中国の樹脂はどこへ行ったのか、輸出先の上位10か国に日本はなく、それでも6月の輸入単価は最も安い
中国は2026年1〜7月の原油輸入を13.2%減らしながら、4月のポリエチレン輸出を前年同月の5.8倍にしました。ただし行き先は東南アジアと南アジアで、上位10か国に日本は入っていません。それでも日本への輸入は2.08倍になり、6月の輸入単価は中国が1kg264円で最も安くなりました。中国と日本の公表統計で追います。
- 中国の2026年1〜7月の原油輸入は2.83億トンで前年同期比13.2%減、原油加工量は39,696万トンで6.5%減でした。7月の加工量だけを見ると15.8%減です。
- それでも樹脂は増えました。2026年4月のポリエチレン輸出は54.51万トンで前年同月比484.12%増、つまり5.8倍です。同じ月の輸入は67.15万トンで46.70%減でした。
- できた理由は原料の違いです。5月のポリエチレンの設備利用率は、石炭からつくる装置が97.58%、石油からつくる装置が70.95%。利益も石炭は1トン1,624元の黒字、石油は1,859元の赤字でした。
- 在庫がそれを裏づけます。PPの生産企業在庫は3月3日の73.99万トンから8月5日には33.02万トンへ55.4%減り、問屋の在庫は24.97万トンから6.13万トンへ75.4%減りました。
- ただし行き先は日本ではありません。2026年4月のPP輸出の上位10か国はインド・インドネシア・ベトナムなどで77.18%を占め、日本は10位のブラジル1.55万トンより下だと確定します。
- それでも日本への輸入は増えました。中国からのPP・PPブロック・HDPE・LDPEは1〜6月累計で19,883トンから41,308トンへ2.08倍。HDPEだけで9.71倍です。
- 効いたのは量より値段です。1〜3月はPPが中国279円に対し輸入全体178円と中国が101円高かったのに、6月単月は中国264円に対し全体278円で逆転しました。
- 日本は逆に工場が止まりました。7月のエチレン稼働率は69.9%で前年同月の77.5%を下回り、国産ナフサは4〜6月期が1kl 118,900円と1〜3月期の1.81倍です。
中国は原油もナフサも減らして、樹脂の輸出を増やしました。4月のポリエチレン輸出は前年同月の5.8倍です。ただし行き先は東南アジアと南アジアで、上位10か国に日本はありません。それでも日本への輸入は2.08倍になり、6月の輸入単価は中国が1kg264円で最も安くなりました。
CHAPTER 012026年2月28日に何が起きたのでしょうか
この記事の数字は、すべて1つの日から始まります。2026年2月28日、ホルムズ海峡が封鎖されました。
アジアの石油化学は、中東から運ばれてくるナフサでできています。ICISの集計では、2025年にアジアが輸入したナフサ8,660万トンのうち54%が中東産でした。UAEが1,967万トン、カタールが997万トン、クウェートが795万トンです。その航路が止まりました。
日本はナフサが買えなくなって工場を止めました。中国は原油もナフサも買うのをやめて、それでも樹脂を増産し、余った分を輸出に回しました。同じ半年で、正反対のことが起きています。この記事は、その差がどこから来たのかと、それが日本の仕入れにどう届いたのかを数字で追うものです。なおマレーシアは産油国でありながら日本より深刻な状態になりました。シンガポールは油田を持たない国として、3月に相次いで生産の停止が出ました。同じ事故でも、国によって出方が違います。
当社は物流資材の商社です。ポリプロピレンでできたパレット、PPバンド、ストレッチフィルムを扱っています。原料が中国から来るのか中東から来るのかは、仕入れの値段そのものです。だから追いかけています。
CHAPTER 02中国は原油の輸入を1割以上減らしました
まず入口です。中国海関総署が2026年8月7日に公表した1〜7月の統計で、原油の輸入は2.83億トン、前年同期比13.2%減でした。
買う量が減れば、当然、精製する量も減ります。中国国家統計局が2026年8月17日に公表した7月の数字が、それを裏づけています。
| 項目 | 2026年7月 | 1〜7月累計 |
|---|---|---|
| 原油加工量 | 5,311万トン 15.8%減 | 39,696万トン 6.5%減 |
| 原油生産量 | 1,827万トン 0.8%増 | 12,769万トン 0.9%増 |
中国国家統計局「2026年7月份能源生产情况」を直接参照しました。前年同月比・前年同期比です。
読み方に注意が要ります。自分で掘る分は増えています。1〜7月の生産量は0.9%増でした。減ったのは輸入と、その輸入に頼っていた精製のほうです。
もう1つ。累計の6.5%減より、7月単月の15.8%減のほうが大きいという点です。年の前半に落ち込みが集中したのではなく、足元のほうが厳しいことを示しています。
CHAPTER 03ナフサの輸入は、もっと減らしています
原油より削られたのがナフサです。
華経産業研究院がまとめた海関総署の統計では、2026年3月のナフサ輸入は86万トンで前年同月比35.7%減、平均単価は1トン754.1米ドルでした。ところが1〜3月の累計は472万トンで、前年同期比49%増です。
封鎖は2月28日です。1月と2月は、まだ普通に買えていました。むしろ値上がりを見越して積み増していた可能性があります。3月に入って急に途絶えたため、単月では35.7%減、累計ではまだ49%増、という形になっています。累計の数字だけを見ると、実態を取り違えます。
4月以降はさらに落ちます。中国の報道によると、2026年4〜6月のナフサ輸入は前年同期の35%にとどまりました。同じ期間の日本と韓国は前年の7割程度です。中国が最も大きく削りました。
もっとも、中国はもともとナフサをそれほど輸入していません。ナフサの輸入依存度は17%です。日本はおよそ60%、韓国も7割超と報じられています。この差が、次の章の結果を生みます。
CHAPTER 04それなのに、樹脂の輸出は増えました
ここが、この記事でいちばん申し上げたいところです。
| 2026年4月 | 数量 | 前年同月比 | 前月比 |
|---|---|---|---|
| PE(ポリエチレン)輸出 | 54.51万トン | 484.12%増 | 168.90%増 |
| PE輸入 | 67.15万トン | 46.70%減 | 35.94%減 |
| PP(ポリプロピレン)輸出 | 63.94万トン | 123.52%増 | 57.66%増 |
| PP輸入 | 20.5万トン | 27.37%減 | 23.99%減 |
PEは英大期貨、PPはCCFGroupが、いずれも中国海関の統計をもとにまとめたものです。当社は原表を確認していません。
484.12%増というのは、5.8倍という意味です。前年の4月に10万トン弱しか出していなかったものが、54万トンになりました。
4月のPEは、輸入67.15万トンに対して輸出54.51万トンです。差し引き12.64万トンしか入っていません。中国は世界最大のポリエチレン輸入国でした。ブルームバーグNEFの集計では、この差し引き(純輸入)は2月の98.8万トンから5月には3.5万トンまで落ちています。2月の28分の1です。
PPはもっと先に進んでいます。第1四半期の輸出は93.99万トンで前年同期比28.34%増、4月には輸入を43.43万トン上回りました。中国はポリプロピレンの純輸出国になっています。
1〜2月のPE輸入は232万トン(8.4%減)という集計と260万トン(11%減)という集計があり、当社ではどちらが正しいか判定できませんでした。第2四半期のPE輸出も、月次を足した数と四半期の集計値が合いません。方向(輸入は減り、輸出は激増した)は複数の出典で一致していますが、絶対値は出典によって幅があります。この記事では、2つ以上の出典で一致した4月の数字を中心に使いました。
CHAPTER 05在庫は、3月にたまって8月に消えました
輸出が本当だったのかは、在庫を見れば分かります。つくった分がどこにも行かなければ、在庫は積み上がります。本当に外へ出ていれば、減ります。
中国では期貨会社が週ごとに在庫を集計しています。五鉱期貨が同じ集計を毎週出しているので、これを2025年と2026年で並べました。生産企業の手元にある在庫(生产企业库存)です。日付ごとの実数と出典は、中国のPE・PP在庫のまとめにすべて載せています。
| 時点 | PE 生産企業在庫 | PP 生産企業在庫 |
|---|---|---|
| 2026年1月7日 | 37.07万トン | 49.07万トン |
| 2026年2月12日 | 37.97万トン | 41.58万トン |
| 2026年3月3日 | 57.97万トン | 73.99万トン |
| 2026年4月22日 | 61.33万トン | 58.93万トン |
| 2026年5月12日 | 57.85万トン | 55.58万トン |
| 2026年6月2日 | 49.79万トン | 47.42万トン |
| 2026年7月8日 | 36.35万トン | 41.75万トン |
| 2026年8月5日 | 42.13万トン | 33.02万トン |
五鉱期貨「能源化工日報」の各号を当社が直接読み、同じ系列の数字だけを並べました。週ごとの集計値で、日付は日報の発行日です。
3月に山があり、8月に谷があります。ポリプロピレンは3月3日の73.99万トンから8月5日の33.02万トンへ、40.97万トン、率にして55.4%減りました。ポリエチレンも57.97万トンから42.13万トンへ、15.84万トン減っています。
2026年の春節は2月17日でした。中国の樹脂在庫は毎年、春節の前後に大きく積み上がります。建信期貨の集計では、中国石油と中国石化の合計在庫は春節明けに94万トンで、連休前より48万トン増えていました。ホルムズ海峡の封鎖は2月28日で、春節の在庫の山とほぼ重なります。当社では、3月の山のうちどこまでが季節要因でどこからが封鎖要因かを分けられません。この記事で申し上げられるのは、山の高さではなく、そのあと8月まで一貫して減り続けたということです。
前の年と比べると、水準の低さがはっきりします。同じ五鉱期貨の集計で、2025年は次のとおりでした。
| 時点 | PE 生産企業在庫 | PP 生産企業在庫 |
|---|---|---|
| 2025年3月24日 | 54.08万トン | 70.07万トン |
| 2025年6月末 | 43.84万トン | 57.01万トン |
| 2025年12月31日 | 45.86万トン | 53.33万トン |
五鉱期貨の日報と月報を当社が直接読みました。2025年6月末は月報の月末値です。
2025年のポリプロピレンは、年間を通じて53万トンから70万トンの間にいました。2026年8月5日の33.02万トンは、その下限をさらに20万トン下回ります。2025年末の53.33万トンと比べると38.1%減です。
生産企業ではなく貿易商(問屋)の在庫を見ると、動きはもっと極端です。ポリプロピレンの貿易商在庫は2026年3月3日の24.97万トンから、8月5日には6.13万トンまで落ちました。75.4%減です。2025年末は18.72万トンでしたから、その3分の1です。つくり手も問屋も、手元にあるものを吐き出しています。
大手2社の在庫でも同じ向きです。建信期貨の日報によると、中国石油と中国石化の合計在庫は2026年8月11日で68万トン、前年同期の81.5万トンを13.5万トン下回りました。16.6%減です。
在庫が減っているという事実は、輸出の数字と整合します。もし4月のPE輸出54.51万トンが集計の誤りなら、そのぶんは在庫として国内に残っていたはずです。残っていません。別々の会社が別々の方法で集めた在庫の数字が、そろって同じ向きを指しています。第4章で「絶対値は出典によって幅がある」と申し上げましたが、方向については、在庫の側からも裏が取れました。
在庫が減るのは、需要が強いときと、外に売ってしまったときの両方で起こります。2026年の中国は後者です。国内の在庫が薄いところに新しい設備が動けば、値段は下がる方向に働きます。逆に、在庫が薄いまま設備の稼働が遅れれば、値段は上がりやすくなります。当社では、どちらになるかを申し上げられません。在庫の水準が2025年より低いところにある、というところまでです。
CHAPTER 06石炭からつくる装置が、止まらなかったからです
原油もナフサも減らして、なぜ樹脂を増やせたのか。答えは原料の道が1本ではないことにあります。
中国のポリエチレンには、大きく3つのつくり方があります。石油(ナフサ)から、石炭から、そして軽い炭化水素(エタンやプロパン)からです。2026年5月の設備利用率は、この3つで大きく開きました。
| つくり方 | 設備利用率(2026年5月) | 1トンあたりの利益 |
|---|---|---|
| 石炭から(煤制) | 97.58% | 1,624元の黒字 |
| 軽い炭化水素から(軽烃制) | 72.31% | 841元の赤字 |
| 石油から(油制) | 70.95% | 1,859元の赤字 |
| 全体 | 76.05% | — |
英大期貨「烯烃月報」(2026年5月29日)によります。利益の区分は「油制」「乙烯法」「煤制」で、利用率の区分と完全には一致しません。当社は原表を確認していません。
石炭からつくる装置は、ほぼ全開で回りました。石油からつくる装置との差は26.63ポイントです。利益の差は1トンあたり3,483元にもなります。
ホルムズ海峡が止まったとき、日本と韓国には代わりの原料がありませんでした。ナフサが来ないなら、クラッカーを止めるしかない。中国には内モンゴルの石炭がありました。石炭から一酸化炭素と水素をつくり、メタノールを経てエチレンにする道です。中東の航路とは関係がありません。原油が高くなればなるほど、石炭からつくるほうが有利になります。
ただし、これで全部を説明できるわけではありません。2025年時点で、中国のエチレンの71.67%はナフサ分解によるものでした。石炭由来はまだ一部です。石炭が全部を肩代わりしたのではなく、石炭が止まらなかったぶんだけ、石油の落ち込みを埋めたと読むのが正確です。
もう1つ、能力の増設が重なりました。中国化工報によると、2026年のポリエチレンの新規能力は615万〜729万トンで、年末の総能力は4,500万トンを超える見込みです。
需要が弱いところに設備が増えれば、余った分は外に出ます。下半期にはさらにポリエチレンとポリプロピレンで合計1,000万トンを超える能力が動くという見通しもあります。封鎖が解けても、この設備は残ります。2026年の輸出増が一時的なものかどうかは、ここで決まります。
CHAPTER 07日本の工場は、逆に止まりました
同じ半年に、日本で起きたことです。石油化学工業協会が2026年8月20日に公表した7月の実績によります。
| 項目 | 2026年7月 | 前月 | 前年同月 |
|---|---|---|---|
| エチレン生産量 | 372,400トン | 28.5%増 | 3.7%減 |
| 実質稼働率 | 69.9% | 66.6% | 77.5% |
石油化学工業協会「実績概要メモ」(2026年8月20日)を直接参照しました。稼働率は稼働プラントの実質稼働率試算です。
4月はもっと悪い数字でした。ジェトロが石化協の発表をもとに伝えたところでは、2026年4月のエチレン生産は前年同月比37.1%減、稼働率は67.3%です。3月はLDPEが41%減、HDPEが62%減、PPが28%減でした。
7月末の在庫も積み上がっています。何か月分を抱えているかで見ると、LDPEが3.4、HDPEが3.7、PPが2.9、PSが2.0です。
ジェトロが石化協の資料をもとに伝えたところでは、2024年の日本のナフサ輸入の中東依存度は73.6%でした。UAEが30.4%、クウェートが21.6%、カタールが15.4%です。迂回できる航路が原油ほど整っていないことが、日本の落ち込みを深くしました。
そして空いたところに、中国の樹脂が入ってきました。日本経済新聞は2026年4月28日、中国からのプラスチック原料の輸入が前年同期比でおよそ3割増え、一部の品目は6年ぶりの水準になったと報じています。ただし「中国から来ている」という言い方には、確かめるべきことが2つあります。どれだけ来たのかと、いくらだったのかです。次の章で扱います。
CHAPTER 08中国の樹脂の輸出先に、日本は入っていません
ここが、この記事でいちばん注意して書いた章です。「中国が輸出を増やした」ことと「日本に来ている」ことは、同じではありません。
中国の輸出先の内訳を見ると、日本が出てきません。
| 2026年4月のPP輸出(ホモPP) | 数量 | シェア |
|---|---|---|
| インド | 9.11万トン | 16.43% |
| インドネシア | 8.91万トン | 16.08% |
| ベトナム | 7.89万トン | 14.23% |
| タイ | 3.99万トン | 7.20% |
| パキスタン | 3.06万トン | 5.52% |
| 上位10か国の合計 | 42.79万トン | 77.18% |
CCFGroupが中国海関の統計をもとにまとめたものです。10位はブラジルの1.55万トン・2.79%でした。
この表に日本はありません。上位10か国でホモPPの77.18%を占めているので、日本向けは10位のブラジル1.55万トンを下回ります。「載っていない」ではなく、上限が押さえられているということです。ポリエチレンも同じで、2026年4月の内訳はベトナム18%、インドネシア9%、マレーシア9%、タイ7%、ブラジル5%で、日本は出てきません。中国の樹脂が向かった先は、東南アジアと南アジアです。
それでも、日本への輸入は2倍になっています
ところが日本側の統計を見ると、量は増えています。財務省貿易統計をもとにプラサーチがまとめた数字です。
| 中国からの輸入(1〜6月累計) | 2025年 | 2026年 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| PP(ホモ) | 6,304トン | 12,876トン | 2.04倍 |
| PP(ブロック) | 12,847トン | 21,874トン | 1.70倍 |
| HDPE | 562トン | 5,458トン | 9.71倍 |
| LDPE | 170トン | 1,100トン | 6.47倍 |
| 4つの合計 | 19,883トン | 41,308トン | 2.08倍 |
プラサーチ「樹脂別国別輸入実績」(財務省貿易統計による)を当社が直接読み、合計と倍率は当社が計算しました。
ただし、量そのものは小さいままです。4つ合わせて半年で41,308トン。中国のポリプロピレン輸出は、4月の1か月だけで63.94万トンあります。日本向けはその桁に入りません。倍率が大きいのは、もとの量が小さかったからです。「中国産が日本市場を席巻した」とは書けません。
効いているのは量ではなく、値段の順位が変わったことです
数量より重要なのがこちらです。2026年に、中国が「高い調達先」から「安い調達先」に変わりました。
| 1kgあたりの輸入単価 | 1〜3月累計 | 6月単月 |
|---|---|---|
| PP 中国から | 279円 | 264円 |
| PP 輸入全体の平均 | 178円 | 278円 |
| HDPE 中国から | 322円 | 240円 |
| HDPE 輸入全体の平均 | 157円 | 283円 |
プラサーチの累計値から当社が計算しました。6月単月は1〜6月累計から1〜5月累計を差し引いたものです。1〜3月は累計値のため、封鎖前後を含んだ平均になります。
読み方はこうです。年の初めは、中国から買うと1kgあたり101円も高くつきました。PPで中国279円に対して輸入全体の平均が178円です。HDPEはもっと差があり、中国322円に対して全体157円、165円の開きがありました。
それが6月に逆転します。PPは中国264円に対して全体278円で、中国のほうが14円安い。HDPEは中国240円に対して全体283円で、43円安い。
6月単月をならべると、中国264円、ベトナム270円、輸入全体278円、韓国283円、タイ292円、シンガポール360円です。中国がいちばん安い。ただしこれは中国が安売りしたからではありません。1〜3月と6月を比べると、タイは150円から292円へ、シンガポールは198円から360円へ上がっています。中国は279円から264円へ、ほとんど動いていません。まわりが上がって、中国だけが取り残された結果の1位です。
なぜ中国だけ上がらなかったのでしょうか
中国の国内相場が、海外より安かったからです。徳富塑料網が毎週まとめているアジアの価格を見ると、封鎖の直前と直後でこう変わりました。
| LLDPE薄膜(1トンあたり) | CFR中国 | CFR東南アジア | 差 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月24〜28日 | — | — | 20〜100ドル |
| 2026年3月16〜20日 | 952〜954ドル | 1,352〜1,354ドル | 400ドル |
| 2026年4月20〜24日 | 1,152〜1,154ドル | 1,467〜1,469ドル | 315ドル |
徳富塑料網「PE塑料周評」(新浪財経掲載)によります。2月末の欄は、HDPE拉丝が20ドル、LDPE一般が100ドルの差だったことを示しています。差は当社が各レンジの中央値から計算しました。
封鎖の直前は20〜100ドルしか違わなかった価格差が、3月には400ドルに開きました。中国の中で買って外で売れば、1トンあたり400ドル取れる状態です。これが4月の輸出の急増を生みました。
中国のポリプロピレンの輸出単価は、1〜2月の1トン935〜948ドルから3月には1,022.87ドルへ上がっています。安く投げ売りしたのではなく、もともと自国の相場が安く、海外が上がったので外へ出したという順序です。日本が中国から安く買えたのは、値引きを受けたからではなく、中国国内の安い相場につながったからです。2025年に報じられた「デフレ輸出」とは構造が違います。
そして価格差が消えると、輸出は止まりました。中国のPP輸出は4月の63.94万トンから5月には47.49万トンへ、14.35%減っています。
ここまでを一言でまとめます。中国の樹脂は、主に東南アジアと南アジアへ行きました。日本は主要な行き先ではありません。それでも日本への輸入は倍増し、値段の順位は入れ替わりました。日本に効いたのは、中国から届いた量ではなく、中国という安い調達先が選べるようになったことのほうです。ただしこの窓は、5月から6月にかけて閉じつつあります。
CHAPTER 09日本の値段は、どこまで上がったのでしょうか
結果として、日本の樹脂の値段はこう動きました。まず原料です。
| 期 | 国産ナフサ基準価格 | 前期比 |
|---|---|---|
| 2026年1〜3月期 | 65,700円/kl | 100円高 |
| 2026年4〜6月期 | 118,900円/kl | 53,200円高 |
化学工業日報の報道によります。4〜6月期は金額・上げ幅とも過去最高で、2022年4〜6月期の86,100円を大きく超えました。
1四半期で1.81倍です。これが樹脂の値段に、そのまま乗りました。
| 発表日 | 会社と製品 | 改定幅 | 実施 |
|---|---|---|---|
| 2026年1月27日 | プライムポリマー PE・PP | 5円/kg以上 | 4月1日納入分 |
| 2026年3月17日 | プライムポリマー PE・PP | 90円/kg以上 | 4月1日納入分 |
| 2026年4月21日 | プライムポリマー PE・PP | 30円/kg以上 | 5月1日納入分 |
| 2026年3月25日 | 日本サニパック ポリエチレン製品 | 30%以上 | 5月21日着荷分 |
| 2026年4月3日 | 信越ポリマー ラップ全製品 | 35%以上 | 5月7日出荷分 |
| 2026年5月28日 | グンゼ 包装用OPPフィルム | 500円/巻 | 6月22日出荷分 |
各社の公表資料によります。グンゼの500円/巻は20μを基準にした額です。
プライムポリマーの1月27日の改定は5円/kg以上でした。封鎖後の3月17日は90円/kg以上です。同じ4月1日納入分に対する改定が、2か月足らずで18倍になりました。3月17日のリリースには、ナフサが1kl 110,000円を超える水準で推移する見通しと書かれています。実際の4〜6月期は118,900円で、この見通しをさらに上回りました。
ポリ袋やフィルムの値上げが20%から35%という桁になったのは、この原料の動きが理由です。従来の改定は10〜15%が通例でした。
中国の樹脂が入ってくれば、日本の値段を下げる方向に働きます。一方で、中国の設備が下半期にさらに1,000万トン以上増えるという見通しもあれば、封鎖がいつ解けるか分からないという事情もあります。当社は、いつ買うべきか、買い控えるべきかを申し上げません。いま何が起きているかを、確かめられる数字でお伝えするところまでです。
CHAPTER 10この記事に出てきた言葉の意味
CHAPTER 11主な情報源
中国国家統計局「2026年7月份能源生产情况」(2026年8月17日)
東方財富網「前7月中国进出口总值超30万亿元」(2026年8月7日、中国海関総署発表)
華経産業研究院「2026年3月中国石脑油进口数量、进口金额及进口均价统计分析」
CCFGroup「China's April PP exports hit records amid tight domestic supply」(2026年5月26日)
プラサーチ「樹脂別国別輸入実績」2025年1〜6月・2026年1〜3月・1〜5月・1〜6月(財務省貿易統計による)
CCFGroup「China's April PP exports hit records amid tight domestic supply」(2026年5月26日)
我的鋼鉄網「中国聚丙烯按注册地出口量月数据分析(2026年3月)」/新浪財経掲載の各記事
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ジェトロ ビジネス短信(2026年5月1日・5月22日、石油化学工業協会発表を引用)
プライムポリマー 価格改定リリース(2026年1月27日・3月17日・4月21日)
日本サニパック「価格改定のお知らせ」(2026年3月25日)
本記事は2026年8月29日時点で公表されている資料に基づいています。中国海関総署のデータベースは当社の取得ツールで読めませんでした。中国側の輸出入の数字は、いずれも海関の統計を引用した第三者の集計によるものです。1〜2月のPE輸入は232万トンと260万トンという2つの集計があり、第2四半期のPE輸出も月次と四半期で整合しません。当社ではどちらが正しいか判定できていません。本文では2つ以上の出典で一致した4月の数字を中心に使いました。2026年5月以降のPE・PPの月次輸出入、およびナフサの4月以降の月次輸入は、実数を確認できていません。在庫については、第5章に載せた数字はすべて当社がPDFを直接読んだものですが、集計しているのは政府ではなく民間の調査会社(卓創資訊・隆衆資訊)で、サンプル企業の範囲は公開されていません。同じ2026年5月末のPE社会在庫が48.08万トンと51.48万トンという2つの値で流通しているのも、この範囲の違いによるものです。2025年は月次で連続した数字が取れず、3点しか並べられませんでした。2026年3月の在庫の山は春節(2月17日)とホルムズ海峡の封鎖(2月28日)が重なっており、当社では季節要因と封鎖要因を分けられていません。設備能力の見通しは出典によって幅があり、稼働の遅れも起こり得ます。中国の輸出の仕向地別内訳は、ホモPPと2026年4月分についてのみ上位10か国まで確認できたものです。共重合PPや通年の内訳、日本向けの実数は中国側の統計で確認できていません。日本側の輸入量と単価はプラサーチが財務省貿易統計をもとにまとめた集計によるもので、当社は財務省の原表を確認していません。単価は通関金額を数量で割ったもので、実際の商談価格そのものではありません。グレードの構成や運賃によっても動きます。6月単月の値は、当社が1〜6月累計から1〜5月累計を差し引いて計算したものです。2026年7月以降の輸入実績は、本記事の作成時点で公表されていません。当社は、樹脂の値段が今後どう動くかを予想していません。お取引の判断は、各社の最新の案内をご確認ください。
FAQよくあるご質問
中国は2026年に原油をどれくらい減らしたのですか。
中国海関総署の統計では、2026年1〜7月の原油輸入は2.83億トンで前年同期比13.2%減でした。中国国家統計局の発表では、同じ1〜7月の原油加工量は39,696万トンで6.5%減、7月単月では5,311万トンで15.8%減です。一方で国内の原油生産は1〜7月で12,769万トン、0.9%増と増えています。
中国のナフサ輸入はどれくらい減りましたか。
2026年3月の輸入は86万トンで前年同月比35.7%減でした。ただし1〜3月の累計では472万トンで49%増です。封鎖が2月28日だったため、1月と2月はまだ買えていたためです。中国の報道では、4〜6月の輸入は前年同期の35%にとどまったとされています。
原料が減ったのに、なぜ樹脂の輸出が増えたのですか。
つくり方が1つではないためです。2026年5月のポリエチレンの設備利用率は、石炭からつくる装置が97.58%だったのに対し、石油からつくる装置は70.95%でした。1トンあたりの利益も石炭は1,624元の黒字、石油は1,859元の赤字です。中東の航路に関係しない石炭由来の装置が全開で回り続けたことが、輸出増を支えました。
ポリエチレンの輸出は具体的にどれくらい増えましたか。
2026年4月の輸出は54.51万トンで、前年同月比484.12%増、前月比168.90%増でした。484.12%増は5.8倍という意味です。同じ月の輸入は67.15万トンで46.70%減でしたので、差し引きの純輸入は12.64万トンまで縮んでいます。ブルームバーグNEFの集計では、純輸入は2月の98.8万トンから5月には3.5万トンになりました。
中国はポリプロピレンの純輸出国になったのですか。
複数の集計がそう伝えています。2026年4月のPP輸出は63.94万トンで前年同月比123.52%増、輸入は20.5万トンで27.37%減、差し引き43.43万トンの純輸出でした。第1四半期の輸出93.99万トン・28.34%増は3つの出典で同じ値を確認しています。
中国の樹脂の在庫はどうなっていますか。
減っています。五鉱期貨の集計では、PPの生産企業在庫は2026年3月3日の73.99万トンから8月5日には33.02万トンになりました。55.4%減です。PEも57.97万トンから42.13万トンへ減っています。貿易商の在庫はもっと極端で、PPは24.97万トンから6.13万トンへ75.4%減りました。輸出が増えたという数字と、在庫が減ったという数字は整合しています。
在庫は2025年と比べてどうですか。
低い水準です。同じ五鉱期貨の集計で、2025年のPP生産企業在庫は3月24日が70.07万トン、6月末が57.01万トン、12月31日が53.33万トンでした。2026年8月5日の33.02万トンは、2025年末と比べて38.1%低い水準です。中国石油と中国石化の合計在庫も、2026年8月11日が68万トンで前年同期の81.5万トンを16.6%下回っています。
日本の石油化学はどうなっていますか。
石油化学工業協会の発表では、2026年7月のエチレン生産は372,400トンで前年同月比3.7%減、実質稼働率は69.9%でした。前年同月は77.5%です。前月の6月は66.6%まで下がっていました。4月はさらに悪く、生産が前年同月比37.1%減、稼働率67.3%でした。7月末の在庫は月数に直すとLDPEが3.4、HDPEが3.7、PPが2.9です。
日本の樹脂の値段はどれくらい上がりましたか。
国産ナフサ基準価格は2026年1〜3月期が1kl 65,700円、4〜6月期が118,900円で、上げ幅53,200円は金額・上昇幅とも過去最高です。1.81倍になりました。プライムポリマーは1月27日に5円/kg以上、3月17日に90円/kg以上、4月21日に30円/kg以上の改定を発表しています。ポリ袋やフィルムでは20%から35%の改定が出ました。
中国の樹脂は日本に来ているのですか。
主要な行き先ではありません。2026年4月のホモPP輸出の上位10か国はインド16.43%、インドネシア16.08%、ベトナム14.23%などで77.18%を占め、日本は入っていません。日本向けは10位のブラジル1.55万トンを下回ります。ポリエチレンも同じで、上位はベトナム18%、インドネシア9%、マレーシア9%です。中国の樹脂が向かったのは東南アジアと南アジアです。
では日本への輸入は増えていないのですか。
増えています。財務省貿易統計をもとにしたプラサーチの集計では、中国からのPP・PPブロック・HDPE・LDPEの合計は2025年1〜6月の19,883トンから2026年1〜6月の41,308トンへ2.08倍になりました。HDPEだけを見ると562トンから5,458トンへ9.71倍です。ただし量そのものは小さく、4つ合わせて半年で41,308トン。中国のPP輸出は4月の1か月だけで63.94万トンあります。
中国から買うと安いのですか。
2026年6月に、はじめて安くなりました。PPの輸入単価は1〜3月累計で中国が1kg279円、輸入全体の平均が178円で、中国のほうが101円高い調達先でした。それが6月単月では中国264円、全体278円と逆転しています。HDPEは1〜3月の中国322円・全体157円から、6月には中国240円・全体283円になりました。中国が値下げしたのではなく、タイが150円から292円、シンガポールが198円から360円へ上がる中で、中国だけが動かなかった結果です。
中国は安売りをしているのですか。
2026年については、そうではありません。中国のPP輸出単価は1〜2月の1トン935〜948米ドルから3月には1,022.87米ドルへ上がっています。起きたのは、CFR中国とCFR東南アジアの価格差が2月末の20〜100米ドルから3月には400米ドルへ開いたことで、中国国内の安い玉が高い海外へ流れたということです。価格差が縮むとPP輸出は4月の63.94万トンから5月の47.49万トンへ14.35%減りました。2025年に報じられた「デフレ輸出」とは構造が違います。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか。
当社は物流資材の商社で、プラスチックパレット、再生樹脂原料、PPバンド、ストレッチフィルムを扱っています。これらはすべてポリエチレンとポリプロピレンからできており、その原料がどこから来るかは日々の仕入れの値段そのものです。自分の仕入れのために追いかけている数字を、そのままお伝えしています。