やさしく解説シリーズ
ニュースで聞くイラン情勢が招く『2026年燃油サーチャージショック』をやさしく解説、飛行機代が突然2倍になった本当の理由
「燃油サーチャージってなに?」「なぜ急に高くなったの?」
難しい言葉を使わず、暮らしに引き寄せてわかりやすく解説します
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✍️ プラスチックパレット株式会社
この記事の結論
2026年2月28日のイラン戦争でホルムズ海峡が封鎖され、ジェット燃料が2.5倍に高騰。ANA・JALの燃油サーチャージは北米・欧州片道56,000円と前の約2倍になった。サーチャージは「予約日」でなく「発券日」で金額が決まる点など、暮らしに直結する仕組みをわかりやすく解説する。
1. 「燃油サーチャージ」って、そもそも何のこと?
飛行機の航空券を買うとき、値段の内訳をよく見ると「燃油特別付加運賃」とか「燃油サーチャージ」という項目があります。これは「航空運賃とは別に請求される燃料代の上乗せ分」のことです。
飛行機はガソリンではなく「ジェット燃料(ケロシン)」という油を使います。このジェット燃料の価格は原油と連動して上下します。航空会社は「燃料代が上がっても航空券の値段をすぐ変えるのは難しい、でも燃料代は実費で払ってほしい」という考えから、別項目として請求するようになりました。これが燃油サーチャージです。
🚕 タクシーで例えると
タクシーにも「深夜割増」や「高速代」が別途かかることがありますよね。燃油サーチャージはそれに似ています。「乗った距離の料金(航空運賃)」とは別に「燃料代(サーチャージ)」を払う、という感覚です。しかも燃料が高くなればなるほど金額が上がります。
重要なのは、燃油サーチャージは有償チケットだけでなく、マイルを使った特典航空券にも同額かかる点です。「マイルを貯めたからタダで行ける!」と思っていても、北米・欧州の往復では2026年5〜6月時点で112,000円の現金が別途必要です。
2. なぜ2026年に突然2倍になったのか、4ステップで理解する
「ニュースでイランがどうとか聞くけど、飛行機代とどう関係があるの?」という疑問を、4つのステップで整理します。
1
2026年2月28日、イラン戦争勃発で中東の空と海が一斉に閉じた
米国・イスラエルがイランを攻撃し、イランが報復。中東各国が一斉に領空・海峡を封鎖しました。エミレーツ航空(ドバイ)・カタール航空(ドーハ)・エティハド航空(アブダビ)という「中東の3大ハブ空港」を使う便がすべて運休に追い込まれました。JALも同日、羽田〜ドーハ線を即日運休としています。日本から欧州への安くて便利な乗り継ぎルートが、この1日で消えてしまったのです。
2
ホルムズ海峡の封鎖がジェット燃料の値段を直撃
日本が輸入する原油の約9割は中東産で、そのほとんどがホルムズ海峡を通って運ばれます。ここは世界の原油輸送量の約20%が通過する「石油の大動脈」です。封鎖によって供給が細ると、シンガポール市場で取引されるジェット燃料(ケロシン)の価格が急騰します。JALの鳥取三津子社長は2026年4月1日、「2月までの平均価格と比べると現在は約2.5倍の価格に跳ね上がっている」と明言しました。
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サーチャージの計算式が2〜3カ月後に「結果を教えてくれる」仕組み
ANA・JALの燃油サーチャージは「直近2カ月のシンガポールケロシン平均価格 × 為替レート」で算出し、2カ月ごとに改定されます。つまり2〜3月の価格急騰が、5〜6月発券分のサーチャージに反映される、という時差があります。今回はさらに、通常より1カ月早く(5月1日から)改定を前倒しするという異例の措置も取られました。急すぎる燃料高騰に通常の改定サイクルが追いつかなかったためです。
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テーブル上限も引き上げ、ゾーンQという新区分が登場
もともとANA・JALのサーチャージには「燃料価格がここまで上がったらこの金額」という上限テーブルがありましたが、その上限自体も引き上げられました(1キロリットル20,000円基準→23,000円基準)。2〜3月の燃料価格は本来なら最高ゾーンに相当しましたが、政府が「緊急的激変緩和措置」として航空機燃料に補助金を出したため、1段階抑えられたゾーンQ(片道56,000円)での適用となっています。補助がなければさらに高くなっていた、ということです。
🍜 ラーメン屋で例えると
いつも食べている800円のラーメン。ある日、小麦粉と豚肉の仕入れ値が2倍以上になりました。お店は「ラーメンの値段はそのままにしたいけど、材料費の上がった分だけ別途いただきます」と言い出しました。さらに「材料費がどこまで上がっても対応できるよう、上乗せの上限ルールも変えます」と言いました。しかも「政府が一部補助してくれているから少し抑えられていますが、それがなければもっと高い」という状況です。これが今回のサーチャージ急騰の全体像です。
🔴 JALは「月300億円の燃料費負担増」と明言
JALの鳥取社長は「1バレル200ドル以上が続けば1カ月で
300億円ほど燃料費の負担が増加する」と報道陣に明かしました(2026年4月1日)。航空燃料費はJAL全体の支出の約25%を占めます。これほどの規模の追加コストは、経費削減だけでは到底吸収できないため、利用者への転嫁(=サーチャージ値上げ)が避けられない状況になっています。
3. 実際にいくらかかる?路線別の金額と「9段階ジャンプ」の衝撃
「数字で見ないとピンとこない」という方のために、2026年5〜6月発券分のサーチャージ金額を路線別にまとめます。すべて日本発・片道・1人あたりの金額です。
| 行き先 |
改定前(片道・1名) |
2026年5〜6月(片道・1名) |
往復・2名合計の増加額 |
| 北米・欧州 |
約29,000〜31,900円 |
56,000円 |
約+100,000円 |
| ハワイ・グアム |
約18,500〜20,400円 |
34,000〜36,300円 |
約+63,000円 |
| 東南アジア・インド |
約10,500〜11,300円 |
19,500〜20,000円 |
約+37,000円 |
| 韓国・中国 |
約3,000〜3,300円 |
6,000〜6,700円 |
約+14,000円 |
出典:ANA・JAL各社公式サイト(2026年4月20日発表)。政府の緊急激変緩和補助によりゾーンQが適用。ANA・JALで金額が微妙に異なる路線あり。
📌 「9段階ジャンプ」という異例の引き上げ幅
ANA・JALのサーチャージにはゾーンA〜Rのような段階表があり、燃料価格の水準に応じて1段ずつ変動するのが通常です。ところが今回の改定は一気に
9段階も引き上げられました。これは過去に例を見ない急騰幅で、旅行業界や航空ファンの間で「9段階ジャンプ」と驚きをもって受け止められました。
📌 家族4人でヨーロッパ旅行に行くと…
燃油サーチャージだけで
56,000円 × 往復2 × 4名 = 448,000円 が別途必要です。航空券の本体運賃(エコノミーで1人往復15〜25万円程度)とは別にかかるため、「旅費の計算をしていたら思っていたより10万円以上高かった」という事態が全国で起きています。
円安がさらに追い打ちをかけている
サーチャージが高騰しているうえ、2026年6月時点で1ドル=160円台前半の円安が続いています(2026年6月8日の最高値:1ドル=160.335円)。現地での宿泊・食事・移動のすべてが、2022年ごろの130円台と比べて約20〜25%割高になっています。ホテルが1泊200ドルなら3.2万円、300ドルなら4.8万円という感覚です。サーチャージ高騰と円安が重なり、「2019年以前の感覚で旅行予算を組んでいたら全然足りなかった」という声が増えています。
4. 「予約した日」ではなく「買った日」で決まる、知らないと損する落とし穴
燃油サーチャージで最もよくある誤解が「予約した時の金額が適用される」という思い込みです。実際は「発券(購入)した日」の金額が適用されます。
たとえば「4月に予約だけ入れておいて、5月にチケットを買おう」とした場合、5月の高い金額が適用されます。逆に、「7〜8月発券分がさらに上がりそう」という報道が出ている中、旅程が確定しているなら今のうちに発券するのが賢明な選択になりえます。
📌 具体的なシナリオで考える
Aさんのケース(損したパターン):4月15日に欧州旅行を予約、「チケットは5月に買えばいい」と思っていた。5月1日に発券したところ、サーチャージが片道31,900円→56,000円になっていた。往復で48,200円の想定外出費が発生。
Bさんのケース(得したパターン):「7〜8月はさらに上がるかも」という報道を見て6月中に早めに発券。2人分の往復サーチャージを今の金額で確定させ、さらなる値上がりリスクを回避した。
💡 取り消したときのルール
燃油サーチャージ自体は、チケットをキャンセルしたとき
手数料なしで全額返金されます。ただし航空券の本体部分には取消手数料がかかります。「サーチャージだけ払いたくないからキャンセルしよう」という考えは、本体の手数料で相殺されることが多いので注意が必要です。
🛒 スーパーの値札で例えると
「明日買いに来ようと思って棚の前で値段をメモした」としても、翌日値段が変わっていれば新しい値段を払います。棚の前でメモした(予約)だけでは値段は確定しません。レジで支払いをした瞬間(発券)が値段の確定タイミング、というのがこの仕組みです。
航空会社も「対応できていない」と認めた異常事態
ANAホールディングスの芝田浩二社長は2026年4月1日、「現行のサーチャージの計算式に基づく価格では、原油価格高騰に対応できていない」と踏み込んだ発言をしました。つまり航空会社自身が「今のサーチャージでも燃料コストを賄えていない」と認めているわけです。その分の不足は会社の体力で補っているか、運賃全体への転嫁を今後検討せざるを得ない状況になっています。
5. ANA・JALの「新運賃体系」も同じ5月に変わっていた
燃油サーチャージが上がったのと同じ2026年5月、ANAはもう一つの大きな変更を実施しました。2026年5月19日搭乗分から国内線の運賃体系を「シンプル・スタンダード・フレックス」の3種類に刷新したのです。これはANAの国内線予約システムを国際線と同じ世界標準システムに統合したことによる変更です。
| 運賃の種類 |
特徴 |
向いている人 |
| シンプル |
一番安い。ただし出発24時間前まで座席を選べない、変更は払い戻し再購入のみ |
一人旅、座席にこだわらない、旅程が確定している |
| スタンダード |
中間の価格。座席指定・変更・アップグレード可(有料) |
家族連れ、座席を隣同士にしたい、予定変更の可能性がある |
| フレックス |
一番高い。変更が何度でも無料、最も自由 |
出張など予定が読めないビジネス利用 |
「JALの半額近い」実例が話題に
新運賃で最も好評なのが、直前でも格安で取れるようになった点です。実際に2026年5月8日時点で約2週間後(5月23日土曜)の羽田〜新千歳を検索したところ、JALが33,000〜35,000円台だったのに対し、ANAのシンプル運賃は14,020円という価格差が生まれていました。「急な週末旅行でもLCC並みの値段でANAに乗れる」と旅行好きのあいだで話題になっています。
⚠️ シンプル運賃の3つの落とし穴
①上級会員でも座席指定は不可:ANAのゴールドカード保有者でも、シンプル運賃では出発24時間前まで座席を指定できません。「ポイントで上級会員になったのに窓側が選べない」と戸惑う声もあります。
②家族・グループ旅行で隣同士になれない:当日まで席が自動割り当てになるため、子どもと隣同士になれないリスクがあります。グループ旅行はスタンダード以上が安心です。
③キャンセル料がスタンダードの約2倍:直前キャンセルで運賃の最大60%が手数料になる設定です。スタンダードは最大30%なので、予定が変わる可能性があるときはシンプルを選ばない方が無難です。
⚠️ 国内線には今のところ燃油サーチャージはかかりません
現在(2026年6月時点)、国内線の航空券には燃油サーチャージは課されていません。ただしJALは「2027年4月から国内線にも導入する」と中期計画に明記しており、ANAも検討を表明しています。将来的に変わる可能性がある点は覚えておくとよいでしょう。
6. 今後どうなる?3つのシナリオと「サーチャージが下がるまでの時間」
「これからも高いまま?それとも下がる?」という疑問に答えます。まず知っておきたいのは、仮にイラン問題が解決しても、サーチャージがすぐ下がるわけではないという点です。改定は2カ月ごとで、価格参照も2〜3カ月前の平均値を使うため、ホルムズが開放されても消費者が恩恵を感じるまでに3〜4カ月かかります。
A
イランと米国が合意してホルムズが開放された場合
原油価格が下落し始め、3〜4カ月後の改定でサーチャージも下がっていきます。2026年6月8〜9日、トランプ大統領が「合意まで2〜3日」と発言しましたが、5月23日にも同様の発言があり合意には至りませんでした。交渉には核問題・イスラエル問題・レバノン問題という3つの構造的障害が残っており、楽観的な発言をそのまま信じるのは危険です。
B
交渉が長引き現状が続く場合(最も可能性が高い)
サーチャージは高いまま、あるいはさらに上昇します。報道では7〜8月発券分が片道68,000円台まで上昇するとの見通しもあります。夏休みに海外旅行を計画している方は、6月中旬〜下旬の正式発表を待つよりも、今の56,000円で早めに発券する方が安くなる可能性があります。
C
交渉が決裂してさらに情勢が悪化した場合
原油価格が1バレル200ドルを超えて高騰し続けると、現在の上限テーブル(ゾーンR)をも超えた水準になります。そうなるとANA・JALはサーチャージの制度自体を再設計せざるを得ず、今の56,000円がむしろ「まだ安かった時代」に見えてしまうリスクもあります。
🌡️ 熱冷ましで例えると
子どもが熱を出して解熱剤を飲んでも、すぐには熱が下がらず少し時間がかかります。イランの問題が「解決した」としても、その効果がサーチャージに反映されるまでには数カ月の時間差があります。「ニュースで合意成立!」と聞いてすぐ旅行の予約を先延ばしにするのは、その仕組みを理解していないと「全然下がらないじゃないか」という誤解につながります。
7. 私たちの旅行はどう変わる?今できる3つの行動
難しい話が続きましたが、最後に実際の生活に引き寄せた整理をします。
海外旅行を考えている方へ
1
航空券は「運賃+サーチャージ+諸税」の総額で比較する
予約サイトで表示される「運賃〇〇円〜」は燃油サーチャージを含まない場合があります。特に国際線は燃油サーチャージが総額の3〜4割を占めることもあります。「安い!」と思ってクリックしたら合計金額が全然違った、という経験をした方も増えています。ANA・JAL公式サイトの最終確認画面で必ず総額をチェックしてください。
2
旅程が確定しているなら「発券」まで今すぐ済ませる
7〜8月発券分は68,000円台まで上がる可能性が報道されています。旅程が決まっているなら、今の56,000円で発券してしまう方が結果として安くなる公算が高いです。発券さえすれば燃油サーチャージの金額は確定します。ただし旅程に不確実性がある場合は、取消手数料とのバランスも考えてください。
3
中東経由の格安乗り継ぎ便は2026年現在は使いにくい
エミレーツ・カタール航空・エティハド航空は「コスパよく欧州へ行ける」と人気でしたが、戦争の影響で運休・大幅減便が続いています。欧州旅行を計画している場合、中東乗り継ぎに依存した旅程は立てにくい状況です。ANA便はトルコ・イスタンブール経由ルートで欧州便を継続しており、現状では比較的安定しています。
「じゃあ国内旅行に変えれば?」への正直な答え
「海外が高いなら国内旅行にしよう」という発想は自然ですが、研究者の間では「国際線運賃上昇が国内旅行全体を大きく増やすとは考えにくい」という見方が多くあります(浜銀総研 白須光樹、2026年4月)。理由は、海外旅行を諦めた人が必ずしも国内旅行にお金を使うわけではなく、旅行自体を控える人も多いからです。飛行機代が高いと、旅行消費全体が萎縮するリスクがあります。
海外から日本への旅行者(インバウンド)にも影響している
視点を変えると、私たちの街に来る外国人観光客も同じ問題に直面しています。欧米からの訪日客にとっては、航空運賃の上昇が「日本旅行を諦める」判断につながりえます。2025年11月から中国政府が訪日自粛を呼びかけて中国客が急減している中、欧米客の訪日需要が一層重要になっていましたが、そこにもサーチャージ高騰の逆風が吹いています。観光庁長官も2026年4月の会見で「インバウンドへの影響は現時点では不透明」と述べており、行方が注目されています。
主な情報源
- Business Insider Japan(2026年4月2日)「イラン攻撃影響でJAL社長『月300億円負担増』」
- Bloomberg(2026年4月1日)「ANA・JAL、6月発券分から国際線燃油サーチャージを大幅引き上げ見通し」
- 浜銀総研 HRI研究員コラム・白須光樹(2026年4月28日)「イラン戦争で燃油サーチャージの上昇、運航調整が広がる」
- ANA公式サイト(2026年4月20日発表)「燃油特別付加運賃 / 航空保険特別料金について」
- JAL公式プレスリリース(2026年4月)「国際線『燃油特別付加運賃』のご案内」
- ANA公式(2026年5月)「2026年5月19日搭乗分より、日本国内線運賃をリニューアル」
- AIRLINE web(2026年5月20日)「ANA、国内線運賃を刷新。事前座席指定の可・不可などサービスで運賃分類へ」
- タクミ海外旅行メモ(2026年6月上旬)「JAL・ANA燃油サーチャージ7〜8月は?家族4人往復の自己負担を仮計算」
- 観光経済新聞(2026年4月27日)「国際線の燃油サーチャージ、ANAとJALが5月発券分から引き上げへ」
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最終更新:
著者:プラスチックパレット株式会社