物流・海上輸送 / 調達担当者向け
アジアからの貨物はなぜ遅れるのか、定時到着率32.3%・平均7日遅れと2027年春節前に確かめること
アジアから届く貨物の遅れが続いています。原因は港の混雑だけではなく、台風、国慶節の前後に重なった配船、タイの洪水、パナマ運河の通航制限、紅海を避けた遠回りなど、いくつもの要因が重なっています。調査会社と船社の公表をもとに、いま何が起きていて、2027年の春節までに何を確かめておけばよいかをまとめます。
ANSWER
アジアの港の混雑で、2026年8月にアジアで時間どおりに着いたコンテナ船は32.3%、遅れた船の平均の遅れは7.28日でした(シー・インテリジェンス)。上海・寧波の沖待ちは10月上旬に3割ほど減りましたが、乱れた配船やタイの洪水の影響が残っています。日本向けの運賃は横ばいで、問題は値段より届く日です。
アジアの定時到着率
32.3%
2026年8月。世界全体は49.9%(シー・インテリジェンス)
遅れた船の平均の遅れ
7.28日
2026年8月、アジア。世界全体は6.81日
上海→関東の運賃
331ドル/TEU
10月16日。前週比0.6%安(SCFI)
この記事の要点
- 海運調査会社シー・インテリジェンスによると、2026年8月に世界で時間どおりに着いたコンテナ船は49.9%で、2022年9月以来の低さでした。アジアは32.3%、上海は12.2%で、遅れた船の平均の遅れはアジアで7.28日です。
- 原因は、7月以降に7個の台風が上陸したことによる港の混雑、中東を避ける遠回り、8〜9月の輸出の繁忙期の重なりです。上海・寧波では9月初めに着岸まで10日待つ状態になりました。
- 10月上旬には上海・寧波の待ちは3割ほど減りましたが、国慶節の前後に遅れた船が重なって配船が乱れ、東京港の大井ふ頭では10月7〜10日に空コンテナの搬入が止まりました。タイでは洪水で港までの鉄道が止まっています。
- Drewryの世界の総合運賃指数は前年の約2.7倍ですが、上海から関東・関西向けは1TEUあたり330ドル前後で横ばいです。日本の荷主にとっての問題は、運賃より届く日が読めないことです。
- 調査会社は、混雑が以前の水準に戻るには半年以上かかるとの見方を示しています。2027年の春節は2月6日で、その前後は工場と物流が止まるため、年明けの出荷の締め日を早めに確かめる必要があります。
アジアの港で、何が起きているか
遅れの中心は中国の港の混雑です。台風、遠回り、繁忙期が重なり、9月に混雑の山を迎え、10月に入って少しずつ減っています。
定時到着率:アジアは32.3%、上海は12.2%
海運調査会社のシー・インテリジェンスは、毎月、コンテナ船が予定どおりに着いた割合(定時到着率)を公表しています。2026年8月は世界全体で49.9%と、前月から5.9ポイント下がり、2022年9月以来の低さでした。遅れた船の平均の遅れは6.81日です。
| 地域・港 | 2026年8月の定時到着率 | 備考 |
|---|---|---|
| 世界全体 | 49.9% | 前月比5.9ポイント低下。2022年9月以来の低さ |
| アジア | 32.3% | 遅れた船の平均の遅れ7.28日 |
| 中国 | 23.9% | |
| 寧波 | 16.9% | |
| 上海 | 12.2% | |
| タイ | 前月より改善 | アジアで前月より良くなったのはタイだけ(3.0ポイント改善) |
出典:シー・インテリジェンス「Global Liner Performance」(2026年9月29日・9月30日の発表)。9月分は10月末ごろに公表される見込み。
アジアでは、時間どおりに着いた船は3隻に1隻ほどで、遅れた船は平均で1週間以上遅れています。同社は、原因を「アジアの深刻な港の混雑」としています。
港の混雑:9月が山、10月上旬に3割減
2026年は7月以降に7個の台風が中国に上陸し、そのたびに港の作業が止まりました。そこへ中東を避ける遠回りと、8〜9月の輸出の繁忙期が重なり、上海・寧波では9月初めに、着岸まで10日待つ状態になりました。
| 時期 | 港 | 状況 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 9月1日 | 上海・寧波 | 着岸まで10日待ち | The Loadstar |
| 9月20〜22日 | 横浜 | 台風で45時間閉鎖。その後もヤードの占有率は約90% | SEKO Logistics |
| 10月6日 | 上海/寧波/釜山 | 平均の着岸待ち 3.51日/2.37日/1.22日 | Kuehne+Nagelの集計(FreshPlaza) |
| 9月27日→10月9日 | 上海・寧波 | 待っている船の積載量が約174万TEUから約117万TEUへ33%減 | Shippio(Linerlyticaの集計を引用) |
| 10月7〜10日 | 東京港 大井ふ頭 | ヤードが満杯でシャーシも不足し、空コンテナの搬入を停止 | Shippio |
出典:表中のとおり。いずれも報道・物流会社の公表。
10月上旬には上海・寧波の待ちは3割ほど減り、上海港は9月の取扱量が過去最高になったとして「通常の稼働に戻った」としています。ただし10月10日時点でも、上海の沖で待つ船は100隻を超えていました。日本でも東京港や横浜港で、ヤードの混雑による作業の制限が出ています。
国慶節:遅れた船が重なり、配船が乱れた
中国の国慶節(10月1〜7日)をはさむ4週間、アジアから北欧州に向けて出る船の積載量は前年より27%多い150万TEUでした。遅れた船が後の便と重なり、2週間で12便が同じ週に二重に出る形になったと、シー・インテリジェンスは分析しています。
同社は、混雑が解けると急に船が余り、直前の欠航が出るおそれがあるとして、10月中旬〜下旬の配船は「仮の予定」として扱うよう呼びかけています。Drewryの集計では、10月12日〜11月15日に主要な東西航路で予定されている713便のうち34便(約5%)が欠航になる見込みです。
この章の結論
アジアの定時到着率は32.3%で、遅れた船は平均7日以上遅れています。港の混雑は10月上旬に3割ほど減りましたが、国慶節で乱れた配船と欠航の影響が残っています。
アジアの外で重なっていること
アジアの港の混雑に、パナマ運河の通航制限、紅海・ホルムズ海峡の情勢、タイの洪水が重なり、船と港の余裕を減らしています。
パナマ運河:1日の通航枠を減らし、10月に1枠戻す
パナマ運河庁は、雨不足で運河の水源が減っているとして、9月3日から1日に通れる船の枠を34枠に、9月15日からは32枠に減らしました。その後、大型船用のネオパナマックス閘門の枠を10月15日から1つ増やし、1日33隻の通航を見込んでいます。同じ閘門の喫水(船が沈む深さ)の上限も、9月28日から14.94mに引き上げました。
米国海洋大気庁(NOAA)は、エルニーニョ現象が2026年10〜12月に1950年以降で最も強い規模になる確率を83%としています。運河庁は、流域の雨の状況を見ながら通航の枠を調整しており、今後も制限が変わる可能性があります。
紅海・ホルムズ海峡:遠回りは戻り始め、中東では攻撃が続く
シー・インテリジェンスの指標では、紅海経由の航路の戻り具合は9月時点で平時の27%です。マースクとハパックロイドは10月27日から共同の1航路をスエズ経由に戻す予定で、CMA CGMは12月に全面的に戻ると表明しています。遠回りが減ると、同じ船の数でも運べる量が増えます。
一方、ホルムズ海峡の周辺では、10月5〜11日に船への攻撃が12件報告されました(英国海事貿易機関の警報を報道機関が集計)。中東の情勢と石油の流れは、原油の世界在庫の記事で整理しています。
タイの洪水:港は動いているが、港までが遅れる
タイでは9月末からの洪水で、チョンブリ県のアマタシティ工業団地の堤防が切れ、34工場が操業を止めました。トヨタは組立工場は浸水していませんが、洪水で従業員の通勤が難しくなり、続いて部品も届かなくなったため、4工場が9月30日から一時止まりました(10月12日に暫定で再開の予定と報道)。
DHLの10月1日の案内では、レムチャバン港とデポは動いているものの、内陸のラッカバンのコンテナ基地は作業が遅く、トラックの所要時間が3〜4時間延び、港までの鉄道は当面止まっています。輸出用の空コンテナの確保が厳しくなるおそれがあるとしています。日本とタイの間の物流を手がける株式会社HPS CONNECTの飯野さんの現場報告(メールマガジン)でも、港より港までの陸送の遅れと、生産が戻ったあとの輸送の集中に注意するよう伝えています。物流の現場の動きを知るうえで、当社も参考にしている情報です。
この章の結論
パナマ運河の制限、ホルムズ海峡周辺の攻撃、タイの洪水が、アジアの港の混雑に重なっています。紅海を避けた遠回りは戻り始めており、船の余裕が増える面もあります。
運賃と、これからの見通し
世界の総合運賃指数は前年の約2.7倍ですが、日本向けは低い水準で横ばいです。混雑が元に戻るには時間がかかるとの見方が出ています。
運賃:世界の総合指数は前年の2.7倍、日本向けは横ばい
Drewryの世界の総合運賃指数は、10月15日に40フィートコンテナ1本あたり4,485ドルで、前年同時期の約2.7倍です(当社計算)。一方、上海から関東・関西に向けた運賃(SCFI)は1TEUあたり330ドル前後で、ほとんど動いていません。
| 航路・指数 | 運賃 | 時点・出典 |
|---|---|---|
| 世界の総合(Drewry WCI) | 4,485ドル/40ft | 10月15日。前年同時期1,687ドルの約2.7倍(当社計算) |
| 上海→ロサンゼルス | 7,884ドル/40ft | 10月15日、Drewry WCI(報道) |
| 上海→ニューヨーク | 10,075ドル/40ft | 同 |
| 上海→ロッテルダム | 3,522ドル/40ft | 同 |
| アジア域内(Drewry IACI) | 1,453ドル/40ft | 10月15日、前週比3%安 |
| 上海→関東(SCFI) | 331ドル/TEU | 10月16日、前週比0.6%安 |
| 上海→関西(SCFI) | 328ドル/TEU | 10月16日、横ばい |
出典:Drewry「World Container Index」(総合とアジア域内は一次資料、航路別は報道)、上海航運交易所「SCFI」(総合は一次資料、航路別は中国時報の報道)。
日本向けの荷物にとっては、運賃の上がり方より、遅れや欠航で届く日が読めないことのほうが大きな問題です。
見通し:混雑が戻るには半年以上、2027年の春節は2月6日
報道によると、シー・インテリジェンスは、混雑が2025年末の水準に戻るには6〜8か月、2025年6月の水準に戻るには7〜10か月かかるとの試算を示しています。同じ報道では、調査会社ゼネタのチーフアナリストも、2027年の契約で混乱がすぐ終わると考えないよう呼びかけたと伝えています。
2027年の春節(旧正月)は2月6日です。春節の前後は中国の工場や物流が長く休むため、その前に荷動きが集中します。年末年始と春節が続く12月〜2月は、仕入先の出荷の締め日と船の予約を、例年より早く確かめておく必要があります。
この章の結論
日本向けの運賃は横ばいですが、遅れと欠航で届く日が読めません。混雑が元に戻るには半年以上かかるとの見方があり、2027年の春節(2月6日)の前は荷動きが集中します。
調達担当者が、春節までに確かめておく5つのこと
調査会社と物流会社の公表を踏まえて、アジアから資材や製品を仕入れる調達担当者が確かめておくことをまとめました。
納期の見込みに、1週間以上の余裕を足す
アジアでは遅れた船の平均の遅れが7日を超えています。在庫が切れる日から逆算して発注するときは、いつもの納期に少なくとも1週間の余裕を足して計画します。
本船の動きを、自分でも追えるようにしておく
船会社のサイトでは、船荷証券(B/L)の番号やコンテナ番号で、船の位置と到着予定を確かめられます。国土交通省のサイバーポートでも、一部の船会社(ONE・MSC)のコンテナの動きを追うことができます。
フォワーダーに、積み残しと空コンテナの状況を聞く
混雑のときは、予約した船に積めずに次の便に回される「積み残し(ロールオーバー)」や、空コンテナの不足、返却場所の変更が起きます。出荷のたびに、予約した船に確実に載るか、遅れたときの代わりの便はあるかを確かめます。
2027年の春節(2月6日)前の出荷の締め日を確かめる
春節の前後は中国の工場と物流が休み、その前は船の予約が集中します。仕入先に、春節前に出荷できる最後の日と、年明けの生産の再開日を早めに聞いておきます。
運賃より、届く日を基準に仕入れ先と方法を選ぶ
日本向けの運賃は横ばいですが、遅れは大きくなっています。急ぎのものは国内の在庫や近い国からの調達も比べ、運賃だけでなく、届く日の確かさで判断します。
コピペ枠:フォワーダー・仕入先への確認メール
「全文をコピー」を押すと、そのまま貼り付けられます。〇〇の部分を書き換えてお使いください。
コピペ枠:船が遅れたときに確かめること
社内の確認メモにそのまま使えます。
代表から
心配しているのは、アジアの航路の混雑が収まらず、混乱が続いていることです。モノがあっても、運ぶところで遅れが出ます。年末から年度末にかけて必要な資材は、値段だけでなく「いつ届くか」を早めに確かめておくと安心です。
プラスチックパレット株式会社 代表 小池昌宏
よくある質問
- アジアからのコンテナ船は、どれくらい遅れていますか
- シー・インテリジェンスによると、2026年8月にアジアで時間どおりに着いたコンテナ船は32.3%で、遅れた船の平均の遅れは7.28日でした。世界全体の定時到着率は49.9%で、2022年9月以来の低さです。9月分は10月末ごろに公表される見込みです。
- なぜアジアの港が混雑しているのですか
- 7月以降に台風が7個上陸して港の作業が何度も止まったこと、中東を避ける遠回り、8〜9月の輸出の繁忙期が重なったためです。上海・寧波では9月初めに着岸まで10日待つ状態になり、10月上旬に3割ほど減りました。
- 日本向けの運賃も上がっていますか
- Drewryの世界の総合運賃指数は前年の約2.7倍ですが、上海から関東・関西向けの運賃(SCFI)は10月16日時点で1TEUあたり330ドル前後で、ほとんど動いていません。日本向けは、運賃より遅れや欠航が問題になっています。
- 混雑はいつ収まりますか
- 報道によると、シー・インテリジェンスは、混雑が2025年末の水準に戻るには6〜8か月、2025年6月の水準に戻るには7〜10か月かかるとの試算を示しています。2027年の春節は2月6日で、その前は荷動きが集中するため、年明けの出荷の予定は早めに確かめておく必要があります。
- なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか
- 当社は物流資材をアジアのメーカーから仕入れており、海上輸送の遅れは納期に直接かかわります。調達担当者の方が予定を立てる参考になるよう、公表資料をもとに整理しています。
出典・エビデンス一覧25件(公式・調査会社・公的機関10・報道・物流会社15)
公式・調査会社・公的機関
- シー・インテリジェンス(2026年9月29日)
- シー・インテリジェンス(2026年9月30日)
- シー・インテリジェンス(2026年9月23日)
- シー・インテリジェンス(2026年9月16日)
- パナマ運河庁(2026年8月20日)
- 米国海洋大気庁 気候予測センター(2026年10月8日)
- Drewry「World Container Index」
- 上海航運交易所「SCFI」
- DHL Global Forwarding「タイの洪水の状況」(2026年10月1日)
- 国土交通省「サイバーポート」のコンテナ追跡(2025年1月15日)
報道・物流会社
- The Loadstar(2026年9月1日)
- Hellenic Shipping News(2026年9月5日、ICIS)
- Shippio(2026年10月13日)
- FreshPlaza(2026年10月7日)
- SEKO Logistics(2026年9月30日)
- The Maritime Executive(2026年10月16日)
- The Maritime Executive(2026年9月28日)
- Ahram Online(2026年9月29日)
- Iran International(2026年10月13日)
- The Nation(2026年10月8日)
- Interior Daily(2026年10月16日)
- 中国時報(2026年10月16日)
- MTS Insights(2025年10月16日)
- The Manila Times(2026年10月4日)
- StudyCLI「Chinese Holidays 2027」(2026年10月1日更新)
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- ※数字は2026年10月18日に当社が確認した時点のものです。港の状況と運賃は日々変わります。
- ※シー・インテリジェンスの9月分の定時到着率は、10月末ごろに公表される見込みです。
- ※タイの港と陸送の状況は、DHLの公表に加え、株式会社HPS CONNECTの飯野さんのメールマガジン(2026年10月13日配信)を参考に、当社の言葉でまとめました。
- ※本稿は情報提供を目的としたもので、特定の取引の判断を勧めるものではありません。
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