航空貨物の運賃は実重量と容積重量の大きい方で決まる、2026年市況と輸出梱包の重量設計
輸出案件で航空便を使うとき、運賃はどこで決まるのか。実重量と容積重量の大きい方が課金重量になるという原則を押さえると、荷姿の設計が変わる。2026年の市況をIATAと日本銀行の統計で確認したうえで、梱包資材の自重差が運賃に反映される条件と反映されない条件を、1,100×1,100mmのパレットを例に計算で示す。
- 航空貨物の運賃は、実重量と容積重量を比べて大きい方を課金重量として算出する。容積重量は縦×横×高さ(cm)÷6000で求める。密度の高い貨物は実重量、かさばる貨物は容積重量で課金される。
- 2026年の航空貨物収入は前年比7.2%増の1,620億ドルとIATAが見込む。日本銀行の国際航空貨物輸送価格指数は2026年3月時点で119.1、前年同月比12.7ポイント上昇した。燃料費は営業費用の31.4%を占める。
- 梱包資材の自重差が運賃に効くかどうかは荷姿の密度で決まる。1,100×1,100×1,125mmの荷姿では容積重量が約226.9キログラムとなり、実重量がこれを下回れば自重差は課金重量に反映されない。
航空貨物の運賃は、実重量と容積重量の大きい方(課金重量)で決まる。容積重量は縦×横×高さ(cm)÷6000で算出する。2026年はIATAの航空貨物収入が前年比7.2%増の1,620億ドル、燃料費が営業費用の31.4%を占める。梱包の自重差が運賃に効くのは実重量が容積重量を上回る場合に限られる。
前年比 +7.2%・IATA
前年同月比 +12.7pt・日本銀行
燃料コスト3,500億ドル
÷6000換算による
CHAPTER 01航空貨物の運賃はどう決まるのか、実重量と容積重量と課金重量
輸出案件で航空便を使うとき、見積書に並ぶ数字の意味が分かりにくいことがある。まず運賃の骨格を押さえる。
課金の対象は「実重量」ではなく「課金重量」である
航空貨物の運賃は、実際に量った重量(実重量)にそのままレートを掛けて算出されるわけではない。実重量と容積重量を比べ、大きい方を課金重量(Chargeable Weight)として運賃を計算するのが原則である。
係数6000が意味するもの
この6000という数字は恣意的なものではない。1立方メートルは1,000,000立方センチメートルであり、これを6000で割ると約166.7キログラムとなる。つまり「1立方メートルの空間を166.7キログラム相当とみなす」という換算である。
航空機は重量と容積の両方で積載が制約される。軽くてかさばる貨物ばかりを積めば、重量に余裕を残したまま貨物室が埋まってしまう。逆に重くて小さい貨物ばかりでは、容積を残したまま重量制限に達する。容積重量という考え方は、この二重の制約を運賃に反映させるための仕組みである。
宅配便の料金が「3辺の合計」で決まるのをご存じの方は多い。あれも同じ発想で、軽くてかさばる荷物を実重量だけで課金すると採算が合わないため、サイズを基準に加えている。航空貨物の容積重量は、これをキログラム換算に置き換えたものと考えるとつかみやすい。
密度によって、どちらで課金されるかが変わる
| 貨物の性質 | 課金の基準 | 該当しやすい品目 |
|---|---|---|
| 密度が高い(重い) | 実重量で課金 | 金属部品、機械部品、液体、電池類 |
| 密度が低い(かさばる) | 容積重量で課金 | アパレル、樹脂成形品、緩衝材を多く使う精密機器 |
| 境界付近 | 荷姿次第で入れ替わる | 電子部品、医療材料など |
この区別が、第6章で扱う梱包資材の重量が運賃に効くかどうかの分岐点になる。運賃を下げたいときに何を優先すべきかは、自社の貨物がどちらに属するかで変わる。
係数6000は国際航空運送における一般的な換算であり、航空会社・フォワーダー・契約条件によって異なる係数が用いられる場合がある。実際の見積では、適用される換算方法を必ずご確認いただきたい。
CHAPTER 022026年の航空貨物市況、IATAと日本銀行の統計で見る
2026年の航空貨物は、運賃と数量の両方が前年を上回って推移している。中東情勢に起因する燃料価格の上昇が運賃に反映される一方、荷動きそのものは堅調という構図である。
世界市場の見通し
IATA(国際航空運送協会)は2026年6月の年次総会で、同年の業界見通しを公表した。航空貨物収入は前年比7.2%増の1,620億ドルを見込むとしている。旅客も含めた業界全体の総収益は9.4%増の1兆1,650億ドルで、過去最高水準となる見通しである。
日本の価格指数
日本国内の実勢を見るうえで参考になるのが、日本銀行が公表する企業向けサービス価格指数である。このうち国際航空貨物輸送の指数は次のように推移している。
| 時点 | 指数(2020年=100) | 備考 |
|---|---|---|
| 2020年1月 | 70.8 | 統計上の最小値 |
| 2022年6月 | 212.1 | 統計上の最大値 |
| 2026年3月 | 119.1 | 前年同月比 +12.7ポイント |
日本銀行「企業向けサービス価格指数」の国際航空貨物輸送。2026年4月24日公表分による。期間平均は124.6。
2026年3月の119.1は、2020年を100とした水準から19.1ポイント高い一方、2022年6月に記録した212.1と比べれば約56%の水準にとどまる。コロナ禍のピーク時ほどではないが、平時より明確に高いという位置づけである。
数量面の動き
数量では、航空貨物フォワーダー主要5社(日本通運、近鉄エクスプレス、郵船ロジスティクス、西日本鉄道、阪急阪神エクスプレス)の2026年5月の日本発輸出航空混載重量が、前年同月比12%増の45,394トンとなった。運賃が上がるなかでも、荷動き自体は前年を上回って推移している。
通常、運賃の上昇は数量の抑制につながることが多い。2026年に両方が前年を上回っているのは、運賃上昇の主因が需要側の集中ではなく、燃料費という供給側のコスト要因にあるためと整理できる。荷主から見れば、輸送量を減らさないまま単価だけが上がっている状態にあたる。
CHAPTER 03燃料費が営業費用の31.4%を占める構造
運賃上昇の起点は燃料費である。IATAの2026年見通しから、その規模を確認する。
| 項目 | 2025年 | 2026年見通し | 変化 |
|---|---|---|---|
| ジェット燃料価格 | 1バレル90ドル | 152ドル | 約 +70% |
| 燃料コスト総額 | 2,520億ドル | 3,500億ドル | +38.9% |
| 営業費用に占める燃料費 | ― | 31.4% | ― |
| 業界純利益 | 450億ドル | 230億ドル | 約 −49% |
| 純利益率 | 4.2% | 2.0% | −2.2pt |
IATA第82回年次総会(ブラジル・リオデジャネイロ)で公表された2026年見通しによる。2025年の値は推計。
営業費用の3割強を燃料費が占める状態では、価格の変動をコスト削減で吸収することは難しい。IATAのウィリー・ウォルシュ事務局長は、ジェット燃料価格の約70%の上昇がすべての航空会社の収益に影響しているとしたうえで、小規模な航空会社の破綻の可能性や、不採算路線の削減に伴って運賃が高止まりする可能性に言及している。
地域による差
地域別では差が大きい。紛争の中心地である中東の航空会社は43億ドルの赤字に転落すると見込まれる一方、アジア太平洋・アフリカ・欧州・中南米・北米はいずれも黒字を保つ見通しである。ただし各地域とも従前の予測水準は下回る。ウォルシュ事務局長は、中東の影響を除けば3.5%の成長を見込んでいるとも述べている。
燃料以外の費用も増加している。SAF(持続可能な航空燃料)の追加購入コストは43億ドルの見込みで、2026年に利用可能なSAFは240万トン、総燃料消費の0.8%に相当する。CORSIA(国際航空のためのカーボン・オフセットおよび削減制度)の遵守費用は12億ドルから16億ドルと見込まれている。
CHAPTER 04燃油サーチャージは貨物にもかかる
燃油サーチャージは旅客だけの仕組みではない。航空貨物にも設定されており、しかも旅客とは改定の頻度が異なる。この違いは見積の読み方に影響する。
旅客と貨物の違い
| 項目 | 旅客(ANA・JAL国際線) | 貨物(一般的な例) |
|---|---|---|
| 基準となる指標 | シンガポールケロシン価格と為替 | シンガポールケロシン価格 |
| 参照する期間 | 直近2カ月の平均 | 前月の平均 |
| 改定の頻度 | 2カ月ごと | 月2回(1日と16日)の例がある |
| 課金の単位 | 1旅客1区間片道 | 1キログラムあたり |
| 金額の設定 | 路線区分ごとの定額 | 事業者ごとに異なる |
貨物側の記載は、日本発輸出貨物について燃油サーチャージ設定基準を公表している事業者の例による。適用条件は事業者ごとに異なる。
実務上の含意は2つある。第一に、貨物のサーチャージは旅客より早く市況を反映する。前月平均を参照し月2回改定する運用であれば、旅客の2カ月平均・2カ月ごとの改定より時間差が小さい。第二に、キログラム単位で課金されるため、課金重量が大きいほどサーチャージの総額も増える。運賃レートを下げる交渉だけでなく、課金重量そのものを抑える設計が効いてくる理由がここにある。
燃料費が運賃に占める比重
燃油サーチャージが別建てで設定されるのは、燃料価格の変動を運賃本体から切り離して調整するためである。第3章で見たとおり、2026年は燃料費が航空会社の営業費用の31.4%を占める見通しにある。運賃本体だけで吸収できる規模ではない。
荷主の側から見ると、これは見積の総額に占めるサーチャージの比率が高まりやすい局面にあることを意味する。運賃レートの交渉で数パーセントを詰めても、サーチャージの改定でそれを上回る変動が生じうる。
貨物のサーチャージが月2回改定される運用であれば、出荷の時期によって適用される料率が変わる。継続的に出荷がある場合は、改定日を把握したうえで、月内のどのタイミングで手配するかを検討する余地がある。ただし在庫を持つ期間の費用や納期の制約と見合うかは別途の判断となる。
航空貨物の見積では、運賃レートと燃油サーチャージが別建てで示されるのが通例である。レートだけを比べると、サーチャージの設定が高い事業者のほうが安く見えることがある。比較の際は「レート+燃油サーチャージ+保安料などの付帯費用」の総額でそろえる必要がある。
CHAPTER 05減便とベリースペースの縮小が積載能力に及ぶ経路
航空貨物は、貨物専用機だけで運ばれているわけではない。旅客機の床下にある貨物室、いわゆるベリースペースが世界の航空貨物輸送の相当部分を担っている。このため、旅客便の運航状況が貨物のスペース需給に直結する。
減便はスペースの減少を意味する
2026年は燃料価格の上昇を受けて、各社が運航計画を削減した。ルフトハンザグループは10月までに短距離2万便、ユナイテッド航空は第2四半期から第3四半期にかけて全体の約5%を削減している。2026年5月には世界の運航計画から12,000便から13,000便が削られ、約200万席が減少した。
旅客側の座席が減れば、同じ機体のベリースペースも同時に失われる。貨物の荷動きが変わらなくても、供給される腹部スペースだけが減るという状態が生じる。
迂回と燃料搭載量がペイロードを圧迫する
中東の空域を回避する運航では、飛行距離が延びる分だけ搭載する燃料が増える。航空機には最大離陸重量という制約があり、燃料を多く積めばその分だけ搭載できる貨物と旅客が減る。1便あたりの輸送効率が下がるため、同じ量を運ぶのに必要な便数が増え、単位あたりのコストが上昇する。
燃料価格に地域差がある局面では、価格の安い出発地で往復分の燃料を積み込む運用(フューエル・タンカリング)が採られることがある。これは燃料費の節約になる一方、機体重量の増加によって燃費が悪化し、搭載可能な貨物スペースも減る。いずれの選択も、貨物側から見れば積載能力の低下として現れる。
ジェット燃料価格の推移と各社の削減規模については、当社の別稿「ジェット燃料が4月209ドルから7月116ドルへ」で週次データとともに整理している。本章では貨物スペースへの波及に絞って扱う。
CHAPTER 06輸出梱包の重量が運賃に効く条件と効かない条件
ここが本記事の中心である。「梱包が軽ければ航空運賃が下がる」という説明を目にすることがあるが、これは常に成り立つわけではない。第1章で見たとおり、運賃は実重量と容積重量の大きい方で決まるためである。
1,100×1,100mmの荷姿で計算する
輸出でよく使われる1,100×1,100mmのパレットに、高さ1,000mmまで貨物を積んだ荷姿を考える。パレットの高さを125mmとすると、荷姿全体の外寸は1,100×1,100×1,125mmとなる。
パレット単体で見ると、1,100×1,100×125mmの容積重量は25.2キログラムである。パレットの実重量が7.0キログラムであっても10.0キログラムであっても、容積の観点では同じ25.2キログラム分の空間を占めることになる。
貨物の重量別に課金重量を並べる
当社が取り扱う輸出向けパレットには、自重7.0キログラムの軽量タイプと、自重10.0キログラム程度の標準タイプがある。この3キログラムの差が課金重量にどう現れるかを、貨物の重量別に整理する。
| 貨物の重量 | 軽量7.0kg併用 実重量/課金重量 |
標準10.0kg併用 実重量/課金重量 |
課金の基準 | 自重差の反映 |
|---|---|---|---|---|
| 100kg | 107.0 / 226.9kg | 110.0 / 226.9kg | 容積重量 | なし |
| 150kg | 157.0 / 226.9kg | 160.0 / 226.9kg | 容積重量 | なし |
| 200kg | 207.0 / 226.9kg | 210.0 / 226.9kg | 容積重量 | なし |
| 250kg | 257.0 / 257.0kg | 260.0 / 260.0kg | 実重量 | 3.0kgが反映 |
| 300kg | 307.0 / 307.0kg | 310.0 / 310.0kg | 実重量 | 3.0kgが反映 |
荷姿1,100×1,100×1,125mm、容積重量226.9kgを前提とした計算例。実際の運賃は路線・時期・契約条件によって異なり、換算係数も事業者によって異なる場合がある。
この荷姿では、貨物とパレットを合わせた実重量が226.9キログラムを超えたときに初めて実重量で課金される。貨物単体で言えば、軽量タイプ併用なら約219.9キログラム、標準タイプ併用なら約216.9キログラムが分かれ目となる。これを下回る荷姿では、パレットを軽くしても課金重量は226.9キログラムのまま変わらない。
では、軽量パレットに意味がないのか
そうではない。整理すると次のようになる。
| 状況 | 自重を抑える効果 | 優先すべき対策 |
|---|---|---|
| 実重量で課金される荷姿 (密度の高い貨物) |
課金重量にそのまま反映される | パレットの自重削減、梱包材の軽量化 |
| 容積重量で課金される荷姿 (かさばる貨物) |
課金重量には反映されない | 荷姿の高さを抑える、隙間を減らす、パレットの厚みを見直す |
| 境界付近の荷姿 | 自重削減により容積重量側へ切り替わる可能性がある | 両方を同時に検討する |
また、課金重量に反映されない場合でも、自重の削減は取扱い作業の負担軽減や、混載時の他貨物との積み合わせの自由度に寄与する。運賃だけを判断軸にすると見落とす効用がある点は付け加えておきたい。
(1) 自社の荷姿の外寸(縦・横・高さ)と実重量を、パレットを含めた状態で把握しているか。
(2) その荷姿は実重量と容積重量のどちらで課金されるか、計算して確かめたか。
(3) フォワーダーが用いる換算係数(6000など)を確認したか。
CHAPTER 07プラスチックパレットと木材こん包材、ISPM No.15の扱い
輸出で使うパレットを選ぶ際、運賃と並んで論点になるのが植物検疫上の取扱いである。ここは誤解が生じやすいため、国際基準の原文にあたって整理する。
ISPM 15は「生木から作られた木材こん包材」を対象とする基準である
ISPM 15の序論には、適用範囲が次のとおり記されている。
ここで押さえておきたいのは、プラスチック製の梱包材は「対象外と規定されている」のではなく、そもそもこの基準の適用範囲に入っていないという点である。基準が対象としているのは生木から作られた木材こん包材であり、材質が木でなければ最初から議論の外にある。結論として処理やマークの表示を要しない点は変わらないが、根拠の位置づけは異なる。
木材であっても対象外となるものがある
もう一つの誤解しやすい点が、木材だからといってすべてが対象になるわけではないということである。ISPM 15の「2.1 除外規定」には、リスクが十分に低いとして基準の規定から免除される品目が列挙されている。
| 除外規定に列挙されている品目 |
|---|
| 全てが薄い木材(厚みが6ミリメートル以下)で作製された木材こん包材 |
| 接着剤、熱若しくは圧力、又はそれらの組合せで製造された合板、パーティクルボード、配向性ストランドボード又はベニヤといった加工木材で全てが作製された木材こん包 |
| 製造工程で加熱処理されたワイン及び蒸留酒用の樽 |
| 有害動植物が存在しない状態にする方法で加工及び/又は製造された木材から作られたワイン、葉巻き及びその他の商品用の贈答用箱 |
| おが屑、かんな屑及び木毛 |
| 貨物車両及びコンテナに恒久的に装着された木製部品 |
ISPM 15「2.1 除外規定」より。列挙されているのはいずれも木材由来のものであり、プラスチック等の非木材は除外規定ではなく適用範囲の外にある。なお贈答用箱と樽については、すべてが有害動植物の存在しない状態にする方法で作成されているとは限らず、一定の種類のものは適用範囲に含まれるとみなされることがあるとの注記がある。
合板やOSBなどの加工木材が除外されるのは、製造工程で接着剤・熱・圧力が加わり、有害動植物が存在しなくなるためである。木製パレットのすべてが処理とマークを要するわけではないという点は、梱包資材を選ぶ際に押さえておきたい。
対象となる木材こん包材に求められる処理
対象となる木材こん包材には、樹皮を除去した木材の使用と、承認された処理の適用が求められる。処理には4種類があり、それぞれマークに表示するコードが定められている。
| 処理コード | 処理の種類 | 基準(要点) |
|---|---|---|
| HT | 熱処理(従来の蒸気・キルンドライ) | 木材の断面全体(中心部を含む)が連続して最低30分間、少なくとも56℃に達すること |
| DH | 誘電加熱(マイクロ波・高周波) | 木材断面全体(表面を含む)にわたって連続する1分間、少なくとも60℃に到達すること |
| MB | 臭化メチルくん蒸 | 温度帯ごとの濃度・時間積を24時間以上で達成。横断面の最小寸法が20cmを超える木片を含むものには実施不可 |
| SF | フッ化スルフリルくん蒸 | 温度帯ごとの濃度・時間積を24時間以上または48時間以上で達成。木材の最低温度は20℃以上 |
マークは、シンボル・国コード(ISOの2文字)・生産者/処理実施者コード・処理コードの4つの構成要素からなる。判読可能で、耐久性があり移動不可能であること、木材こん包の使用時に見やすい場所に、なるべく向かい合った両側に付されることが求められ、手描きは認められない。危険物のラベルと紛れるため赤色・オレンジ色の使用は避けるべきとされている。
リユースで扱いが分かれる、修理と再製造の境界
当社は再生・リユースのパレットも取り扱っている。この観点で重要なのが、ISPM 15が定める再利用・修理・再製造の区分である。
| 区分 | 定義 | 求められる対応 |
|---|---|---|
| 再利用 | 処理・マーク済みで、修理・再製造その他の変更がなされていないもの | 使用期間を通じて再処理・マークの再適用を必要としない |
| 修理 | 構成要素の約3分の1以下が取り外され交換されたもの | 処理された木材または加工済み木材のみ使用可。追加した構成部材にはそれぞれ個別にマークが必要 |
| 再製造 | 構成部材の約3分の1より多くが交換されたもの | 以前のマークをすべて恒久的に抹消(塗りつぶしまたは削り取り)し、再処理のうえ新たにマークを付す |
木製パレットを繰り返し使う場合、どこまでが修理でどこからが再製造かによって求められる対応が変わる。構成部材の3分の1という境界を管理し、修理では追加部材ごとにマークを付し、再製造では旧マークを消して再処理する必要がある。複数のマークが付いたユニットは、有害動植物が発見された際に生産国の特定を困難にするため、修理が行われる国の当局がマークの数を制限することが推奨されてもいる。プラスチックパレットにはこの管理が発生しない。これは輸出でリユースを前提とする場合、運賃とは別の判断材料になる。
不適合が見つかった場合の措置
要求されたマークがない場合や、有害動植物の発見により処理が有効でなかったと判断された場合、輸入国の当局は措置を講じる。ISPM 15には、留め置きのうえ、必要に応じて不適合材の除去・処理・破壊または返送という形をとる場合があると記されている。安全な廃棄方法の例としては、焼却、承認された場所での地中2メートル以上への埋没、加工、輸出国への返送などが挙げられている。
納期の観点では、この措置が生じること自体が損失になる。現地での処理や積戻しには時間と費用がかかり、輸送の遅延につながる。木材こん包材を使う場合は、マークの有無と状態を出荷前に確認する工程が必要となる。
ISPM 15は国際基準であり、その適用や運用は国によって差がある。独自の規制を設けている国もある。実際の輸出にあたっては、農林水産省植物防疫所の案内および相手国の要件を必ずご確認いただきたい。本記事の記載は基準の原文に基づく一般的な整理であり、個別案件の適法性を保証するものではない。
運賃の観点から見た木材との違い
航空運賃の計算という観点では、重量のばらつきの小ささが実務上の利点になる。木材は含水率によって重量が変動するため、同じ規格でも1枚あたりの重量に幅が出る。実重量で課金される荷姿では、この変動がそのまま課金重量の不確実性につながる。樹脂製は個体差が小さく、事前に荷姿の実重量を精度よく見積もれる。
CHAPTER 08荷姿設計でコストを抑える実務
課金重量を抑える打ち手は、大きく3つの軸に整理できる。自社の貨物がどちらで課金されているかによって、優先順位が変わる。
高さ1cmあたりの容積重量は、110cm×110cm×1cm÷6000=約2.0キログラムとなる。荷姿の底面積が変われば、この係数も変わる。
実務チェックリスト
- パレットを含めた荷姿の外寸(縦・横・高さ)を実測する
- パレットを含めた実重量を実測する
- 容積重量を計算し、実重量とどちらが大きいかを判定する
- フォワーダーが用いる換算係数を確認する
- 見積はレートと燃油サーチャージを合算した総額で比較する
- 燃油サーチャージの改定タイミング(月2回の例がある)を確認する
- 容積重量勝ちであれば、高さと隙間の見直しを優先する
- 実重量勝ちであれば、パレット・梱包材の自重削減を検討する
- 輸出先国の植物検疫要件を植物防疫所および相手国の情報で確認する
海上輸送との比較も判断材料になる
航空運賃が上昇する局面では、輸送手段そのものの見直しも選択肢になる。海上コンテナは容積と重量の制約の考え方が異なり、リードタイムと在庫コストのトレードオフが生じる。納期要件が許すのであれば、一部を海上に振り替えることで総物流コストが下がる場合がある。判断には、運賃差だけでなく、在庫を持つ期間の資金負担も含めた比較が必要となる。
CHAPTER 09見通しとモニタリング指標
航空貨物のコストは、燃料市況・スペース需給・為替の3つが重なって決まる。2026年7月26日時点で方向は一意に定まっていないため、予想ではなく確認すべき指標を挙げる。
| # | 指標 | 公表元・頻度 | 着眼点 |
|---|---|---|---|
| 1 | Jet Fuel Price Monitor | IATA・週次 | 燃料市況の方向。2026年7月1日時点で1バレル116.63ドル |
| 2 | 企業向けサービス価格指数 (国際航空貨物輸送) |
日本銀行・月次 | 日本発の運賃水準。2026年3月時点で119.1 |
| 3 | 日本発輸出航空混載重量 | フォワーダー主要5社・月次 | 荷動きの実勢。2026年5月は45,394トン |
| 4 | 貨物の燃油サーチャージ | 各事業者・月2回の例 | 旅客より早く市況を反映する |
| 5 | ドル円レート | 日次 | ドル建て運賃の円換算額に直結する |
方向を左右する要素
| 要素 | 2026年7月時点の状況 | 運賃への向き |
|---|---|---|
| 燃料市況 | 4月のピークから7月1日に116.63ドルまで低下したが、7月12日以降に原油が反発 | 不確実 |
| ベリースペース | 減便が続き、旅客便由来のスペースは減少 | 押し上げ |
| 荷動き | 日本発輸出混載重量は前年同月比12%増 | 押し上げ |
| 為替 | 円安方向で推移 | 円建てコストの押し上げ |
指標を見る頻度の目安
すべてを同じ頻度で追う必要はない。燃料市況と為替は日次から週次で動くが、これらは荷主が制御できない。一方、自社の荷姿と出荷の構成は、四半期に一度でも見直せば十分に効果がある。日々の変動に反応するより、自社の代表的な荷姿について課金の基準がどちらなのかを一度確定させ、それに応じた対策を打つほうが実効性が高い。
上記4つの要素は、いずれも荷主が直接動かせるものではない。一方で課金重量は、荷姿の設計によって荷主側で下げられる。市況が上昇する局面ほど、単価交渉と並行して課金重量そのものを見直す意味が大きくなる。第6章と第8章で整理した判定を、まず自社の代表的な荷姿に当てはめて確認されたい。
CHAPTER 10用語集
Chargeable Weight。運賃の計算に用いる重量。実重量と容積重量を比べ、大きい方が採用される。
Volumetric Weight。荷姿の外寸から算出する仮想的な重量。一般に縦(cm)×横(cm)×高さ(cm)÷6000で求める。1立方メートルを約166.7キログラムとみなす換算にあたる。
Actual Weight。梱包材やパレットを含めた、実際に計量した重量。総重量(Gross Weight)とも呼ばれる。
旅客機の客室床下にある貨物室。旅客便の運航状況が、そのまま貨物のスペース供給に影響する。
利用航空運送事業者。航空会社からスペースを仕入れ、複数の荷主の貨物をまとめて(混載して)輸送する事業者。
燃料価格の変動分を運賃とは別建てで請求する仕組み。貨物では1キログラムあたりで設定され、事業者によっては月2回改定される。旅客の2カ月ごとの改定より市況の反映が早い。
航空機が搭載できる旅客・貨物・郵便物の総重量。最大離陸重量から機体重量と燃料重量を差し引いた残りであり、燃料搭載量が増えるほど圧迫される。
燃料価格の安い空港で往復分の燃料を積み込む運用。燃料費を抑えられる一方、機体重量の増加で燃費が悪化し、搭載可能な貨物量も減少する。
生木から作られた木材こん包材を通じた病害虫の移動を防ぐことを目的とした国際基準。対象となる木材こん包材には樹皮を除去した木材の使用と承認された処理(HT・DH・MB・SF)、処理済みマークの表示が求められる。プラスチック製など非木材の梱包材はそもそも適用範囲に含まれない。木材であっても厚さ6mm以下の薄い木材や合板などの加工木材は除外規定により免除される。
日本銀行が公表する統計で、国内企業間で取引されるサービスの価格動向を示す。国際航空貨物輸送はその内訳項目の一つで、日本発の運賃水準を把握する参考指標となる。
CHAPTER 11出典・エビデンス一覧
統計・業界団体
- 日本海事新聞「航空貨物ニュース」(IATAが2026年7月7日に公表した収益見通し。2026年の航空貨物収入が前年比7.2%増の1,620億ドルとなる見通しの根拠。フォワーダー主要5社の2026年5月の日本発輸出航空混載重量45,394トン・前年同月比12%増の根拠)|https://www.jmd.co.jp/articleList.php?category=air_cargo
- GD Freak「国際航空貨物輸送の価格指数の推移」2026年4月25日(日本銀行 企業向けサービス価格指数 国際航空貨物輸送の2026年3月119.1・前年同月比+12.7ポイント、最大値212.1・2022年6月、最小値70.8・2020年1月、平均124.6の根拠)|記事ページ
- トラベルボイス「世界の航空業界、2026年純利益は半減か」2026年6月8日(IATA第82回年次総会の2026年見通し。ジェット燃料90ドル→152ドル、燃料コスト2,520億→3,500億ドル、営業費用の31.4%、純利益230億ドル、純利益率2.0%、旅客数51億人、総収益1兆1,650億ドルの根拠)|https://www.travelvoice.jp/20260608-159933
- 訪日ラボ「2026年の航空業界、中東情勢によって純利益半減の見通し」2026年6月18日(ウォルシュ事務局長の発言、中東の航空会社43億ドル赤字の根拠)|https://honichi.com/news/2026/06/18/iata-middleeast/
- Aviation Wire「世界の航空会社、2026年は純利益半減230億ドル 中東混乱と燃油高=IATA第82回年次総会」(SAF追加購入コスト43億ドル・利用可能量240万トン・総燃料消費の0.8%、CORSIA遵守費用12〜16億ドルの根拠)|https://www.aviationwire.jp/archives/345091
運賃の仕組み・実務
- HUNADE「航空貨物の運賃はどう決まる?計算式・見積もり方法・費用交渉まで徹底解説」(燃油サーチャージが航空運賃とは別に発生し事業者ごとに設定額が異なること、見積はレートと燃油サーチャージの合計で比較すべきことの根拠)|https://hunade.com/air-transport-quote
- ECMS「FUEL SURCHARGE - 燃油サーチャージ」(日本発輸出貨物の燃油サーチャージがシンガポールケロシン価格を基準とし、前月平均を指標として毎月1日と16日に更新される運用例の根拠)|https://www.ecmsglobal-jp.com/ese-pricelisttop/surcharges
- 日本経済新聞「米国向け航空貨物運賃、高値続く 東南アジア・台湾発が下支え」2025年12月(航空貨物が貨物専用機と旅客機のベリースペースで運ばれ、フォワーダーが航空会社からスペースを仕入れる構造の根拠)
燃料市況・当社関連記事
- 「ジェット燃料が4月209ドルから7月116ドルへ、欧州「6週間分」警告が現実化しなかった3つの理由と再上昇局面」(IATA週次指標の推移、各社の減便規模、2026年5月に世界で12,000〜13,000便・約200万席が削減された根拠を含む)
- 「ANA・JALの燃油サーチャージと経営への影響」(旅客側の燃油サーチャージの仕組み)
- 植物検疫措置に関する国際基準 ISPM 15「国際貿易における木材こん包材の規制」2018年採択(農林水産省 横浜植物防疫所による仮訳)。第7章に記載した適用範囲、2.1除外規定の6項目、承認された処理HT/DH/MB/SFの基準、マークの4構成要素と表示要件、再利用・修理・再製造の区分と構成部材3分の1の境界、不適合時の措置と安全な廃棄方法の根拠。本資料は当社が直接取得して確認した|仮訳PDF
- 農林水産省 植物防疫所「木材こん包材の輸出入」(輸出用木材こん包材消毒実施要領および相手国要件の確認先)|https://www.maff.go.jp/pps/j/konpozai/index.html
FAQよくある質問
航空貨物の運賃はどのように決まるのか。
実重量と容積重量を比べ、大きい方を課金重量として運賃が算出される。容積重量は一般に縦(cm)×横(cm)×高さ(cm)÷6000で求める。この6000という係数は1立方メートルを166.7キログラムとみなす換算に相当し、航空機の積載が重量と容積の両方で制約されることを反映している。運賃はこの課金重量にレートを乗じた額に、燃油サーチャージや保安料などの付帯費用を加えた総額となる。密度の高い貨物は実重量、かさばる貨物は容積重量で課金される。
2026年の航空貨物市況はどうなっているのか。
運賃は上昇している。IATAは2026年の世界の航空貨物収入を前年比7.2%増の1,620億ドルと見込んでいる。日本国内では、日本銀行の企業向けサービス価格指数のうち国際航空貨物輸送が2026年3月時点で119.1(2020年=100)となり、前年同月比で12.7ポイント上昇した。ただし2022年6月の212.1という過去最大値には達していない。数量面では、フォワーダー主要5社の2026年5月の日本発輸出航空混載重量が前年同月比12%増の45,394トンとなっている。
パレットの自重が軽いと航空運賃は安くなるのか。
条件による。運賃は実重量と容積重量の大きい方で決まるため、自重の差が課金重量の差になるのは、荷姿の実重量が容積重量を上回る場合に限られる。1,100×1,100mmで高さ1,125mmの荷姿を例にとると、容積重量は約226.9キログラムとなる。この場合、貨物とパレットを合わせた実重量が約227キログラムを超えていれば自重差3キログラムがそのまま課金重量の差となるが、実重量が226.9キログラムに満たなければ容積重量で課金されるため、自重差は運賃に反映されない。密度の高い貨物ほど自重差が効きやすい。
プラスチックパレットは輸出時に燻蒸処理が必要か。
ISPM No.15は生木から作られた木材こん包材を対象とする国際基準であり、プラスチック製の梱包材は対象外と規定されているのではなく、そもそも適用範囲に含まれない。このためプラスチックパレットは熱処理や燻蒸処理、処理済みを示すマークの表示を要しない。なお木材であっても、厚さ6ミリメートル以下の薄い木材や、接着剤・熱・圧力で製造された合板・パーティクルボード・配向性ストランドボード・ベニヤなどの加工木材で全てが作製された木材こん包は、除外規定により基準の適用から免除される。輸出先国が独自の規制を設けている場合があるため、実際の輸出にあたっては農林水産省植物防疫所の案内および相手国の要件を必ずご確認いただきたい。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか。
当社は千葉県我孫子市を拠点に、プラスチックパレット・再生樹脂原料・PPバンド・ストレッチフィルム等の物流資材をお取扱いしている。輸出梱包に用いるパレットは航空貨物と海上輸送の双方で使われるため、運賃の決まり方が製品選定に直結する。一方で、軽量であれば必ず運賃が下がるという説明は正確ではなく、荷姿の密度によって結果が変わる。取扱いの立場から、その分岐点を計算例で示しておくことが実務の判断に役立つと考え、本記事を作成している。
- 本記事は2026年7月26日時点で確認できた統計・業界団体の公表内容および報道をもとに、当社が整理したものである。航空貨物の運賃・燃油サーチャージ・燃料市況・為替は日々変動するため、記載した数値はいずれも執筆時点のものであり、その後の推移により状況が変わる。
- 第1章および第6章で用いた容積重量の換算係数6000は、国際航空運送における一般的な換算である。航空会社・フォワーダー・契約条件によって異なる係数が用いられる場合があり、実際の見積では適用される換算方法を必ずご確認いただきたい。
- 第6章の計算例は、荷姿を1,100×1,100×1,125mmと仮定し、当社が取り扱う輸出向けパレットの自重(軽量タイプ7.0キログラム、標準タイプ10.0キログラム程度)を用いた当社による試算である。実際の運賃は路線・時期・契約条件・貨物の性質によって異なり、本記事の計算がそのまま個別案件に当てはまることを保証するものではない。具体的な条件は各フォワーダーの見積でご確認いただきたい。
- 第7章のISPM 15に関する記載は、農林水産省横浜植物防疫所による仮訳(2018年採択版)を当社が直接確認したうえで整理したものである。ただし仮訳には業務の参考のためのものである旨が明記されており、利用者の責任において用いるべきものとされている。同基準の適用や運用は国によって差があり、独自の規制を設けている国もある。実際の輸出にあたっては、農林水産省植物防疫所の案内および相手国の要件を必ずご確認いただきたい。本記事の記載は個別案件の適法性を保証するものではない。
- 本記事で用いたIATAの見通し、日本銀行の統計値、フォワーダーの輸送実績は、いずれも報道機関および集計媒体を経由して取得したものであり、当社が公表元の原資料を直接確認したものではない。出典欄では取得経路を「二次」と表記している。正確な数値が必要な場合は、各公表元の資料を直接ご参照いただきたい。