📞 050-3470-4265 受付 9:00-20:00(日・祝休)
無料お見積り ›

Supply Chain Report / INDONESIA RESIN FEEDSTOCK OBSERVATION

インドネシアの樹脂の原料はなぜ高いのか|国産に替えても1トン966ドル、日本向けPPは51トンから1,657トンへ

インドネシアの樹脂メーカーは、原料の仕入先を1年でまるごと国内に替えました。マレーシアからの仕入れは数量の93.8%から1.5%へ落ちています。それでも1トンあたりの単価は791ドルから966ドルへ22.1%上がりました。国内最大の石化メーカーのほうは化学だけが赤字です。上場2社の開示から数量と金額を並べます。

初版公開: / 最終更新: / プラスチックパレット株式会社

ANSWER

インドネシアのポリエチレンメーカーは原料の仕入先を2025年6月に国内へ替え、数量の98.5%が国内からになりました。それでも仕入単価は1トン791.4ドルから966.5ドルへ22.1%上がっています。国の統計でも、樹脂の原料にあたる有機化学品の輸入単価が2026年2月を底に44.0%上がりました。

原料の仕入単価(2026年1〜6月)

966.5ドル/t

2025年7〜12月の791.4ドルから22.1%上昇

有機化学品の輸入単価指数(2026年5月)

111.22(2023=100)

2026年2月の77.21が底。そこから44.0%上昇

国内最大の石化メーカーの化学部門(2026年1〜6月)

168,627千ドルの赤字

3期連続の赤字。2024年は35,461千ドルの黒字だった

この記事の要点

  • インドネシアのポリエチレンメーカーは、原料と製品の仕入れの93.8%(数量)をマレーシアから買っていました。2026年1〜6月は1.5%です。代わりに国内の関係会社から98.5%を買っています。前年同期の国内比率は6.2%でした。1年で入れ替わっています。
  • 切り替えの時期は開示に書かれています。原料はマレーシアの会社から2025年5月まで、国内の会社から2025年6月以降です。ホルムズ海峡が閉じたのは2026年2月28日で、切り替えはその8か月前です。封鎖の結果ではありません。
  • それでも単価は上がりました。2025年7〜12月は1トン791.4ドル、2026年1〜6月は966.5ドルで22.1%高くなっています。この2つの期間はどちらも仕入れの97%以上が同じ相手なので、相手が変わったせいではありません。
  • 売上は前年同期比15.2%増、当期損益は3,828千ドルの赤字から8,497千ドルの黒字に転じました。ただし内訳を見ると、国内向けが18.0%増えた一方、海外向けは18.6%減っています。関係会社向けの数量は44.6%減りました。
  • 黒字の裏で在庫が増えています。製品在庫は2025年12月末の9,917千ドルから2026年6月末の29,390千ドルへ2.96倍、棚卸資産の合計は79.6%増えました。しかも評価引当2,594千ドルが期末に残っています。前の2期はいずれもゼロでした。
  • もう1社、インドネシア最大の石化メーカーの開示を並べました。化学セグメントは2026年1〜6月に168,627千ドルの赤字で、3期連続の赤字です。2024年は35,461千ドルの黒字でした。連結では433,952千ドルの税引前黒字ですが、黒字を作っているのはシンガポールの製油所を含むエネルギー部門です。
  • 2社で向きが逆になっています。最大手の化学の国内販売は10.5%減り、輸出は38.8%増えました。ポリエチレンメーカーのほうは国内が18.0%増え、海外が18.6%減っています。同じ国の同じ半年で、国内と輸出の増減が逆です。
  • 最大手の原料調達も動いています。サウジアラムコからの仕入れは2026年1〜6月に252,159千ドルで、前年同期の457,718千ドルから44.9%減りました。代わりにグレンコアからの仕入れが88.1%増え、同社は最大の顧客でもあります(売上の56.0%)。
  • 中央統計局の単価指数とも突き合わせました。樹脂の原料にあたる有機化学品(HS29)の輸入単価は、2026年2月の77.21が底です。ホルムズ海峡が閉じた月にあたります。そこから5月の111.22まで44.0%、前年同月比でも38.6%上がりました。鉱物性燃料の輸入単価は72.1%上がっています。
  • 上がる順番があります。燃料とプラスチックの輸入単価が2026年1月、有機化学品が2月に底を打ち、プラスチックの輸出単価は3月が底です。買う側の値段が先に動き、売る側の値段が後から動いています。中東を含む区分からの石油・ガス輸入は4月に底を打ちました。
  • 日本のインドネシアからのPP輸入は、2025年1〜6月の51トンから2026年1〜6月の1,657トンへ増えました。ただし日本のPP輸入で増えた数量が大きいのはベトナム・中国・タイで、インドネシアは4番目です。「インドネシアだけが増えた」わけではありません。

このページは何か

インドネシアの樹脂について、上場企業2社の開示から数量と金額を並べた定点観測のページである。当社がアジア6か国について作ってきた同じ形の資料の、7本目にあたる。

ほかの6か国は、政府の統計を使っている。シンガポールは生産指数、マレーシアは販売額、タイは生産と出荷の指数、韓国は稼働率と生産能力、台湾は数量と在庫、ベトナムは税関の貿易統計である。本ページはこれに加えて、上場企業2社の開示を土台にしている。インドネシアの中央統計局は月次の貿易統計を出しているが、樹脂の生産や在庫を示す統計は見つからなかった。

代わりに使ったのが、インドネシア証券取引所に上場しているポリエチレンメーカーの財務諸表である。上場企業には開示の義務があり、四半期ごとに数字が出る。しかもこの会社の場合、関係会社との取引を示す注記に数量(トン)が金額と並べて書かれている。統計では取れない粒度である。

本ページで見ているのは2社の数字である。インドネシア全体の数字ではない。国全体を代表しているとは書けない。ただし1社はインドネシアのポリエチレンの主要な生産者、もう1社は国内最大の石化メーカーであり、その原料調達と損益の変化は、少なくともその範囲では確かな事実である。

見ているのは2社である。

1社目はPT LOTTE CHEMICAL TITAN Tbk(証券コードFPNI)。チレゴンでポリエチレンを作っている。最終親会社は韓国のLotte Chemical Corporationである。関係会社取引の注記に数量が載っているのはこの会社で、本ページの第2章から第5章はここを見ている。

2社目はPT Chandra Asri Pacific Tbk(証券コードTPIA)。インドネシア最大の石化メーカーで、エチレンのクラッカーを持っている。第6章から第9章はこちらである。エネルギー・化学・インフラの3つのセグメントで開示している。

2社は資本関係がない。同じ国にある別の会社である。本ページは2社を足していない。足せば国の数字になるように見えるが、両社を合わせてもインドネシア全体ではないうえ、開示の期間区分も品目区分も違う。並べて見るところまでにとどめている。

金額はいずれも米ドル。1社目は数量をトン、2社目は千トンで開示している。

そして第10章では、この2社の数字が国の統計と同じ方向を向いているかを確かめている。中央統計局が公表する輸出単価指数と、石油・ガスの輸入相手先を使った。会社の数字と国の数字が揃うかどうかは、1社の特殊事情かどうかを分ける材料になる。

この章の結論政府統計だけでは足りない国でも、上場企業の開示から数量と損益が取れる。本ページは2社にその手を使い、最後に国の統計と突き合わせている。

原料の仕入先が、1年でまるごと国内に替わった

この会社が原料と製品をどこから買っているかは、関係会社取引の注記に数量つきで載っている。1年で相手が入れ替わっている。

原料および製品の仕入数量。単位はトン。国内=PT Lotte Chemical Indonesia、マレーシア=Lotte Chemical Titan Corporation Sdn. Bhd.。いずれも同じ企業グループである。網掛けは最新期。「2025年7〜12月」は通年から1〜6月を引いた当社の計算で、原表には無い。

期間国内マレーシア合計国内の比率
2024年325,886325,886
2025年1〜6月7,719115,937123,6566.2%
2025年7〜12月171,0175,200176,21797.0%
2025年178,736121,137299,87359.6%
2026年1〜6月160,7872,494163,28198.5%

PT LOTTE CHEMICAL TITAN Tbk(インドネシア証券取引所:FPNI)の2026年6月30日中間連結財務諸表および2025年12月31日連結財務諸表を当社が集計した。 注記34の数量欄による。2024年の国内は原表が「—」であり、掲載が無いことを示す。ただし注記34bが「原料はLCTCから2025年5月まで、LCIから2025年6月以降」と述べているため、当社は2024年の国内からの仕入れは無かったと読んでいる。

2024年は、仕入れの全量がマレーシアの関係会社からだった。2025年1〜6月も93.8%がマレーシアである。それが2025年7〜12月には97.0%が国内に変わり、2026年1〜6月は98.5%になった。

いつ切り替わったかは、注記に書いてある。推測ではない。

The Group purchases finished goods from LCTC and feedstock from LCTC (up to May 2025) and from LCI (starting from June 2025).

PT LOTTE CHEMICAL TITAN Tbk「2026年6月30日 中間連結財務諸表」注記34b

LCTCはマレーシアのLotte Chemical Titan Corporation Sdn. Bhd.、LCIはインドネシアのPT Lotte Chemical Indonesiaである。原料の仕入先は2025年5月まではマレーシア、2025年6月からは国内、と書かれている。

封鎖の結果ではない

ホルムズ海峡が閉じたのは2026年2月28日である。この切り替えは2025年6月で、封鎖の8か月前にあたる。封鎖が原因でマレーシアから買えなくなった、という書き方はできない。時期が合わない。

同じ時期、インドネシア最大の石化メーカーに起きたこと

本ページの会社とは別に、インドネシアにはより大きな石化メーカーがある。その会社の開示に、封鎖の期間が書かれている。

同社の2026年1〜6月の連結財務報告は、次の3点を記載している。2026年3月に石化部門が顧客に対しフォースマジュールを通知したこと。原因は地政学的な状況による原料供給の混乱であること。そして2026年5月5日にその終了を公表したことである。

あわせて、経営陣の現時点の評価としてこれらの事象は同社の操業に直ちに支障を生じさせていないと述べている。この記述は2026年3月31日時点の報告にもあり、そのときは期間が未定とされていた。

つまり不可抗力とされた期間は2026年3月から5月5日までの2か月ほどで、本ページが見ている6か月のうちの一部にあたる。

報道と会社の開示が食い違っている

宣言が伝えられた当時の報道では、同社の担当者が「工場の稼働率を引き下げる」と述べたとされている。しかし会社自身の開示は「即時の支障は生じていない」である。当社はどちらが正しいかを判定できない。宣言の事実と解除の日付は開示で確認できるが、実際に稼働率が下がったかどうかは確認できていない。両方をそのまま載せる。

国内の仕入先であるPT Lotte Chemical Indonesiaは、チレゴンに新しい石化設備を持っている。報道によれば、エチレン年100万トン、プロピレン52万トン、ポリプロピレン35万トンの能力で、投資額は39億ドル、商業生産の開始は2025年10月、落成式は2025年11月6日である。注記の数量は2025年6月から動いているので、開示の側は商業生産の開始より4か月早い。当社はこのずれの理由を確認できていない。

この章の結論原料の調達先が国外から国内へ入れ替わった。時期は2025年6月で、ホルムズ海峡の封鎖より8か月早い。

国産に替えても、1トン966ドルである

仕入先を国内に替えたのだから安くなったはずだ、と考えたくなる。数字はそうなっていない。

金額は千米ドル、数量はトン、単価は1トンあたりの米ドル。単価は金額を数量で割ったもので、当社の計算による。網掛けは最新期。「2025年7〜12月」は通年から1〜6月を引いた当社の計算で、原表には無い。

期間金額数量1トン単価
2024年322,274325,886988.9
2025年1〜6月112,890123,656912.9
2025年7〜12月139,458176,217791.4
2025年252,348299,873841.5
2026年1〜6月157,815163,281966.5

PT LOTTE CHEMICAL TITAN Tbk(インドネシア証券取引所:FPNI)の2026年6月30日中間連結財務諸表および2025年12月31日連結財務諸表を当社が集計した。 金額と数量は注記34の値である。

単価は2025年7〜12月の791.4ドルから、2026年1〜6月の966.5ドルへ22.1%上がっている。

この2期を比べてよい理由

期間をまたいで単価を比べるとき、相手が入れ替わっていると比較にならない。この表では、2025年1〜6月の912.9ドルと2026年1〜6月の966.5ドルを並べたくなるが、それはしてはいけない。前者は数量の93.8%がマレーシアからで、注記34bのとおり原料と製品が混ざっている。後者はほぼ全量が国内からの原料である。別のものを比べることになる。

比べてよいのは2025年7〜12月と2026年1〜6月である。前者は97.0%、後者は98.5%が同じ相手からで、相手の構成がほとんど同じである。この2期のあいだで単価が22.1%上がった。

2025年7〜12月の値は、通年から1〜6月を引いた当社の計算である。原表にこの期間の欄はない。通年と上期はどちらも原表の値なので、引き算そのものは確かだが、四半期ごとの動きは見えない。

ナフサを分解して作る以上、原料が国産でも原油とナフサの価格からは離れられない。設備を国内に建てても、投入する原料の値段までは国内化できない。この22.1%は、そのことを示している。

この章の結論調達先を国内に替えても、単価は22.1%上がった。相手構成がほぼ同じ2期の比較なので、相手の入れ替わりでは説明できない。

売れているのは国内で、輸出は減っている

損益は赤字から黒字に転じている。ただし中身を見ると、伸びているのは国内だけである。

単位は千米ドル。売上原価と赤字はマイナスで示した。網掛けは最新期。

期間売上売上原価売上総利益当期損益
2024年367,977-372,021-4,044-8,294
2025年320,670-319,3061,3644,259
2025年1〜6月153,580-155,611-2,031-3,828
2026年1〜6月176,875-162,71514,1608,497

PT LOTTE CHEMICAL TITAN Tbk(インドネシア証券取引所:FPNI)の2026年6月30日中間連結財務諸表および2025年12月31日連結財務諸表を当社が集計した。 原表の値である。

2026年1〜6月の売上は176,875千ドルで、前年同期の153,580千ドルより15.2%多い。売上総利益は2,031千ドルの赤字から14,160千ドルの黒字へ、当期損益は3,828千ドルの赤字から8,497千ドルの黒字へ変わった。

次に、その売上を国内と海外に分けたものである。

単位は千米ドル。比率は当社の計算による。網掛けは最新期。

期間国内海外合計海外の比率
2024年349,03418,943367,9775.1%
2025年297,13023,540320,6707.3%
2025年1〜6月141,61011,970153,5807.8%
2026年1〜6月167,1299,746176,8755.5%

PT LOTTE CHEMICAL TITAN Tbk(インドネシア証券取引所:FPNI)の2026年6月30日中間連結財務諸表および2025年12月31日連結財務諸表を当社が集計した。 注記35の地域別売上による。合計は損益計算書の売上高と一致する。

国内向けは18.0%増えたのに、海外向けは18.6%減っている。海外の比率は7.8%から5.5%へ下がった。

関係会社向けの数量はもっとはっきり落ちている。マレーシアの2社に対する販売は、2025年1〜6月の10,719トンから2026年1〜6月の5,940トンへ44.6%減った。原料を買っていた相手に、製品も売らなくなっている。

最大の顧客はPT Bukitmega Masabadiで、2026年1〜6月の63,339千ドル(売上の35.81%)である。前年同期は59,853千ドル(38.97%)だった。金額は増えているが、売上に占める比率は下がっている。売上全体の伸びのほうが大きいためである。

この章の結論黒字転換の中身は国内向けの増加である。海外向けは金額で18.6%、関係会社向けは数量で44.6%減っている。

黒字なのに、在庫が積み上がっている

この会社の2026年6月末の貸借対照表には、黒字と噛み合わない数字がある。

単位は千米ドル。「その他」は仕掛品・貯蔵品・補助材料・未着品の合計で、当社が合算した。網掛けは最新時点。

時点製品原材料その他合計評価引当
2024年12月末19,58919,0138,70747,3090
2025年12月末9,9176,8939,96026,7700
2026年6月末29,3907,21311,46848,0712,594

PT LOTTE CHEMICAL TITAN Tbk(インドネシア証券取引所:FPNI)の2026年6月30日中間連結財務諸表および2025年12月31日連結財務諸表を当社が集計した。 注記7による。評価引当は棚卸資産の評価損の期末残高である。

製品在庫は2025年12月末の9,917千ドルから2026年6月末の29,390千ドルへ、2.96倍になった。棚卸資産の合計も26,770千ドルから48,071千ドルへ79.6%増えている。

もう1つある。評価引当2,594千ドルが期末に残っている。2024年末と2025年末はいずれもゼロだった。会社は「市場価格と在庫の物理的状態を検討した結果」としている。

2024年にも評価引当の計上はあった。76千ドルを積み、同じ年のうちに全額を戻し入れているため、期末の残高がゼロだった。「初めて計上した」ではなく「期末に残ったのは初めて」が正しい。

原料の使用高は160,161千ドルで前年同期の120,621千ドルより32.8%多く、仕入数量は163,281トンで32.0%多い。原料は3割多く入っているのに、売上は15.2%しか増えていない。差は在庫に積み上がっている。

これは台湾で見た形とよく似ている。台湾では生産が落ちても在庫だけが増えていた。インドネシアでは生産が増えて在庫も増えている。原因は違うが、行き先を失った在庫が積み上がっているという結果は同じである。

この章の結論原料の投入は32.8%増え、売上は15.2%しか増えていない。差は在庫になり、評価引当2,594千ドルが期末に残った。

もう1社は、化学だけが赤字である

ここまでは1社の話である。インドネシアにはもっと大きな石化メーカーがあり、その開示も上場企業として公開されている。並べると、同じ国で正反対のことが起きている。

PT Chandra Asri Pacific Tbk(インドネシア証券取引所:TPIA)。前章に出てきたフォースマジュールの会社である。事業はエネルギー・化学・インフラの3つに分かれている。

単位は千米ドル。外部の顧客への売上で、セグメント間の取引は含まない。網掛けは最新期。

期間エネルギー化学インフラ合計
2024年11,4181,684,45189,4951,785,364
2025年1〜6月1,169,7711,686,90356,7172,913,391
2025年3,663,4243,235,392121,1917,020,007
2026年1〜6月3,327,2431,956,90464,6225,348,769

PT Chandra Asri Pacific Tbk(インドネシア証券取引所:TPIA)の2026年1〜6月・2026年1〜3月の連結財務報告(未監査)および2025年通年の連結財務報告を当社が集計した。 注記43による。合計は連結の売上高と4期すべてで一致した。

2026年1〜6月の外部売上は5,348,769千ドルで、前年同期の2,913,391千ドルから83.6%増えた。ただし増えているのはエネルギーである。1,169,771千ドルから3,327,243千ドルへ増えた一方、化学は1,686,903千ドルから1,956,904千ドルへ16.0%の増加にとどまる。

損益を見ると、増収の中身がはっきりする。

単位は千米ドル。△は赤字。右端は連結の税引前損益で、セグメントに配分されない損益を含むため3つの合計とは一致しない。網掛けは最新期。

期間エネルギー化学インフラ連結の税引前
2024年46035,46112,398△90,939
2025年1〜6月137,424△209,58511,0391,576,527
2025年143,595△386,07623,6821,294,209
2026年1〜6月897,833△168,6272,115433,952

PT Chandra Asri Pacific Tbk(インドネシア証券取引所:TPIA)の2026年1〜6月・2026年1〜3月の連結財務報告(未監査)および2025年通年の連結財務報告を当社が集計した。 注記43による。

化学セグメントは3期連続の赤字である。2025年1〜6月に209,585千ドル、2025年通年で386,076千ドル、2026年1〜6月に168,627千ドルの赤字を計上している。赤字は縮んでいるが、黒字には戻っていない。2024年は35,461千ドルの黒字だった。

連結の税引前損益は2026年1〜6月に433,952千ドルの黒字である。黒字を作っているのはエネルギーで、897,833千ドルの黒字を出している。化学の赤字はその中に埋もれている。

セグメント損益の合計(731,321千ドル)と連結の税引前損益(433,952千ドル)は一致しない。差はセグメントに配分されない損益で、原表に「配分不能」として297,369千ドルのマイナスが示されている。本ページはこの配分不能の中身を確認できていない。

この会社の2025年の化学製品の販売数量は4,324千トンで、2024年の1,527千トンから183.2%増えている。ただし会社自身が「新たに取得した子会社の寄与による」と書いている。同じ工場が3倍近く動いたわけではない。前年比として単純に読めない数字である。

この章の結論連結は黒字だが、化学は3期連続の赤字である。黒字を作っているのはエネルギー部門である。

2社で、国内と輸出の向きが逆である

最大手の化学を国内と輸出に分けると、本ページの前半で見たポリエチレンメーカーと逆の形が出てくる。

化学セグメントの売上。単位は千米ドル。網掛けは最新期。

期間国内輸出合計
2024年1,347,886336,5651,684,451
2025年1〜3月397,433195,165592,598
2025年1〜6月779,863907,0401,686,903
2025年1,527,3451,708,0473,235,392
2026年1〜3月338,436548,130886,566
2026年1〜6月697,7151,259,1891,956,904

PT Chandra Asri Pacific Tbk(インドネシア証券取引所:TPIA)の2026年1〜6月・2026年1〜3月の連結財務報告(未監査)および2025年通年の連結財務報告を当社が集計した。 注記32による。合計は注記43のセグメント外部売上と一致した。

2026年1〜6月の国内販売は697,715千ドルで、前年同期の779,863千ドルから10.5%減った。一方で輸出は907,040千ドルから1,259,189千ドルへ38.8%増えている。

本ページの前半で見たポリエチレンメーカーは逆だった。国内向けが18.0%増え、海外向けは18.6%減っている。

同じ向きに読まないこと

同じ国の同じ半年で、一方は国内が増えて輸出が減り、もう一方は国内が減って輸出が増えている。「インドネシアの樹脂は国内が伸びている」とも「輸出が伸びている」とも書けない。会社によって逆である。

並べたくなるのは、新しい設備が国内市場で最大手の分を置き換えたのではないかという読みである。時期は合う。ロッテの新設備は2025年10月に商業生産を始め、2026年に能力いっぱいへ向かうとされている。

ただし当社はこれを確認していない。2社の「国内」は中身が違う。最大手はオレフィン・ポリオレフィンと下流製品、ポリエチレンメーカーはポリエチレンの製造とポリエチレン・ポリプロピレンの卸売である。品目の重なりを開示から特定できない。言えるのは、方向が逆だという事実までである。

この章の結論最大手は国内10.5%減・輸出38.8%増、ポリエチレンメーカーは国内18.0%増・海外18.6%減。同じ国で向きが逆である。

原料をどこから買っているか

最大手の開示には、売上原価の10%を超える仕入先が名前つきで載っている。ここに封鎖の影が出ている。

売上原価の10%を超える仕入先。単位は千米ドル。「資料」は四半期=2026年1〜3月報告、半期=2026年1〜6月報告、通年=2025年通年報告を指す。網掛けはサウジアラムコ。

資料仕入先対象期前年同期増減
四半期グレンコア1,007,196掲載なし
四半期サウジアラムコ112,285589,103-80.9%
半期グレンコア3,411,9321,813,468+88.1%
半期サウジアラムコ252,159457,718-44.9%
半期トラフィグラ454,578498,450-8.8%
半期プルタミナ70,575196,173-64.0%
通年グレンコア4,162,978掲載なし
通年サウジアラムコ409,537774,615-47.1%
通年トラフィグラ372,226117,313+217.3%
通年プルタミナ178,565206,391-13.5%

PT Chandra Asri Pacific Tbk(インドネシア証券取引所:TPIA)の2026年1〜6月・2026年1〜3月の連結財務報告(未監査)および2025年通年の連結財務報告を当社が集計した。 増減はいずれも同じ表の左右の対比であり、当社の計算である。資料をまたいだ足し引きはしていない(本文の注記を参照)。

サウジアラムコからの仕入れが落ちている。2026年1〜6月は252,159千ドルで、前年同期の457,718千ドルから44.9%減った。2026年1〜3月に限れば112,285千ドルで、前年同期の589,103千ドルから80.9%減である。2025年通年でも409,537千ドルと、2024年の774,615千ドルから47.1%減っている。

代わりに増えているのがグレンコアである。2026年1〜6月の仕入れは3,411,932千ドルで、前年同期の1,813,468千ドルから88.1%増えた。

このグレンコアは、同時に最大の顧客でもある。2026年1〜6月の同社向け売上は2,997,629千ドルで、連結売上の56.0%にあたる。前年同期は960,168千ドル、33.0%だった。売る相手と買う相手が同じ会社である。

この表は、資料をまたいで足し引きしてはいけない

サウジアラムコの2025年の値は、資料によって違う。1〜3月報告では589,103千ドル、1〜6月報告では457,718千ドル、通年報告では409,537千ドルである。累計が期を追って減っている。ありえない並びである。掲載の基準(売上原価の10%超)が期ごとに違うか、通年の監査時に組み替えられたかのいずれかとみられるが、当社は説明を確認できていない。

使えるのは、同じ表の中の左右の対比だけである。上の表の増減はすべて、会社自身が並べた組み合わせから計算している。四半期を引き算して作った値は使っていない。

会社は売上が増えた理由も書いている。取得した子会社の寄与と、中東の地政学的な展開に伴う市場の変動による販売価格の上昇である。当社が集めた資料で値上がりの理由を中東情勢と明記しているのは、タイの工業経済局に次いで2例目にあたる。企業の開示としては初めてである。

この章の結論サウジアラムコからの仕入れが44.9%減り、グレンコアが88.1%増えた。最大の仕入先と最大の顧客は同じ会社である。

インドネシアの会社が、シンガポールの製油所を持っている

この会社の設備一覧を見ると、インドネシアの外に大きなものがある。当社がシンガポールについて書いてきた話と、ここでつながる。

2025年、この会社はグレンコアとともに、シンガポールにあったシェルの製油所と石化コンプレックス(Shell Energy and Chemicals Park)を取得した。現在の名前はAster Chemicals and Energy Pte. Ltd.である。シンガポールのEsso系給油所も2026年1月1日に取得している。

KTAは1年あたりの千トン、KBDは1日あたりの千バレル。網掛けはシンガポールの設備。

区分場所能力
エチレンブコム(シンガポール)1,100 KTA
エチレンチレゴン(インドネシア)900 KTA
プロピレンブコム690 KTA
プロピレンチレゴン490 KTA
ブタジエンブコム200 KTA
ベンゼンブコム230 KTA
下流化学ジュロン(シンガポール)2,400 KTA
下流化学チレゴン2,300 KTA
原油処理ブコム製油所237 KBD

PT Chandra Asri Pacific Tbk「年次報告書2025」による。取得経路は一次資料の直接参照である。

エチレンの能力は合計2百万トンで、その1,100千トンがシンガポールのブコム、900千トンがインドネシアのチレゴンである。下流の化学コンプレックスは合計4.7百万トンで、ジュロンが2,400千トン、チレゴンが2,300千トンとされている。原油の処理能力は237千バレル/日である。

当社のシンガポールの定点観測は、シンガポール統計局の生産指数を使っている。指数は水準を示さない。その指数が動いている現場の能力が、いまインドネシアの上場企業の開示に実数で載っている。統計では取れない数字が、企業の開示から取れる形になった。

この章の結論シンガポール最大の石化サイトは、いまインドネシアの上場企業の子会社である。その能力は開示に実数で載っている。

国の統計では、原料の輸入単価が2月を底に44.0%上がっている

ここまでは会社の数字である。1社や2社の事情なのか、国全体で起きていることなのかは、会社の開示だけでは決められない。中央統計局の月次統計と突き合わせる。

原料の輸入単価は2月が底で、そこから44.0%上がっている

中央統計局は輸出と輸入の両方について、HS2桁の単価指数を毎月出している。樹脂の原料にあたる有機化学品(HS29)の輸入単価が、この資料でいちばん鋭く動いている。

2023年=100の単価指数。輸出プラ=HS39プラスチックおよびその製品の輸出、輸入プラ=同じ区分の輸入、輸入有機化学=HS29有機化学品の輸入、輸入燃料=HS27鉱物性燃料の輸入。網掛けは有機化学品が底を打った2026年2月と、最新の2026年5月。

輸出 プラ輸入 プラ輸入 有機化学輸入 燃料
2024年12月89.84110.1684.9487.37
2025年1月96.9594.4988.3787.67
2025年2月94.5297.5389.2389.30
2025年3月90.8696.1492.0486.52
2025年4月96.0096.0688.5083.31
2025年5月93.9693.9080.2379.39
2025年6月92.9594.1386.5477.83
2025年7月95.2691.3284.9182.22
2025年8月97.4191.8785.3182.14
2025年9月92.7291.7185.7679.99
2025年10月92.5989.2285.8879.01
2025年11月95.7989.38103.7880.05
2025年12月84.0487.03106.1978.25
2026年1月88.1584.2585.3176.56
2026年2月87.4890.6777.2177.76
2026年3月87.3091.9982.1994.07
2026年4月93.2699.5598.04120.61
2026年5月103.99107.48111.22131.75
2026年6月108.66

インドネシア中央統計局(BPS)の月次統計表を当社が集計した。 「Indeks Unit Value Ekspor-Impor」2025年12月号から2026年5月号までの6号を当社がつないだ。各号は13か月を載せており、号どうしで重なる80か月ぶんの値はすべて一致した。2026年6月の輸出のみ統計表CSVによる。6月号を入手していないため、同月の輸入は「—」とした。

有機化学品(HS29)の輸入単価指数は、2026年2月の77.21が底である。ホルムズ海峡が閉じたのは2026年2月28日で、その月にあたる。そこから5月の111.22まで44.0%上がった。前年同月比でも38.6%高い。

HS29はエチレンやプロピレンといったモノマーを含む区分である。樹脂を作る側から見れば、これが原料の値段である。

鉱物性燃料(HS27)の輸入単価はもっと大きい。2026年1月の76.56から5月の131.75へ72.1%上がった。前年同月比で66.0%である。

上がる順番が、燃料 → 原料 → 製品になっている

4つの系列が底を打った月を並べると、順番がある。

  • 鉱物性燃料の輸入:2026年1月(76.56)が底
  • プラスチックの輸入:2026年1月(84.25)が底
  • 有機化学品の輸入:2026年2月(77.21)が底
  • プラスチックの輸出:2025年12月(84.04)が底。2026年に入ってからは3月(87.30)

買う側の値段が先に動き、売る側の値段が後から動いている。プラスチックの輸出単価は2026年3月の87.30から6月の108.66へ24.5%上がったが、その前に原料と燃料の輸入単価が上がっている。

この上がり幅は、本ページの前半で見た会社の数字と揃う。ポリエチレンメーカーの仕入単価は22.1%上がり、国の輸出単価指数は24.5%上がっている。一方は1社の原料の仕入れ、他方は国全体の製品の輸出で、見ているものは違う。それでも上がり幅が近い。

最大手の開示にある「中東の地政学的な展開に伴う市場の変動による販売価格の上昇」という記述とも、方向が一致する。会社の言い分と、国の統計と、別の会社の仕入単価が、3つとも同じ向きを指している。

これは単価の指数であって、数量ではない。輸出入が増えたことも減ったことも示さない。2023年を100とした指数なので、月どうしの比較や前年同月比には使えるが、品目をまたいで水準を比べることはできない。

この系列は6つの月報をつないで作った。各号は13か月を載せている。号どうしで重なる80か月ぶんの値がすべて一致したため、つないでよいと判断した。この指数は改定されていない。金額の表とは違う。

石油とガスの仕入先は、4月に入れ替わっている

単位は千米ドル。「アジアのその他」は日本・中国・ASEANを除いたアジアで、中東を含む区分である。中東の国別の内訳は公表されていない。網掛けは4月。

2026年ASEANアジアのその他アフリカ米国総額
1月1,065,226714,300737,365256,1203,165,923
2月1,039,435430,116280,481160,0021,996,776
3月1,651,490364,302584,665217,7103,169,449
4月2,188,720275,328883,781415,7034,598,587
5月2,834,593600,113338,684395,5374,514,772
6月1,923,161604,6181,248,900437,1374,557,953

インドネシア中央統計局(BPS)の月次統計表を当社が集計した。 「Monthly Imports Value of Oil and Gas by Country of Origin」による。 掲載4区分の合計は総額と一致しない。差はほかの相手先である。原表の「Annually」欄は、輸出の資料では1〜6月の累計、輸入の資料では1〜5月の累計であり、意味が違う。本ページはこの欄を使わず、月次から当社が合計している。

「アジアのその他」は、日本・中国・ASEANを除いたアジアである。中東はこの区分に入る。その金額が1月の714,300千ドルから4月の275,328千ドルへ61.5%減り、6月には604,618千ドルへ戻している。底は4月である。

同じ時期、ASEANからの輸入が1月の1,065,226千ドルから5月の2,834,593千ドルへ166.1%増えた。その内訳はほとんどがシンガポールとマレーシアで、6月は両国で97.8%を占める。アフリカも6月に1,248,900千ドルと、この6か月で最も多い。

「中東からの輸入が61.5%減った」とは書けない

この区分にはインド・韓国・台湾なども入る。中東の国別の内訳は公表されていない。当社が言えるのは「中東を含む区分が4月に底を打った」までである。中東そのものの数字ではない。

それでも、底が4月であることは他国の統計と揃う。韓国では精製石油製品の稼働率が2026年4月に落ちて13か月の最低になった。インドネシアでは中東を含む区分からの石油・ガス輸入が4月に底を打っている。統計の種類も国も違うのに、同じ月である。

そして最大手のフォースマジュールは2026年3月に宣言され、5月5日に解除された。4月はその期間のまん中にあたる。

化学品は、輸入が輸出を上回り続けている

SITC第5部「化学品」。単位は百万米ドル。輸出はFOB、輸入はCIFで、運賃と保険の分だけ輸入側が大きく出る。網掛けは分類合計が総額と一致した月。

2026年輸出輸入輸入−輸出
1月1,9712,903932
2月2,0722,741669
3月2,1742,324150
4月2,4753,5021,027
5月2,3873,4401,053
6月2,4733,472999

インドネシア中央統計局(BPS)の月次統計表を当社が集計した。 「Monthly Exports/Import Value by SITC Commodity Group」による。 輸出側は10分類の合計が総額と一致しない月があり、1月−236、2月−93、3月−527、4月−163(百万米ドル)の差がある。5月と6月は一致した。当社はこの差の理由を確認できていない。

インドネシアはSITC第5部「化学品」について、6か月すべてで輸入が輸出を上回っている。2026年1〜6月の輸出は13,552百万ドル、輸入は18,382百万ドルである。

この表には2つの落とし穴がある

1つめ。輸出はFOB、輸入はCIFである。輸入側には運賃と保険が入っているため、その分だけ大きく出る。この表の差額をそのまま「純輸入額」として読んではならない。

2つめ。輸出側は10分類の合計が総額と一致しない月がある。1月から4月まで、それぞれ236・93・527・163百万ドル足りない。5月と6月は完全に一致した。分類行と総額行で改定の版が違うとみられるが、当社は説明を確認できていない。したがって1月から4月の分類別の値は、そのままの精度では扱えない。

2025年は通年の値しか公表がなく、化学品の輸出は24,040.3百万ドルである。月次の2025年が無いため、前年同期比は計算できない。通年を半分にして比べることもしていない。上半期と下半期が同じとは限らないためである。

数量で見れば、FOBとCIFの問題は消える

上の警告で書いたとおり、金額の輸出入を並べると運賃と保険の分だけ輸入側が大きく出る。数量なら、この問題は起きない。トンはトンである。中央統計局は数量の表も出している。

2025年通年。化学品=SITC第5部、鉱物性燃料=第3部、原材料=第2部。数量は千トン、輸出単価は輸出額を輸出量で割った1トンあたりの米ドルで、当社の計算による。網掛けは化学品。

2025年輸出量輸入量輸入−輸出輸出単価
化学品19,907.430,252.810,345.41,207.6
鉱物性燃料556,855.581,552.7-475,302.880.5
原材料43,757.663,101.619,344.0613.6
総計722,160.8242,915.1-479,245.7391.2

インドネシア中央統計局(BPS)の月次統計表を当社が集計した。 「Volume of Exports / Imports by SITC Group」2025年および「Exports Value by SITC Commodity Groups F.O.B」2025年による。 数量の表は10分類の合計が総額と輸出・輸入とも一致した。 輸入額のSITC別・通年は当社が入手できていないため、輸入単価は出していない。

2025年の化学品は、輸出19,907.4千トンに対して輸入30,252.8千トンで、輸入のほうが10,345.4千トン多い。52.0%多い計算になる。これは数量なので、FOBとCIFの違いに影響されない。

つまり額でも量でも、インドネシアは化学品の輸入超過である。2026年1〜6月の金額と2025年通年の数量で、年が違うことには注意が要る。それでも、金額だけで見たときに残っていた「運賃の分ではないか」という疑いは、これで消える。

数量が分かると単価も出せる。2025年の化学品の輸出単価は1トンあたり1,207.6ドルである。本ページの前半で見たポリエチレンメーカーの2026年上期の仕入単価は966.5ドル、関係会社向けの販売単価は1,264.1ドルであった。桁は合っている。

ただしSITC第5部「化学品」は樹脂より広い。肥料も有機化学品も無機化学品も入る。1,207.6ドルを樹脂の値段として読んではならない。当社が確かめたのは、会社の開示にある単価と国の統計から出る単価が、同じ桁に収まっているというところまでである。

この数量の表には、もう1つ確かめられたことがある。数量の表は10分類の合計が総額と、輸出も輸入も一致した。金額の表では合わなかった。2025年の輸出額の表も、10分類の合計が281,317.9百万ドルで総額282,505.3百万ドルと1,187.4百万ドル合わない。ずれるのは金額の表だけで、数量の表はずれない。

この章の結論有機化学品の輸入単価は2026年2月の77.21を底に5月の111.22へ44.0%上がった。燃料は72.1%である。製品であるプラスチックの輸出単価はその後から上がっている。化学品は数量でも輸入が52.0%多い。会社の数字と国の統計は同じ向きである。

日本から見たインドネシア

日本の貿易統計でも、インドネシアからの樹脂は増えている。ただし読み方を間違えやすい。

日本がインドネシアから輸入した数量。単位はトン。単価は2026年1〜6月の金額を数量で割った1トンあたりの円で、当社の計算による。網掛けはPP。

品目2025年1〜6月2026年1〜6月2026年6月2026年の単価
PP511,657265202,428
PPブロック7730390,333
HDPE19814935222,611
LDPE掲載なし735198,397

財務省貿易統計にもとづく「樹脂別国別輸入実績」を当社が集計した。2026年6月の単月は、1〜6月の累計から1〜5月の累計を引いた当社の計算である。「掲載なし」は原表にその国の行が無いことを示す。ゼロと確認したわけではない。

PPは51トンから1,657トンへ増えた。32.5倍である。LDPEも2025年上半期は掲載がなく、2026年上半期は73トンある。一方でPPブロックは77トンから3トンへ、HDPEは198トンから149トンへ減っている。増えているのはPPとLDPEだけである。

「インドネシアだけが増えた」は誤りである

日本のPP輸入で増えた数量を並べると、インドネシアは4番目である。倍率で見ても、HDPEのベトナム(35トン→8,253トン)のほうが大きい。インドネシアに固有なのは増加そのものではなく、原料の調達先が国内に入れ替わったことである。

日本のPP輸入のうち、増えた数量が大きい上位4か国。単位はトン。網掛けはインドネシア。

相手国2025年1〜6月2026年1〜6月増減
ベトナム19,80034,20014,400
中国6,30412,8766,572
タイ17,98123,5395,558
インドネシア511,6571,606

同上。インドネシアの増加は4番目である。

量そのものも小さい。日本のPP輸入は2026年1〜6月で116,121トンあり、インドネシアはそのうち1.427%にすぎない。前年同期は0.056%だった。比率は上がったが、絶対量は当社の実務を左右する水準ではない。

単価は1トン188,078円から202,428円へ上がっている。インドネシア側で見た仕入単価の上昇と、方向が一致している。ただし前者は日本の輸入価格、後者はインドネシア国内の原料価格で、通貨も段階も違う。当社は同じものを見ていない。方向が同じ、というところまでである。

この章の結論日本のPP輸入に占めるインドネシアは1.427%である。増え方は大きいが、量は小さい。

数字の作り方と、自分で更新する手順

本ページの数字は、公開されている財務諸表から誰でも取れる。手順を残しておく。

ACTION 1

会社の投資家向けページから財務諸表を取る

PT LOTTE CHEMICAL TITAN Tbkの投資家向けページに、中間および通年の連結財務諸表がPDFで置かれている。インドネシア語と英語が併記されており、英語だけを追えば読める。四半期ではなく半期と通年の開示である点に注意する。

ACTION 2

注記34の数量欄を見る

関係会社取引の注記に、金額(US$千)と数量(MT)が並んでいる。本ページの中心はこの表である。あわせて注記34bの本文を読む。仕入先がいつ替わったかが文章で書かれており、数字だけでは分からない切り替えの時期がここで確定する。

ACTION 3

もう1社はセグメントの注記から取る

最大手の開示には数量の注記がない。代わりにセグメント別の外部売上と損益(注記43)、売上の内訳(注記32)、売上原価の10%を超える仕入先(注記33)がある。ここで資料をまたいで四半期を引き算してはいけない。仕入先の表は資料ごとに値が食い違う。同じ表の左右の対比だけを使う。

ACTION 4

合計欄どうしを突き合わせてから使う

抽出したら必ず検算する。1社目は注記34の合計が注記27の合計と一致するか、地域別売上の合計が損益計算書の売上高と一致するか。2社目はセグメント外部売上の合計が連結売上と一致するか、注記32の内訳がセグメント外部売上と一致するか。ずれたら抽出を間違えている。半期の値を通年から引いて作った場合は、引き算した値であることを必ず明記する。

ACTION 5

国の統計は「Annually」欄を使わない

中央統計局の月次表には右端に「Annually」欄がある。これは資料によって意味が違う。輸出の3ファイルは1〜6月の累計だが、輸入の3ファイルは1〜5月の累計である。6月の列があるのに累計は5月までで止まっている。累計が要るときは月次から自分で足す。あわせて、分類の合計が総額と一致するかを月ごとに確かめる。輸出のSITC表は1月から4月まで一致せず、2025年の年表も1,187.4百万ドル合わない。ずれるのは金額の表である。数量の表は輸出・輸入とも一致した。金額と数量の両方が取れるときは、数量のほうを土台にする。

当社が実際に行った検算は次のとおりである。1社目は、注記34の仕入合計と注記27の合計が4期すべてで一致し、地域別売上の合計と売上高も4期すべてで一致し、棚卸資産の内訳合計と合計欄も3時点すべてで一致した。2社目は、セグメント外部売上の合計と連結売上が4期すべてで一致し、注記32の内訳とセグメント外部売上も12通りすべてで一致し、仕入先の表の内訳合計と合計欄も3資料すべてで一致した。

この検算で1つ確定したことがある。最大手の2024年のエネルギー輸出とインフラ海外は、原表では「-」である。掲載が無いだけなのかゼロなのかは、その欄だけを見ても分からない。しかし国内と輸出の合計がセグメント外部売上と一致したため、この「-」はゼロだと確定できた。合計欄との突き合わせは、空欄の意味を決める道具にもなる。

1件だけ差がある。2026年1〜6月の関係会社向け売上は、注記26では7,987千ドル、注記34の合計では7,986千ドルである。1千ドルの差で、丸めによるものとみられる。ほかの3期は一致している。本ページではこの売上高そのものを結論に使っていない。

この章の結論開示の合計欄どうしを突き合わせれば、抽出の誤りは見つかる。当社は4種類の検算をすべて通した。

よくある質問

インドネシアの樹脂は増えているのですか、減っているのですか
会社によって違います。ポリエチレンメーカーは原料の投入が32.0%(数量)増え、売上が15.2%増えました。国内最大の石化メーカーの化学セグメントは、外部売上が16.0%増えた一方で168,627千ドルの赤字です。国内販売に限れば10.5%減っています。国全体の樹脂の生産量や在庫を示す統計は見つかっていないため、国全体としてどうかは当社に分かりません。ただし中央統計局の輸出単価指数では、プラスチックの輸出単価が2026年3月の87.30を底に6月の108.66へ24.5%上がっています。値段が上がっているという点では、2社の数字と国の統計は同じ方向です。
原料の仕入先が替わったのはホルムズ海峡の封鎖のせいですか
違います。開示に「原料はマレーシアの会社から2025年5月まで、国内の会社から2025年6月以降」と書かれています。封鎖は2026年2月28日で、切り替えはその8か月前です。時期が合いません。なお、インドネシア最大の石化メーカーが供給の混乱を理由にフォースマジュールを宣言したのは2026年3月で、解除は2026年5月5日です。こちらは封鎖のあとの出来事です。
国内から買うようになったのに、なぜ単価が上がったのですか
開示に理由は書かれていません。事実として、仕入れの97%以上が同じ相手だった2つの期間を比べると、1トン791.4ドルから966.5ドルへ22.1%上がっています。ナフサを分解して作る以上、設備が国内にあっても投入する原料は原油とナフサの価格に連動します。ただしこれは当社の理解であって、開示が述べていることではありません。
2025年1〜6月の912.9ドルと比べてはいけないのですか
比べないほうがよいと当社は考えています。この期は仕入れの93.8%(数量)がマレーシアからで、開示によれば原料と製品が混ざっています。2026年1〜6月はほぼ全量が国内からの原料です。中身の違うものを比べることになります。比較に使えるのは2025年7〜12月です。
黒字なのに在庫が増えているのは問題ですか
当社は良し悪しを判断していません。事実として、製品在庫は2.96倍になり、棚卸資産の合計は79.6%増え、評価引当2,594千ドルが期末に残っています。前の2期はいずれも期末残高がゼロでした。原料の投入が32.8%増えて売上が15.2%しか増えていないので、差は在庫に回っています。
インドネシアから日本への輸入は増えているのですか
PPは2025年1〜6月の51トンから2026年1〜6月の1,657トンへ増えました。LDPEも73トンあります。一方でPPブロックは77トンから3トンへ、HDPEは198トンから149トンへ減っています。品目によって向きが違います。
インドネシアだけが増えているのですか
いいえ。日本のPP輸入で増えた数量が大きいのはベトナム(14,400トン増)、中国(6,572トン増)、タイ(5,558トン増)で、インドネシア(1,606トン増)は4番目です。日本のPP輸入に占めるインドネシアの比率は1.427%にすぎません。
インドネシア最大の石化メーカーは儲かっているのですか
連結では2026年1〜6月に433,952千ドルの税引前黒字です。ただし化学セグメントは168,627千ドルの赤字で、3期連続の赤字です。2024年は35,461千ドルの黒字でした。黒字を作っているのはエネルギーセグメントで、897,833千ドルの黒字を出しています。樹脂の話としては赤字が続いている、というのが本ページの読み方です。
2社を足せばインドネシア全体の数字になりますか
なりません。2社を足してもインドネシアのすべての樹脂メーカーではありませんし、開示の期間区分も品目区分も違います。一方は数量をトン、もう一方は千トンで、しかも品目の分け方が違います。本ページでは2社を足していません。並べて見るところまでです。
サウジアラムコからの仕入れが減ったのは封鎖のせいですか
開示に理由は書かれていません。事実として、2026年1〜6月の仕入れは252,159千ドルで前年同期から44.9%減り、代わりにグレンコアからの仕入れが88.1%増えています。会社は売上が増えた理由については「取得した子会社の寄与と、中東の地政学的な展開に伴う市場の変動による販売価格の上昇」と書いていますが、仕入先が入れ替わった理由は書いていません。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの表を公開しているのですか
当社は物流資材の商社で、プラスチックパレット、再生樹脂原料、PPバンド、ストレッチフィルムを取り扱っています。樹脂の原料がどこで作られ、いくらで動いているかは当社の仕入れの話です。自社の仕入れのために作った表を、そのまま公開しています。

出典・エビデンス一覧

PT LOTTE CHEMICAL TITAN Tbk の開示(当社が原表を直接集計したもの)

インドネシア中央統計局(BPS)の統計表(当社が原表を直接集計したもの)

日本の貿易統計

背景(二次ソース)

PT Chandra Asri Pacific Tbk の開示(当社が原表を直接集計したもの)

当社の関連記事

  • 本ページの数値は2026年6月30日を最終時点とする。中間連結財務諸表は未監査である。
  • 本ページが見ているのは2社の数字であり、インドネシア全体の数字ではない。国全体を代表するとは書けない。2社を足していない。
  • 2社の「国内」は品目の中身が違う。一方はポリエチレンの製造と卸売、もう一方はオレフィン・ポリオレフィンと下流製品である。国内販売の増減が逆であることについて、当社は原因を確認していない。
  • 最大手のセグメント損益の合計と連結の税引前損益は一致しない。差は原表が「配分不能」とする損益であり、当社はその中身を確認できていない。
  • 最大手の仕入先の表は、資料をまたぐと2025年の値が累計として矛盾する。当社は同じ表の左右の対比だけを使い、資料をまたいだ引き算をしていない。矛盾の理由は確認できていない。
  • 最大手の2025年の販売数量4,324千トンは、前年からの増加のほとんどが取得した子会社によるものである。同じ設備の稼働が増えたことを示すものではない。
  • シンガポールの設備の能力は年次報告書の記載による。当社は実際の稼働率を確認できていない。
  • 2025年7〜12月の値は、通年から1〜6月を引いた当社の計算である。原表にこの期間の欄はない。
  • 仕入単価は金額を数量で割った当社の計算である。2025年1〜6月以前は原料と製品が混ざっているため、2026年1〜6月と直接比べていない。
  • 原料の仕入先が2025年6月に国内へ替わったことと、ホルムズ海峡の封鎖(2026年2月28日)とのあいだに、当社は因果を主張していない。切り替えは封鎖の8か月前である。
  • 単価が22.1%上がった理由は開示に書かれていない。ナフサと原油の価格との連動は当社の理解であって、開示が述べていることではない。
  • 日本側の輸入単価はドルではなく円であり、インドネシア側の仕入単価とは通貨も流通段階も違う。当社は同じものを比べていない。
  • 「掲載なし」はその国の行が原表に無いことを示す。ゼロと確認したわけではない。
  • 中央統計局の月次表の「Annually」欄は、輸出の資料では1〜6月、輸入の資料では1〜5月の累計であり、意味が違う。本ページはこの欄を使わず、月次から当社が合計している。
  • 輸出のSITC表は、10分類の合計が総額と一致しない月がある(1月から4月)。5月と6月は一致した。2025年の年表でも1,187.4百万ドル一致しない。数量の表は輸出・輸入とも一致した。当社はこの差の理由を確認できていない。
  • SITC第5部「化学品」は樹脂より広く、肥料・有機化学品・無機化学品を含む。2025年の輸出単価1,207.6ドルは化学品全体の値であり、樹脂の値段ではない。
  • 数量による輸出入の比較は2025年通年、金額による比較は2026年1〜6月であり、対象期間が違う。
  • 輸入額のSITC別・通年は当社が入手できていないため、2025年の輸入単価は算出していない。
  • 石油・ガス輸入の「アジアのその他」には中東のほかインド・韓国・台湾なども含まれる。中東の国別の内訳は公表されていない。当社は「中東からの輸入が減った」と書いていない。
  • 単価指数は単価であって数量ではない。輸出入が増えたか減ったかを示すものではない。2023年=100の指数であり、品目どうしの水準を比べることはできない。
  • 単価指数の系列は6つの月報をつないで作った。重なる80か月ぶんの値が一致したことを確認しているが、当社がつないだものであり、原表にこの形の系列は無い。
  • 2026年6月の単価指数は輸出のみである。同月の月報を入手していないため、輸入は掲載していない。
  • HS29「有機化学品」はエチレンやプロピレンを含むが、それだけの区分ではない。当社は樹脂の原料そのものの価格を見ているわけではない。
  • SITC「化学品」の輸出はFOB、輸入はCIFである。輸入側に運賃と保険が含まれるため、差額をそのまま純輸入額として読むことはできない。
  • 中央統計局の2025年の月次が無いため、2026年の月次に対する前年同期比を計算していない。通年を半分にして比べることもしていない。
  • チレゴンの新設備に関する能力・投資額・開始時期は報道による二次情報である。当社は会社の開示で確認できていない。
  • 本ページに登場する別会社のフォースマジュールは、本ページの会社の出来事ではない。両者を混ぜて読まないこと。
  • そのフォースマジュールについて、宣言の時期(2026年3月)と解除の日付(2026年5月5日)は会社の開示で確認した。ただし実際に稼働率が下がったかどうかは確認できていない。報道は引き下げると伝え、会社の開示は「即時の支障は生じていない」としている。当社はどちらが正しいかを判定していない。
  • 本稿は情報提供を目的としたもので、特定の判断を推奨するものではありません。

〒270-1175 千葉県我孫子市青山台3-8-5/TEL 050-3470-4265/FAX 03-6771-9911/koike@plastic-pallet.co.jp
プラスチックパレット、再生樹脂原料、PPバンド、ストレッチフィルム、工業用尿素のお取扱い。全国対応。

トップへ戻る