【2026年7月25日速報】ホルムズ海峡情勢と花火大会、打ち上げ花火は中東と無関係だが屋台の飲食は原油高が直撃、食用油17〜21%・樹脂3割の価格改定を経路別に検証
花火大会の季節に中東情勢のニュースが続き、花火は大丈夫かという声が聞かれる。結論から言えば、打ち上げ花火そのものへの直接の影響は小さい。原料が中東と結びつかず、供給構造の課題はむしろ中国依存にあるからだ。一方で屋台の飲食は、原油高が食用油・包材・熱源の三方向から押し上げる。経路ごとに切り分けて検証する。
- 打ち上げ花火の原料は硝酸カリウム・硫黄・木炭などで、中東の原油・ガスとは結びつかない。ホルムズ海峡情勢が花火本体の供給を直接止める経路は乏しく、影響は限定的である。
- 花火の供給構造で注意すべきは中東ではなく中国依存である。日本で打ち上がる花火の約半数、玩具花火は個数ベースで大半が中国からの輸入とされ、その中国側で生産縮小が進む。
- 影響が集中するのは屋台の飲食である。原油高は食用油、使い捨て容器、LPガス、輸送費の四経路からコストを押し上げ、食用油は業務用17〜21%、樹脂は3割の価格改定が進んだ。
2026年7月のホルムズ海峡情勢は、打ち上げ花火そのものにはほとんど影響しない。原料の硝酸カリウム・硫黄・木炭は中東と無関係で、花火の供給リスクは中国依存にある。一方、屋台の飲食は原油高が直撃し、食用油は業務用17〜21%、汎用樹脂は3割の価格改定が進む。影響は花火本体ではなく屋台側に集中する。
CHAPTER 01花火シーズンに問われる「中東情勢は花火に響くか」
2026年の夏は、花火大会の季節と中東情勢の緊迫が重なった。ホルムズ海峡をめぐる報道が連日続くなかで、花火大会は予定どおり行われるのか、花火や屋台の値段は上がるのか、という問いが自然と生まれる。原油や天然ガスの供給が滞れば、身のまわりのあらゆるものに影響が及ぶという見方が広がっているためである。
本記事はこの問いに、事実ベースで答える。結論を先に示すと、影響は「花火本体」と「屋台の飲食」で大きく異なる。花火そのものへの直接の影響は小さく、影響が集中するのは屋台側である。両者を混同せず、経路ごとに切り分けて整理することが、この問題を正しく理解する近道になる。
本記事は影響を二つに分けて扱う。第一に花火本体(第3章・第4章)。ここでは中東情勢の影響が小さいこと、真のリスクは中国依存にあることを示す。第二に屋台の飲食(第6章〜第8章)。ここでは原油高が食用油・包材・熱源・輸送の四経路からコストを押し上げる構造を、一次データで確認する。
CHAPTER 02ホルムズ海峡情勢の現在地
まず前提となる情勢を確認する。ホルムズ海峡は、ペルシャ湾の唯一の出入口で最狭部は約34km、通常は世界の海上原油貿易の約2割から2割5分、LNGの約2割が通過する世界最重要の輸送路である。ここが2026年に入り不安定化した。
2026年6月17日に米国とイランのあいだで暫定合意(イスラマバード覚書)が署名され、いったんは通航が再開したが、7月に入り攻撃が相次ぎ、覚書は事実上失効したとされる。物流の実態としては、完全な封鎖ではないものの、通常運航にも戻っていない「制約下の限定航行」が続いている。さらに7月下旬には、紅海でのタンカー攻撃やサウジアラビアの港湾封鎖の動きが加わり、迂回ルートを含む海上輸送全体に制約が広がった。
| 指標 | 直近の確認値 | 平常時との比較 |
|---|---|---|
| 海峡の通航隻数(LSEG集計) | 7月19日 4隻 | 前日8隻から半減 |
| 海峡の通航隻数(Windward集計) | 直近24時間 11隻 | 紛争前の約33隻を大幅に下回る |
| 大型タンカー通航(Clarksons集計) | 1週間平均 日量2隻 | 前週5隻、6月下旬〜7月上旬は平均8隻 |
| LNG船の通航 | 7月16日以降 公開データ上ゼロ | 積載済み貨物が湾内に滞留 |
| 航空リスク(EASA勧告) | 湾岸空域に運航回避勧告 | 有効期限2026年7月29日 |
出所:LSEG、Windward、Clarksons、欧州航空安全機関(EASA)の集計・公表資料をコンサルタント系専門ブログが整理したもの(2026年7月20日時点)。集計方法により隻数は異なるが、通常時より通航が大幅に少ない点は各集計で共通する。攻撃主体など未確認の情報は本記事では断定しない。
この情勢が花火や屋台にどう波及するのか。鍵を握るのは「原料が中東と結びつくか」と「原油価格が上がるか」の二点である。次章以降で、花火本体と屋台の飲食を順に見ていく。
CHAPTER 03打ち上げ花火の原料は中東と結びつかない
花火が中東情勢の影響を受けにくい最大の理由は、原料構成にある。ホルムズ海峡が輸送するのは原油とLNGだが、花火の主要原料はそのいずれにも該当しない。
花火の三大原料
打ち上げ花火の火薬部分の中心は黒色火薬である。黒色火薬は、酸化剤である硝酸カリウム(硝石)、燃料である木炭、燃焼促進剤である硫黄の三成分の混合物からなる。玩具花火では、硝酸カリウムの代わりに過塩素酸カリウムが使われるものが多い。
色の演出は、火薬の燃焼に金属の粉末を混ぜ、炎色反応を利用して行う。赤はストロンチウム、緑はバリウム、青緑は銅、黄はナトリウムといった具合である。
| 花火の構成要素 | 主な原料 | 中東・原油との関係 |
|---|---|---|
| 火薬(打揚・破裂) | 硝酸カリウム、木炭、硫黄 | 無関係(鉱物・化学品) |
| 火薬(玩具花火) | 過塩素酸カリウム | 無関係(化学品) |
| 発色剤 | ストロンチウム、バリウム、銅、ナトリウム等の金属 | 無関係(金属) |
| 玉皮・詰め物 | 和紙、クラフト紙 | 無関係(紙) |
石油化学に連なる部分はごく一部
厳密には、玩具花火のバインダー(結合剤)や一部の可燃物に石油化学由来の有機物が使われることはある。しかし花火全体に占めるコストの割合はごく小さく、原油価格の変動が花火の製造コストを大きく動かす関係にはない。花火の値段を決める主因は、原料費よりも手作業中心の製造工程、職人の人件費、火薬を扱うための設備・保安コストである。
したがって、ホルムズ海峡で原油やLNGの輸送が滞っても、それが花火本体の製造や供給を直接止める経路は乏しい。この点が、後述する屋台の飲食との決定的な違いである。
CHAPTER 04花火の本当のリスクは中国依存にある
花火のサプライチェーンにリスクがないわけではない。ただしそれは中東ではなく、生産地の中国への集中という形で存在する。中東情勢を心配する前に、まず押さえるべきはこちらの構造である。
日本の花火は中国製が主力
日本煙火協会によれば、日本で打ち上がる花火も半数ほどは中国製ではないかとされる。金額でみると、国内の打ち上げ花火生産額は2016年に49億円、輸入額は同年に16億円だった。日本の職人技が光る大玉に対し、4号(直径約11.5cm)以下の小さい玉は中国製でも美しさに遜色がないため、中国からの輸入は小さい玉が多い。数のうえでは中国製が大きな比率を占める。おもちゃ花火については、個数ベースで9割以上が中国からの輸入ではないかという業界関係者の見方もある。
中国は世界最大の花火生産国で、全世界の消費量の7〜8割は中国で造られているとも言われる。日本の花火文化は、この供給地に相当程度を依存している。
中国側の生産縮小という構造変化
近年はこの供給地そのものが縮小している。中国でも人手不足で人件費が上がり、花火の価格も上昇してきた。さらに事故のリスクを重視した中国政府の方針で工場が減り、花火卸企業の証言によれば、数年前は5,000〜6,000社あった工場が2,600社ほどに減少したという。生産量が減り、玉が入ってこない状況も実際に発生していると報告されている。
花火の入手可能性に直結するのは、ホルムズ海峡情勢ではなく、この供給地の中国への集中と生産縮小である。加えて国内では、宅地化による工場移転、新規参入の少なさ、職人の後継者不足という長年の課題がある。中東情勢はこれらとは別の話であり、花火本体のリスク要因として同列に扱うのは正確ではない。
この点を踏まえると、「中東情勢が花火に及ぼす影響」という問いの答えは、花火本体についてはほぼ「限定的」である。では影響がまったくないかというと、そうではない。影響は花火から場所を移して、屋台の飲食に現れる。ここからはその経路を、原油価格の動きから順に追う。
CHAPTER 05原油はどこまで上がったか、価格推移の整理
屋台への影響を理解する起点は原油価格である。ここは断面ではなく推移で押さえる必要がある。2026年の原油価格は、中東情勢に連動して大きく振れてきた。
| 時点 | 原油価格の動き | 背景 |
|---|---|---|
| 2026年2月末(攻撃前) | WTI 約67ドル | 緊迫化する前の水準 |
| 2026年2〜3月(攻撃直後) | WTI 一時120ドル近く | 米・イスラエルのイラン攻撃、供給懸念 |
| 2026年7月13日 | ブレント 一時79ドル前後(3〜4%上昇) | 海峡の通航縮小 |
| 2026年7月19日(週末の戦闘激化) | ブレント 一時90ドル超 | タンカー被弾、6月中旬以来の高値 |
| 2026年7月20日 | ブレント9月限 87.95ドルへ戻す | イランの対話姿勢を受け上げ幅を消す |
| 2026年7月24日 | WTI 約89ドル(週間で約10%上昇)、ブレント一時100ドル超 | 紅海でのタンカー攻撃・サウジ港湾封鎖、供給懸念の再燃 |
出所:Bloomberg、CNBC等の報道、およびTrading Economics・Investing.comの市況(2026年7月24日時点)。原油価格は情勢に応じて日内でも大きく振れており、断面値ではなく推移として捉える必要がある。
ポイントは二つある。第一に、攻撃直後に一時120ドル近くまで急騰した局面はいったん落ち着いたものの、7月下旬には紅海でのタンカー攻撃を受けて再び上昇し、7月24日時点でWTIは約89ドル、週間で約10%上昇、ブレントは一時100ドルを超えた。平常時より高い水準での推移が続いている。第二に、原油高は一度上がると即座には戻らず、川下の製品価格には時間差を置いて反映される。2026年2〜3月の攻撃直後に一時120ドル近くまで急騰したコスト増が、3〜4か月遅れて6月納品分の食用油値上げや包材の価格改定として現れているのが、いまの局面である。次章から、その川下への波及を屋台の視点で具体的に追う。
CHAPTER 06屋台への波及①食用油の価格改定
屋台の飲食で原油高の影響が最も分かりやすく現れるのが食用油である。唐揚げ、フライドポテト、イカ焼き、焼きそばなど、屋台の主力メニューの多くが油を使う。
2026年の食用油値上げ
日清オイリオグループは2026年4月、家庭用と業務用の食用油価格を6月1日納品分から値上げすると発表した。大豆や菜種を原料にした商品が対象で、家庭用は11〜15%、業務用や加工食品メーカー向けは17〜21%の引き上げである。例えば家庭用の日清キャノーラ油(1000g)は約15%高くなった。屋台が仕入れるのは主に業務用であり、17〜21%という上げ幅がそのまま関わってくる。
値上げの要因と中東情勢の位置づけ
食用油の値上げは、複数の要因が重なった結果である。原料である大豆・菜種・パーム油がバイオ燃料向けの需要拡大で高止まりしていること、カナダ産菜種の品質悪化、円安基調に加え、製造・出荷にかかるコスト全体の上昇がある。中東情勢はこのうち、原油価格の上昇を通じた輸送コストの増加という形で、押し上げ要因の一つとして加わっている。
つまり中東情勢は食用油値上げの唯一の原因ではないが、すでに高止まりしていた価格に、輸送コスト経由でさらに上乗せする役割を果たしている。屋台の揚げ物・炒め物の原価は、この分だけ確実に重くなっている。
油を大量に使う唐揚げ・フライドポテト・イカ焼きは食用油値上げの影響を受けやすい。一方、わたあめ・かき氷・ベビーカステラは油の使用が少なく、この経路の影響は相対的に小さい。ただし後者も、次章以降の包材・熱源・輸送の影響は受ける。
CHAPTER 07屋台への波及②使い捨て容器とナフサ
屋台の飲食に不可欠なのが、料理を盛る使い捨て容器、飲み物のカップ、包装フィルムといった包材である。これらの多くはプラスチック製で、原油から作られるナフサを起点とする石油化学製品である。当社が物流資材を扱う立場から、最も注視している経路がここである。
ナフサから容器までの流れ
原油を精製して得られるナフサは、分解されてポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などの汎用樹脂になる。この樹脂が、食品容器、カップ、フィルム、ストレッチフィルム、PPバンドなどに加工される。屋台で使われる使い捨て容器やカップは、まさにこの流れの先にある製品である。
| 段階 | 品目 | 屋台での用途 |
|---|---|---|
| 原油 | 中東等から輸入 | すべての起点 |
| ナフサ | 原油を精製 | 石油化学の基礎原料 |
| ポリプロピレン(PP) | 食品容器、OPPフィルム | 料理の容器、包装 |
| ポリエチレン(PE) | レジ袋、フィルム | 持ち帰り袋、包装 |
| 発泡スチロール(PSP) | トレー、丼容器 | 焼きそば・たこ焼き容器 |
2026年の樹脂・包材の価格改定
2026年に入り、この経路のコスト上昇が顕在化した。日本経済新聞によれば、汎用合成樹脂の取引価格は3月に比べて3割上昇し、食品包装などに値上げが波及した。TOPPANホールディングスは、包装材の仕入れ値が2〜3割増えているとして、食品・日用品メーカーへの値上げを打診した。背景として、中東情勢の影響を受けた素材の高騰を価格転嫁する動きが挙げられている。
樹脂価格の起点となる国産ナフサ価格指標は、2026年6月時点で1キロリットルあたり125,103円という高値に達した。当社が2026年5月にまとめた資材値上げの整理でも、PPバンド、ストレッチフィルム、食品容器、プラスチックパレットなどPP・PE系製品が軒並み価格改定の対象となっている。屋台の使い捨て容器も、この同じ流れのなかにある。
詳細な波及構造は、当社の関連記事にまとめている。ナフサからPP・PE系製品への分岐と、建設・物流・包装資材への値上げ一覧については建設・物流・包装資材 値上げ一覧 2026年6月、30社超・ナフサショック影響まとめを参照されたい。
CHAPTER 08屋台への波及③LPガスと④輸送費
残る二つの経路、熱源と輸送も原油・エネルギー価格に連動する。食用油・包材と合わせて、屋台のコストは四方向から押し上げられている。
経路③ LPガス(屋台の熱源)
屋台の多くはLPガスを熱源に使う。鉄板、フライヤー、寸胴の加熱はガスに依存しており、その価格は原油・輸入エネルギー価格に連動する。原油高が続けば、調理にかかる燃料費も上昇する。焼きそばやたこ焼きのように長時間加熱を続けるメニューほど、この影響を受けやすい。
経路④ 輸送費・ガソリン
輸送費は複数の局面で効いてくる。第一に、中国製花火や食材を運ぶ海上輸送・国内配送の燃料費。第二に、出店者が会場まで機材や食材を運ぶためのガソリン代。原油高はこれらを一律に押し上げる。とりわけ移動型の屋台にとって、会場までの輸送コストは無視できない負担である。
四経路の重なり
| 経路 | 対象 | 2026年の状況 | 影響を受けやすい屋台 |
|---|---|---|---|
| ①食用油 | 揚げ物・炒め物の油 | 業務用17〜21%上昇 | 唐揚げ、ポテト、焼きそば |
| ②包材 | 容器、カップ、袋 | 樹脂3割上昇、包材2〜3割増 | 全般(テイクアウト前提) |
| ③LPガス | 加熱の熱源 | 原油・輸入価格に連動 | 鉄板・フライヤー系全般 |
| ④輸送費 | 食材配送、会場までの移動 | ガソリン価格に連動 | 移動型全般 |
四経路は独立ではなく重なり合う。例えば焼きそば一皿は、油(①)・容器とフィルム包装(②)・鉄板加熱のガス(③)・食材と機材の輸送(④)のすべてを使う。原油高はこれらを同時に押し上げるため、単一経路の数字以上に原価が積み上がる。
これらのコスト増が屋台価格へどこまで反映されるかは、出店者ごとの判断である。屋台は出店料、人件費、場所代も抱えており、原価上昇分をそのまま価格に乗せるとは限らない。消費者の値ごろ感を意識して転嫁を抑えれば、その分だけ出店者の利益が圧迫される。値段が据え置かれていても、負担が消えたわけではないという点に留意が必要である。
CHAPTER 09花火大会主催者・出店者への含意と対応
ここまでの整理を、花火大会に関わる立場ごとの実務に落とす。
立場別の影響と対応
| 立場 | 影響の方向 | 確認・対応の視点 |
|---|---|---|
| 花火大会の主催者 | 花火調達費は大きく変わらない | 打ち上げ花火の価格は原油高の直接影響が小さい。中止判断に関わるのは天候・運営体制であり、中東情勢ではない。ただし中国製の小玉は供給地の縮小で入手性に留意 |
| 屋台・出店者 | 原価が四経路で上昇 | 食用油・包材・LPガス・輸送費の同時上昇。メニュー別の感応度を踏まえた原価計算と、価格転嫁か利益圧縮かの判断 |
| 包材・資材の調達担当 | 樹脂系製品が値上がり | 使い捨て容器・カップ・フィルムはナフサ連動。発注ロットと在庫水準の見直し、代替品目の検討 |
| 来場者 | 屋台価格の上昇を体感 | 花火そのものは例年どおり楽しめる。屋台の飲食は油もの・テイクアウト品を中心に値上がりの可能性 |
波及タイムライン
| 段階 | 時間軸 | 想定される動き |
|---|---|---|
| 即時 | 開催前〜開催中 | 出店者による原価計算と価格設定。包材・食用油の在庫確認 |
| 短期 | 2026年夏の各大会 | 屋台価格への転嫁の有無が地域・出店者ごとに分かれる |
| 中期 | 秋以降 | 原油価格が高止まりすれば、包材・食用油の追加改定の可能性。中国製花火の来季発注 |
| 長期 | 次シーズン | 中国側の生産動向が来季の花火調達に影響。情勢の推移次第で原油前提が変動 |
物流資材の観点からの備え
当社の立場から補足すると、屋台で使う使い捨て容器やフィルムは、原油・ナフサ価格に連動して価格が動く。原油高が続く局面では、シーズン直前のスポット調達は割高になりやすい。使用量の見込める品目は早めにロットを固め、在庫水準を平準化しておくことが、コスト面での備えになる。夏の需要期は資材の引き合いも集中するため、発注の前倒しは供給確保の面でも有効である。
本記事は2026年7月25日時点の公表資料に基づく。ホルムズ海峡情勢は日単位で変化し、原油価格もこれに連動して振れている。原油価格の推移、食用油・樹脂の追加改定、中国の花火生産動向は、いずれも本記事の記載内容を変更しうる。実際の調達・価格設定にあたっては、最新の市況と各社の公表情報をご確認ください。
CHAPTER 10用語集
- ホルムズ海峡
- ペルシャ湾の唯一の出入口となる海峡。最狭部は約34km。通常は世界の海上原油貿易の約2割から2割5分、LNGの約2割が通過する、世界で最も重要な輸送の要衝の一つ。
- 黒色火薬
- 硝酸カリウム(硝石)、木炭、硫黄の三成分を混合した最古の火薬。打ち上げ花火の打揚・破裂の火薬として使われる。原料はいずれも中東の原油・ガスとは無関係の鉱物・化学品である。
- 硝酸カリウム
- 黒色火薬の酸化剤。加熱されると酸素を放出し、空気がなくても燃焼を継続させる。硝石とも呼ばれ、乾燥地帯で産出されるほか工業的に生産される。花火のほか肥料などにも用いられる。
- 過塩素酸カリウム
- 玩具花火で硝酸カリウムの代わりに多く使われる酸化剤。吸湿性が高いため、湿度の高い環境で保管すると花火が湿気を吸いやすい。
- 炎色反応
- 金属を燃やしたときに、金属の種類に応じて特有の色の炎が出る現象。花火の色は、火薬に混ぜた金属粉のこの反応を利用している。ストロンチウムは赤、バリウムは緑、銅は青緑、ナトリウムは黄。
- ナフサ
- 原油を精製して得られる石油化学の基礎原料。分解されてポリエチレンやポリプロピレンなどの汎用樹脂になる。屋台で使う使い捨て容器やフィルムは、このナフサを起点とする製品である。
- ポリプロピレン(PP)
- ナフサ由来の汎用樹脂の一つ。食品容器、OPPフィルム、PPバンド、プラスチックパレットなどに加工される。屋台の料理容器の多くがこの樹脂製である。
- LNG
- 液化天然ガス。ホルムズ海峡はLNGの主要な輸送路でもあり、通航が滞ると供給に影響する。発電やガス供給に用いられ、エネルギー価格全体に関わる。
- WTI・ブレント
- いずれも原油価格の代表的な指標。WTIは米国産、ブレントは北海産の原油を基準とする。国際的な原油相場の動きを示す目安として使われる。
- 価格転嫁
- 原料や仕入れのコスト上昇分を、製品やサービスの販売価格に反映させること。屋台の場合、原価上昇を価格に乗せるか、利益を削って据え置くかは出店者の判断による。
CHAPTER 11出典・エビデンス一覧
花火の原料・製造・中国依存
- 東洋経済オンライン「夏の風物詩『打ち上げ花火』の知られざる世界 打ち上げも手持ちも中国製が過半の実態」2018年7月29日(日本煙火協会・業界関係者の証言、国内生産額・輸入額、中国工場数の推移)
- Wikipedia「黒色火薬」(硝酸カリウム・木炭・硫黄の三成分、過塩素酸カリウムの記述)※基礎的事実の確認に使用
- カヤク・ジャパン「黒色火薬」製品情報(原料と用途)
- 日本植物油協会「最近の植物油を巡る動向について」(原料相場の推移)
ホルムズ海峡情勢・原油価格
- コンサルタント系専門ブログ(global-scm.com)「ホルムズ海峡危機:情勢と今後の見通し」2026年7月20日・7月21日更新(通航隻数、大型タンカー・LNG船の動向、原油価格、EASA勧告。情報源ごとの確認水準を区別した整理)
- Bloomberg「Brent Oil Tops 90 Dollars」2026年7月19日/CNBC「Oil prices erase gains」2026年7月20日(原油価格の推移)
- 時事ドットコム「依然続くホルムズ海峡封鎖、あれもこれも石油製品、家計影響どこまで?」2026年4月30日(WTIの推移、家計への波及)
食用油・包材・樹脂の価格改定
- 日本経済新聞「日清オイリオ、キャノーラ油など最大15%値上げ 6月から」2026年4月20日(家庭用11〜15%、業務用17〜21%)
- 日本経済新聞「ナフサ高の影響、身近な商品に プラ3割高騰で食品包装材など値上げ」2026年4月15日(汎用樹脂3割上昇、TOPPAN HDの包装材値上げ打診)
- プライシー「食用油の値上げはいつから?原因と節約対策」2026年3月(値上げ要因の整理、中東情勢の位置づけ)
- 暮らしの設備ガイド「食用油が値上げ、中東情勢が家庭の食卓に与える影響」2026年4月(原油価格と輸送コストの波及)
屋台の価格・原価
- テンポスフードメディア「お祭り屋台の原価率一覧」2026年(メニュー別の原価率、食肉・水産物の高騰)
- Infoseekニュース/financialfield「夏祭りの屋台が値上がりしているのは?」2024年7月(材料費・水道光熱費・燃料高騰の指摘)
- 各種報道(2023年夏の屋台価格例:焼きそば・たこ焼き等。断面値として時期を明記して引用)
当社関連記事
- プラスチックパレット株式会社「建設・物流・包装資材 値上げ一覧 2026年6月、30社超・ナフサショック影響まとめ」(国産ナフサ125,103円/kl、PP・PE系製品への波及)
CHAPTER 12よくある質問
ホルムズ海峡情勢で花火大会は中止になりますか
中東情勢が直接の理由で花火大会が中止になる構造はありません。打ち上げ花火の原料は硝酸カリウム・硫黄・木炭などで中東の原油やガスとは結びつかず、供給が途絶する経路が乏しいためです。中止判断に影響するのは主に天候や運営体制であり、ホルムズ海峡情勢はここに含まれません。
打ち上げ花火の原料は中東に依存しているのですか
依存していません。黒色火薬の原料は硝酸カリウム、硫黄、木炭で、玩具花火では過塩素酸カリウムが多く使われます。色は金属の炎色反応によるものです。いずれも中東の原油・ガスとは無関係の鉱物・化学品です。花火の供給構造上の課題は中東ではなく、生産の大半を担う中国への依存にあります。
屋台の飲食物の値段は上がりますか
上昇要因が重なっています。原油高は食用油、使い捨て容器などの包材、LPガスの熱源、輸送費の四つの経路から屋台のコストを押し上げます。食用油は2026年6月納品分で業務用が17〜21%、汎用樹脂は3月比で3割の価格改定が進みました。屋台価格へどこまで転嫁されるかは出店者の判断によります。
花火のサプライチェーンで本当に注意すべきリスクは何ですか
中国依存です。日本で打ち上がる花火の約半数、玩具花火は個数ベースで大半が中国からの輸入とされます。中国では事故対策などを背景に工場数が減少し、生産量が縮小しました。中東情勢よりも、この供給地の集中と生産縮小のほうが、花火の入手可能性に直結する構造的なリスクです。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか
当社はプラスチックパレット、再生樹脂材料、PPバンド、ストレッチフィルムなどの物流資材を全国のお客様へ供給する商社です。原油とナフサの価格は、屋台で使う使い捨て容器やフィルムなどの樹脂製品のコストに直結します。日々の調達判断に必要な一次情報を整理し、事実に基づいて共有することが取引先への責務と考えています。
- 本記事は2026年7月25日時点で公表されている一次資料および報道に基づき作成しています。ホルムズ海峡情勢と原油価格は短期間で変動するため、記載内容が現時点の状況と異なる場合があります。
- 本記事に記載した価格・数値・日付は、掲載時点の公表値です。食用油・樹脂・包材の価格改定、原油価格の推移、中国の花火生産動向により変更される可能性があります。
- 本記事は情報提供を目的としたものであり、投資判断、価格設定上の助言、特定の取引に関する助言を提供するものではありません。実際の調達・価格設定にあたっては、最新の市況と専門家にご確認ください。
- ホルムズ海峡情勢に関する通航隻数・原油価格・被害情報は、情報源や集計方法により数値が異なり、後日訂正される可能性があります。当事者発表と第三者確認は区別して扱っています。
- 引用は出典を明記のうえ必要最小限にとどめ、各報道機関および調査機関の著作権を尊重しています。詳細は各出典元をご参照ください。