2026年の調達ガイド / 調味料

醤油・味噌・食用油はなぜ値上げ?食用油は米国の燃料政策、容器はナフサ由来の樹脂

公開(7月24日時点の情報)対象品目 醤油・味噌・食用油読む時間 約17分

この記事の答え

何が起きた
帝国データバンクの2026年4月調査では、調味料の値上げは2,053品目で分野別の最多です。要因の「包装・資材」は2023年以降で最高ペースです。
調味料の価格への影響
食用油は4月と6月の2度改定され、メーカーが挙げる主因は米国の燃料政策です。醤油・味噌は原材料費と並べて包装材料費が理由に挙がっています。
確かめておくこと
改定通知の理由欄に「原材料費」と「包装材料費」のどちらがあるかです。ミツカンは容器の調達難で4商品を一時販売休止しました。
次に見るところ
食用油は米EPAの決定と植物油相場です。醤油・味噌は穀物相場と為替に加えて、樹脂市況です。
調味料の値上げ品目数(2026年1〜9月)2,053分野別で最多。帝国データバンク 2026年4月調査
米EPAのバイオ燃料混合義務量約6割増2026年・2027年分、2025年比。2026年3月末に示された方針
昭和産業 食用油の改定率25%以上2026年6月1日納品分。4月の15%以上に続く追加改定

ミツカンは2026年5月1日、容器の調達難により4商品の一時販売休止を公表しました。値上げではなく、供給が止まった例です(第6章)。

2026年の調味料は、値上げの量より理由の内訳が変わりました

2026年の食品値上げは、品目数では前年比6割減のペースです。それでも調味料は2,053品目で最多で、要因のうち「包装・資材」だけが上がっています。

2026年の食品値上げは、品目数だけを見れば前年から大きく減っています。それでも調味料の改定が続いているのは、値上げの理由が変わったためです。

原料が上がったから上げる、という従来の説明では届きません。食用油の主因は米国の燃料政策、そして容器はナフサ由来の樹脂です。この記事では、原因の異なる二つの層を、各社の公表資料から分離して整理します。

食品の値上げが報じられるとき、多くの記事が扱うのは「何品目が上がるか」です。しかし2026年に注目したいのは品目数ではありません。値上げの理由の内訳が変わっていることのほうが、調達判断にとって重要な変化です。

品目数は減っています

帝国データバンクの2026年4月調査によると、主要な食品メーカー195社における2026年の値上げは、1〜9月までの累計で6,290品目となりました。

前年同時期(2025年4月調査時、1万4,409品目)は、年間の値上げ品目予定が1万品目を超えていました。これと比べると、前年比6割減のペースで推移しています。1回当たりの平均値上げ率は15%で、前年通年と同程度の水準にあります。

数字だけを見れば、値上げの動きは沈静化しつつあるように見えます。ところが分野別に見ると、「調味料」が2,053品目で最多です。以下、加工食品1,993品目、酒類・飲料1,074品目、菓子593品目と続きます。全体が減るなかで、調味料が最も多いという構図です。

要因の内訳で起きていること

同じ調査では、値上げの要因についても集計されています。ここに2026年の特徴が現れています。

値上げ要因として「包装・資材」を挙げる割合は前月を上回り、4月調査時の水準としては前年(60.2%)も大幅に上回りました。年間では2023年以降で最高ペースでの推移です。従前から続いた資材高の影響を受けた値上げが中心だったものの、中東情勢の悪化に伴う包装資材費の高騰による値上げが出始めたとされます。

一方、他の要因は低下しています。物流費は73.6%、エネルギーは59.5%、人件費は49.4%で、いずれも前月調査時から下がりました。

とくに人件費由来の値上げは、最も高い割合を占めた2月時点の66.2%から低下傾向が続いています。全体の半数を下回り、年内としては最小です。

この章のポイント

  • 2026年の食品値上げは、品目数では前年比6割減のペースにあります
  • その一方で、分野別では調味料が2,053品目で最多です
  • 値上げ要因のうち「包装・資材」だけが上昇し、2023年以降で最高ペースに達しています
  • つまり調味料の値上げは、原料ではなく容器や包材を理由とする比重が高まっています

この記事では、この構造を「中身の原料相場」と「容器・包装材のコスト」という二つの層に分けて整理します。同じ調味料の値上げでも、この二層は原因も動き方もまったく異なります。

食用油の改定は3〜4月に集中し、醤油・味噌は9月の適用でした

食用油は3〜4月に発表が集中しました。醤油・味噌は5〜6月の発表で9月の適用です。発表から適用まで3〜4ヶ月の期間が置かれています。

調味料の価格に直接関係した出来事を、時系列で整理します。国際情勢そのものの全体像は、上位ハブ記事の【イラン情勢2026完全まとめ】米・イラン対立・ホルムズ海峡と日本産業への影響をご覧ください。

2026年2月〜9月、調味料の価格改定 時系列
時期出来事どの層に効くか
2026-02-25ひかり味噌が製品価格改定を公表味噌
2026-02-28ホルムズ海峡ホルムズ海峡ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ海峡。世界の海上原油輸送の重要な経路であり、通航状況が原油とナフサの調達環境に直結する。が事実上封鎖第2層 容器の起点
2026-03-05J-オイルミルズが油脂製品油脂製品食用油、マーガリン、ショートニングなど、植物油や動物油脂を原料とする製品の総称。家庭用・業務用・加工用で流通経路と価格改定の適用単位が分かれる。の価格改定を発表(4月1日納品分納品分・出荷分価格改定の適用基準。納品分はメーカーから取引先へ届いた日、出荷分は工場から出た日を基準とする。基準の違いにより、既発注案件が新価格になるかが変わる。から)第1層 食用油
2026-03-10昭和産業が家庭用・業務用の油脂製品を15%以上引き上げると発表(4月1日納品分から)第1層 食用油
2026-03下旬米国環境保護庁(EPA)が2026年・2027年のバイオ燃料混合義務バイオ燃料混合義務燃料に一定割合のバイオ燃料を混ぜることを事業者に義務づける制度。米国では再生可能燃料基準(RFS)として運用され、混合義務量が増えると原料となる植物油の需要が高まる。量を2025年比で約6割増とする方針を提示第1層 食用油の主因
2026-03-24味の素が業務用の調味料・加工食品等の出荷価格改定を発表(8月1日納品分から)調味料全般
2026-04帝国データバンク調査で、値上げ要因としての「包装・資材」が2023年以降で最高ペースに第2層 容器
2026-04-22日清オイリオグループが食用油の価格改定を発表(6月1日納入分から)第1層 食用油
2026-04-27J-オイルミルズが2度目の価格改定を発表(6月1日納品分から)第1層 食用油
2026-04-28昭和産業が4月改定に加えて追加の価格改定を発表(6月1日納品分から)第1層 食用油
2026-05-01ミツカンが納豆19品の価格改定を発表。同日、容器・包装資材の調達困難により4商品の一時販売休止一時販売休止供給上の事情により、製品の出荷を一時的に取りやめること。価格改定と異なり、予算では対応できず在庫や代替品の確保が必要になる。を公表第2層 容器
2026-05-29イチビキが家庭用醤油・汎用つゆ・調理味噌等の価格改定を発表(9月出荷分から)第1層+第2層
2026-06-01キッコーマン食品が醤油・つゆ類など291品の価格改定を発表(9月1日納品分から)第1層+第2層
2026-07-12ホルムズ海峡が再閉鎖第2層 容器の起点

時系列から読めること

食用油は3〜4月に集中し、醤油・味噌は5〜6月の発表で9月適用となっています。この差は、原料の調達サイクルと価格改定の交渉期間の違いによるものです。

食用油は、国際相場の変動が短期間で改定に反映されます。これに対して醤油・味噌は、発表から適用まで3〜4ヶ月の期間が置かれています。

食用油の値上げの主因は、原油高ではなく米国の燃料政策です

食用油の主因は米EPA米EPA米国環境保護庁。再生可能燃料基準の混合義務量を決定する。その決定は米国内の政策でありながら、植物油の国際需給を通じて日本の食用油価格に届く。のバイオ燃料政策です。メーカーの一部は、4月1日からの改定は原油価格上昇とは直接関係がないと説明しています。

2026年の食用油は、4月と6月の2度にわたって価格が改定されました。この動きを「中東情勢による原油高」と結びつけて理解している向きがあります。しかし、メーカーの説明はそうではありません。ここが、この記事で最も注意を促したい点です。

2026年の改定内容

食用油3社の改定(第1波=2026年4月1日納品分、第2波=2026年6月1日納入分)
メーカー第1波第2波
日清オイリオグループ実施家庭用 11〜15%
業務用・加工用バルク加工用バルク食品メーカーが原料として使用する大容量の業務用油脂。小分け容器を使わないため、容器コストの影響を受けにくい一方、油脂そのものの相場変動を直接受ける。 17〜21%
J-オイルミルズ実施(3月5日発表)家庭用 11〜16%
業務用・加工用 17〜22%
昭和産業15%以上(3月10日発表)25%以上

第2波の改定率は、各社の発表を業界紙報道により整理したものです。正確な対象品目と改定内容は、各社の公式発表をご覧ください。J-オイルミルズにとっては、この6月改定が2026年度第1四半期で2度目の改定にあたります。

主因は米国の燃料政策です

日清オイリオグループは、食用油を取り巻くコスト環境について説明しています。世界的な人口増加やバイオ燃料需要の高まりに伴う油脂需要の増加があります。加えて、製造にかかわるエネルギー費や物流費、包材・資材費、人手不足など、サプライチェーン全体でコスト上昇が続いているとしています。

そのうえで決定的な要因として挙げられているのが、2026年3月末に米国環境保護庁(EPA)が示した方針です。2026年・2027年のバイオ燃料混合義務量を、2025年比で約6割増とするものです。

混合義務量が増えれば、大豆油をはじめとする植物油がバイオ燃料向けに回る量が増えます。食用として市場に出る分が相対的に減るため、植物油の需要が高まり、油脂コストの上昇が加速する見込みとなりました。J-オイルミルズも同じく、EPAの発表により植物油需要のさらなる拡大が見込まれるとしています。

「中東情勢のせいで油が上がった」は正確ではありません

国内食用油メーカーの一部は、2026年4月1日からの価格改定について、イラン情勢の悪化による原油価格上昇とは直接関係がないと説明しています。それ以前から積み上がっていたコスト増を、価格に反映したものという位置づけです。

食用油の原料は大豆や菜種といった農産物であり、ナフサ由来ではありません。中東情勢が効くのは、輸送費と、そして容器・包装材の経路です。

原因を取り違えると、次の改定がいつ来るかの見通しも誤ることになります。食用油の先行指標として見るべきは、原油価格ではなく米国の燃料政策と植物油相場です。

醤油と味噌は、穀物・だし原料と包装材料費の両方で上がっています

醤油・味噌の原料は農産物で、ナフサ由来ではありません。それでもキッコーマン食品・イチビキ・赤マルソウは、原材料費と並べて包装資材費を値上げ理由に挙げています。

醤油と味噌の原料は、大豆・小麦・米・塩です。いずれも農産物と鉱物資源であり、食用油と同じくナフサ由来ではありません。ただし価格の動き方は、食用油とは異なる周期を持ちます。

キッコーマンは3年半ぶりの改定です

キッコーマン食品は2026年6月1日に発表しました。2026年9月1日納品分より、醤油・つゆ類・たれ類・みりん類など計291品を改定します。希望小売価格希望小売価格メーカーが目安として設定する小売価格。実際の店頭価格は小売各社が決めるため、改定率がそのまま店頭に反映されるとは限らない。で2〜22%の引き上げです。

キッコーマン食品 2026年9月1日納品分より適用(2026年6月1日発表)
区分アイテム数改定率
キッコーマンしょうゆ(だししょうゆ、粉末しょうゆ等)1535〜9%
つゆ類(濃縮つゆ、ストレートつゆ、濃縮だし、ぽんず)475〜22%
合計(たれ類・みりん類等を含む)2912〜22%

主力商品「いつでも新鮮しぼりたて生しょうゆ」450mlは、税抜の希望小売価格が311円から329円へ改定されます。改定率は5.8%にあたります。家庭用醤油の値上げは2023年4月以来、約3年半ぶりです。

つゆ類の引き上げ率が最も高いのは、節類や昆布などのだし原料だし原料かつお節などの節類、昆布、煮干しといった、つゆ類の風味を構成する原料。水産資源であり、漁獲状況によって相場が変動する。が高騰しているためとされます。醤油そのものよりも、だしを含む加工調味料のほうが原料の影響を強く受けています。

値上げ理由に「包装材料費」が並んでいます

ここで注目したいのは、キッコーマン食品が公表した値上げ理由の記載です。同社は、製造コスト削減や物流合理化等の企業努力により、コストアップを吸収してきました。しかし物流費や人件費、製造設備費、原材料費、包装材料費の上昇を、自社のコスト削減努力だけでは吸収できない状況にあるとしています。

原材料費と並んで包装材料費が明示されている点が、2026年の特徴です。第1章で見た帝国データバンクの調査結果と整合します。

味噌でも同じ構図です

イチビキは2026年9月出荷分から、家庭用醤油・汎用つゆ・調理味噌・豆関連製品・惣菜類の価格を改定します。改定幅は醤油・汎用つゆが約12%、調理味噌が約7〜12%、豆関連商品が約14%、惣菜類が約11〜13%です。要因として、原料高騰に加え原油高に伴う包装資材・物流費・光熱費の上昇が挙げられています。

また、ひかり味噌は2026年2月25日付で製品価格改定を公表しています。ただし改定率の詳細については、当社では確認できていません。

沖縄の味噌・醤油メーカーである赤マルソウも、一部商品の価格改定を実施しています。中東情勢の影響による原油価格の高騰に加え、原材料費や包装資材費、物流費などの上昇が続いていることが理由です。

この章のポイント

醤油・味噌の原料は農産物であり、ナフサ由来ではありません。それにもかかわらず、キッコーマン食品・イチビキ・赤マルソウのいずれもが、値上げ理由として原材料費と並べて包装資材費を明示しています。中身と容器の双方から改定圧力がかかっている状態にあります。

調味料の容器はナフサ由来の樹脂で、安いものに替えにくいです

第2層は容器です。調味料の容器は、そのほとんどがナフサナフサ原油を精製して得られる粗製ガソリン。ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリスチレン・PETなど、容器包装に使われる樹脂の出発原料にあたる。由来の樹脂でできています。容器が品質を保つ役目を担うため、切り替える余地も小さいです。

ここまで見てきた第1層は、いずれも農産物と国際政策の話でした。第2層は経路がまったく異なります。調味料の容器は、そのほとんどがナフサ由来の樹脂でできているためです。

調味料の容器に使われている素材

調味料の容器と素材
品目主な容器形態主な素材ナフサとの関係
醤油(卓上・大容量)PETPETポリエチレンテレフタレート。醤油や食用油のボトルに用いられる透明樹脂で、ナフサを出発原料とする。ボトル、鮮度保持容器鮮度保持容器開栓後も内容物が空気に触れない構造を持つ容器。醤油では酸化による色と風味の変化を抑える目的で用いられ、機能が容器の層構造そのものに依存する。PET、多層フィルム多層フィルム性質の異なる樹脂を積層したフィルム。酸素や光を遮る層、熱で接着する層などを組み合わせ、保存性と加工適性を両立させる。層ごとに異なる樹脂を使うため調達も複層的になる。直結
味噌カップ、詰め替え袋ポリプロピレン、多層フィルム直結
食用油PETボトル、業務用一斗缶PET(缶はスチール)PETは直結
つゆ・たれ類PETボトル、パウチPET、多層フィルム直結
共通キャップ、ラベル、外装フィルムポリエチレン、ポリプロピレン直結

PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリプロピレン、ポリエチレンは、いずれもナフサを出発原料とする樹脂です。ナフサ価格との連動性が高い代表的な素材です。

2026年2月28日のホルムズ海峡の事実上封鎖以降、これらの樹脂の調達環境が変化しました。それが容器コストの上昇として、調味料メーカーに届きました。

容器を安いものに替えにくい理由

物流資材であれば、供給が制約された際に代替品へ切り替える対応が取れます。しかし調味料の容器では、この選択肢が限られます。容器が中身の品質保持機能を担っているためです。

醤油は空気に触れると酸化が進み、色と風味が変化します。近年普及した鮮度保持タイプの容器は、内容物が空気に触れない構造を持つことで、開栓後の品質を保っています。

この機能は容器の構造そのものに依存しており、単純に安価な単層容器へ置き換えれば品質保持期間が変わります。味噌の詰め替え袋やつゆのパウチも同様に、酸素や光を遮る層構造が保存性を支えています。

つまり調味料メーカーにとって、容器の変更は商品仕様の変更と同義になりえます。コスト上昇に対して容器の切替で対応する余地が、他の資材に比べて小さいのです。この制約が、コスト上昇を価格改定として反映せざるを得ない背景のひとつになっています。

樹脂そのものの市況と食品容器全般の改定状況は、当社の食品トレー業界一斉値上げの分析記事で検証しています。樹脂改定から製品改定への波及もあわせて扱っています。

容器は価格だけでなく、供給の制約にもなります

ミツカンは2026年5月1日、納豆19品の値上げと同じ日に、4商品の一時販売休止を公表しました。容器が調達できず、販売そのものを止めた事例です。

容器コストの上昇は、価格改定として現れます。しかし2026年には、それを超える事象が起きました。容器が調達できず、製品の販売そのものを止める判断に至った事例です。

ミツカンの事例

ミツカンは2026年5月1日、納豆商品全19品の価格改定を発表しました。2026年6月1日出荷分より、参考小売価格(税別)で6〜20%の引き上げとなる内容です。

注目したいのは、同じ2026年5月1日に、4商品の一時販売休止が同時に公表されたことです。理由として挙げられたのは、中東情勢の悪化に伴うナフサの供給不安によって、容器・包装資材の安定調達が困難になったことでした。

価格の問題と供給の問題は別です

値上げは、コストが上がっても供給は継続できるという前提のうえに成り立つ判断です。これに対して販売休止は、価格をいくらに設定しても製造できない状態を意味します。ミツカンの事例は、容器の制約が価格の問題から供給の問題へ移行しうることを示しています。

調達計画において、値上げ通知への対応と、供給停止への備えは性格の異なる準備です。前者は予算の問題、後者は代替品の確保と在庫水準の問題となります。

なぜ納豆で先に現れたのか

納豆は調味料そのものではありませんが、容器の構造という点で共通の性質を持ちます。納豆の容器は、発泡ポリスチレンのパックに、たれの小袋、内部のフィルム、外装フィルムが組み合わさります。単価に対して容器の構成要素が多い商品ほど、いずれかの資材が欠けたときに製造が止まりやすいのです。

調味料でも、ボトル本体・キャップ・中栓・ラベル・外装と、複数の樹脂部材で構成されています。どれかひとつでも調達できなければ、他が揃っていても出荷できません。容器のリスクは、最も入手しにくい部材によって決まります。

なお納豆そのものの供給と価格については、当社のイラン情勢と納豆に関する記事で別途扱っています。

品目ごとに主因を分けると、追うべき指標が分かれます

食用油の3社は第1層が主因で、それは米国の燃料政策によるものです。醤油・味噌の各社は第1層と第2層の双方を挙げ、ミツカンは第2層が単独で供給制約として現れました。

ここまでの内容を、品目・改定内容・要因の所在という3軸で整理します。「主因の所在」の欄が、この記事で最も伝えたい分離です。

品目別の改定一覧と要因の分離
メーカー・品目改定内容適用時期主因の所在
日清オイリオ 食用油家庭用11〜15%
業務用・加工用17〜21%
2026年6月1日納入分第1層。米EPAのバイオ燃料政策による植物油需要の拡大。包材・資材費も要因に含む
J-オイルミルズ 油脂製品家庭用11〜16%
業務用・加工用17〜22%
2026年6月1日納品分第1層。同上。バイオ燃料向け需要と為替
昭和産業 食用油25%以上2026年6月1日納品分第1層。4月の15%以上に続く追加改定
キッコーマン食品 醤油5〜9%(153品)2026年9月1日納品分第1層+第2層。原材料費と包装材料費を並記
キッコーマン食品 つゆ類5〜22%(47品)2026年9月1日納品分第1層が主。節類・昆布などだし原料の高騰
イチビキ 調理味噌約7〜12%2026年9月出荷分第1層+第2層。原油高に伴う包装資材の上昇を明記
イチビキ 醤油・汎用つゆ約12%2026年9月出荷分同上
ミツカン 納豆6〜20%(19品)
+4商品を一時販売休止
2026年6月1日出荷分第2層。ナフサ供給不安による容器・包装資材の調達困難
味の素 業務用調味料等出荷価格の改定2026年8月1日納品分公表資料上、内訳を当社では確認できていない

表の読み方

食用油の3社は、いずれも第1層が主因です。その第1層は、中東情勢ではなく米国の燃料政策に起因しています。これに対して醤油・味噌の各社は第1層と第2層の双方を要因として挙げ、ミツカンは第2層が単独で供給制約として現れました。

同じ「調味料の値上げ」という見出しで報じられる事象でも、次に何が起きるかを読むための指標はそれぞれ異なります。食用油であれば米国の政策と植物油相場、醤油・味噌であれば穀物相場に加えて樹脂市況を見る必要があります。

購買では、改定通知の理由欄を読み分けることが第一歩です

値上げの理由をひとまとめに「原料高」と捉えると、判断を誤りやすくなります。食用油・醤油と味噌・容器で、追うべき指標が分かれています。

ここまでの構造分析を、食品メーカー・外食・給食事業者・流通の実務判断に落とし込みます。

判断軸1:改定通知の理由欄を読み分ける

価格改定の案内には、必ず理由が記載されています。第4章で見た通り、2026年は包装材料費を明示する例が増えています。ここで「原材料費」と「包装材料費」のどちらが挙げられているかを確認すると、次の改定を読む手がかりになります。

原材料費が主因であれば、農産物相場と為替を追います。包装材料費が挙がっていれば、樹脂市況とナフサ価格を追うことになります。両方が並記されている場合は、二つの指標を別々に監視する必要があります。

判断軸2:食用油の先行指標を取り違えない

第3章で述べた通り、食用油の主因は米国の燃料政策にあります。原油価格が下がったから食用油も下がるという見立ては、この局面では成立しにくいです。米EPAの再生可能燃料基準に関する決定と、大豆油をはじめとする植物油相場を確認するほうが、実態に即した見通しになります。

判断軸3:容器由来のリスクは在庫で備える

価格改定は予算で対応できますが、供給停止は予算では解決しません。ミツカンの事例のように容器の調達難が製造の制約になる場合、対応手段は在庫の確保に限られます。

容器構成が複雑な商品ほど、供給が止まるリスクが高いという観点で、取り扱い品目を仕分けておくことが備えになります。

判断軸4:適用時期の差を計画に織り込む

2026年の改定は、食用油が6月1日、味の素が8月1日、キッコーマンとイチビキが9月と、適用時期が分散しています。年間の食材費を見積もる際、これらを一律の時期で計算すると、計画と実績が乖離します。

品目ごとの適用月を反映した見積もりにすることで、下半期の負担増を過小評価せずに済みます。

判断軸5:観測すべき指標

次の改定を先読みするために、継続して確認する意味がある指標は次の通りです。

  • 米EPAの再生可能燃料基準(RFS)に関する決定と、大豆油など植物油の国際相場
  • 大豆・小麦・米の国際相場と為替(醤油・味噌の原料)
  • 樹脂メーカーおよび容器成形メーカーの価格改定発表(容器コストの先行指標)
  • 帝国データバンクの食品値上げ調査における要因別の内訳(包装・資材の比率)
  • 調味料メーカーの改定発表(発表から適用まで3〜4ヶ月の期間が置かれる傾向)

この章のポイント

2026年の調味料で判断を誤らせやすいのは、値上げの理由をひとまとめに「原料高」と捉えることです。食用油は米国の燃料政策、醤油・味噌は穀物とだし原料、そして容器はナフサ由来樹脂と、追うべき指標が分かれています。

改定通知の理由欄を読み分けることが、その第一歩になります。当社では、食品容器・再生材に関するご相談を承っています。

よくある質問

食用油の値上げは中東情勢が原因ですか

主因は別のところにあります。米国環境保護庁が2026年3月末に示した2026年・2027年のバイオ燃料混合義務量を2025年比で約6割増とする方針により植物油の需要が高まり、油脂コストの上昇が加速する見込みとなったことが、日清オイリオグループなどの値上げ理由として挙げられています。国内食用油メーカーの一部は、2026年4月1日からの価格改定はイラン情勢の悪化による原油価格上昇とは直接関係がないと説明しています。ただし容器や包装資材はナフサ由来であるため、そちらの経路では影響を受けます。

2026年の調味料の値上げは、何が要因になっているのですか

帝国データバンクの2026年4月調査によると、値上げ要因として包装・資材を挙げる割合が前年の60.2%を大幅に上回り、2023年以降で最高ペースとなっています。従前から続いた資材高の影響を受けた値上げが中心だったものの、中東情勢の悪化に伴う包装資材費の高騰による値上げが出始めたとされています。分野別では調味料が2,053品目で最多です。値上げ品目数そのものは前年同期比で6割減のペースにあります。

醤油や味噌の値上げにも容器の影響があるのですか

各社が値上げ理由として包装材料費を明示しています。キッコーマン食品は2026年9月1日納品分からの価格改定にあたり、物流費・人件費・製造設備費・原材料費とあわせて包装材料費の上昇を理由に挙げています。イチビキも2026年9月出荷分からの改定について、原料高騰に加え原油高に伴う包装資材・物流費・光熱費の上昇を要因としています。中身の原料と容器の双方からコストが上がる構造になっています。

容器の問題は価格だけですか、供給にも影響しますか

供給の制約として現れた事例があります。ミツカンは2026年5月1日、納豆19品を6月1日出荷分から参考小売価格で6〜20%引き上げると発表しましたが、同じ日に、中東情勢の悪化に伴うナフサの供給不安によって容器・包装資材の安定調達が困難になったとして、4商品の一時販売休止を公表しました。容器は価格の問題にとどまらず、製造そのものを止める制約になりうることを示しています。

なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか

当社は千葉県我孫子市に本社を置く物流資材専門の商社で、プラスチックパレット・折りたたみコンテナ・再生プラスチック原料を全国のお客様へ供給しています。取り扱う資材の多くがナフサ由来の樹脂を原料とするため、原油・ナフサ市況と国際情勢は日々の調達判断そのものです。調味料の容器も同じ樹脂系統にあり、食品メーカーや流通のご担当者と接する機会が多いことから、公表資料に基づいて価格構造を整理しています。

この記事は、当社が制作している「2026年サプライチェーン完全ガイド」シリーズのうち、食品分野を扱う記事です。国際情勢そのものの全体像は、上位ハブ記事の【イラン情勢2026完全まとめ】米・イラン対立・ホルムズ海峡と日本産業への影響をご覧ください。

用語集14語

本記事で使用する用語を整理する。

バイオ燃料混合義務
燃料に一定割合のバイオ燃料を混ぜることを事業者に義務づける制度。米国では再生可能燃料基準(RFS)として運用され、混合義務量が増えると原料となる植物油の需要が高まる。
米EPA
米国環境保護庁。再生可能燃料基準の混合義務量を決定する。その決定は米国内の政策でありながら、植物油の国際需給を通じて日本の食用油価格に届く。
油脂製品
食用油、マーガリン、ショートニングなど、植物油や動物油脂を原料とする製品の総称。家庭用・業務用・加工用で流通経路と価格改定の適用単位が分かれる。
加工用バルク
食品メーカーが原料として使用する大容量の業務用油脂。小分け容器を使わないため、容器コストの影響を受けにくい一方、油脂そのものの相場変動を直接受ける。
ミニローリー
業務用油脂をタンクローリーで納入する形態。容器を介さない供給方式であり、大口の加工需要向けに用いられる。
希望小売価格
メーカーが目安として設定する小売価格。実際の店頭価格は小売各社が決めるため、改定率がそのまま店頭に反映されるとは限らない。
納品分・出荷分
価格改定の適用基準。納品分はメーカーから取引先へ届いた日、出荷分は工場から出た日を基準とする。基準の違いにより、既発注案件が新価格になるかが変わる。
鮮度保持容器
開栓後も内容物が空気に触れない構造を持つ容器。醤油では酸化による色と風味の変化を抑える目的で用いられ、機能が容器の層構造そのものに依存する。
多層フィルム
性質の異なる樹脂を積層したフィルム。酸素や光を遮る層、熱で接着する層などを組み合わせ、保存性と加工適性を両立させる。層ごとに異なる樹脂を使うため調達も複層的になる。
PET
ポリエチレンテレフタレート。醤油や食用油のボトルに用いられる透明樹脂で、ナフサを出発原料とする。
ナフサ
原油を精製して得られる粗製ガソリン。ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリスチレン・PETなど、容器包装に使われる樹脂の出発原料にあたる。
ホルムズ海峡
ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ海峡。世界の海上原油輸送の重要な経路であり、通航状況が原油とナフサの調達環境に直結する。
だし原料
かつお節などの節類、昆布、煮干しといった、つゆ類の風味を構成する原料。水産資源であり、漁獲状況によって相場が変動する。
一時販売休止
供給上の事情により、製品の出荷を一時的に取りやめること。価格改定と異なり、予算では対応できず在庫や代替品の確保が必要になる。
出典・エビデンス一覧23件

調査機関

  • 帝国データバンク「食品主要195社価格改定動向調査」2026年4月調査。2026年の値上げは1〜9月までの累計で6,290品目、前年同時期(2025年4月調査時、1万4,409品目)比で6割減ペース。1回当たり平均値上げ率15%。分野別では調味料2,053品目、加工食品1,993品目、酒類・飲料1,074品目、菓子593品目。値上げ要因としての「包装・資材」は4月調査時の水準として前年の60.2%を大幅に上回り、年間では2023年以降で最高ペース。物流費73.6%、エネルギー59.5%、人件費49.4%(人件費は2月時点の66.2%から低下)

食用油

  • J-オイルミルズ「油脂製品の価格改定に関するお知らせ」2026年3月5日発表、2026年4月1日納品分より実施
  • 昭和産業 2026年3月10日発表、2026年4月1日納品分より家庭用・業務用の油脂製品を15%以上引き上げ
  • 日清オイリオグループ 2026年4月22日発表、2026年6月1日納入分より家庭用・業務用および加工用食用油の価格改定。コスト環境として世界的な人口増加やバイオ燃料需要の高まりに伴う油脂需要の増加、エネルギー費、物流費、包材・資材費、人手不足を挙げ、加えて3月末に米国環境保護庁(EPA)が2026年・2027年のバイオ燃料混合義務量を2025年比で約6割増とする方針を示したことにより植物油需要の高まりを招き油脂コストの上昇が一段と加速する見込みとしている
  • J-オイルミルズ 2026年4月27日発表、2026年6月1日より油脂製品の価格改定。2026年度第1四半期で2度目の改定にあたる(日本食糧新聞 2026年5月1日)
  • 昭和産業 2026年4月28日発表、4月改定分に加え2026年6月1日納品分より追加の価格改定
  • 第2波の改定率(日清オイリオ 家庭用11〜15%・業務用および加工用バルク17〜21%、J-オイルミルズ 家庭用11〜16%・業務用および加工用17〜22%、昭和産業 25%以上)は各社発表を業界紙報道により整理したものであり、正確な対象品目と改定内容は各社の公式発表を参照されたい
  • 国内食用油メーカーの一部が、2026年4月1日からの価格改定はイラン情勢の悪化による原油価格上昇とは直接関係がないと説明している旨の報道

醤油・味噌・その他調味料

  • キッコーマン食品「商品の価格改定について」2026年6月1日発表、2026年9月1日納品分より。キッコーマンしょうゆ153アイテムを希望小売価格で5〜9%、つゆ類47アイテムを5〜22%改定。全体では291品を2〜22%。値上げ理由として物流費、人件費、製造設備費、原材料費、包装材料費の上昇を挙げている
  • 「いつでも新鮮しぼりたて生しょうゆ」450mlの税抜希望小売価格を311円から329円へ改定(改定率5.8%)。家庭用醤油の値上げは2023年4月以来約3年半ぶり。つゆ類の引き上げ率が最も高いのは節類・昆布などのだし原料の高騰による(食品新聞、日本食糧新聞)
  • イチビキ 2026年9月出荷分より家庭用醤油・汎用つゆ・調理味噌・豆関連製品・惣菜類を改定。醤油・汎用つゆ約12%、調理味噌約7〜12%、豆関連商品約14%、惣菜類約11〜13%。原料高騰に加え原油高に伴う包装資材・物流費・光熱費の上昇が要因(日本食糧新聞 2026年5月29日)
  • ひかり味噌「製品価格改定のお知らせ」2026年2月25日付。改定率の詳細は当社では確認できていない
  • 赤マルソウ「商品価格改定(値上げ)のお知らせ」中東情勢の影響による原油価格の高騰に加え、原材料費や包装資材費、物流費などの上昇を理由として一部商品の価格を改定
  • 味の素「業務用製品出荷価格改定のお知らせ」2026年3月発表、2026年8月1日納品分より業務用の調味料、加工食品等の出荷価格を改定

容器・包装資材

  • ミツカン 2026年5月1日発表。納豆商品全19品を2026年6月1日出荷分より参考小売価格(税別)で6〜20%引き上げ。あわせて同日、中東情勢の悪化に伴うナフサの供給不安によって容器・包装資材の安定調達が困難になったとして4商品の一時販売休止を公表
  • PET、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンはナフサ価格との連動性が高い代表的な樹脂であり、食品包装資材業界では価格改定や供給の制約が生じやすい

本記事における留意点

  • 味の素の業務用調味料等の改定について、対象品目ごとの改定率は当社では確認できていないため、本記事では改定の事実のみを記載している
  • ひかり味噌の2026年2月25日付の価格改定について、改定率および対象品目の詳細は当社では確認できていない
  • キッコーマン食品の主力商品の価格については、税抜表記と税込表記が媒体により異なる。本記事では税抜の希望小売価格(311円から329円)を採用している

文:プラスチックパレット株式会社 編集部

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