サプライチェーン・レポート / 取引と情報セキュリティ
取引先に★3を求められたら費用はいくらか、経産省のセキュリティ対策評価制度とIPAの登録料1万円
取引先から「セキュリティ対策の★3を取ってほしい」と頼まれる日が近づいています。経済産業省とIPAが準備している新しい評価制度で、委託先や仕入先のセキュリティ対策を★の数で示す仕組みです。制度の中身、いつから始まるのか、登録料と審査の費用、対策にかかる費用を取引価格にどう反映するのかを、国の資料から整理しました。
ANSWER
IPAに払う登録料は、★3が1年1万円(2028年3月まで)、★4が3年6万円です。ほかに★4は評価機関の審査費用がかかり、対策そのものの費用も要ります。IPAは★3・★4の運用開始を2027年3月頃と予定しています。国は、対策が価格交渉の対象になることを周知し、交渉に積極的に応じるよう発注側に求めています。
★3の登録料(IPA)
1万円/年
2028年3月まで。4月以降は2万円
★3の要求事項
26件
専門家の確認つきの自己評価。有効期間1年
★4の登録料(IPA)
6万円/3年
要求事項43件。第三者評価で審査費用は別
この記事の要点
- 経済産業省と内閣官房の国家サイバー統括室は2026年3月27日、「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」の構築方針を公表しました。取引先に求める対策の水準を★の数でそろえる制度です。
- ★3は26件の要求事項を専門家の確認つきで自己評価し、有効期間は1年です。★4は43件の要求事項について評価機関の審査と技術検証を受け、有効期間は3年です。★5の要求事項は今後検討されます。
- IPAが2026年9月18日に公表した料金では、登録料は★3が1年1万円(2028年4月以降は2万円)、★4が3年6万円です。受付開始は2027年3月以降の予定で、★4の審査費用は含まれません。
- 取引先が対策を求める背景には、委託先やクラウドサービス1社への攻撃で複数の会社の情報が漏れる被害があります。2026年10月にはFAQ管理サービスへの不正アクセスで、最大5社・延べ最大71万件の問い合わせ情報に影響が出たおそれがあります。
- 経済産業省と公正取引委員会は、対策を求めること自体は問題ないとしつつ、費用を価格に反映しないまま求めるなどの行為は優越的地位の濫用になりうると整理しています。2026年1月施行の取適法も、受託側からの価格協議の求めに応じず一方的に代金を決めることを禁じています。
★3・★4とはどんな制度か
取引先ごとにばらばらだったセキュリティ対策の求め方を、国が★の数でそろえる制度です。2026年3月に構築方針がまとまり、IPAが運営の準備を進めています。
★の数で対策の水準を示す
経済産業省と内閣官房の国家サイバー統括室は、2026年3月27日に「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」の構築方針を公表しました。取引先に求める対策の中身と水準を決めやすくし、サプライチェーン全体の対策の水準を上げることが目的です。
対象は、物やサービスの取引でつながる会社のIT基盤です。工場の制御システム(OT)と、発注元に納める製品そのものは対象外です。
| 段階 | 要求事項 | 評価の方法 | 有効期間 | IPAの登録料 |
|---|---|---|---|---|
| ★3 | 26件 | 専門家の確認つきの自己評価 | 1年 | 1年1万円(2028年4月以降は2万円) |
| ★4 | 43件 | 評価機関の審査と技術検証 | 3年 | 3年6万円 |
| ★5 | 今後検討 | 未定 | 未定 | 未定 |
出典:構築方針(2026年3月、IPA掲載の資料)、IPA「SCS評価制度」の詳細ページと料金表(2026年9月18日)。2026年10月8日に確認。
★3と★4の違い
★3は、一般的な攻撃への対策を求める基礎の段階です。26件の要求事項について自社で評価し、社内外のセキュリティの専門家が確認したうえで事務局に出します。有効期間は1年です。
★4は、取引先のシステムやデータへ被害を広げないための標準の段階です。43件の要求事項について、評価機関による文書の確認と実地審査、技術検証事業者による技術検証を受けます。実地審査と技術検証はそれぞれ1〜2日程度が目安で、有効期間は3年です。
要求事項は、組織のガバナンス、取引先の管理、システムの防御、脆弱性の管理、インシデントへの対応、事業継続などの分野にわたります。
この章の結論
★3は26件の自己評価で有効期間1年、★4は43件の第三者評価で有効期間3年です。工場の制御システムと納める製品そのものは対象外です。
いつから、いくらかかるのか
構築方針は2026年度下期の開始を目指すとし、IPAは★3・★4の運用開始を2027年3月頃と予定しています。IPAに払う登録料も公表されています。
開始は2026年度下期を目指す
構築方針は「令和8年度下期の制度開始を目指し」としています。IPAは2026年4月21日に制度のサイトを公開し、8月28日に基本規程、9月11日に制度の基準と手順、9月18日に料金を公表しました。
IPAのよくある質問(2026年5月29日更新)は、★3・★4の運用開始を2027年3月頃と予定し、評価機関は2026年12月末頃に公開するとしています。料金表でも、★3・★4を取りたい会社の登録の受付は2027年3月以降、★3の確認に関わるセキュリティ専門家の登録は2027年1月以降に始まる予定です。
登録料と、それ以外にかかる費用
IPAに払う登録料(税込)は、★3が1年1万円(2028年3月31日まで。4月1日以降は2万円)、★4が3年6万円です。
★4は、このほかに評価機関と技術検証事業者に払う審査の費用がかかります。料金表は評価機関などがIPAに払う申請料・指定料を定めたもので、会社が評価機関に払う審査の費用は示していません。★3も、確認をしてもらう専門家への費用が別にかかる場合があります(当社の見方)。
さらに、要求事項を満たすための対策そのものの費用があります。中小企業向けには、専門家のリスト作りや、★3・★4の取得を支援する「お助け隊サービス」の新しい類型が準備されており、IPAが実証事業を紹介しています。
この章の結論
登録料は★3が1年1万円、★4が3年6万円で、運用開始は2027年3月頃の予定です。★4の審査費用と、対策そのものの費用は別にかかります。
なぜ取引先から求められるのか、費用は誰が持つのか
委託先やクラウドサービス1社への攻撃で、複数の会社の情報が一度に漏れる被害が続いています。一方で国は、対策を求める側に費用への配慮を求めています。
1社への攻撃が複数の会社に広がる
2026年10月、FAQ・問い合わせ管理サービス「i-ask」を運営するスカラコミュニケーションズの管理サイトに不正ログインがあり、利用企業最大5社の環境で、延べ最大713,126件の問い合わせ情報に影響が出たおそれがあります。ネットショップの基盤「ショップサーブ」では、購入者の情報に加えて、出店者の管理画面のID・パスワードや振込先口座も漏れたおそれがあります。
| 会社・サービス | 起きたこと | 影響 |
|---|---|---|
| スカラコミュニケーションズ(FAQ管理「i-ask」) | 10月2日夜に管理サイトへ不正ログイン、サーバーに不正なプログラム | 最大5社・延べ最大713,126件のおそれ。大和証券・シチズン時計・損保ジャパンが公表 |
| Eストアー(ネットショップ基盤「ショップサーブ」) | 5月21日〜8月1日にサーバー上で不正なプログラムが動作 | 8,853,839件。購入者の情報のほか、出店者の管理画面のID・パスワードと振込先口座 |
出典:株式会社スカラ(スカラコミュニケーションズの親会社)の公表(2026年10月6日)を伝えた報道、Eストアーの公表(2026年8月2日)。2026年10月8日に確認。
IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、組織にとっての2位は「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」です。発注する側が委託先の対策の水準を確かめたい理由はここにあります。
費用を価格に反映しないまま求めると問題になりうる
経済産業省と公正取引委員会は2022年10月28日、取引先にセキュリティ対策を求めること自体は直ちに独占禁止法上の問題にはならないとしつつ、次の場合は優越的地位の濫用になりうると整理しました。
- 対策で増えた費用を協議しないまま、取引価格を据え置くこと
- 負担額や算出の根拠がはっきりしない費用を負担させること
- 合理的な必要がないのに、指定するサービスの利用を強いること
構築方針も、発注者はセキュリティ対策が価格交渉の対象になることを周知し、交渉に積極的に応じる必要があるとしています。2026年1月1日に施行された取適法(中小受託取引適正化法)は、中小の受託事業者から価格協議を求められたのに応じず、一方的に代金を決めることを禁じています。
この章の結論
委託先1社への攻撃が複数の会社に広がるため、発注側は対策の水準を確かめたがっています。国は、対策の費用を価格交渉に反映するよう発注側に求めています。
★3を求められたときに確かめる3つのこと
取引先から★の取得を求められたときに、確かめておくことをまとめました。どの段階を目指すかは、取引の中身と自社の体制にあわせて判断してください。
求められているのが★3か★4か、いつまでかを確かめる
★3は自己評価で有効期間1年、★4は第三者評価で有効期間3年と、手間も費用も大きく違います。登録の受付は2027年3月以降の予定のため、取引先がいつまでにどの段階を求めているのかを書面で確かめておくと、準備の計画が立てやすくなります。
要求事項を自社で点検し、足りない対策と費用を洗い出す
IPAは制度のサイトで要求事項と評価の基準を公表しています。★3の26件を自社の現状と照らし、足りない対策と、その費用(機器・ソフトウェア・外部の専門家)を見積もります。
対策の費用を見積もりと価格協議に入れる
構築方針は、セキュリティ対策が価格交渉の対象になるとしています。対策にかかる費用を根拠とともに示し、取引価格の協議を申し入れることができます。取適法は、中小の受託事業者からの価格協議の求めに応じないことを禁じています。
よくある質問
- SCS評価制度はいつから始まりますか
- 構築方針は2026年度下期の制度開始を目指すとしています。IPAは★3・★4の運用開始を2027年3月頃と予定しており、料金表でも登録の受付は2027年3月以降の予定です。確定した日はまだ公表されていません。
- ★3を取るのにいくらかかりますか
- IPAに払う登録料は1年1万円(2028年4月以降は2万円)です。このほか、確認をしてもらう専門家への費用や、要求事項を満たすための対策の費用がかかる場合があります。
- ★3と★4の違いは何ですか
- ★3は26件の要求事項を専門家の確認つきで自己評価し、有効期間は1年です。★4は43件の要求事項について評価機関の審査と技術検証を受け、有効期間は3年、登録料は3年6万円です。
- 取引先に★の取得を求められたら、断れますか
- 法令で取得が義務づけられる制度ではなく、取引の中で委託元が委託先に求めることを想定した制度です(構築方針)。そのため取引の条件として求められることはありえます。経済産業省と公正取引委員会は、費用を価格に反映しないまま求めることなどは優越的地位の濫用になりうると整理しており、費用を示して価格協議を申し入れることができます。
- なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか
- 当社は物流資材を扱う中小企業で、製造業や物流の取引先とつながっています。取引先からセキュリティ対策を求められる場面が増えると見込まれるため、国とIPAの資料をもとに整理しました。
出典・エビデンス一覧10件(公的機関8・企業や報道2)
国・IPAの資料
- 「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度の構築方針」(同制度に関するサブワーキンググループ事務局、2026年3月。経済産業省・内閣官房国家サイバー統括室が3月27日に公表、IPA掲載)
- 情報処理推進機構(IPA)「SCS評価制度」
- IPA「SCS評価制度」よくある質問(2026年5月29日更新)
- IPA「SCS評価制度」詳細
- IPA「料金設定について」(2026年9月18日)
- 経済産業省・公正取引委員会 取引先とのパートナーシップの構築に向けた資料(2022年10月28日)
- 公正取引委員会「取適法」
- IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」(2026年1月29日)
企業の公表と報道
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- ※制度の内容と料金は2026年10月8日に確認したものです。制度はまだ始まっておらず、開始日や運用は今後変わる可能性があります。
- ※経済産業省のページは当社の環境で本文を読み取れなかったため、IPAに掲載された同じ構築方針の資料で確認しました。
- ※「当社の見方」と書いた部分は、公表された資料からの当社の考えです。
- ※本稿は情報提供を目的としたもので、法的な判断を代行するものではありません。個別の取引は専門家や公正取引委員会の相談窓口に確かめてください。
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