緩衝材・梱包材の供給と価格【2026年7月版】5月の不足局面から値下げ傾向への転換と代替資材ガイド
2026年5月、気泡緩衝材は原反25%以上の値上げと前年度実績を上限とする出荷制限が同時に発表され、発泡スチロールは約30%の改定となった。それから2か月、局面は変わっている。当時の実データを記録として残したうえで、7月時点の価格動向と、5月に立てた見通しが実際と異なった要因を購買担当者向けに整理する。
- 2026年5月、気泡緩衝材・発泡スチロール・発泡ポリエチレン・ウレタン緩衝材・エアクッションの5品目で値上げ・出荷上限・納期遅延のいずれかが発生した。原料がいずれもナフサ由来であることが共通の背景にある。
- 7月時点では方向が変わっている。当社が取引で確認している範囲では値下げ傾向にあり、上流のナフサは627ドルの底値から反発、同じPE系統のマレーシア産フィルムは5月末比で約18%の値下げとなった。
- 5月時点で立てた「価格は高止まりする」という見通しは実際と異なった。構造問題が残っても相場は動く点と、供給の制約と価格の方向は分けて観測すべき点が、この局面から得られる教訓である。
2026年の緩衝材は、5月の供給制約局面から7月の値下げ傾向へ、2か月で方向が変わった。5月は気泡緩衝材原反25%以上の値上げと前年度実績を上限とする出荷制限、発泡スチロール約30%の改定が並んだ。7月は当社観測で値下げ傾向。ただし7月12日の海峡再閉鎖の影響はこの先に届く。
(2026年5月1日出荷分〜)
(2026年5月出荷分〜)
いずれかが発生(5月時点)
(当社が取引で確認)
CHAPTER 01緩衝材に中東情勢が届く経路、5品目に共通する原料
物を保護するための緩衝材には、見た目も使い方もまったく異なる製品が並ぶ。透明な気泡シート、白い発泡スチロールの箱、家電を包む柔らかいシート、青果に敷くスポンジ状の材料、空気を入れて膨らませる袋。共通点がないように見えるが、いずれもナフサ由来の樹脂を原料としている。
| 品目 | 主な原料 | 樹脂系統 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 気泡緩衝材(プチプチ・エアキャップ) | ポリエチレン | PE系 | EC物流、家電輸送、引越し |
| 発泡スチロール(ビーズ法・EPS) | ポリスチレン(原料ビーズ) | PS系 | 鮮魚箱、農産物箱、保冷 |
| 発泡ポリエチレン緩衝材(PEフォーム) | LDPE・LLDPE | PE系 | 家電、精密機器、自動車部品 |
| ウレタン緩衝材(軟質ウレタンフォーム) | ポリオール・イソシアネート | 石油化学下流製品 | 青果、精密機器、家具 |
| エアクッション・エアピロ | PE/PP複層フィルム | PE・PP系 | EC物流の空隙充填 |
逃げ場が乏しいという構造
この共通性が、緩衝材という品目の難しさを生んでいる。ある品目の供給が制約されたとき、通常であれば別の素材へ切り替えることで対応できる。しかし緩衝材では、切り替え先の候補もまた同じナフサ由来であることが多い。
たとえば発泡ポリエチレン緩衝材が入手しにくくなった場合、成形ウレタンや成形EPPへの切り替えが検討される。しかしこれらも石油化学下流の製品であり、同じ上流の変動を受ける。素材を変えても、原料を辿れば同じ場所に行き着く。
本記事では、テープ類(OPP・PPバンド)とストレッチフィルムを除く「物を保護する緩衝材」「容器・成形包装材」に絞って整理する。フィルム・バンド類については当社の物流資材完全まとめ2026で品目別に扱っている。
本記事は2026年5月25日に公開し、7月24日に全面的に改稿したものである。Chapter 03とChapter 04は5月時点の供給状況を記録として残し、Chapter 05以降で7月時点の状況と、5月の見立てが実際とどう異なったかを扱う。
5月のデータを残しているのは、同種の局面が再び訪れた際の参照点として価値があるためである。値上げ率、出荷制限の運用、納期の延び方は、供給が制約された局面で実際に何が起きるかを示す実例となる。
CHAPTER 022026年2月〜7月、緩衝材市場の時系列
緩衝材の供給と価格に直接関係した出来事を時系列で整理する。国際情勢そのものの全体像は、上位ハブ記事である【イラン情勢2026完全まとめ】米・イラン対立・ホルムズ海峡と日本産業への影響を参照されたい。
| 時期 | 出来事 | 影響 |
|---|---|---|
| 2026-02-28 | ホルムズ海峡が事実上封鎖 | ナフサ調達環境の変化。全品目の起点 |
| 2026-04-01 | 国内大手4社がLDPE・LLDPEを一斉値上げ(出荷分から) | 発泡PE緩衝材の原料コストが上昇 |
| 2026-04上旬 | 国内エチレンプラント12基のうち6基が減産、フル稼働は3基 | 樹脂の国内生産量が制約される |
| 2026-04-20 | 気泡緩衝材の業界最大手が、以降の注文について前年度出荷量を上限とする方針を公表 | 価格ではなく数量の確保が課題に |
| 2026-04-21 | 発泡スチロールの原料ビーズが仕入価格で3割高騰 | EPS製品の製造原価が上昇 |
| 2026-05-01 | 気泡緩衝材が出荷分から改定(原反25%以上・加工品20%以上・特殊品35%以上)。出荷上限の運用も開始 | EC物流・家電輸送で調達難易度が上昇 |
| 2026-05 | 発泡スチロールが出荷分から約30%改定。ボイラー用重油も2か月で約1.6倍に上昇 | 水産・農業用容器のコストが上昇 |
| 2026-05-25 | 本記事の初版を公開(5品目の供給状況を記録) | — |
| 2026-05末→07 | マレーシア産ストレッチフィルムが約18%の値下げ | 同じPE系統で価格が下方向へ動いた事例 |
| 2026-07-12 | ホルムズ海峡が再閉鎖 | 影響が資材に届くのは2〜6か月後 |
| 2026-07-14 | ナフサが627ドル/MTの底値から反発する局面に | 上流価格は下げ止まり |
4月から5月にかけて値上げと出荷制限が集中し、6月以降は反対方向の動きが出ている。注目すべきは、5月時点で顕在化していた構造問題(エチレン減産・通航リスク)が解消していないにもかかわらず、価格は下方向へ動いた点である。この点はChapter 06で扱う。
CHAPTER 03品目別の供給状況、2026年5月時点の記録
以下は2026年5月時点で、値上げ・出荷上限・納期遅延のいずれか(または複数)が発生していた主要5品目である。発表元のメーカー名は伏せるが、出典はChapter 10で開示している。7月時点の状況はChapter 05を参照されたい。
① 気泡緩衝材(プチプチ・エアキャップ)
業界最大手メーカーが、2026年4月20日以降の注文または5月1日出荷分以降について前年度の出荷量実績を出荷上限とする方針を公式発表した。価格は原反25%以上、加工品20%以上、特殊品35%以上の改定となった。
再生原料を80〜90%使用する銘柄も、再生原料そのものの安定確保が難しくなっており、再生比率の高い品種ほど供給の制約が厳しい状況にあった。EC物流・家電輸送・引越し用途では代替が効きにくく、エアキャップ袋・フラップ付き袋などの加工品は調達リードタイムが延びた。
② 発泡スチロール(ビーズ法・EPS)
水産・農業用容器(鮮魚箱・農産物箱)を中心に製造する九州の発泡スチロール製造企業が、5月出荷分から約30%の価格改定を発表した。原料ビーズ(ナフサ由来)が4月21日から3割高騰し、ボイラー用重油も2か月で約1.6倍に上昇している。
さらにポリ袋・テープなどの副資材も値上がりしていたため、製造原価全体が連動して上昇する構図となった。現場からは「40年以上業界にいるが、湾岸危機を含めても今回のような急激な値上げと供給不安は初めて」との談話が報じられている。
③ 発泡ポリエチレン緩衝材(PEフォーム・架橋PE系)
シート状・ロール状の発泡PE緩衝材は、原料LDPE・LLDPEの値上げを直接受けた。2026年4月1日出荷分から国内大手4社が一斉に値上げしており、製品価格は原料PEの改定に連動して10〜20%超の上昇となった。
家電・精密機器・自動車部品の輸送緩衝材として代替が効きにくく、成形品(成形ウレタンや成形EPP)への切り替えも同じくナフサ系であるため、切り替え先が限られる状況だった。特定グレードでは受注停止も発生した。
④ ウレタン緩衝材(軟質ウレタンフォーム)
兵庫県内の青果生産者の事例として「イチゴを販売する際は緩衝材のウレタンを敷き、フィルムで包むが、新規発注できない状況」と地方紙が報じている。軟質ウレタンの原料であるポリオール・イソシアネートはいずれも石油化学下流の製品で、ナフサクラッカーの減産の影響を受ける。
青果・精密機器・家具の用途で広く使われており、産地・流通段階での在庫切れリスクが顕在化した。値上げ率は原料連動で10〜20%超と推定されるが、個別交渉の比重が高く一律の数値では捉えにくい品目である。
⑤ エアクッション・エアピロ(インフレータブル緩衝材)
EC物流のボイドフィル(空隙充填)として普及したエアピロ・エアクッション類は、PE/PP複層フィルムを原料とするため気泡緩衝材と同じ供給の制約を共有する。大手通販サイトでは標準的なエアピロ製品で「2026年6月上旬入荷」の表示が続き、納期は平時の2〜3倍に延びた。
上記5品目に加え、ポリ袋(指定ごみ袋を含む)は一部地域で買い占めの動きも報告された。自治体は冷静な対応を呼びかけていたが、調達担当としては「価格改定の波がポリ袋にも及ぶ」前提で発注計画を組むほうが安全という状況だった。
CHAPTER 04在庫・納期・値上げ率マトリクス(5月時点)
2026年5月時点の主要5品目について、購買判断に必要な指標を一覧化する。「在庫状況」は業界全体の傾向であり、個別の取引先・グレード・数量によって差異がある。本表は5月時点の記録であり、7月時点の状況とは異なる。
| 品目 | 値上げ率(2026年5月時点) | 在庫状況(同) | 調達リードタイム(同) | 代替難易度 |
|---|---|---|---|---|
| 気泡緩衝材 | 原反25%+/加工品20%+/特殊品35%+ | 出荷上限あり(前年度実績ベース) | 標準品 2〜3週間/特殊品 4〜6週間 | 高(紙系で部分代替可) |
| 発泡スチロール | 約30%(5月出荷分〜) | 原料ビーズ調達難・6月以降不透明 | 2〜4週間(不安定) | 高(リターナブル容器化が現実解) |
| 発泡ポリエチレン | 原料PE値上げに連動(10〜20%超) | 供給制約・特定グレード受注停止 | 3〜5週間 | 高(成形ウレタン・EPPも同様に制約) |
| ウレタン緩衝材 | 原料連動(10〜20%超と推定) | 新規発注が困難な事例あり | 不安定(個別交渉) | 中(紙系・リターナブル化で代替可) |
| エアクッション | 気泡緩衝材に準じる | 大手通販で入荷待ちが継続 | 4〜6週間 | 中(紙緩衝材で代替可) |
本表が示しているのは、供給が制約された局面で各品目がどのような形で影響を受けるかという型である。気泡緩衝材は出荷上限という数量の制約、発泡スチロールは原料と燃料の二重のコスト上昇、ウレタン緩衝材は新規発注の停止と、現れ方が品目ごとに異なる。
2026年7月時点では状況が変わっているが、同種の局面が再び訪れた際には、この型が繰り返される可能性が高い。値上げ率の数値そのものより、影響の現れ方の違いを参照点として使えるほうが実務では役に立つ。
CHAPTER 052026年7月時点の価格動向
初版の公開から約2か月が経過し、緩衝材を取り巻く状況は変わった。ここからが本記事の7月版としての中心となる。
当社が確認している方向
公表資料ではなく、当社が2026年7月時点の取引で確認している範囲では、緩衝材は値下げ傾向にある。原料であるLDPE・LLDPE系が落ち着いたことを受け、2026年前半の改定局面からは方向が変わっている。個別の見積条件やロット、納入先によって差が出るため、傾向として参照されたい。
上流と周辺品目の動き
この方向を裏づける材料が、上流と周辺品目の双方にある。
| 指標 | 2026年7月時点の状況 | 緩衝材との関係 |
|---|---|---|
| ナフサ価格 | 627ドル/MTの底値から反発する局面(7月14日時点) | 全品目の原料。いったん下落したうえで反発 |
| マレーシア産ストレッチフィルム | 5月末から7月にかけて約18%の値下げ | 同じPE系統。価格が下方向へ動いた事例 |
| 緩衝材(当社観測) | 値下げ傾向 | LDPE・LLDPE系の原料が落ち着いたことを反映 |
| ホルムズ海峡 | 2026年7月12日に再閉鎖 | 影響が資材に届くのは2〜6か月後 |
マレーシア産ストレッチフィルムの値下げは、緩衝材と原料系統を共有する品目で価格が下方向へ動いた事例にあたる。同じLDPE・LLDPEを原料とするため、緩衝材にも同方向の圧力が働いていると考えられる。
2026年7月12日にホルムズ海峡が再閉鎖されている。ナフサから樹脂、樹脂から成形品へと波及するには2〜6か月の時間差があるため、この影響が緩衝材の価格に現れるのはこの先となる。
また上流のナフサは底値から反発する局面にあり、下落が続いているわけではない。7月時点の値下げ傾向は、それ以前の原料下落を反映したものであり、この先の局面とは分けて考える必要がある。
CHAPTER 065月の見通しはなぜ実際と異なったのか
初版では、2026年下半期の見通しとして「元値への回復は期待しにくい」「高くなった現状価格が新たな水準として継続する」と見込んでいた。結果として、この見立ては実際と異なる方向に動いた。なぜ外れたのかを整理しておくことは、次の局面を読む際の材料になる。
要因1:原料相場が下落する局面を織り込んでいなかった
5月時点の見立ては、次の3層の構造問題を根拠としていた。ホルムズ海峡の通航リスク、国内エチレン12基中6基減産という設備稼働の問題、そして韓国産ナフサの輸出制約である。これらの解消には時間がかかるため、価格は高止まりするという論理だった。
実際には、これらの構造問題が解消していないにもかかわらず、相場そのものは下落する局面が生じた。需要側の減退と、非中東産ナフサへの代替調達の進展が、供給側の制約を上回って価格に効いたためである。
ここから得られる教訓は明快である。構造が変わらなくても価格は動く。構造分析は価格の方向を決める要因の一つではあるが、それだけで見通しを立てると、需給バランスの変化を取りこぼす。
要因2:供給の制約と価格の方向を同じものとして扱っていた
もう一つの要因は、分析の枠組みそのものにある。5月時点では「供給が制約されている=価格が上がり続ける」という前提で見通しを立てていた。
しかし実際には、供給の制約が緩む局面と価格が下がる局面は、必ずしも同時に訪れるわけではなく、また別々に動くこともある。出荷上限が続いていても価格が下がることはあり、逆に数量は確保できても価格が上がることもある。両者は分けて観測すべき指標である。
この2つの誤差から導かれる実務上の姿勢は、単一の方向を前提とした計画を立てないことである。5月時点で「価格は高止まりする」前提で年間予算を組んだ場合、7月の値下げ局面では予算が余る。逆に7月時点で「下がり続ける」前提を置けば、再閉鎖の影響が届いたときに不足する。
上下の幅を持たせた試算と、四半期ごとの見直しを前提にした計画が、変動の大きい局面では現実的な対応となる。
CHAPTER 07代替資材の探し方、5つの実務アプローチ
緩衝材の供給が制約される局面では、「同じ品目を別ルートで探す」より「梱包設計そのものを変える」ほうが中期的に効率が高い。以下、購買・物流・品質保証の各部門で実装しやすいアプローチを5つ整理する。これらは価格が下がっている局面でこそ検討を進めやすい点も、あわせて押さえておきたい。
① 紙緩衝材への部分置き換え
クラフト紙シュレッド、ハニカム紙、紙パッキングペーパーなどへの部分置き換えは、EC物流・ギフト包装で先行している実装パターンである。
ただし完全な逃げ場ではない。2026年5月時点でグラビアインキ30%超、段ボール原紙10〜15%、紙器用接着剤の値上げが発表されており、紙系もコスト上昇の局面にあった。ポリ系緩衝材の使用量を5〜7割に減らす程度の部分置き換えとして設計するのが現実的である。
② 再生原料比率の高い銘柄への切り替え
気泡緩衝材については、再生原料を80〜90%使用する銘柄が従来から存在する。これらは値上げ局面でもバージン原料品より価格上昇率がやや低く抑えられる傾向にある。
ただし2026年前半は再生原料そのものの供給が制約されていたため、調達の優先順位を確保するには早期発注と既存取引先との関係が要点となった。原料の由来が国内循環にあるか輸入樹脂にあるかで、価格の動き方と供給の安定性が変わる構造は、当社が扱う再生プラスチック原料と共通する。
③ リターナブル容器化
水産・農業・自動車部品・家電など、定期的に同一の仕向地へ発送する物流では、発泡スチロールや段ボールと緩衝材を組み合わせた使い捨て梱包を、プラスチックコンテナ・折りたたみコンテナ・密閉コンテナといったリターナブル容器に置き換えることで、緩衝材の使用量そのものを構造的に削減できる。
初期投資は必要だが、5品目のなかで最も構造的な解にあたる。成立条件は納入先との回収スキームを構築できることで、片道輸送や不特定多数向けの出荷では成立しにくい。
④ 梱包規格そのものの見直し
輸送時のダメージを「緩衝材で守る」発想から、「パレットと積載設計で揺らさない」発想への転換も有効である。具体的には、パレット内寸を製品寸法に最適化して空隙を減らす、高剛性パレットへの切り替えで段積み時の沈み込みを抑える、ネスティング・段積みの再設計で輸送時の振動と衝撃を構造的に低減する、といったアプローチが該当する。
⑤ もみ殻・木毛・コーンスターチ系の生分解性緩衝材
農産物・陶器・ガラス器などの用途では、もみ殻・木毛・コーンスターチ系の生分解性緩衝材も選択肢になる。供給量は限定的だが、ナフサ系の代替として地域経済との結びつきも訴求できる。BtoC・ギフト用途では環境配慮のメッセージにも転用しやすい。
時間軸で整理する
| 期間 | 取りうる対応 | 留意点 |
|---|---|---|
| 短期(1〜3か月) | 在庫の前倒し確保/取引先の複数化/規格品から汎用品への切り替え/再生原料比率の高い銘柄への移行 | 在庫の前倒しは過剰在庫と表裏一体。倉庫費とキャッシュフローへの影響もあわせて検討する |
| 中期(3〜12か月) | 紙系緩衝材への部分置き換え/梱包規格の見直し/リターナブル容器の試験導入/パレット最適化 | 設計変更には品質保証・物流・営業の合意形成が必要。試験導入から段階展開が現実的 |
| 長期(12か月〜) | リターナブル物流の本格構築/生分解性素材の組み込み/調達先の構造的な多様化 | 価格の局面が変わっても効き続ける対応を選ぶ |
| 避けるべき対応 | 買い占めによる過剰在庫/品質グレードの安易な引き下げ/検証を経ない直輸入品への切り替え | 食品・医療向けでは品質保証の維持が最優先。コスト最適化と品質維持のバランスを見失わない |
なお使用量そのものを下げるという発想は、緩衝材に限らず物流資材全般に共通する。フィルム・バンド・テープについての具体的な手順は、当社の物流資材の使用量削減2026で整理している。
CHAPTER 08購買・調達実務で使う判断軸
ここまでの内容を、購買・物流の実務判断に落とし込む。
判断軸1:値下げ局面を在庫水準の見直しに使う
価格が下がっている間に、欠品すると出荷が止まる品目の在庫を平時より厚めに確保しておく。7月12日の海峡再閉鎖の影響が届く時期を考えると、この局面は在庫を積む機会にあたる。ただしChapter 07の表に記した通り、在庫の前倒しは倉庫費とキャッシュフローの問題と表裏一体である。
判断軸2:単価の交渉だけで判断しない
Chapter 06で述べた通り、単一の方向を前提とした計画は変動の大きい局面では機能しにくい。年間の調達計画では、直近の単価と過去1年の高値の両方で試算し、どちらの局面でも成立するかを確認する形が安全側の対応となる。
判断軸3:設計変更の検討はこの時期に進める
供給が制約されている局面では、割当への対応や代替品の緊急評価に追われ、設備投資や梱包設計の検討まで手が回りにくい。価格と供給が落ち着いている時期こそ、リターナブル容器の試験導入や梱包規格の見直しに着手できる。設計変更は一度実施すれば、その後の価格局面がどう動いても効き続ける。
判断軸4:品目ごとに影響の現れ方が違うことを前提に置く
Chapter 04で見た通り、気泡緩衝材は出荷上限という数量の制約、発泡スチロールは原料と燃料の二重のコスト上昇、ウレタン緩衝材は新規発注の停止と、影響の現れ方が異なる。取り扱い品目がどの型に該当するかを把握しておくことで、次の局面での備え方が変わる。
判断軸5:観測すべき指標
次の改定を先読みするために、継続して確認する意味がある指標は次の通りである。
- ナフサ価格と国内エチレンプラントの稼働状況(全品目の先行指標)
- LDPE・LLDPE・ポリスチレンの樹脂改定発表(気泡緩衝材・発泡PE・発泡スチロールの指標)
- ポリオール・イソシアネートの動向(ウレタン緩衝材の指標)
- ホルムズ海峡の通航状況と、そこから2〜6か月の時間差
- 紙系資材の価格改定(代替候補としての紙緩衝材のコスト)
2026年の緩衝材で判断を誤らせやすいのは、その時点の方向をそのまま延長して計画を立てることである。5月の高止まり前提も、7月の値下げ前提も、単独では次の局面に対応できない。品目ごとの型を把握し、上下の幅を持たせた試算をしたうえで、価格が落ち着いている時期に設計変更を進めることが現実的な対応となる。当社では梱包規格の見直しと代替パレット・折りたたみコンテナに関するご相談を承っている。
CHAPTER 09用語集
本記事で使用する用語を整理する。
CHAPTER 10出典・エビデンス一覧
2026年5月時点の供給状況(Chapter 03・04の根拠)
- 気泡緩衝材の業界最大手メーカーによる出荷制限および価格改定の公式発表。2026年4月20日以降の注文または5月1日出荷分以降について前年度出荷量を上限とする方針、原反25%以上・加工品20%以上・特殊品35%以上の改定
- 九州の発泡スチロール製造企業による2026年5月出荷分からの約30%の価格改定発表。原料ビーズが4月21日から3割高騰、ボイラー用重油が2か月で約1.6倍に上昇したことを要因として挙げている
- 国内大手4社によるLDPE・LLDPEの一斉値上げ(2026年4月1日出荷分から)
- 兵庫県内の青果生産者によるウレタン緩衝材の新規発注に関する地方紙報道
- 大手通販サイトにおけるエアピロ製品の入荷時期表示(2026年6月上旬入荷)
- PE・PP値上げ(2026年4月1日出荷分から)および韓国産業通商資源省によるナフサ全量輸出禁止(5か月間):LOGISTICS TODAY「エチレン設備、追加停止回避もナフサ価格は2倍」2026年4月5日
- 食品トレー原料PSの在庫状況:LOGISTICS TODAY「食品トレー原料PS、在庫2か月」2026年4月
- 紙系資材の価格改定(グラビアインキ30%超・段ボール原紙10〜15%・紙器用接着剤)に関する各社発表
- 国内エチレンプラント12基のうち6基が減産、フル稼働は3基という稼働状況
2026年7月時点の状況(Chapter 05の根拠)
- ナフサが627ドル/MTの底値から反発する局面にあること(2026年7月14日時点)、およびマレーシア産ストレッチフィルムの2026年5月末から7月にかけての約18%の値下げは、当社が取引で確認している内容に基づく
- 2026年7月時点で緩衝材が値下げ傾向にあるという記述は、当社が取引で確認している範囲での方向感であり、公表資料に基づくものではない
- 2026年7月12日のホルムズ海峡再閉鎖
当社関連記事
本記事における留意点
- Chapter 03およびChapter 04は2026年5月25日時点の記録であり、7月時点の状況とは異なる。両者を区別して参照されたい
- ウレタン緩衝材の値上げ率は原料連動による推定であり、確定した改定率として公表された資料は当社では確認できていない
- 7月時点の価格動向は当社が取引で確認している方向感であり、個別の見積条件・ロット・納入先によって差が出る
- 各社の改定率は発表時点の値であり、その後の追加改定や適用範囲の変更を反映していない場合がある
CHAPTER 11よくある質問
2026年5月に緩衝材の供給が制約されたのはなぜですか
気泡緩衝材・発泡スチロール・発泡ポリエチレン・ウレタン緩衝材・エアクッションはいずれもナフサ由来の樹脂を原料としています。2026年2月末のホルムズ海峡封鎖を起点にナフサの調達環境が変化し、2カ月半を経た5月時点でポリエチレン・ポリプロピレン・ポリスチレン系の包装資材すべてに影響が広がりました。原料の値上げに加え、国内エチレンプラント12基のうち6基が減産しフル稼働が3基にとどまったことも供給量の制約要因となりました。
2026年7月時点で緩衝材の価格はどうなっていますか
当社が取引で確認している範囲では値下げ傾向にあります。原料であるLDPE・LLDPE系が落ち着いたことを受け、2026年前半の改定局面からは方向が変わっています。上流のナフサは2026年7月14日時点で627ドル/MTの底値から反発する局面にあり、同じPE系統のマレーシア産ストレッチフィルムでは5月末から7月にかけて約18%の値下げが確認されています。ただし2026年7月12日にホルムズ海峡が再閉鎖されており、その影響が届くのはこの先となります。
5月時点の見通しはなぜ実際と異なったのですか
要因は2点あります。第一に、原料相場が下落する局面を織り込んでいなかったことです。5月時点では通航リスク・国内エチレンの減産・韓国産ナフサの輸出制約という3層の構造問題を根拠に価格の高止まりを前提としましたが、構造問題が残るなかでも需要の減退と代替調達の進展により相場は下落しました。第二に、供給の制約と価格の方向を同じものとして扱っていたことです。両者は同時に緩む場合があり、分けて観測する必要があります。
気泡緩衝材の代替として何が使えますか
用途によって選択肢が分かれます。EC物流やギフト包装では、クラフト紙シュレッド、ハニカム紙、紙パッキングペーパーへの部分置き換えが先行しています。ただし紙系も2026年5月時点でグラビアインキ30%超、段ボール原紙10〜15%の値上げが発表されており、完全な逃げ場ではありません。使用量を5〜7割に減らす部分置き換えとして設計するのが現実的です。定期的に同一仕向地へ発送する物流では、リターナブル容器化により使用量そのものを構造的に削減できます。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか
当社は千葉県我孫子市に本社を置く物流資材専門の商社で、プラスチックパレット・折りたたみコンテナ・PPバンド・ストレッチフィルム・再生プラスチック原料を全国のお客様へ供給しています。取り扱う資材のほぼすべてがナフサ由来の樹脂を原料とするため、原油・ナフサ市況と国際情勢は日々の調達判断そのものです。緩衝材も同じ樹脂系統にあり、実務で確認した供給状況とメーカー各社の公式発表を、購買・調達のご担当者が判断に使える形で整理しています。
CHAPTER 12本記事の位置づけと免責事項
本記事は、当社が制作している「2026年サプライチェーン完全ガイド」シリーズのうち、物流資材分野を扱う記事です。2026年5月25日に初版を公開し、2026年7月24日に全面的に改稿しました。品目別の価格動向を横断的に確認される場合は物流資材完全まとめ2026を、国際情勢そのものの全体像については【イラン情勢2026完全まとめ】米・イラン対立・ホルムズ海峡と日本産業への影響を参照してください。
- 情報の時点性について|本記事の記載内容は2026年7月24日時点で確認できた情報に基づいています。中東情勢、原油・ナフサ価格、為替、各社の供給方針は変動するため、記載時点以降の状況を反映していない場合があります。Chapter 03およびChapter 04は2026年5月25日時点の記録です。
- 当社観測と公表資料の区別について|2026年7月時点の価格動向に関する記述は、当社が取引で確認している方向感であり、公表資料に基づくものではありません。個別の見積条件、ロット、納入先によって差が出るため、傾向としてご参照ください。公表資料に基づく数値については、Chapter 10で出典を開示しています。
- 数値の更新可能性について|値上げ率、在庫状況、調達リードタイムに関する数値は、各社の公式発表および専門メディア報道に基づく発表時点の値です。その後の追加改定や適用範囲の変更を反映していない可能性があるため、発注前に必ず取引先の最新の案内をご確認ください。
- 投資判断への非該当|本記事は緩衝材・梱包材の調達実務に資する情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買や投資判断を推奨するものではありません。企業名・製品名の記載は事実関係の説明のためであり、当該企業の評価を示すものではありません。
- 引用の取り扱いについて|本記事における各社の発表内容、報道内容は、公表資料の内容を当社が要約・整理したものです。正確な表現については各出典元の原文をご参照ください。記載に誤りを発見された場合は、お手数ですがご連絡いただけますと幸いです。