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【2026年7月アップデート】イラン情勢が物流を直撃、軽油178円・アドブルー3社改定・エンジンオイル半数超調達難、トランプ通航料20%要求で第3波、トラック車検危機と2024年問題の複合構造|プラスチックパレット株式会社
Logistics Industry | Fluid Crisis Third Wave Update
速報/2026年7月14日 アップデート版

【2026年7月アップデート】イラン情勢が物流を直撃、軽油178円・アドブルー3社改定・エンジンオイル半数超調達難、トランプ通航料20%要求で第3波、トラック車検危機と2024年問題の複合構造

2026年春のナフサショックを起点とする物流業界の複合危機は、7月時点で新局面に入りました。軽油は資源エネ庁6月29日集計で全国平均178.4円(政府補助金170円基準・高市首相の石油備蓄追加放出は累計65日分)、アドブルーは4大メーカーのフル稼働で最悪期通過へ、エンジンオイルは整備業者の半数超が調達難(トラックニュース5月26日調査)、横浜ゴム6月1日実施済・ダンロップ9月1日タイヤ値上げ発表。さらに2026年7月13日、トランプ米大統領が『ホルムズ通航料20%』を要求し、VLCC1隻約50億円負担相当の第3波リスクが顕在化。トラック車検危機・2024年問題・2026年問題との複合構造を、政府・業界の一次ソースで深掘りしたアップデート版レポート。

PUBLISHED UPDATED CATEGORY物流・運送・燃料・車両消耗品
Answer Block | 結論

2026年7月時点、物流業界は7分野の同時圧力下にあります。軽油178.4円(6/29)で高止まり、アドブルーは4大メーカーのフル稼働で最悪期通過へ、エンジンオイル整備業者半数超が調達難、タイヤ相次ぐ値上げ、7月13日トランプ通航料20%要求で第3波顕在化。車検危機・2024年・2026年問題との複合構造に、代替調達拡大が拮抗する新局面。

TL;DR — 5 KEY POINTS
  1. 軽油178円で高止まり、政府対応が下支え:資源エネ庁6/29集計178.4円、政府補助金170円基準、高市首相の石油備蓄追加放出は累計65日分。運賃転嫁は国交省・中小企業庁・公取委3省連名要請で制度後押し継続。
  2. アドブルーは「最悪期通過」局面へ:三井化学・新日本化成・日産化学・三菱ケミカル4社がフル稼働・供給確保表明(トラックニュース5/22)。3社価格改定は確定済、BIB容器3社集中の脆弱構造は残存。
  3. エンジンオイルは整備業者の半数超が調達難:トラックニュース5/26調査。スズキ・ダイハツは一部地域販売会社で油脂類交換を予約制化。ミカド商事は3Q再値上げの可能性を指摘。
  4. タイヤは横浜ゴム6/1実施・ダンロップ9/1発表:横浜ゴム国内市販用平均5%値上げ実施済、ダンロップも6月30日に9月1日値上げを発表し、車両関連消耗品のコスト底上げが継続。
  5. 7月13日トランプ通航料20%要求で第3波リスク顕在化:VLCC1隻約50億円負担相当。7月14日UAEタンカー2隻被弾事案と重なり、船舶戦争保険・傭船料の再上昇圧力が物流業界のCIF調達コストを押し上げる新局面。
Diesel Price
178.4円/L
軽油全国平均
資源エネ庁6/29集計
Oil Reserve Release
65日分
高市首相の
石油備蓄追加放出累計
Engine Oil Supply
半数
整備業者が調達難
トラックニュース5/26
Third Wave Impact
50億円
トランプ20%通航料
VLCC1隻当たり負担相当

Ch01物流業界を圧迫する7分野の複合危機

2026年春、物流業界は過去にない複合的なコスト圧力下にあります。単一の事象による値上げではなく、ナフサショック・原油価格高騰・労働規制・制度改革・補修部品供給不安・トラック車検停滞・そして7月13日のトランプ大統領による通航料20%要求(第3波リスク)が同時並行で進行しているのが特徴です。本章では7分野の複合構造を整理します。

Impact 01
軽油・燃料費(中・大型トラックの基幹燃料)
直接圧力

資源エネルギー庁の石油製品価格調査で2026年6月29日時点の軽油全国平均は178.4円/Lで高止まり。政府補助金170円基準の抑制効果と、高市首相の石油備蓄追加放出(累計65日分)が下支え。中東依存度は従来約94%だったが代替調達拡大により段階的に低下しつつあり、米国産・アフリカ産・中南米産・ロシア極東産の非中東原油シフトが進行。ただし代替原油は日本のクラッカー設計との得率ミスマッチによる実質コスト上振れ構造が残る。詳細はCh03で深掘り。

178.4円/L(6/29) 補助金170円基準 備蓄65日分放出
Impact 02
車両関連消耗品(エンジンオイル・アドブルー・ブレーキフルード・タイヤ)
ナフサ直撃

「車両を動かす液体」4品目と、タイヤを含む消耗品全体でコスト構造の底上げが継続。アドブルーは4大メーカーのフル稼働で最悪期通過局面、エンジンオイルは整備業者の半数超が調達難、ブレーキフルードはグリコール原料連動値上げ、タイヤは横浜ゴム6月1日実施済・ダンロップ9月1日値上げ発表。個別品目の詳細動向はCh04で深掘り。

アドブルー最悪期通過 エンジンオイル半数超調達難 タイヤ2社値上げ連続
Impact 03
人件費(運転手不足・残業規制・賃上げ)
2024年問題

2024年4月施行の自動車運転業務時間外労働年960時間上限規制で運転手の労働時間が短縮され、①同一運転手で運べる距離・荷量が減少、②残業代減少を補うための賃上げが必要、③採用難の継続で人件費競争が激化、という三重の人件費圧力が発生。国土交通省試算では、2024年問題により14%(約4億トン相当)の輸送能力不足、2030年には34%不足の見通し。

14%輸送力不足 2030年34%不足 賃上げ圧力
Impact 04
運賃転嫁の制度的後押し(政府・国交省・公取委)
2026年3月対応

2026年3月26日に国土交通省・中小企業庁・公正取引委員会が連名で経団連・JA全農等に軽油価格上昇分の運賃転嫁容認を要請。値上げの申し出があった場合に協議せず運賃を据え置けば中小受託取引適正化法違反の可能性を明示。5月12日には金子恭之国交相が第7回中東情勢関係閣僚会議でアドブルー対応を正式表明し、政府対応の複数省庁連携が実務化。

3省連名要請 取適法違反リスク 閣僚会議7回開催
Impact 05
制度対応コスト(2026年問題・改正物流効率化法・CLO選任)
2026年問題

2026年4月から改正「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(物流効率化法)」が本格施行され、年間9万トン以上の貨物を取り扱う特定荷主に対して、CLO(物流統括管理者)の選任、中長期計画の策定、定期報告が法的義務化。「物流の2026年問題」と呼ばれるこの制度改革は、荷主企業にも物流効率化の責任を明確化するもの。詳細はCh07で深掘り。

2026年4月施行 CLO義務化 9万t/年基準
Impact 06
トラック車検危機(補修部品入手難・整備士不足の複合)
運行停止リスク

ナフサ由来のホース・シール・パッキン・タイヤ等の補修部品入手難と、慢性化していた整備士不足(有効求人倍率5.45倍、平均年齢47.2歳、専門学校入学者数が過去20年で半減)が複合。国交省は2025年7月8日に整備事業規制7項目見直しを公布したが、規制緩和効果の顕在化前に車検危機が現実化しつつある。詳細はCh06で深掘り。

補修部品入手難 求人倍率5.45倍 修理1か月以上
Impact 07 【NEW】
トランプ通航料20%要求と第3波リスク(2026年7月)
第3波

2026年7月13日、トランプ米大統領がSNS「トゥルース・ソーシャル」でホルムズ海峡通過貨物への20%対価要求と対イラン海上封鎖再開を宣言。VLCC満載時で1隻約3200万ドル(約50億円)の負担相当額。翌14日にはUAEタンカー2隻がイラン巡航ミサイル攻撃で被弾し船員1名死亡・8名負傷。原油VLCC・LNG船・ナフサLR2船・軽油ロング船の全船種に影響し、物流業界の輸入コスト全般を再度押し上げる新たな圧力。詳細はCh05で深掘り。

7/13 SNS投稿 VLCC1隻50億円 UAEタンカー2隻被弾
Structure Note | 複合危機の構造

物流業界の特徴は、7分野のコスト圧力が「同時並行」で進行していることです。例えば燃料費だけ上がるなら運賃転嫁で対応できますが、軽油・エンジンオイル・アドブルー・ブレーキフルード・タイヤ・人件費・制度対応コスト・車検停滞リスクが同時に上がるため、単独施策では吸収しきれません。さらに2026年7月13日のトランプ通航料20%要求という新たな第3波リスクが加わったことで、業界の構造的複雑性は最大級となっています。政府対応と代替調達拡大が拮抗する新局面での経営判断のスピードと選択の正確さが、過去のどの局面よりも問われています。

Ch02「車両を動かす液体」4品目の現状スナップショット

物流業界の現場で最も即時的な圧力となっているのが、トラックを稼働させるために必須の4つの「液体」──軽油・エンジンオイル・アドブルー・ブレーキフルードの値上げと供給不安です。本章では4品目それぞれの2026年7月時点のスナップショットを提示します(各品目の詳細動向はCh03・Ch04で深掘り)。

Diesel | ディーゼル燃料
軽油
資源エネ庁6/29集計で178.4円/L

中・大型トラックの基幹燃料。資源エネルギー庁の石油製品価格調査で2026年6月29日時点の軽油全国平均は178.4円/L。3月16日178円からほぼ横ばいで高止まりが続いている。政府補助金170円基準と高市首相の石油備蓄追加放出(累計65日分)が下支え。日本の原油輸入は従来約94%が中東依存だったが、代替調達拡大で段階的に低下しつつある。

178.4円/L 補助金170円基準 備蓄65日分放出
Engine Oil | 潤滑油
エンジンオイル
整備業者の半数超が調達難

ベースオイル(グループIII)はナフサ由来。整備業者の8割超シンナー入手支障、エンジンオイル半数超調達難(トラックニュース5/26調査)。スズキ7月卸値約40%引き上げ、10月に100円/L超の過去最大値上げ予告(詳細は Ch04-1〜4-3)。

半数超調達難 スズキ卸値+40% 10月100円/L超
AdBlue | 高品位尿素水
アドブルー
4大メーカーフル稼働で最悪期通過へ

国内大型・中型トラックの9割近くが依存。5月22日トラックニュース取材で三井化学・新日本化成・日産化学・三菱ケミカルがフル稼働・供給確保を表明、3社価格改定(+5〜10円/L)は確定済み(詳細は Ch04-4〜4-7)。

4社フル稼働 3社+5〜10円/L改定 最悪期通過へ
Brake Fluid | ブレーキ液
ブレーキフルード
グリコール系・ナフサ連動値上げ

主原料はポリエチレングリコールモノエーテル(DOT3・DOT4・DOT5.1)でナフサ系。ABS/ESC搭載車主流化でDOT4以上使用が標準化、吸湿性によるペーパーロック現象リスクで2年・40,000km毎の定期交換は先送り不可(詳細は Ch04-8)。

DOT4以上主流 ペーパーロックリスク 交換先送り不可
Cost Multiplier | 累積コストの構造

個別の値上げ幅は小さく見えても、4品目すべてが同時値上げ・供給不安となることで、トラック1台あたりのランニングコストは数万円〜数十万円規模で上昇します。大型トラック10台保有の中堅運送会社では、年間100〜500万円規模のコストインパクトに達する試算。さらに横浜ゴムのタイヤ平均5%値上げ(2026年6月1日実施済)とダンロップの9月1日値上げが重なり、車両関連の固定費の絶対額が経営に与える影響が極めて大きくなっています。

Ch03軽油の供給危機と政府対応(7月最新データ)

「車両を動かす液体」4品目の中でも、最も即時的かつ深刻な影響を及ぼしているのが軽油です。本章では資源エネルギー庁の最新公式データと、政府の複数層にわたる対応を時系列で整理します。

3-1.軽油価格の推移(2026年2月〜7月)

時点 軽油店頭価格 主な動き
2021年初旬 約120円/L コロナ後の需給回復局面
2023年 約160円台/L 円安・原油高の影響
2026年2月9日 144円/L イラン情勢悪化前の水準
2026年2月末 米国・イスラエル軍によるイラン攻撃、ホルムズ海峡封鎖
2026年3月9日 150円/L 原油価格急騰
2026年3月16日 178円/L 政府の補助金制度開始(190.8円→170.2円に抑制)
2026年3月18日 経産省「燃料油・石油製品の安定供給確保」資料公表
2026年3月26日 国交省・中小企業庁・公取委が連名で運賃転嫁容認を要請
2026年4月10日 高市首相が石油備蓄追加放出(約20日分)を決定
2026年5月12日 第7回中東情勢関係閣僚会議、金子国交相がアドブルー対応を正式表明
2026年5月上旬 石油備蓄第2弾放出(累計約65日分に)
2026年6月29日 178.4円/L 資源エネルギー庁集計、補助金制度で170円基準に抑制継続
2026年7月13日 トランプ大統領がホルムズ通航料20%要求、原油先物約5%上昇

3-2.政府の補助金制度と石油備蓄放出

経済産業省は2026年3月16日から、ガソリン小売価格を全国平均で1リットル当たり170円程度に抑制する補助金制度を実施しています。軽油・灯油・重油はガソリンと同額、航空機燃料は4割を補助する仕組み。制度開始前の3月16日に190.8円だったガソリンの全国平均小売価格を、3月30日には170.2円に抑制し、軽油は159.0円、灯油は140.8円に抑制。軽油については、暫定税率廃止までの間、暫定税率相当の17.1円の補助に加えて追加的に支給されています。

並行して政府は石油備蓄を段階的に放出。日本は原油輸入の従来約94%が中東依存だったが代替調達が拡大しつつある構造下で、3月16日から15日分の民間備蓄放出を開始。2026年4月10日には高市早苗首相が石油備蓄の追加放出(約20日分)を決定し、5月上旬に第2弾放出(さらに約20日分)を実施。累計の放出量は約65日分に達しています

3-3.運賃転嫁の制度的後押し──取適法違反リスク

政府対応で特筆すべきは、2026年3月26日に国土交通省・中小企業庁・公正取引委員会が連名で経団連・JA全農などに軽油価格上昇分のトラック運賃への転嫁を認めるよう要請した点です。値上げの申し出があった場合に協議せず運賃を据え置けば中小受託取引適正化法に違反する可能性があるとも伝えました。燃料費高騰を運送会社の経営努力で吸収する従来の慣行を、制度面から見直す重要な動きです。

「日本の軽油価格はすでに過去の変動レンジを明確に上回る水準に入りつつある。たった1週間で実に18.7%、約28円も増加した。問題は価格の増減ではない。軽油価格の高騰が続く中でも、日本のトラック輸送はこれまで稼働を維持してきたが、今後は『走り続けること』が前提ではなくなる可能性がある。」 出典:ビジネス+IT/Yahoo!ニュース「たった1週間で軽油28円増…トラック運送『崩壊寸前』」(2026年3月24日)

3-4.省庁ワンストップポータルとジェトロ集約

2026年4月3日、日本貿易振興機構(ジェトロ)は中東情勢に関する省庁の特設ページ・相談窓口のワンストップポータルを公開しました。内閣官房・経済産業省・資源エネルギー庁・国土交通省・厚生労働省・中小企業庁・農林水産省の各特設ページ・相談窓口を一括参照可能とすることで、物流事業者・荷主企業・関連メーカーが必要な情報にアクセスしやすい体制が整いました。

3-5.地方紙が伝える運送会社の窮状

2026年3月、全国各地の地方紙が運送会社の窮状を相次いで報じました。代表的な4紙の証言を集約します。

媒体・日付 現場の声 地域・背景
山陰中央新報(3月8日) 物流機能が低下する「2024年問題」を踏まえ、賃上げなどで従業員の待遇改善を推進。こうした中での燃料価格の値上がりは痛手 山陰地方の運送会社
CBCテレビ(3月11日) 走れば走るほど経費は増えていく。その分燃料費が高くなるので、経営は厳しくなっていく 東海地方の運送業者
TeNYテレビ新潟(3月9日) 出先で一晩トラックの中で寝たりするので、エンジン切って暖房も切れというわけにはいかない 新潟県の運転手
熊本日日新聞(3月10日) 輸送コストに占める燃料費の割合は大きい。高騰が続けば事業継続を諦める仲間が増える 熊本県の運送事業者

Ch04エンジンオイル・アドブルー・ブレーキフルードの詳細動向

軽油以外の3品目は、それぞれ異なる供給構造の脆弱性を抱えています。エンジンオイルは中東グループIIIベースオイル3拠点停止による世界的争奪戦、アドブルーは4大メーカーのフル稼働で最悪期通過へ向かうも3社価格改定は確定、ブレーキフルードはポリエチレングリコール(PEG)系素材の連動値上げ。本章では各品目の詳細動向を最新一次ソースで深掘りします。

4-1.エンジンオイル①──中東グループIIIベースオイル3拠点同時停止という核心問題

2026年の世界的エンジンオイル危機の核心は、高性能オイル(0W-20・0W-16等の低粘度指定車、100%化学合成油)の主成分「グループIIIベースオイル」の中東3拠点が同時停止したことにあります。ミカド商事の業界レポート(2026年6月12日更新)と各種一次ソースによれば、以下の3拠点が並行停止しています。

拠点 所在国 状況 再稼働見通し
アブダビ・ルワイス製油所 UAE ドローン攻撃で停止 数か月〜1年
バーレーン国営パブコ社シトラ製油所 バーレーン フォースマジュール(不可抗力での契約不履行)宣言 不透明
カタール Shell Pearl GTL カタール 攻撃を受け操業停止(世界最大GTL、日量14万バレル) 楽観的にみて1年、2〜3年程度

この3拠点同時停止で世界のグループIII供給の約20%が失われ、欧米メーカーの争奪戦が本格化。CNBCは2026年5月1日付の報道で、グループIII北欧価格がイラン戦争開始以来約100%上昇したと伝えました。米国の業界誌Gas-Price-Checkは「米国グループIII能力44%喪失、トヨタ・日産がディーラー配給制レター発出」と報じています。世界最大級のグループIIIプラントを抱える韓国SK Enmove「YUBASE」ブランドは稼働継続中ですが、世界の需要集中で価格が急騰。日本のオイルメーカーはこの韓国産に依存しつつ、他ルート調達に奔走している状況です。

4-2.エンジンオイル②──スズキ卸値約40%引き上げ、10月に100円/L超の過去最大値上げ予告

2026年7月以降のエンジンオイル価格動向で、業界関係者が注視するのは以下2点です。

  1. スズキが2026年7月から販売店向けオイル卸値を約40%引き上げ(日本経済新聞報道)。乗用車メーカーの卸値大幅改定は業界全体の価格改定の流れを象徴する動きで、他メーカーでも同様の大幅値上げが続く見通し。
  2. 2026年10月に過去最大級の価格改定予定。ミカド商事によれば、「高性能オイルに使用するグループIIIベースオイルは100円/Lを超える改定となりそうです」との見通し。「7月に続き、10月は過去最大級の価格改定になりそう」と分析されています。

DH-2規格(大型ディーゼル向け)については別構造の問題があります。ミカド商事「2026年5月 DH-2の不足と受注停止について 私見」(5月2日)によれば、DH-2はグループIベースオイルを使う日本独自規格で、海外にほぼ製造品がなく、輸入代替が事実上不可能。国内元売り数社への集中生産構造となっており、代替供給ルートがない構造上の脆弱性を抱えます。ただしミカド商事の6月12日更新レポートは、「6月から元売り出荷量増加、最悪の状況からは回復傾向」と局面転換を示唆。国産グループIについては、故障で停止していたエネオス和歌山が4月から再開したことで比較的落ち着いてきています。

キャストロール(Castrol)は2026年5月1日に公式値上げを実施済み。TAKMO(旧TAKUMIモーターオイル)は2026年4月26日の公式声明で、以下4要因の同時進行を明示しました。

  • 原材料費:ベースオイルと添加剤のダブル値上げ
  • 物流サーチャージ:喜望峰回りルート(プラス2週間〜1か月、運賃3倍以上)による船便運賃高騰と保険料上昇
  • 為替影響(円安):有事のドル買いで1ドル150円台後半推移、輸入コスト増幅
  • 製造エネルギーコスト:国内ブレンディング(混合)工場の電気・ガス代上昇

プロトリオス(msrweb)の実態調査(2026年5月)は、「東南アジア工場でのサイバー攻撃により添加剤生産停止」との追加因子も指摘。原料・添加剤・物流・為替・エネルギーの5層で同時圧力が発生している構造は、単一要因の値上げとは性質を異にします。

4-3.エンジンオイル③──整備業者半数超が調達難、農業機械にも波及

供給不安の実態調査として重要なのが、2026年5月26日のトラックニュース調査「資材不足調査/鈑金塗装・整備業者の8割超がシンナー入手に支障、エンジンオイルも半数超が調達難」です。整備業者の8割超がシンナー入手に支障、エンジンオイルも半数超が調達難との実態が判明。スズキ・ダイハツは一部地域販売会社で油脂類交換を予約制に移行しました。

影響は物流だけでなく農業機械にも波及。日本農業新聞(2026年6月10日)は「エンジンオイル不足感 農繁期に高まる故障リスク」と報じ、「出荷制限や供給量の減少で十分なオイルを確保できず、現場では純正品でない代替オイルで対応したり、交換時期を遅らせたりしている」と伝えました。純正指定と異なるオイル使用は、DPF(ディーゼル微粒子フィルタ)詰まりや保証対象外故障のリスクを生じます。

LOGISTICS TODAY(4月21日)は「複数の取材先が、アドブルーより先に懸念を示したのはエンジンオイル」と報じ、全日本トラック協会は「アドブルーよりエンジンオイルの供給不足に関する情報の方が多い印象」、日本貨物運送協同組合連合会の星野治彦専務理事は「販売会社から『全く物がない』という話を聞いており、ディーラーでのオイル交換に支障が出ている例も報告されている」と証言しました。

Structural View | 「作れるのに詰められない」の連鎖

プライシー編集部(6月)レポートは重要な指摘をしています:「オイル自体だけでなく、入れ物の問題も深刻。ポリ容器の原料やペール缶のハンドル部品、容器洗浄に使う溶剤なども中東からの調達に依存しており、これらが不足することでオイルが『作れるのに詰められない』という状況が生まれている」。液体本体の供給と、容器・洗浄剤の供給が別問題として同時発生しており、単純な原料回復では解決しない構造です。

4-4.アドブルー①──4大メーカーのフル稼働で「最悪期通過」局面へ

アドブルーは国内の大型・中型トラックの9割近くが依存する物流インフラの消耗品で、ディーゼル車の排ガス浄化に必須の高品位尿素水(尿素32.5%+純水67.5%、JIS K2247-1認証品)。残量が尽きると再始動できなくなる車種が多く、供給安定性は物流の生命線です。2026年3〜4月にピークだった品薄局面は、5月以降「最悪期通過」局面に転換しつつあります。

2026年5月22日のトラックニュース取材で、主要4メーカーは以下のとおり回答しました。

メーカー 供給状況(5月22日時点) 容器状況
三井化学 フル稼働で高品位尿素水を製造、前年並み以上の生産
新日本化成 原材料入荷は通常どおり、フル稼働で製造、供給面で問題なし。5月から問い合わせ落ち着き
日産化学 製造に問題なく増産対応中 BIB向けポリ容器は現時点で十分確保、ただし容器メーカーから出荷調整可能性の連絡あり
三菱ケミカル 前年並みの生産 包装容器等の資材調達状況を注視、安定調達に努力

ポリ容器を使用しない販売方法(タンクローリー・1m³コンテナ・200Lドラム等)では流通の目詰まりが発生しておらず、大手・中堅事業者への供給は安定しています。国内需給の背景として、三井化学と日産化学が製造するアドブルーをそれぞれ販売する三井物産プラスチックと日星産業の国内販売シェア合計は約4割、残りの6割は輸入尿素ベース(RIM Intelligence報道)という構造があります。三井化学大阪工場(生産能力36万トン/年)が国内最大級プラントとして稼働中で、日本産アドブルーの中核を担っています。

4-5.アドブルー②──「短期市況反落・価格改定は確定」の二重構造

2026年5月後半から6月初旬にかけて、関連市況にも大きな変化が起きています。シンガポール・ナフサスポット価格は5月16日の$1,043/MT(ピーク)から6月3日には$767/MTへ、約3週間で26%下落。背景には①Kplerデータで観測される米国産ナフサの日本向け輸入が通常の5倍水準に達したこと、②ホルムズ海峡通過量の増加、③需要破壊と買い控えの広がりがあります。日本経済新聞(5月30日)はガソリン109.8とナフサ128.3の価格逆転現象「ワニの口」を報じました。

ただし、原料市況の短期反落は、既に確定したアドブルー価格改定には反映されません。以下の3社改定は確定済みです。

メーカー 値上げ幅 適用時期 主因
三井物産プラスチック 全荷姿+10円/L 2026年4月20日出荷分〜 中東原料高・燃料高
伊藤忠エネクス 巡回給水+5円/L/BIB+7円/L 2026年5月1日 三井化学の尿素+10円/kg値上げ通知
新日本化成 全荷姿+8円/L 2026年6月1日納入分〜 「自社努力で吸収できる限界を遥かに超えている」

反映されない理由は3点あります。第一に、メーカー各社の改定は「2025年後半から積み上がった原料・燃料・輸送コストの累積反映」であって、直近の市況スポット価格に連動しない構造。第二に、伊藤忠エネクスが通知書で明記したとおり、国産メーカーの三井化学からの尿素+10円/kg値上げは既に2026年1月以降納品分で確定済み。第三に、新日本化成の通知書が「自社努力で吸収できる限界を遥かに超えている」と明示するとおり、累積コスト負担は短期市況の好転だけでは解消されません。「短期市況は反落、価格改定は確定」という二重構造で6月以降の取引が動いています。

4-6.アドブルー③──BIB容器3社集中構造とアクセス格差

アドブルーの容器供給の脆弱性は、業界誌LOGISTICS TODAY(2026年4月21日)が「アドブルー、容器ひっ迫で店頭消失」で詳述しました。BIB内袋の主材はLDPE(低密度ポリエチレン)やLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)で、ナフサ起点の石油化学品。さらにアドブルーには金属不純物の混入を極度に制限するJIS規格があり、対応できる成形容器の国内製造業者は実質3社程度に集中する構造です。旭化成は3月31日にポリエチレン全品を1キロあたり120円超引き上げると発表、国内エチレン12拠点のうち6拠点が減産に入り、石油化学工業協会はポリエチレン在庫のタイト化を認めました。

2021年の「尿素ショック」(中国輸出制限)は上流の尿素そのものの問題でしたが、今回は上流(尿素)+下流(BIB容器)の二重締まりで、2021年より逃げ場が少ない構造(LOGISTICS TODAY)となっています。

大手・中堅事業者と中小BIB依存事業者の間でアクセス格差が発生しています。LOGISTICS TODAYの取材によると、キリングループロジスティクスは「各拠点で緊急度は高くない様相」とし5月1日から7〜8%程度の値上げを受け入れ決定、ヤマトホールディングスは「現時点で大きな影響はない」、北海道千歳市の大勝の澤田専務は「インタンクにも補充できており不足感も枯渇感もない。値段は1.5〜2倍に上がったが、現時点で供給が止まる感覚はない」と回答。一方、愛知県みよし市のmirai計画の柳川佑平社長は「仕入れ先からすでに数量制限、価格も15%ほど跳ね上がった。供給が止まれば数日から1週間で車両稼働に直接影響」岡山市東区の智商運輸の河合智哉社長は「値段は倍くらいに上がっており、近隣の運送事業者でアドブルーとエンジンオイルの入荷が滞ったという噂も聞いている」と証言しました。

Access Gap | 調達経路の分断

「これは規模の格差ではない。同じアドブルーへのアクセスを、調達経路が分断している。このアクセス格差が、稼働可否を分け始めた」(LOGISTICS TODAY・2026年4月21日)。政府対応が進む中でも、中小BIB依存事業者の稼働リスクは残存しており、業界全体としての調達構造の再設計が課題です。

4-7.アドブルー④──政府対応の推進:第7回中東情勢関係閣僚会議

2026年5月12日には金子恭之国土交通大臣が首相官邸4階大会議室で開催された第7回中東情勢関係閣僚会議でアドブルー対応を正式表明しました。ポリ容器メーカーや卸・小売業者への改善要請、トラック・バス事業者への「前年同月同量」での調達要請を表明し、アドブルー問題に対する初の本格的な政府対応が始動。同会議では高市総理のベトナム・豪州訪問報告、ベトナム・ニソン製油所への金融支援「パワー・アジア」第1号案件、サウジ・UAE訪問成果、マレーシア訪問成果(尿素・ナフサ・原油安定供給確約)も報告されました。内閣官房・経産省・資源エネルギー庁・国交省・厚労省・中小企業庁・農林水産省が中東情勢特設ページとワンストップ相談窓口を横断的に設置(ジェトロ2026年4月3日)しており、政府対応は関係省庁横断で進んでいます。

4-8.ブレーキフルード──グリコール系素材とDOT規格別の交換必須性

ブレーキフルードは、ブレーキペダルの踏力を油圧として伝達する保安部品の必須消耗品。主原料はポリエチレングリコールモノエーテル(PEG系)で、エチレン由来=ナフサ系素材。エンジンオイルと同じくナフサショックの直撃を受ける構造です。

商用車で使用される主要規格は以下の3種類で、性能と価格帯が異なります。

規格 ドライ沸点 湿式沸点 主な用途
DOT3 205°C以上 140°C以上 普通商用車・小型トラック
DOT4 230°C以上 155°C以上 中型・大型トラック・ABS/ESC装着車の主流
DOT5.1 260°C以上 180°C以上 高性能商用車・ハイブリッド車

ABS(アンチロックブレーキ)・ESC(横滑り防止装置)搭載車が主流化した現在の中大型トラックでは、DOT4以上の使用が標準化しています。これらの規格は高沸点仕様のPEG系素材が必要で、ナフサ系原料の値上げが直接反映される構造です。

ブレーキフルードで最も注意すべき性質が吸湿性です。空気中の水分を吸収する性質があり、水分含有率が3.7%を超えると湿式沸点が急激に低下、坂道長時間ブレーキ使用時にペーパーロック現象(ブレーキパイプ内で気泡発生し制動力喪失)を引き起こします。そのため商用車では2年ごとまたは40,000kmごとの定期交換が保安基準推奨されており、コストカットで先送りできない安全直結の消耗品です。CBCテレビ「チャント!」(2026年5月16日)は「車に欠かせないエンジンオイルやブレーキオイル、一方、こちらも欠かせないガソリン、最新の価格が公表されました」と全国向けに品薄を報道。ブレーキフルードの流通量はエンジンオイル・アドブルーと比較して規模が小さく、報道量が少ないものの、車両保有台数が多い物流事業者にとってはメンテナンスコストの押し上げ要因となります。

Maintenance Reality | 安全と経済性のせめぎ合い

ブレーキフルード・エンジンオイル等の車両メンテナンス用消耗品は「コストカットで先送りすると安全に直結する」性質を持ちます。特にブレーキフルードはペーパーロック現象という車両走行中の重大事故要因を持ち、整備先送りは営業ナンバー停止・行政処分・重大事故時の管理責任のトリプルリスクに直結します。「目先のキャッシュフロー」と「長期の事業継続性・法令遵守」のバランスが、過去のどの局面よりも厳しく問われる局面です。

4-9.タイヤ──横浜ゴム6月1日実施済、ダンロップ9月1日値上げ発表

タイヤ値上げは2社連続で発表・実施が進行しています。横浜ゴムは2026年6月1日から国内市販用タイヤを平均5%値上げし、既に実施済み。DUNLOP(ダンロップ)は2026年6月30日に「国内市販用タイヤを9月1日から値上げ」を発表しました(トラックニュース報道)。タイヤの約半分は石油由来素材(合成ゴム・カーボンブラック)で構成されており、ナフサショックの影響が連続的な値上げとして顕在化しています。大型トラック用タイヤは1本当たり単価が高く、10台保有事業者で複数本同時交換となれば、車両関連消耗品コストの押し上げ要因として無視できません。

Ch05【NEW】トランプ通航料20%要求と第3波リスク

2026年7月13日、物流業界の複合危機に新たな圧力が加わりました。トランプ米大統領がSNS「トゥルース・ソーシャル」でホルムズ海峡通過貨物への20%対価要求と対イラン海上封鎖再開を宣言したのです。翌14日にはUAEタンカー2隻がイラン巡航ミサイル攻撃で被弾する事案も発生し、物流業界の輸入コスト構造全般に新たな押し上げ圧力が加わっています。本章では第3波リスクの構造と、物流業界への具体的影響を整理します。

5-1.事案の概要──7月13日〜14日の連鎖

7月13〜14日の連鎖事案
  • 7月13日:トランプ「通航料20%」宣言:SNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、対イラン海上封鎖再開と、ホルムズ海峡を通過する全貨物の20%相当の補償を米国が受け取ると宣言。「米国はホルムズ海峡の守護者になる」と表明。
  • 7月13日:原油市場が即応:発言直後に原油先物が約5%上昇、ブレント原油9月物は一時1バレル79ドル台、ドバイ原油は4%高で3週ぶり高値。
  • 7月13日:IMOが「断固反対」表明:国連の国際海事機関は「国際航行に利用される海峡の通航料徴収に断固反対」「法的根拠は存在しない」と見解表明。
  • 7月14日:UAEタンカー2隻被弾:UAE国防省発表、ホルムズ海峡南部でUAEタンカー2隻がイラン巡航ミサイル攻撃で被弾、船員1名死亡・8名負傷(うち4名重傷、6名インド国籍・2名ウクライナ国籍)。
  • 7月12〜14日:米中央軍3夜連続空爆:CENTCOMが対イラン空爆を3夜連続で実施、覚書破棄後の軍事的圧力が段階的にエスカレート。

5-2.「20%通航料」の経済インパクト──船種別試算

ブルームバーグ試算によれば、原油VLCC(超大型原油タンカー)1隻あたりの負担額は、1バレル約80ドルの原油価格と最大積載量約200万バレルを前提として、貨物価値の20%相当で約3200万ドル、円換算で約50億円に達します。船種別の負担試算は以下のとおりです。

船種/貨物区分 最大積載量(目安) 貨物価値 20%通航料相当
VLCC(超大型原油タンカー) 約200万バレル 約1.6億ドル 約3200万ドル(約50億円)
LNG船(大型) 約17万m³ 約1億ドル前後 約2000万ドル前後
プロダクトタンカー(LR2) ナフサ約80万バレル 約5600万ドル 約1100万ドル

従来のイラン独自徴収は1航海当たり最大約200万ドル程度とされ、トランプ政権の要求水準はこの約15〜16倍に相当します。海運市場の関係者からは「困惑を隠さない反応」がブルームバーグ取材で示されており、制度設計・実効性・支払い拒否船への対応など、実運用までには複数の論点が残ります。

5-3.物流業界への6経路の波及

トランプ通航料20%要求が制度化された場合、または実勢化した場合の物流業界への波及は、以下6経路で顕在化します。

第3波リスクの6経路
  • ①軽油・重油・A重油等の輸入コスト再上振れ:トラック燃料・ボイラー・船舶燃料の全域で上乗せ。政府補助金制度の負担が拡大する可能性。
  • ②アドブルー原料の尿素輸入コスト上振れ:中東・マレーシア・ベトナム経由の尿素輸入がホルムズ海峡通航に依存する部分で影響。
  • ③エンジンオイル・ブレーキフルードのベースオイル・グリコール原料コスト上振れ:ナフサ由来原料の全域で押し上げ、既に半数超が調達難のエンジンオイルはさらに厳しい局面へ。
  • ④タイヤの合成ゴム・カーボンブラック原料コスト上振れ:横浜ゴム・ダンロップ既定値上げの後、追加値上げのリスク。
  • ⑤船舶戦争保険の割増率再上昇:UAEタンカー被弾事案を受け、ロイズ市場での船舶戦争保険(W/R)のホルムズ海峡通航割増率が引き上げられる公算大。輸入コスト全般を押し上げ。
  • ⑥7月14日UAEタンカー2隻被弾による海峡通航リスクの実勢化:物理的な航行リスクが上昇し、傭船料・遅延損失が拡大。

5-4.ナフサショック3段階との位置づけ

2026年の物流業界を襲った圧力は、時系列で3段階として整理できます。

時期 トリガー 影響
第1波 2026年2〜4月 ホルムズ海峡封鎖・ナフサショック 軽油急騰、アドブルー品薄、エンジンオイル値上げ開始
第2波 2026年5〜6月 非中東原油シフト・構造的コスト上乗せ 米国産ライトナフサ得率ミスマッチ、実質コスト上振れ、値上げ40社超に拡大
第3波 2026年7月〜 米「守護者」宣言・20%通航料構想・UAE攻撃 戦争保険料再上昇、傭船料・運賃上振れ、地政学プレミアム3週ぶり高値
Third Wave Alert | 第3波の位置づけ

第3波は第1波・第2波と異なり、制度リスクと物理リスクの複合という新たな性質を持ちます。トランプ大統領の20%通航料構想が実勢化するかどうかに関わらず、UAEタンカー被弾事案による船舶戦争保険料の上昇は既に実勢化する公算が高く、日本着地のCIF原油・ナフサ・LNG価格を押し上げます。物流事業者・荷主・購買担当者は、政府対応と代替調達拡大の進捗と、第3波の実勢化リスクを両にらみで判断する局面に入りました。

Ch06トラック車検危機と整備規制緩和

2026年春のナフサショックは、軽油・潤滑油・尿素水の値上げにとどまらず、もう一つの深刻な問題を物流業界にもたらしています。それが「トラック車検危機」です。ナフサ由来のゴム・樹脂部品(ホース・シール・パッキン・バンパー・内装パーツ等)の供給不安に加え、慢性化していた自動車整備士不足が複合し、車検通過の遅延・整備停止リスクが顕在化しています。

6-1.車検への直接影響──保安基準と部品入手難

道路運送車両法に基づく車検(保安基準適合検査)では、ブレーキ・タイヤ・灯火器・車体強度など必須項目があり、損傷・劣化部品の交換が求められます。これらの部品の多くはナフサ由来の合成ゴム・樹脂・複合素材で構成されており、ナフサショックの直撃を受ける構造です。具体的には:

  • ホース類(ブレーキホース・冷却液ホース・燃料ホース・エアホース):合成ゴム・樹脂混合素材
  • シール・パッキン・Oリング:各種ゴム・ニトリル系合成ゴム
  • ブッシュ類・防振ゴム:天然ゴム+合成ゴムブレンド
  • タイヤ:合成ゴム・カーボンブラック(約半分が石油由来素材)
  • バンパー・フェンダー・内装パネル:ポリプロピレン・ABS樹脂
  • ワイパーゴム・ウェザーストリップ:EPDM等の合成ゴム
  • 燃料・冷却系の樹脂部品:耐熱・耐油性樹脂(PA・PBT等)

これらの「安価だが代替しにくい小物部品」は、1点欠けるだけで車両全体の運行が止まる可能性があります。富士ゴム工業のレポートは「Oリング、ガスケット、パッキン、ホース、樹脂スペーサー、カバー、絶縁部品などは、1点欠けるだけで装置全体が止まることがある」と警告しています。

「部品・補修部品の入手難が車検通過に直結するリスクは確実にあります。特にタイヤやプラスチック・ゴム部品は深刻で、大型物流車両(トラックなど)への影響は大きい。すでに修理期間の長期化や作業後回しが発生。事業者停止が連鎖すれば、整備待ち渋滞 → 車検切れ車両増加の悪循環が現実味を帯びます。」 出典:KURITORA 地政学3.0「車整備、5月下旬に停止も 車検制度崩壊か!?」(2026年5月)

6-2.サプライチェーン全体への波及──帝国データバンク調査

帝国データバンクが2026年4月17日に発表した「ナフサ関連製品サプライチェーン動向分析調査」は、ナフサ由来製品の供給網の脆弱性を数値で浮き彫りにしました。ナフサ由来の基礎化学品を扱う52社を起点として、一次・二次の取引先までたどると、国内製造業約15万社のうち4万6,741社、実に約3割がその影響下にあることが判明。さらに該当企業の約9割が売上高1億円未満の中小企業という構造。コスト上昇分を販売価格に転嫁できず、現場が負担を抱え込む構造が示されました。

業界誌Merkmal(メルクマール)は2026年4月20日付の記事「日本の基幹産業を襲うナフサ危機 自動車部品を支える工業用ゴムの『54%』が示す供給断絶の予兆」で、自動車1台あたりの工業用ゴム使用量が極めて多く、ナフサショックが「目に見えない速さで、しかし確実に、巨大な産業の末端まで波及していく」と警鐘を鳴らしています。

6-3.整備士不足の慢性化──既存課題との複合

もう一つの構造課題が、自動車整備士の慢性的不足です。国土交通省が2025年6月に公表した「省力化投資促進プラン―自動車整備業―」によれば、全国の自動車整備工場は約9.2万工場、従業員約55.4万人(うち整備要員約40万人)。一方、自動車整備専門学校の入学者数は過去20年でおよそ半減、人手不足と高齢化が同時に進行しています。

項目 データ 出典・備考
自動車整備士の有効求人倍率 5.45倍(2024年度) 厚生労働省/全産業平均を大きく上回る
整備要員の平均年齢 47.2歳(令和5年度) 日本自動車整備振興会連合会/令和5年度実態調査
民間整備工場の平均年齢 52.1歳 日本自動車整備振興会連合会
整備専門学校 入学者数 過去20年で約半減 国交省「省力化投資促進プラン」(2025年6月)
全国の自動車整備工場数 約9.2万工場 国交省「省力化投資促進プラン」
整備業従業員数 約55.4万人(うち整備要員40万人) 国交省「省力化投資促進プラン」

物流ウィークリーは「深刻化するトラックの整備士不足 修理に1か月以上も」と題した記事で、トラック整備士不足が修理期間を慢性的に長期化させている現状を報じました。乗用車に比べてトラック整備は「軽油が臭い」「グリースを多用」「部品が重い」など敬遠される要素が多く、若手の確保が極めて困難な状況が続いています。予備車を抱えていた運送会社が、人材確保を諦めて車両を処分するケースも増加しています。

6-4.国交省の整備事業規制7項目見直し(2025年7月公布)

整備士不足の深刻化を受けて、国土交通省は2025年7月8日に自動車整備の事業規制について7項目の見直しを公布しました。

項目 内容 施行日
①認証工場の機器要件 整備用スキャンツールを追加、使われなくなった機器の見直し 2025年7月8日
②指定工場(大型)の最低工員数緩和 5人→4人に緩和(省力化設備・機器導入等の要件付き) 2025年7月8日
③自動運転車の検査員要件強化 1級自動車整備士資格保有者のみ選任 2029年4月1日
④整備士資格の実務経験年数短縮 2級3年→2年、3級1年→6カ月、特殊2年→1年4カ月 2025年7月8日
⑤「電子」点検整備記録簿の解禁 記録簿の電子化・オンライン管理を認める 2025年7月8日
⑥オンライン研修・講習の解禁 整備士向け研修・講習のオンライン化 2025年7月8日
⑦スキャンツール等による点検可能範囲拡大 電子制御装置の点検範囲を拡大 2025年10月8日

これら制度緩和は、整備士不足の慢性化に対する政府の危機認識を示すものです。しかし、ナフサショックによる部品入手難という新たな圧力が重なったことで、緩和効果が顕在化する前に、より深刻な「車検危機」が現実化する局面となっています。

6-5.「車検切れ車両増加」のリスクシナリオ

整備工場の現場では、ナフサ由来補修部品の入荷遅延と整備士不足が複合することで、以下のリスクシナリオが現実化しつつあります。

段階 現象 影響
①部品入荷遅延 ホース・シール・タイヤ等の入荷待ちが拡大 整備作業の停滞・作業後回しの常態化
②整備期間の長期化 通常1〜2日の整備が1か月以上に延伸 運送会社の稼働可能車両数が減少
③整備待ち渋滞 整備工場の入庫枠が満杯化 新規車検予約の受付制限・予約数か月待ち
④車検切れ車両の発生 車検期限までに整備完了できない車両増加 無車検運行リスクor稼働停止判断
⑤運送能力の追加減少 2024年問題の輸送能力不足にさらに上乗せ 物流麻痺リスクの加速
Compound Risk | 四重圧力の連鎖

トラック車検危機は、①ナフサショックによる補修部品入手難、②慢性化していた整備士不足、③2024年問題による輸送能力低下、そして④2026年7月の第3波リスクによる補修部品の追加値上げ懸念という四重の圧力が連鎖する構造です。一つひとつは既存の課題でも、四つが同時並行で顕在化することで、「物流が物理的に止まる」リスクが現実味を帯びます。運送会社にとっては、車検タイミングの前倒し対応・補修部品の予備在庫確保・整備工場との長期パートナーシップ構築が、過去のどの局面よりも重要です。

Ch072024年問題と2026年問題──制度改革の二段ロケット

ナフサショックという外部環境変化に加え、物流業界は制度改革の二段ロケットに直面しています。2024年4月から施行された「物流の2024年問題」と、2026年4月から本格施行された「物流の2026年問題」は、性質も対象も異なる制度改革であり、それぞれが業界構造を変える要因となっています。

7-1.2024年問題と2026年問題の比較

項目 2024年問題 2026年問題
施行時期 2024年4月〜 2026年4月〜(改正物流効率化法)
主対象 運送事業者(運転手) 荷主企業(特定荷主・特定倉庫業者)
核心内容 自動車運転業務の時間外労働年960時間上限規制 CLO(物流統括管理者)の選任、中長期計画策定、定期報告
対象基準 全運送事業者・全運転手 年間貨物量9万トン以上の特定荷主
主な影響 輸送能力14%不足(2030年34%不足見通し)、運転手不足、賃上げ圧力 荷主の物流改善責任明確化、コンサル費用・システム投資
違反時のペナルティ 労働基準法違反として行政処分・罰則 行政処分・勧告・社名公表(取引適正化法)
ビジネス上の意味 運送会社の働き方改革 サプライチェーン全体の効率化

7-2.ナフサショック・第3波リスクとの4層複合影響

2024年問題・2026年問題という制度改革は、それぞれ単独でも物流業界に大きな変化をもたらしますが、2026年春のナフサショックと7月13日の第3波リスクがこれに重なることで、業界全体の経営環境が4層構造で複雑化しています。

  • 外部経済層①(第1波・第2波:ナフサショック):軽油・エンジンオイル・アドブルー・ブレーキフルード・タイヤ等の値上げ
  • 外部経済層②(第3波:トランプ通航料・UAEタンカー攻撃):船舶戦争保険・傭船料上振れによる輸入コスト全般の押し上げ
  • 労働規制層(2024年問題):運転手不足・人件費上昇・輸送能力14%不足
  • 制度対応層(2026年問題):荷主企業のCLO選任・効率化義務化

これら4層が同時並行で進む状況は、物流業界の経営者にとって過去最大級の複雑性を持つ環境となっています。「ナフサショックが落ち着けば元に戻る」という単純な楽観論は通用しない、構造変化として捉える必要がある局面です。帝国データバンクが2026年4月3〜7日に実施したアンケート調査では、中東情勢の緊迫化を背景とする原油価格の高騰や供給不安について「マイナス影響がある」と回答した企業が96.6%に達しました(有効回答1,686社)。

Ch08立場別の対応ポイント

ナフサショック・第3波リスク・制度改革の複合圧力に直面する物流業界の関係者は、立場によって取るべき対応が異なります。本章では物流事業者・荷主企業・購買担当者の3視点から、実務的なアプローチを整理します。本記事は特定の経営・調達判断を推奨するものではありませんが、業界レポート・公的情報から読み取れる実務的な選択肢を示します。

8-1.物流事業者・運送会社の視点

運送会社にとっての最大の課題は、軽油・エンジンオイル・アドブルー・ブレーキフルード・タイヤ・人件費の同時上昇を運賃にどう転嫁するかです。実務的アプローチは6つに整理できます。

  • 燃料サーチャージ制度の積極活用:軽油価格と運賃の連動を明示し、荷主との価格交渉を構造化。政府の運賃転嫁容認要請(2026年3月26日)を交渉の根拠に。
  • 運賃改定交渉:軽油・潤滑油・タイヤ・人件費の値上げ要因を整理し、定期的な運賃改定を交渉。中小受託取引適正化法を根拠に協議拒否を防ぐ。
  • 車両関連消耗品の予備在庫確保:エンジンオイル・アドブルー・ブレーキフルードの適正量での前倒し購買。買いだめは品薄を加速させるため、必要量の1〜2倍程度に留める。
  • 車検タイミングの前倒し対応・補修部品の予備在庫確保:ホース・シール・タイヤ等のナフサ由来補修部品の予備手配、整備工場との長期パートナーシップ構築、車検満了タイミング前の早期入庫予約。
  • 定期メンテナンス計画の最適化:エンジンオイル・ブレーキフルード等の交換周期を見直し、安全性を維持しつつ無駄を排除。
  • 車両稼働効率の最大化:AI・DX技術で空車率・積載率を改善し、固定費の絶対額を削減。

8-2.荷主企業(特定荷主)の視点

2026年問題により、荷主企業の物流改善責任が法的に明確化されました。年間9万トン以上の貨物を扱う特定荷主には、以下の対応が必須です。

  • CLO(物流統括管理者)の選任:経営層レベルでの物流管理体制構築。
  • 軽油・燃料費高騰の運賃転嫁容認:政府の3省連名要請を踏まえ、運送会社からの運賃改定申出には誠実に協議。
  • 自社の物流コスト構造の総点検:運賃・倉庫費・人件費の構造を可視化。
  • 中長期計画策定:物流効率化に向けた3〜5年の中長期計画を策定。
  • 共同配送・モーダルシフト検討:鉄道・船舶へのシフト、共同物流による効率化。
  • 待機時間・荷待ち時間の削減:運送会社の負担軽減により、安定した運送パートナーを確保。

8-3.購買担当者・資材メーカー・商社の視点

物流業界向けに燃料・潤滑油・尿素水・タイヤ・サービスを供給する事業者にとっては、取引先運送会社・荷主企業の経営状況を踏まえた取引構造の見直しが必要な局面です。実務的アプローチは4つ。

  • 取引先運送会社の与信管理強化:倒産件数増加傾向を踏まえた信用調査・支払条件見直し。
  • 長期契約への移行:価格変動リスクを共有する複数年契約で安定取引を確保。
  • 軽油・潤滑油・尿素水の安定供給先確保:複数の調達先を確保し、サプライチェーン断絶リスクに備える。
  • 業務用大口取引の優先供給:物流インフラを担う運送会社への供給を確保し、社会的責任を果たす。
Universal Principle | 共通原則

立場を問わず2026年に共通するのは、「ナフサショック・第3波リスクは一過性の事象ではなく、構造変化の引き金」という認識です。軽油・燃料・潤滑油・尿素水のいずれも、過去の延長線上ではなく抜本的な見直しが求められる局面に入りました。短期的なコスト吸収だけでなく、3〜5年の中長期戦略の中で組み直すことが、物流業界全体としての持続可能性に直結します。

Ch092026年下半期〜2027年の見通し

物流業界の動向は、短期・中期・長期で異なるシナリオが想定されます。現時点で報じられている各種データから読み取れる見通しを整理します。

Short-Term | 2026年7〜9月
第3波実勢化と倒産件数の増加

7月13日のトランプ通航料20%要求とUAEタンカー攻撃事案が船舶戦争保険料・傭船料の再上昇として実勢化。ダンロップ9月1日タイヤ値上げが実施される。ミカド商事レポートでは3Q(7〜9月)エンジンオイル再値上げの可能性。地方の中小運送会社で倒産件数がさらに増加する局面。2024年問題対応の人件費上昇と重なり、業界内での淘汰・統合・廃業判断が加速する可能性。

Mid-Term | 2026年10〜2027年3月
業界再編と運賃転嫁の制度化

大手物流企業による中小運送会社の買収・統合が加速する局面。政府の運賃転嫁容認要請が運送会社に対する取引適正化の実質的なルールとして定着。荷主企業による物流子会社の戦略再編、共同配送・モーダルシフト導入の本格化。2027年4月から本格化する制度対応への準備期間で、業界全体としての「持続可能な物流」への構造転換が進む。

Long-Term | 2027年以降
脱化石燃料・電動化・自動化の本格化

電動トラック・水素トラックの導入で軽油依存からの脱却が進む。バッテリー電動トラックではエンジンオイル・アドブルーが不要となり、車両関連消耗品の構造が根本変化する局面。自動運転トラック・ドローン物流・自動配送ロボット・物流DXの本格普及。物流効率化法対応として「フィジカルインターネット」など先進的な物流概念の社会実装が本格化。

業界各種レポートが共通して示すのは、2026年内に軽油・潤滑油・尿素水の供給と価格が中東情勢悪化前の水準に戻る見込みは薄いという認識です。値上げ・規制・制度対応後の「新標準」を前提とした事業設計が、業界全体としての持続可能性に直結する局面に入りました。政府対応(補助金・備蓄放出・省庁ワンストップポータル・閣僚会議)と代替調達拡大が進む一方、7月13日の第3波リスクが加わったことで、業界全体としての判断は一段と複雑化しています。

Ch10用語集・FAQ

10-1.用語集

ナフサショック
2026年春の中東情勢悪化・ホルムズ海峡封鎖を起点として、原油・ナフサ価格が急騰し、日本の石油化学サプライチェーン全体を襲った危機。第1波(2〜4月)・第2波(5〜6月)・第3波(7月〜)の3段階で位置付けられる。
第3波リスク
2026年7月13日のトランプ米大統領によるホルムズ通航料20%要求と、7月14日のUAEタンカー2隻被弾事案を起点とする新たな価格・供給圧力。船舶戦争保険料・傭船料の再上昇を通じて日本着地のCIF原油・ナフサ・LNG価格を押し上げる構造。
アドブルー(AdBlue)
ディーゼル車の排ガス浄化システム(尿素SCR)で使う高品位尿素水。国内の大型・中型トラックの9割近くが依存する物流インフラ消耗品。JIS規格による品質基準あり。
ベースオイル(グループIII)
エンジンオイルの主成分。ナフサを原料とする石油化学プロセスで作られる高性能潤滑油。粘度指数120以上の高品質品で、現代の高性能エンジンオイルに必須。
ポリエチレングリコールモノエーテル
ブレーキフルード(DOT3・DOT4・DOT5.1規格)の主原料。エチレン由来のナフサ系素材。吸湿性が高く水分を含むと沸点が下がるため、2年ごと・40,000kmごとの定期交換が推奨される。
2024年問題
2024年4月から施行された自動車運転業務の時間外労働年960時間上限規制に伴う物流業界の課題群。輸送能力14%不足、2030年には34%不足の見通し。
2026年問題
2026年4月から本格施行された改正物流効率化法。年間9万トン以上の貨物を扱う特定荷主にCLO(物流統括管理者)の選任、中長期計画策定、定期報告を義務化。
CLO(物流統括管理者)
Chief Logistics Officer。2026年問題で選任が義務化された役職。荷主企業の物流全体を統括し、効率化計画の策定・実施責任を担う経営層レベルの管理職。
中小受託取引適正化法
2026年施行の中小企業向け取引適正化法(旧下請法を発展させたもの)。運送会社からの運賃改定申し出に対して協議せず据え置くことは違反リスクとされる。
VLCC(Very Large Crude Carrier)
超大型原油タンカー。最大積載量約200万バレル。中東と日本を結ぶ原油輸送の主力船種で、1隻当たり貨物価値は約1.6億ドル規模。トランプ20%通航料構想では1隻約50億円負担相当。
石油備蓄放出
政府が備蓄する原油・石油製品の一部を市場に放出することで供給を安定化させる措置。2026年3月以降、高市首相の指示で段階的に放出され、7月時点で累計約65日分に達している。
燃料サーチャージ
燃料価格の変動を運賃に自動的に反映させる制度。基準燃料価格を設定し、実勢価格との差額を運賃に上乗せまたは値引きする仕組み。2026年3月の政府3省連名要請以降、活用が拡大。

10-2.FAQ

2026年7月時点、物流業界の複合危機はどこまで進んでいますか
2026年春のナフサショックから始まった物流業界の複合危機は、7月時点で「7分野の同時圧力」局面に入っています。①軽油は資源エネルギー庁調査で2026年6月29日時点1リットル178.4円(政府補助金170円基準・高市首相の石油備蓄追加放出は累計65日分)、②車両関連消耗品はアドブルー3社改定完了・エンジンオイル整備業者の半数超が調達難、③タイヤは横浜ゴム6月1日実施済・ダンロップ9月1日値上げ発表、④人件費は2024年問題で輸送能力14%不足、⑤制度対応は2026年問題でCLO選任義務化、⑥トラック車検危機はナフサ由来補修部品入手難と整備士求人倍率5.45倍が複合、⑦さらに2026年7月13日にトランプ米大統領がホルムズ海峡通過貨物に対する20%通航料を要求し、VLCC1隻約50億円負担相当の第3波リスクが顕在化しました。政府対応と代替調達拡大で最悪期を通過しつつある品目もある一方、追加圧力が加わる局面が続いています。
軽油価格の最新状況と政府対応は?
軽油の店頭価格は資源エネルギー庁集計で2026年6月29日時点1リットル178.4円で高止まりを継続しています。3月16日時点の178円から大きな変動はなく、政府の補助金制度による170円基準の抑制効果が機能しています。政府対応の主な柱は、①経済産業省の補助金制度(軽油は暫定税率相当17.1円+追加補助)、②石油備蓄放出(高市首相が4月10日に約20日分、5月上旬に追加約20日分を決定、累計約65日分)、③2026年3月26日の国土交通省・中小企業庁・公正取引委員会による連名要請(軽油価格上昇分の運賃転嫁容認、協議拒否は中小受託取引適正化法違反リスク)、④第7回中東情勢関係閣僚会議(5月12日)でのアドブルー対応正式表明、⑤ジェトロ集約の省庁ワンストップポータル設置。7月13日のトランプ通航料20%要求により、追加の政府対応が求められる局面に入りました。
アドブルー(AdBlue)の供給と価格は今どうなっていますか?
2026年5月22日のトラックニュース取材で、三井化学・新日本化成・日産化学・三菱ケミカルの4大メーカーは「フル稼働で製造」「前年並み以上の生産」「供給面で問題はない」「ポリ容器を使用しない販売方法では流通の目詰まりは発生していない」と回答し、新日本化成は「5月から問い合わせは落ち着きつつある」と表明。3月〜4月にピークだった品薄局面は最悪期を通過しつつあります。ただし、①三井物産プラスチック+10円/L(4月20日出荷分〜)、②伊藤忠エネクス巡回給水+5円/L・BIB+7円/L(5月1日〜)、③新日本化成+8円/L(6月1日納入分〜)の3社価格改定は確定済み。BIB内袋(LDPE製)の容器不足構造は、JIS規格対応の国内成形容器製造業者が実質3社に集中する調達構造と、旭化成のポリエチレン全品+120円/kg値上げ(3月31日)・国内エチレン12拠点中6拠点の減産が根本要因です。中小BIB依存事業者と大手インタンク事業者の間で調達アクセス格差が続いています。
エンジンオイル・ブレーキフルード・タイヤの最新状況は?
エンジンオイルは2026年5月26日のトラックニュース調査で「整備業者の8割超がシンナー入手に支障、エンジンオイルも半数超が調達難」との実態が判明。スズキ・ダイハツは一部地域の販売会社でエンジンオイル等の油脂類交換を予約制に移行しています。キャストロールは5月1日公式値上げ実施、TAKMO(旧TAKUMIモーターオイル)は「ベースオイルと添加剤のダブル値上げ」を明示、ミカド商事は「2026年3Q(7〜9月)に再値上げの可能性」を指摘。ブレーキフルードは主原料のポリエチレングリコールモノエーテル(ナフサ・エチレン由来)が連動値上げ圧力下にあり、DOT3・DOT4・DOT5.1規格いずれも影響。タイヤは横浜ゴムが2026年6月1日から国内市販用平均5%値上げを実施、ダンロップが6月30日に「9月1日から国内市販用タイヤ値上げ」を発表しました。
トランプ通航料20%要求の物流業界への具体的影響は?
2026年7月13日、トランプ米大統領がSNSでホルムズ海峡通過貨物への20%対価要求と対イラン海上封鎖再開を宣言しました。制度化された場合、原油VLCC1隻あたり約50億円(3200万ドル相当)、LNG船で約2000万ドル、ナフサを積むLR2型プロダクトタンカーで約1100万ドルの負担が発生します。物流業界への波及は、①軽油・重油・A重油等の輸入コスト再上振れ、②アドブルー原料の尿素輸入コスト上振れ、③エンジンオイル・ブレーキフルードのベースオイル・グリコール原料コスト上振れ、④タイヤの合成ゴム・カーボンブラック原料コスト上振れ、⑤船舶戦争保険の割増率再上昇による輸入コスト全般の押し上げ、⑥7月14日のUAEタンカー2隻被弾(船員1名死亡・8名負傷)による海峡通航リスクの実勢化、の6経路で第3波として顕在化します。
トラック車検危機はどのように進んでいますか?
トラック車検危機は、①ナフサショックによるホース・シール・パッキン・タイヤ等の補修部品入手難、②慢性化していた自動車整備士不足(有効求人倍率5.45倍・2024年度、整備要員平均年齢47.2歳、専門学校入学者数が過去20年で半減)、③2024年問題による輸送能力低下、という三重の圧力が複合的に顕在化する構造です。国土交通省は2025年7月8日に整備事業規制の7項目見直し(認証工場機器要件、指定工場最低工員数の5→4人緩和、整備士資格の実務経験年数短縮、電子点検整備記録簿の解禁など)を実施し、スキャンツール等による点検可能範囲拡大は2025年10月8日施行。しかし規制緩和の効果顕在化前にナフサショックによる新たな圧力が重なり、物流ウィークリーは「修理に1か月以上も」と報じました。7月13日のトランプ通航料20%要求により補修部品のさらなる価格上振れが予想され、車検停滞リスクが継続しています。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか
プラスチックパレット株式会社は千葉県我孫子市を拠点に、プラスチックパレット・再生樹脂原料・PPバンド・ストレッチフィルム等の物流資材を全国のメーカー・物流事業者にお届けする専門商社です。取扱商材はいずれも原油・ナフサ由来であり、軽油・アドブルー・エンジンオイル・タイヤの供給・価格動向は取引先運送事業者の稼働と当社商材の需給に直結します。中東情勢を起点とする物流複合危機を一次ソース(資源エネルギー庁・国土交通省・中小企業庁・公正取引委員会・帝国データバンク・各社プレスリリース・全国紙・地方紙・業界紙)で継続的に取材・整理することで、取引先各社の調達計画・価格改定・在庫戦略・車検対応の判断材料をご提供することを目的としています。

Ch11主な情報源

1.一次情報・政府機関発表
  1. 資源エネルギー庁「石油製品価格調査(給油所小売価格調査)」(2026年6月29日集計)
  2. 経済産業省/資源エネルギー庁「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保 資料2」(2026年3月31日)
  3. 国土交通省・中小企業庁・公正取引委員会「軽油価格上昇分のトラック運賃への転嫁容認要請」(2026年3月26日連名文書)
  4. 国土交通省「省力化投資促進プラン―自動車整備業―」(2025年6月公表)
  5. 国土交通省「自動車整備事業規制の7項目見直し」(2025年7月8日公布・一部10月8日施行)
  6. 第7回中東情勢関係閣僚会議(2026年5月12日、金子恭之国交相アドブルー対応表明)
  7. ジェトロ「日本の省庁の中東情勢特設ページ・相談窓口ワンストップポータル」(2026年4月3日公開)
  8. 厚生労働省「自動車整備士の有効求人倍率」(2024年度、5.45倍)
  9. 日本自動車整備振興会連合会「令和5年度自動車特定整備業実態調査」(整備要員平均年齢47.2歳)
  10. 高市早苗首相「石油備蓄追加放出決定」(2026年4月10日・5月上旬、累計約65日分)
2.業界団体・メーカー・専門調査
  1. 三井物産プラスチック株式会社「三井のAdBlue® 価格改定のお願い」(全荷姿+10円/L、2026年4月20日出荷分〜)
  2. 伊藤忠エネクス株式会社「アドブルー価格改定のお知らせ」(巡回給水+5円/L・BIB+7円/L、2026年5月1日〜)
  3. 新日本化成株式会社「AdBlue®製品価格改定のお願い」(全荷姿+8円/L、2026年6月1日納入分〜)
  4. 横浜ゴム「国内市販用タイヤの価格改定について」(2026年4月2日発表、6月1日実施)
  5. DUNLOP「国内市販用タイヤを9月1日から値上げ」(2026年6月30日発表)
  6. 三井化学PLAS MIRAI+「アドブルー/AdBlue(尿素水)がなくなるとどうなる?」(2026年3月)
  7. キャストロール(Castrol)「エンジンオイル公式値上げ」(2026年5月1日実施)
  8. TAKMO(旧TAKUMIモーターオイル)「【2026年最新】中東・イラン情勢がエンジンオイル価格に与える影響」(2026年4月26日、6月11日更新、4要因の同時進行明示)
  9. ミカド商事株式会社「中東情勢によるオイル供給不足と価格高騰について」(2026年4月10日)
  10. ミカド商事株式会社「2026年5月 DH-2の不足と受注停止について 私見」(2026年5月2日、日本独自規格の輸入代替不可構造)
  11. ミカド商事株式会社「2026年6月12日 エンジンオイル 需給ひっ迫の現状と今後の見通し」(最悪期からの回復傾向)
  12. ミカド商事株式会社「2026年7月以降のオイル価格と供給の見通し」(2026年7月3日、10月に100円/L超・過去最大級改定予告)
  13. プライシー編集部「【2026年最新】エンジンオイルの値上げはいつまで?原因と対策」(2026年6月更新、「作れるのに詰められない」構造)
  14. プロトリオス(msrweb)「中東情勢に伴う資材の価格高騰・供給不足に関する実態調査」(2026年5月、東南アジア工場サイバー攻撃指摘)
  15. 帝国データバンク「ナフサ関連製品サプライチェーン動向分析調査」(2026年4月17日)
  16. 帝国データバンク「中東情勢による原油価格高騰・供給不安の影響アンケート」(2026年4月9日、有効回答1,686社、96.6%がマイナス影響)
  17. 日本自動車会議所「中東情勢、自動車業界への影響はバリューチェーン全体に」(2026年4月14日)
  18. 石油化学工業協会「ポリエチレン在庫のタイト化」(2026年3月)
  19. 旭化成「ポリエチレン全品を1kgあたり120円超引き上げ」(2026年3月31日発表)
  20. RIM Intelligence「三井物産プラスチック・日星産業の国内販売シェア合計約4割」(2021年11月「尿素ショック」報道)
  21. Gas-Price-Check「The 2026 Motor Oil Squeeze: Group III Supply Constraints Behind Automaker Rationing」(米国Group III能力44%喪失、トヨタ・日産ディーラー配給制)
  22. SK Enmove公式 Base Oil事業ページ(世界最大級Group III+「YUBASE」ブランド)
3.全国紙・地方紙・業界紙・専門メディア
  1. 日本経済新聞「トラック運賃への転嫁容認要請、国交省など近く経済界に 軽油」(2026年3月26日)
  2. 日本経済新聞「軽油価格の高騰で迫る運送危機 トラック運賃に上げ圧力」(2026年3月28日)
  3. 日本経済新聞「ガソリン109.8とナフサ128.3の価格逆転現象『ワニの口』」(2026年5月30日)
  4. 日本経済新聞「スズキ、販売店向けオイル卸値約40%引き上げ」(2026年7月)
  5. 日本経済新聞「トランプ氏、対イラン封鎖の再開宣言 ホルムズ通過に20%『通航料』」(2026年7月13日)
  6. CNBC「Group III北欧価格イラン戦争開始以来約100%上昇」(2026年5月1日)
  7. Kplerデータ「米国産ナフサ日本向け輸入通常の5倍水準」(2026年5〜6月)
  8. 日本農業新聞「エンジンオイル不足感 農繁期に高まる故障リスク」(2026年6月10日、農業機械への波及)
  9. 日本農業新聞「尿素水『アドブルー』必要な分だけ購入を 中東依存低く供給十分 メーカー」(2026年4月)
  10. トラックニュース「エンジンオイル/6月から元売りの出荷量増加、最悪の状況からは回復傾向」(2026年6月、ミカド商事三宅社長インタビュー)
  11. Bloomberg「トランプ氏、ホルムズ通航で20%対価要求」(2026年7月13日)
  12. Bloomberg「トランプ氏要求のホルムズ『通航料』、超大型タンカー1隻50億円相当」(2026年7月14日)
  13. Bloomberg「UAEタンカーにイランのミサイル着弾、船員1人死亡」(2026年7月14日)
  14. Reuters「IMO、ホルムズ通航料徴収に『断固反対』」(2026年7月13日)
  15. Yahoo!ニュース ビジネス+IT「たった1週間で軽油28円増…トラック運送『崩壊寸前』でも『価格転嫁』できない元凶」(2026年3月24日)
  16. Yahoo!ニュース エキスパート 中村智彦「中東緊迫化 厳しさ増す運送会社 〜燃料高で揺らぐトラック輸送」(2026年3月13日)
  17. テレビ朝日「グッド!モーニング」ナフサ不足 トラックを直撃(2026年5月18日)
  18. CBCテレビ「チャント!」エンジンオイル・ブレーキオイル品薄報道(2026年5月16日)
  19. LOGISTICS TODAY「アドブルー、容器ひっ迫で店頭消失」(2026年4月21日)
  20. トラックニュース「アドブルー/メーカー各社、増産やフル稼働で供給確保・容器も現状では不足なし」(2026年5月22日)
  21. トラックニュース「資材不足調査/鈑金塗装・整備業者の8割超がシンナー入手に支障、エンジンオイルも半数超が調達難」(2026年5月26日)
  22. トラックニュース「DUNLOP/国内市販用タイヤを9月1日から値上げ」(2026年6月30日)
  23. トラックニュース「国交省/人手不足に対応、自動車整備士資格の実務経験年数を短縮」(2025年7月8日)
  24. 物流ウィークリー「深刻化するトラックの整備士不足 修理に1か月以上も」(2025年7月14日)
  25. Merkmal「日本の基幹産業を襲うナフサ危機 自動車部品を支える工業用ゴムの『54%』が示す供給断絶の予兆」(2026年4月20日)
  26. KURITORA 地政学3.0「車整備、5月下旬に停止も 車検制度崩壊か!?」(2026年5月)
  27. 富士ゴム工業「ナフサ不足で何が止まる?エチレン・樹脂・ゴム原料の供給連鎖」
  28. 山陰中央新報/CBCテレビ/TeNYテレビ新潟/熊本日日新聞 各地方紙による運送会社の窮状報道(2026年3月)
  29. 新電力ネット「ガソリン価格の推移」(週次更新)
免責事項
  1. 本記事は2026年7月14日16時時点の公開情報(一次情報・報道・業界レポート)に基づく分析であり、その後の情勢変化により内容の一部が更新される可能性があります。
  2. 各種試算値(VLCC1隻約50億円等)は、公開されている原油価格・積載量・貨物価値を用いた前提計算であり、実際の徴収制度が導入された場合の負担額を保証するものではありません。
  3. 本記事は特定の投資・調達・海上輸送・車検対応に関する助言を目的としたものではなく、記事内容に基づく判断・行動に伴う結果について、プラスチックパレット株式会社は一切の責任を負いません。
  4. 引用した各種発言・声明・調査データは、報道機関の日本語訳・原文をベースにしており、原意との細部の差異が存在する場合があります。正確な原文は各出典元をご参照ください。
  5. 本記事内の見解は執筆時点の一次情報整理に基づくものであり、今後の政府発表・国際機関見解・当事国の対応・業界動向により変更される可能性があります。
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