やさしく解説
生理用品の2026年の値上げ、エリス・ソフィ・ロリエで時期が分かれた理由
文:プラスチックパレット株式会社 編集部
この記事でわかること
生理用品の値上げは、いつからだったの?エリスは8月1日納品分から15%以上、ソフィは7月以降に5%前後です。 なぜ紙オムツと同じ時期に上がるの?部品の材料がほぼ同じで、どれもナフサから作られるからです。 値札が同じなのに、高くなることはあるの?あります。袋の価格を枚数で割り、1枚あたりで比べます。 買えないとき、どんな支援があるの?学校や公共施設で無償配布をしている自治体があります。2026年10月23日時点:エリスとソフィの改定時期は過ぎています。この記事は7月に書いたもので、エリス(2026年8月1日納品分から)とソフィ(7月以降)の値上げは、記事で紹介した改定時期をすでに過ぎています。9月以降の改定が検討されていると報じられたロリエについては、10月23日時点で、当社は花王の公式の発表を確かめられていません。最新の値上げは11月の値上げ一覧にまとめています。
生理用ナプキンの値上げは、すでに動き始めています。大王製紙は8月1日納品分から全品を15%以上、ユニ・チャームは7月以降に5%前後。残るのは9月以降とされる花王ですが、8月26日時点でも正式な発表はありません。
なぜ紙オムツと同じ時期に上がるのか。ナプキンの中身をほどきながら、家計への影響の計算方法、実質値上げの見分け方、使える支援制度までご説明します。
第1章
生理用品の値上げは、いつから始まるのでしょうか
答え:すでに始まっています。大王製紙は8月1日納品分から、ユニ・チャームは7月以降で、花王は9月以降と報じられています。
結論から書きます。すでに始まっていて、この夏から秋にかけて、メーカーごとに時期をずらしながら進みます。
いちばん大きく、いちばん近いのが大王製紙の改定です。同社は2026年5月15日に価格改定を発表しました。内容は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象品種 | 家庭用・業務用製品 全品 |
| 改定幅 | 現行価格より15%以上 |
| 改定時期 | 2026年8月1日(土)納品分より |
出典:大王製紙株式会社「家庭用・業務用製品の価格改定について」(2026年5月15日)
他社の動きも報じられています。ユニ・チャームは7月以降、紙オムツや生理用品などの主力商品を5%前後値上げすると報道されました。花王については、9月以降に生理用品「ロリエ」などの値上げを検討していると2026年5月の時点で報じられています。花王の分については、この記事を更新している2026年8月26日の時点でも、正式な発表を確認できていません。
| メーカー | 主なブランド | 時期 | 幅 | 状況 |
|---|---|---|---|---|
| 大王製紙 | エリス | 2026年8月1日納品分 | 15%以上 | 公式発表 |
| ユニ・チャーム | ソフィ | 2026年7月以降順次 | 5%前後 | 報道 |
| 花王 | ロリエ | 2026年9月以降 | 未公表 | 検討中と報道 |
出典:大王製紙の公式発表、日本経済新聞2026年5月15日、読売新聞オンライン2026年5月(Yahoo!ニュース掲載分で確認)。ブランド名は各社の主要な生理用品ブランドを記載したもので、対象商品の範囲を示すものではありません。
3社の時期がずれていることには意味があります。値上げは一度で終わらず、8月、9月と段階的に店頭に届きます。「8月に上がったから、これで終わり」ではないという点は、押さえておいていただきたいところです。
ロリエ(花王)はいつ上がるのでしょうか
3社のなかで、いちばん関心が集まっているのがロリエだと思います。ここは、分かっていることと分かっていないことを分けて書きます。
分かっていること。花王が2026年9月以降に生理用品の値上げに踏み切る方針で、取引先の小売企業と交渉していることが、2026年5月に報じられました。同社は取材に対し、生活必需品を安定して供給するために必要な対応のひとつだと説明しています。同社はすでに7月以降、衣料用洗剤の「アタック」やスキンケアの「ビオレ」の改定を先行させています。
分かっていないこと。対象になる商品、改定幅、正式な実施日の3つです。この記事を更新している2026年8月26日の時点でも、花王からの正式な発表を確認できていません。9月が目前に迫っていますが、5月に報じられてから3か月、状況は動いていません。
つまりロリエについては、「9月以降に上がる可能性が高いが、いくら上がるかはまだ分からない」というのが、現時点で言える正確な答えになります。8月1日に改定されるエリスとは、時期が1か月以上ずれます。8月のあいだ値札が動かなかったとしても、ロリエが対象外になったわけではないという点は、押さえておいていただきたいところです。
なぜ「生理用品の値上げ」というニュースを見かけないのか
ここでひとつ、不思議なことがあります。これだけ大きな改定なのに、「生理用品が値上げされる」という見出しのニュースを、あまり見かけないのです。
理由は、発表文の書き方にあります。もう一度、大王製紙の発表を見てください。対象品種の欄は「家庭用・業務用製品 全品」です。ここに「生理用品」という言葉は出てきません。だから記事の見出しにも出てこない。報道の見出しは、対象がイメージしやすい「紙おむつ」や「ティッシュ」になります。
結果として、生理用品を使っている人が自分から検索して確かめるしかない状況が生まれています。この記事を書くことにした直接のきっかけも、そこにあります。当社のサイトには「生理用品 値上げ 2026」「生理用品 15% 値上げ 2026」といった言葉で検索してたどり着く方が一定数いらしていました。それなのに、読める記事を用意していませんでした。
第2章
「15%以上」は、どの商品に当てはまるのでしょうか
答え:日用品の棚にある大王製紙の商品は、ほぼすべてが対象です。報道では、紙オムツ「グーン」と生理用品「エリス」も含まれます。
大王製紙の発表文にある「全品」という言葉を、具体的にほどいていきます。
同社は「エリエール」というブランドで、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、キッチンタオル、ペーパータオルといった紙製品を展開しています。加えて、紙オムツの「グーン」、大人用紙オムツの「アテント」、そして生理用ナプキンの「エリス」があります。
報道では、8月からの改定の対象に紙オムツ「グーン」と生理用品「エリス」が含まれると伝えられています。つまり、日用品の棚にある同社の商品は、ほぼすべてが対象と考えて差し支えありません。
①「15%以上」は、メーカーが小売店に納める価格の改定率です。店頭の値札がそのまま15%上がるとは限りません。
② 8月1日は「納品分から」の日付です。その日に全国の値札が一斉に書き換わるわけではなく、店の在庫がはけるまでは現行価格が残ります。
③ 値上げは価格が上がる形だけでなく、内容量を減らす形(規格変更)で来ることもあります。比べるのは1枚あたりの価格です。
「以上」という言葉の意味
発表文の「15%以上」という書き方に、少し引っかかった方もいるかもしれません。上限が書かれていないのです。
これは価格改定の発表では珍しくない表現です。商品ごとに原料の構成比が違うため、一律の率にできない。だから下限だけを示して、あとは商品ごとに決めるという形になります。
生理用ナプキンのように石油由来の素材が多く使われている商品は、紙だけの商品より上げ幅が大きくなる可能性があります。逆に言えば、この記事の後半でご説明する「1枚あたりの価格で比べる」という作業が、それだけ意味を持ちます。
第3章
生理用ナプキンは、何からできているのでしょうか
答え:木からできているのはパルプだけで、あとはすべて石油(ナフサ)から作られています。紙製品というより、石油製品に近いものです。
ここが、この記事の中心です。値上げの理由を理解するには、ナプキンを部品ごとにほどいてみるのが一番早いからです。
1枚の生理用ナプキンは、おおむね次の部品でできています。
| 部品 | 役割 | 主な材料 | もとをたどると |
|---|---|---|---|
| 表面シート | 肌に触れる面。水分を素早く下へ通す | 不織布(ポリプロピレン) | 石油(ナフサ) |
| 吸収体 | 水分を抱え込んで戻さない | 綿状パルプ+高吸水性ポリマー | 木材+石油(ナフサ) |
| 防漏シート | 裏側への漏れを防ぐ | ポリエチレンフィルム | 石油(ナフサ) |
| 粘着剤 | 下着に固定する | ホットメルト接着剤 | 石油(ナフサ) |
| 個包装 | 1枚ずつ包む | ポリエチレン等のフィルム | 石油(ナフサ) |
材料の一般的な構成をまとめたものです。商品によって具体的な材料や構成は異なります。
並べてみると、木からできているのはパルプだけで、あとはすべて石油から作られていることが分かります。「紙ナプキン」と呼ばれることもありますが、実態は紙製品というより石油製品に近い。ここが、値上げの理由を理解する鍵になります。
吸収体に入っている白い粒
部品のなかで、価格の影響がいちばん大きいのが高吸水性ポリマーです。SAPという略称で呼ばれることもあります。
これは自分の重さの数百倍から千倍近くの水を吸って、ゼリー状に変わる粉です。正式にはポリアクリル酸ナトリウムといいます。日本のメーカーが1983年に実用化したもので、これが登場したことで紙オムツが一気に普及しました。それまで布おむつが主流だったのが、この材料で変わったのです。
そして重要なのは、この高吸水性ポリマーが石油由来のアクリル酸から作られるという点です。原油からナフサができ、ナフサからプロピレンができ、プロピレンからアクリル酸ができ、アクリル酸から高吸水性ポリマーができる。この経路のどこかが詰まると、生理用品の原価が動きます。
身近なところで言えば、お弁当に入れる保冷剤の中身も、水と高吸水性ポリマーです。保冷剤とナプキンとオムツの中身が同じ材料だというのは、言われないと気づきにくいところだと思います。
第4章
なぜ紙オムツと同じ時期に値上がりするのでしょうか
答え:部品の材料がほとんど同じだからです。製造ラインも原料の調達先も重なるため、一方だけを据え置くことは起こりにくいのです。
ここまで読んでいただければ、答えはもう見えていると思います。部品の材料がほとんど同じだからです。
当社では2026年6月に、紙オムツの値上げについて解説した記事を公開しています。そこでオムツを部品ごとに分解したのですが、並べてみると生理用ナプキンとほぼ重なります。
| 役割 | 生理用ナプキン | 紙オムツ |
|---|---|---|
| 肌に触れる面 | 不織布(ポリプロピレン) | 不織布(ポリプロピレン) |
| 水分を抱える部分 | パルプ+高吸水性ポリマー | パルプ+高吸水性ポリマー |
| 漏れを防ぐ層 | ポリエチレンフィルム | ポリエチレンフィルム |
| 貼り合わせ | ホットメルト接着剤 | ホットメルト接着剤 |
| 固定する部分 | 粘着テープ | テープ・ギャザー(合成ゴム等) |
当社の紙オムツ解説記事の分解内容と対照したものです。
製造ラインも近く、同じ工場で両方を作っているメーカーもあります。原料の調達先も重なります。ですから、原料が上がったときに一方だけを据え置くという判断は、現実には起こりにくい。同じ発表文のなかで一緒に改定されるのは、当然の帰結ということになります。
逆に言えば、紙オムツの値上げニュースを見たら、生理用品も同じように動いていると考えて構いません。報道されていないだけです。
紙オムツ側の詳しい経緯と、素材ごとの解説は、こちらの記事にまとめています。ニュースで聞くイラン情勢が招く「2026年紙オムツショック」をやさしく解説、いつものオムツが値上げされる本当の理由
第5章
ナフサとは何で、いま何が起きているのでしょうか
答え:ナフサはプラスチックや化学製品の原料になる液体です。2026年4〜6月期の国産ナフサ基準価格は118,900円/klで、過去最高でした。
ここまで何度も出てきた「ナフサ」という言葉を、あらためて整理します。
原油を精製すると、いくつもの液体に分かれます。ガソリン、灯油、軽油、重油。そのなかにナフサがあります。ガソリンによく似た透明な液体で、違いは使い道です。ガソリンは車を走らせる燃料になり、ナフサはプラスチックや化学製品の原料になります。
ナフサを分解すると、エチレン、プロピレン、ベンゼンといった素材ができます。ここから先が、私たちの身のまわりです。レジ袋、食品トレー、ラップ、ペットボトル、洗剤、塗料、そして不織布と高吸水性ポリマー。暮らしのなかのプラスチック製品は、ほぼすべてこの経路から来ています。
2026年に何が起きたのか
2026年2月末以降、中東の情勢が悪化し、ホルムズ海峡の通航に支障が出ました。日本が輸入するナフサの多くは中東から来るため、供給の見通しが不安定になりました。
価格の動きを、公表されている数字で追ってみます。
| 時期 | 国産ナフサ基準価格 | 状況 |
|---|---|---|
| 2026年1〜3月期 | 65,700円/kl | 前の四半期比+100円でほぼ横ばい |
| 2026年4〜6月期 | 118,900円/kl | 前の四半期比+53,200円。水準・上げ幅とも過去最高 |
出典:化学工業日報2026年4月30日・2026年7月31日、日本経済新聞2026年4月28日。4〜6月期は2026年7月31日に確報が公表され、118,900円/kl(前四半期比+53,200円)で確定しました。
1〜3月期がほぼ横ばいだったのは、この期の価格が2025年11月から2026年2月にかけての相場をもとに決まる仕組みだからです。情勢が悪化する前の相場が反映されていたため、動きが小さくて済みました。
そして4〜6月期から、影響が数字に出てきます。2026年7月31日に公表された確報では、118,900円/klでした。前の四半期の65,700円から53,200円上がり、1.81倍です。上げ幅も水準も過去最高で、4月時点で「2倍弱まで上がる」と報じられていたとおりの結果になりました。
メーカーの発表が5月に集中し、実際の値上げが7月から9月に来ているのは、この時間差のためです。原料の相場が動いてから店頭に届くまで、数か月かかるのです。
ここで押さえていただきたいのは、原料が2倍近くになったのに対して、製品の改定幅が15%にとどまっているという点です。原料費は製品の原価の一部ですから単純な比較はできませんが、メーカーがかなりの部分を自社で吸収していることは読み取れます。
「便乗値上げではないか」という受け取り方をされることもありますが、数字の並びだけを見れば、そう単純な話ではありません。
ナフサに何が起きているのか、いつまで続くのかについては、こちらの記事で詳しく扱っています。ナフサ不足はいつまで続くのか、目詰まりの原因と値上げが止まらない理由
第6章
家計の負担は、どのくらい増えるのでしょうか
答え:ご自身のレシートで計算できます。仮の例では、1か月に3パック使うと月+180円、年間+2,160円です。
ここは、正直に前置きをさせてください。
生理用品の店頭価格は、商品、容量、販売店、地域によって大きく変わります。特売の頻度も店ごとに違います。ですから「1パックいくらから、いくらになります」と書くことは、私にはできません。書けば、それは推測になってしまいます。
そのかわり、ご自身の数字で計算できるやり方をお示しします。
計算のしかた
まず、いつも買っているパックのレシートか値札を見てください。そして次の3つを書き出します。
- 1パックの価格
- 1パックの枚数
- 1か月に使うパックの数
1パックの価格を枚数で割ると、1枚あたりの価格が出ます。これが基準値です。この基準値に1.15を掛けたものが、15%の改定がそのまま店頭に届いた場合の目安になります。
数字の感覚をつかむため、以下は計算のしかたを示すための仮の例としてご覧ください。実際の価格ではありません。
| 項目 | 仮の数値 | 15%上乗せ後 | 差 |
|---|---|---|---|
| 1パックの価格 | 400円 | 460円 | +60円 |
| 1か月に3パック使う場合 | 1,200円 | 1,380円 | +180円 |
| 年間(12か月) | 14,400円 | 16,560円 | +2,160円 |
価格・使用量ともに計算方法を示すための仮定値です。実際の負担額はご自身の購入価格と使用量に置き換えてご確認ください。
1回の買い物では数十円の差です。年で見ると数千円になります。この「1回では小さく、年で見ると効いてくる」という性質が、日用品の値上げの特徴です。だから気づきにくく、気づいたときには家計簿の項目が膨らんでいます。
複数人が使う家庭では
ひとつ付け加えておきます。娘さんと母親、あるいは姉妹といった形で、ひとつの家庭で複数人が生理用品を使っている場合、負担はその人数分になります。上の仮の例で2人なら年間で4千円台、3人なら6千円台という計算です。
さらに、この家庭ではおむつやトイレットペーパー、ティッシュも同じ8月1日から上がります。生理用品だけを見ていると小さく見えますが、同じ日に同じメーカーの棚全体が動くという構図を、頭に置いておいていただきたいところです。
第7章
買いだめは、しておいたほうがいいのでしょうか
答え:大量の買いだめは、おすすめしません。いつもの商品を1パックか2パック分だけ前倒しで買えば十分です。
この質問には、はっきりお答えします。大量の買いだめは、おすすめしません。
理由は3つあります。
理由1:慌てる必要がないから
8月1日という日付は「納品分から」の改定日です。メーカーが小売店に納める価格が変わる日であって、店頭の値札がその日に一斉に書き換わるわけではありません。店にある在庫は、はけるまで現行の価格で売られます。地域や店舗によって、実際に値札が変わる時期には差が出ます。
「明日から高くなるから今日中に」という性質の話ではないのです。
理由2:保管に向かない商品だから
生理用品は肌に直接触れるものです。高温多湿の場所で長期間保管すると、品質に影響が出る可能性があります。夏場の押し入れ、ベランダの物置、日の当たる棚。こうした場所に何か月分も積み上げるのは、避けたほうがいい保管方法です。
メーカーも、直射日光と高温多湿を避けた保管を案内しています。安く買えても、使うときに状態が落ちていたら意味がありません。
理由3:必要な人に届かなくなるから
これは2020年に、私たちが一度経験したことです。特定の商品に注文が集中すると、棚から消えます。消えると不安が広がって、さらに注文が集中します。生産量が足りていても、店頭では品切れになる。
生理用品は、代わりがない商品です。この記事の後半で触れますが、経済的な理由で入手に苦労している人が現実にいます。棚から消えたときに困る度合いは、人によって大きく違います。
現実的な備え方。いつも使っている商品を、1パックか2パック分だけ前倒しで買っておく。この程度が、保管の面でも、店頭の在庫の面でも無理のない範囲だと思います。あわせて、湿気の少ない室内の棚に置くこと。それだけで十分です。
第8章
値札が同じなのに高くなることは、あるのでしょうか
答え:あります。袋の枚数を減らす「規格変更」です。袋の価格を枚数で割り、1枚あたりの価格で比べると見分けられます。
あります。むしろ、これから増えると思っています。
各社の価格改定の発表文を読むと、「価格改定」と並んで「規格変更」という言葉が書かれているものがあります。規格変更とは、商品の内容量や仕様を変えることです。値札を据え置いたまま、袋に入っている枚数を減らせば、1枚あたりの価格は上がります。
これは不正なやり方ではありません。棚に並ぶ価格が上がると買われなくなるという現実があり、メーカーはその範囲で調整しています。ただ、買う側が気づかないままだと、実質的にどれだけ負担が増えたのかが分からなくなります。
見分け方は、割り算だけです
やることはひとつです。袋の価格を、入っている枚数で割ってください。
| 袋の価格 | 枚数 | 1枚あたり | 実質 | |
|---|---|---|---|---|
| これまで | 298円 | 20枚 | 14.9円 | ―― |
| 枚数が減った場合 | 298円 | 18枚 | 16.6円 | 約11%の値上げ |
| 価格が上がった場合 | 343円 | 20枚 | 17.2円 | 約15%の値上げ |
計算のしかたを示すための仮定値です。実在の商品価格ではありません。
値札だけを見ていると、上の表の真ん中の行は「値上げされていない」と見えます。1枚あたりで見れば、11%上がっています。
私は物流資材を扱う仕事をしていて、仕入れの現場で毎日この作業をしています。パレット1枚の価格が動いたとき、それが本当の値上げなのか、仕様が変わって重さや厚みが違うものになったのかを確かめる。単価に直さないと比べられないからです。
日用品の棚の前でも、まったく同じものさしが使えます。スマートフォンの電卓で割り算をひとつするだけです。パッケージの容量表記は変わっていても、1枚あたりの数字は嘘をつきません。
あわせて、パッケージのデザインが変わったタイミングは要注意です。規格変更はリニューアルと同時に行われることが多く、「新しくなりました」という表示の裏で枚数が変わっている場合があります。デザインが変わった商品を見たら、枚数を確認する習慣をつけると確実です。
第9章
生理用品が買えないとき、どんな支援があるのでしょうか
答え:学校や公共施設などで、生理用品を無償配布している自治体が全国にあります。ただ、制度があっても知られていません。
この章は、値上げの解説からは少し外れます。ただ、書かずに済ませるべきではないと考えました。
生理用品には、他の日用品と違う点があります。使う量を減らせない、という点です。節約の対象にしようとすると、我慢や工夫ではなく、健康上のリスクに直結します。
調査で分かっていること
厚生労働省が2022年2月に、全国の18歳から49歳の女性3,000人を対象とした調査を行っています。生理用品の入手について尋ねたもので、結果は同年3月に公表されました。
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 生理用品の購入・入手に苦労した経験が「よくある」「ときどきある」 | 8.1% |
| 同・世帯年収100万円未満の層 | 16.8% |
| 同・世帯年収100〜300万円の層 | 11.6% |
| 入手できないときの対処として「交換の頻度・回数を減らす」 | 約50% |
| 自分の住む自治体で無償配布が行われているか「分からない」 | 64.4% |
出典:厚生労働省「『生理の貧困』が女性の心身の健康等に及ぼす影響に関する調査」(2022年2月実施、同年3月公表)。数値はnippon.comおよび公明党ニュースの報道記事により確認しました。
交換の回数を減らすという対処が5割に達している点は、重く受け止めるべき数字だと思います。値上げがこの層に届くと、増えるのは支出ではなく、我慢の量になります。
使える制度があります
内閣府男女共同参画局は、生理用品の無償配布に取り組む自治体の状況を公開しています。学校の保健室やトイレ、公共施設の窓口などで配布している自治体が全国にあります。防災備蓄の入れ替えを活用しているところ、予算措置をしているところ、住民からの寄付を活用しているところなど、方法はさまざまです。
ただ、先ほどの調査で64.4%が「分からない」と答えていたとおり、制度があっても知られていません。ここは、探せば見つかることが多い領域です。
調べ方。「お住まいの市区町村名 生理用品 配布」あるいは「お住まいの市区町村名 生理の貧困」で検索すると、窓口や実施場所の案内が見つかることがあります。学校に通っている方は、保健室に置かれているかを養護教諭に尋ねるのがいちばん早い方法です。内閣府男女共同参画局のサイトにも、自治体の取組を紹介するページがあります。
値上げの記事にこの章を入れたのは、価格が上がるという情報だけを届けると、いちばん影響を受ける人にとっては不安を増やすだけになると考えたからです。制度の存在は、値上げの数字と同じくらい知られる価値があります。
第10章
これから何を見ていけばいいのでしょうか
答え:国産ナフサ基準価格、花王の正式発表、ご自身の1枚あたりの価格の3つです。いちばん確実なのは3つめです。
最後に、この先の見方を整理します。
見るべき3つの数字
ひとつめは、国産ナフサ基準価格です。四半期ごとに決まる数字で、化学工業日報や業界各社のサイトで公表されています。直近の4〜6月期は118,900円/klで、過去最高を更新しました。次に出るのは7〜9月期の数字です。ここが下がり始めれば、数か月遅れで日用品の値上げ圧力も緩みます。逆に高止まりが続くようなら、2026年内に次の改定が出る可能性を見ておく必要があります。
ふたつめは、花王の正式発表です。9月以降の値上げが検討されていると報じられていますが、2026年8月26日の時点でも正式な発表を確認できていません。発表が出れば、対象商品と改定幅が明らかになります。ロリエをお使いの方は、9月に入ったところで一度確認しておくとよいと思います。
みっつめは、ご自身の1枚あたりの価格です。これがいちばん確実です。国際情勢や原料相場の話は変動が大きく、追い続けるのは大変です。それに対して、いま買っている商品の1枚あたりの価格は、レシート1枚で分かります。3か月に1回でも記録しておけば、実際に自分の生活にどれだけ届いたかが見えます。
値上げのニュースの読み方
この記事を通してお伝えしたかったのは、「何が上がったか」より「何でできているか」を見ると、次にどこが上がるかが読めるということです。
生理用ナプキンの吸収体と、紙オムツの吸水材と、お弁当に入れる保冷剤の中身は、同じ材料です。だから同じ時期に動きます。同じように、洗剤の界面活性剤も、食品トレーも、ラップも、点滴の輸液バッグも、たどっていくと同じナフサに行き着きます。
ナフサが上がったというニュースを見たとき、身のまわりのどこに影響が出るかを予想できる。それは、家計の予定を立てるうえでも、備蓄を考えるうえでも、役に立つ見方だと思います。
当社は物流資材の商社で、生理用品は扱っていません。それでも原料の側は毎日追いかけています。同じ原料からできているものとして、判断の材料をお伝えできればと考えています。
なお、生理用品の消費税は軽減税率8%の対象ではなく10%です。2027年4月から予定されている食料品の1%引き下げにも含まれません。この点については生理用品の値上げはいつからか、各社8月・9月以降の動向と食料品1%引き下げに含まれない理由で扱っています。
家でできること
- いつも買うパックの価格を枚数で割り、1枚あたりの価格を出しておく
- パッケージのデザインが変わった商品は、枚数を確かめる
- 備えは、いつもの商品を1パックか2パック分だけ前倒しで買う程度に。湿気の少ない室内の棚に置く
- 「お住まいの市区町村名 生理用品 配布」で検索してみる。学校に通っている方は保健室を尋ねる
- 1枚あたりの価格を、3か月に1回でも記録しておく
よくある質問
生理用品はいつから値上げされるのですか
大王製紙は2026年8月1日納品分から家庭用・業務用製品の全品を現行価格より15%以上改定すると発表しており、生理用ナプキン「エリス」も対象と報じられています。ユニ・チャームは7月以降に5%前後、花王は9月以降の改定を検討していると報じられています。ただし改定日はメーカーが小売店に納める価格が変わる日であり、店頭の値札が同じ日に一斉に変わるわけではありません。
ロリエはいつから値上げされるのですか
花王が2026年9月以降に生理用品の値上げに踏み切る方針で小売企業と交渉していることが2026年5月に報じられましたが、2026年8月26日の時点でも正式な発表は確認できていません。対象商品と改定幅も未公表です。同社は7月以降、衣料用洗剤やスキンケア製品の改定を先行させています。8月1日に改定済みの大王製紙のエリスとは、時期が1か月以上ずれる見込みです。
なぜ生理用品と紙オムツが同じ時期に値上げされるのですか
部品の材料がほぼ共通しているためです。生理用ナプキンは肌に触れる面が不織布(ポリプロピレン)、中の吸収体がパルプと高吸水性ポリマー、裏面が漏れを防ぐフィルムで構成されます。紙オムツも吸水材と不織布と外装フィルムという同じ組み合わせで、いずれもナフサから作られる素材です。同じ原料が上がれば、同じ時期に同じような幅で価格が動きます。
値上げ幅の15%はそのまま店頭価格に反映されるのですか
必ずしも一致しません。15%以上という数字はメーカーが小売店に納める価格の改定率です。店頭価格は小売店が決めるため、改定率より小さくなることも、販売形態によって異なることもあります。また価格を据え置いて内容量を減らす規格変更の形をとる商品もあるため、袋の価格ではなく1枚あたりの価格で比べることが確実です。
生理用品が買えないときに使える支援はありますか
多くの自治体が学校や公共施設での無償配布に取り組んでおり、内閣府男女共同参画局が取組状況を公開しています。ただし厚生労働省の2022年の調査では、自分の住む自治体で配布が行われているかについて64.4%が「分からない」と回答しており、制度が知られていない状況があります。お住まいの自治体名と「生理用品 配布」で検索すると窓口の案内が見つかることがあります。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか
当社は物流資材の商社として、プラスチックパレットや再生樹脂材料などナフサ由来の製品を日常的に取り扱っており、原料価格の変動を仕入れの現場で直接受けています。生理用品は当社の取扱商品ではありませんが、値上げの原因である原料の側については日々の業務で追いかけている情報があります。同じ原料からできているものとして、判断の材料をお伝えできると考えています。
用語集
ナフサ
原油を精製したときに得られる、ガソリンによく似た透明な液体。プラスチックや化学製品の原料になります。日本は輸入に大きく依存しており、中東からの調達分が多くを占めてきました。
国産ナフサ基準価格
国内の石油化学製品の価格交渉の基準として使われる、四半期ごとに決まる価格。輸入ナフサの価格と入着時の為替から算出されるため、相場の動きが反映されるまでに数か月の時間差があります。
高吸水性ポリマー(SAP)
自分の重さの数百倍から千倍近くの水を吸ってゼリー状になる粉。正式にはポリアクリル酸ナトリウム。日本のメーカーが1983年に実用化し、紙オムツの普及をもたらしました。生理用品、保冷剤、園芸用の保水剤などにも使われます。原料は石油由来のアクリル酸が主流です。
不織布
繊維を織らずに絡み合わせて作ったシート。生理用品や紙オムツでは、肌に触れる面や水分を通す層に使われます。主な材料はポリプロピレンで、ナフサから作られます。
ポリプロピレン(PP)
ナフサから得られるプロピレンを重ねて作るプラスチック。軽くて丈夫で、不織布、食品容器、物流用のパレットなど幅広く使われています。
ポリエチレン(PE)
ナフサから得られるエチレンを重ねて作るプラスチック。柔らかいフィルムに向いており、生理用品の防漏シートや個包装、レジ袋などに使われます。
アクリル酸
高吸水性ポリマーのもとになる化学品。プロピレンから作られます。2026年3月には、この分野の大手メーカーが紙オムツ向け原料の値上げを発表しています。
綿状パルプ
木材から作られる繊維をふわふわにほぐしたもの。生理用品や紙オムツの吸収体で、高吸水性ポリマーを保持する役割を担います。石油由来ではありませんが、パルプ自体の価格や工場のエネルギー費、物流費の上昇を受けています。
ホットメルト接着剤
熱で溶かして塗り、冷えると固まる接着剤。生理用品や紙オムツの部品を貼り合わせるのに使われます。石油由来の樹脂が主成分です。
規格変更
商品の内容量や仕様を変えること。価格を据え置いたまま枚数を減らす形で行われると、1枚あたりの価格は上がります。価格改定の発表文で「価格改定および規格変更」と併記されている場合は、この可能性を確認する必要があります。
納品分から
価格改定の発表文で使われる表現で、メーカーが小売店に納める分の価格が変わる時点を指します。店頭の値札が同じ日に変わるという意味ではありません。店の在庫がはけるまでは、現行価格で販売されることがあります。
生理の貧困
経済的な理由などで生理用品を十分に入手できない状態。厚生労働省が2022年に実態調査を行い、内閣府と自治体が無償配布などの支援に取り組んでいます。
出典・エビデンス一覧17件(公的機関2・報道や企業15)
メーカーの公式発表
- 大王製紙株式会社「家庭用・業務用製品の価格改定について」(2026年5月15日)/対象品種=家庭用・業務用製品 全品、改定幅=現行価格より15%以上、改定時期=2026年8月1日(土)納品分より。2026年8月26日に同社サイトのリリース本文を直接参照して再確認しました。発表文に「生理用品」「ナプキン」「エリス」の語は含まれていません。
- 花王株式会社/2026年8月26日時点で、生理用品の価格改定に関する公式リリースを同社サイトで確認できませんでした。
報道
- 日本経済新聞「ユニ・チャームや大王製紙、紙おむつ値上げ 材料高騰で2026年夏から」(2026年5月15日)/ユニ・チャームの5%前後の改定
- 時事ドットコム「中東影響、原材料高で紙おむつ値上げへ 大王製紙やユニ・チャーム」(2026年5月15日)/改定の背景
- 読売新聞オンライン「おむつ・生理用品・洗剤…生活必需品値上げ、ナフサ高騰の影響広がる」(2026年5月、Yahoo!ニュース掲載分で確認)/大王製紙の対象にエリスが含まれること、花王の9月以降の方針
- 日本経済新聞「国産ナフサ価格、1〜3月ほぼ横ばい 中東危機で4〜6月は2倍弱上昇へ」(2026年4月28日)
- 化学工業日報「国産ナフサ価格、過去最高へ 1~3月は横ばい」(2026年4月30日)/2026年1〜3月期の国産ナフサ基準価格65,700円/kl、前四半期比+100円
- 化学工業日報「4~6月の国産ナフサ11・8万円 上げ幅含め最高」(2026年7月31日)/2026年4〜6月期の国産ナフサ基準価格118,900円/kl、前四半期比+53,200円
- 日本経済新聞「三菱ケミカルG、紙おむつ向け原料など値上げ 稼働率低下影響も反映」(2026年3月26日)/アクリル酸系原料の改定
公的機関の資料
- 厚生労働省「『生理の貧困』が女性の心身の健康等に及ぼす影響に関する調査」(2022年2月実施、同年3月公表)/調査設計を同省公表資料で確認、割合の数値はnippon.com「『生理用品の購入に苦労』8.1%」および公明党ニュース「生理の貧困 初の調査」の報道記事により確認
- 内閣府男女共同参画局「生理の貧困」(自治体の取組紹介ページ)
素材に関する資料
- 岡畑興産「高吸水性ポリマーとは?その特徴や用途について詳しく解説!」/高吸水性ポリマーの原料が石油由来のアクリル酸であること、ゲル状であることの機能
- 化粧品成分オンライン「ポリアクリル酸Naの基本情報・配合目的・安全性」/1983年に国内で実用化され紙オムツの普及をもたらした経緯
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