同社は、中東情勢の緊迫が続くなかで、インクや塗料の需給状況が変化したとしています。外装パッケージに使っている白インク白インク(白版)透明フィルムに印刷する際、下地として敷く白色のインキ。上に刷る色の発色を支える役割を持つ。印刷適性の観点から使用できる種類が限られ、代替が難しい場合がある。にも、影響が及んでいるという説明です。

パッケージの印刷の下地に使う白インクは、印刷適性の観点から、使える種類が限られるとしています。代替が難しいため、白い下地そのものを減らし、透明な部分を増やす対応をとった形です。

白い下地を減らしたことで、トマト柄が減り、「日本の食卓で愛されてNo.1」の文字も外れました。報道によれば、トマト柄のパッケージは40年以上使われてきたものです。

同社は、長年親しまれてきたデザインの変更となり心苦しいとしています。そのうえで、製品を安定的に届けるための、やむを得ない対応であるとしています。

伊藤ハム、削減分を価格訴求に転化する

カルビーの発表当初、日本経済新聞は、伊藤ハムも同様の対応を検討していると報じていました。同社が実際に発表したのは、既存商品のパッケージ変更ではなく、新シリーズの投入でした。

伊藤ハム(兵庫県西宮市)は2026年6月5日、コストを抑えた新シリーズ「サニープライス」を7月1日に発売すると発表しました。ハムやウインナーなどが対象です。

包装用インクを3色にするなどして、資材の使用量を減らします。あわせて原材料にも工夫を施し、同社の主力製品より2〜4割安く提供するとしています。

親会社である伊藤ハム米久ホールディングスの中嶋祐子常務執行役員は、求めやすい価格帯で勝負し切れていない部分もあったと説明しています。

この事例の位置づけは、カルビー・カゴメとは違います。両社は、既存商品の仕様を当面の間変える対応でした。伊藤ハムは、削減した分を新シリーズの価格競争力として、設計に織り込んでいます。

同社は色数を1色ではなく3色にしており、識別性を一定程度確保したうえで、資材使用量を抑える形をとりました。物価高が続くなかで、値頃感を打ち出す商品設計の一部として、包装の簡素化を組み込んだ形といえます。

色数を減らす型(カルビー)版の本数とインキ使用量を減らします。削減効果は明確に金額化できます。ただしブランドカラーによる識別が失われるため、店頭での見え方への影響が大きくなります。

印刷面積を減らす型(カゴメ)特定のインキの使用量を減らします。中身や容器が見える設計であれば透明化が成り立ち、デザインの骨格は残せます。ただし下地が透けるため、視認性の設計を作り直す必要があります。

価格訴求に転化する型(伊藤ハム)削減分を新商品の価格設定に反映します。既存ブランドの見え方を変えずに済み、簡素な包装が値頃感の説明材料になります。ただし新シリーズの開発と販路の確保が前提になります。

面で使い分ける型(カルビーの着地)店頭で見える面はカラーへ戻し、そうでない面で節約を続けます。識別性を確保しつつ削減を続けられますが、版を二度作り直す費用がかかります。

これらの型は排他的ではなく、組み合わせることもできます。実務上の判断材料は、次の4点に整理できます。

  • どのインキが調達難なのか。
  • どの要素が、商品識別に不可欠なのか。
  • 削減分を価格に反映するのか、原価に留めるのか。
  • 版の作り直しに、どれだけの費用と期間をかけられるのか。

上流のインキ値上げは、グラビア向けが30%以上と最も大きい

2026年春以降、インキメーカー各社が価格改定を公表しています。軟包装で使うグラビア・フレキソ系の改定幅が、特に大きくなっています。

色数削減が検討される背景には、インキ自体の価格改定があります。

インキメーカー各社の価格改定(2026年)
メーカー対象製品改定幅実施時期
DICグラフィックスグラビア・フレキソインキ、接着剤、製缶用塗料、金属インキなどリキッドカラー製品全般30%以上2026年4月21日納入分より
DICグラフィックス商業オフ輪インキ15%以上2026年5月21日出荷分より
DICグラフィックス油性枚葉インキ・UVインキ・新聞インキなど10%以上2026年5月21日出荷分より
東京インキオフ輪インキ、油性枚葉インキ、UVインキ、新聞インキ20%以上2026年6月1日出荷分より
東京インキ中間色、特練インキなど一部製品30%以上2026年6月1日出荷分より
T&K TOKAUVインキ、油性枚葉インキ、オフリンインキ、水性ニスなど10%以上2026年5月時点で公表

軟包装への影響が大きい理由

食品袋やレトルトパウチなどの軟包装で使われるのは、上の表のうちグラビア・フレキソ系のインキです。DICグラフィックスの改定では、この区分が30%以上と、最も高い改定幅になっています。

紙媒体向けのオフセット系は、10〜20%台です。それと比べると、軟包装のコスト圧力がより強いことがわかります。

同社は改定の理由として、2つを挙げています。1つは、中東情勢の変化に伴い、原油・ナフサナフサ原油を蒸留して得られる軽質留分。エチレンなどの石化基礎原料を経て、樹脂・溶剤・顔料の出発点となる。印刷インキの原料もここに連なる。をはじめとする石油化学原料の調達環境が悪化していることです。

もう1つは、アジア各国のエチレンプラントの停止や減産により、顔料・樹脂原料・モノマー・溶剤の調達環境が厳しさを増していることです。あわせて、今後の原料市況や国際情勢の変動によっては、追加の価格改定や供給調整を行う可能性があるとしています。

色数削減の効果とインキ単価の上昇は、方向が逆の力です。使う色を4色から1色に絞れば、必要なインキの種類と量、そして版の本数が減ります。単価が30%上がっていても、使用量と版数の減少がそれを上回れば、支出は下がります。

ただし単価の上昇が続けば、削減後の水準も、時間とともに押し上げられていきます。色数削減は水準を一段下げる効果で、継続的な上昇そのものを止める手段ではありません。この点を踏まえて、計画を立てる必要があります。

色数を減らすと、店頭での見分けやすさが下がる

デザイン会社プラグの3,000人調査では、白黒パッケージの購入意向の低下が報じられました。削減額と識別性の低下は、並べて評価する必要があります。面ごとに使い分ける設計が、現実的な着地点になりつつあります。

コスト削減の効果が明確である一方で、色数の削減には売場での影響が伴います。この点について、実際の消費者調査の結果が報じられています。

3,000人調査で示された購入意向の低下

デザイン会社のプラグ(東京・千代田)は、10〜60代の男女計3,000人を対象に調査しました。カルビーの白黒パッケージに対する、購入意向の変化を調べたものです。

日経クロストレンドが2026年6月24日に報じた内容によれば、白黒パッケージでは購入意向が大きく下がりました。パッケージ変更を発表していない競合商品に、後れを取る可能性が示されています。

影響が生じる仕組みは、理解しやすいものです。ポテトチップスであれば、うすしお味、のりしお、コンソメパンチといった味の違いは、長年にわたり色で判別されてきました。

色が失われると、消費者は文字を読んで判別する必要が生じます。売場での選択にかかる時間が延び、迷った末に別の商品を手に取る可能性が高まります。

削減額と影響を、同じ表で比べます

色数削減を検討するときは、削減額だけを見て判断すると、評価を誤りやすくなります。1,000枚あたり129,250円という削減額は明確な数字ですが、売上への影響は事後にしか確定しません。

判断材料としては、次の3点を同じ表に並べることが有効です。

  • 年間発注量に削減単価を掛けた年間削減額(版代の償却期間も含めて計算します)。
  • 対象商品の年間売上と、そのうち何%の減少で削減額が相殺されるかという分岐点。
  • その商品が色で識別されている度合い。同じブランドの中に複数のバリエーションがあり、色で区別している商品ほど影響が大きくなります。

影響が小さい領域もある

識別性への影響は、商品の性質によって大きく異なります。売場で色による選択が行われない用途であれば、削減効果をそのまま受けられる可能性があります。

前に挙げたモロフジが例示している、肥料袋や米袋のような業務用・産業用の包装は、この領域にあたります。物流工程で使われる資材や、店頭に並ばない外装、購入後にしか目に触れない面も同様です。

カルビーが裏面の白黒を維持したのは、この線引きを、商品単位ではなく面単位で当てはめた例といえます。同じ考え方は、外装段ボールと個装、店頭什器と輸送用資材といった区分にも応用できます。

供給側は、単色印刷の価格表と溶剤に頼らない方式を出している

需要側の対応と並行して、供給側でも提案の中身が変わっています。単色印刷を価格つきの商品として示す動きと、溶剤への依存を下げる方式の提案です。

需要側の対応が進むのと並行して、包装資材と印刷の供給側でも、提案の内容が変化しています。

単色印刷を商品として提示する動き

モロフジは「石油原料節約パッケージ(白黒印刷)」という名称で、単色印刷を独立した商品カテゴリとして掲載しています。フルカラーとの価格比較も公開しています。

同社は2026年6月時点の状況として、2つを挙げています。ナフサ不足により、プラスチックやポリエチレン、印刷用インクをはじめとする化学薬品の価格高騰や供給遅延が発生していることです。そして、大手食品メーカーでフルカラーから単色印刷への切り替えの動きが加速していることです。

価格表を公開する形での提示は、発注側にとって比較検討の起点になります。包装資材は仕様が案件ごとに異なるため、個別見積によることが多くなります。色数を変えた場合の差額を、事前に把握できる資料は限られます。

当社が確認した範囲では、1色とフルカラーの価格を同一条件で並べて公開している例は、多くありません。

溶剤依存そのものを下げる方向

色数を減らす以外に、インキの種類を変えることで、石油化学原料への依存度を下げる方向の提案もあります。

セキ株式会社は、水性フレキソ印刷フレキソ印刷樹脂やゴムの凸版を使う方式。段ボールや紙器のほか軟包装にも使われる。グラビアに比べ版代が抑えられ、水性インキとの相性がよい。とノンソルベントラミネートノンソルベントラミネート有機溶剤を使わずにフィルム同士を貼り合わせる加工方式。溶剤の調達リスクと排出を同時に抑えられる。設備と工程の変更を伴う。による環境配慮型パッケージを、印刷からラミネート加工まで一貫して提供しているとしています。同社は食品パッケージでの採用実績として、井村屋の「袋入 水ようかん」を挙げています。

この方式は、有機溶剤への依存をあらかじめ減らしておく考え方です。供給リスクへの備えと脱炭素への対応を、同時に進めるという位置づけです。ただし設備と工程の変更を伴うため、短期のコスト対策として、すぐに採用できる性格のものではありません。

短期の対応色数の削減、印刷面積の削減。既存の設備で対応でき、効果が金額で明確に出ます。ただし版の作り直しに費用と期間がかかり、識別性の低下という副作用があります。

中長期の対応印刷方式そのものの変更、素材の見直し。設備投資と検証期間が必要ですが、原料の需給変動に対する感応度を、構造的に下げられます。

包装・資材は、食品値上げの要因として69.8%の企業が挙げた

帝国データバンクの調査では、包装・資材を値上げ要因に挙げた比率が69.8%でした。前年同月から10.5ポイント上がっています(2026年6月30日公表)。

パッケージのコストが、企業の価格判断にどの程度影響しているのかは、統計から確かめられます。帝国データバンクが2026年6月30日に公表した「食品主要195社」価格改定動向調査によれば、包装資材は値上げ要因の上位にあります。

帝国データバンク「食品主要195社」価格改定動向調査(2026年6月30日公表)
項目数値備考
2026年7月の値上げ品目数2,566品目単月で2,000品目超は2026年4月以来3か月ぶり
1回あたり平均値上げ率11%2026年7月分
値上げ要因「原材料高」92.5%最も高いが2026年3月以降は低下傾向
値上げ要因「物流費」71.9%2026年6月30日公表時点
値上げ要因「包装・資材」69.8%前年同月から10.5ポイント上昇
値上げ要因「中東情勢」24.7%2026年6月30日公表時点
2026年通年の値上げ品目数14,902品目1〜11月までの判明分
2026年8月の計画1,898品目同上公表時点の見通し
2026年9月の計画3,029品目2026年内で最多の見通し

包装・資材を要因に挙げた企業の比率は、前年同月から10.5ポイント上がり、69.8%に達しました。パッケージのコストが例外的な項目ではなく、価格判断の常設の要因になりつつあることを示しています。

同調査は、中東情勢の悪化による原油やナフサ高を受けて、トレーやフィルムの資材価格や原材料高の影響が表面化したと分析しています。それが、値上げ品目数を押し上げたという分析です。

数値の時点に注意します。同調査は毎月更新されるため、公表時点によって、同じ「7月の値上げ品目数」でも数値が異なります。2026年5月29日公表時点では、7月分は2,269品目、包装・資材は73.7%、中東情勢は22.7%とされていました。

この記事では、7月24日の時点で最新の2026年6月30日公表分を採用しています。ほかの資料と突き合わせるときは、公表時点を確かめる必要があります。

判断の時点と情勢にはずれがあり、確かめる項目は5つある

カルビーがカラー再開を決めた時点と、その後の情勢には時間差があります。色数削減を検討するときは、面の切り分けから戻す場合の条件まで、5つの項目を確かめます。

色数削減の動きが今後どう推移するかは、インキの調達環境に左右されます。ただし伊藤ハムの事例が示すように、削減分を価格に反映する設計であれば、調達環境が改善しても簡素な包装を維持する動機が残ります。

ここで注意したいのは、カルビーがカラー再開を決めた時点と、その後の情勢に時間差があることです。

判断時点と情勢のずれ

カルビーが表面フルカラー印刷の再開を発表したのは、2026年7月9日です。同社は調達状況を見極めながらの再開としており、その時点で原材料の調達に一定の見通しが立っていたことがうかがえます。

しかしその後、7月中旬以降に中東情勢は再び動いています。当社が別の記事で整理したとおり、ホルムズ海峡の通航は7月13〜19日の週に53隻と、前週比66%減になりました。7月23日には、紅海でサウジアラビアの石油タンカー2隻への攻撃が発表されました。ブレント原油は、7月24日0時22分に1バレル100.95ドルをつけています。

店頭展開は、フルグラが7月27日週以降、かっぱえびせんが8月3日週以降、ポテトチップスが8月10日週以降です。この記事を書いた7月24日の時点では、いずれもこれからです。予定どおり進むかどうかは今後の調達環境次第で、この時点では確定していません。

同社は「地政学的リスクを含む事業環境の変化に、機動的かつ柔軟に対応する」としています。この点は、こうした不確実性を前提とした表現として読めます。

色数削減を検討する際に確認する5項目

  • 対象を面単位で切り分けたか。商品全体で判断せず、表面・裏面・外装・個装のどこで削減するかを分けて検討します。カルビーが選んだのはこの形です。
  • 版代の償却期間を計算に入れたか。単色版の新規製作には、初期費用がかかります。年間発注量に対して、何回転で回収できるかを確かめます。情勢が短期で改善した場合、版代が回収前に不要になる可能性もあります。
  • 識別性への影響を金額に換算したか。削減額と、売上が何%下がると相殺されるかという分岐点を、同じ表に並べます。色で選ばれている商品ほど、慎重な検討が必要になります。
  • 切り替え期間を工程表に反映したか。デザインの作り直しと製版を含めると、発注から納品まで一定の期間がかかります。既存在庫の消化計画とあわせて組む必要があります。
  • 戻す場合の条件を決めてあるか。カルビーは約2か月で方針を見直しました。どの条件が満たされたらカラーに戻すのかを事前に決めておくと、判断が遅れにくくなります。

見ておく指標

  • インキメーカーの追加改定の有無。DICグラフィックスは、今後の原料市況や国際情勢の変動によっては、追加の価格改定や供給調整を行う可能性があるとしています。
  • アジアのナフサ価格と国産ナフサ基準価格。インキの原料である溶剤・樹脂の価格に先行します。スポットから通関価格まで約2か月、国産基準価格までは4か月前後の時差があります。
  • カルビーの店頭展開の進捗。8月10日週のポテトチップス展開が予定どおり進むかは、調達環境の実態を示す一つの指標になります。
  • 再開が発表されていない商品の扱い。「堅あげポテト」うすしお味・ブラックペッパー、「ポテトチップス」大容量160gの動向は、どの条件で判断が分かれるかを示す材料になります。
  • 帝国データバンクの月次調査における包装・資材の比率。2026年6月30日公表時点で69.8%です。この比率の推移が、業界全体のコスト圧力の方向を示します。
  • 包装簡素化を価格訴求に転化する商品の広がり。伊藤ハムの「サニープライス」は、2026年7月1日発売です。同種の設計が他社にも広がるかどうかが、見分ける材料になります。包装の簡素化が一時的な対応にとどまるのか、商品設計の選択肢として定着するのか、という点です。

情報の変化についての注意この記事は、2026年7月24日10時00分(日本時間)までに公表・確認された情報を対象としています。価格・数量・実施時期は各社の公表資料に基づくもので、以後変更される可能性があります。

掲載した参考価格は、特定条件下のものです。実際の調達にあたっては、自社の仕様で各社に見積を依頼してください。

よくある質問

白黒印刷にすると実際にどれだけコストが下がりますか

株式会社モロフジが公表しているグラビア印刷の参考価格では、A4サイズの楕円抜き袋1,000枚(印刷版代込み)が1色で51,480円、4色で180,730円です。差額は129,250円で、1色はフルカラーの28.5%にあたります。ただしこれは同社の特定条件下の参考価格であり、形状・サイズ・材質・ロット・分納の有無によって変動します。自社の仕様で見積を取ることが前提になります。

なぜ色数を減らすとこれだけ安くなるのですか

グラビア印刷では色ごとに版(シリンダー)を製作し、色数だけ印刷ユニットを通します。色数が減れば版の本数、インキの使用量、印刷工程の手間、色合わせの調整時間がいずれも減ります。特に版代は初期費用として1色ごとに発生するため、ロットが小さいほど1枚あたりの負担が大きく、色数削減の効果が出やすくなります。

カルビーはなぜ2か月で表面のカラー印刷を再開したのですか

同社は2026年7月9日、カラーパッケージが商品情報を適切に伝え、消費者が安心して商品を選ぶうえで重要な役割を担うとしたうえで、安定供給を最優先に調達状況を見極めながら、節約を継続してカラー印刷を再開すると発表しました。裏面は白黒を維持しており、全面復帰ではありません。ブランド識別に関わる面はカラーへ戻し、そうでない面で節約を続ける形です。

白黒化にはどのようなリスクがありますか

店頭での識別性が下がる点が最大の論点です。デザイン会社のプラグが10〜60代の男女3,000人を対象に実施した調査では、カルビーの白黒パッケージについて購入意向の低下が報じられています。色で味を判別してきた商品ほど影響が大きく、削減額と売上への影響を並べて評価する必要があります。加えて版の作り直しには初期費用と期間がかかります。

なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか

当社はプラスチックパレット、再生樹脂材料、PPバンド、ストレッチフィルムなどの物流資材を全国のお客様に供給する商社です。これらの資材はいずれも原油からナフサを経て製造される石油化学製品であり、包装資材のコスト構造と調達環境はお客様の実務に直結します。公表資料に基づく事実情報を、確認できる範囲を明示したうえで整理し、継続的に発信しています。

用語集12語
グラビア印刷

凹版の一種で、円筒状の版に彫った微細なくぼみにインキを詰めて転写する方式。食品袋やレトルトパウチなど軟包装の主力。写真の再現性が高く長尺の連続印刷に適する一方、版の製作費が高い。

フレキソ印刷

樹脂やゴムの凸版を使う方式。段ボールや紙器のほか軟包装にも使われる。グラビアに比べ版代が抑えられ、水性インキとの相性がよい。

オフセット印刷

版から一度ブランケットに転写し、そこから紙へ移す平版方式。チラシ、書籍、紙器など紙媒体の主力。軟包装のフィルムには適さない。

版代(製版費)

印刷用の版を製作する費用。色ごとに発生し、数量にかかわらずかかる初期費用のため、小ロットほど1枚あたりの負担が大きい。色数削減の効果が最も明確に表れる項目。

CMYK

シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色。この4色の重ね合わせで色を再現する方式をフルカラー(4色)印刷と呼ぶ。単色印刷はこのうち1色のみを使う。

特色

CMYKの掛け合わせではなく、あらかじめ調合されたインキで刷る色。DICやPANTONEなどの色見本番号で指定する。ブランドカラーの再現に用いられる。

白インク(白版)

透明フィルムに印刷する際、下地として敷く白色のインキ。上に刷る色の発色を支える役割を持つ。印刷適性の観点から使用できる種類が限られ、代替が難しい場合がある。

軟包装

フィルムや紙などの柔軟な材料を用いた包装の総称。食品袋、パウチ、ラミネートチューブなどが含まれる。グラビア印刷の主要な用途。

ノンソルベントラミネート

有機溶剤を使わずにフィルム同士を貼り合わせる加工方式。溶剤の調達リスクと排出を同時に抑えられる。設備と工程の変更を伴う。

経済ロット

製造効率上、1回の発注で確保したい最小の数量。軟包装では原反の長さ(メートル)で示されることが多い。これを下回ると1枚あたりの単価が上がる。

ナフサ

原油を蒸留して得られる軽質留分。エチレンなどの石化基礎原料を経て、樹脂・溶剤・顔料の出発点となる。印刷インキの原料もここに連なる。

楕円抜き袋

生地に楕円形の手穴を開けた形状の袋。小判抜き袋とも呼ぶ。持ち帰り袋として広く使われ、構造が簡素なため製造コストを抑えやすい。

出典・エビデンス一覧22件(一次資料6・報道12・技術解説1・当社の記事3)

価格・製品情報(一次資料)

報道

技術・業界解説

  • セキ株式会社「ナフサ不足でインクが足りない!2026年に印刷インク不足が起きた理由と“溶剤に頼らない”代替策」2026年6月8日
    https://works.seki.jp/column/naphtha/

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文:プラスチックパレット株式会社 編集部

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