Petrochemicals / Ethylene Operating Rate
エチレン稼働率は8月73.5%、ナフサ不足の底から半年ぶり7割台に戻った理由
プラスチックの原料になるエチレンの設備の稼働率が、2026年8月に73.5%まで戻りました。7割台は2月以来、半年ぶりです。ナフサ不足が深刻だった3月から7月は66〜69%台に沈み、6月の66.6%が底でした。石油化学工業協会の月次データで、戻った理由と前年に届かない理由、原料価格と樹脂の値段の関係を確かめました。
ANSWER
2026年8月のエチレン設備の稼働率は73.5%で、2月以来半年ぶりに7割台に戻りました。6月の66.6%が底で、定期修理の縮小と中東以外からのナフサ調達が回復を支えました。ただし生産量は前年同月比6.9%減、前年8月の稼働率80.2%にはまだ届いていません。
エチレン稼働率(8月)
73.5%
前月69.8%、前年同月80.2%
2026年の最低(6月)
66.6%
改定後の値。3〜7月は66〜69%台
エチレン生産(8月)
38.9万トン
前年同月比 6.9%減
この記事の要点
- 石油化学工業協会の月次実績によると、2026年8月のエチレン設備の実質稼働率は73.5%でした。前月の69.8%から3.7ポイント上がり、2月の75.7%以来、半年ぶりに7割台に戻りました。
- ナフサ不足が深刻だった3月から7月は、稼働率が66〜69%台で推移しました。いちばん低かったのは6月の66.6%で、この月は3社3プラントが定期修理に入っていました。
- 8月に戻った理由として、協会は定期修理の縮小(1社1プラント)と稼働率の改善を挙げています。報道では、中東以外からのナフサ調達が進んだことも理由とされています。
- それでも8月のエチレン生産は38万9,400トンで、前年同月を6.9%下回りました。前年8月の稼働率80.2%には届かず、汎用樹脂の出荷も輸入品の増加などで前年を割っています。
- 原料の国産ナフサ価格は、4〜6月期に1キロリットル11万8,900円と過去最高でした。7〜9月期は10万円台半ばに下がる見通しですが、汎用樹脂の値下げの告知は9月下旬時点で見当たりません。
8月の稼働率は73.5%、半年ぶりの7割台
石油化学工業協会(石化協)は2026年9月17日、8月の実績概要を公表しました。エチレン設備の実質稼働率の試算は73.5%です。
| 項目 | 2026年8月 | 前月 | 前年同月 |
|---|---|---|---|
| 実質稼働率 | 73.5% | 69.8% | 80.2% |
| エチレン生産 | 389,400トン | 372,400トン | 418,100トン |
| 定期修理 | 1社1プラント | 2社2プラント | 1社1プラント |
出典:石油化学工業協会「2026年8月実績概要(メモ)」(2026年9月17日)。前月の稼働率は8月のメモでの改定値、前年同月の生産量は、メモの前年同月差(▲28,700トン)から当社で計算した値です。
エチレンは、レジ袋やフィルムのポリエチレン、容器や部品のポリプロピレンなど、多くのプラスチックの出発点になる基礎原料です。国内では、ナフサを熱で分解する設備(ナフサクラッカー)で作られています。その設備がどれだけ動いているかを示すのが、この稼働率です。
この章の結論
2026年8月のエチレン稼働率は73.5%で、前月の69.8%から3.7ポイント上がりました。7割台は2月以来です。
2026年のエチレン稼働率の推移
1月から8月までの月次実績を並べると、3月に大きく落ち、6月に底を打ち、7月から戻り始めた形が見えます。
金色の太字は、最低の月と最新の月です。
| 月 | 稼働率 | エチレン生産 | 前年同月比 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 75.8% | 433,700トン | ▲6.9% |
| 2月 | 75.7% | 334,200トン | ▲17.9% |
| 3月 | 68.8% | 272,600トン | ▲38.8% |
| 4月 | 67.3% | 283,500トン | ▲37.1% |
| 5月 | 68.1% | 325,100トン | ▲22.0% |
| 6月 | 66.6% | 289,100トン | ▲19.1% |
| 7月 | 69.8% | 372,400トン | ▲3.7% |
| 8月 | 73.5% | 389,400トン | ▲6.9% |
出典:石油化学工業協会 各月の実績概要(メモ)。稼働率は翌月以降のメモで改定された値を優先しました(3月・6月・7月)。生産量と前年同月比は各月のメモの公表値です。
生産量がいちばん少なかったのは3月の27万2,600トンで、前年同月を38.8%下回りました。中東からのナフサの調達が滞り始めた時期です。7月以降は、生産量の前年割れの幅が1桁台まで縮まっています。
この章の結論
稼働率は3月に68%台へ落ち、6月の66.6%が底でした。7月から戻り始め、8月に73.5%まで回復しています。
稼働率が戻った理由
石化協のメモと報道からは、主に2つの理由が読み取れます。
| 理由 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 定期修理の縮小 | 定期修理に入ったプラントは6月3社3、7月2社2、8月1社1と減った | 石化協のメモ |
| 中東以外からのナフサ調達 | 中東以外からのナフサの調達が進み、在庫の積み増しも回復を支えた | 共同通信(2026年9月17日) |
出典:石油化学工業協会 各月の実績概要(メモ)、共同通信の報道。
石化協の8月のメモは、ポリエチレン(LDPE・HDPE)とポリプロピレン(PP)の生産が前年比で二桁のプラスになった理由として、「定修規模の縮小や稼働率要因」を挙げています。夏の定期修理が一巡したことが、数字を押し上げました。
この章の結論
稼働率の回復は、定期修理の縮小(6月3社3→8月1社1)と、中東以外からのナフサ調達の進展に支えられています。
それでも前年に届かない理由
8月の稼働率73.5%は、前年8月の80.2%を6.7ポイント下回ります。生産量も前年同月比で6.9%減です。
出荷は前年割れ、輸出は低い水準
石化協の8月のメモは、汎用樹脂の出荷について、前年比では「第2四半期以降の輸入品の増加圧力など」もあり、LDPE・HDPE・PP・PSとも前年割れと書いています。輸出も「量的には低レベルの輸出状況が続いて」いるとしています。
石化協の会長は、稼働は改善し国内の需要は満たせているとしつつ、低い水準が今後も続くとの見方を示したと報じられています。生産を戻しても、国内の需要と輸出が前年ほど戻っていないことが、稼働率の上限になっている形です。
この章の結論
8月の稼働率は前年を6.7ポイント下回ります。汎用樹脂の出荷は輸入品の増加などで前年を割り、輸出も低い水準が続いています。
樹脂の値段はどうなるのか
エチレンの原料であるナフサの国内価格は、4〜6月期に過去最高を付けた後、下がる見通しです。
| 期間 | 国産ナフサ価格(1キロリットル) | 位置づけ |
|---|---|---|
| 2026年1〜3月期 | 65,700円 | 確定 |
| 2026年4〜6月期 | 118,900円 | 確定・過去最高 |
| 2026年7〜9月期 | 約104,800円 | 見通し(三協化学) |
出典:大景化学の国産ナフサ価格推移表、日本経済新聞(4〜6月期の確定)、三協化学(7〜9月期の見通し、2026年9月1日更新)。7〜9月期は確定値ではありません。
ナフサの価格は下がり始めていますが、当社が9月下旬に日本ポリエチレン・日本ポリプロ・PSジャパンなどの告知を確認した範囲では、10月・11月分の汎用樹脂の値下げの告知は見当たりませんでした。直近の改定は、6月に発表された7月1日納入分の値上げです。
国産ナフサ価格は四半期ごとに確定し、樹脂の価格はそれを受けて改定されるのが一般的です。7〜9月期の確定値が出たあと、樹脂メーカーと需要家のあいだで価格の交渉が本格化するとみられます。
この章の結論
国産ナフサは4〜6月期の11万8,900円が最高で、7〜9月期は約10万4,800円の見通しです。ただし9月下旬時点で、汎用樹脂の値下げの告知は見当たりません。
調達の担当者が追っておきたい数字
どの資材をいつ調達するかは、会社ごとに違います。ここでは確かめる手順だけを並べ、判断は読者に委ねます。
ACTION 01
石化協の月次メモを毎月確かめる
石油化学工業協会は、毎月中旬に前月の実績概要(メモ)を公表しています。稼働率・生産量・定期修理の数は、樹脂の需給を見る最初の手がかりになります。
ACTION 02
国産ナフサ価格の確定を確かめる
7〜9月期の国産ナフサ価格が確定すると、樹脂の価格交渉の前提が変わります。確定値と、見通しとの差を確かめます。
ACTION 03
樹脂メーカーの告知を確かめる
日本ポリエチレン・日本ポリプロ・PSジャパンなどは、価格改定をお知らせで公表しています。値上げだけでなく、据え置きや値下げの告知が出るかを確かめます。
ACTION 04
自社の在庫と契約の条件を確かめる
樹脂製品や包装資材の契約で、価格がナフサ価格や四半期に連動しているかを確かめます。連動の条件によって、値下げが反映される時期が変わります。
よくある質問
- 2026年8月のエチレン稼働率はいくつですか
- 石油化学工業協会の試算で73.5%です。前月の69.8%から3.7ポイント上がり、2月の75.7%以来の7割台となりました。前年8月は80.2%でした。
- エチレン稼働率が最も低かったのはいつですか
- 2026年6月の66.6%(改定後)です。この月は3社3プラントが定期修理に入っていました。3月から7月までは、66〜69%台で推移しました。
- なぜエチレン稼働率は戻ったのですか
- 石化協のメモは、定期修理の規模の縮小と稼働率の改善を挙げています。定期修理のプラントは6月の3社3から8月の1社1に減りました。報道では、中東以外からのナフサ調達が進んだことも理由とされています。
- プラスチックの原料価格は下がりますか
- 国産ナフサ価格は4〜6月期の11万8,900円が最高で、7〜9月期は約10万4,800円の見通しです。ただし、9月下旬時点で汎用樹脂メーカーの値下げの告知は当社では確認できていません。
- なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか
- 当社はプラスチックパレットや再生樹脂を扱う商社で、ポリエチレンやポリプロピレンの値動きがそのまま仕入れに響きます。エチレンの稼働率は樹脂の需給を見る基本の数字で、石化協の公表値で確かめてお伝えしています。
出典・エビデンス一覧
統計・一次資料
報道・価格情報
当社の関連記事
- 稼働率・生産量・定期修理の数は、2026年9月28日時点で当社が確認した石油化学工業協会の月次メモによります。稼働率は翌月以降に改定されることがあります。
- 前年8月の生産量、前月差・前年差のポイント、上昇幅は、公表値をもとに当社で計算したものです。
- 国産ナフサ価格の7〜9月期は見通しで、確定値ではありません。
- 樹脂の値下げの告知がないことは、当社が9月下旬に主要メーカーのお知らせを確認した範囲での結果です。
- 本稿は情報提供を目的としたもので、特定の調達判断を推奨するものではありません。
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