醤油・味噌・食用油の価格構造2026|原料相場と容器コストの二層を解読
2026年の食品値上げは、品目数だけを見れば前年から大きく減っている。それでも調味料の改定が続いているのは、値上げの理由が変わったためである。原料が上がったから上げる、という従来の説明では届かない。食用油の主因は米国の燃料政策、そして容器はナフサ由来の樹脂。原因の異なる二つの層を、各社の公表資料から分離して整理する。
- 2026年の食品値上げは品目数で前年同期比6割減のペースにある。それでも調味料は分野別で最多の2,053品目が改定対象となっており、値上げの量ではなく理由の内訳が変わっている。
- 帝国データバンクの調査では、値上げ要因として包装・資材を挙げる割合が前年の60.2%を大幅に上回り2023年以降で最高ペースとなった。中東情勢の悪化に伴う包装資材費の高騰による値上げが出始めたとされる。
- 食用油の主因は米EPAのバイオ燃料政策であり、メーカーの一部は原油価格上昇とは直接関係がないと説明している。一方で容器はナフサ由来であり、調達難から販売休止に至った事例も出ている。
2026年の調味料は、値上げの理由が原料から容器へ移りつつある。値上げ品目数は前年同期比6割減のペースにある一方、包装・資材を要因とする値上げは2023年以降で最高ペースとなり、分野別では調味料が2,053品目で最多。食用油は米EPAのバイオ燃料政策、容器はナフサ由来樹脂と、原因が分かれている。
(2026年1〜9月・分野別最多)
混合義務量(2025年比)
(2026年6月1日納品分)
一時販売休止(ミツカン)
CHAPTER 012026年、調味料の値上げは理由が変わった
食品の値上げが報じられるとき、多くの記事が扱うのは「何品目が上がるか」である。しかし2026年に注目すべきは品目数ではない。値上げの理由の内訳が変わっていることのほうが、調達判断にとって重要な変化である。
品目数は減っている
帝国データバンクの2026年4月調査によると、主要な食品メーカー195社における2026年の値上げは1〜9月までの累計で6,290品目となった。年間の値上げ品目予定が1万品目を超えていた前年同時期(2025年4月調査時、1万4,409品目)と比べると、前年比6割減のペースで推移している。1回当たりの平均値上げ率は15%で、前年通年と同程度の水準にある。
数字だけを見れば、値上げの動きは沈静化しつつあるように見える。ところが分野別に見ると、「調味料」が2,053品目で最多となっている。以下、加工食品1,993品目、酒類・飲料1,074品目、菓子593品目と続く。全体が減るなかで調味料が最も多いという構図である。
要因の内訳で起きていること
同じ調査では、値上げの要因についても集計されている。ここに2026年の特徴が現れている。
値上げ要因として「包装・資材」を挙げる割合が前月を上回り、4月調査時の水準としては前年(60.2%)も大幅に上回った。年間では2023年以降で最高ペースでの推移となっている。従前から続いた資材高の影響を受けた値上げが中心だったものの、中東情勢の悪化に伴う包装資材費の高騰による値上げが出始めたとされる。
一方、他の要因は低下している。物流費は73.6%、エネルギーは59.5%、人件費は49.4%で、いずれも前月調査時から下がった。とくに人件費由来の値上げは、最も高い割合を占めた2月時点の66.2%から低下傾向が続き、全体の半数を下回って年内としては最小となっている。
・2026年の食品値上げは品目数では前年比6割減のペースにある
・その一方で分野別では調味料が2,053品目で最多となっている
・値上げ要因のうち「包装・資材」だけが上昇し、2023年以降で最高ペースに達している
・つまり調味料の値上げは、原料ではなく容器や包材を理由とする比重が高まっている
本記事では、この構造を「中身の原料相場」と「容器・包装材のコスト」という二つの層に分けて整理する。同じ調味料の値上げでも、この二層は原因も動き方もまったく異なる。
CHAPTER 022026年2月〜9月、調味料の価格改定 時系列
調味料の価格に直接関係した出来事を時系列で整理する。国際情勢そのものの全体像は、上位ハブ記事である【イラン情勢2026完全まとめ】米・イラン対立・ホルムズ海峡と日本産業への影響を参照されたい。
| 時期 | 出来事 | どの層に効くか |
|---|---|---|
| 2026-02-25 | ひかり味噌が製品価格改定を公表 | 味噌 |
| 2026-02-28 | ホルムズ海峡が事実上封鎖 | 第2層 容器の起点 |
| 2026-03-05 | J-オイルミルズが油脂製品の価格改定を発表(4月1日納品分から) | 第1層 食用油 |
| 2026-03-10 | 昭和産業が家庭用・業務用の油脂製品を15%以上引き上げると発表(4月1日納品分から) | 第1層 食用油 |
| 2026-03下旬 | 米国環境保護庁(EPA)が2026年・2027年のバイオ燃料混合義務量を2025年比で約6割増とする方針を提示 | 第1層 食用油の主因 |
| 2026-03-24 | 味の素が業務用の調味料・加工食品等の出荷価格改定を発表(8月1日納品分から) | 調味料全般 |
| 2026-04 | 帝国データバンク調査で、値上げ要因としての「包装・資材」が2023年以降で最高ペースに | 第2層 容器 |
| 2026-04-22 | 日清オイリオグループが食用油の価格改定を発表(6月1日納入分から) | 第1層 食用油 |
| 2026-04-27 | J-オイルミルズが2度目の価格改定を発表(6月1日納品分から) | 第1層 食用油 |
| 2026-04-28 | 昭和産業が4月改定に加えて追加の価格改定を発表(6月1日納品分から) | 第1層 食用油 |
| 2026-05-01 | ミツカンが納豆19品の価格改定を発表。同日、容器・包装資材の調達困難により4商品の一時販売休止を公表 | 第2層 容器 |
| 2026-05-29 | イチビキが家庭用醤油・汎用つゆ・調理味噌等の価格改定を発表(9月出荷分から) | 第1層+第2層 |
| 2026-06-01 | キッコーマン食品が醤油・つゆ類など291品の価格改定を発表(9月1日納品分から) | 第1層+第2層 |
| 2026-07-12 | ホルムズ海峡が再閉鎖 | 第2層 容器の起点 |
食用油は3〜4月に集中し、醤油・味噌は5〜6月の発表で9月適用となっている。この差は、原料の調達サイクルと価格改定の交渉期間の違いによる。食用油は国際相場の変動が短期間で改定に反映されるのに対し、醤油・味噌は発表から適用まで3〜4ヶ月の期間が置かれている。
CHAPTER 03第1層、食用油はバイオ燃料政策で動いている
2026年の食用油は、4月と6月の2度にわたって価格が改定された。この動きを「中東情勢による原油高」と結びつけて理解している向きがあるが、メーカーの説明はそうではない。ここが本記事で最も注意を促したい点である。
2026年の改定内容
| メーカー | 第1波(2026年4月1日納品分) | 第2波(2026年6月1日納入分) |
|---|---|---|
| 日清オイリオグループ | 実施 | 家庭用 11〜15% 業務用・加工用バルク 17〜21% |
| J-オイルミルズ | 実施(3月5日発表) | 家庭用 11〜16% 業務用・加工用 17〜22% |
| 昭和産業 | 15%以上(3月10日発表) | 25%以上 |
第2波の改定率は各社の発表を業界紙報道により整理したものである。正確な対象品目と改定内容は各社の公式発表を参照されたい。J-オイルミルズにとっては、この6月改定が2026年度第1四半期で2度目の改定にあたる。
主因は米国の燃料政策
日清オイリオグループは、食用油を取り巻くコスト環境について、世界的な人口増加やバイオ燃料需要の高まりに伴う油脂需要の増加に加え、製造にかかわるエネルギー費や物流費、包材・資材費、人手不足などサプライチェーン全体でコスト上昇が続いていると説明している。
そのうえで決定的な要因として挙げられているのが、2026年3月末に米国環境保護庁(EPA)が示した、2026年・2027年のバイオ燃料混合義務量を2025年比で約6割増とする方針である。混合義務量が増えれば、大豆油をはじめとする植物油がバイオ燃料向けに回る量が増える。食用として市場に出る分が相対的に減るため、植物油の需要が高まり、油脂コストの上昇が加速する見込みとなった。J-オイルミルズも同じくEPAの発表により植物油需要のさらなる拡大が見込まれるとしている。
国内食用油メーカーの一部は、2026年4月1日からの価格改定について、イラン情勢の悪化による原油価格上昇とは直接関係がないと説明している。それ以前から積み上がっていたコスト増を価格に反映したものという位置づけである。
食用油の原料は大豆や菜種といった農産物であり、ナフサ由来ではない。中東情勢が効くのは輸送費と、そして容器・包装材の経路である。原因を取り違えると、次の改定がいつ来るかの見通しも誤ることになる。食用油の先行指標として見るべきは、原油価格ではなく米国の燃料政策と植物油相場である。
CHAPTER 04第1層、醤油と味噌は穀物とだし原料
醤油と味噌の原料は、大豆・小麦・米・塩である。いずれも農産物と鉱物資源であり、食用油と同じくナフサ由来ではない。ただし価格の動き方は食用油とは異なる周期を持つ。
キッコーマン、3年半ぶりの改定
キッコーマン食品は2026年6月1日、2026年9月1日納品分より醤油・つゆ類・たれ類・みりん類など計291品を改定すると発表した。希望小売価格で2〜22%の引き上げとなる。
| 区分 | アイテム数 | 改定率 |
|---|---|---|
| キッコーマンしょうゆ(だししょうゆ、粉末しょうゆ等) | 153 | 5〜9% |
| つゆ類(濃縮つゆ、ストレートつゆ、濃縮だし、ぽんず) | 47 | 5〜22% |
| 合計(たれ類・みりん類等を含む) | 291 | 2〜22% |
主力商品「いつでも新鮮しぼりたて生しょうゆ」450mlは、税抜の希望小売価格が311円から329円へ改定される。改定率は5.8%にあたる。家庭用醤油の値上げは2023年4月以来、約3年半ぶりである。
つゆ類の引き上げ率が最も高くなっているのは、節類や昆布などのだし原料が高騰しているためとされる。醤油そのものよりも、だしを含む加工調味料のほうが原料の影響を強く受けている。
値上げ理由に「包装材料費」が並んでいる
ここで注目すべきは、キッコーマン食品が公表した値上げ理由の記載である。同社は、製造コスト削減や物流合理化等の企業努力によりコストアップを吸収してきたが、物流費や人件費、製造設備費、原材料費、包装材料費の上昇を自社のコスト削減努力だけでは吸収できない状況にあるとしている。
原材料費と並んで包装材料費が明示されている点が、2026年の特徴である。Chapter 01で見た帝国データバンクの調査結果と整合する。
味噌でも同じ構図
イチビキは2026年9月出荷分から、家庭用醤油・汎用つゆ・調理味噌・豆関連製品・惣菜類の価格を改定する。改定幅は醤油・汎用つゆが約12%、調理味噌が約7〜12%、豆関連商品が約14%、惣菜類が約11〜13%である。要因として、原料高騰に加え原油高に伴う包装資材・物流費・光熱費の上昇が挙げられている。
また、ひかり味噌は2026年2月25日付で製品価格改定を公表している。ただし改定率の詳細については、当社では確認できていない。
沖縄の味噌・醤油メーカーである赤マルソウも、中東情勢の影響による原油価格の高騰に加え、原材料費や包装資材費、物流費などの上昇が続いているとして、一部商品の価格改定を実施している。
醤油・味噌の原料は農産物であり、ナフサ由来ではない。それにもかかわらず、キッコーマン食品・イチビキ・赤マルソウのいずれもが、値上げ理由として原材料費と並べて包装資材費を明示している。中身と容器の双方から改定圧力がかかっている状態にある。
CHAPTER 05第2層、ナフサから調味料の容器へ至る経路
ここまで見てきた第1層は、いずれも農産物と国際政策の話であった。第2層は経路がまったく異なる。調味料の容器は、そのほとんどがナフサ由来の樹脂でできているためである。
調味料の容器に使われている素材
| 品目 | 主な容器形態 | 主な素材 | ナフサとの関係 |
|---|---|---|---|
| 醤油(卓上・大容量) | PETボトル、鮮度保持容器 | PET、多層フィルム | 直結 |
| 味噌 | カップ、詰め替え袋 | ポリプロピレン、多層フィルム | 直結 |
| 食用油 | PETボトル、業務用一斗缶 | PET(缶はスチール) | PETは直結 |
| つゆ・たれ類 | PETボトル、パウチ | PET、多層フィルム | 直結 |
| 共通 | キャップ、ラベル、外装フィルム | ポリエチレン、ポリプロピレン | 直結 |
PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリプロピレン、ポリエチレンはいずれもナフサを出発原料とする樹脂であり、ナフサ価格との連動性が高い代表的な素材である。2026年2月28日のホルムズ海峡の事実上封鎖以降、これらの樹脂の調達環境が変化したことが、容器コストの上昇として調味料メーカーに届いた。
容器を安いものに替えにくい理由
物流資材であれば、供給が制約された際に代替品へ切り替える対応が取れる。しかし調味料の容器では、この選択肢が限られる。容器が中身の品質保持機能を担っているためである。
醤油は空気に触れると酸化が進み、色と風味が変化する。近年普及した鮮度保持タイプの容器は、内容物が空気に触れない構造を持つことで開栓後の品質を保っている。この機能は容器の構造そのものに依存しており、単純に安価な単層容器へ置き換えれば品質保持期間が変わる。味噌の詰め替え袋やつゆのパウチも同様に、酸素や光を遮る層構造が保存性を支えている。
つまり調味料メーカーにとって、容器の変更は商品仕様の変更と同義になりうる。コスト上昇に対して容器の切替で対応する余地が、他の資材に比べて小さい。この制約が、コスト上昇を価格改定として反映せざるを得ない背景のひとつになっている。
樹脂そのものの市況と食品容器全般の改定状況については、当社の食品トレー業界一斉値上げの分析記事で、樹脂改定から製品改定への波及とあわせて検証している。
CHAPTER 06容器が価格ではなく供給の制約になるとき
容器コストの上昇は価格改定として現れる。しかし2026年には、それを超える事象が起きた。容器が調達できず、製品の販売そのものを止める判断に至った事例である。
ミツカンの事例
ミツカンは2026年5月1日、納豆商品全19品の価格改定を発表した。2026年6月1日出荷分より、参考小売価格(税別)で6〜20%の引き上げとなる内容である。
注目すべきは、同じ2026年5月1日に、4商品の一時販売休止が同時に公表されたことである。理由として挙げられたのは、中東情勢の悪化に伴うナフサの供給不安によって、容器・包装資材の安定調達が困難になったことであった。
値上げは、コストが上がっても供給は継続できるという前提のうえに成り立つ判断である。これに対して販売休止は、価格をいくらに設定しても製造できない状態を意味する。ミツカンの事例は、容器の制約が価格の問題から供給の問題へ移行しうることを示している。
調達計画において、値上げ通知への対応と、供給停止への備えは性格の異なる準備である。前者は予算の問題、後者は代替品の確保と在庫水準の問題となる。
なぜ納豆で先に現れたのか
納豆は調味料そのものではないが、容器の構造という点で共通の性質を持つ。納豆の容器は発泡ポリスチレンのパックに、たれの小袋、内部のフィルム、外装フィルムが組み合わさる。単価に対して容器の構成要素が多い商品ほど、いずれかの資材が欠けたときに製造が止まりやすい。
調味料でも、ボトル本体・キャップ・中栓・ラベル・外装と複数の樹脂部材で構成されている。どれかひとつでも調達できなければ、他が揃っていても出荷できない。容器のリスクは、最も入手しにくい部材によって決まる。
なお納豆そのものの供給と価格については、当社のイラン情勢と納豆に関する記事で別途扱っている。
CHAPTER 07品目別の改定一覧と要因の分離
ここまでの内容を、品目・改定内容・要因の所在という3軸で整理する。「主因の所在」の欄が、本記事で最も伝えたい分離である。
| メーカー・品目 | 改定内容 | 適用時期 | 主因の所在 |
|---|---|---|---|
| 日清オイリオ 食用油 | 家庭用11〜15% 業務用・加工用17〜21% |
2026年6月1日納入分 | 第1層。米EPAのバイオ燃料政策による植物油需要の拡大。包材・資材費も要因に含む |
| J-オイルミルズ 油脂製品 | 家庭用11〜16% 業務用・加工用17〜22% |
2026年6月1日納品分 | 第1層。同上。バイオ燃料向け需要と為替 |
| 昭和産業 食用油 | 25%以上 | 2026年6月1日納品分 | 第1層。4月の15%以上に続く追加改定 |
| キッコーマン食品 醤油 | 5〜9%(153品) | 2026年9月1日納品分 | 第1層+第2層。原材料費と包装材料費を並記 |
| キッコーマン食品 つゆ類 | 5〜22%(47品) | 2026年9月1日納品分 | 第1層が主。節類・昆布などだし原料の高騰 |
| イチビキ 調理味噌 | 約7〜12% | 2026年9月出荷分 | 第1層+第2層。原油高に伴う包装資材の上昇を明記 |
| イチビキ 醤油・汎用つゆ | 約12% | 2026年9月出荷分 | 同上 |
| ミツカン 納豆 | 6〜20%(19品) +4商品を一時販売休止 |
2026年6月1日出荷分 | 第2層。ナフサ供給不安による容器・包装資材の調達困難 |
| 味の素 業務用調味料等 | 出荷価格の改定 | 2026年8月1日納品分 | 公表資料上、内訳を当社では確認できていない |
食用油の3社はいずれも第1層が主因であり、その第1層は中東情勢ではなく米国の燃料政策に起因している。これに対して醤油・味噌の各社は第1層と第2層の双方を要因として挙げ、ミツカンは第2層が単独で供給制約として現れた。
同じ「調味料の値上げ」という見出しで報じられる事象でも、次に何が起きるかを読むための指標はそれぞれ異なる。食用油であれば米国の政策と植物油相場、醤油・味噌であれば穀物相場に加えて樹脂市況を見る必要がある。
CHAPTER 08購買・調達実務で使う判断軸
ここまでの構造分析を、食品メーカー・外食・給食事業者・流通の実務判断に落とし込む。
判断軸1:改定通知の理由欄を読み分ける
価格改定の案内には、必ず理由が記載されている。Chapter 04で見た通り2026年は包装材料費を明示する例が増えており、ここで「原材料費」と「包装材料費」のどちらが挙げられているかを確認すると、次の改定を読む手がかりになる。原材料費が主因であれば農産物相場と為替を、包装材料費が挙がっていれば樹脂市況とナフサ価格を追うことになる。両方が並記されている場合は、二つの指標を別々に監視する必要がある。
判断軸2:食用油の先行指標を取り違えない
Chapter 03で述べた通り、食用油の主因は米国の燃料政策にある。原油価格が下がったから食用油も下がるという見立ては、この局面では成立しにくい。米EPAの再生可能燃料基準に関する決定と、大豆油をはじめとする植物油相場を確認する方が、実態に即した見通しになる。
判断軸3:容器由来のリスクは在庫で備える
価格改定は予算で対応できるが、供給停止は予算では解決しない。ミツカンの事例のように容器の調達難が製造の制約になる場合、対応手段は在庫の確保に限られる。容器構成が複雑な商品ほど、供給が止まるリスクが高いという観点で、取り扱い品目を仕分けておくことが備えになる。
判断軸4:適用時期の差を計画に織り込む
2026年の改定は、食用油が6月1日、味の素が8月1日、キッコーマンとイチビキが9月と、適用時期が分散している。年間の食材費を見積もる際、これらを一律の時期で計算すると計画と実績が乖離する。品目ごとの適用月を反映した見積もりにすることで、下半期の負担増を過小評価せずに済む。
判断軸5:観測すべき指標
次の改定を先読みするために、継続して確認する意味がある指標は次の通りである。
- 米EPAの再生可能燃料基準(RFS)に関する決定と、大豆油など植物油の国際相場
- 大豆・小麦・米の国際相場と為替(醤油・味噌の原料)
- 樹脂メーカーおよび容器成形メーカーの価格改定発表(容器コストの先行指標)
- 帝国データバンクの食品値上げ調査における要因別の内訳(包装・資材の比率)
- 調味料メーカーの改定発表(発表から適用まで3〜4ヶ月の期間が置かれる傾向)
2026年の調味料で判断を誤らせやすいのは、値上げの理由をひとまとめに「原料高」と捉えることである。食用油は米国の燃料政策、醤油・味噌は穀物とだし原料、そして容器はナフサ由来樹脂と、追うべき指標が分かれている。改定通知の理由欄を読み分けることが、その第一歩になる。当社では食品容器・再生材に関するご相談を承っている。
CHAPTER 09用語集
本記事で使用する用語を整理する。
CHAPTER 10出典・エビデンス一覧
調査機関
- 帝国データバンク「食品主要195社価格改定動向調査」2026年4月調査。2026年の値上げは1〜9月までの累計で6,290品目、前年同時期(2025年4月調査時、1万4,409品目)比で6割減ペース。1回当たり平均値上げ率15%。分野別では調味料2,053品目、加工食品1,993品目、酒類・飲料1,074品目、菓子593品目。値上げ要因としての「包装・資材」は4月調査時の水準として前年の60.2%を大幅に上回り、年間では2023年以降で最高ペース。物流費73.6%、エネルギー59.5%、人件費49.4%(人件費は2月時点の66.2%から低下)
食用油
- J-オイルミルズ「油脂製品の価格改定に関するお知らせ」2026年3月5日発表、2026年4月1日納品分より実施
- 昭和産業 2026年3月10日発表、2026年4月1日納品分より家庭用・業務用の油脂製品を15%以上引き上げ
- 日清オイリオグループ 2026年4月22日発表、2026年6月1日納入分より家庭用・業務用および加工用食用油の価格改定。コスト環境として世界的な人口増加やバイオ燃料需要の高まりに伴う油脂需要の増加、エネルギー費、物流費、包材・資材費、人手不足を挙げ、加えて3月末に米国環境保護庁(EPA)が2026年・2027年のバイオ燃料混合義務量を2025年比で約6割増とする方針を示したことにより植物油需要の高まりを招き油脂コストの上昇が一段と加速する見込みとしている
- J-オイルミルズ 2026年4月27日発表、2026年6月1日より油脂製品の価格改定。2026年度第1四半期で2度目の改定にあたる(日本食糧新聞 2026年5月1日)
- 昭和産業 2026年4月28日発表、4月改定分に加え2026年6月1日納品分より追加の価格改定
- 第2波の改定率(日清オイリオ 家庭用11〜15%・業務用および加工用バルク17〜21%、J-オイルミルズ 家庭用11〜16%・業務用および加工用17〜22%、昭和産業 25%以上)は各社発表を業界紙報道により整理したものであり、正確な対象品目と改定内容は各社の公式発表を参照されたい
- 国内食用油メーカーの一部が、2026年4月1日からの価格改定はイラン情勢の悪化による原油価格上昇とは直接関係がないと説明している旨の報道
醤油・味噌・その他調味料
- キッコーマン食品「商品の価格改定について」2026年6月1日発表、2026年9月1日納品分より。キッコーマンしょうゆ153アイテムを希望小売価格で5〜9%、つゆ類47アイテムを5〜22%改定。全体では291品を2〜22%。値上げ理由として物流費、人件費、製造設備費、原材料費、包装材料費の上昇を挙げている
- 「いつでも新鮮しぼりたて生しょうゆ」450mlの税抜希望小売価格を311円から329円へ改定(改定率5.8%)。家庭用醤油の値上げは2023年4月以来約3年半ぶり。つゆ類の引き上げ率が最も高いのは節類・昆布などのだし原料の高騰による(食品新聞、日本食糧新聞)
- イチビキ 2026年9月出荷分より家庭用醤油・汎用つゆ・調理味噌・豆関連製品・惣菜類を改定。醤油・汎用つゆ約12%、調理味噌約7〜12%、豆関連商品約14%、惣菜類約11〜13%。原料高騰に加え原油高に伴う包装資材・物流費・光熱費の上昇が要因(日本食糧新聞 2026年5月29日)
- ひかり味噌「製品価格改定のお知らせ」2026年2月25日付。改定率の詳細は当社では確認できていない
- 赤マルソウ「商品価格改定(値上げ)のお知らせ」中東情勢の影響による原油価格の高騰に加え、原材料費や包装資材費、物流費などの上昇を理由として一部商品の価格を改定
- 味の素「業務用製品出荷価格改定のお知らせ」2026年3月発表、2026年8月1日納品分より業務用の調味料、加工食品等の出荷価格を改定
容器・包装資材
- ミツカン 2026年5月1日発表。納豆商品全19品を2026年6月1日出荷分より参考小売価格(税別)で6〜20%引き上げ。あわせて同日、中東情勢の悪化に伴うナフサの供給不安によって容器・包装資材の安定調達が困難になったとして4商品の一時販売休止を公表
- PET、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンはナフサ価格との連動性が高い代表的な樹脂であり、食品包装資材業界では価格改定や供給の制約が生じやすい
当社関連記事
本記事における留意点
- 味の素の業務用調味料等の改定について、対象品目ごとの改定率は当社では確認できていないため、本記事では改定の事実のみを記載している
- ひかり味噌の2026年2月25日付の価格改定について、改定率および対象品目の詳細は当社では確認できていない
- キッコーマン食品の主力商品の価格については、税抜表記と税込表記が媒体により異なる。本記事では税抜の希望小売価格(311円から329円)を採用している
CHAPTER 11よくある質問
食用油の値上げは中東情勢が原因ですか
主因は別のところにあります。米国環境保護庁が2026年3月末に示した2026年・2027年のバイオ燃料混合義務量を2025年比で約6割増とする方針により植物油の需要が高まり、油脂コストの上昇が加速する見込みとなったことが、日清オイリオグループなどの値上げ理由として挙げられています。国内食用油メーカーの一部は、2026年4月1日からの価格改定はイラン情勢の悪化による原油価格上昇とは直接関係がないと説明しています。ただし容器や包装資材はナフサ由来であるため、そちらの経路では影響を受けます。
2026年の調味料の値上げは、何が要因になっているのですか
帝国データバンクの2026年4月調査によると、値上げ要因として包装・資材を挙げる割合が前年の60.2%を大幅に上回り、2023年以降で最高ペースとなっています。従前から続いた資材高の影響を受けた値上げが中心だったものの、中東情勢の悪化に伴う包装資材費の高騰による値上げが出始めたとされています。分野別では調味料が2,053品目で最多です。値上げ品目数そのものは前年同期比で6割減のペースにあります。
醤油や味噌の値上げにも容器の影響があるのですか
各社が値上げ理由として包装材料費を明示しています。キッコーマン食品は2026年9月1日納品分からの価格改定にあたり、物流費・人件費・製造設備費・原材料費とあわせて包装材料費の上昇を理由に挙げています。イチビキも2026年9月出荷分からの改定について、原料高騰に加え原油高に伴う包装資材・物流費・光熱費の上昇を要因としています。中身の原料と容器の双方からコストが上がる構造になっています。
容器の問題は価格だけですか、供給にも影響しますか
供給の制約として現れた事例があります。ミツカンは2026年5月1日、納豆19品を6月1日出荷分から参考小売価格で6〜20%引き上げると発表しましたが、同じ日に、中東情勢の悪化に伴うナフサの供給不安によって容器・包装資材の安定調達が困難になったとして、4商品の一時販売休止を公表しました。容器は価格の問題にとどまらず、製造そのものを止める制約になりうることを示しています。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか
当社は千葉県我孫子市に本社を置く物流資材専門の商社で、プラスチックパレット・折りたたみコンテナ・再生プラスチック原料を全国のお客様へ供給しています。取り扱う資材の多くがナフサ由来の樹脂を原料とするため、原油・ナフサ市況と国際情勢は日々の調達判断そのものです。調味料の容器も同じ樹脂系統にあり、食品メーカーや流通のご担当者と接する機会が多いことから、公表資料に基づいて価格構造を整理しています。
CHAPTER 12本記事の位置づけと免責事項
本記事は、当社が制作している「2026年サプライチェーン完全ガイド」シリーズのうち、食品分野を扱う記事です。国際情勢そのものの全体像については上位ハブ記事である【イラン情勢2026完全まとめ】米・イラン対立・ホルムズ海峡と日本産業への影響を参照してください。
- 情報の時点性について|本記事の記載内容は2026年7月24日時点で確認できた公開情報に基づいています。国際相場、為替、各社の価格改定、米国の政策決定は変動するため、記載時点以降の状況を反映していない場合があります。
- 改定内容の正確性について|本記事に記載した改定率は各社の公表内容および業界紙報道に基づく発表時点の値です。対象品目、適用条件、その後の変更については各社の公式発表をご確認ください。改定率が確認できていない事項については、その旨をChapter 10に明記しています。
- 投資判断への非該当|本記事は食品の調達・購買実務に資する情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買や投資判断を推奨するものではありません。企業名・製品名の記載は事実関係の説明のためであり、当該企業の評価を示すものではありません。
- 価格表記について|本記事では希望小売価格と参考小売価格を区別して記載しています。いずれもメーカーが設定する目安であり、実際の店頭価格は小売各社が決定するため、改定率がそのまま店頭価格に反映されるとは限りません。税抜・税込の別についてもChapter 10に注記しています。
- 引用の取り扱いについて|本記事における各社の発表内容、調査結果は、公表資料の内容を当社が要約・整理したものです。正確な表現については各出典元の原文をご参照ください。記載に誤りを発見された場合は、お手数ですがご連絡いただけますと幸いです。